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No.13840の一覧
[0] 【ネタ・完結】NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~[熊雑草](2013/09/21 23:12)
[1] 第1話 八百屋のヤオ子[熊雑草](2013/09/21 21:27)
[2] 第2話 ヤオ子のチャクラ錬成[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[3] 第3話 ヤオ子の成果発表[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[4] 第4話 ヤオ子の投擲修行[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[5] 第5話 ヤオ子と第二の師匠[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[6] 第6話 ヤオ子の自主修行・豪火球編①[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[7] 第7話 ヤオ子の自主修行・豪火球編②[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[8] 第8話 ヤオ子の悲劇・サスケの帰還[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[9] 第9話 ヤオ子とサスケとサクラと[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[10] 第10話 ヤオ子と写輪眼[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[11] 第11話 ヤオ子の自主修行・必殺技編①[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[12] 第12話 ヤオ子の自主修行・必殺技編②[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[13] 第13話 ヤオ子の自主修行・必殺技編③[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[14] 第14話 ヤオ子の自主修行・必殺技編④[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[15] 第15話 ヤオ子の自主修行・必殺技編⑤[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[16] 第16話 ヤオ子とサスケと秘密基地[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[17] 第17話 幕間Ⅰ[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[18] 第18話 ヤオ子のお見舞い①[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[19] 第19話 ヤオ子のお見舞い②[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[20] 第20話 ヤオ子のお見舞い③[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[21] 第21話 ヤオ子の体術修行①[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[22] 第22話 ヤオ子の体術修行②[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[23] 第23話 ヤオ子の中忍試験本戦・観戦編[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[24] 第24話 ヤオ子の中忍試験本戦・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[25] 第25話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅護衛編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[26] 第26話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅壊滅編[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[27] 第27話 幕間Ⅱ[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[28] 第28話 ヤオ子の新生活①[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[29] 第29話 ヤオ子の新生活②[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[30] 第30話 ヤオ子の新生活③[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[31] 第31話 ヤオ子の下忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[32] 第32話 ヤオ子の下忍試験・実技試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[33] 第33話 ヤオ子の下忍試験・サバイバル試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[34] 第34話 ヤオ子の下忍試験・試験結果編[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[35] 第35話 ヤオ子とヤマトとその後サスケと[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[36] 第36話 ヤオ子の初任務[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[37] 第37話 ヤオ子の任務の傾向[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[38] 第38話 ヤオ子の任務とへばったサスケ[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[39] 第39話 ヤオ子の初Cランク任務①[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[40] 第40話 ヤオ子の初Cランク任務②[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[41] 第41話 ヤオ子の初Cランク任務③[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[42] 第42話 ヤオ子の初Cランク任務④[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[43] 第43話 ヤオ子の初Cランク任務⑤[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[44] 第44話 ヤオ子の憂鬱とサスケの復活[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[45] 第45話 ヤオ子とサスケの別れ道[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[46] 第46話 幕間Ⅲ[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[47] 第47話 ヤオ子と綱手とシズネと[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[48] 第48話 ヤオ子と、ナルトの旅立ち[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[49] 第49話 ヤオ子と第七班?①[熊雑草](2013/09/21 21:50)
[50] 第50話 ヤオ子と第七班?②[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[51] 第51話 ヤオ子の秘密[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[52] 第52話 ヤオ子とガイ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[53] 第53話 ヤオ子と紅班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[54] 第54話 ヤオ子とネジとテンテンと[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[55] 第55話 ヤオ子とアスマ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[56] 第56話 ヤオ子と綱手の顔岩[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[57] 第57話 ヤオ子とサクラの間違った二次創作[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[58] 第58話 ヤオ子とフリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[59] 第59話 ヤオ子と続・フリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[60] 第60話 ヤオ子と母の親子鷹?[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[61] 第61話 ヤオ子とヒナタ班[熊雑草](2013/09/21 21:56)
[62] 第62話 ヤオ子と一匹狼①[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[63] 第63話 ヤオ子と一匹狼②[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[64] 第64話 幕間Ⅳ[熊雑草](2013/09/21 21:59)
[65] 第65話 ヤオ子とヤマトの再会[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[66] 第66話 ヤオ子とイビキの初任務[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[67] 第67話 ヤオ子の自主修行・予定は未定①[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[68] 第68話 ヤオ子の自主修行・予定は未定②[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[69] 第69話 ヤオ子の自主修行・予定は未定③[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[70] 第70話 ヤオ子と弔いとそれから……[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[71] 第71話 ヤオ子と犬塚家の人々?[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[72] 第72話 ヤオ子とカカシの対決ごっこ?[熊雑草](2013/09/21 22:03)
[73] 第73話 ヤオ子の居場所・日常編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[74] 第74話 ヤオ子の居場所・異変編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[75] 第75話 ヤオ子の居場所・避難編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[76] 第76話 ヤオ子の居場所・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[77] 第77話 ヤオ子の居場所・救助編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[78] 第78話 ヤオ子の居場所・死守編[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[79] 第79話 ヤオ子がいない①[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[80] 第80話 ヤオ子がいない②[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[81] 第81話 幕間Ⅴ[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[82] 第82話 ヤオ子の自主修行・性質変化編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[83] 第83話 ヤオ子の自主修行・能力向上編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[84] 第84話 ヤオ子の自主修行・血の目覚め編[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[85] 第85話 ヤオ子の旅立ち・お供は一匹[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[86] 第86話 ヤオ子とタスケの口寄せ契約[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[87] 第87話 ヤオ子の復活・出入り禁止になった訳[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[88] 第88話 ヤオ子のサスケの足跡調査・天地橋を越えて[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[89] 第89話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ①[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[90] 第90話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ②[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[91] 第91話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ③[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[92] 第92話 ヤオ子のサスケの足跡調査・状況整理[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[93] 第93話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁①[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[94] 第94話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁②[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[95] 第95話 ヤオ子とサスケの新たな目的[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[96] 第96話 ヤオ子と小隊・鷹[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[97] 第97話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・マダラ接触編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[98] 第98話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[99] 第99話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・深夜の会話編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[100] 第100話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦開始編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[101] 第101話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・奪還編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[102] 第102話 ヤオ子とサスケの向かう先①[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[103] 第103話 ヤオ子とサスケの向かう先②[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[104] 第104話 ヤオ子とサスケの向かう先③[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[105] 第105話 ヤオ子とサスケの向かう先④[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[106] 第106話 ヤオ子の可能性・特殊能力編①[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[107] 第107話 ヤオ子の可能性・特殊能力編②[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[108] 第108話 ヤオ子と砂漠の模擬戦[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[109] 第109話 ヤオ子とイタチの葬儀[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[110] 第110話 ヤオ子とサスケの戦い・修行開始編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[111] 第111話 ヤオ子とサスケの戦い・修行編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[112] 第112話 ヤオ子とサスケの戦い・最後の戦い編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[113] 第113話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[114] 第114話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・サバイバルレース編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[115] 第115話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・本戦編[熊雑草](2013/09/21 22:22)
[116] 第116話 ヤオ子の八百屋[熊雑草](2013/09/22 01:07)
[117] あとがき[熊雑草](2010/07/09 23:40)
[118] 番外編・ヤオ子の???[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[119] 番外編・サスケとナルトの屋台での会話[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[120] 番外編・没ネタ・ヤオ子と秘密兵器[熊雑草](2013/09/21 22:24)
[121] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と①[熊雑草](2013/09/21 22:25)
[122] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と②[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[123] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と③[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[124] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第1話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[125] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第2話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[126] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第3話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[127] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第4話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[128] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第5話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[129] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第6話[熊雑草](2013/09/21 22:29)
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[13840] 第41話 ヤオ子の初Cランク任務③
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/21 21:46
 == NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==



