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No.13840の一覧
[0] 【ネタ・完結】NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~[熊雑草](2013/09/21 23:12)
[1] 第1話 八百屋のヤオ子[熊雑草](2013/09/21 21:27)
[2] 第2話 ヤオ子のチャクラ錬成[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[3] 第3話 ヤオ子の成果発表[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[4] 第4話 ヤオ子の投擲修行[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[5] 第5話 ヤオ子と第二の師匠[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[6] 第6話 ヤオ子の自主修行・豪火球編①[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[7] 第7話 ヤオ子の自主修行・豪火球編②[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[8] 第8話 ヤオ子の悲劇・サスケの帰還[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[9] 第9話 ヤオ子とサスケとサクラと[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[10] 第10話 ヤオ子と写輪眼[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[11] 第11話 ヤオ子の自主修行・必殺技編①[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[12] 第12話 ヤオ子の自主修行・必殺技編②[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[13] 第13話 ヤオ子の自主修行・必殺技編③[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[14] 第14話 ヤオ子の自主修行・必殺技編④[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[15] 第15話 ヤオ子の自主修行・必殺技編⑤[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[16] 第16話 ヤオ子とサスケと秘密基地[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[17] 第17話 幕間Ⅰ[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[18] 第18話 ヤオ子のお見舞い①[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[19] 第19話 ヤオ子のお見舞い②[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[20] 第20話 ヤオ子のお見舞い③[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[21] 第21話 ヤオ子の体術修行①[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[22] 第22話 ヤオ子の体術修行②[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[23] 第23話 ヤオ子の中忍試験本戦・観戦編[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[24] 第24話 ヤオ子の中忍試験本戦・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[25] 第25話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅護衛編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[26] 第26話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅壊滅編[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[27] 第27話 幕間Ⅱ[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[28] 第28話 ヤオ子の新生活①[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[29] 第29話 ヤオ子の新生活②[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[30] 第30話 ヤオ子の新生活③[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[31] 第31話 ヤオ子の下忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[32] 第32話 ヤオ子の下忍試験・実技試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[33] 第33話 ヤオ子の下忍試験・サバイバル試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[34] 第34話 ヤオ子の下忍試験・試験結果編[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[35] 第35話 ヤオ子とヤマトとその後サスケと[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[36] 第36話 ヤオ子の初任務[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[37] 第37話 ヤオ子の任務の傾向[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[38] 第38話 ヤオ子の任務とへばったサスケ[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[39] 第39話 ヤオ子の初Cランク任務①[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[40] 第40話 ヤオ子の初Cランク任務②[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[41] 第41話 ヤオ子の初Cランク任務③[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[42] 第42話 ヤオ子の初Cランク任務④[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[43] 第43話 ヤオ子の初Cランク任務⑤[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[44] 第44話 ヤオ子の憂鬱とサスケの復活[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[45] 第45話 ヤオ子とサスケの別れ道[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[46] 第46話 幕間Ⅲ[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[47] 第47話 ヤオ子と綱手とシズネと[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[48] 第48話 ヤオ子と、ナルトの旅立ち[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[49] 第49話 ヤオ子と第七班?①[熊雑草](2013/09/21 21:50)
[50] 第50話 ヤオ子と第七班?②[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[51] 第51話 ヤオ子の秘密[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[52] 第52話 ヤオ子とガイ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[53] 第53話 ヤオ子と紅班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[54] 第54話 ヤオ子とネジとテンテンと[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[55] 第55話 ヤオ子とアスマ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[56] 第56話 ヤオ子と綱手の顔岩[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[57] 第57話 ヤオ子とサクラの間違った二次創作[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[58] 第58話 ヤオ子とフリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[59] 第59話 ヤオ子と続・フリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[60] 第60話 ヤオ子と母の親子鷹?[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[61] 第61話 ヤオ子とヒナタ班[熊雑草](2013/09/21 21:56)
[62] 第62話 ヤオ子と一匹狼①[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[63] 第63話 ヤオ子と一匹狼②[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[64] 第64話 幕間Ⅳ[熊雑草](2013/09/21 21:59)
[65] 第65話 ヤオ子とヤマトの再会[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[66] 第66話 ヤオ子とイビキの初任務[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[67] 第67話 ヤオ子の自主修行・予定は未定①[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[68] 第68話 ヤオ子の自主修行・予定は未定②[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[69] 第69話 ヤオ子の自主修行・予定は未定③[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[70] 第70話 ヤオ子と弔いとそれから……[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[71] 第71話 ヤオ子と犬塚家の人々?[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[72] 第72話 ヤオ子とカカシの対決ごっこ?[熊雑草](2013/09/21 22:03)
[73] 第73話 ヤオ子の居場所・日常編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[74] 第74話 ヤオ子の居場所・異変編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[75] 第75話 ヤオ子の居場所・避難編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[76] 第76話 ヤオ子の居場所・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[77] 第77話 ヤオ子の居場所・救助編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[78] 第78話 ヤオ子の居場所・死守編[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[79] 第79話 ヤオ子がいない①[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[80] 第80話 ヤオ子がいない②[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[81] 第81話 幕間Ⅴ[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[82] 第82話 ヤオ子の自主修行・性質変化編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[83] 第83話 ヤオ子の自主修行・能力向上編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[84] 第84話 ヤオ子の自主修行・血の目覚め編[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[85] 第85話 ヤオ子の旅立ち・お供は一匹[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[86] 第86話 ヤオ子とタスケの口寄せ契約[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[87] 第87話 ヤオ子の復活・出入り禁止になった訳[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[88] 第88話 ヤオ子のサスケの足跡調査・天地橋を越えて[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[89] 第89話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ①[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[90] 第90話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ②[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[91] 第91話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ③[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[92] 第92話 ヤオ子のサスケの足跡調査・状況整理[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[93] 第93話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁①[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[94] 第94話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁②[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[95] 第95話 ヤオ子とサスケの新たな目的[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[96] 第96話 ヤオ子と小隊・鷹[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[97] 第97話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・マダラ接触編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[98] 第98話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[99] 第99話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・深夜の会話編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[100] 第100話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦開始編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[101] 第101話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・奪還編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[102] 第102話 ヤオ子とサスケの向かう先①[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[103] 第103話 ヤオ子とサスケの向かう先②[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[104] 第104話 ヤオ子とサスケの向かう先③[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[105] 第105話 ヤオ子とサスケの向かう先④[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[106] 第106話 ヤオ子の可能性・特殊能力編①[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[107] 第107話 ヤオ子の可能性・特殊能力編②[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[108] 第108話 ヤオ子と砂漠の模擬戦[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[109] 第109話 ヤオ子とイタチの葬儀[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[110] 第110話 ヤオ子とサスケの戦い・修行開始編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[111] 第111話 ヤオ子とサスケの戦い・修行編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[112] 第112話 ヤオ子とサスケの戦い・最後の戦い編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[113] 第113話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[114] 第114話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・サバイバルレース編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[115] 第115話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・本戦編[熊雑草](2013/09/21 22:22)
[116] 第116話 ヤオ子の八百屋[熊雑草](2013/09/22 01:07)
[117] あとがき[熊雑草](2010/07/09 23:40)
[118] 番外編・ヤオ子の???[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[119] 番外編・サスケとナルトの屋台での会話[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[120] 番外編・没ネタ・ヤオ子と秘密兵器[熊雑草](2013/09/21 22:24)
[121] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と①[熊雑草](2013/09/21 22:25)
[122] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と②[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[123] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と③[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[124] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第1話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[125] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第2話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[126] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第3話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[127] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第4話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[128] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第5話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[129] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第6話[熊雑草](2013/09/21 22:29)
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[13840] 第85話 ヤオ子の旅立ち・お供は一匹
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/21 22:10
 == NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==



