== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
ヤマトに認められ、イビキに認められ、ヤオ子は忍として着実に成長していた。
そして、今年になってから、毎日続いている待ち合わせ。
目的の男の子にお弁当を手渡す。
「頑張って来てね」
「ありがとう。
お姉ちゃん」
ヤオ子の約束通り、弟のヤクトがアカデミーに通い始めた。
第67話 ヤオ子の自主修行・予定は未定①
ヤオ子がヤクトの頭を撫でると、ヤクトは不満そうに話す。
「お姉ちゃんの背が急に伸びたから、ボクは、また子供に戻ったみたいだよ」
「そう言われても困りますね」
「ボクも……背、伸びるかな?」
「お父さんに似れば普通だし、お母さんに似れば早く伸びると思いますよ。
ただし、お母さんに似ると、漏れなく変態というオプションが追加されますが……」
「いいとこ取りで成長したいな……」
「そうですよね。
どちらもリスクが高いです。
変態か馬鹿かを選べなんて究極の選択ですよね」
「第三の選択として、
ダメな親を見て真面目に育つ子を目指すよ……」
「それが賢明ですね」
「お姉ちゃん。
また手裏剣術見てね」
ヤオ子は腰に左手を当てる。
「そうですね……。
サスケさんの練習場で鉢合わせたら……必ず」
「分かった。
約束だよ」
ヤクトはアカデミーの方へと走って行った。
「朝練は毎日しているから、その時に顔を出せばいいのに……。
相変わらず、朝が弱いようですね」
母親のお弁当ではなく、ヤオ子のお弁当を持っていくのが日課になっている弟を見送り、ヤオ子は紹介場の方へと足を向けた。
…
ヤオ子の評価が少しずつ変わり始めていた。
今までは雑務をこなすスーパー派遣社員のようなイメージだったが、少しずつこなし始めたCランク任務のお陰でサポート上手な下忍というイメージも定着し出した。
欠員が出る度に現れる謎のくノ一。
リサイクルの女王。
第二の変態……里の狂姫の娘。
綱手様の第二のパシリ。
イビキのマブダチ。
猫女。
サクラの突っ込みに耐えられる第二のナルト。
任務より、相手をする方が疲れる。
凄いんだか凄くないんだか。
etc...。
悪いイメージの方が多い?
だけど、何故か任務は上手くいく……。
真面目な人ほど、ダメージが大きい……。
クセの強い人間ほど噛み合う……。
百人聞けば、百人別の答えが返ってくる。
ポニーテールにサスケカラーの少女は、別の意味で有名になっていた。
そして、今日も綱手に会いに行く。
「おはよ~ごさいま~す!」
「元気だな」
「心肺停止していませんから」
綱手が机に額を打ち付けた。
「いきなり極論を……」
「今日の任務は?」
「そして、タメ口……。
お前は、何様だ」
「名乗るほどの者ではありません」
「知ってるけど……」
「で?」
綱手が溜息を吐く。
「最近、突っ込むのも疲れるな。
・
・
お前、そろそろ休暇を取れ」
「熱でもあるんですか?」
「殺そうか?」
青筋を浮かべる綱手に対して、シズネが慌ててフォローを入れる。
「ヤオ子ちゃん!
今年の中忍試験!
受けるんでしょ!」
「そういう流れになってましたっけ?」
「修行しないといけないでしょ!」
「そういえば……。
任務の回数は、とっくに規定回数に達してたんでしたね」
「だから、しっかり修行しないと!」
「そんなもんより、あたしに担当の上忍をつけて下さいよ」
「…………」
綱手もシズネも視線を逸らす。
「何故、黙る……」
「お前の受け入れを、皆、拒否するからだ……」
「普段、あれだけ職権乱用してるんだから、それぐらいやってくださいよ」
「問題発言だぞ」
「何を今更……」
シズネが口を挟む。
「でも……。
担当上忍が居なくても、ヤオ子ちゃんって勝手に修行に加わってますよね?」
「ん?」
「カカシ班、ガイ班、紅班、アスマ班……」
「一体、何を考えているんだ?」
「カカシ班で基本忍術。
ガイ班で体術。
紅班で擬獣忍法。
アスマ班で特殊な忍術を使う敵の想定ですね」
「遠慮がないな……」
「だって、担当が居ないんだもん」
「シズネ。
ヤオ子の修行を見てくれるか?」
その答えには、ヤオ子が返事した。
「あたし、ヤダ」
「ヤオ子ちゃん!?」
「絶対、違うことさせられるもん。
経理とか暗号解読の手伝いとか資料作成とか──」
「ヤオ子ちゃん!