 道なりの進路を無視し、広大な森林を飛び進む影がある。
 ヤマトは医療部隊の待機場所へと、瞬身の術で移動していた。


 「医療部隊は、まだ到着していないだろうな。
  薬も数が足りると思っているだろうから、予備にどれだけ持って来てくれているか……。
  ・
  ・
  足りない場合は、現地で調達するしかないか」


 依頼の情報が古いために起きた食い違い。
 必要な薬は予想よりも多く必要で、患者の様態も良くはない。
 ヤマトは依頼を途中で止めていたことに苛立ちを覚えながらも、可能な限りの速さで風のように木々の間を走り抜けた。



  第41話 ヤオ子の初Cランク任務③



 一方のヤオ子は、子供達の居る長屋を訪れていた。
 子供達は布団に苦しそうに臥せっていて、ヤオ子は今回の任務がただの任務ではないことを改めて理解した
 そのヤオ子の近くに、子供達の親達が近づき声を掛ける。


 「木の葉の方ですよね?」


 親の一人は、ヤオ子の腕の額当てを見て確認を取る。


 「はい。
  依頼を受けて来ました。
  あたしの先生が、既に別行動で医療部隊の方達と接触する手筈になっています。
  あたしは、皆さんがお仕事に出ている間、代わりを務めさせて貰います」