 母親を完全に追い抜き、幾つかの術を修めて、やっと辿り着いた及第点。
 今の自分の状態から推測して、始めなければいけないことがある。
 ヤオ子は家族に話すことがあると、父親と弟が里の復興の手伝いを終えて帰ると切り出した。


 「ねぇ。
  皆にお話があるんです」


 修行中の会話に打ち込む真剣さ……。
 それを感じた母親だけは、ヤオ子の話の予想がついていた。



  第85話 ヤオ子の旅立ち・お供は一匹



 ヤオ子から、切り出す家族会議。
 実家の八百屋の経営以外で、ヤオ子が家族会議を開くのは初めてだった。
 小さなちゃぶ台に全員分のお茶が用意される。


 「話って何だ?」


 父親が促すと、ヤオ子は正座した状態でしっかりと口にする。


 「あたし、里を出ようと思っています」


 ヤオ子の答えに、最初に質問したのは弟のヤクトだった。


 「里抜けでもするの?」


 ヤオ子は首を振る。


 「綱手さんが倒れているから、シズネさんに断わってからです。
  ちゃんと了承は得ます」

 「じゃあ、何で、里を出るの?
  今、復興をしている最中じゃないか」


 ヤオ子が真剣な顔で答える。


 「あたしの予想ですが、今回の木ノ葉崩しは前回と全然違います。
  里の力は落ちていません」


 里の惨状を見て復興を手伝っているからこそ、ヤクトには分からなかった。
 前回と今回で、何が違うのか?
 大切なものを失ったことには変わりはないはずだった。

 ヤオ子がヤクトに話し掛ける。


 「木ノ葉隠れの里が忍達の力で成り立っているのは知っていますね?」

 「うん」

 「そこが重要なんです。
  前回の木の葉崩しでは沢山の忍が亡くなりましたが、
  今回は、どういうカラクリか分かりませんが、死者が生き返って忍の数が減っていないんです。
  つまり、里の力は落ちてなくて、里が壊れただけなんです」

 「でも、建物がないと困るよ」

 「それは厳密に言えば、忍の仕事ではありません。
  家を建てるなら大工さん。
  電線を通すなら、電工技師さんです。
  ・
  ・
  それは外から雇うでしょ?
  以前、ナルトさん達が任務で関わった波の国の大工さんを見掛けました。
  もう、そういった作業も進んでいます」

 「そっか……。
  でも、それとお姉ちゃんが里を出るのと、何が関係するの?」


 ヤオ子は自分の胸に手を当てる。


 「あたしは、この数日で里を出るだけの力が及第点に達したと思っています。
  ・
  ・
  だから……サスケさんの情報を集めに行きます」


 ヤオ子の言葉に、父親が待ったを掛ける。


 「力の及第点って、何だ?」


 それに対しては、母親が補足する。


 「ヤオ子は、この三日で私を越えちゃったの。
  土遁と水遁の術も幾つか身につけたわ」


 里の復興中、修行を見ていたのは最初の数日だけ。
 それ以外は母親がヤオ子の修行を看ていた。
 そう、父親とヤクトが見ていたのは、ヤオ子と母親に歴然たる差があった時なのだ。
 故にその差を埋めて追い越したと聞いて、純粋に驚いたのだ。

