== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
(サスケさんが去って、もう直ぐ三ヵ月……。
あたしは元気にやってます。
そう、元気に……。
・
・
綱手さんは、ご意見番を超えるドSでした。
最近、定時で終わってた任務が終わりません。
そして、あたしの給与明細にだけ加わった残業手当……。
あたしは、OLか!
・
・
まあ、いいです。
最近は、他の事で悩んでいるので……。
ちなみに……。
今日、念願の電子レンジを拾いました)
第48話 ヤオ子と、ナルトの旅立ち
残業を終えて、ヤオ子は帰宅する。
部屋の扉を開けて電子レンジを床に置き、洗面所でうがい手洗いをして顔を洗う。
そして、ヤオ子は部屋に戻り、お腹を擦る。
「何を食べようかな?」
今日は飲食関係の任務はなかったので、お土産はない。
自分で料理をしなければならない。
先日、拾って任務先の中古販売店で直した料理店にあるような業務用の冷蔵庫を開けると、中には整理された食材が賞味期限順に並んでいる。
ちなみに、食材は滅多に買わない。
任務先の農家や酪農関係の人達から、お礼で頂く。
ヤオ子は冷蔵庫を漁りながら、独り言を呟く。
「賞味期限的にはナスと卵と鶏肉か……。
これで親子丼にするか。
ナスは、そのままだと水っぽくなるかな?」
ヤオ子は冷蔵庫から食材を持って、台所へ向かう。
ナスを台所で洗うと包丁で他の食材と一緒に刻み、フライパンで親子丼の調理を開始する。
出し汁を作り、鶏肉とナスを投下。
「本当は、親子丼専用のものがあるんですけどね。
自宅で、そこまで拘ることもありません。
フライパンにそのまま卵を落として作ってしまいます。
手抜き料理万歳」
卵を落として数分後……。
電子ジャーからご飯を盛り付け、フライパンからメインを落とす。
「完成~」
鶏肉とナスだけの手抜き親子丼の完成。
味の勝負は出し汁頼み。
ヤオ子はリビングに親子丼を運び、正座して手を合わせる。
「いただきます」
一口食べる。
「うん、ナスの味が微妙です。
玉ねぎを使っていないから甘味はなく、出し汁の濃さがナスの水っぽさで中和され、果てしなく薄味です。
何で、自宅でこんな冒険をしたんだか……。
今度からナスは漬けよう。
・
・
誰か、ぬか床くれないかな?」
ヤオ子は不思議な味の親子丼を食べ進める。
今はお腹に溜まれば、それでいいような気分だった。
そして、一気に食べ終えて丼を置く。
「やっぱり、自然な甘味を出すなら玉葱ですよね。
代わりにナス入れて完全な選択ミスですよ。
調味料で誤魔化すのも限界があります。
でも、意外と疲れている時は薄味も悪くはないかも。
薄味好きな人には……」
ヤオ子は食べ終わると、後片付けをして食器を洗った。
…
夕食後……。
本日は、やることがある。
向かい合うヤオ子の前には、壊れた電化製品。
「さ~て、今週の壊れ物は?