 Dランク任務が続き過ぎたせいか、元々が客商売を生業とする家のためか、ヤオ子の受け答えはしっかりとしたものだった。
 年齢と言葉遣いのギャップがあるが、今はこの言葉遣いが村の親達を安心させた。
 子供達の親から、次々と声を掛けられる。


 「後をお願いします」

 「うちの娘をお願いします」


 ヤオ子が『分かりました』と声を返すと、大人達は仕事に出て行った。
 入り口付近に残されたヤオ子は気合いを入れる。


 (さて、掴みが肝心ですね)


 ヤオ子は土間で靴を脱いで上がると、咳払いを一つ入れる。
 ヤオ子には子供達の好奇の目が集まっていた。


 「え~。
  お姉ちゃんは、皆さんを看病するために来た忍者です。
  はっきり言って凄いです」

 「…………」


 反応は、今一だった。


 「いえ、エロカッコイイです」

 「……ふ」


 子供達の誰かが声を漏らすと、ヤオ子はここで取っ掛かりから掴みに入る。


 「というわけで見てください」


 チャクラを練り上げ、ヤオ子は印を結ぶ。


 「影分身の術!」


 ヤオ子が五人に増え、同じ動きで会釈をすると、『お~』という声が響いた。
 影分身の術は、子供受けするらしい。


 「何でも言ってくださいね」


 影分身達が子供達の中に散ると、看病の任務が始まった。


 …


 影分身達は子供達のタオルを変えたり、トイレに付き添ったり、話し相手になったりと徐々に打ち解け始めた。
 やはり年齢が近い方が安心できる部分が大きいのだろう。
 大人達には遠慮して話せないことでも、ヤオ子になら話せるようだった。
 ヤオ子よりも、ずっと小さい子達は影分身のヤオ子を離さないでいた。


 (昔、弟の看病をしたのを思い出しますね。
  両親が八百屋の仕事をしている間、ずっとあたしが面倒を看たんです。
  病気になって、気が弱くなってるから甘えたがるんですよね)


 影分身のヤオ子の一人は、小さい子達に囲まれて完全に行動不能に陥っていた。
 そして、ヤオ子本体は子供達の中で一番年長の子の側に来ていた。


 「初めまして。
  あたしは木ノ葉に住む美少女、八百屋のヤオ子です」


 ヤオ子と同じ位の背に長い黒い髪の女の子は、上半身を起こすと微笑む。


 「美少女なの?」

 「はい。
  八歳です」

 「同い年だね。
  わたしは、サチ」

 「じゃあ、さっちゃんですね?」

 「うん。
  じゃあ、ヤオ子ちゃんだね?」

 「はい」


 ヤオ子とサチが笑い合う。


 「さっちゃんは退屈しませんか?」

 「病気で寝てばっかりで退屈。
  本当は、外でお花を見たいのに……」


 サチの言葉を聞いて、ヤオ子はポケットから毛糸の輪っかを取り出す。


 「こんなのは、どうですか?」


 ヤオ子の手の中で毛糸が何回か編まれると、サチに向けた掌の中に朝顔が咲いていた。


 「すごい……。
  とっても綺麗ね」

 「そうですか?
  もっと、出来ますよ」


 『フフフ……』と不適な笑い声を持たすと、ヤオ子は調子に乗り始める。
 ヤオ子の手の中で蠢く毛糸は、次々と花を咲かす。
 百合、チューリップ、薔薇、クロッカス、etc...。


 「ヤオ子ちゃんって器用なのね」

 「えへへ……。
  得意なんですよ」


 だが、この現象が起きているのはここだけではない。
 他の影分身のところでも同じ様に、あやとりに対する賛美の声がしていた。


 (やはり、同じ思考のコピー人間……。
  やるネタも同じです。
  しかし……。
  ・
  ・
  例え、影分身のあたしが相手でも!
  ここで一番の評価を得る!)