 だが、父親には思い当たる節があった。
 父親は、母親に顔を向ける。


 「母さんと同じ成長期か?」


 母親が無言で頷くと、父親は腕を組んだ。


 「……それにしたって異常だ。
  母さんは、もう少し緩やかだったはずだ」

 「多分……。
  揃えていた武器の下地に差があると思うの。
  ヤオ子は、基礎だけをして来たでしょ?
  礎がしっかりしていればしているほど、受け止められる応用は大きくなるわ。
  その礎が、私よりもしっかりと強固だったのよ。
  ・
  ・
  他の子が新術開発をしている時も、ずっと基礎をやり続けてきたのよね?」


 ヤオ子が頷くと、母親は再び父親に顔を戻した。


 「あなたと同じ。
  基礎をひたすらにやって来たから、応用する体術や手裏剣術に修正のやり直しがなかったのよ。
  普通は『これでいいか』って切り上げて、実戦で試して修行不足を痛感して基礎修行に出戻ることも多いけど、
  ヤオ子は、私と実戦を繰り返すまでほとんど基礎修行だもの」


 父親がヤオ子を見る。


 「お前、任務をしてたのか?」

 「ほとんどが雑務です。
  ヤマト先生があたしに子供でいられる時間を作ってくれたから。
  まだ、人を殺めることもしていません」

 「……そうか。
  本格修行は、これからだったんだな。
  それなのにサスケさんよりも、四年も早く忍者になったから……。
  ・
  ・
  それにしても、四年間も基礎修行だけを……。
  確かにオレと似てるな。
  オレも基礎修行ばかりを繰り返していた。
  ・
  ・
  だから、分かるよ。
  母さんに初めて応用を教えて貰った時に、基本がいかに大事だったか感じた」

 「お父さん……」

 「本当に見ない間に成長していたんだな」


 父親の言葉に少し照れているヤオ子の横で、今一、分からないヤクトが父親に質問する。


 「お姉ちゃんって凄いの?」

 「どうだろうな。
  優秀な忍ほど、基礎が出来ているものだし……。
  ただ、一生懸命頑張って優秀な忍になる資格を得たんだよ」

 「……難しいね」

 「ヤクトは、これからさ。
  しっかりと修行をして、アカデミーで勉強してお姉ちゃんみたいになるのさ」

 「ふ~ん」


 母親が父親に向かって話す。


 「私は、ヤオ子に及第点を与えたわ。
  一人で里を出ても大丈夫だと思う」

 「まあ、母さんを越したんならな。
  あの母さんを……」


 父親の頭の中で在りし日の母の悪行が蘇ると、乾いた笑いが漏れる。


 「母さんが手玉に取られたんなら、
  オレも認めるしかないな」


 ヤオ子が顔をあげる。


 「いいの?」

 「ああ」


 母親に振り返ると、母親も頷く。


 「……ありがとう」


 母親と父親が微笑む。
 ヤオ子は、ヤクトに向き直る。


 「少しだけ……行ってくるね」

 「無茶しないでよ」

 「ええ。
  あたしの予想じゃ戦闘はないはずですから」

 「どうして?
  サスケさんに関わっていくんでしょ?」

 「はい。
  ・
  ・
  でも、今回の目的は、サスケさんの行動を追い掛けて調査することなんです」

 「どういうこと?」

 「あたしにはね……目的があるんです。
  アホなことをしているサスケさんにガツンと一言言ってやるっていう」

 「アホって……。
  お姉ちゃん……」

 「でもね。
  話をするにしても、あたしはサスケさんのことを何にも知らないんです。
  だから、まずそれを調べるんです。
  ・
  ・
  ヤクトは何にも知らない人に、いきなり自分の行動を咎められたら、どうですか?
  コイツは、何にも知らないクセに……とか。
  何様なんだ……とか。
  ムカつきません?」

 「ムカつくかも」

 「でしょ?
  だから、あたしは外堀からサスケさんの謎を埋めて行って、
  言いわけ出来ない決定的真実を突きつけて泣かせるんです」

 「お姉ちゃん……。
  考え方が根暗だよ……」


 ヤオ子は笑って誤魔化す。


 「だけど……。
  サスケさんの人生って少し入り組んでいるから、
  それぐらい理解してあげないといけないと思うんですよ」


 ヤクトは、最後のヤオ子の微笑が少し寂しそうに見えた。


 「兎に角。
  そんなに危ないものではないはずです」


 ヤオ子は真っ直ぐに正座して頭を下げる。


 「少しだけ、留守にします」


 母親と父親とヤクトは、ヤオ子の考えと予想を理解した上で送り出すことにした。
 思えば、これがヤオ子の最初の我が侭であった。


 …


 翌日……。
 ヤオ子は、デイバッグに旅で必要そうな荷物を詰め込む。
 そして、忍具を装備して旅の支度が整うと薬草入りのお茶の入った水筒を用意した。
 これから向かうのは、綱手の居る病室だ。