レンジで~す」
電化製品の王様。
一人暮らしの強い味方。
使い方次第で、色んなことが出来てしまう便利アイテム。
正に魔法の箱。
これを手に入れるのが、ここ最近の大きな目標だった。
ヤオ子はレンジを手に取って全体を見回す。
「見た目、新しいのに壊れたの?」
ヤオ子は電子レンジの蓋を開けてみる。
「中も新品みたいなのに……。
となると、気になるのは──」
ヤオ子はレンジのコードを手繰り寄せる。
「やっぱり。
プラグが壊れてる。
踏んづけたんでしょうね。
この程度なら、修理も安いのに。
どこのセレブでしょうね? まったく」
ヤオ子は新規に増やした収納スペース(違法)から、工具箱とプラグのスペアを取り出す。
そして、ネジを回してバリバリにヒビ割れたプラスチック製のプラグを取り外す。
「金属部分は、そのまま使えそうですね。
ハンダも、しっかり付いてます。
ただ、差し込むところが曲がってしまって差し込めなくなっています。
・
・
これだけですね……。
壊れてもいないんじゃないの?」
ヤオ子はペンチを使い、曲がった金属部分を真っ直ぐに戻す。
「あとは、このプラスチック部分を取り替えて……。
・
・
多分、電子レンジ復活。
最後の電化製品にしては手応えありませんでしたね」
ヤオ子はプラグを差し込み、スイッチを入れる。
電子レンジは問題なく動いているようだった。
「これを所定の位置に置いて電化製品コンプリートです。
また、あたしの城が充実しました」
台所に最後の電化製品──電子レンジが揃い、ヤオ子はだらしない顔で微笑む。
「さて、一日の疲れを取るか」
大きく伸びをして工具を仕舞うと、風呂場へと向かう。
直した洗濯機に着ていた物を投げ入れて、いざ風呂場へ。
「ここが一番充実しているんですよね。
大きな浴槽に二十四時間風呂とジャグジーが付いています。
正直、いらないかとも思ったんですが、
拾って直したジャグジーの大きさに合わせて再改築したら……こんなに広く」
栓を捻り、お湯の出る方向を蛇口からシャワーに切り替える。
手に跳ね返る水がお湯に変わると、ヤオ子は洗髪を始めた。
「相変わらず、長くて鬱陶しい髪です。
うちの母親の話だと、困った時に売れるらしいから伸ばしているんですけど……」
ヤオ子の洗髪……石鹸オンリー。
ガシガシと男らしく洗い終わると、続いて体を洗う。
最後にシャワーで全てを洗い流すと、浴槽へ体を沈める。
「癒されますね~。
気持ちいいです」
ヤオ子は風呂場の小窓を開けて月を眺める。
「……やっぱり、気持ち悪いままです。
あたしは、ナルトさん達に本当の気持ちを言うべきなんでしょうか?
サスケさんの復讐を認めていると……。
あたしは、サスケさんを止めなかったと……」
月は、ただ光を称えている。
「悩むぐらいなら、話しておこうかな……。
これからも木ノ葉の里で顔を合わすんだし……。
そこで嫌われるんなら……それでいいです」
サスケが去った日から、ヤオ子の胸の中にはモヤモヤとしたものがあった。
それは自分が他の人と違う行動を取ってしまったことにある。
また、直接的な原因に関わらなくとも、あの時、サスケを止めることが出来ていれば怪我をする人も居なかったのではないかとも思えた。
ヤオ子は浴槽から上がる。
「明日、ナルトさんにお話しします」
ヤオ子は小さな決意をして、その日を終えた。
…
翌日……。
任務を午前中のみにして貰うため、綱手を死に物狂いで説得して、ヤオ子は午前中だけの任務を終える。
それは高い確率で現われるであろうナルトを、一楽の前で待つためだった。
そして、案の定、そこにナルトが現れた。
「ナルトさーん!」
「ん?」
ナルトが気付くと、ヤオ子に指を向ける。
「お前ってば……ヤオ子!」
「はい」
「何?
オレ、ラーメン食べに来たんだけど」
「お話があるんです」
「ダメ!
そんなのいらない!」
「…………」
ヤオ子は、ゆっくりと指を立てる。
「では……。
ラーメンを奢ります」
「分かった!
お前、いい奴だってばよ!」
(何て簡単な人なんだ……)
ヤオ子とナルトは一楽の暖簾を潜ると、一緒にメニューを見る。
「何にしようかな~」
「味噌トンコツ……。
味噌チャシュー……。
味噌ラーメン……。
つけ麺……。
冷し味噌ラーメン……。
トンコツラーメン……。
ラーメン……。
・
・
etc...」
「どうしたんだ? ヤオ子?」
「いえね。
メニューに色んなラーメンがあるでしょ?」
「まあな」
「全部食べてみたいなと思って」
ナルトと一楽の主人が吹いた。
「お嬢ちゃん! 食べ切れんのか!?」
「違いますよ。
今、あたしとナルトさんの二人でしょ?
一つを半分ずつ食べて全メニューを制覇しようかと」
ナルトはニシシと笑いながら頷く。
「面白そうだな」
「でも、胃袋に限界があるから、
味噌ラーメンと味噌チャーシューを頼むなら、
味噌チャーシューを頼んでダブりをなくします」
「いいねェ!
