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No.13840の一覧
[0] 【ネタ・完結】NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~[熊雑草](2013/09/21 23:12)
[1] 第1話 八百屋のヤオ子[熊雑草](2013/09/21 21:27)
[2] 第2話 ヤオ子のチャクラ錬成[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[3] 第3話 ヤオ子の成果発表[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[4] 第4話 ヤオ子の投擲修行[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[5] 第5話 ヤオ子と第二の師匠[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[6] 第6話 ヤオ子の自主修行・豪火球編①[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[7] 第7話 ヤオ子の自主修行・豪火球編②[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[8] 第8話 ヤオ子の悲劇・サスケの帰還[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[9] 第9話 ヤオ子とサスケとサクラと[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[10] 第10話 ヤオ子と写輪眼[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[11] 第11話 ヤオ子の自主修行・必殺技編①[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[12] 第12話 ヤオ子の自主修行・必殺技編②[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[13] 第13話 ヤオ子の自主修行・必殺技編③[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[14] 第14話 ヤオ子の自主修行・必殺技編④[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[15] 第15話 ヤオ子の自主修行・必殺技編⑤[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[16] 第16話 ヤオ子とサスケと秘密基地[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[17] 第17話 幕間Ⅰ[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[18] 第18話 ヤオ子のお見舞い①[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[19] 第19話 ヤオ子のお見舞い②[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[20] 第20話 ヤオ子のお見舞い③[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[21] 第21話 ヤオ子の体術修行①[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[22] 第22話 ヤオ子の体術修行②[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[23] 第23話 ヤオ子の中忍試験本戦・観戦編[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[24] 第24話 ヤオ子の中忍試験本戦・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[25] 第25話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅護衛編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[26] 第26話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅壊滅編[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[27] 第27話 幕間Ⅱ[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[28] 第28話 ヤオ子の新生活①[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[29] 第29話 ヤオ子の新生活②[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[30] 第30話 ヤオ子の新生活③[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[31] 第31話 ヤオ子の下忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[32] 第32話 ヤオ子の下忍試験・実技試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[33] 第33話 ヤオ子の下忍試験・サバイバル試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[34] 第34話 ヤオ子の下忍試験・試験結果編[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[35] 第35話 ヤオ子とヤマトとその後サスケと[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[36] 第36話 ヤオ子の初任務[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[37] 第37話 ヤオ子の任務の傾向[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[38] 第38話 ヤオ子の任務とへばったサスケ[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[39] 第39話 ヤオ子の初Cランク任務①[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[40] 第40話 ヤオ子の初Cランク任務②[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[41] 第41話 ヤオ子の初Cランク任務③[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[42] 第42話 ヤオ子の初Cランク任務④[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[43] 第43話 ヤオ子の初Cランク任務⑤[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[44] 第44話 ヤオ子の憂鬱とサスケの復活[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[45] 第45話 ヤオ子とサスケの別れ道[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[46] 第46話 幕間Ⅲ[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[47] 第47話 ヤオ子と綱手とシズネと[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[48] 第48話 ヤオ子と、ナルトの旅立ち[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[49] 第49話 ヤオ子と第七班?①[熊雑草](2013/09/21 21:50)
[50] 第50話 ヤオ子と第七班?②[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[51] 第51話 ヤオ子の秘密[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[52] 第52話 ヤオ子とガイ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[53] 第53話 ヤオ子と紅班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[54] 第54話 ヤオ子とネジとテンテンと[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[55] 第55話 ヤオ子とアスマ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[56] 第56話 ヤオ子と綱手の顔岩[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[57] 第57話 ヤオ子とサクラの間違った二次創作[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[58] 第58話 ヤオ子とフリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[59] 第59話 ヤオ子と続・フリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[60] 第60話 ヤオ子と母の親子鷹?[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[61] 第61話 ヤオ子とヒナタ班[熊雑草](2013/09/21 21:56)
[62] 第62話 ヤオ子と一匹狼①[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[63] 第63話 ヤオ子と一匹狼②[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[64] 第64話 幕間Ⅳ[熊雑草](2013/09/21 21:59)
[65] 第65話 ヤオ子とヤマトの再会[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[66] 第66話 ヤオ子とイビキの初任務[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[67] 第67話 ヤオ子の自主修行・予定は未定①[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[68] 第68話 ヤオ子の自主修行・予定は未定②[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[69] 第69話 ヤオ子の自主修行・予定は未定③[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[70] 第70話 ヤオ子と弔いとそれから……[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[71] 第71話 ヤオ子と犬塚家の人々?[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[72] 第72話 ヤオ子とカカシの対決ごっこ?[熊雑草](2013/09/21 22:03)
[73] 第73話 ヤオ子の居場所・日常編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[74] 第74話 ヤオ子の居場所・異変編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[75] 第75話 ヤオ子の居場所・避難編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[76] 第76話 ヤオ子の居場所・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[77] 第77話 ヤオ子の居場所・救助編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[78] 第78話 ヤオ子の居場所・死守編[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[79] 第79話 ヤオ子がいない①[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[80] 第80話 ヤオ子がいない②[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[81] 第81話 幕間Ⅴ[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[82] 第82話 ヤオ子の自主修行・性質変化編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[83] 第83話 ヤオ子の自主修行・能力向上編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[84] 第84話 ヤオ子の自主修行・血の目覚め編[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[85] 第85話 ヤオ子の旅立ち・お供は一匹[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[86] 第86話 ヤオ子とタスケの口寄せ契約[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[87] 第87話 ヤオ子の復活・出入り禁止になった訳[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[88] 第88話 ヤオ子のサスケの足跡調査・天地橋を越えて[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[89] 第89話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ①[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[90] 第90話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ②[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[91] 第91話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ③[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[92] 第92話 ヤオ子のサスケの足跡調査・状況整理[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[93] 第93話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁①[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[94] 第94話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁②[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[95] 第95話 ヤオ子とサスケの新たな目的[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[96] 第96話 ヤオ子と小隊・鷹[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[97] 第97話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・マダラ接触編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[98] 第98話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[99] 第99話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・深夜の会話編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[100] 第100話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦開始編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[101] 第101話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・奪還編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[102] 第102話 ヤオ子とサスケの向かう先①[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[103] 第103話 ヤオ子とサスケの向かう先②[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[104] 第104話 ヤオ子とサスケの向かう先③[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[105] 第105話 ヤオ子とサスケの向かう先④[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[106] 第106話 ヤオ子の可能性・特殊能力編①[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[107] 第107話 ヤオ子の可能性・特殊能力編②[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[108] 第108話 ヤオ子と砂漠の模擬戦[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[109] 第109話 ヤオ子とイタチの葬儀[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[110] 第110話 ヤオ子とサスケの戦い・修行開始編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[111] 第111話 ヤオ子とサスケの戦い・修行編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[112] 第112話 ヤオ子とサスケの戦い・最後の戦い編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[113] 第113話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[114] 第114話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・サバイバルレース編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[115] 第115話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・本戦編[熊雑草](2013/09/21 22:22)
[116] 第116話 ヤオ子の八百屋[熊雑草](2013/09/22 01:07)
[117] あとがき[熊雑草](2010/07/09 23:40)
[118] 番外編・ヤオ子の???[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[119] 番外編・サスケとナルトの屋台での会話[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[120] 番外編・没ネタ・ヤオ子と秘密兵器[熊雑草](2013/09/21 22:24)
[121] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と①[熊雑草](2013/09/21 22:25)
[122] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と②[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[123] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と③[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[124] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第1話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[125] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第2話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[126] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第3話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[127] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第4話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[128] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第5話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[129] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第6話[熊雑草](2013/09/21 22:29)
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[13840] 第33話 ヤオ子の下忍試験・サバイバル試験編
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/21 21:42
 == NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==



