== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
漫画片手におにぎりを食べながら、ヤオ子は読み耽る。
そして、候補となる漫画をポンと選り分けて、次の漫画に手を伸ばす。
「何か火炎系の必殺技って体当たり系ばかりですね。
火を纏って突っ込むとか……。
火を纏って突き破るとか……。
挙句の果てに火を纏って自爆って……。
あたしに死ねって言うのか?」
ヤオ子は溜息を吐いて、火の属性って使えないと思い始めた。
第12話 ヤオ子の自主修行・必殺技編②
手に付いたご飯粒をペロペロと舐め取り終わると、ヤオ子は叫ぶ。
「必殺技の定義は近距離だろうがーっ!」
意味が分からない。
「火炎系の忍術に至っては、
ほとんど、口から吐き出すものばっかりでカッコ良くないし!
ゲロゲロゲロゲロゲロゲロと!」
ヤオ子は地団太を踏む。
「あ・た・し・は!
普通に手から必殺技を出したいの!
雷を手に纏って切断するとか!」
カカシの千鳥である。
「風の刃で切り裂くとか!」
砂の忍バキの風の刃である。
「水龍を打ち出すとか!」
再不斬の水龍弾の術である。
「まあ、土遁はあたしの趣味じゃないから許すけど」
土遁の扱いは酷い。
「もうダメだ!
火遁の忍術考えた奴ってセンス悪過ぎ!
だから、ウチハの血引くサスケさんが
センスの悪いドSな性格になっちゃうんですよ!」
火遁と性格は関係ない。
それを言ったら、ヤオ子も性格は悪いことになる。
「仕方ない。
ここはセンスの塊のあたしが、
レボリューションを起こしてメイクするしかありません!
ヤオ・メイクス・レボリューションです!
Y.M.Revolutionを作るしかない!」
ヤオ子は漫画を再び読み出す。
そして……やっぱり、作らずパクるのであった。
…
ヤオ子は、数多の漫画から候補を選び抜いた。
そして、不幸にもヤオ子に気に入られた技は……。
「H×Hのリトルフラワー(一握りの火薬)です!
敵が使っていたというのは残念ですが、
必殺技のカッコ良さとしては申し分ありません!
冨樫先生ーっ! ありがとうーっ!」
ヤオ子は大声で叫んだ。
「まず、術のイメージを作らないといけません。
リトルフラワーは手を覆う(守る)チャクラの盾と
爆発させる火力が同時に備わっていないといけません。
この二つを両立させないといけないのがポイントです。
・
・
まず、チャクラの盾。
これは形態変化でことが足りると思います。
どっかの一族では、チャクラで絶対防御なんてしてると本に書いてあったので、
出来なくないと思います。
サスケさんの、本を無理やり読ますというドSな調教が役に立ちました。
・
・
次に爆発です。
こればかりは、印の開発が必要です。
でも、何とかなるでしょう。
豪火球あらためラブ・ブレスの術で、大体の火炎系の印は理解したつもりです。
エロは関わっていませんが、欲望が絡んでいるのであたしの脳はフル回転してくれるはずです」
ヤオ子は、誰も居ないのに説明口調だ。
こういう時は、大抵自分に酔っている。
「練習方法の手順です。
ハードウェアの仕様書作りが役に立ちます。
人間、何の経験が明日を支えるか分からないものです。
・
・
まず、チャクラの形態変化を練習です。
これをしないとあたしの手がなくなります。
イメージとしては掌を守るので、
掌からチャクラを放出しなければなりません。
・
・
どうやって?」
ヤオ子はいきなり暗礁に乗り上げた。
暫く停止して、ヤオ子は窓を見る。
森の外には、夕焼けが見える。
「サスケさんとの約束の時間ですね」
ヤオ子は、現実逃避してサスケの修行場に向かった。
…
サスケの修行場では、サスケがイライラして待っていた。
「遅いぞ!」
「……すいません」
サスケは、いつものようにふざけた言いわけをしないヤオ子に疑問を抱く。
「どうかしたのか?」
「いえね……ちょっと」
「何かあるなら言ってみろ。
気持ち悪い」
「何と質問をすればいいのか……。
サスケさんって、チャクラを放出できますか?」
「また、藪から棒に……。
木登りで足に出してるだろう」
ヤオ子は顎の下に指を立てる。
「あれも言われてみればそうか。
・
・
でも、あれってどっちかって言うと、
足に特殊能力付加してるイメージなんですよね。
サスケさんが早く走るあれは足に爆発能力を付加してるようなもんだし、
吸着は足の裏に粘着能力を付加。
・
・
完全にチャクラを放出しているような気がしないんです」
「純粋にチャクラだけを出したいのか?」
「ええ」
サスケは少し考える。
「試してみたのか?」
「いえ。
あたしの術で手から発生するのはありませんから。
ラブ・ブレスは口でしょ?」
「ら……?」
「ああ! 間違い!