 密集した仮説住宅内にある綱手の病室は、ヤオ子の家から歩いても遠くない。
 到着した綱手の病室に入ると、ヤオ子は少し暗い気持ちになる。
 そこはヤオ子の居た病室よりも酷い場所だった。


 (ダンゾウさんって人の嫌がらせかな……)


 中に入ると、シズネが付きっ切りで綱手の看病をしていた。
 ヤオ子はいつも通りの声で、シズネに声を掛ける。


 「おはようございます」


 シズネが疲れた顔で返事を返す。


 「おはよう。
  ヤオ子ちゃん」


 声は変わらない。
 だから、気丈に振舞っているのだとヤオ子は気付く。


 「シズネさん。
  大丈夫ですか?」

 「私?
  全然平気」

 「そうですか。
  じゃあ、死なない程度に無理して頑張ってください」

 「はい?」


 シズネが目を丸くし、やがて笑みを漏した。


 「参りましたね。
  皆、無理するなって言うのに。
  ヤオ子ちゃんは……」

 「えへへ……。
  逆のことを言われると、少し認識しませんか?
  自分が無理してるって」

 「……そうね」


 ヤオ子は水筒を取り出して薬草入りのお茶を注ぐと、シズネに差し出す。


 「どうぞ。
  ちょっと気が楽になりますよ」

 「ありがとう。
  ・
  ・
  ほんと……。
  落ち着く……」


 シズネはお茶を一口飲み終え、ホッと息を吐き出した。


 「自分の体調管理も大事ですよ。
  綱手さんが目を覚ました時に、我が侭を聞いてあげられるのはシズネさんだけなんですから」

 「私って、そういうポジションの人なの?」

 「あたし達ですかね?
  少なからず、あたしも同じポジションです」


 シズネから、再び笑みが零れる。
 久々に張っていた空気が緩んだ気がした。

 ヤオ子は病室の感想を漏らす。


 「病室……。
  ここでいいんですか?
  火影の居る病室じゃないですよ」

 「……綱手様は気にしません。
  寧ろ、自分の里で自分だけ豪華な病室に寝ていたら、
  起きた時に私がぶっ飛ばされますよ」

 「そういう人ですか?
  あたしの家でやりたい放題してるのに?」


 シズネが微笑む。


 「ヤオ子ちゃんだから……。
  ヤオ子ちゃんだから、心を開けるんですよ。
  火影の仕事と言っても、上層部の全員が綱手様に協力的ではありません。
  そんな中で本当に心を開ける人は僅かです。
  ・
  ・
  社交辞令もありますしね」

 「あたしって貴重な存在じゃないですか」

 「うん。
  ヤオ子ちゃんが思っている以上にね」


 ヤオ子はシズネの言葉に元気がないのを少し辛く思って話を聞いた。
 しかし、それでも本題を切り出さないわけにはいかない大事なことがヤオ子にはあった。


 「シズネさん」

 「ん?」

 「あたし、里を出ようと思うんです」

 「え?
  ・
  ・
  何か資材が足りないの?」


 現在、ヤオ子は里の復興切り込み隊長みたいな位置づけのため、シズネはそういう風に捉えた。
 しかし、ヤオ子は、そうではないと首を振る。


 「サスケさんの足跡を追うつもりです」


 シズネの顔が真剣なものに変わる。


 「ダメです!
  今、里は大事な時期なのに!
  ヤオ子ちゃんが勝手なことをするなんて!」


 ヤオ子は、シズネの側まで行って座る。


 「里は大丈夫です。
  今回は、力が落ちていません。
  死者はあまり出ていないんだから。
  ・
  ・
  あたし、一人抜けてもビクともしません」

 「確かにそうかもしれない……。
  でも、そうじゃない──そうじゃなくて!」


 ヤオ子が真っ直ぐにシズネを見据える。


 「あたしが変わったの分かりますか?」

 「え?」


 今までの会話は、あまりにいつも通りだった。
 だから、シズネはヤオ子の微妙な変化に気付かなかった。

 シズネは改めてヤオ子を見ると、確かに何か違うものを感じ取った。


 「髪の色が変わったのは知ってるけど……。
  ・
  ・
  雰囲気……。
  確かに違う……」

 「一人で外に出して心配ですか?」


 ヤオ子から視線外せず、シズネはヤオ子を見続けていた。


 (確かに違う……。
  何だろう?
  前よりも……何か、こう大きく見える)


 シズネは首を振る。


 「確かに変わった。
  雰囲気も変わった。
  でも、ダメです!」


 ヤオ子は溜息を吐く。


 「じゃあ、里抜けするか」

 「へ?
  ・
  ・
  えーっ!?」

 「だって~。
  あたしは健気にシズネさんにお伺いを立てて、
  『ちょっと里の外の世界を見て来ますぜ! フフン!』って、
  報告しているのに認めてくれないんだもん」