 精神的ダメージから回復したカカシが立ち上がると、カカシがアンコに話し掛ける。


 「オレとヤマトは、ここまでだ。
  この後は、明日の再試験のための前倒しの任務があるからな」

 「分かったわ。
  じゃあ、後は任せて」


 アンコが返事を返すと、カカシとヤマトが煙と共に姿を消した。



  第33話 ヤオ子の下忍試験・サバイバル試験編



 第三演習場に、ヤオ子とアンコが残される。
 ヤオ子が変化したままのアンコを見る。


 「アンコさんが試験するの?」

 「そうよ」

 「下忍でしょ?」


 アンコがにこりと笑うと変化を解く。


 「第三試験官のみたらしアンコよ」


 現れた大人の女性にヤオ子が驚く。
 そして、上から下まで舐め回すようにアンコを見る。
 ヤオ子が見る限り、ナイスバディのお姉さんだった。
 チラリズムを誘うミニスカートも高得点だった。


 「えへへ……」

 「な、何よ?」

 「何でもないです」


 アンコは分からない身に危険を感じて、少しヤオ子に後退りする。
 捕食モードを解いたヤオ子が、アンコに質問する。


 「試験って、ここでやるの?」

 「いいえ。
  私の試験は、もっと広い場所が必要だからね。
  移動するわよ」

 (ここの演習場よりも広い場所が必要って……。
  試験を受けるのも一人なのに、何するんだろ?)


 アンコに続いて、ヤオ子は第四十四演習場死の森へと移動することになった。


 …


 第四十四演習場……。
 そのあまりの大きさに、ヤオ子は呆然としている。


 「木ノ葉って土地あるんですね……」

 「何を呆けてるの?
  これから、あんたが入るのよ」

 「……は?」

 「ここは、第四十四演習場。
  別名死の森と呼ばれているわ」

 「四乃森?
  ・
  ・
  蒼紫様のことですか?」

 「誰よ、それ?」

 「御庭番衆御頭です」

 「知らないわよ!
  そもそも、あんた勘違いしてるわ!」


 アンコがガリガリと地面に『死の森』と字を書く。


 「ああ……。
  死の森か……。
  ・
  ・
  何なんですか?
  この冴えないネーミングセンスは?」


 ヤオ子の返事に、アンコがクナイを投げつけた。
 それをヤオ子はプイと躱した。
 すると、今度はクナイが二本投げつけられた。


 「ひィ!」

 「一回避けたら二本投げるから♪」

 「何なんですか!
  その心を折るような天体戦士的なセリフは!?
  『一回避けたら二回ボコるから』って、回想が頭を過ぎりましたよ!」


 アンコのクナイが再び飛ぶとヤオ子の頬をかすめる。


 「あんまりはしゃぐと死ぬわよ。
  中忍試験でも同じ様にはしゃいでいた子が居たわ。
  ・
  ・
 (死んでないけど)
  ・
  ・
  真っ先に死んじゃうわよ?
  私の大好きな赤い血をぶちまいてね♪」


