== 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険 第6話 ==
学園都市の学舎の園の外の学生寮208号室……。
就寝までの時間の出来事。
ヤオ子は、私服の持ち合わせがないため、寮監に恵んで貰った布地と黒子に借りた裁縫道具で私服を拵えていた。
現在までに藍のTシャツが四枚、ミニスカートが三枚、四枚目は作成中。
ヤオ子の手の中で、チクチクと縫われている。
「貴女、凄く器用なんですのね?」
「はい。
家が貧乏だったのと、
里の復興のために雑務をこなしていたことが役に立っています」
「里の復興というのは?」
「木の葉崩し……。
簡単に言うと敵が攻め込んで来て、
木の葉隠れの里が窮地に立たされて、
里で受け持っていた雑務を担当するお手伝いをしたんです」
「そんなことがありましたの。
大変でしたのね」
「はい。
・
・
さて、スカートもOKです。
問題は、下着類ですねぇ」
ヤオ子は、ミニスカートを畳んで重ねる。
「ヤオ子さんは、普段からスパッツですの?」
「この際、美琴さんに倣って短パンに変更しますか?」
「真似するな!」
「分かってますよ。
スカートから覗くラインが見えないと、
思春期男子は、がっかりですからね」
「どんな理由なのよ……」
「お姉さまも見習って欲しいですわね」
「黒子……!」
拳を握る美琴を無視して、黒子がヤオ子に話し掛ける。
「で、下着はどうします?」
「上は、サラシ。
下は、スパッツ。
替えが何着か欲しいですね」
「スパッツの下は?」
「気分によって、履いたり履かなかったり」
「分かりますわね……。
私も気分によって、下着を替えますから」
「っつーか! 履きなさい!」
「では、それも追加ですね」
「あったま痛くなって来た……」
「明日、一緒に買い物に行きます?」
「適当に買って来てくれませんか?
勝負下着でも何でもいいんで」
「分かりましたわ」
「勝負下着で納得するんかい!」
「美琴さんって、素晴らしい突っ込み体質ですね?」
「誰のせいだ! 誰の!」
「まあ、いいです」
(流した……。
わたしがおかしいの?
この流れに順応出来ないわたしが……)
美琴は、この部屋に正常な人間が一人欲しかった。
がっくりと肩を落とし、『変態(ボケ)2:真人間(突っ込み)1』の割合に溜息を吐く。
そして、変態系の話にならないように話題を変えようと試みる。
「ねえ、ヤオ子」
「ヤオ子?
この前まで、『ヤオ子さん』じゃなかった?」
「ああ、格下げしたから」
(……何故?)
「それで、ヤオ子」
「はい……」
「昨日から言ってる『忍者』って、本当?」
「え~……今更?」
「気になるじゃない?」
「今頃?」
「私も、そろそろ触れなくてはと思っていました」
「放置プレイですか。
お二人は、ドSの資質をお持ちのようですね?」
「持ってないわよ!」
美琴のグーが、ヤオ子に炸裂した。
「で、忍者でしたっけ?」
「タフな子ね……」
「忍者は、本当です」
「…………」
美琴と黒子は、『それだけ?』という顔をしている。
「ヤオ子さん。
もう少し主張してみるべきなのでは?
たった一言で終わりにされても、
こちらとしても反応に困ります」
「黒子さんには忍術を見せましたよね?」
「そうでしたわね」
「じゃあ、いいじゃないですか」
「わたしは?」
「黒子さんとは根っ子の部分で繋がっているから、
黒子さんが信じれば美琴さんも信用するシステムが
出来上がっていると思っていたんですけど」
「出来上がってないわよ!」
「嫌ですわ、ヤオ子さんったら……。
根っ子の部分で繋がってるなんて本当のことを」
「黒子!
いい加減なことを言ってんじゃないわよ!」
「あたしの見解では、お二人は、
愛し愛される仲だと思っていたんですけど?」
「違うわよ!」
「その通りですわ」
「だから、一方に分からせればOK?」
「それ違うから!
わたしは、黒子と何も関係ないから!」
黒子は、床に手を着いた。
「お姉さま……。
何も関係ないなんて……」
「ああ~! もう!」
「話が進みませんね?