 ヤオ子の目がキュピーン!と光ると、更にグニグニと指が激しく動く。
 そして、釣られるように他の影分身四体の指も激しく動いていた。


 「さっちゃん!
  見てください!
  ・
  ・
  百花繚乱!」

 「何それ!?」

 『ストライク・フリーダムガンダム!』

 「お姉ちゃん、わからない!」

 『ネオ・ノーチラス号!』

 「それもわからない!」

 『エスターク!』

 「怪獣!?」

 『ラオウ!』

 「我が生涯に一片の悔いなし!」

 「『『『『ラオウは、知ってた!?』』』』」


 ラオウを作った影分身がガッツポーズをし、他の面々はがっくりと膝をついた。
 自分に負けたヤオ子に、励ますようにサチが声を掛ける。
 ヤオ子は励ます立場のはずだったのに……。


 「ヤ、ヤオ子ちゃん……。
  百花繚乱って?」

 「凄いんですよ……。
  季節関係なしに花が咲き乱れるんです……」


 ヤオ子が手の中のあやとりを見せる。


 「本当だ。
  桜と向日葵が一緒に咲いてる。
  ・
  ・
  何か分からない花も……」

 「ラフレシアです」

 「何それ?」

 「世界一臭い花です」

 「…………」


 サチが苦笑いを浮かべたあと、ヤオ子に手を開く。


 「私にも教えて」

 「いいですよ」


 ヤオ子が毛糸の輪っかを指から外した時、サチが咳き込む。
 ヤオ子は急いでサチの背中を擦った。


 「大丈夫ですか?」

 「……ごめんね」

 「謝らなくていいです。
  温かくしておきましょう」


 サチを寝かせて、ヤオ子が布団を掛け直す。


 「あやとり……。
  教えて欲しかったな」

 「病気が治ったら、いつでも」

 「約束ね」

 「はい。
  指切りです」


 ヤオ子が小指を差し出すと、サチは自分の小指を絡め、二人は指切りをする。
 指切りを終えるとヤオ子は辺りを見回し、他の子供達の様子を確認する。


 (さっちゃんに堰が出たということは、そろそろお薬の時間なのかな?
  容量用法っていうのがあるから、適当にお薬をあげるわけにはいかないです)


 ヤオ子はサチに訊ねる。


 「さっちゃん。
  お薬は飲んでいますか?」


 サチは、首を振る。


 「いつからですか?」

 「もう、随分飲んでないわ」

 「どうして!?」

 「薬屋さんが処方してくれた薬を飲むと良くなるんだけど、
  その薬屋さんが、1ヶ月間を空けて来てないの。
  それに薬を飲むと良くなるんだけど、
  また暫くして体調が悪くなって薬屋さんを呼ぶことになるの」

 (薬は飲んでた……。
  そして、薬売りが去ってから悪くなる……。
  ・
  ・
  それって変じゃないですか?
  だって、薬売りは居ないんですよ?
  ・
  ・
  じゃあ、村の中に仲間が居て毒を……。
  もう少し情報が必要です)

 「薬屋さんは、どんな人なんですか?」

 「初めて会う子には、お菓子をくれるの」

 「お菓子?」

 (それに毒が?
  でも……)

 「初めしかくれないんですか?」

 「うん。
  子供って苦い薬が嫌いでしょ?
  最初の……餌付け?」


 ヤオ子は項垂れる。


 「さっちゃん。
  餌付けとは言わないですよ……。
  ・
  ・
  まあ、苦手意識を取るために最初は薬とお菓子をあげると」

 「そう」

 (別に怪しくないか……)

 「本当は、お菓子も必要ないんだけどね。
  お薬は椎茸の味でしょ?
  だから、皆、飲めるの。
  ・
  ・
  まあ、中にはキノコ嫌いの子も居るけど」

 「薬屋さんは工夫しているんですね」

 「うん。
  わたしは、好きだな。
  あの薬屋さん」

 「そうですか」


 サチの話を聞くだけだと、特にその薬売りに怪しそうな点は見つからない。
 ヤオ子は、今度は病気になった時期を確認することにした。


 「ここに居る子は、皆、同じ時期に病気になったんですか?」

 「ううん。
  あたしを含めた五人が最初」

 (これが依頼書の情報源ですか)

 「次に十八人……」

 「そんなに?」

 (一気に増えた……)


 が、子供達から『ちがーう』『そんなにいな~い』という声がする。


 「何人だったっけ?」

 「覚えてな~い」

 「…………」

 (やっぱり、子供ですね……)


 サチは、結構、天然だった。
 そして、ヤオ子の情報収集は、ここで終了した。


 …


 ヤオ子の看病が一段楽した頃……。
 待機場所で、ヤマトは無事に医療部隊と会うことが出来ていた。
 今回、接触はもう少し後になるはずのヤマトを不思議に思いながら、医療部隊の隊長が声を掛ける。