 瞬身の術で姿を消すとアンコはヤオ子の背後に回り、ヤオ子の左の頬に流れる血を舐め取る。
 ヤオ子は震えていた。


 (ウフフ……。
  震えちゃって可愛──)


 と、そう思ったのも束の間。
 ヤオ子はクリンと顔を左に回すとアンコの唇を奪う。


 「ん……むう!」


 更に舌を入れた。
 アンコのグーが、ヤオ子に炸裂する。


 「何すんのよ!」


 しかし、ヤオ子は地面に減り込んで返事を返せない。
 アンコが例によってポニーテールを掴んで引っこ抜く。


 「この馬鹿ガキ!」

 「だって……。
  アンコさんから、いきなり積極的なアプローチを……」

 「ハァ!?」

 「思わず興奮して震えてしまいましたよ♪」

 (恐怖で竦んだんじゃなくて興奮してたのか……)


 アンコの目の前でクネクネと悶える奇妙な生物は、両手を頬に当てはにかんでいる。


 「アンコさんって美人で中々のエロボディだし。
  あたしの捕食テリトリーの住人なんですよ」


 手の中で吊るされて悶える奇妙な生き物に、アンコは背筋が寒くなった。


 「でも……。
  今、一番の狙いはヒナタさんなんです♪」

 「日向家に手を出すな……」

 「分かってますよ。
  内蔵を持って行かれたくないですからね」


 アンコがドッと疲れて手を放し、ヤオ子に奪われた唇を拭う。


 「最悪……」

 「自分から迫ったくせに」

 「もう絶対やらないわ……」

 「あたしは、いつでも準備オッケーです」

 「あんたの顔も見たくない……」

 「思い出すと興奮しちゃいますもんね♪」

 「するか!」


 アンコのグーが、ヤオ子に炸裂する。


 「痛いですねぇ。
  何で、そんなにポンポン殴るんですか?
  あたしに、Mに目覚めて貰いたいんですか?」

 「それ以上、変態を極めるな!」

 「まあ、いいです」

 (流しやがった……)


 かつて、これほどまで間髪入れずに突っ込まされたことがあっただろうか?
 いや、ない……。
 その奇妙な生物はアンコに質問する。


 「で?
  何するの?」


 アンコが咳払いをして気を取り直す。
 結局、取り直せなかったが……。


 「あんたには、この森の中央に立つ塔を目指して貰う。
  当然、下忍になる前の子に到達は無理だと思っているわ」

 「どれぐらいでギブアップすると思います?」

 「いいとこ、四、五時間じゃない?」

 「そんな危険なところに
  いたいけな子供を?」

 「別にあんたは死んでも構わないわ。
  っていうか、寧ろ死ね?」

 「オイ!」

 「半分冗談よ」

 (……笑うとこなのか?)

 「監視に中忍が二人付くから、ギブアップの時は叫びなさい。
  監視役を通して私に連絡が行くから」

 「なるほど」


 その時、アンコの後ろの森の中を何かが過ぎった。
 ヤオ子は死の森を指差す。


 「何か……今、信じられないぐらい
  大きい猫が過ぎったんですけど?」

 「虎じゃない?」

 「……虎って」

 「他にも巨大ヒルとか居るから」

 「ここキメラの実験場じゃないの?」

 「大丈夫よ。
  ちゃんと監視してるから」

 「そ、そうですよね」


 ヤオ子は恐怖を笑って誤魔化す。
 そこで、アンコが何かを前に出す。


 「はい♪」

 「何ですか?
  この紙切れ?」


 ヤオ子は、それを受け取ると読み上げる。


 「同意書?」

 「死ぬかもしれないからね。
  同意を取っとかないと私の責任になっちゃうからさ~♪」


 その言葉にヤオ子はギンッ!と目を吊り上げ、問答無用で同意書を破り捨てた。


 「責任持って保護しろ!」

 「アァ!?
  あんた試験官に逆らう気?」

 「当たり前だ!
  もっと安全な演習場選べ!」

 「何でよ!」

 「前々から思ってたけど!
  お前ら、馬鹿だろ!」


 アンコのグーが、ヤオ子に炸裂する。


 「何で、馬鹿なのよ!」

 「主旨を考えろ!
  今回、お手伝いの下忍を入れて、
  里の力を元に戻すために現下忍を育てるテコ入れでしょう!
  なのに!
  お手伝いする下忍を殺して……どうするんだ!」