いいねェ!」
「やりますか?」
「やるってばよ!」
一楽の主人は、最初は引き攣った顔をしていたが、直にニヤリと笑う。
「お金はあるのかい?」
「はい」
ヤオ子が財布から数枚の札を取り出し、カウンターに置く。
「あたし達に至福の時間をお願いします。
ただし、スープの味が同じ場合は、
高いオプションが付いている方で」
「よし、分かった!」
一楽の主人は気合いの入った掛け声を入れると、数台並ぶコンロに同時に火を入れ、全メニューの調理に取り掛かった。
そして、暫くしてカウンターにチャーシューメンが乗った。
「「いただきます!」」
ここにラーメン戦争が切って落とされた。
…
~ 二時間後 ~
一楽のメニューは次々に消化され、洗い物置き場にはラーメン丼が積み重なる。
そして、遂に最後のメニューがカウンターに乗った。
「味噌トンコツ! 最後だ!」
「ナルトさん……。
お腹の容量は?」
「まだまだ、行けるってばよ!」
「あたしは、もうダメです……」
「そう?
じゃあ、一人で食べていい?」
「どうぞ……」
「いただきま~す!」
撃沈するヤオ子の隣で、ナルトは味噌トンコツを軽く平らげた。
一楽の主人は会計の紙を見ながら、改めて二人が食べた量に驚く。
「凄いな……。
ラーメン類だけ頼んで三千二百両か……」
一楽の主人が呆れながらも満足そうにしていた。
それだけ気持ちのいい食べっぷりだった。
「ナルトさん……。
最後に味噌トンコツのスープだけ飲まして」
「いいけど?」
ヤオ子はスープを少し飲む。
「これであたしもコンプリート……」
「ヤオ子!
お前、中々、やるってばよ!」
「確かに至福の一時でした……。
でも、暫くラーメンはいい……」
「やっぱり、一楽のラーメンは深いってばよ。
これだけ安くて、この旨さ!
しかも、飽きが来ない!」
「久しぶりにいいもの見せて貰ったよ。
ただ券をおまけしてやる!」
「やった!」
「…………」
(あたしは、もういい……)
突っ伏していたヤオ子が起き上がる。
「ナルトさん。
お話があるんですけど」
「いいってばよ。
何でも聞いてやる。
・
・
エロ忍術でも開発したのか?」
「ああ。
それなら一つ……って、そっちじゃなくて!」
「じゃあ、何?」
ヤオ子は店の外を指差す。
「とりあえず、少し歩きませんか?
あたしは、少し新鮮な空気を吸いたくて」
「いいけど?」
ヤオ子とナルトが立ち上がる。
「ご馳走様でした」
「旨かったってばよ!」
「また、来なよ!」
ヤオ子が料金の支払いを済ますと、ヤオ子とナルトは一楽を後にした。
…
ナルトが、ただ券を嬉しそうに眺める。
「明日も一楽いける~♪」
「あたしのもいります?
暫くラーメンはいいから」
「いいの!?」
「はい」
「これで明日は、お替わりも出来る~♪」
(この人、栄養のバランス大丈夫なのかな?)
ヤオ子がナルトの心配をしながら暫く歩くと、誰も使っていない演習場が目に入った。
ヤオ子とナルトは、その小さな演習場で腰を下ろす。
「話って、何?」
「…………」
ナルトの問い掛けに、ヤオ子は静かに話し出した。
「実は……。
サスケさんのことなんです」
「サスケ?」
ナルトの顔が真剣になる。
「ナルトさん達が、サスケさんを止めようとしたのは知ってます。
そして、大怪我したのも……」
「オレも……。
ヤオ子がサスケの知り合いだって知ってる……。
連れ戻すの失敗したんだ……ってばよ」
「…………」
会話は暫く止まり、ヤオ子から再び会話をし始める。
「別にそれを責めるつもりはありません。
・
・
あたし……。
あたしは、ナルトさん達に謝らないといけないんです」
「何で……ヤオ子が?」
「あたし、ナルトさん達が必死になってサスケさんを止めようとした時……。
サスケさんを止めませんでした」
「え?」
「それどころかサスケさんを応援しました」
「何で……。
何で、だってばよ!」
ナルトがヤオ子に強く問いただした。
その問いにヤオ子は答える。
「サスケさんが……一人だったから」
「一人? 違う!
サスケにはオレやサクラちゃん──そして、カカシ先生だって居る!
お前だって居る!
一人じゃない!」
「そう思います……」
「じゃあ、どうして止めなかったんだ!」
「さっき、一人って言ったのは仲間の数じゃないんです。
復讐する人がサスケさん一人しか居ないってことなんです」
「…………」
ナルトは少し落ち着くと、ヤオ子の話に耳を傾けた。
「最初から変だな……とは思っていたんです。
そして、完全におかしいと思ったのは、中忍試験の本戦の時なんです」
「本戦?