 「どうかなさいましたか?」

 「ちょっと、予想外の事態になりまして」

 「と、言いますと?」

 「持参した解毒薬では足りませんでした。
  情報と違い五人ではなく二十三人もの患者が居たんです」

 「そんなに……。
  予想以上の人数です。
  コハル様に、既に二倍の量を渡していたので事足りると……」

 「では、予備は……」

 「三つだけです」

 「そうですか。
  病人が全員子供なので2/3の量でいいのですが……。
  ・
  ・
  残りの1/3個とこれを合わせて五人分追加か。
  あと二人分足りない……」

 「どうしますか?」


 ヤマトは腕を組んで、顎の下に手を持っていく。


 「木ノ葉に戻るのが早いか……。
  新たな薬草を探すのが早いか……」


 悩むヤマトに、医療部隊の隊長が意見を述べる。


 「両方、行いましょう」


 ヤマトは顔をあげる。


 「我々の部隊の一人を木ノ葉に向かわせます。
  薬草の方をお願い出来ますか?」

 「だったら、皆さんも村に──。
  そうか……急に多人数が押しかけたら、気付かれるかもしれないか」

 「はい。
  相手が本当にただの薬売りならいいのですが、
  もしも、忍だった場合は……」

 「分かりました。
  部下に影分身を使える者が居ます。
  現地で手数を増やして対応します」

 「ええ、お願いします。
  では」


 医療部隊の隊長は部下達の居る方に戻り、木の葉へ新たな薬の手配の支持を始める。
 新たな方針が決まったヤマトは、医療部隊の持つ解毒薬を受け取って村へと走った。


 …


 夕方近く……。
 村で看病しているヤオ子は困っていた。
 解毒薬はあるが、数が足りていないのである。
 均等に配れない以上、誰かに行き渡らないことになる。
 その誰かを決めることが、ヤオ子は出来ないでいた。


 (困った……。
  困りました……。
  どうしよう……。
  どうしよう……。
  どうしようーっ!)


 ヤオ子が悶絶して悩んでいると、仕事を終えた大人達が長屋へと戻って来た。
 大人達は自分達の子供のところへと駆け寄り、邪魔になると思ったヤオ子は影分身を解いた。


 「あれ?」

 (担当した子供以外の情報が頭に入ってる……。
  へ~。
  影分身ってこんな利点があるんだ。
  今更ながら、気が付きました。
  ・
  ・
  と、そんなことよりも薬!
  薬売りは、来てないし……。
  どうせ捕まえるんだから、薬売りが来れば、ふん縛って奪い取れるのに!)


