== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
顔岩にある隠れ部屋へと避難移動する里の一般人と逆流して、ヤオ子は猫の姿で塀の上を走って行く。
目的地の自宅の八百屋まで、あと少しである。
「お父さん達は、ちゃんと避難したでしょうか?
・
・
それよりも……。
ちゃんと店の看板下ろしてシャッター下げたでしょうね?
敵の目的が分からない以上、長期戦なら兵糧を潰すのが常作なんだから,
出しっ放しだと標的にされかねません」
猫の姿のまま走りながら、辺りを見回すと里に入った忍が幾人も目に付く。
「あの額当て……。
砂の忍が増えて来てますね。
会場は確か……音の忍で、外から砂の忍との連合軍ですかね?
何も中忍試験の時に襲わなくても……。
各国の大名と隠れ里のお偉いさんも来てるんだから信用が落ちますよ。
砂と音は……」
猫になったヤオ子は走り続ける。
そして、ヤオ子は店に戻ると変化を解いた。
第25話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅護衛編
木ノ葉崩しは大きく三つに分かれて進行していた。
里の長である火影と木ノ葉崩しの首謀者の大蛇丸との戦い。
砂の守鶴を宿す我愛羅とそれを追う木ノ葉の忍達……サスケ、シノ、ナルト、サクラ、シカマル、カカシの忍犬パックン。
そして、木ノ葉の忍と音・砂の忍の連合軍の総力戦。
火影と大蛇丸の戦いは中忍試験本戦会場近くの屋根にて、音の四人衆の結界内で進行中。
我愛羅達とサスケを先行させる木ノ葉の下忍達は、未だ追跡中。
総力戦同士の戦いは大蛇丸の口寄せ動物と思われる大蛇も加わり、終着の様子は見えそうにない。
そして……。
「あの馬鹿親共!」
ヤオ子は自宅の八百屋に戻るとチャクラ吸着を利用して壁を蹴上がり、クナイで看板を支える紐を切断する。
看板は大きな音を立てて落下した。
「チッ!
気付かれたかもしれませんね」
看板を店の中へと蹴り飛ばし、更に商品を奥に押し入れてシャッターを閉める。
「これで、ただのボロ屋になりましたね。
後は、あたしの部屋に行って……」
ヤオ子は二階にある自分の部屋に向かい、サスケに貰った教科書などをデイバッグに詰めて背負う。
「おっと!
一番大事なものを忘れてました!」
ベッドの下のイチャイチャパラダイス中・下巻もデイバッグに突っ込む。
「腰の後ろの忍具は……クナイ二本に手裏剣二枚。
ホルスターがないから、これが限界なんですよね。
ちょっと心許ないかな?
・
・
イチャイチャパラダイスの上巻を入れて置かなければ、
もう少し入るんですが……必需品だし」
ヤオ子は一階に戻り、変化の術で猫に化ける。
「さて。
避難所に戻ろうっと」
しかし、外に出ると、トンッとシャッターにクナイが刺さる。
咄嗟に猫のまま印を結び、影分身を一体出す。
影分身は石つぶてによりクナイを弾き飛ばすと、クナイは数メートル先で爆発した。
「クナイに起爆札なんて付けやがって!
一発でも、うちのボロ屋は崩壊の危機ですよ!
・
・
……って! しまったーっ!」
ヤオ子は敵に発見された。
…
火影と大蛇丸の戦いは誰も近づけない状況になっていた。
口寄せ・穢土転生……大蛇丸の忍術により初代と二代目の火影が現れ、三対一で三代目火影は戦っていた。
初代火影の木遁忍術。
二代目火影の水遁忍術。
三代目火影の口寄せ、猿猴王・猿魔。
激しい術の応酬合戦に、誰も手が出せない。
そして、状況は徐々に三代目火影が押され始めていた。
…
我愛羅達の追跡はサスケが先行し、それを追跡するナルト、サクラ、シカマル、パックンは音忍に追跡される状況になっていた。
ここで彼らが取った行動は、シカマルの囮による陽動だった。
陽動により、音忍の追跡部隊は居なくなる。
そして、本日の中忍試験本戦と音忍追跡部隊の足止めにより、チャクラ切れになったシカマルはリタイアになる。
ちなみに美味しいところは、担当上忍である猿飛アスマが音忍追跡部隊を始末して持って行った。
…
再び、場面はヤオ子へ……。
ヤオ子の視界には接近する砂の忍三人が目に入る。
そして、その光景は部隊の一角を指揮する森乃イビキも確認していた。
「何故、一般人があんなところに!?」
潜入する砂の忍を相手にして、イビキは保護も出来ず命令も出せないことに舌打ちをする。
一方のヤオ子は、初めての危機に焦りながらも分析を開始していた。
(早いです! 狙われています!