そろそろ、からかうの止めますか?」
「そうして……。
・
・
ん?」
美琴のグーが、ヤオ子に炸裂した。
「からかってんじゃないわよ!」
「あはは……。
じゃあ、忍者を証明しますね」
ヤオ子は、チャクラを練り上げて、印を結ぶ。
「変化!」
変化の術で、美琴に化けて見せた。
「「!」」
「信用しました?」
「凄い……」
「本物……」
「修行してますから、声もある程度似せられますよ?
え~と……。
・
・
黒子のことなんか好きじゃないんだからね!」
「ムカつくわね。
何で、選んだセリフがそれなのよ?」
「意味はありません」
黒子が尊敬の目で、ヤオ子に話し掛ける。
「あの、ヤオ子さん」
「はい」
「私に愛の告白をして頂けませんか?」
「黒子……。
今日こそ、一つになろう」
「キャーーーッ!
お姉さま~~~!」
黒子が変化してるヤオ子に抱きついた。
ヤオ子は、変化を解いた。
「この人、危ないですね……。
偽者と分かってて飛びつくんですか?」
「何で、術を解いたんですの?
黒子は、お姉さまに出来ない、
あんなことやこんなことをしようとしていましたのに」
「するな!」
美琴のグーが、黒子に炸裂した。
「黒子さん。
もっと凄い術があるんですけど?」
「今の術以外いりません。
私は、お姉さまを増やす術以外に興味ありませんの」
「馬鹿か!」
美琴のグーが、黒子に炸裂した。
「だって~……」
黒子は、涙目で美琴を見た。
そんな黒子を見て、ヤオ子は、声を掛ける。
「美琴さんを、もっと増やす術出来ますよ?」
「本当ですの!?」
黒子がヤオ子に迫った。
「はい。
・
・
影分身の術!」
ボンッ! と煙が上がると、ヤオ子が四人に増えた。
「続けて、変化の術!」
ヤオ子が美琴に変化すると、黒子が鼻血を吹いた。
「ぐふぁ~~~!
お姉さまだらけ!」
「最悪……」
「ハァハァ……」
ヤオ子は、にやりと笑う。
「おいろけ・ハーレムの術!」
ヤオ子の変化した美琴が下着姿になった。
「ちょっと! 何考えてんのよ!」
「は~フー!
は~フー!
は~フー!」
黒子の呼吸がおかしくなった。
「もっと凄いことも出来ます」
「それ以上は、やらせないわよ!」
美琴のグーがヤオ子に炸裂すると、ヤオ子の術が解けた。
黒子は、我に帰り、鼻血を止め始める。
「黒子さんに申し訳ないことをしました」
「わたしには!」
「理想の男の子にでも、変化して欲しいんですか?」
「そういう意味じゃないわよ!
謝罪の気持ちはないのかと言ってんのよ!」
「変態にそういうのを求めるのは間違っていませんか?」
美琴のグーが、ヤオ子に炸裂した。
「この子、早く追い出さないとダメだ……」
美琴は、本気でそう思った。
一方の黒子は、鼻血を処理し終わるとベッドに潜り込んだ。
「寝ます……」
「あれ? どうしたんですかね?」
「さあ?
・
・
っつーか、わたしも疲れたから寝る……」
「そうですか?
じゃあ、あたしは美琴さんと一緒に……」
「あっち行け!」
ヤオ子は、黒子のベッドまで蹴り飛ばされた。
「……お邪魔しま~す」
ヤオ子は、黒子のベッドに潜り込んだ。
…
深夜……。
「ヤオ子さん。
ヤオ子さんってば」
「……何ですか?」
「さっきの凄いの続きを見せてくださいまし」
「黒子さんも好きですね~」
黒子とヤオ子が美琴の方を見る。
静かな寝息が聞こえる。
「では。
・
・
影分身の術!
・
・
(ボンッ!)
・
・
続いて、おいろけ・女の子同士の術!」
煙が上がった後、美琴同士が凄いことになった。
「ヴァァァァァァァァァァァァァァ!!」
…
次の日……。
ヤオ子は、部屋の隅の床で寝ていた。
美琴は、鼻血の海となった黒子のベッドを見て叫び声をあげた。
そして、黒子は、満面の笑みで昇天していた。