== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
待ち合わせの件の国の中心にある宿……。
辺りは、夕日に染まっている。
ネジ班は、苦渋に満ちた顔をしている。
シカマル班は、疲れた顔をしている。
シノ班は、ヤオ子以外の生気が抜けている。
「…………」
全員、無言。
シカマルが代表して綱手の予約を入れてくれた部屋を確認する。
「ハァ!?」
全員がシカマルを見た。
シカマルが苦虫を噛み潰したような顔で戻って来る。
「男も女も他の客と相部屋だった……」
「…………」
もう、怒る気もしない。
番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と②
シカマルが、とりあえずの予定を話す。
「夕飯だけは、宴会場でやることになってるらしい……」
「それまでは?」
「自由にしてくれ。
・
・
オレは精神的に疲れたから、風呂に入ってくる」
シカマル……投げやり。
しかし、異論者なし。
ヤオ子、大興奮。
「しゃーっ!
テンテンさんとサクラさんといのさんとヒナタさんの裸体を堂々と拝める日が来たーーーっ!」
ヤオ子以外、全員吹いた。
その後、全員でヤオ子を縛り上げる。
「何で~~~っ!?」
「お前、男も女も襲うんだってな?」
「何処でそれを!?」
「木ノ葉じゃ常識だ。
お前は、全員が風呂からあがったら入って来い」
「ううう……。
あんまりだ……」
その後、簀巻きにされたヤオ子を置いて、お風呂タイムになった。
…
ヤオ子は項垂れている。
至福の時間は、もう戻って来ない。
夢も希望もない。
でかい風呂場に一人では、何も面白くない。
「つまんない……。
お湯で戯れる天使達の桜色の肌を観賞する、夢のような時間が本当の夢になちゃった……」
しかし、神は変態を見捨てなかった。
ヤオ子が向かった時、先客が居た。
「あはぁ~♪」
その後、ヤオ子が何をしたかは言えない。
しかし、それが原因で再び簀巻きにされたことは確かだった。
…
夕飯時、宴会場では相部屋の客との夕食の準備が始まっていた。
全員浴衣に着替えて席に着き、後は食べるだけである。
キバが質問する。
「シカマル。
夕飯も、相部屋連中と一緒なのか?」
「そうみたいだな。
言っとくけど、宿取ったのは綱手様だからな」
「あの人のことだと、そういうミスがあるのも否定できないんだよな」
キバが頭を掻きながら、ぼやいた。
懐の赤丸も『そうなんだよね』というような鳴き声を漏らした。
シカマルが全員居るかの確認を取る。
(何か引率の先生をさせられた気分だ……。
イルカ先生って苦労してたんだな)
体験して初めて分かる苦労。
シカマルが、いのに質問する。
「ヤオ子は?」
「非常事態が解除されたから、野に放ったわ」
「アイツは、獣か?」
「獣の方がマシよ」
「それにしても遅いな。
もう、仲居さんが夕飯の準備し終わったのに」
「そういえば……。
相部屋になる客も見えないわね?」
そこにドタドタと走り込む音が響く。
そして、スパーン!と襖を思いっきり開ける音が響く。
「この変態の仲間は、お前らか!」
ヤオ子が簀巻きで巨大な扇子に吊るし上げられている。
「「ん?」」
シカマルと怒鳴り込んで来た少女の視線があった。
「「何で、お前がここに居る(んだ)?」」
相部屋の客は、砂の忍達だった。
…
浴衣姿のテマリに吊るし上げられているヤオ子に、シカマルが話し掛ける。
「お前……何した?」
「聞くな!」
テマリが顔を赤くして止める。
「言えないようなことをしたんだな?」
「そうだ!
コイツは、何なんだ!?」
「めんどくせーけどよ。
うちの里の下忍だ」
ヤオ子は、シカマルを見る。
「どうも……」
「お前、いい加減にしろよな」
「あたし、まだ何もしてませんよ?」
「嘘をつくな!」
テマリが、ヤオ子の首を絞めあげる。
「ギブ! ギブギブギブ!」
シカマルが溜息を吐く。
「殺してもいいぞ。
里には上手く言っとくから」
「ちょっと!
シカマルさん!」
「…………」
テマリは黙ってクナイを取り出した。
「ちょっと、お姉さん!
ジョークです!
もう、二度としないから!」
「あんな辱めを受けて我慢できるか!」
「ここは平和的に話し合いで! ね!