豪火球の術!」
(何だ、今のは……?)
ヤオ子は誤魔化すために慌てて質問する。
「どうやって、修行すればいいですかね?」
サスケは腕を組む。
「難しいな……。
柔拳の類になるんじゃないか? それは?」
「柔拳?
あ! あれですか!」
「思い当たったか?」
「ええ。
言いつけ通りに、本に目を通してますから」
(素直な奴だな……。
この前の本に全部目を通しているのか。
オレにも理解できないものも多いから、半分はったりで言ったんだが……)
ヤオ子はトラウマによりサスケに逆らえない。
しかし、そのことを、サスケはまだ気付いていない。
「そうなると……。
日向家の人に聞くのがベストですけど……。
あの一族ってヤバくないですか?」
「……ヤバいな」
「ですよね~。
変に聞いたら、柔拳叩き込まれて内蔵バーンでボーンすよね。
ははは……」
「…………」
サスケは無言で視線を逸らした。
「笑ってくださいよ……。
寂しいじゃないですか」
「諦めろ」
「……サスケさん。
女には避けて通れない道があるんです」
「嘘だな」
「もう、どっちかと言うと、
人間には避けて通れない道があるんです」
「嘘だな」
「…………」
「あたしは、欲望に忠実に生きたいんだ!」
「それが本音か!」
サスケのグーがヤオ子に炸裂すると、ヤオ子は地団太を踏む。
「だって! やりたいんだもん!
手からチャクラ出したいんだもん!」
「ガキか!?」
「ガキだ!
・
・
あ~~~! もう!」
ヤオ子はガシガシと頭を掻き毟る。
そして、座った目でサスケに声を掛ける。
「サスケさん」
「今度は、何だ?」
「気弱な日向家って居ませんか?」
「そんな奴、居るか!
・
・
いや……居たな。
同期で一人……」
「教えてくれませんか?」
「お前、何する気だ?」
「脅します」
サスケのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「このウスラトンカチ!
他の日向の奴らに見られたら消されるぞ!」
(コイツ……。
忍者になりたくないとか一般庶民で居たいとか言ってなかったか?
何で、こんな危ない考えに走るんだ!)
「チッ!」
ヤオ子が舌打ちする。
「危険なことしないんで教えてくれませんか?
その日向の人」
「お前、本当に何する気だ!?」
「ストーキングします」
サスケは吹いた。
「ストーキングして、手からチャクラ出すのを観察します」
「やめとけ」
「断ったら、サスケさんをストーキングします」
サスケは、再び吹いた。
ヤオ子は、今度はサスケを脅す対象に変えた。
「マジです。
嘘じゃありません」
(コイツ……。
本物の変態だからな……)
「…………」
(すまん、ヒナタ。
オレは変態に付き纏われたくない……)
「バレてもオレの名前は出すなよ……」
「サスケさん。
あなたのそういう潔いいところが好きです」
ヤオ子は満面の笑みで情報を聞き出し、ヒナタを売ったサスケは心の中で謝罪した。