== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
ヤオ子の前に絶望が広がっている。
無理を承知で戦闘をして奇策で砂の忍を撃退したのに、今度は目の前に自分の家より大きい大蛇がいる。
しかも、三体……。
「一回の戦いでほとんどのチャクラを使うような、
理不尽で効率の悪い戦いが終わったっていうのに……。
・
・
何で、目の前にキングギドラがーっ!?」
木ノ葉の忍がヤオ子の手を引く。
「逃げるぞ!」
「ちょっと!
あんなのが暴れたら、あたしの店が無くなっちまいますよ!」
「あの口寄せに対抗出来る手段はない!」
「こっちも口寄せをすればいいでしょ!
モビルスーツでも呼び出して、戒=紫電に戦わせるんですよ!」
「気が触れておかしくなったか!?
ほら! 急いで!」
ヤオ子は強引に手を引かれてズリズリと後退して行く。
その途中で、ヤオ子は電柱にしがみつく。
それを木ノ葉の忍が全力で引き剥がしに掛かる。
またヤオ子は後退を全力で拒否する。
「離れるぞ~~~!」
「イヤだ~~~!
あたしの店~~~~!」
何とも言えない絵面がそこにはあった。
第26話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅壊滅編
暴れる大蛇に、イビキが砂の忍と戦いながら後退する。
「くっ……。
手に負えん!」
そこに声が響く。
「忍法・口寄せ!
屋台崩しの術!」
暴れる大蛇の上に大蛇より大きい背中に二振りの刀を背負った蛙が現れ、大蛇を一気に押し潰した。
イビキを助けたその人物が声を掛ける。
「久しぶりだのォ……。
イビキ……。
・
・
ったく。
成長したのは、その図体だけかァ!?
見ちゃいられねーのォ!」
驚きのあまり固まるイビキに、救世主は蛙の頭の上で声を張り上げる。
「ヒヨっ子ども!
その小せー目ェ根限り開けて良く拝んどけ!
異仙忍者自来也の!
天外魔境暴れ舞!」
ダダンッと見得きりをすると、自来也はイビキと会話をする。
「三代目は?」
「試験会場です」
「……そうか」
自来也が少し物思いに耽って空を見上げる。
「…………」
そこにスコーンと自来也の頭に空き缶がクリーンヒットした。
…
少し前……。
店の直前まで迫る大蛇にヤオ子は絶望していた。
「あたしの店~~~!」
「離れろ! この馬鹿娘!」
ヤオ子は相変わらず電柱にしがみつき、木ノ葉の忍に迷惑を掛け続ける。
そこに大蛇を押し潰して巨大蛙が登場した。
「こ、これは……!?」
「やったーっ!
あたしの店が救われた!」
しかし、蛙はヤオ子の店も押し潰した。
「…………」
瓦礫となった店の前で固まるヤオ子と木ノ葉の忍。
ヤオ子は、ふらふらと幽鬼のように店に近づく。
目の前には夢の残骸しかない。
「う…ううう……」
「き、君?」
木ノ葉の忍が心配で声を掛けると同時にヤオ子は両手を突き上げた。
「あのイチャパラ仙人がーーーっ!」
ヤオ子は走り出すと落ちている空き缶を拾い上げ、自来也に投げつけた。
…
クリーンヒットした空き缶に頭を擦る自来也。
ヤオ子は、チャクラ吸着して巨大蛙を駆け上がる。
そして、背の高い自来也にジャンプして襟首を掴んでぶら下がる。
「あたしの店に何してくれてんだ!」
「店ェ!?」
ヤオ子が蛙の下敷きになっている店を指差す。
「お主の店だったか……。
すまんのォ……」
「謝って済む問題か!
里を守らずに破壊して、どうするんだ!?」
「まあ、里を守るための犠牲だ。
あのまま蛇を暴れさせて置くわけにもいくまい?」
「アホかーっ!
格好良く見得きってる暇があるなら、
建物の少ないところで口寄せしろ!」
「何を言っておる。
見得をきったのは口寄せした後だ。
タイミングは関係ない」
「開き直った!?」
自来也は耳をかっぽじなりながら、面倒臭そうに聞く。
「うるさいのォ……。
・
・
ん? お主……ヤオ子ではないか」
「知り合いですか?」
自来也に無礼と粗相を続けるヤオ子が気になり、イビキも近くまで来ていた。
「まあな……。
口寄せした時に、この子の店も潰してしまったみたいでのォ……」
「そうですか……。
・
・
ん? 君は、まだ居たのか?
部下に非難させたつもりだったが……」
「誰ですか?
あたしは、自来也さんに用があるんです」
ヤオ子は座った目でイビキを睨み返す。
それを見て、イビキは苦笑いを浮かべる。
初対面で自分の顔の傷を見ても睨み返す子供は初めてだった。
「オレは森乃イビキだ。
ここら一帯を担当している」
「そうですか。
あたしは八百屋のヤオ子です。
しかし、今、店が潰れたので、
八百屋を名乗ることが出来ないかもしれません」
自来也とイビキに乾いた汗が一筋流れる。
そこにヤオ子を保護しようとした木ノ葉の忍が現れる。
「イビキさん……と自来也様!?」
自来也とイビキが木ノ葉の忍に目を向ける。
「どうした?」
「あ……すいません!
