== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
サスケが去り、秘密基地の前に一人残ったヤオ子。
少しぼーっとした後で、何をしようか考える。
「今日は、サスケさんも軽めにするって言ってたし、
あたしも便乗しようかな?」
ヤオ子は立ち上がると、足を回れ右して家へと向かう。
しかし……。
「な~にかな~?
この妙な悪寒……。
サスケさんは、お許し出しましたよ?」
トラウマ発動。
「ちょっと!
どうしたの!?
怖くない! 怖くないって!
サスケさんなんて怖くない!」
反抗しようにもヤオ子の悪寒が取れることは一向になかった。
ヤオ子は項垂れる。
「とりあえず最低限のノルマだけ……」
ヤオ子は、最低限の修行をしないと家に帰れない体になっていた。
「誰かあたしに『シャナク』をかけて……」
残念ながらシャナクでは呪いは解けても、トラウマは解消しない。
第17話 幕間Ⅰ
サスケがヤオ子と会ったのは、砂隠れの里の忍である我愛羅・テマリ・カンクロウと一悶着を起こし、カカシに受験票を貰った後であった。
そして、ヤオ子の必殺技改良の構想が終わり、一日が経つ。
サスケの受ける中忍試験は第一試験筆記テストに始まり、第二試験サバイバルテストへと進んでいた。
一方のヤオ子は……。
「これ酷いトラウマですよ……。
呪いレベルです……。
一日としてサボれないなんて。
これもサスケさんが毎回毎回グーを叩き込むから!
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・
まあ、最近、グーがないと寂しいな……なんて思う時もあるんですけどね」
修行を終えて、ヤオ子は愚痴を溢しながら帰宅していた。
「明日からは、手裏剣術して……。
筋トレを追加して……。
木登りを足と手でやって……。
忍術と必殺技の練習ですね。
特に必殺技は、納得のいくレベルまで頑張りたいですね。
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・
あたし……。
何やらされてんだろう……。
八百屋の看板娘が忍術使えるって、何なのさ?
客寄せに忍術で芸でもしろって?
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・
ハッ!
馬鹿馬鹿しい!」
ヤオ子の独り言は続く。
「実は、このまま忍者になっちゃった方がいいんじゃないの?
でもな~……。
死ぬ確立が倍率アップのドーン! ……だもんね。
・
・
デンジャーでヴァイオレンスなのは嫌だなぁ……。
サスケさんやナルトさんは、何で忍者になりたいんだろ?
やっぱり、木ノ葉に生まれたら自然に憧れるのかな?
皆、夢を叶えたくて頑張ってるんだよね。
あの歳で、もう職業を絞ってるって凄いよね。
あたしは……ダメダメです。
・
・
ただ……。
最近は、サスケさんと居るのが楽しいんですよね。
弟は、まだまだ小さいし友達は居ないし……。
あたし、学校行ってないから」
ヤオ子は、ここ数ヶ月を思い出す。
「何で、楽しかったんですかね……。
何で、一生懸命だったんですかね……。
嫌々だったはずなのに……。
・
・
まあ~!
気の迷いでしょう!
さっさと帰るべきです!」
ヤオ子は、きっと大事なことを先送りにした。
…
サスケの中忍試験は、五日に及ぶサバイバルの一日目の夕刻に入っていた。
開始数時間で天の書と地の書の巻物の奪い合いが死の森の各地で起こり、サスケ達第七班も例外なく奪い合いをすることになる。
その経過で、大蛇丸との戦闘の末に呪印を刻まれたサスケと五行封印されたナルトは気絶。
今は、サクラ一人で奮闘中という絶体絶命の危機を迎えようとしていた。
一方のヤオ子は、サスケのピンチなど知ることもなく自宅にて体術の本を読んでいた。
体術関係の本より最初に知識を優先させたため、後回しにしていたからである。
「……体術って凄く重要じゃないですか。
これを覚えないとあたしの必殺技は当たらないですよ。
・
・
でも、他を優先したのも分かりますね。
あたしは、基本が出来ていないから、
体力とチャクラの向上を優先したに違いありません。
だから、チャクラのスタミナをつけさせるために、
サスケさんは必殺技開発の許可を出して好き勝手させてくれたんでしょう。
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・
体力の方は、手裏剣術と木登りをしてれば自然とついてきますしね。
・
・
でも、サスケさんの体術修行か……。
フルボッコにされるだけじゃないの?」
蘇る写輪眼の修行の悪夢……。
ヤオ子は忘れるようにページを捲る。
「これを修行するなら相手が必要だなぁ。
一人じゃ無理です。
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・
そんなことない……ハーレムの術!