どういうことだ?」
「歓声の中にサスケさんを見世物にするような声がありました」
「…………」
「もちろん。
サスケさんは気にしてません。
強い人ですから……」
「…………」
「でも、皆、知っているんです。
サスケさんが一人の理由も、どういう状況なのかも。
そして……。
そのせいで復讐しようとしてるってことも。
・
・
分かっているなら、何で、手伝わないんですか?
サスケさんに手を貸して、里全体で犯人を見つければいいじゃないですか?
・
・
だから、あたしぐらい味方になろうと思いました。
だから、里を出るサスケさんを止めませんでした。
サスケさんが力を求めるなら、否定できません」
ナルトは少し目を瞑ると、やがて顔を上げる。
「そうかもしれない……。
でも、サスケは大切な仲間だ。
大切な友達が大蛇丸のところに行くのを黙って見過ごせねー!」
「大蛇丸……?」
「もしかして……。
ヤオ子は大蛇丸を知らないのか?」
「ええ」
「…………」
ヤオ子がすんなりとサスケの里抜けを見逃した理由を、ナルトはようやく分かった気がした。
だから、違った形でヤオ子に質問する。
「もし……。
サスケが里を出たら死んじまうとしたら……ヤオ子は、どうする?」
「分かっているなら止めます」
「……サスケは大蛇丸って奴のところに行っちまった。
そして、大蛇丸はサスケの体を狙ってる」
「体?」
「次の転生の器……って言ってた」
ヤオ子は信じられないような言葉に聞き返す。
「転生って……。
そんな御伽噺みたいな──」
「嘘じゃねー……」
「…………」
ヤオ子は、まだ半信半疑だった。
「本当なんですか?
ただ、聞いただけじゃ……」
「大蛇丸ってのは本当にヤバイ奴なんだ……。
オレは、直に見たから分かる。
・
・
それにエロ仙人の話じゃ、
今の体は、昔の大蛇丸のものじゃなかったって……」
「本当なんだ……」
サスケが別人になる。
それは、サスケではない。
ヤオ子の胸が締め付けられる。
「じゃあ、あたし……。
サスケさんを止めなきゃいけなかった……。
ナルトさん達を裏切っただけだ……」
「裏切る?」
「あたしだけが止めなかった……。
あたしだけが……」
ヤオ子は俯く。
「サスケさんが死んだら、あたしのせいだ……。
サスケさんに転生されたら、あたしのせいだ……」
ヤオ子は、手で顔を覆う。
「サスケさんを止めなきゃいけなかったんだ……。
サスケさんが……。
サスケさんが……。
・
・
あたしが皆を裏切るようなことをしたから……」
ヤオ子は自分を抱きしめるように蹲った。
縮こまるヤオ子の肩を掴んでナルトが視線を合わせる。
「裏切ってねー!
ヤオ子は裏切ってなんかいない!
大蛇丸のことを知らなかっただけだ!
・
・
ヤオ子はサスケのことを知っていた!
一人ぼっちの苦しみに気付いていた!
里の誰も手を差し伸べない中で手を差し伸べた!」
「でも……」
「オレは……。
それが……一人ぼっちが苦しいのを知ってるってばよ」
「ナルトさん……」
「だから……。
後は、オレに任せればいい!」
ヤオ子は、ナルトの言葉で破顔する。
「あたしのせいなのに……。
頼っていいんですか……?」
「オレは諦めない!
・
・
それに……もう、約束しちゃってるしな」
「約束?」
「サクラちゃんとも……」
ヤオ子は少しだけ鼻を啜る。
「ナルトさんは……優しいですね」
「そ、そう?」
「あたしも頼っていいんですか?」
「ヤオ子が頼らなくても、サスケは連れ帰るけどよ」
ヤオ子は、俯いて感情を溜め込む。
「…………」
そして、泣きながら叫び出した。
「ナルトさ~ん!
ナルトさ~ん!
ナルトさ~ん!」
「何だ!?」
「ザズゲざんをー!
ザズゲざんをー!
ザズゲざんをー!」
「サ、サスケが何だ?」
「よろじぐお願いじまず~!」
「わ、分かったってばよ!」
「あ~~~ん!
ザズゲざーん!