大人なところを見せてくださいよ♪」
「お前、反省してないだろう?」
「反省してますよ。
何なら、ここで罰を受けてもいいです。
・
・
お姉さんが相手なら、エロいことされても構いません」
「するか!」
「そうですか?
じゃあ、取って置きのエロ小説を朗読しましょうか?」
「するな!」
「じゃあ、どうすれば許してくれるんですか?」
「もういい……」
テマリが根負けした。
「じゃあ、簀巻きを解いて貰えます?」
「ああ……」
テマリが扇子に手を伸ばし止まる。
「どうしました?」
「確か……。
その下、裸じゃなかったか?」
「そうですよ。
お姉さんは、あたしの裸を衆目の前に初めて曝す人になれる幸運な人です」
テマリのグーが、ヤオ子に炸裂した。
「ふざけるな!
・
・
っ! 風呂場に戻るぞ!」
テマリは、ヤオ子を連れて出て行った。
場は、静まり返っている。
「最悪だ……」
「まったくだ。
相部屋が砂の忍というだけでも気まずいのに」
「ヤオ子なんて連れて来んなよ」
「ちゃんと情報収集できたの?」
「…………」
「聞くまでもないか……」
全員に溜息が漏れた。
…
宴会場にヤオ子が加わる。
そして、砂の忍である我愛羅、カンクロウ、テマリが加わった。
代表して、シカマルとテマリが取り仕切る。
「早速だが、スマン。
あれの管理は、木ノ葉でも困ってる」
「もういい……」
「本当は、この場で任務の報告会もするはずだったんだが、余所の里が居るとそれも出来ないな。
お前らも、そんな感じなんだろ?」
「ああ」
「飯食う時ぐらいは、敵味方なしにしようぜ?」
「分かった」
「では……」
「ああ」
「「「「「いただきます!」」」」」
ようやく夕飯が始まった。
全員、早速、一口口に運ぶ。
「…………」
全員が箸を置いた。
「「「「「不味い……」」」」」
宿の料理は、最悪な味だった。
「最悪じゃん!」
「本当だ……」
「…………」
砂の忍達は、全員、口を押さえている。
木ノ葉の忍もチョウジが葛藤している以外、同様である。
「女将! 女将を呼べ!
このわたしが海原雄山と知っての狼藉か!」
ヤオ子の叫ぶ声にサクラが乗った。
「いいこと言ったわ!」
いのも乗った。
「女将なんて16連コンボよ!」
シカマルは項垂れた。
(今回の任務、呪われてんじゃねーか?)
キバが、シカマルに質問する。
「飯抜きか?」
「考えが纏まんねーよ……」
「兵糧丸で我慢するか?
三日は、持つはずだろ?」
テンテンが異を唱える。
「嫌よ! そんなの!
今日の任務だけでストレス溜まってんだから!」
「あれはな……」
ネジが小声で同意を呟いた。
「誰か調理場借りて料理して来るか?」
キバの冗談も笑えない。
「「「「「ん?」」」」」
何人かが、ヤオ子を見る。
「その目は、何ですか?」
チョウジが、ヤオ子の肩を掴んだ。
「行って来い……!」
「チョウジさん?
