== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
ヒナタに掌からのチャクラ放出を見せて貰い、また、目印になる点穴の印も付けて貰い、ヤオ子は森の奥にある自分の秘密基地に戻る。
時間的には朝からストーキングを始めて説明が終わるまで、あまり時間は経っていない。
「ヒナタさん……。
あたしの捕食ランキング女の子部門第1位にランクインされました。
お持ち帰りしたかったですね。
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ちなみに男子は年下がテリトリーですが、女子は結構範囲広いんです……あたし。
明確には表せませんね。
最近の女性は、歳を取っても童顔の方も居ますから。
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まあ、兎に角。
ヒナタさんのお陰で重要なことを手に入れました。
成功すればチャクラを視認できる。
これは大きな前進です。
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ふふふ……見ててください、サスケさん。
あたしのスペシャルな必殺技で、
今度こそ『ぎゃふん』と言わせて、あなたを地面に平伏さしてあげます」
不気味な笑い声をあげながら、ヤオ子の必殺技開発はまだまだ続く。
第14話 ヤオ子の自主修行・必殺技編④
秘密基地の前で腕組みをして、ヤオ子はおさらいを始める。
しかし、おさらいを始めて直ぐに首を傾げる。
「ところで……。
あたしは、何処で修行に躓いたんでしたっけ?
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え~と……。
手をふっ飛ばさないように形態変化をしようとして……。
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いきなり掌からチャクラを放出できないじゃん?
『このヤロー』ってなったんですよね?
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何だ~。
一番最初で躓いたんじゃないですか!
あははは!
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って、笑ってる場合か!
必殺技編も④になってんのに進んでいないじゃないですか!
こんなに長々とやってたら、一番初めの構成なんて忘れちゃうよ!
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冨樫先生にも、何て言い訳をすればいいんだ!」
ヤオ子は地団太を踏む。
そして、冨樫先生は、何も関係ない。
「まあ、いいです。
チャクラ放出の修行のプランは考えました。
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ズバリ! 言っちゃいます!
言っちゃいますよ!? 奥さん!?
木登りで~す!
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ええっ!?
それって、もうやってるじゃないですか!?
どういうことですか!?
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今回の木登りは、足を使いません。
逆立ちして、手で登るのです!
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手ですか!?
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はい! 手です!
逆立ちしながらなら、ヒナタさんが印を付けてくれた点穴から
チャクラが放出されているかも分かります。
何より、足の筋力より劣る手なら、
より多くのチャクラを必要とするわけです!
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なるほど~!
さすがですね~!
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……虚しい。
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一人でテレビショッピング風にやってみましたが、
ギャラリーが居ないと、どうも……。
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まあ、数多のお笑い芸人さんも家に帰ればやっていることです。
こういう日々の積み重ねが木ノ葉のお笑い文化を支え、
世界に誇れるコメディアンを輩出することになるのです」
忍者を輩出せずにお笑い芸人ばかりを輩出したら、木ノ葉はどうなってしまうのか……。
一仕切りのネタを言い終わると、ヤオ子はチャクラ放出の修行に入る。
ググッと右拳を握り、気合いの入った顔になる。
「では、やってみますか。
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猛れ! あたしの妄想力!
ああ……何か久しぶりに叫んだ気がします。
このまま、刻が見えちゃいそうです」
ヤオ子は禍々しいチャクラを練り、両手に一定のチャクラを溜め込むと両手を握って確かめる。
「では!」
目の前の大きな木の前で逆立ちをすると、ヤオ子は幹に右手を掛ける。
(そういえば……。
あたし、この前まで逆立ち出来なかったんですよね。
ちゃんと進歩してるんですね~)
が、ここで予想外のことが起きる。
木に次の左手を掛けようとするが進まない。
右手のチャクラ吸着は間違いなく機能しているが、体を水平に支えられない。
そして、右手を掛けたまま停止して五分……ヤオ子はチャクラ切れを起こして力尽きた。
「これ……しんどくない?
片手で体重支えないといけないじゃん……。
チャクラで木登りどうこうの前に筋力アップですね」
木の前で両足を投げ出したまま大きく息を吐くと、ヤオ子は立ち上がってお尻の土を叩いて落とす。
その日は修行内容を変更して、筋トレと手裏剣術に費やすことにした。
…
夕方……。
サスケの修行場にヤオ子が顔を出すと、サスケが苛立ち混じりに怒鳴る。
「遅いぞ!」
「すいません。
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ねえ、サスケさん。
木登りの修行なんですけど、コツを教えてくれませんか?」
「…………」
サスケは、何か最近ヤオ子に頻繁に利用されているような気がしている。
昨日も質問攻めにあい、写輪眼の幻術の修行を減らされている。
それが分かっているので、本日はサスケから条件を出すことにした。
「幻術一回につき、質問に一回答えてやる」
「心が狭いですね……。
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でも、いいでしょう!
掛かって来なさい!」
ヤオ子の態度にサスケはカチンと来る。
直ぐ様、写輪眼をヤオ子の目に合わせ幻術を掛けたが、ヤオ子は幻術が掛かったと分かると印を結び出した。
「はい! 解!
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教えてください」
(……今、コイツ何したんだ?
何で、一瞬で幻術を解かれた?)