 ヤオ子の考えは、山賊まがいである。
 内面で焦り、眉間に皺を寄せるヤオ子に声が掛かる。


 「今日一日、ありがとうございました」

 「ん?」


 仕事から帰った大人達が、ヤオ子にお礼を言ってくれた。


 「気にしないでください」

 「ですが……。
  何か、美味しいものを貰ったって」

 「蜂蜜と金柑を合わせたヤツをお湯でといただけです。
  堰してたから……喉痛いでしょ?」

 「効くんですか?」

 「うちの弟には効きました。
  本を見て作ってやったんですけどね。
  味は、子供好みの味なんですよ」

 「そうなんですか」

 「こうなると思って用意してたんです。
  ・
  ・
  これです」


 ヤオ子は金柑の蜂蜜漬けのビンを取り出した。


 「へ~」


 大人達が珍しそうに見る。


 「ここ置いとくんで、喉痛がったらお湯に溶いてください」

 「ええ。
  そうします」

 「うちの弟の場合ですけど、
  ジュース代わりに飲みたがるんで、嘘は見破ってくださいね」


 大人達は笑いながら了解の返事を返す。


 「では、あたしは、村長さんのところに行って結果報告しますね」


 去り際にヤオ子はサチに手を振ると、サチも手を振り返す。
 ヤオ子は、村長宅へと向かった。


 …


 夕闇が迫る中で、ヤオ子は村長宅に到着する。


 「こんばんは~。
  お邪魔しま~す」


 扉を開けて上がり込むと、朝、通された部屋までヤオ子は歩く。
 村長は笑顔で迎えてくれた。


 「おお、確かヤオ子ちゃん」

 「はい」

 「ご苦労様でした」

 「いえいえ。
  薬売り……来ませんでしたね」

 「いや、いつも来るのは夜だよ」

 「まだ夕方か……って、あれ!?
  先生は!?
  うっかり薬売りが来てたら、あたしと鉢合わせですよ!」

 「それも、予定のうちでは?」


 ヤオ子は、頭に手を当てる。


 「まあ、そうなんですけど……。
  薬売りを捕まえるのはヤマト先生なんで、
  あたしが鉢合わせても、どうしていいか……」

 「困りましたね」

 「ええ、本当に……。
  ヤマト先生だけは、
  木ノ葉でも真っ当な人間だと思っていたのに……」

 「何の話だい?」


 ヤオ子のぼやきに後ろから声が返った。


 「ヤマト先生!
  何をのんびりと!」

 「のんびりしてたわけじゃないよ。
  薬を手に入れて来たんだ」


 ヤオ子はヤマトを指差す。


 「偉い!
  それ、困ってました!
  薬をあげたくてもあげれなかったんです!
  誰にあげていいか分かんないし!」

 「それがね……。
  あと、二人分足りなくて……」

 「オー マイ ガー!
  どうすんのーっ!?」


 ヤオ子が頭を抱えて絶叫した。


 「まず、落ち着いて。
  作戦を話すから」

 「チャキチャキお願いします」

 「分かってるよ。
  そろそろ薬売りが来るしね」

 「何で、夜来るって知ってんの?」

 「ボクは依頼書を読んだんだ」

 「そこまで、あたしに隠し立てする理由ある?」


 ヤマトは溜息を吐く。


 「全部、君のせいなんだけどね……。
  君が真面目に試験を受けてくれれば、
  実力を測るための隠し立てをする必要もなかったのに……」

 「何か今回の任務って、色々と含みがありますね?」

 「予想外の事態も、君が関わったからじゃないかと思えてしまうんだよな……。
  何かを悪化させるのが君の特徴みたいだし……」

 「いや、先生……。
  そんな言い方ないですよ……。
  まるであたしが死を呼ぶ死神みたいじゃないですか」

 「そういうつもりじゃないんだけどね。
  それはさて置き、作戦を言うよ」

 「はい」


 場に少し緊張した空気が流れる。


 「まず、薬について。
  今、医療部隊の一人が木ノ葉に戻っている」

 「じゃあ、直に数は揃う?」

 「ああ。
  でも、病の苦しみからは早く救ってあげたい」

 「うんうん」

 「そこで第一に薬売りを捕獲。
  そして、薬を奪取する」

 「薬草を採りに行かないの?」

 「症状が悪化しているようなら優先するけど……。
  そうでないなら、薬売りを捕まえてから取りに行っても大丈夫じゃないか?」


 ヤオ子は不満を顔に浮かべて否定する。


 「ヤダ」

 「……何で?」

 「確実性を優先するべきです。
  万が一が起きたら、どうするんですか?」

 「じゃあ、どうするの?」

 「あたしの影分身を取りに行かせます。
  今のチャクラの残量なら、影分身は五人出せます」

 「なるほど。
  いい判断だ。
  ボクも分身を出すから、その指示に従って」

 「はい。
  ・
  ・
  あ、もう一個いいですか?」

 「何だい?」

 「影分身って術を解くと、
  その子の情報があたしに還元されるみたいなんです」

 「そうなのかい?」


 ヤオ子は頷く。


 「目的の薬草を見つけたら、現地の何処かを拠点として術を解きます。
  そうすれば、あたしの影分身の見つけた薬草の数は、あたしからヤマト先生に伝わります。
  ヤマト先生から、ヤマト先生の分身に連絡出来ませんか?」

 「なるほど。
  そうすれば、ボクの分身の見つけた薬草の数を合わせて、
  無駄な時間を掛けずに戻れるわけだ」

 「はい」

 「でも、そんな面倒臭いことしなくても無線を使えば一発だ」

 「……あたし、無線持ってないです」

 「どうして?」

 「必要ないから支給されてません」

 (そうか……。
  雑用に無線はいらないか)