ナルドざーん!」
ヤオ子の大泣きにナルトは心底困った。
…
~ 五分後 ~
ナルトの前でヤオ子は、まだグシグシ言っている。
木ノ葉丸でも、目の前でここまで泣かなかった。
ナルトは初めての対応に四苦八苦していたが、ヤオ子のサスケに対する気持ちは嬉しかった。
そして、ヤオ子が落ち着き出したところで話し出す。
「オレは強くなる。
サスケを取り戻すために。
もう直ぐ、エロ仙人と旅立つんだってばよ」
「旅立つ……?」
「サスケが大蛇丸のところで強くなるなら、
オレも強くなるしかねー!」
ヤオ子は、真っ直ぐなナルトが眩しかった。
「あたしは……何も出来ないです。
・
・
でも、約束を守ろうと思います……」
「約束?」
「サスケさんが戻って来る時まで、木ノ葉の里を守って待つんです。
サスケさんは、一族を復興させないといけないから」
「そうか……。
第七班の自己紹介の時、そんなこと、言ってたってばよ」
「はい。
・
・
もう一つ、理由を追加します」
「ん?」
「ナルトさんが戻るまで頑張ります。
ナルトさんが戻ったら、一緒に頑張ります。
・
・
でも、一緒にサスケさんは探せません。
どんなに嫌われても……。
あたしはサスケさんの味方で居たいから……」
ナルトは静かに頷く。
そして、ヤオ子に笑顔を向けてくれた。
「いい……目的だってばよ!
サスケは幸せもんだ!
ヤオ子が待っててくれるんだから!
そして、オレも安心して旅立てるってばよ!」
「そうですか?」
「いや、ヤオ子じゃ心配かな?
綱手のばあちゃんも、だらしないし……」
「上げて落とさないでくださいよ」
ヤオ子とナルトが笑い合う。
「ナルトさんに話して良かったです」
「そうか?」
「はい。
サスケさんをぶっ飛ばすぐらい強くなって来てくださいよ!」
「いや、ぶっ飛ばすのは大蛇丸だってばよ……」
「じゃあ、ついでに大蛇丸も!」
「順番が逆だ……」
ナルトと話して、ヤオ子の心は晴れやかだった。
そして、ヤオ子とナルトは小さな演習場で別れた。
…
ナルトが去った後で、ヤオ子は暫く物思いに耽っていた。
ヤオ子自身もサスケに対するナルトの気持ちが嬉しくて会話を思い返していた。
「ナルトさん……。
懐が大き過ぎます……。
惚れそうです……。
・
・
捕食ランキングの順位変更が発生です」
何故か感謝とエロが混在する。
そんなヤオ子に声を掛ける存在が居る。
「オイ! お前!」
ヤオ子が振り返る。
「ナルトのにーちゃんと、どんな関係なんだ? コレ!」
「コレ?」
同い年ぐらいの男の子に、ヤオ子は首を傾げる。
「師匠と弟子ですけど?」
ヤオ子の言葉に、男の子はショックを受ける。
「何で!?」
「何でと言われても……。
あたしはエロ忍術の師匠がナルトさんってだけで……」
「エロ忍術?
・
・
そういうことか……。
分かったんだな! コレ!」
「何が?」
「オレもかつて子分にして貰ったことがあるんだ」
「へぇ」
「そして、今やライバルなんだな! コレ!」
「凄いですね。
じゃあ、先輩ですね」
「先輩……。
・
・
いい!」
男の子は気分良さそうにしている。
「先輩。
名前を伺っても?」
「いいぞ!
姓は猿飛、名は木ノ葉丸だ! コレ!」
「あたしは、八百屋のヤオ子です。
・
・
木ノ葉丸さ──」
「先輩と呼べ!」
「へ?」
「お前の方が格下なんだから!
せ・ん・ぱ・い!」
「…………」
ヤオ子はコリコリと額を掻く。
「先輩は、ナルトさんとどういった関係なんですか?」
「火影を目指すライバルだ!」
「……凄いですね」
「フフン……」
「で、あたしには何の用だったんですか?」
「用?」
「はい」
「…………」
木ノ葉丸は腕組みをして考える。
「なんだっけかな……コレ?」
木ノ葉丸は見知らぬ女の子と親しく話すナルトが気になっただけで、目的は既に達成されていた。
ヤオ子の質問には、もう返す答えはない。
「用もないのに声を掛けたの?」
「そ、そんなことないぞ!