ストップ!
それ以上は、言っちゃダメ!」
「と、まあ、他にも……」
綱手が溜息を吐く。
「イビキにでも任せるか……」
「ダメです。
今、イビキさんは忙しいはずです。
ある組織の証人を集めているとかで」
「お前、イビキに懐いてるよな?」
「尊敬しています」
「珍しい奴だよな。
下忍は初対面で逃げ出す奴が多いのに……」
「そうでしょうね。
あたしは初対面でぶん殴られましたからね」
「いや、そこまでしないだろう……」
「自来也さんを殺そうとして殴られました」
「…………」
綱手とシズネが額に手を置く。
「木ノ葉の三忍を殺そうとするなんて……」
「きっと、自来也の馬鹿が何かしたに違いない」
綱手とシズネから、溜息が漏れる。
「まあ、何にせよ。
次の中忍試験に向けて修行しろ」
「年二回で、この前、終わったばっかりだから、半年先か……。
半年も休んでいいんですか?」
「それぐらいいいだろう」
「分かりました。
じゃあ、お休みします」
「ああ。
許可してやる」
シズネが心配そうに、ヤオ子に話し掛ける。
「ヤオ子ちゃん。
冗談抜きで手伝いますけど?」
「う~ん……いいです。
休暇中は経理もお手伝い出来ないんで、
シズネさんには、そっちをお願いします」
「そ、そうね。
私も頑張らないと……」
(経理だけじゃなくて
他の任務も何とかしないと……)
「では。
半年後まで」
「ああ。
頑張れ」
ヤオ子が紹介場を後にすると、シズネは綱手に話し掛ける。
「綱手様。
随分と思い切りのいい判断ですね?」
「ああ。
アイツの任務の報告を見ると、このままにしておくのは勿体なくてな」
「勿体ない?」
「アイツも優秀な忍になれる才能がある。
次の火影の手伝いをさせるために中忍──いや、行く行くは上忍になって支えて欲しいと思ってな」
「ナルト君を……ですか?」
「ああ。
アイツが火影になったら、優秀な部下がサポートしないといけないからな」
「はは……。
確かに頭脳派の忍が欲しいですね」
「だろ?」
綱手は笑いながら次の書類に目を通し、シズネは苦笑いを浮かべて次の忍を呼び入れた。
…
久々の長期の自由時間。
サスケの秘密の練習場でヤオ子は考え込む。
「中忍試験の修行って、
何をすればいいんだろう?」
シズネの誘いを断わってみたものの、ヤオ子自身、何をすればいいか何も思いつかないでいた。
「半年もあれば、新しい術を覚えられそうですね。
・
・
そうだ!
ヤマト先生に新しい性質変化を教えて貰おう!
確か……カカシさんとナルトさんの修行を見ているとか」
ヤオ子が立ち上がる。
「差し入れ持って見返り貰おっと♪」
ヤオ子は自宅に戻り、見返りを得るためのお弁当を作ることにした。
…
お昼少し前……。
時間を見計らって、ヤオ子がヤマト達の居る修行場を訪れる。
目の前には壮大な滝。
それに向かってナルトが滝を切る性質変化の修行をしていた。
ナルトの九尾をコントロールしているヤマトに、ヤオ子は話し掛ける。
「ヤマト先生……」
「ん?」
「虐められてんの?」
ヤマトが複雑な顔をする。
「どうして?」
「いや、何か……。
その木に囲まれて捕まってるみたいだから」
ヤマトはナルトの九尾の力をコントロールするため、狐のレリーフの木に囲まれている。
「まあ、捕まっていると言えなくもないけど……」
ヤオ子は、滝に目を移す。
「立派な滝ですね」
「ボクの忍術で作ったんだ」
「どんな?」
「土遁で隆起させて、水遁で滝を作ったんだ」
「へ~」
ヤオ子はいいことを聞いたと、ニヤニヤと顔を緩ませる。
「どうしたの?