写輪眼の幻術の精度は上がっているはずだった。
まして幻術に特化した特別な瞳術がおいそれと簡単に破られるはずはない。
当然、からくりがある……。
(種を明かしますとね。
幻術掛ける前から、お尻つねってたんです。
痛みで意識を逸らしてました。
サスケさんもようやく加減というものを理解し始めてくれたんで、
最初のような強力な幻術は掛けなくなりましたし……。
また、今は幻術を掛けるスピードに重点を置いているので、
今の威力は、それ程でもないのです。
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まあ、気がついたら倍返しにされるんでしょうけど……)
サスケは納得のいかない表情で、ヤオ子の質問の内容を尋ねる。
「何で、今更木登りのコツなんだ?」
「え~と、ですね。
少し手の方を鍛えようとして逆立ちでやってるんですが、
片手つけたあと、自分の体重を支えきれなくて次の手が出ないんです。
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でも、あたしは筋トレをして、
筋力着くのを待つほど安い女じゃないんで……教えて」
「最後の方が理解不能だが……。
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(安い女って、何だ?)
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勢いをつけて登ればいいんじゃないか?
お前の場合……木登りを助走つけないでやってたからな」
(あれは最悪だった……。
あの後、修正して普通の木登りをさせたが……)
「助走? なるほど!」
ヤオ子はポンと手を叩くと、早速、サスケに言われたように逆立ちして助走をつけて木に向かう。
「猛れ! あたしの妄想力!」
助走の途中でチャクラを練り、木に張り付く。
「いい感じです!」
右手、左手とトットッと木を登り出す。
しかし、右手のチャクラ吸着が弱くて滑った。
「あり!?
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げふっ!」
「…………」
サスケはジト目で固まる。
ヤオ子が盛大に顔面をぶつけた木にはダクダクと一筋の血が滴る。
(期待を裏切らない奴……)
血の止まらない鼻を押えながら、ヤオ子が振り返る。
「サ、サスケさん……。
これ失敗した時のダメージが大きい……」
「……立ってる時は手で支えられるけど、
逆立ちしてる時は、顔面が直ぐに来るからな。
少し吸着させるチャクラを増やした方がいいんじゃないか?」
「チャクラを増やすのは好都合です……。
では、これで……」
「あ、ああ……」
ふうらふらと去って行くヤオ子の後に、点々と血が続いて行く。
「アイツは血をぶちまけて、何しに来たんだ?
・
・
しまった……。
逃げられた!」
本日も写輪眼の修行はお預けになり、サスケは『ヤオ子のヤロウ』と拳を握り締めた。
…
翌日から、ヤオ子は朝修行に手裏剣術、午前中と午後に手による木登り修行を始める。
筋力が伴っていないヤオ子にとって、この修行は予想以上に厳しく、筋力で補えない分をチャクラで補うため、ヤオ子がサスケのところに行く頃は体力が低下してヘロヘロだった。
そして、そんな修行の日々が続いた数日後……。
「お前……大丈夫なのか?」
「多分……」
サスケの修行場を訪れたヤオ子を見て、サスケはどうしたもんかと腕を組んでいた。
明らかなオーバーワークが見える。
疲れ切っているヤオ子の両手に視線を向けると、マジックの跡に合わせてチャクラの練り過ぎで少し火傷の痕がある。
マジックの跡も何度も書き直した跡が見て取れる。
これは練習のし過ぎもあるが、チャクラを扱い始めたばかりのためコントロールが未熟なせいでもある。
「お前──」
「止められないですよ。
ようやく経絡系の通りが良くなって来たんですから」
サスケは溜息を吐く。
「忍者にはなりたくないんじゃなかったのか?」
「……あれ?」
「お前な……」
サスケは呆れて溜息を吐く。
『忍者になりたくないのに、修行をする理由は何だっけ?』とヤオ子は考える。
「おお! あれです!」
「あれって、何だ?」
「必殺技を使いたいんです!」
「何だ、それは?」
「教えません!
サスケさんを『ぎゃふん』と言わせるのです!」
「それだけで、やってるのか?」
「他に理由が必要ですか?」
「……まあ、いいんじゃないか」
(よく考えたら、コイツはガキだし……)
「そういうサスケさんは、何故に忍者に……。
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ああ、いいです。
ドSだからでした」
サスケは腰に手をあて、ヤオ子を睨む。
「お前、今、沈黙のところで失礼なことを考えただろう?」
「いえ、普段通りのサスケさんを思い起こしただけです」
サスケは、本日、何度目かの溜息を吐く。
「はあ……。
お前、明日から好きにしていいぞ」
「へ? でも……。
友達の居ない根暗のサスケさんが、
幻術掛けれる相手なんているんですか?」
サスケのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「言葉を選べ!
人が気を遣ってやってるのになんなんだ!」
「ううう……。
了解です……」
ヤオ子は頭を擦りながら話す。
「じゃあ、明日から少し時間を貰います。
必殺技が完成したら見てくださいね。
必ず『ぎゃふん』と言わせますから」
「期待しないで、待っててやるよ」
(ガキの考えた忍術なんて、
大したことのないものだろう……。
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・
おいろけの術に続く第二の忍術じゃないことだけを祈る)
笑いながら去って行くヤオ子をサスケは無言で見送った。
そして、振られるヤオ子の手の火傷の痕が再び目に入ると、サスケは『負けられないな』と呟き、修行を再開するのだった。