 「も、尤もな意見ね……」

 「当たり前だ!
  お前ら忍者の頭が普通のネジを外して、
  ドSのネジを締め直して構成されているから、
  こんな単純なことにも気付かないんだ!」


 アンコのグーが、ヤオ子に炸裂する。


 「あんた、言葉を選びなさいよ!
  仮にも、私は試験官なのよ!」

 「なら!
  ちゃんと、あたしを納得させてから威張れ!」


 アンコのグーが、ヤオ子に炸裂する。


 「あ~~~!
  うるさいわね!
  スタートよ!
  さっさと森に入りなさい!」

 「何処から!」


 アンコはヤオ子を担ぐと、金網の上に放り投げる。


 「げふ!」


 金網を越えて落下したヤオ子が地面にキスをする。


 「はい!」


 アンコは、更に地図を放り投げる。


 「痛っ!」


 ヤオ子の頭に地図が当たった。


 「じゃあ、がんばってね~」


 ヤオ子を死の森に捨てると、アンコは姿を消した。
 試験官のアンコは死の森の塔で監視するため、ヤオ子とは別ルートで塔へ向かったのであった。


 …


 一分後……。
 ヤオ子がのそのそと起き上がる。
 そして、胡坐を掻いて地面に転がる地図を拾い上げる。


 「あのアマ……。
  いつか絶対に乳を揉んでやります。
  ・
  ・
  これが地図か……。
  塔まで10キロ……。
  どうしようかな?
  ・
  ・
  ん?
  ・
  ・
  はは……。
  考えるまでもないです。
  飲み水確保して歩くなら、川沿いしかないじゃないですか。
  アンコさんは、何も渡さずにあたしを放り込んだんだし」


 ヤオ子は近くのゲートの番号と地図の位置を確認しながら、川までの位置を導き出す。


 「時計回りに歩けば、直ぐですね」


 地図を腰の道具入れに突っ込むと、ヤオ子はテクテクと歩き出した。


 …


 監視の忍二名が距離を置いてヤオ子を観察する。
 そして、無線で連絡を取り合う。


 『どうだ?』

 『金網を時計回りに移動している』

 『塔を目指していないのか?』

 『そうだ』

 『何でだ?』

 『…………』

 『オイ?』

 『アンコさんが装備一式渡し忘れたから、
  飲み水を確保するためと思われる』

 『…………』

 『渡し忘れたのか?』

 『渡し忘れた……』

 『…………』

 『相手は、下忍でもないのに?』

 『下忍でもないのに……』

 『…………』


 木の上で溜息が二つ漏れると、監視役の忍達はヤオ子を追った。


 …


 ヤオ子は目的の川まで辿り着くと、ホッと息を吐く。


 「良かった。
  地図は本物みたいです。
  偽物の地図を渡されて『これも試験の一環』って、
  言われたらどうしようかと思いましたよ」


 ヤオ子は川岸の横に成長した木に腰掛けて地図を見る。


 「ありがたいですね。
  川沿いを歩けば迷いません。
  とはいえ、暗くなって来てるから、
  夜をこの森で過ごすのは間違いないですね。
  ・
  ・
  川沿いを歩く利点は、もう一個あります。
  野生動物なんかは、水飲み場では草食動物も肉食動物も意外と仲良くしているんです。
  きっと、本能でルールが決まっているんでしょう。
  まあ、中には水場で狩りをする専門の動物もいますけど。
  ・
  ・
  本当は、ここがパンジャの森だと一番嬉しいんですけどね。
  ・
  ・
  あと、もう一点、気を付けなければいけません。
  夜行性の動物さんです。
  これの対策を取らないと……。
  夜は火を焚かない方がいいかな?
  ジャングルなんかの原住民の一つには、
  ライオンに気付かれないように火を焚かないらしいし……」


 ヤオ子は川の流れを暫く見つめ、溜息を吐いてピョンと腰掛けていた木から下りる。


 「歩きながら考えよう」


 ヤオ子は塔を目指して川に沿って歩き出した。


 …


 監視役の忍がヤオ子を観察して二時間が経とうとしていた。


 『…………』

 『何というか……運のいい子だな』

 『ああ。
  まだ、一回も凶暴な動物に会っていない』

 『このまま夜を迎えそうだな』

 『日が完全に沈みきる前にアンコさんから、
  一度連絡が入るだろう……』

 『了解。
  では、監視を続けよう』


 ヤオ子は運良く戦闘を行なわずに先へと進んでいた。


 …


 死の森の日が暮れ始める。
 鬱葱と茂る森の中ではなく割かし開けた川沿いのため、太陽の光はまだ届いている。
 しかし、普段は夕食時、ヤオ子のお腹も鳴る。


 「お昼も食べてないからなぁ……。
  まあ、人間二、三日食べなくても平気だから抜いてもいいけど。
  夜に火使うと目立つから、暗くなる前にご飯にしようかな?」


 ヤオ子が川を見る。


 「そろそろ、お魚さんも寝る時刻ですよね。
  皆、石の下に隠れちゃう」


 川には魚の姿が見えなかった。
 ヤオ子は落ちている手頃な太い棒を拾い上げる。


 「釣り人さんが居たら、非難される外法です」


 ヤオ子は川岸から助走をつけて飛び上がり、川の中の大石を思い切りぶっ叩く。
 川には振動で気絶した魚が三匹浮かぶ。
 族に言うガッチン釣法というやつである。


 「魚と人間の知恵勝負を否定するこのやり方……。
  釣り人が怒るわけです。
  でも、あたしは生きるために魚を採らねばなりません」


 川岸の大きな石に座り、ヤオ子はクナイを取り出して取った魚の腸を処理する。


 「中には腸の苦味が好きだって人も居るんですけどね。
  あたしは苦手です」


 処理した魚を洗った木に口から刺すと、それを地面に突き刺す。
 その辺の燃えやすそうな枯れ木を突き刺した魚の前にセットすると、魚を焼く準備は完了した。


 「猛れ! あたしの妄想力!」


 ヤオ子がチャクラを練り込み、印を結ぶ。


 (ラブ・ブレス! 失敗バージョン!)