 「了解。
  ボクとボクの分身で無線のやり取りは出来るから、
  ヤオ子の連絡は、さっき言った手筈で行って」

 「分かりました」

 「じゃあ、薬草を採りに行かせよう」


 ヤマトは木分身で自分の分身を作り出し、ヤオ子は影分身を五体作り出す。


 「行動開始!」


 分身達は、村長宅を飛び出して薬草を取りに向かった。
 そこでヤオ子が手を突いてへたり込む。


 「どうしたの?」

 「少し無茶しました。
  身体エネルギーが足りなくなってきました……。
  子供達の相手するんで影分身を出したり消したりしてたから」


 村長がヤオ子を見て笑う。


 「さあ、夕飯にしましょう。
  そのままだと、薬売りが来た時に何も出来ませんよ」

 「あたしは大丈夫です。
  頑張るのはヤマト先生だから」

 「君ねぇ……」

 「でも、ご飯はいただきます」


 村長は可笑しそうに笑うと、夕飯の支度を始めた。


 …


 夕飯が始まり、純和風の食事をしながら会話が流れる。
 村長は賑やかな食事に、ほのぼのと呟く。


 「皆で食事をするのも久しぶりですな」

 「村長さんは、いつも一人なんですか?」

 「もう、爺ですからな。
  妻にも先立たれて一人です」

 「そうなんですか」

 「でも、一年前まではサチと一緒に食事をしていました。
  病気になってから、村の子供達と食事をしているんで、
  私は一人になってしまいましたが」

 「さっちゃんのところへ、押しかければいいのに」


 お茶碗を片手にヤマトが横槍の質問を入れる。


 「ヤオ子には、デリカシーがないのかい?」

 「何言ってんですか?
  尻の青いガキ相手に遠慮して、どうするんですか?」

 「君ねぇ……」

 「ん? でも……。
  何で、さっちゃんは村長さんと?」

 「あの子の両親は早くに亡くなって、私が面倒を見ていたんです」

 「へ~。
  だったら、やっぱり無理してでも会うべきですよ」

 「そうかね?」

 「はい。
  村長さんに甘えたいはずです」

 「そうか……」

 「ヤオ子。
  君もそういう時期なのかい?」


 ヤマトが、からかうつもりで質問する。


 「あたしは卒業しました。
  もう、親離れOKです」

 「本当かい?」

 「ええ。
  お父さんに甘えたあげく、
  コブラツイストを掛けられて意識を失ってからは、スキンシップを辞めました」

 「…………」

 (何で、いつも予想と違う変な答えが返ってくるんだ?)

 「スキンシップを辞めたせいか、うちの親は弟に甘いですね。
  過保護と言ってもいいかもしれません。
  あたしに嫌われたもんだから、弟に媚を売ってます」

 「どんな親子関係なんだ……」

 「仲が悪いのかい?」

 「いいえ。
  一年前にちゃんと腹割って話して和解してます」

 「君、八歳だよね?
  変に大人びてないか?」

 「親が馬鹿だと、子は育つもんなんです。
  前にも、うちの親が如何にアホか説明したでしょ?」

 「…………」


 ヤマトも村長も微妙な表情をしている。
 二人を置いて、ヤオ子は大切なことを思い出す。


 「そうだ。
  情報を交換しないと」

 「何の情報かね?」

 「ヤオ子が子供達と会話した情報です」


 ヤマトが村長に補足すると、ヤオ子が説明を始める。


 「薬売りについてですが、評判はいいです。
  さっちゃんは、薬売りが好きだって言ってました。
  他の子も同じ様に」

 「そうか。
  病気になった時期は?」

 「報告書にあった五人の病人というのが、最初に毒に侵された子供の数です。
  他は子供達の記憶が曖昧で分かりませんでした」

 「おかしいな」

 「報告、変でしたか?」

 「違う。
  やっぱり、子供しか毒に侵されていないことが、だ」


 ヤオ子は顎の下に指を立てる。


 「そうですね。
  報告以外に追加で毒に侵されたのが、子供だけっていうのも変だし……」

 「毒を盛る方法で子供だけ狙うなんて出来るのか?」

 「そういえば、一つ。
  興味深いことを聞きました」

 「ん?」

 「薬売りは、初めて会う子供達にはお菓子をあげるんです」

 「お菓子?」

 「子供って、大抵、薬嫌いだから、
  苦手意識をなくすための手段の一つみたいですけど」


 ヤマトは腕を組む。


 「う~ん。
  でも、その時だけは子供達の口に入るのか……」

 「でもね。
  さっちゃんの話だと、同じように口に入る、薬売りが処方した薬を飲んで治るんです。
  そして、去って暫くして体調が悪くなるんです」

 「どういうことかな?
  仲間が居て、薬売りが去った後に毒を盛るのか?
  もしくは、薬売りが何らかの仕掛けを残して子供達だけに毒を盛るのか?」

 「前者は、無理じゃないかと思うんですよね」

 「どうして?」

 「全国を回っているんでしょ?
  他でも同じ方法を取るなら、その村ごとに同じ仕込みが必要です。
  各村ごとの村人に成りすますって大変過ぎません?」

 「そうだね。
  仕掛けがあると考えるのが普通だ」

 「そこの調査が全然進んでないんです」

 「直ぐに問題が発生しちゃったから、調査する時間が確保できていないんだ。
  それは仕方ない。
  ・
  ・
  でも、薬売りを捕まえれば全て分かるはずだ」


 ヤオ子が箸を加えたまま少し考えたあと、ヤマトに質問する。


 「今更ですけど。
  薬売りが犯人じゃないってこと……ありませんよね?」

 「どうして?」

 「いや、あたし達って里の予想の下に動いているんですけど、
  もし、それが間違いだったら、
  薬売りは無実の罪で捕まえたことになります。
  ・
  ・
  冤罪事件発生?」