 「そんな感じじゃなかったでしょ!」

 「要約すると、そうですよ。
  それに……別に里の外で暴れてくるわけじゃないし、いいじゃん。
  認めてよ。
  ユー 認めちゃいなよ!」

 「さっきまでの雰囲気は、何!?
  ちょっとシリアスじゃなかった!?」

 「このSSは、ギャグですよ?」

 「そんなこと、知りません!」

 「まあ、そんなわけです。
  シズネさんの選択は二択です。
  『あたしに里の外へ出る許可を出すか』
  『あたしに里抜けされるか』です」

 「何!? その脅迫まがいの選択!?
  ヤマトの許可は!?」

 「うっさいですね。
  丁度、里の外に出たタイミングを見計らってるから、関係ナッシング。
  バレません。
  どっち?」

 「どっちって……。
  他の選択肢は!?」

 「却下の方向で」


 シズネはがっくりと項垂れた。


 「こんな時に綱手様が元気なら、
  ヤオ子ちゃんを殴って黙らせるのに……」

 「ふふふ……。
  鬼は寝ています」


 流されていた雰囲気を振り払い、シズネは少し冷静に考える。
 そして、堅実的な手段を口にする。


 「ここで大声を出す……と言う選択肢もあります」

 「別にいいですよ。
  ここに居るのは里一番の変態です。
  シズネさんが大声を出す理由は幾らでもあります」

 「何てことなの……。
  未だかつて犯人が大声を出されることを恐れないなんてことがあったかしら……。
  いや、それどころかそれを強みに押し出すなんて……。
  ・
  ・
  推理小説の根本が崩れ去る気分だわ……」


 ヤオ子はワキワキと両手を動かす。


 「ふふふ……。
  何なら、本当にシズネさんを襲いましょうか?
  ・
  ・
 (ワキ…ワキ……)
  ・
  ・
  その時は、大声ではなく喘ぎ声ですけどね♪」

 「……え?」

 「露天風呂で初めて生乳を揉んだ時を思い出します♪
  ・
  ・
 (ワキワキ…ワキワキ……)
  ・
  ・
  あの時の潤んだ瞳と甘い声が忘れられません!」

 「私のトラウマーっ!?」

 「シズネさん♪
  ・
  ・
 (ワキワキ! ワキワキ!)
  ・
  ・
  乳にする?
  耳の裏?
  それとも……う・な・じ?」

 「あヒィーッ!
  犯される!?
  ヤオ子ちゃんに犯される!?」


 そこに寝ているはずの綱手のグーが、ヤオ子に炸裂した。


 「綱手さん!?」
 「綱手様!?」


 しかし、綱手は動かない。


 「何、今の?」

 「条件反射?
  ・
  ・
  あたし、経験があります。
  意識のないサスケさんが、あたしの悪戯に突っ込みを入れたんですよ。
  綱手さんも、ついにその突っ込みの領域に……」

 「ヤオ子ちゃんって、里の突っ込みを育ててるみたいですね……」

 「本当ですよ。
  ・
  ・
  で、何の話をしてたんでしたっけ?」

 「……何だっけ?」


 ヤオ子がポンと手を打つ。


 「ああ。
  あれですよ。
  あたしの里を出る話」

 「……そうだった。
  ・
  ・
  結局、ダメって行っても出て行くのよね?」

 「はい♪」


 シズネが溜息を吐く。


 「だったら、私のお使いってことにします。
  里抜けなんてされたら大問題ですから」

 「えへへ……。
  ありがとう。
  ・
  ・
  じゃあ、旅立つ前に情報も仕入れたいんで……教えて」


 シズネが額を押さえる。


 「教えて……って」

 「もう、いいじゃないですか。
  素直に吐かないと被害が広がるだけですよ?」

 「もう、何でも聞いて……」

 「素直な娘は大好きです♪」


 シズネは、ヤオ子に完全に捕食された。


 「何が聞きたいの?」

 「うちは一族について」

 「どうして?」

 「今更ですけど、サスケさんについて調べようと思って」

 「まさか……。
  里の外に出て、うちはサスケと──」


 ヤオ子は首を振る。


 「無理。
  あんなのと戦えない。
  あたしは情報を集めるつもりです」

 「情報?」

 「サスケさんが歪んだ考えを持った理由を知りたいんです。
  あたしの知っているサスケさんは、純粋な少年でしたからね。
  こんな風に理由もなしに暴れ回る人じゃないんですよ。
  ・
  ・
  だって、あれでスかしたことを言ってるんですよ?
  ナルトさんの話だと
  『怪我はねーかよ? ビビリ君?』ですよ?
  あっはははははは!」

 (この子、本当にサスケのことを想っているのかしら?)

 「それにね……。
  何と……サスケさんのファーストキスの相手はナルトさんなんですよ?
  それを聞いた時は、腹が捩れるかと思いましたよ。
  そんな人間が、今、ニヒルな悪役を演じてるなんてチャンチャラおかしいでしょ?」

 「ま、まあ、そんな極端な一部分だけを例に出されれば……」

 (でも、ヤオ子ちゃん……気付いてる?
  あなた『悪役を演じてる』って言ってるのよ。
  そんな言い方をしても、心で否定してる。
  信じたくないって言ってる。
  ・
  ・
  この子もナルト君やサクラと同じなんだ。
  うちはサスケが大事なんだ)


 シズネが綱手を見る。
 サクラ達が暁の蠍の部下に接触するために天地橋に向かった時、綱手はこう言っている『お前とサクラ達では違う』『強い気持ちが任務を成功に導く』と。
 ヤオ子を見る。
 ヤオ子も強い思いで動いている気がする。