 ヤオ子は豪火球の術が完成する前のヘロヘロバージョンで焚き火に点火して魚を焼く。
 暫くすると魚は油を滴らせながら、色をつけ始めた。


 「いい匂いですね。
  塩がないのが残念です」


 ヤオ子は、こんがりと焼けた魚を食べて夕食を終了した。


 …


 監視役がヤオ子を観察して感嘆の声を漏らす。


 『大したもんだ』

 『あの子、火遁を使えるんだな』

 『一応、イビキさんの報告書にありましたよ?』

 『そうだっけ?』

 『ただ……報告書に自爆したって書いてありましたけど……』

 『じば──』

 『…………』


 沈黙したところで、監視の忍達の無線に呼出しが入る。


 『もしもし? 私』

 『アンコさん。
  塔に着いたんですか?』

 『今さっきね。
  ・
  ・
  どう?』

 『順調……なんですかね?』

 『どうしたの?』

 『距離は、もう1/3程度進んでます』

 『あんた達の位置をこっちでも確認したわ。
  随分、早いわね?』

 『ええ。
  あの子、運良く今まで獣の類と遭遇していないんです』

 『本当?
  それじゃあ、試験にならないじゃない』

 『はい』

 『まあ、不慮の危機対策はおまけだから……いっか。
  本題のサバイバルの実力は?』

 『問題発生です』

 『緊急!?』

 『いいえ。
  もう取り返しがつきません』

 『何があったの?』

 『アンコさんが装備一式渡し忘れています』

 『へ?』

 『水筒も非常食も火を熾すマッチも……。
  あと、その他諸々……』

 『……どうしよっか?』

 『我々に聞きますか?』

 『…………』

 『あの子、どうしてる?
  ギブアップしちゃった?』

 『いいえ。
  逞しくやってます。
  自分で魚採って火まで点けて焼いて食べてました』

 『……計算通りだわ』

 『は?』

 『私は、あの子の実力を見越して装備を渡さなかったのよ』

 『…………』

 『言いわけとしては苦しいですね……』

 『アァ!?
  何か言った!?』

 『……何も』

 『そうなると……。
  あの子の戦闘能力を見たいわね』

 『どうしてですか?』

 『カカシが馬鹿やって、
  実技で何も見れなかったのよ』

 『は? 馬鹿……?』

 『ああ。
  こっちの話。
  ・
  ・
  あの作戦やってくれる?』

 『正直、気が進まないんですが?』

 『川の近くに居るのよね?
  だったら、私の考えた蟹怪人で!』

 (この人……本当に面白好きだよな。
  子供脅かすために自分で怪人まで設定して徹底させるんだから)

 『分かりました』

 『じゃあ、日が完全に暮れる前に実行して!
  あと、無線は常に入れて置きなさいよ!』

 『了解です』


 無線の会話を止めて、監視役の忍の一人がアンコの考えた蟹怪人に変化する。


 『じゃあ、川上からあの子に近づきます』

 『オッケ~♪』


 蟹怪人は溜息を吐くと川上に移動した。


 …


 一方のヤオ子は、食べ終わった魚の骨を川に向かって放り投げていた。


 「臭いが残っていると、動物が寄って来るかもしれませんからね」


 続いて、焚き火の後に砂を掛ける。


 「万が一にも火が残っていたら、
  森が火事になって、ここの動物さんが困りますからね。
  旅人のマナーです」


 ヤオ子がは臭いの残る場所を移動するため、塔のある川上に向けて歩き出す。
 暗くなり切っていない今なら、もう少し移動が可能なはずだ。
 そして、少し開けたところで、ヤオ子は未知の生物に遭遇した。