逃げれないなら戦うしかないでしょう!
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・
きっと、この距離で投擲がないのは忍具を温存したいから……。
接近戦なら……!
・
・
コイツら、サスケさんより遅い!
しかも、写輪眼もない!
でも、あたしより強くて早いのは明らか!)
猫に変化しているヤオ子の本体は、影分身の足元まで近づく。
(作戦は、サスケさんにかますはずだったもので行きます!
普通に戦って勝てないなら、
相手の体重と慣性を利用するしかないでしょう!)
体格、力、スピード、全てにおいて負けている。
サスケと比べてもアカデミーの子と比べても……そして、目の前の三人の砂の忍に比べても。
だけど、負けないものが一つある。
印を結ぶ早さ。
これだけは、ヤオ子は誰にも負けない自信がある。
先頭の砂の忍がクナイを振りかぶる。
この瞬間にヤオ子の本体と影分身が一歩踏み込みながら印を結ぶ。
実際の印は本体の猫。
陽動の印が影分身。
子供が一瞬で印を組み上げたことに、油断していた砂の忍達が目を見開いた。
そして、鶏を締め上げるような切ない声が響く。
そう……ワンピースのロビンがフランキーの急所を握り込んだ時のような……。
…
敵の忍を始末して、ヤオ子に目を移したイビキの顔がキュッとなる。
「あれは…痛い……」
イビキに思わず額を押さえるさせた、ヤオ子のしたことはこうだ。
まず、砂の忍達を影分身の出現させられるギリギリまで引き寄せる。
そこに肘を突き出したヤオ子の影分身三体をコントロールして出現させる。
出現させたのは砂の忍達の股間……。
効果は言うまでもない。
砂の忍達は三人全員が白めを剥き、股間を押さえて泡を吹いている。
その倒れた砂の忍達の前で、ヤオ子の影分身達が胸を張る。
「あなた達が敗れた理由はイージーです……。
『あたしを怒らせたからだ!』ではありません。
・
・
男だからです。
しかも、大人であれだけスピードついてればねぇ……体重×スピード×肘鉄=破壊力。
子供を産ませられない体になってしまったかもしれませんね」
しかし、油断していたヤオ子の影分身三体にクナイが刺さり、影分身は煙になって消える。
「ええ!?
ちょっと!」
後ろで控えていた最後の影分身に、別の砂の忍がクナイを突き立てる。
それと同時に本体の猫が距離を取る。
砂の忍は呟く。
「俺達は四人組で行動してんだよ……」
「……知ってますよ。
だから、一体後ろに下げてたんです。
・
・
急所は外させて貰いました。
これは、今日の本戦でナルトさんがネジさんに使った作戦です」
影分身は印を結ぶと砂の忍に抱きつき、零距離射程でチャクラの盾なしの『爆殺! ヤオ子フィンガー!』を炸裂させる。
影分身は砂の忍もろ共、自爆した。
砂の忍達を倒し、本体の猫がヤオ子に戻る。
「まともに戦うわけないでしょう。
あたしは、か弱いんだから。
・
・
それにしても……。
サスケさんの本を読んでて良かったです。
忍の小隊は四人組が基本で、それ以上は行動が遅くなるってね。
三人は怪しいと思ってました。
・
・
さ~てと」
ヤオ子が次の行動に移ろうとすると声がする。
「ま…待て……」
砂の忍が煙をあげながら、腕を伸ばしていた。
「まだ、意識があるんですか?」
「お前は、一体……」
「一般人ですよ」
「くそ……。
こんなガキに……」
「…………」
ヤオ子は煙のあがる砂の忍に近づくと仰向けにひっくり返し、容赦なく股間を思いっきり踏みつけた。
最後と思われる砂の忍が泡を吐く。
「お…お前の血の色は…何色だ……?」
「多分、ショッキングピンク?」
その答えに砂の忍は吹くと気絶した。
「冗談ですよ?」
「…………」
砂の忍から返事はない。
ヤオ子は他の砂の忍に見つかる前に、店の裏に砂の忍四人を運ぶ。
そして、砂の忍の足のホルスターを外し、ポケット類を探った後で縛り上げると生ゴミを捨てるポリバケツに四人を突っ込んだ。
「えへへ……。
クナイに手裏剣がザックザクです♪
起爆札も六枚ゲットです♪
・
・
あとは……何ですかね? 暗号文?」
ヤオ子はデイバックを下ろすと、強引にギュウギュウとホルスター四個を突っ込んだ。
「バッグ、パンパンです。
もう、お土産はいりません。
早くデンジャーでヴァイオレンスなここを脱出しなければ……。
・
・
それにしてもチャクラを使い過ぎました。
影分身四人へ『爆殺! ヤオ子フィンガー!』に必要な分だけのチャクラを練り込んだから……。
危険域ですね。
・
・
しかし、必殺技の最初の使い方が自爆だったとは……。
サスケさんの言った『ヤオ子……爆殺』です」
ヤオ子が避難場所に移動しようとして振り返ると、目の前には木ノ葉の忍が居た。
「本当にこんな子が……」
額を押さえる木ノ葉の忍に、ヤオ子は首を傾げた。
…
ヤオ子の前に現れた木ノ葉の忍は、イビキの命令でヤオ子を保護しに来た忍である。
その忍がヤオ子に訊ねる。
「何をしていたんだ?」
「あたしの店を破壊しようとしたんで戦闘に……」
「それは子供のすることではない!