何かいつもと雰囲気が違いますよ?」
「いいから、行って来い……!」
チョウジの目が光る。
「ひぃぃぃ!」
ヤオ子は直感的に何かに怯え、我愛羅の砂もチョウジに反応して防御体制を取っている。
「い、行って来ます!」
ヤオ子は自分のデイバッグを持つと調理場に消えた。
シカマルは、心の中でチョウジに感謝した。
…
~ 10分後 ~
お新香と海草サラダが運ばれて来る。
それを宴会場の全員が警戒しながら口に運んだ。
「今度は、大丈夫じゃん」
「雲泥の差だな」
「…………」
砂の忍達は、安心して口に運んでいる。
木ノ葉の忍達も安心して口に運び、次々と運ばれる料理に舌鼓しながら談笑を始めた。
シカマルは、あることが気になってテマリに話し掛けていた。
「独り言なんだけどよ。
聞こえたら悪いな」
テマリが視線を少しだけシカマルに移すと、耳を傾けた。
「今回の任務は面倒臭くてよ。
暴動を止めることなんだ」
テマリの眉が吊り上がった。
「依頼主があんな大名だから、
もしかして、砂にも同じ指令が出ているんじゃないかと思ってな」
テマリが少し考え込む。
「私も独り言を言うかもしれんが、耳に入ったら謝る」
「ああ」
「……砂は戦時の有効性をたてに、半ば強制的に依頼を受けている」
「嫌な予感がしててな。
両方の里に指令が出されてたんじゃないかと思った」
「もし、砂以外にも依頼が出ていたなら、里に対する裏切りだな」
「…………」
シカマルとテマリの中で結論が出た。
「「共同戦線を張らないか?」」
シカマルとテマリがにやりと笑う。
「じゃあ、夕食後にここで作戦会議だな」
「ああ」
その後、ヤオ子の料理を堪能しながら、夕食は無事に終わった。
…
夕食の片付けが終わり、相部屋に戻る前……。
宴会場では、未だ木ノ葉と砂の忍達が同席していた。
シカマルが、ネジとヒナタに話し掛ける。
「ネジ、ヒナタ。
白眼を使って、この部屋が監視されていないことを確認してくれ」
二人は無言で頷くと、白眼を発動する。
「安心しろ。
問題ない」
「私も同じ」
「了解だ。
・
・
まず、砂の忍も聞いてくれ」
シカマルの声に、我愛羅とカンクロウが視線を移す。
「今回の任務……。
砂と共同で進めたい」
シカマルの声に、にわかにざわめく。
「結論から、言っちまうぞ?
この任務……砂と同じ内容だ」
全員の視線が宴会場の中心で交錯した。
「チッ!
そういうことかよ」
カンクロウがぼやいた。
「ああ。
木ノ葉も砂も、ここの大名にまんまと乗せられたんだ」
サクラが意見する。
「それって重大な契約違反じゃないの?」
「まあな。
でも、両里とも同じ弱みがあって断れねー。
そこで、オレなりに今回の任務の意図を考えてみた」
「意図?」
「ああ。
・
・
木ノ葉の上役も砂の上役も……知ってたんじゃねーか?」
「「どういうことだ?」」
我愛羅とネジの声が重なった。
「このメンバー……。
何か思い当たらないか?」
「中忍試験とサスケ奪還の関係者だね、シカマル」
「その通りだ、チョウジ」
テマリが、イラつきながら質問する。
「だから、何だというのだ?」
「上役達は、こう考えたんじゃないか?
木ノ葉と砂の協定を強くしたい。
そのためには、共通の仕事を達成させるのがいい……ってな」
「つまり、この任務の途中で我々が気付くのを見計らっていたのか?」
「ああ。
わざわざ、同じ宿の相部屋なんて都合良過ぎるぜ」
リーは腕組みをして考える。
「しかし、何で、そんな回りくどいことをしたのでしょうか?」
「忍者は裏の裏を読むべし……って、カカシ先生が言ってたわ」
「サクラさん……。
そういうことですか」
「気に入らんな」
「何がです? ネジ?」
「やり方が悪戯じみている」
「確かに……」
シカマルが頭を掻きながら話す。
「まあ、尤もなんだが……。
ここの大名を理解するには的確だった気もするな」
「?」
「任務も依頼主も悪戯みたいなんだよ。
だから、オレ達の接触も悪戯じみてんじゃねーか?」
「理由になるのか?」
「少し対応する練習になった気がするぜ」
「まあ、そうだな……。
今後は、どうする?」
「オレとしては、共同で任務を遂行したいからな。
あちらさんの出方次第だ」
シカマルは、テマリを見る。
「お前達は、いいのか?」
「ああ。
オレが隊長だからな」
「お前がか?」
テマリは笑ってみせる。
そして、我愛羅とカンクロウを見る。
「どうする?」
「好きにしろ」
「オレは、賛成だ」
「理由は?」
「そう仕向けられてる気がするじゃん。
この国の情報を集める手数が砂の方が少ないんなら、共同して木ノ葉の力を借りろってことだろ?」