 「キシャ───ッ!」


 蟹怪人が奇声をあげてヤオ子に近づく。
 アンコは無線から音を聞いて笑みを漏らしていた。


 「キシャ───ッ!」

 「…………」

 「キシャ───ッ!」

 「…………」

 「キ、キシャ───ッ!」

 「…………」

 「キシャ───……」

 「…………」

 「キシャ──……」

 「…………」

 「キシャー……」

 「…………」

 「キシャ……」

 「…………」

 「しくしく……」

 「…………」


 …


 音だけしか伝わらないアンコに疑問符が浮かぶ。
 そアンコは沈黙に耐え切れず、別で待機している、もう一人の忍に連絡を入れた。


 『どうしたの!?
  成功!?
  上手い具合に泣いてんじゃない!?』

 『ええ……。
  泣いてます……。
  蟹怪人が……』

 『へ?』

 『あの子、恐ろしく冷めた目で蟹怪人を見ています。
  まるでゴミでも見るように……。
  ・
  ・
  凄く……可哀そうです。
  あ! 動きがあります!』


 アンコは無線の音声に耳を傾けた。


 …


 テクテクと蟹怪人に近づくと、蟹怪人の肩にヤオ子がポンと手を乗せる。


 「馬鹿じゃないの?」


 ピシッ!と蟹怪人とアンコと監視役の忍が固まる。


 「そのセンスはありませんよ……」

 「…………」

 「キ、キシャ───ッ!」

 「…………」

 「もう、いいですよ。
  無理しなくて……。
  どう……せ! 馬鹿な上司にやらされたんでしょ?」


 空気が凍りつく。
 ヤオ子の直ぐ近くで。
 そして、塔に居るアンコの近くで。


 「何? このありえない形状?
  少し考えれば分かるでしょ?
  足と腕をこんなにでかくして、どうやって水中で暮らすんですか?」


 蟹怪人はバタバタと動いて見せる。


 「試しに、その鋏を口まで持って行ってください」


 蟹怪人が鋏を口に運ぶが、鋏は口を通り越す。


 「馬鹿か!
  そんなんで、どうやってエサを口に運ぶんですか!」


 蟹怪人は体を使って必死に謝る。


 「これ考えた人……超ド級の馬鹿です!」


 ヤオ子の声に塔のアンコの額に青筋が浮かぶ。


 「間違いなく!
  馬鹿っぽさの臭いから、アンコさんですね。
  全く……冗談はドSな性格だけにして欲しいですよ。
  ・
  ・


 …


 死の森の塔……。
 この後も続くと思われた罵詈雑言の音声がブチッと切れる。


 「ごめん。
  無線が壊れちゃった」


 アンコは笑顔で無線機を握り潰した。


 「新しいのに変えてくれる?」

 「は、はい! 只今!」


 塔の中では、アンコの部下が急いで予備の無線機を取りに走っていた。


 …


 再び川の近く……。
 蟹怪人が固まっている。
 無線の音声がありえない音と共に切れた。


 「アンコさんがキレた───ッ!」


 蟹怪人が言葉を発した。


 「やっぱり、人間」

 「何てことをしてくれたんだ!?」

 「は?」

 「アンコさんを本気で怒らせたら
  とんでもないことになるんだぞ!?」

 「知りませんよ。
  そもそも浅はかな考えの下で馬鹿な姿を晒したのは、あんた達でしょ?」

 「君はアンコさんの恐ろしさを知らないから、
  そんな事が言えるんだ!」

 「うるさいですね。
  大人の揉め事は、自分達でちゃんと処分してくださいよ」

 「きっと酷い目に合わされる……」


 蟹怪人が手(鋏?)を着くと涙を流す。


 「大の大人が泣くな!
  それほどか!?
  それほどなのか!?」

 「…………」


 ヤオ子は溜息を吐く。


 「あなた、アンコさんに逆らえないでしょ?」


 蟹怪人が無言で頷く。


 「ガツンと言ってやったら?」


 蟹怪人は無言で首を振る。


 (何で、あたしが蟹の怪人を慰めなきゃいけないんだ……。
  ・
  ・
  そもそもアンコさんは、部下にどんなトラウマを植えつけた?)

 「仕方ないですね……」


 蟹怪人が潤んだ瞳でヤオ子を見る。


 「あたしが励ましてあげます。
  普段の恨みをこれで晴らすといいです」


 ヤオ子がチャクラを練り上げ、印を結ぶ。


 「おいろけの術!」


 蟹怪人の前で、ヤオ子は裸のアンコに変化した。


 「どうですか?」


 蟹怪人は固まっている。


 (少しアレンジを加えて励ましますか。
  多分、アンコさんはツンだから……)


 アンコに変化したヤオ子がゆっくりと近づくと、蟹怪人の頬を艶かしく撫でる。


 「ごめんね……。
  普段のあれは演技なの……。
  私……貴方が居ないとダメなの」


 ここで、ヤオ子は蟹怪人の首に手を回して胸を押し当てる。
 それを数回繰り返すと、蟹怪人は鼻血を拭いて気絶した。


 「ウブですね~」


 ヤオ子が変化を解く。


 「…………」


 目の前にはダクダクと鼻血をながして昇天する蟹怪人の姿……。
 ヤオ子はコリコリと額を掻く。


 「この人……どうしましょうか?」


 ヤオ子は蟹怪人を無視して辺りを見回す。


 「寝床つ~くろ」


 ヤオ子は蟹怪人とは会わなかったことにした。
 そして、現実逃避を含め、寝床作成のための手頃な木を集め始めた。


 …


 ヤオ子は木とツタを集めると組み合わせ縛り合わせる。
 そして、板状のものを作る。
 更に木を板に合わせ、目測で木の長さを合わせるとクナイで切り揃える。


 「材料は、こんなもんかな?」


 辺りの木を見回すと、一本の木に駆け寄る。


 「うん。
  枝も上にあるから足場もない。
  幹も割かし滑りやすそうですね」


 ヤオ子は作った材料を選んだ木の下に運ぶと、チャクラ吸着を利用して幹に吸い付いて登る。


 「ここの高さに寝床を作れば、
  夜でも動物に襲われないと思います」


 ヤオ子はクナイで木を差し込む穴を空けたりした後で材料をセットして寝床を作る。


 「簡易的なベランダみたいですね」


 作った寝床からは、鼻血を流している蟹怪人が見える。


 「動物が近寄って来た時は血の臭いに誘われて蟹の怪人から襲うから、
  あたしは二重の意味で安全ですね」


 ヤオ子は悪魔的発想をする。


 「それに川には気流が出来るはずだから、
  蟹怪人の血の臭いは川に乗って消えるはずです。
  故に動物は集まって来ないでしょう。
  ・
  ・
  じゃあ、おやすみです」