あれを利用して影分身で組み手すればいいんですよ!
待て待て!
・
・
相手役に一人。
観察役に一人。
計二人の影分身を出させて修行すれば……うん! 問題ない!
サスケさんに相手して貰ったら、命が幾つあっても足りません!
ああ……ナルトさん。
ハーレムの術を教えてくれて、ありがとう♪」
ヤオ子は知らず知らずに忍者の道を着実に歩み始めていた。
そして、判断基準となる忍者がサスケしか居ないのは幸か不幸か……。
「まずは、サスケさんにワンパンチ入れることを目標にしましょう。
明日からは、手裏剣術の修行の半分は体術に充てます!」
ヤオ子の一人修行の日々は続く。
…
次の日、早朝……。
サクラ対音忍の戦いが始まる。
音忍達との戦いにより、サクラの髪を切るイベント発生……。
サスケの呪印発動……。
木ノ葉の忍達の助太刀により、音忍を辛くも退ける。
サスケ達のチームは、サバイバルを開始してようやく一息つける時間を確保できた。
そして、ヤオ子は……。
「うげ~!」
吐いていた。
自分の影分身とのガチンコ体術勝負。
お互いのボディーブローが鳩尾に炸裂した。
「……ま、間違っています。
この修行方法、激しく間違っています。
お互いのレベルが同じ上に思考も同じだから自爆ばっかりです。
体術の修行無理……。
出来ない……。
・
・
これ先生が必要です……。
サスケさん……早く帰って来て……」
ヤオ子は力尽きた。
…
~ 十分後 ~
「まさか自分で自分を苦しめる羽目になるとは……。
地味に生きよう……。
いきなり派手なことをしようとしたのが間違いなんです。
魚住を思い出してください。
田岡先生に扱かれて一年目にバスケを辞めようと思ったんですよ?
体力も何もついてないあたしが出過ぎた真似をしたんです。
これは、反省が必要です。
サスケさんが中忍試験から帰って来るまでは地味に生きます」
ヤオ子は溜息を吐く。
「結局、やるこはいつもと変わりませんね……」
ヤオ子は、チャクラ吸着による木登りをすることにした。
ヤオ子の方は、大体そんな感じで修行をしていた。
修行を開始して数ヶ月で急激な成長など望めない。
そもそも基となるものがない一般人が、忍者を目指していた人間と同じ体力や筋力は急に身につかない。
ヤオ子の身につけたものは、センスの部分が大きい。
チャクラにしても人間離れした妄想力によってカバーしている部分が大きい。
「火力が足りない分は、気合いでカバーです」
それで補える意味もよく分からない。
ただ、今はひたすらに基礎力の向上に精進である。
忍者になる……ならだが。
…
初日からの強敵との二連戦で大きなダメージを受けたため、サスケ達のチームは体制がボロボロだった。
安全に休める場所の確保や食料の確保も出来ていない。
そして、サスケ達のサバイバル試験四日目。
ようやく体制を立て直し、本来の巻物争奪戦を行える時にはタイムリミット一日だった。
一方のヤオ子は、いつも通りなので省略……。
「何で?」
やることがループするから。
「酷くない?」
更に時間は経過する。
「無視しやがったです。
もういいです……」
サバイバル試験は、最終的には薬師カブトの助けを借りて試験をパスする。
そして、直ぐに始まる第三の試験……予選。
実戦形式の一対一の個人戦。
サスケは赤胴ヨロイとの対戦で写輪眼の能力を開花させ勝利を収め、リタイアになる。
カカシの封邪法印により呪印の力を押さえ込み、気力を使い果たしたサスケの記憶もここで途切れる。
目覚めるのは、中忍試験の第三試験予選が終了した数日後になる。