 「ヤオ子ちゃん。
  敵との接触はしないと誓えますか?」

 「はい」

 「里を出て行なうのは、うちはサスケの足跡の調査だけ」

 「はい」

 「分かりました。
  私がヤオ子ちゃんに正式に情報探索の任務を与えます」

 「……ありがとう」


 シズネは溜息を吐く。


 「皆、思いが強過ぎて困りますね……」

 「?」


 ヤオ子は首を傾げた。


 「知りたいのは、うちは一族のことでしたね?」

 「はい」

 「ヤオ子ちゃんは、うちは一族を何処まで知っているの?」

 「正直……あまり知りません。
  知らないようにしていました。
  中忍試験でサスケさんを見世物にするような言葉を聞いてから極力無視をしてましたし、
  サスケさんとの会話でも、あまり話さないようにしていました」

 「ヤオ子ちゃんって、意外とそういうところは筋を通しますよね……。
  普段、あれだけメチャクチャするのに」

 「言えませんよ……。
  傷つけるだけだし……。
  サスケさんが気にしていることですもん……」

 「でも、調べるんですよね?」

 「ええ。
  あたしの我慢も限界です。
  だから、サスケさんと語る前に下準備をします」

 「下準備?」

 「企業なんかでプレゼンテーションをする時には、事前に資料を集めて理解することが重要です。
  例えば、相手の会社の商品も知らずに提供する商品の利害の一致なんて無理でしょ?」

 「本当に雑務専門のOLみたいね……」

 「ええ。
  幅広く手掛けて来ましたからね」


 シズネは雑務の話が絡むと、ヤオ子が自分より大人に見える時がある。
 何か追求するとボロが出そうなので、シズネは無理に話を続けることにした。


 「えっ……と。
  うちは一族でしたよね。
  うちは一族は、忍の中でもエリートとして認識されています。
  身体的な能力もありますが、うちは一族の血継限界・写輪眼はとても強力な力を持つからです」

 「カカシさんのコピー能力とかですか?」

 「そうです。
  聞いた話では、写輪眼は『体術・幻術・忍術』をすべて見抜くことが出来ると言われています」

 「へ?
  ・
  ・
  じゃあ、あたしがサスケさん相手にワンパンチ入れるなんて、
  最初から無理に近い目標だったんじゃないですか?」

 「正直……無謀だったと思います」

 「…………」


 ヤオ子は乾いた笑いを浮かべたあと、項垂れた。


 (サスケさんにからかわれてたんだ……)


 シズネの説明が続く。


 「そして、ヤオ子ちゃんが言っていた、はたけカカシのコピー能力。
  これは写輪眼の動体視力の高さと、視認して解析する能力によるところが大きいと思われます」

 「そんなに能力があるの?
  写輪眼って、一つだけの能力じゃないんですね」

 「嘘か真かチャクラの流れを形として視認することが出来て、
  性質を色で見分けることも可能とも……」


 ヤオ子が手で制す。


 「待った!
  それって土遁だったら黄色とかって見分けれるってことですよね?」

 「そうなりますね」

 「……そんなのと、どうやって戦うの?」

 「基本敵には戦えないですよね……。
  だけど、体は普通の人間です。
  早い攻撃を避けるのに目で追えても、体がついて来なければ避けれません」

 「なるほど。
  ガイ先生が自然と体術のスペシャリストになったのが分かります。
  カカシさんを永遠のライバルと宣言していますから、
  カカシさんの写輪眼で見切られても、
  攻撃が当たる速力やタイミングを身につける必要があるんです。
  カカシさんと戦うなら、体術のスペシャリストになっているのは必須条件だったんです」

 「少しマイト・ガイのルーツが見えた気がした……」


 ヤオ子が指を立てる。


 「もう少し予想を言いますね。
  術を発動するのには幾つかの工程が必要です。
  『チャクラを練る』『印を結ぶ』『術の発動』です。
  今のだけで3アクションです。
  まあ、『チャクラを練る』『印を結ぶ』を同時に行なえば2アクションで済みますが。
  ・
  ・
  写輪眼がシズネさんの言われた通りのものなら、かなり不利です。
  印で術の形態がバレる。
  チャクラで性質がバレる。
  チャクラ量で術の総量がバレて術の規模がバレる。
  ただ戦闘を行なうんなら、術を使うのはハンデになると思います。
  だから、術なんか使わないでガイ先生のように体術のみで戦うのが有効的だと思います」

 「……何で、そんな予想がスラスラ出てくるの?」

 「あたし、ガイ班で体術を見て貰うことがあるでしょ?
  その時、ガイ先生とカカシさんのお話を聞く時があるんです。
  そして、ネタに詰まったガイ先生から相談を受けて、カカシさんの抹殺計画を練りました。
  ・
  ・
  カカシさんに実際に試したところ、結構な有効手段でしたので、
  次回の対決の時にはガイ先生があたしの仇を取ってくれるはずです」

 「何やってるの?」

 「カカシさんを虐め抜く画策の作成」


 シズネが額を押さえる。


 「そう言った意味では、うちは一族にガイ先生を充てるのは有効な手段だと思いますよ。
  まあ、残っているうちは一族はサスケさんだけだから、有用性は低いですけどね。
  ・
  ・
  あ。
  あと、カカシさんが居た」