気持ち悪い顔をして……」
「いえね。
時間が出来たんで新しく術を覚えようと思いまして」
「それでボクに習いたいわけ?」
「ええ。
覚えるなら、土遁か水遁じゃないといけませんから」
ナルトの修行風景に目を向けず、手元の『イチャイチャタクティクス』に目を向けていたカカシが、ヤオ子の会話に反応した。
カカシがヤオ子達の会話に参加する。
「興味ある話だな。
土遁か水遁じゃないといけないなんて」
「そういえば……」
「オレにも理由を教えてくれないか?」
「いいですよ。
簡単なんですけどね。
あたしの考えでは、五大性質は更に二分化できるんです」
「陰と陽のことかい?」
「いいえ。
残るか残らないかです」
「?」
カカシもヤマトも首を傾げる。
「『火、風、雷』と『土、水』で分けます。
前者は、術者がエネルギーを放出し続けないと残りません。
後者は、術者が術を使った後でも結果が残るんです。
例えば、先日、ヤマト先生が使った土遁で槍を作った術……。
前者で行う場合は放出し続けないといけません。
しかし、土なら残るんですよ」
「なるほどね。
水遁なら?」
「例えを変えなければいけませんね。
水遁で相手に鉄砲水を与えたとします。
敵の地面には、水が残ります。
水遁を使う術者なら……再利用できます。
『火、風、雷』なら?
再利用できますか?
あたしが言いたいのは、術発動後の再利用です」
カカシが本を腰の後ろの道具入れに仕舞いながら話す。
「面白い発想だな。
属性の優劣は、よく考えるんだが……」
「そうですかね?
それも考えますが、次は射程とか威力でしょ?
あたしは貧乏性なんで、次に再利用でした」
「…………」
カカシがヤマトに顔を向ける。
「何か……一瞬、ほのぼのとしたな」
「そうですね……。
先輩……」
ヤマトが質問する。
「それで……。
ヤオ子は、何の性質変化を覚えたいんだい?」
「土遁か水遁か木遁!
いや……寧ろ、木遁!」
カカシとヤマトが、苦笑いを浮かべた後で溜息を吐く。
「何?
このリアクション?」
「ナルトにも説明したばっかりなんだけど……」
「もしかして……というか、やっぱり血継限界?」
カカシとヤマトが頷く。
「覚えられないじゃん……」
「ヤオ子が血継限界を知っていてくれて、よかったよ」
「しかし、何で木遁を?」
「土と水って一長一短なんですよ。
土だと空中戦に弱いし……。
水だと空中で再利用し難いし……。
・
・
でも、木はいい……。
何処でも使えて何にでも使える……」
「そういう評価か……」
ヤオ子は木遁を思い浮かべてうっとりとしている。
そんなヤオ子にカカシが質問する。
「それで、何で性質変化を覚えなくちゃいけなかったんだ?」
「次の中忍試験のための修行時間を、あの綱手さんがくれたんですよ」
「あの綱手様が?」
「そう。
あの綱手様が」
「何か怖いな」
「ええ」
(先輩もヤオ子も酷いことを言ってるな……)
ヤマトが項垂れる。
そして、ヤオ子が何かに気付く。
「ねぇ。
あたしも質問していい?」
「いいけど?」
ヤオ子が指差す。
「ナルトさんは、何で寝てるの?」
「「何!?」」
カカシとヤマトが滝に目を向けると、カカシは慌ててナルトのところに向かった。
…
カカシに背負われ、修行していた滝から離れた場所でナルトは横に寝かさる。
そして、暫くしてナルトが意識を取り戻す。
「あれ……?」
「大丈夫か?」
「カカシ先生……。
ヤマト隊長……。
・
・
誰?」
ナルトはヤオ子を忘れていた。
ヤオ子が黙っておいろけの術を使って美女に化ける。
「ああ!
ヤオ子!」
((何で、今ので思い出すんだ?))
「お久しぶりです。
ナルトさん。
いえ……師匠と言いましょうか?」
「普通でいい……。
・
・
それにしても、お前ってば……。
凄くでかくなってない?」
「なりましたよ」
「何を食ったらそうなるわけ?」
「多分……エロパワーにより、
過剰に分泌された女性ホルモンがあたしの成長を促したんでしょう」
「マジで?」
((嫌な成長だ……))
ヤオ子が胸を張る。
「当然、嘘ですけどね」
ナルト達がこけた。
「遺伝ですよ。
母方が成長早いんです」
「少し安心した……」
「ヤオ子のせいで余計に疲れたってばよ……」
「あ。
差し入れ持って来たんです」
ヤオ子がお重を差し出す。
「何が入ってるんだ?」
一段目のお重の蓋を開けると、長方形に揃えられた薄黒い物体が並ぶ。
「ラーメンをにこごりのスープで固めたものです。
おにぎり感覚でラーメンを食べれます」
「おお!」
「いや、ナルト……。
疲れてぶっ倒れたのにこんな脂っこいもの……」
ナルトが無視して、一つ摘まんで口に運ぶ。
「本当にラーメンの味がする!