 「しかし、薬売りが確認された村で、同じ症状が出るのは変だろう?」

 「分かりませんねぇ」

 「証拠も見つけないといけないしね」

 「この際、子供達が優先ですから、
  薬売りのジジイ一人、間違いで痛い目を見てもいいんじゃないんですか?」

 「君、悪魔みたいな奴だな」

 「ヤマト先生って、
  あたしの悪口ばっかしか言いませんよね?」

 「君が包み隠さずに平然と言い切るからだよ」


 村長は、ヤオ子とヤマトの会話を可笑しそうに聞いていた。


 「お二人は、変わった師弟関係ですな」

 「そうなんです」


 ヤマトが疲れた顔で答えた。
 一方のヤオ子は、ケラケラと笑っている。


 「嫌ですね~。
  先生ったら」


 ヤマトが溜息を吐いた。


 「そろそろ夕闇が降りる。
  準備をするよ」

 「はい。
  作戦をお願いします」

 「君は、看病を続ける」

 「はい」

 「ボクは子供達の居る長屋の入り口の死角──つまり、薬売りから見えない場所から木遁忍術で拘束する」


 ヤオ子が片手をあげる。


 「あの……。
  薬売りから死角になってたら、ヤマト先生も見えないんじゃ……」

 「そうだ。
  だから、君がボクの目になってくれ」

 「あたしが合図を出すの!?」

 「君、ハンドシグナルを出せるだろう」

 「何で、知ってんの!?」

 「アンコさんと話してたよ」

 (そうか……。
  あの試験の結果報告の時にヤマト先生も居たんだった……)


 ヤオ子は納得すると、改めて話を続ける。


 「ところで……。
  ヤマト先生の木遁忍術? 見せてください。
  訳の分からないものに合図なんて出せないです」

 「そうだね。
  ヤオ子には僕の木遁忍術を見せておこう。
  ・
  ・
  じゃあ、君を拘束するよ」


 印を結ぼうとしたヤマトに、ヤオ子は手で待ったを掛けた。


 「食べ終わったからいいですけど……。
  お膳を下げてから縛ってくださいよ」


 ヤマトは村長が居るのを思い出すと、照れ笑いを浮かべた。


 「そうだったね。
  忘れてたよ」


 夕飯の後片付けは、ヤオ子が三人分のお膳を台所に下げた。
 村長は『自分がやる』と言ったが、ヤオ子は笑いながら自分で受け持った。
 そして、回復した身体エネルギーを使い、早速、影分身を一体出すと洗い物を任せて戻る。


 「じゃあ、さっきの続きをお願いします」

 「うん。
  行くよ」


 ヤマトが印を結ぶと、体から木が伸びてヤオ子にからみつく。


 「おお!」


 木は意思を持つようにヤオ子の周りを一周して拘束した。


 「凄い。
  これ、後ろで手もガッチリ縛ってますよ」

 「伸びた先に対象が居れば拘束出来るから」

 「本当に合図だけで何とかなりそうです。
  木遁か……。
  あたしも覚えようかな?」

 「無理だと思うよ」


 微笑むヤマトに、ヤオ子は首を傾げる。


 「何で?」

 「まだ、早いということだ」


 ヤオ子は溜息を吐く。


 「サスケさんは写輪眼を持ってるし……。
  何か周りがエリートだらけで嫌になりますね」

 (君も相当特殊だと思うけどね……。
  いい意味でも悪い意味でも……)


 ヤオ子の拘束を解いて、ヤマトがヤオ子を見る。


 「じゃあ、作戦を開始しようか」

 「はい!
  ・
  ・
  村長さん、ご馳走様。
  ご飯、ありがとうございました。
  ほら、先生もお礼言わないと」

 「そうだっだ。
  ご馳走様です。
  ありがとうございました」

 「いえいえ。
  お粗末様。
  これから、よろしくお願いしますね」


 ヤマトとヤオ子は薬売り捕獲のため、子供達の居る長屋へと向かった。


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