 「カカシは違うでしょ!」

 「そうでした」


 ヤオ子は笑って誤魔化すと、続きを聞く。


 「他には?」

 「能力については、一般的に知られているのは以上です」

 「そうですか。
  もう少しいいですか?」

 「ええ」

 「能力は隠すものでしょう?
  何で、そんなに詳細が知れ渡っているんですかね?」

 「?」


 ヤオ子が腕組みをして考える。


 「時代のせいかな……。
  まだ国に一国一里のシステムが確定する前は、忍は集団や一族で動いていたはずだし……」


 シズネはヤオ子の独り言を静かに聞いている。


 「強い一族は研究されて他の一族にマークされて、ある程度の情報が共有されて流れるはず。
  そして、国に自分の一族を売り込むなら、ある程度の情報を流すのは当然か……」


 ヤオ子がシズネを見る。


 「もしかして、うちは一族って、もう少し隠し玉を持っていませんか?」

 「どうして?」

 「情報を公開する時、全部を公開しないと思うんです。
  奥の手を持っていないと、対策を取られるかもしれませんから」

 「確かに考えられますね。
  写輪眼の使い手の中には強い瞳力を持った人が居たみたいです。
  幻術に優れていたり、催眠眼を持っていたり……。
  使う人によって開眼した瞳力に差があるのかもしれません」

 「思い当たる節があります。
  あたし、サスケさんの写輪眼で幻術の練習台にさせられていました」


 シズネが、再び額を押さえる。


 「何でかな~……。
  ヤオ子ちゃんと会話をすると、驚かされるか可哀そうなエピソードが漏れなく付いて来るのは……」

 「あたしの特性なんでしょうね。
  もう、諦めてよ」

 「ヤオ子ちゃんは、いいの?」

 「弄られる役に取って、これほどおいしいことはないと思っています。
  あたしの苦労が血となり肉となった瞬間ですから」

 「間違ってる!」

 「まあ、それは置いといて」


 ヤオ子が手で話を置いたしぐさをする。


 「写輪眼については、大体の能力を理解しました。
  次の話を──」

 「待って」

 「?」

 「もう一つ、重大なお話があります。
  今までは、一般的なことでした。
  ・
  ・
  次は、万華鏡写輪眼についてです」

 「万華鏡写輪眼?
  何それ?」

 「写輪眼を上回る写輪眼です」

 「何が出来るの?」

 「正直、詳細は分かりません」

 「は?
  ・
  ・
  どういうこと?」

 「説明がつかないんです」

 「じゃあ、何で知ってるの?」

 「万華鏡写輪眼を掛けられた者が居るからです」

 「掛けられた?
  さっき、言ってたか幻術か催眠眼?」

 「はい。
  私の知っているのは、
  うちはイタチが使った『天照』と『月読』と言われる能力です」

 「『天照』を掛けられたの?
  『月読』を掛けられたの?」


 ヤオ子の質問でシズネは少し反省する。
 ヤオ子に無理をさせないために説明を急ぎ過ぎた。
 そして、情報提供とうちはに近づく危険性を伝えるべく話を続ける。


 「少し焦り過ぎましたね。
  順番に話します。
  『天照』は、消えない黒い炎です」

 「消えない?
  ・
  ・
  消えないの!?」

 「そうみたいです」

 「…………」

 (防御不可じゃないですか……。
  髪なんかに引火したら、切り離すしかないのか……)


 そんなに可愛いものではない。
 天照は対象物を燃やし尽くすまで消えないのだ。
 しかも、視界に捉えられたものが対象になる。
 髪ならいいが、腕にでも引火したなら腕を切り離すことになる。


 「そして、『月読』……。
  自らの精神世界へ引きずり込み、
  時間や空間、質量などあらゆる物理的要因を支配します」

 「固有結界みたい……」

 「これに掛けられたのが、はたけカカシとうちはサスケです。
  ・
  ・
  ヤオ子ちゃんも知ってると思います。
  サスケとは親しかったんだから。
  一時期、入院していたでしょ?」

 「そういえば……。
  その時期なんですか?」

 「ええ。
  綱手様が治療しました」

 「逆に言うと綱手さんほどの医療忍者でなければ、
  治療できないほどの術だった……ということですね?」


 シズネが頷く。
 話を聞いて、ヤオ子は困り顔になる。
 どちらも少しでも掛かれば死に直結する。


 「触れることも出来ない相手って……。
  そういったレベルの話になっていたんだ……」


 思わず溜息も漏れる。
 そして、またまた気になることが出来た。


 「シズネさん。
  うちはイタチって、誰?」

 「それがこれから話す、うちは一族に関する重要人物です」

 「やっと、うちは一族の話ですか」

 「ええ……。
  ・
  ・
  先に言っておきます。
  うちはサスケとうちはイタチは兄弟です」

 「!」


 ヤオ子が驚いた顔でシズネを見る。


 「うちは……。
  ・
  ・
  そういえば、うちは一族って、全員苗字がうちは何ですか?」


 シズネがこけた。


 「ちょっと!
  そこは、どうでもいいでしょう!」

 「いや、ちょっと気になっただけですよ。
  ある島じゃ、全員名前が同じなんてのがあるから。
  ・
  ・
  十分、インパクトあって驚いてますよ。
  サスケさんとイタチさんが兄弟ってところ」

 (本当かな……)