 ヤオ子は手作りの寝床で横になると眠りに着いた。


 …


 翌朝……。
 妙な息苦しさでヤオ子は目を覚ます。


 「きっつ~~~い!」


 ヤオ子が声をあげて拳を振り上げる。


 「こら! 暴れるな!」

 「ん?」


 ヤオ子の寝床には、見知らぬ忍が二人いる。


 「誰ですか?」

 「君の監視役だ!」

 「それが、何故?」

 「下を見ろ!」

 「へ?」


 ヤオ子は騒がしい下を覗く。
 下では血に飢えた猛獣が猛り狂っていた。


 「ちょっと!
  何で、こんなことになってるの!?」

 「血の臭いに誘われて来たんだ」

 「嘘!?
  だって、怪人の血は川の気流で流されるはずでしょ!?」


 もう一人の忍が手をあげる。


 「オレの鼻血……」

 「馬鹿か!? あんたら!?」

 「仕方ないだろう!
  普段、怒鳴ることしかしない美人上司が、
  いきなり優しく迫るんだから!」

 「お前らの好みにドストライクか!?
  木ノ葉の精神修行は、どうなってんだ!?」

 「そんなことより、どうする!?」

 「お前らで処理しろ!」

 「「出来るか!」」

 「じゃあ、お前ら囮になれ!
  その間にあたしが逃げるから!」

 「「ふざけるな!」」

 「下がダメなら、上は!?」

 「大蛇が居る!」

 「八方塞がりじゃないですか!?
  お前ら、バッと倒すいい術ないのか!?」

 「あんな巨大野生生物を倒せるか!?
  一体なら未だしも群れてんだぞ!」

 「もういい!
  ギブアップ!
  アンコさんを呼べ!」

 「それが……夜から無線が繋がらないんだ」

 「ハァ!?
  壊れたの!? 二人とも!?」

 (あと……。
  あたしは夜からの騒ぎに気付かなかったのか……)


 ちなみに、無線は塔で現在も調整中。
 もう少しで繋がる予定である。
 また、混乱しているヤオ子は影分身で囮を作ればいいことが頭から抜け落ちていた。


 「ええ~い!
  無線を寄こせ!
  あたしが掛ける!」

 「誰がやっても同じだよ……」

 「諦めるな!」


 ヤオ子は無線を受け取るとマイクに向かって叫ぶ。


 「アンコさん!
  聞こえてる!?
  ギブアップ!
  助けに来て!」

 「…………」


 イヤホンからは、何も聞こえない。


 「ダメだろ?」

 「壊れてんの?」

 「こっちじゃないと思う」

 「あ~~~!
  どうすれば!
  ・
  ・
  とりあえず、向こうに繋がるまで叫び続けます!」


 ヤオ子の精神はキレる寸前だった。


 …


 塔では、ようやく無線の取り替え終わろうとしていた。


 「旧式の大きなタイプの予備しかなかったので、
  付け替えるのに時間が掛かってしまいました」

 「いいわ。
  発信機の位置は変わってないし。
  多分、眠ってたんでしょ」

 「アンコさん……。
  今度は、気を付けてくださいね」

 「大丈夫。
  なるべく我慢する」

 「…………」


 アンコの部下が溜息を吐くと無線のスイッチを入れた。
 すると、直ぐにヤオ子の声が聞こえる。


 『ギブアップだって言ってんだろ!
  早く助けに来い!』


 緊急事態に塔の中がざわめく。


 『聞いてんのか!?
  ・
  ・
  この馬鹿!
  ドS!
  行き後れ!
  年増!
  アホ!
  オタンコナス!
  アバズレ!』


 ヤオ子の一言一言にアンコの怒りのボルテージは上がっていく。


 『あたしが死ぬだろ!』

 『『アンコさ~ん!』』


 無線からは、監視役の中忍の声も聞こえる。


 『返事しろ!
  緊急事態だって言ってんだ!
  大事な時に無線壊すって、どんだけ馬鹿なんだ!』

 『『アンコさ~ん!』』


 塔の中は、再び温度が下がっていく。
 そして、バキッ!という音がする。


 「直接、ぶん殴ってくる!」


 アンコが塔の一室を飛び出すと、無線機は黒い煙を上げて粉砕されていた。


 …


 三十分後……。
 驚異的な早さでアンコがヤオ子達のもとに駆けつけると、猛獣達がアンコの憂さ晴らしの暴力で次々と倒されていく。
 そして、この森の王者が誰なのかを認識させられた猛獣達は一匹残らず退散した。

