== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
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サスケさんの右手が、あたしの上のパジャマを少し捲くり上げ、あたしの左の脇腹に触れました。
とても……とても冷たい手です。
冷たい感触がおへその辺りに移動するのが分かります。
あたしは口から漏れそうな言葉を飲み込み、目に溜まる涙を溢さないように耐えます。
体は熱く火照り、サスケさんの手が余計に冷たく感じます。
そして、サスケさんの親指が、再びあたしのおへそに触れました。
あたしは、声を出さないように必死に耐えます。
すると、サスケさんは意地悪そうな笑みを浮かべて執拗におへそを責めます。
あたしは我慢出来ずに、小さく声を漏らしました。
恥ずかしさに顔を背け、涙が頬を伝います。
そして、サスケさんは満足そうに微笑むと、右手を双丘へとゆっくり──」
ヤマトのグーが、ヤオ子に炸裂した。
番外編・ヤオ子の???
ヤマトは盛大に吼えると同時に、グーを炸裂させた。
「初っ端から、いきなりXXX板に移動させる気か~~~っ!」
「痛いですね……。
ヤマト先生が聞きたいって言ったんじゃないですか?」
「そういうのを聞きたいんじゃない!」
「何か気に入りませんでしたか?
『双丘へとゆっくり……』より、
『膨らみ始めたあたしの柔らかい部分に……』とかの表現がよかったですか?」
ヤマトのグーが、ヤオ子に炸裂した。
「馬鹿なの!?
君、本物の馬鹿なの!?」
「ヤマト先生の言いたいことは、よく分かりませんね~」
「ボク、おかしなことを聞いた!?
久しぶりに会ったから、何か変わったことがあったか聞いただけだよね!?」
「だから、あたしの初体験を──」
「話すな!
というより、その歳で初体験!?」
「サスケさんを落とすのには苦労しましたよ。
毎日毎日、夜這いを掛けて、ようやく実を結んだんですから」
「ヤオ子が夜這いを掛けてたのか!?」
「あの男、鉄の理性でガードされてて、いくら襲っても乗って来ないんですよ」
『まったく』と溜息を吐くヤオ子に、ヤマトは項垂れた。
「『襲う』『乗って来ない』どちらも、
女の子の口から出る言葉じゃない……」
「ただ、あの一回以来、抱いて貰ってないんですよね……」
「サスケも、何をやってんだ……」
「そうですかね?
あたしは軽く四桁ぐらい襲っていると思うので、よく耐え抜いてると思いますけど?」
「前言撤回……。
サスケは、男としてよく戦った……」
「ヤマト先生にも経験があると?」
ヤオ子はニタ~ッと笑いながら、聞きたいと目で訴える。
「言わない!
絶対に言わないよ!」
「あたしの初体験を教えますから」
「変態のヤオ子が言いたいだけだろう!」
「分かります?
ヤマト先生に話して、更なる快感を得ようと思っているんです」
「この子、もうダメだ……。
人として引き返せないところまで突き進んじゃった……」
「大げさですね~。
でも、少し残念なお知らせもあるんです」
「残念なお知らせ?」
「あたしはエロに突入する前の過程も大事にする女なんですけど、
どういう経緯で、サスケさんに抱かれたか思い出せないんです。
それをヤマト先生に正確にお伝え出来なくて……」
ヤマトが耳を塞ぐ。
「聞きたくない!
教え子の初体験を聞かされる先生って、何なの!?」
「どこの班でも、同じように行なわれていますよ」
「行なわれてないよ!
そんな忍は、ヤオ子だけだよ!」
「そうですかね?