 「で?」

 「また、この空気で説明させられるのか……。
  はぁ……。
  ・
  ・
  うちは一族は……うちはサスケを残して皆殺しにされたんです」

 「嘘……」

 「本当です。
  そして、それをやったのが……兄であるイタチなんです」


 ヤオ子の頭にサスケの思い出が蘇る。
 そして、中忍試験の観客の無責任な言葉が頭を過ぎると、ヤオ子は胸のシャツを握り締める。


 「……どうして?」


 シズネは首を振る。


 「理由は、うちはイタチに聞かないと分かりません。
  私は、ここまでしか知りません。
  ・
  ・
  そして、サスケが復讐を誓ったのがこの事件です」

 「サスケさんの仇は……お兄さんなんだ」

 「ええ……」

 (ヤマト先生は、サスケさんは復讐を果たしたって言ってた……。
  そうするとサスケさんは、お兄さんに手を掛けたことになる……。
  ・
  ・
  そんなの嫌だな……。
  あたしは、ヤクトを手に掛けるなんて絶対できないもん……)


 ヤオ子は俯く。


 「あたし、サスケさんに無責任なことを言ったかもしれない……。
  サスケさんを知らずに傷つけたかもしれない……。
  ・
  ・
  でも……。
  あたしの中のサスケさんは復讐だけを語らない……。
  あたしに優しい顔を向けてくれた……」

 「ヤオ子ちゃん……」


 ヤオ子が顔をあげる。


 「何で、サスケさんだけ生かしたんだろう……」

 「え?」

 「お兄さんです。
  一族を皆殺しにしたのに、何で、サスケさんだけを生かしたんですか?」

 「理由……。
  何かあるのかもしれませんね……」


 ヤオ子は、うちはサスケとうちはイタチには何かあるかもしれないと思う。
 そして、それこそが自分が調べなければいけないことで、サスケを理解することに近づくと思う。


 「シズネさん。
  そこも調べてみます」

 「そうね」

 「まず、これまで分かっているサスケさんの足跡を教えてください。
  あたしは、里抜けした後は知りませんから」

 (まあ、トラウマで大体の位置は分かるんですけど)


 シズネがヤオ子の重大なサスケ探知能力など知る由もなかった。
 今、必死になっているナルト達に、ヤオ子の能力がどれだけ重要かも気付かない。
 ヤオ子も気付かせない。
 そして、このすれ違いによって、サスケ探索は困難を極めたのである。


 「里抜けしてから、一度、サスケはナルト君達と大蛇丸のアジトで接触しています」

 「場所は?」

 「草隠れの里にある天地橋の先です」

 「あたしは、最初にそこに向かいます」

 「ええ」

 「他に情報はありますか?」

 「ないです」

 「じゃあ……」


 ヤオ子がシズネに姿勢を正して頭を下げる。


 「行って来ます」

 「気をつけてね」

 「絶対に無理はしません。
  いや、したくありません!」


 シズネはヤオ子らしいと微笑み、ヤオ子は綱手に向き直って手を取る。


 「あたしの我が侭を通して来ます。
  ・
  ・
  帰って来たら、殴ってください。
  元気になって、殴ってください」


 ヤオ子は綱手の手を最後に強く握ると立ち上がる。


 「シズネさん。
  綱手さんをお願いしますね。
  倒れる前より、凶暴になってても構いませんから」

 「どんな治療をすればそうなるんですか……」


 ヤオ子は微笑むと、綱手の病室を後にした。
 そして、ヤオ子と会話を終えたシズネは、何故か少し元気になっていた。
 きっと、ヤオ子のせいでいつも通りにさせられたからだろう。


 …


 『あん』の門の前……。
 ヤオ子はすっきりとしてしまった里を振り返る。
 里の中では、皆が復興を頑張っている。


 「…………」


 前を向く。
 自分の行く道に目を向ける。
 そして、突然、両手をあげた。
 ヤオ子の手の中で、何かが蠢いている。


 「何だ、タスケさんか」


 ヤオ子の手の中には、立派な猫になったタスケが居た。


 「よう」

 「お久しぶりです。
  どうしたの?」

 「お前が死に掛けたって噂があったから、来てやったんだよ」

 「えへへ……。
  ありがとう」


 ヤオ子がタスケを抱き締める。


 「元気そうじゃねーか」

 「ええ。
  これから旅立つ予定です」

 「何?
  ・
  ・
  オレも行く」

 「は?」

 「どうせ、暇だしな。
  死に掛け白髪少女のお守りをしてやる」

 「相変わらずの毒舌っぷりですね。
  ・
  ・
  でも、嬉しいな。
  正直、一人は心細かったから」

 「親分を慕ういい子分だ」

 「格下げされてない?」

 「初めから、お前の格付けは変わってないが?」


 ヤオ子はチョコチョコと頬を掻く。


 「まあ、いいです。
  ・
  ・
  猛れ! あたしの妄想力!」


 ヤオ子はチャクラを練り始め、辺りには禍々しいチャクラが荒れ狂う。


 「ちょ──おま!
  いきなり、何て量のチャクラを練るんだ!?」


 タスケの言葉を無視してヤオ子はひたすらに練り続け、そして、印を結ぶ。


 「影分身の術!」


 十分なチャクラを分け与えられた影分身が五体現れた。


 「じゃあ、いつも通りの修行を移動しながら行ないます!」

 「ハァ!?」


 タスケは意味が分からず、影分身達は頷く。
 ヤオ子は母親としていた修行を実行しながら、木ノ葉隠れの里を後にした。


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