コイツらは、砂の中忍以上だ!」
「すみません!
すみません!
すみません!」
「まったく……。
イビキさんの話は半信半疑だったが……本当に倒したのか?」
「術は使い方ですよ」
木ノ葉の忍は溜息を吐く。
「ところで……。
砂の忍は?」
ヤオ子が指差すのは、生ごみ用の大きなポリバケツ四つ。
「まさか……」
木ノ葉の忍は、ポリバケツの蓋を開ける。
その何は生ゴミ特有の臭いにまみれた砂の忍が、頭から突っ込まれていた。
「……恐ろしい子だ」
「生ゴミを捨てただけですよ。
・
・
あ!
あと、これ」
ヤオ子が砂の忍から奪った暗号文の書いた紙を木ノ葉の忍に手渡す。
「これは……!」
「戦利品です」
木ノ葉の忍は捨てられた砂の忍の階級を確認して、暗号文の重要性を確認しようと砂の忍を調べる。
「ホルスターを……していないな」
「ねだるな、奪い取れ、さすれば与えられん……です」
背中のデイバッグを見せたあと、ヤオ子はチョキを作る。
「……恐ろしい子だ」
「早く行きません?
あたしをエスコートしてくれるんでしょ?」
「あ、ああ……少し待ってくれ。
これをイビキさんに確認して貰う。
直ぐそこだ」
「分かりました」
ヤオ子は木ノ葉の忍に続いて、店の裏から店の前に出る。
「…………」
ヤオ子と木の葉の忍を覆う影に、二人の視線が上に向いた。
「なんじゃこりゃ~~~!?」
ヤオ子の目の前には、三体の巨大な大蛇が見下ろしていた。
※※※※※ ヤオ子におけるチャクラ量と影分身について ※※※※※
このSSを書く上ではっきりさせないといけないことがあります。
原作が週刊連載のため、後付けで付加される能力や設定が存在します。
例えば、リーの言葉遣いが初登場とそれから数話後では違いがあるなどです。
特に私がよく理解出来ないのが『チャクラ量』『影分身』です。
以下、私の考察の結果(解釈?)の上で、このSSの設定を決めようと思います。
チャクラ量:
二種類考えられると思っています。
まず、総量です。
身体エネルギーMAX, 精神エネルギーMAXに依存します。
ヤオ子の場合……。
ヤオ子の妄想力により、精神エネルギーMAX=∞。
身体エネルギーMAXが増えることでチャクラの総量が増えます。
次にチャクラの生成量MAXです。
体内に生成出来る総量です。
第七班が最初にカカシからサバイバル試験を行わされた時、
カカシはサスケの豪火球の術を見て中忍なみのチャクラ量が必要みたいなことを言っていた筈です。
これは総量ではくて体内に生成出来る量を言っていると思われます。
よって、チャクラ量については、上記二種類が修行により向上すると思われます。
ドラクエのメラ系で例えるなら……。
レベルが上がった!