 ヤオ子達は息を吐き出すと、ようやく地面に下りることが出来た。


 「重力を感じる……。
  地面って素晴らしい……」


 アンコのグーが、ヤオ子に炸裂した。


 「どういう状況だ!」

 「いったいな~~~!
  あたしのせいじゃないですよ!」

 「アァ!?」


 アンコの鋭い眼光に監視役二名の忍は、即座にその場で正座した。
 アンコがヤオ子のポニーテールを掴み、吊るし上げる。


 「何があったの?」


 アンコの顔は笑っている。


 「監視してんなら、ご存知でしょう?」

 「アクシデントで無線が壊れたの」

 「壊れた?
  壊したの間違いじゃないの?」


 アンコの顔が近づく。


 「いいえ……。
  壊れたのよ」

 「…………」


 ヤオ子はタラタラと汗を流すと、営業スマイルを浮かべる。


 「何をお聞きになりたいんでしたっけ?」

 「素直な子は大好きよ。
  ・
  ・
  蟹の怪人が出た後……。
  何があったのかしら?」

 「監視役の忍者さんが、
  鼻血を噴いて気絶しました」

 「それから?」

 「その鼻血の臭いに誘われて、
  猛獣が集まって、今に至ります」

 「ありがとう。
  よくわかったわ」

 「そうですか?
  えへへ……。
  ・
  ・
  じゃあ、開放して貰えます?」


 アンコは笑顔で首を振る。


 「まだ、監視役の忍者さんが
  鼻血を噴いて気絶した理由を聞いてないわ」

 「…………」


 ヤオ子は吊るされたまま、正座している忍に質問する。


 「……何て言おう?」

 「…………」


 アンコが笑顔でヤオ子の顔を自分に向かせる。


 「あんたが説明すればいいじゃない……。
  ありのまま……。
  包み隠さず……」

 「…………」

 「怒らない?」

 「なるべく」

 「…………」


 アンコが溜息を吐く。


 「不慮の事故でここで死ぬのと、
  話して生きているかもしれないのと……どっちがいい?」

 「……後者で」

 「じゃあ、話して」

 「怪人さんがですね……。
  アンコさんを怒らせたからって泣き出したんです。
  マジで……」

 「続けて」

 「それで……。
  あたしは仕方なく励ますことにしたんです」

 「優しいのね」

 「そこでおいろけの術を使って励ましたら、
  二人とも鼻血を出して気絶しちゃったというわけです」

 「話は、全て繋がったわ」


 ヤオ子は似非ら笑いを浮かべる。


 「ですよね?
  じゃあ、開放して貰えます?」

 「おいろけの術って?」

 「…………」


 ヤオ子が視線を背ける。


 「び、美女に化ける術です」

 「やって見せて」

 「…………」

 「早く」

 「あ!
  もう、チャクラがありません!」


 アンコのクナイが、ヤオ子の頭上を通り過ぎる。


 「今度は、額に刺さるかもね」


 ヤオ子が無言でチャクラを練ると印を結ぶ。


 「おいろけの術……」


 未だかつてないほど、気合いの入らないおいろけの術の後に裸のアンコが現れた。


 「この馬鹿ガキが───ッ!」


 アンコのグーが、ヤオ子に炸裂した。
 ヤオ子が地面に減り込むと、それと同時においろけの術も解ける。

 アンコがむんず!とヤオ子のポニーテールを掴み、力任せに引っこ抜く。


 「何してんだ! お前は!」

 「だって~……」

 「だってじゃない!」

 「そもそも、アンコさんがいけないんですよ」

 「アァ!?」

 「あの怪人で変なことしようとしたの、
  アンコさんじゃないんですか?」

 「う……」


 正座している忍二人もジト目でアンコを見ている。


 「あんなことしなければ、
  今頃、塔に着いていたかもしれないのに……」

 「あ、あれは!
  予定内のことよ!」

 「あの怪人の何が予定内なんですか!」


 ヤオ子の逆襲。


 「そ、それは……。
  そう!
  あんたのせいでカカシの実技試験が分からなかったから!」

 「サバイバルに関係ないでしょう!」

 「う……」

 ((凄いな……))


 忍二人は感心していた。
 あのアンコにガチで渡り合っている少女に……。


 「大体、何ですか?
  あのデザインは?」

 「子供だったら、驚くでしょう!」

 「今時の子を舐めんなです!
  あんな欠点だらけの生物なんて、直ぐに見破られますよ!」

 「そんなことないわよ!」


 ヤオ子がガシガシと両手で頭を掻く。


 「が~~~! 話が脱線した!
  兎に角!
  アンコさんのせいで、
  サバイバルにならなくなったんです!」

 「違うわよ!
  あんたのおいろけの術のせいよ!」

 「アンコさんのせい!」

 「あんたのせいよ!」

 「アンコさん!」

 「あんた!」

 「あ、あの……」

 「「アァ!?」」


 声を掛けた忍をヤオ子とアンコが睨みつける。
 ビクッ!と一瞬身を引くが、声を掛けた忍は勇気を持って話し掛ける。


 「この試験は、直ぐに合否は出ません。
  他の子達との実力比較です。
  移動距離と滞在時間で判定します」

 「……そういえばそうだったわね」

 「こんなことを言ってはいけませんが、
  この移動距離と滞在時間なら、まず合格のはずです」

 「そういえば……。
  四、五時間でギブアップって言ってましたね」

 「当然よ。
  深夜の方が動物は活発に動くんだから。
  大抵の子が、そこでギブアップよ」

 「そういうことで……。
  ここは水に流しませんか?」

 「…………」


 ヤオ子とアンコが暫し睨み合う。


 「いいでしょう」
 「分かったわ」

 「…………」


 監視役の忍二人はホッと息を吐き出す。
 そこで、ヤオ子は顎の下に指を立てて呟く。


 「でも、結果的には……強制終了なんですかね?」


 辺りにズーンと重い空気が漂った。
 アンコは眉間に皺を寄せながら告げる。


 「試験は、以上よ」

 「やっと終わった……」

 「本当は、お疲れ様の一言でも掛けるべきなんでしょうが、
  非常に言いたくないわ」

 「いいですよ……別に。
  ・
  ・
  あ。
  お兄さん達」

 「「?」」


 監視役の忍二人がヤオ子に顔を向ける。


 「アンコさんの裸は、記憶に永久保存していいですよ」


 アンコのグーが、ヤオ子に炸裂する。


 「するな!
  あんたらも、完全消去しなさい!」

 「「はい!」」


 こうしてヤオ子の第三試験は終了し、試験の全てが終わった。


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