何これ!? 何これ!?」
「当然、出来立てのラーメンには適いませんけど、
お弁当でラーメン食べたいなと思って作りました」
「美味い! 旨い! うまい!」
ナルトが、次々に口に放り込む。
「吐かないだろうな……」
「お二人も、いかがですか?」
「カカシ先生達は、いいってばよ」
ナルトが一段目のお重を抱えた。
「…………」
ヤオ子が残ったお重を差し出す。
「普通のおにぎりですが……どうぞ」
「有り難くいただくよ」
「ありがとう」
ナルトを除く三人は、おにぎりを食べる。
「おかずもありますよ。
切り干し大根に漬物と……ハンバーグ」
「何で、最後だけ……」
「弟のお弁当の残りです。
スペースが余ったんで詰め込みました」
「ハンバーグが異様な空間を醸し出すな……」
「じゃあ、失くせばいいじゃん」
ナルトがハンバーグに箸を突き刺し、口に運んだ。
「いきなりメインが消えた……」
「まあ、これで確かに普通のおかずになったけど……」
「純和風でいいんでないの?」
カカシとヤマトとヤオ子が、一緒におにぎりに噛じり付いた。
「ヤマトは、いい生徒を持ったな」
「どういうことですか?」
「サクラは、あまり弁当を作って来ないからな」
ナルトが箸をあげて、話に割り込む。
「いや、何回かあったはずだってばよ。
サスケに無理して作って来て……。
サスケが口に運んで……」
「運んで?」
「ああ……。
倒れたんだっけ?」
「…………」
ヤマトとヤオ子が微妙な顔をする。
「思い出して来た。
確か……。
段々と味が良くなって来たはずだけど?」
「サスケが警戒して食わなくなって、それっきりだってばよ」
「分かり易いですね。
・
・
そして、最近は集る方に移行しましたけどね。
師匠と一緒に……」
ヤオ子は視線を下に向けて、乾いた笑いを浮かべる。
(((何があったんだ?)))
妙な疑問が残ったが、特に気にすることでもないと、食べ終わったナルトが準備運動を始める。
「ナルトさんに会うのは、本当に久しぶりです。
何か新術を覚えましたか?」
「ああ」
「見たいですね」
その要求に、ヤマトが注意を入れる。
「ダメだよ。
これから修行でチャクラを使うのに」
「そうですか……。
残念ですね。
・
・
では、あたしが披露しましょう!
あたしもあれから、二つ開発しました」
「へ~」
カカシがヤマトに耳打ちする。
「凄い子だね。
誰の教えもなく術を開発するなんて」
「しかし、この前の演習では新術なんて使ってなかったけど?
どちらかというと応用だったし……」
「まあ、見てみようじゃないか」
…
ヤオ子が腕組みをする。
態度がやけに偉そうだ。
「ナルトさんは『イチャイチャ』好きですか?」
「大っ嫌い!」
ナルトが手を交差させて×を作る。
…
カカシとヤマトが首を傾げる。
「何の話をしているんでしょうね?」
「術と関係あるのか?」
…
ヤオ子が顎に手を当てる。
「困りましたね」
首を捻てカカシを見る。
卑下た笑いを浮かべる。
そして、手招きをする。
「呼んでますね……」
「実験させられるのかな?」
カカシが腰をあげた。
…
カカシがヤオ子の前に立つ。
「ヤオ子。
どんな術なんだってばよ?」
「『おいろけ・走馬灯の術』です」
「オレ……死ぬの?」
「いいえ。
めくるめく夢の一時です。
・
・
行きますよ!
猛れ! あたしの妄想力!」
ヤオ子が禍々しいチャクラを練り上げる。
本領発揮である。
印を素早く結ぶ。
(あの印は……幻術関係か?)
ヤオ子がカカシに優しい笑みを向ける。
「少し心に油断を作ってくださいね♪
怖くないですよ♪
ちょっと、ビクッとするだけです♪」
(オレは注射を怖がる子供か……)
溜息を吐いたあと、カカシは言われたとおりに心に油断を作ると、ヤオ子の目が見開く。
「おいろけ・走馬灯の術!」
ヤオ子の目からカカシの目に術が叩き込まれる。
すると、カカシが白目をむき、頭からボンッと煙があがり、鼻と耳から蒸気が吹き出した。
「オ、オイ……。
大丈夫なのか? この術?」
「せ、先輩?」
「…………」
暫しの沈黙のあと、カカシが現実に戻って来る。
そして、ヤオ子の肩に力強く手を置く。
「素晴らしい術だ……」
「一体、何が……」
ヤマトには分からない。
そんなヤマトに、ヤオ子は不敵な笑いを浮かべる。
「ふっふっふっ……。
説明しましょう!