「なるほど。
反対する必要はないわけか。
・
・
シカマル。
話には乗ってやる」
「同盟成立だな」
「ああ」
シカマルが、全員を見る。
「じゃあ、今日、集めた情報を収集する。
人数が少ないから、砂から頼む」
「分かった。
と言っても、情報は少ないんだがな」
テマリが背筋を伸ばすと、集めた情報を話し出す。
「多分、皆、似たり寄ったりだと思うが、ここの国は忍者そのものを嫌っている。
それは、我々が大名に依頼された時点で敵だと思われているからだ」
「オレらも、そんな感じだった」
「だから、今現在集まっているのは、村人の噂話や立ち聞きしたものしかない」
テマリの話に、概ね納得の空気が流れる。
ほぼ全員が村人との接触は失敗している。
今、頭を抱えているシノ達の班以外は……。
「我々、砂が聞いた印象では、問題があるのは大名の政治にあると思われる。
不満の噂は、税の徴収量や税の使い方がほとんどだった。
・
・
以上だ」
シカマルが木ノ葉の仲間を見る。
「オレの班が集めたのも同じだ。
暴動に至ったとは言うが、結果、ストライキみたいなもんだ。
政治を正さないと税を払わないってな。
まだ死傷者は出てねー。
・
・
他の班は?」
ネジが代表して自分の班の情報を話す。
「こちらも同じだ。
まさか、忍者を警戒されているとは思ってなかったから、最初の接触で額当てを見せてしまい嫌悪感に気付いた。
次の村からは変化の術も使ったが、余所者扱いされた。
今、シカマル達が言ったように政治不信のせいで、余所者の一般人まで嫌悪感を抱いている感じだ」
「だろうな。
・
・
シノ。
お前達の班は?」
「ヤオ子が交渉に当たった……。
戻るまで待って欲しい……」
ヤオ子は料理作りを手伝ってから、調理場で洗い物まで手伝わされていた。
故に少し戻るのが遅れている。
「シノ達は、村人と交渉できたのか?」
シノ、チョウジ、ヒナタが沈黙する。
「オイ……」
「あれを交渉と言うのか……」
「暴走と言うのか……」
「結局、一つの村しか回ってないし……」
「すげェーな。
一回で情報を引き出したのよ?」
「…………」
「だから、何で、黙るんだよ?」
「すまん……」
「ん?」
「結局のところ、ヤオ子を制御できなかった……」
木ノ葉の全員から、溜息が漏れる。
「「「「「そういうことか……」」」」」
テマリが、シカマルに質問する。
「どういうことだ?」
「簡単に言えば、お前が風呂場で目撃した暴走を情報収集任務中に発動したんだよ」
「……最悪だ。
お前ら、何で、アイツを連れて来たんだ?」
「置いて来たかったに決まってんだろ。
火影様の命令で、仕方なく連れて来たんだよ」
「…………」
テマリが呆れた目で、シカマルを見る。
「そんな目で見んなよ。
あれで役に立ったんだからよ」
「は?」
「さっきの夕食は、その問題児が作ったんだよ」
「本当か?」
「ああ。
扱いづらいんだよ、アイツは」
「苦労してるな……」
「出来れば、今直ぐ隊長やめてー……」
「オイ……」
そこに襖が開いて、ヤオ子が戻って来た。
「疲れた……。
お手伝いと勘違いされて、結局、最後のゴミ出しまで手伝っちゃったよ」
ヤオ子は木ノ葉の仲間の後ろを通り、隅の自分の席に座るとデイバッグを置いた。
早速、シカマルから命令が出る。
「帰って早々で悪いが、情報収集の報告をしてくれるか?」
「食べながらでいい?」
「ああ」
ヤオ子は、一人で遅い食事をしながら話し出す。
「何処から話そうかな?
皆さんは、何処から知ってるの?」
「何処からって、何だよ?」
「うん?
今の状態からか?
暴動の始まる経緯からか?
その前の、この国の状態からか?」
「……何で、そんなに情報が集まるんだよ?」
「エロパワーのお陰ですね」
シカマルの投げた湯飲みがヤオ子にクリティカルヒットした。
「が~~~っ!
あたしのご飯に破片が~~~っ!」
「真面目に話せ!」
「嘘じゃないのに……」
「お前、ここに来い」
「シカマルさんの隣?
何で?」
(ツッコミが入れられないって言ったら来ないな……)
「大事な話を隅でされても困るんだよ」
「そうですか?」
ヤオ子は、前のシカマルとテマリの横に夕食を持って座った。
「続きを頼む」
「分かりました。
まず、村に入ったら警戒されましたね。
シノさん達は睨まれちゃいました。
でも、あたしの額当ては目に触れていないので、ただの余所者と思われたみたいです」
「そうか。
コイツは、第一接触からして他の奴と違ったのか」
「お姉さん。
コイツなんて連れない呼び方をしないでください。
お風呂で名乗ったでしょ?