女の子同士なら、『私の彼氏ったら……』って話で、
盛り上がるんじゃないんですか?」
「分かんないよ……」
「それで、今日、呼ばれたのは?」
ヤオ子と任務をすると、任務より先に疲れが溜まる。
ヤマトは任務開始前に疲れ切った気分だった。
しかし、常人なら忘れられないような出来事を、ヤオ子のせいで培った精神力で一時的に忘れて自分を立て直す。
「綱手様が、ヤオ子の様子を見るように簡単な任務をくれたんだ」
「綱手さん?」
「そうだ。
任務の内容は、指名手配犯の確保だ」
「任務を出されるからには、場所は分かっているんですよね?」
「ああ。
腕は鈍ってないだろうね?」
「修行は欠かしません!」
「相変わらずだね」
「ただ……」
「どうしたの?」
「最近、どうも体が重くて……」
「病気じゃないのかい?」
「あたし、病気しないはずなんですけど」
「それ間違いだから……。
人間は少なからず体に異常を来たすように出来ているから……」
ヤオ子は腰に右手を置く。
「気乗りしないけど、任務が終わったら病院に行ってみようかな?」
「健康診断をして貰うといいよ」
「そうですね。
ナースを見て来ます」
ヤマトが、こけた。
「普通に健康診断して来なさい!」
「あはは……」
ヤオ子が笑って誤魔化と、ヤマトは溜息を吐いて『あん』の門へと歩き出した。
「待ってくださいよ」
ヤオ子は、ヤマトを追って走り出した。
…
木の葉から忍の足で移動して、一時間ほどの街道……。
任務が始まり、情報通りに道を歩くターゲットを木の上から確認すると、ヤオ子がヤマトに話し掛ける。
「ヤマト先生。
ただ捕まえるのなんて簡単でしょ?
あたし、試したいことがあるんだけど?」
「試す?」
「新しい術を開発したんです」
「どんな?」
「土遁の遠距離忍術」
「土遁なのに遠距離なのか?」
「はい。
チャクラを地面に流し込んで、20m先に落とし穴を作ります」
「落とし穴……。
また随分と微妙な忍術だね……」
「でも、穴にトラップを流し込めますよ。
水遁と土遁を使えばいいんです。
流し込むチャクラの道は、落とし穴を造った時に用意できていますからね」
「なるほど。
落とし穴の土をセメント状にするのも手だね」
ヤオ子は首を振る。
「いいえ。
ここは、あたしが開発した服の繊維だけを溶かすエロ忍術を──」
「使うな!」
ヤマトのグーが、ヤオ子に炸裂した。
そして、グーの音にターゲットが振り返った。
「「あ」」
バレた。
「ヤマト先生の馬鹿……」
「馬鹿は、君だ!」
「どうします?」
「実力行使しかないだろう!」
「ああ……。
可哀そうな指名手配犯のおじさん……」
木の上のヤマトとヤオ子が瞬身の術で姿を消し、次の瞬間、ターゲットを前後で挟む。
『早い……』
ヤマトの拳を手で覆った木遁が、ターゲットの鳩尾に向かう。
それをヤオ子が後ろからターゲットを蹴り飛ばしたことで、ターゲットの顔面にヤマトの木遁がクリティカルヒットした。
「ヤマト先生のドS……」
「明らかに君が軌道を変えたよね!」
指名手配班は鼻血を流しながら、ズルリとヤマトの木遁で覆った木から顔を滑らし、地面にしこたま顔を叩きつけた。
本当に可哀そうな指名手配犯になってしまったターゲットをヤマトが抱え起こす。
指名手配犯は顔面を腫らして気絶していた。
「とはいえ、あの一瞬で軌道を変えられるのか……」
(修行を欠かしていないのは、本当のようだな)
ヤマトがヤオ子に目を向けると、腰の道具入れからロープを取り出してピーンと張る。
そして、ヤオ子は指名手配犯を踏んじ張り始めた。
ロープを背負うと、ヤオ子はズルズルと指名手配班を引き摺り始めた。
「行きましょう」
「信号弾を上げれば、役人が引き取りに来るよ」
「そういうのあったんですか?」
「今回の任務は……ってことかな」
「別に、このまま運んでもいいですよ?」
「まあ、予定外に前置きなしでやっつけちゃったから、
時間も有り余ってるし……いいか」
ヤマトが歩き出すと、ヤオ子も続く。
「じゃあ……。
あ・れ……?」
ヤオ子がバタリと倒れた。
その音にヤマトが振り返る。
「ヤオ子?
どうしたんだ!?」
ヤオ子は、お腹を押さえて苦悶の顔を浮かべていた。
汗も一気に噴き出している。
「急にお腹が……」
「任務前に言ってたことか?