お前のエロ忍術の腕前を見に来たんだ! コレ!」
明らかな嘘だった。
しかし、ヤオ子の目が光る。
「いいでしょう……。
言わば、あたし達は戦友です。
エロと言う名の戦場で戦い続ける同士……。
あたしのおいろけの術を見てください!」
「おお!」
ヤオ子……空気の読める女。
「猛れ! あたしの妄想力!」
ヤオ子はチャクラを練り上げ、印を結ぶ。
「おいろけの術!」
目の前に裸の美女が現れると、木ノ葉丸が感激する。
「100点だ……コレ!
ボンッ キュッ ボンッ だ!」
「ふ……。
先輩の好みは、一瞬で分析し終えました。
ナルトさん絡みなら、この体型に弱いと」
「恐ろしい女なんだな……コレ!」
「ちなみに……。
あたしのおいろけの術はここからです」
「ん?」
「先輩は『ぱふぱふ』って知ってますか?」
「ぱふぱふ?」
「かつて、武道の神様と言われた武天老子を
鼻血で出血多量死に至らしめる寸前まで追い込んだ技です」
「エロ忍術なのに?」
「はい。
エロ忍術なのに」
「どうやるんだ?」
「え~と……。
『おっぱいとおっぱいの間にお顔を挟んでぱふぱふ』
です」
「す、凄いエロ忍術なんだな! コレ!」
「まあ、物理接触がある時点で反則とは思いますが……。
老若男を問わずに有効だと思います」
「っ~~~!
今度、エビス先生で試すんだ! コレ!」
「失血死させないでくださいね」
「分かったんだな! コレ!
他にはないのか?」
「あります。
聞いてくれますか?」
「もちろん!」
「あたしの私見ですが……。
くノ一の忍装束って、元から露出高くないですか?」
「どういうこと?」
「つまり……チラリズムが足りない!」
「おお!」
「そこで考えました……。
そこからチラリズムを発生させる方法です」
ヤオ子は偉そうに講釈を垂れているが、おいろけの術発動中である。
「足なら……スリットを入れる!
胸なら……少し膨らみが見える位置をキープ!」
「おお!
どうやるんだ? コレ!」
「相手に物語を妄想させるんです。
いいですか?
敵にクナイを投げつけられてスリットが出来るんです。
・
・
こう!」
ヤオ子が、おいろけの術を更に掛ける。
町で見掛けた紅上忍に変化して、スリットを作ってみせる。
「おお!」
「どうですか?
更に戦闘力が上がったでしょう?」
「凄いんだな! コレ!
服着てるのに!」
「ふ……。
見えそうで見えない……。
そこから覗く想像……否! 妄想!
その過程に及ぶまでのストーリー!
全てがあたし達、同士の力を漲らせる!」
「そうなんだな!
そうなんだな!」
「見えないからいいものもあるんです!
かつて、ある固有結界を発動した人が言ってました。
『そもそも全裸には萌えがない!
服を脱がしても靴下を脱がすな!』
と……」
「偉人だな……コレ!」
「しかし、あたしはまだまだです。
彼の理論で言えば動物です。
・
・
あたしは……全裸にも欲情してしまうんだ~~~ッ!」
「何の話……?」
「萌え業界の鉄則に従事出来ない半端者!
一つの事に徹底出来ず……。
かと言って、好みを口に出す……。
究極のエロって何なんだ~~~!」
「壊れた……」
ヤオ子が咳払いをする。
「お見苦しいところを……。
兎に角、あたしは精進中の半端者です」
「よく分からないけど……。
熱意だけは、伝わったんだな」
「ありがとうございます」
「次回は、ナルトにーちゃんとチラリズムを語るんだな! コレ!」
接触してはいけない人物とまた接触してしまった。
そして、数日後、ナルトと木ノ葉丸で男同士の真剣な勝負(?)がなされた後で、ナルトは木ノ葉隠れの里を自来也と共に旅立って行った。
…
※※※※※ 一楽のメニューについて ※※※※※
ナルトがよく通うラーメン屋一楽。
実は、そのメニューがよく分りません。
アニメを見るとラーメンと特性ラーメンぐらいしかメニューになく、ネットで調べると味噌トンコツの名前ばかり出て来ます。
一体、一楽のメニューには何があるのか?
今回のSSでは、何も知らない私が勝手にメニューを追加していますので信用しないでください。
ただ、アニメでは、つけ麺なんかを新メニューで開発していたので、メニューは多いのかもしれません。