この子の倒した忍が持っていました」
部下の忍から、イビキが暗号文を受け取る。
「暗号文か……。
直ぐに解読できそうにないな。
お前は、この子を連れて暗号解析班にこれを届けろ」
「分かりました。
・
・
行くよ」
自来也にぶら下がったままのヤオ子が、ゆっくり顔をあげる。
「話は終わってないんですよ……。
あたしはね!
このウスラトンカチに一発かましてやらないと
気が済まないんですよ!」
イビキのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「お前は、この方を誰だと思っている!」
「アァ!?
イチャイチャパラダイスの作者さんですよ!」
「イチャ──何を言っている!」
「真実ですよ!」
(本当にうるさいのォ……)
自来也が溜息を吐く。
そして、面倒臭い事態を収拾しようとする。
「イビキ……よい。
一発ぐらい殴らせてやる」
「しかし……」
「ホレ」
ヤオ子に自来也が顔を突き出した。
「いい度胸です……。
・
・
猛れ! あたしの妄想力!」
ヤオ子はなけなしの身体エネルギーを注ぎ込み、禍々しいチャクラを練り出した。
「ちょっと、待て!
ヤオ子!
お前、忍者か!?」
「違いますよ!
由緒正しい一般庶民ですよ!」
「一般庶民がチャクラなど練り込むか!?」
ヤオ子が印を結ぶ。
「黙れ! 一回は一回!
・
・
爆殺! ヤオ子フィンガーーーッ!」
自来也はヤオ子の手を掴むと、爆発の方向を上に逸らす。
「避けるな!」
「殺す気か!?」
イビキと木ノ葉の忍の前でヤオ子と自来也は取っ組み合いの喧嘩を始めた。
それを呆然とイビキと木の葉の忍は見詰めていた。
しかし、ものの数秒でヤオ子が腕の間接を極められて動けなくなる。
「ううう……。
大人はいつも子供に理不尽な暴力を突きつける……」
「何処が理不尽だ。
ワシを亡き者にしようとしおって……。
・
・
しかし、アカデミーでは中々よい教育をしとるようだのォ」
「はあ……。
さっき、この子が砂の忍を四人倒すのを見ました」
「ほう……」
「チャクラさえ切れてなければ……」
ヤオ子は間接を極められた手にもう一方の手を合わせて印を結んだが、術は発動しなかった。
チャクラに回す身体エネルギーが足りないようである。
「さて、こうしてばかりもいられん」
「幼女虐待だ……」
「はい。
音と砂の忍はまだまだ入り込んでいます」
「きっと、このままエロいことさせられて、
小説の1ページのネタにされてしまうんです」
「ワシは、残りの大蛇を引き受ける」
「はい」
「誰かーーーっ!
犯されるーーーっ!」
ヤオ子が自ら腕の間接を外すと自来也から抜け出し絶叫した。
「うるさい!」
イビキのグーがヤオ子に炸裂すると、ヤオ子は蛙の頭部に倒れ込んだ。
「ハア…ハア……。
黙らせました」
「イビキ……。
女子供でも容赦ないのォ……」
「話が進みません!」
しかし、ヤオ子は外した関節を入れ治すと絶叫する。
「イビキさん!
あなたもドSの類ですか!?」
「……タフだのォ」
「ええい! 本当にうるさい!」
イビキは両手を組むと、振り下ろしてヤオ子に炸裂させる。
ヤオ子は蛙の頭部に減り込み気絶した。
「キュウ~……」
「連れて行け!」
「は、はい!」
イビキの部下はヤオ子を抱えると、その場を去る。
「や、やり過ぎじゃないか?」
「あの子のタフさ加減はおかしい!
一回目で気絶させたはずだったのに……」
「覚えがあるのォ……」
(綱手に殴られても気絶しないことがあったからのォ……。
あの子もワシと同じボケ担当じゃな……)
自来也は少しヤオ子に興味を持ち、イビキに質問する。
「ところで……。
あの子が忍四人を倒したのは、本当か?」
「はい。
この目で見ました。
術の使い方をよく理解していましたね。
分身で相手にカウンターを合わせてましたから」
「ほう。
面白い……」
「しかも……狙いは男の急所です」
自来也は苦笑いを浮かべる。
「恐ろしい奴だのォ。
ふむ……。
・
・
しかし、カウンターを分身が取ったのなら実体があったってことだ。
アカデミーの分身ではなさそうだな。
印は?」
「分かりません。
恐ろしく早いスピードで印を結んでいたので」
「どういう子なんだ?」
「分かりません。
この一件が片付いたら調べてみます」
「頼む……。
さて、再開するかのォ」
自来也とイビキは、再び戦いへと戻って行った。