== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
※ヤオ子の夜這いの話が出ていたので、少しだけ番外編を書かせて貰いました。
※サスケとヤオ子に何があったのか?
※どうでもいい秘密が明かされてしまいます。
番外編・サスケとナルトの屋台での会話
火影の仕事を終えて、偶には友と飲みたい時もある。
久方振りの再会は、木ノ葉の片隅にある小さな屋台だった。
ナルトは、ゆっくりと歩いてくるサスケに気付くと手を上げた。
「サスケ!
今日は、貸し切りだってばよ!」
「屋台を借り切るなよ……。
店のオヤジが困ってんだろ」
屋台のおじさんは『気になさらず』と声を掛ける。
そして、酒とおでんを適当に注文して、ナルトとサスケは一息つく。
「何か、オレ達が酒を飲むって信じらんねーな」
「そうかもしれないな……。
要するに老けたってことだけどな」
「まだ、ギリギリ二十代じゃねーかよ。
カカシ先生なんか中年だってばよ」
「そうなんだがな……。
子供があんなにでかいと違和感あるんだよ」
「お前ら、恐ろしいほど早く子供できたからな。
一体、何があったんだ?
噂通り、ヤオ子に夜這いを掛けられたのか?」
「俺のことなんか、どうでもいいだろう」
「いや、気になるって」
「俺は、お前に二人も奥さんが居る方が気になるんだが?」
「う……」
ナルトはコップの酒を一気に煽ると項垂れた。
「ヤオ子のせいなんだってばよ……」
「は?」
「アイツさ。
雷影との一件を抑えてから、ある種の権力を持ってんだよ。
・
・
要するに木ノ葉の弱みを握ってるってこと」
「それが?」
「それを利用して綱手のばーちゃんを脅して、
俺が火影になるちょっと前に『火影の一夫多妻制』を組み込んじまったんだよ。
ばーちゃんは、ばーちゃんでヤオ子に毒されてるから、面白そうだって承認しちまうし……。
・
・
そして、当時のサクラちゃんとヒナタの修羅場をどうにかするために、
火影就任と同時に二人と籍を入れることになったんだってばよ……」
「あの訳の分からない結婚式の裏に、そんな恐ろしい事情があったのか……。
アイツ、影の支配者みたいな位置付けだな……」
「まあ、いいんだけどさ……。
こんな妙な幸せは、絶対に味わえないし……」
サスケは酒を一気に煽ると項垂れる。
「何か、すまん……」
ナルトとサスケが、店のおじさんを見る。
「「おかわり」」
二人のコップに酒が注がれると、ナルトがサスケに話し掛ける。
「で? お前の方は?」
「……話さなきゃダメか?」
「当然だってばよ」
サスケは、再び一気に酒を煽る。
「オヤジ。
一升瓶でくれ」
「体に良くないよ」
「シラフで話すとストレスで体調を壊すから、その予防だ」
「珍しい言い訳だね。
まあ、いいか。
『魔界の独裁者』でいいかい?」
「その酒、有名なのか?」
「百年に一回の奇跡の製造法だって噂だよ。
安いのに旨くて酔える」
「アイツ、何の酒を造ったんだ?」
サスケは、一升瓶から酒をコップに注ぐと話し出す。
「……国境付近の八百屋に移った頃、
ヤオ子が夜這いを掛けていたのは事実だ」
「事実なんだ……」
「当時は、今みたいな街みたいではなく、普通の一軒家だった……。
まあ、その時、既に旅館ぐらいの大きさまで、
ヤオ子の手で改造が進んでいたわけだが……」
「アイツ、何にでも手を出すんだな」
サスケは、更に酒を煽る。
ナルトも合わせて酒を煽る。
そして、サスケは、二人分、酒をコップに注ぐ。
少し酔いが回ると、サスケは語り出す。
「……4:4:1:1」
「何の割合だ?」
「夜這いの割合だ」
「分かんねーな」
ナルトが少しコップの酒を飲む。
「詳しく表すとこうだ……。
『ヤオ子が夜這いを掛ける:香燐が夜這いを掛ける:共同で夜這いを掛ける:ヤオ子の乙女
=
4:4:1:1』
になる」
「お前、365日の9割が夜這い掛けられてんじゃねーか……」
「ああ……。
アイツらを殴ってから寝るのが習慣になっていた」
「凄い習慣だな……。
・
・
で、『共同で夜這いを掛ける』ってのは?」
「ヤオ子と香燐が同時に夜這いを掛けるんだよ。
一人でダメだって分かって、連携を組んで襲って来るんだ。
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・
一度、夜這い阻止に須佐能乎を発動させた……」
「お前、純潔を守る少女みたいだな……」
「正直、複雑な気分だった……」
「つーかさ。
須佐能乎を発動させるって、何があったわけ?」
「ヤオ子がトチ狂って、殺す勢いで襲って来た……。
『体の自由を奪って、童貞を頂く!』って……」
「ヤオ子……。
サスケが通報したら、犯罪者として捕まるんじゃないのか?」
「捕まるだろうな」
「通報しないのか?」
「お前だったら出来るか?
『女の子に襲われそうなんです』って?」
「……出来ねーな。
そんな恥ずかしいこと……。
・
・
それで、最後の『ヤオ子の乙女』って?」
サスケは更に酒を煽り、コップに酒を注ぐ。
「実はな……。
あの滅茶苦茶なヤオ子が、年に何回か凄く汐らしくなるんだ……」
「あのヤオ子が? 何で?」
「……アイツ、途中の工程をすっ飛ばして忍者になっているだろ?」
「ああ。
アカデミーにも行ってなかったって」
「そのせいで忍者の心構えとか心の成長とかが、凄く中途半端なんだ」
「へぇ……」
「だから、任務で人が死んだ時とか……。
誰かが犠牲になった時に凄く落ち込むんだ」
「それは……。
まあ、分かるってばよ……」
「そういう日にアイツ……。
黙って、俺の布団に忍び込んで寝るクセがあるんだ」
「……随分と可愛らしいクセだな」
「そして、不覚にも朝起きてから、ヤオ子が潜り込んでいることに気付く……」
「なるほどね」
「だけど、それだけじゃない……」
「?」
「寝起きにアイツが捨て猫みたいな目で見てんだよ……。
上目遣いで目潤まして……。
そして、か細く名前を呼ぶんだ……」
ナルトは顔を上気させて煙を吐いた。
「凄い破壊力だな……。
普段とのギャップが……」
「しかも、パジャマ姿で髪を下ろして雰囲気も違う……」
「が……」
ナルトは酒を一気に飲むと、一息吐く。
「少し落ち着かせてくれ……」
ナルトとサスケは、暫く無言でおでんを口に運ぶ。
そして、サスケは項垂れて結論を呟いた。
「そんなことが、何回か続いて間違いが起きたんだ……」
ナルトがサスケの肩を叩く。
「男なら仕方ねーって……」
「あの態度を見たら……。
つい虐めたく……」
ナルトのグーが、サスケに炸裂した。
「この真正ドSが!」
「ってーな……」
「お前、どうしようもない奴だってばよ!」
「仕方ねーだろ!
アイツが、オレの弱点を攻めるんだから!」
「ドSが弱点って、何だ!?
聞いたことねーってばよ!」
「黙れ!
ウスラトンカチ!
・
・
こうして懐かしい掛け合いが響く中で、夜は更けていった。
そして、実は……間違いを起こしたのは、ヤオ子ではなくサスケだった。