ヤオ子って、呼んでくださいよ」
「お前みたいな虫けらは、コイツで十分だ」
「酷い……」
「続きは?」
「せっかちですねぇ」
ヤオ子は、余裕で味噌汁を啜る。
「あたしは、村人の中で順位の高い若者に接触しました」
「何だ? 順位って?」
「あたしの好みです」
全員、こけた。
カンクロウが声を絞り出す。
「ほ、本当に情報を引き出せたのか?」
ヤオ子は続ける。
「そこで、あたしは任務を忘れてこう言いました。
『特産品のイチャイチャキーホルダーは、何処ですか?』と」
シカマルとテマリのグーが、ヤオ子に炸裂した。
「「任務を忘れるな!」」
「だって、イチャイチャ系のキーホルダーなんて、ここにしかないんですよ?」
「もういい……省け。
余計なことは省け」
「そうですか?
まあ、それを切っ掛けにエロで打ち解けて、同士になったんです」
「何でよ……」
「シノ達が制御できないわけだ……」
「こっからが本題です」
頭痛を引き起こしていた面々が真剣に聞く姿勢を取る。
「まず、この国は木ノ葉と砂を結ぶ役割をするので、その間に工芸品を売る店や宿を置いて成り立っています。
つまり、本来なら里どころか国同士が仲良くないと困るんです」
「そうか。
火の国と風の国の行き来がなくなると、収益が途絶えるのか」
「はい。
だから、国民としては、余所から忍者を雇うのは嫌なんです。
だって、木ノ葉の忍が入ったら、砂の忍に取っては機嫌が悪いし、
砂の忍が入ったら、木ノ葉の忍に取っては機嫌が悪いでしょ?
だから、両大国に守られる道を選んで、この国には隠れ里がないんです」
「「なるほど」」
「そして、数年前に大名が代わってから、国民のストレスが溜まり始めます。
国民の税金が、正当な理由で使われなくなったんです」
「正当な理由?」
「はい。
人の往来を良くするために道を舗装したり、お店や宿屋に対する保障を手厚くしたりしないと困るでしょ?
そういう国なんだから。
でも、それがここ数年は一切なし。
税金は、大名の武家屋敷の改装に使われちゃったりしているんです」
「「あの馬鹿大名の屋敷は、そのせいか」」
シカマルとテマリから、同じ言葉が口から出た。
ヤオ子は、おかずとご飯を食べ終えると箸を置いて手を合わせる。
「それで国の経済が傾き出したんです。
例えば、さっきの舗装を例にすると、土木業者は、毎年発注があった案件がストップします。
その土木業者が生活を切り詰めれば、商店街の商品の売れ行きが悪くなります。
更に悪循環なのが、舗装されない道のせいで、
お客が別の国を通って往来を始めて、店も宿も収益が落ちることです。
さっきのご飯不味かったでしょ?
厨房でお話を聞いたら、腕のいい板前さんが余所に移っちゃったんだって」
「そういうことかよ……」
「諸悪の根源は、依頼主なんじゃないか?」
「頭に来た国民は、当然、税金を納めなくなります。
これを大名は暴動と言っています」
シカマルが腕組みをして考える。
「この問題さ……。
暴動を治めても解決しないぜ?」
「そうだな」
「本来、火の国と風の国の友好関係強固が目的のこの国が、
進んで亀裂の入るようなことをしちまってる」
「ああ。
同盟国となった以上、砂もそれを望まない。
それに力で暴動を抑えつけても、この国は滅ぶぞ」
「じゃあ、どうすんの?」
「オレ達だけじゃダメだな。
里だけじゃなくて国単位で問題発生だ」
「私達だけで何とかなる問題じゃない」
「そうですかね?」
「何で、そうなるんだよ」
「忍者は、裏の裏を読め。
まだ続きがあるんじゃないですか?
わざわざ、両国の上役が仕組んだんでしょ?」
「……そうだな。
結論出すにゃ、早過ぎだな」
「この後、会議だな。
砂は、全員出席する」
「そうか……。
こっちは、人数が多いからな。
ネジ! シノ! 会議に参加してくれるか?」
「了解した」
「分かった……」
「じゃあ、これで一旦お開きだ」
宴会場の情報報告は、これにて終了した。