カカシさんが体験した夢の一時を!」
「聞くのが少し怖いんだけど……」
「この術は、走馬灯……。
記憶を一瞬で振り返る術です」
「意外と凄くないか?」
「そう……。
カカシさんは、一瞬であたしの記憶を体験したんです」
「一体、何を?」
「イチャイチャパラダイス 上・中・下。
イチャイチャバイオレンス。
イチャイチャタクティクスです」
「…………」
ナルトとヤマトが額を押さえた。
「最悪だ……」
「お前、馬鹿だってばよ……。
・
・
つーかっ!
こんな術においろけの名を与えるな!」
しかし、ヤマトが冷静に考えて意見を言う。
「でも、一瞬で相手に膨大な量の情報を渡せるなんて凄いことだよ。
大量の資料を一人で記憶して、全員に伝えることが出来るんだからね」
ヤオ子がヤマトに顔を向ける。
「そんなこと、出来ませんよ?」
「今、やったじゃないか」
「エロいことしか伝えられません。
だから、おいろけの名を冠するのです」
「…………」
ヤマトが激しく項垂れる。
「一気に使えない術になった……。
そもそも、どんな時に使うのさ?」
「時間がない時に使うんです。
任務で疲れ果てて眠る時間を確保しなければいけない。
しかし、エロ小説も読みたい……そんな時があるでしょ?」
「ねーよ」
「ないな」
「よくある」
ナルトとヤマトが、カカシを軽蔑した目で見る。
「影分身を一体出して、自分に走馬灯の術を掛けるんです。
一瞬でエロ小説を満喫出来ます。
・
・
どうですか?」
「使えない……」
「役に立たない……」
「素晴らしいな」
ナルトとヤマトが、カカシを軽蔑した目で見る。
「これは大人の術ですからね。
チェリーボーイのお二人には分からないのでしょう」
「分かりたくもない……」
「発想は、途中まではいいのに……」
「カカシさん。
伝授しましょうか?」
「是非」
ナルトとヤマトが、カカシを軽蔑した目で見る。
ヤオ子は、印をカカシに教えた。
「思いがけない収穫だった……」
カカシが拳を握る。
そして、カカシに伝授し終えると、ヤオ子がナルトに振り返る。
「ナルトさん。
お待たせしました。
次が本命です」
「大丈夫なのか?」
「チョウジさんから、ヒントを得ました」
「オレ……ポッチャリ系はいらないぞ?」
「まさか。
・
・
行きますよ!
猛れ! あたしの妄想力!」
ヤオ子が禍々しいチャクラを練り上げる。
そして、印を素早く結ぶ。
「おいろけ・部分変化の術!」
ヤオ子の胸で煙が上がる。
「どうですか?
この戦闘力?」
ヤオ子が自分の大きくなった胸を揉む。
「馬鹿だ……」
「馬鹿だな……」
「馬鹿ですね……」
「あれ?
反応悪いですね?
綱手さんのレベルまであげますか?」
ナルトがビシッ!と指差す。
「ヤオ子だって分かってるから、ときめかねーってばよ!」
「そうか……では!」
ヤオ子が術を解き、再び印を結ぶ。
「変化!」
「サクラちゃんになった……」
「続いて!
おいろけ・部分変化の術!」
全員が固まる。
「どうです?
適度な大きさの戦闘力を備えたサクラさん?」
「…………」
「これでもダメですか?」
「いや、もうやめろ……」
「まだまだ!
・
・
(ボンッ!)
いのさんレベル!
・
・
(ボンッ!)
ヒナタさんレベル!
・
・
(ボンッ!)
アンコさんレベル!
・
・
(ボンッ!)
綱手さんレベル!
・
・
フハハハハハ!
どうですか!?」
ナルトとカカシとヤマトが視線を背ける。
「何で、見ないんですか?
あの可哀そうなサクラさんの胸が変わるんですよ!」
ヤマトの指がヤオ子の後ろを指す。
「ん?」
そこにはサクラが居た。
「…………」
ヤオ子は、何か……地上最強の生物的なオーラを感じて、タラタラと汗を流すと言い訳めいたことを叫ぶ。
「いや~……バランス!
バランスこそ、命ですよ!」
ヤオ子が術を解き、ギギギとサクラに顔を向け、手を上げる。
「コマンタレブ?」
サクラの踵落しがヤオ子に炸裂すると、ヤオ子は地面に減り込んだ。