『最大MPがあがった=チャクラ総量が増えた』
『メラミを覚えた=チャクラの生成量MAXが増えて使用条件が整った』
になります(あまりよい例ではないかも)。
影分身:
謎多き術です。
原作でも後付け後付けで最近整理できなくなっています。
最初は、実態のある分身を生成するだけだった。
↓
後にチャクラ量を分散することに。
↓
更に経験値蓄積 etc...。
SSを書いていて一番解釈が困るのが影分身の際に『チャクラを分散する』です。
どう解釈していいのか……。
単純に分散していたら、凄いことになると思います。
例えば、ナルトが影分身を一体生成。
この時点でチャクラの総量は1/2です。
影分身が倒されたらチャクラ総量が半分なくなるというハイリスク。
とてもじゃないが使えません。
多重影分身をしただけでナルトのチャクラ総量は、1/影分身の総数+1。
そこで別解釈する材料として水面歩行の修行をする際にエビス先生が話した説明。
術に必要な分だけチャクラを作るというお話。
影分身に必要なチャクラ量…■
その影分身に持たせたいチャクラ量…▲
とします。
以下をヤオ子の体内生成チャクラ量MAXとします。
□□□□□□□□□□
例:影分身二体にチャクラ量を▲×3持たせたい。 必要な体内生成量は?
□□□□□□□□□□
■▲▲▲■▲▲▲
となります。
影分身三体作ると体内生成チャクラ量MAXを越えて発動しないことになります。
とりあえず、この解釈なら使い方次第かと……。
しかし、この解釈にも疑問が出ます。
ナルトvsネジ戦でナルトが影分身した時、ネジの白眼によりチャクラが均等になっているとネジが言ってしまっていることです。
上記、説明の通りだとナルト本体だけがチャクラ量が違うことになります。
苦しい解釈ですが影分身後にナルトが自ら影分身に分散したチャクラと同じ量を練ってネジの目を誤魔化したと独自解釈しました。
真実は別だと思いますが、このSSでは上記解釈で進めさせてください。
経験値蓄積:
仙術チャクラを戻す時にチャクラを還元なんて言ってましたが……。
よく理解できないなりに経験値蓄積の独自解釈で説明してみます。
まず、ただの影分身を一体作ります。
コイツをただ戦闘に使っただけだと体術ぐらいの経験しか蓄積出来ません。
しかも、コイツは忍術を発動するとチャクラを消費して消えてしまう。
ただ、何もしない時はチャクラも消費しないで存在出来るはず。
カカシが初めてナルトと演習場で対峙した時、一分の維持がやっとと言っています。
しかし、ペインと戦った時、スペアの影分身が戦術チャクラを吸収している時はそんなことはありません。
そして、後の会話から集中力の関係で維持するのが大変で戦闘で使える影分身は三体までとか何とか……ナルトが言っています。
このことから、どうも影分身の維持時間は集中力に依存するらしいと判断出来ます。
最初の頃は、ナルトは集中力が足りなかったから維持時間が一分しかなかったと思われます。
後の螺旋丸の修行なので集中力が培われた(?)のでしょう。
話が逸れました。
経験値蓄積の話に戻ります。
何もないただの影分身……この状態を"0"と考えます。
これに何かをすることで何でもかんでも蓄積されます。
体術を使えば体術の経験値。
忍術を使えば忍術の経験値。
ただし、チャクラは増やすことが出来ません。
何故なら、使えば消費するものだからです。
しかし、仙術チャクラは別です。
このチャクラだけは、外から注入出来ます。
つまり、この時だけはチャクラが増えています。
無理に言い換えるなら、チャクラの経験値が蓄積されるわけです。
上記のことから、次のような応用も可能かもしれません。
本体と影分身が居たとします。
本体が毒を受けた。
↓
その後、影分身に解毒剤を処方した。
↓
影分身を解くと本体に解毒処理が働く。
しかし、逆も……。
影分身が毒を受けた。
↓
影分身を解くと本体に毒が還元された。
↓
本体は毒を受けた。
まだまだ謎多き術です。
結局、何が言いたかったのか?:
グダグダと書きましたが、何を言いたかったかというと……。
ヤオ子の影分身の設定と、今回、ヤオ子のチャクラが危険域に入った理由付けです。
ヤオ子自身、無茶な設定ではありますが、チャクラ量は化け物ではないということです。
普段の影分身は、余計なチャクラを付加していません。
しかし、今回は本当の戦闘に入っているので影分身にも戦える分のチャクラを分け与えたという設定です。
よって、四体の影分身には必殺技に必要な量のチャクラ+戦闘に必要な他のチャクラを練り込んでいたということになります。
そのため、一気にチャクラを消費して危険域に入ってしまったということです。
NARUTOのSSは、独自解釈をしないと難しいので大変です。
時々、ヤオ子が突っ込むチャクラの設定や中忍の人数の設定は、仕方のないことだと思ってくれると助かります。
このSSの説明と補足を行なっているので……。