何か悪いものでも食べてないか?」
「三日前……」
「三日前?」
「ヤマト先生にやめろって言われてた雑草のごった煮を食べました~……」
ヤマトが吼える。
「何で、拾い食いしちゃうんだ!?」
「そこに本で見たこともない草が生えていたので……」
「食べるな!」
「お腹痛い~……」
「……まったく!」
ヤマトは頭を乱暴に掻くと、信号弾を打ち上げてターゲットを役人に任すことにした。
そして、ターゲットを残し、ヤオ子を抱くと木の葉病院へと急いだ。
…
木の葉病院の待合室……。
ヤマトは動かずにヤオ子の診察が終わるのを待っていた。
(体が重いと言っていた時点で、病院に連れて来るべきだったんだ……。
ヤオ子だから大丈夫だと思ってしまっていた……。
ヤオ子だって、普通の女の子なんだ……多分。
・
・
これは、ボクのミスだ……)
ヤマトは自分を責め、強く両手を握る。
そして、そのヤマトに看護師の女の人が声を掛ける。
「担当の上忍の方ですか?」
「はい」
「もう少し時間が掛かります」
「時間?」
「ちょっと信じられないことが……」
「信じられない……」
(まさか大変な病気が……)
そして、二時間が過ぎた。
…
待合室で待つヤマトの前に、ケロッとした顔でヤオ子が現われた。
「待っててくれたんですか?」
「ヤオ子!
体の方は!」
「至って健康です」
ヤマトはホッと胸を撫で下ろす。
「よかった……。
じゃあ、何で、こんなに時間が掛かったんだ?」
「子供が出来てたんで産んで来ました」
「ああ、子供か……」
ヤマトが固まった。
「こ…ども……?」
ヤオ子が頭に手を当てる。
「あの日がないから、変だな~とは思ってたんですけど」
「待った!
産んだって言わなかったか!?」
「言いましたよ?」
「妊娠してたの!?」
「そうみたいですね」
「お腹、大きくなかったよ!?」
「稀にお腹が大きくならないで産まれることもあるみたいですよ」
ヤマトが後退りしながら訊ねる。
「……冗談だよね?」
「赤ちゃん、預かって貰ってますけど……見ます?」
ヤマトは頭を抱えて蹲った。
「産後の妊婦って、こんなに元気なのか……?」
「忍者なんだし、こんなもんじゃないんですか?
サスケさんに掛けられてる幻術に比べれば、あの痛みなんてプレイだと思って我慢できるレベルだし」
「倒れるほどの痛みがプレイなのか……」
「サスケさんは聖闘士☆聖矢のワンシーンみたいに、心臓を抉り出す幻術ぐらい普通に掛けますよ?」
「君が言ってるドSって冗談じゃないんだな……。
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そんなことより、綱手様になんて報告すればいいんだ……」
「病院の人達も困ってましたね」
「赤ちゃんなんて、ヤオ子に育てられるのか?」
「任務で担当してます」
「……そうか。
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って、安心している場合じゃない!
とりあえず、病院の人達に口止めして、綱手様に相談しなくては!」
ヤマトは、慌てて病院中を駆けずり回った。
…
火影の部屋……。
そこには激しく憔悴したヤマトと赤ちゃんを抱いたヤオ子。
憔悴し切ったヤマトを見るのは慣れているが、赤ちゃんというオプションを持って現われたのは初めてだ。
自然と綱手とシズネの視線がヤオ子の手元に集まる。
「任務の報告は、役人から受けている。
そして、ヤマトのその姿も、もう何も言うまい。
・
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しかし、それは何だ?」
綱手の指は、ヤオ子の抱いている赤ちゃんを差している。
「これは赤ちゃんです。
知らないんですか?」
「見れば分かる。
子守りのバイトでも、途中で請け負ったのか?」
「いいえ、任務後です」
「任務後に請け負うな……」
「請け負ってません」
綱手とシズネは疑問符を浮かべる。
「さっき、産んで来ました」
「…………」
妙な沈黙が流れた後、綱手が額を押さえながら確認する。
「も、もう一回いいか?」
「さっき、産んで来た」
綱手のグーが、ヤオ子に炸裂した。
「嘘をつくなーーーっ!」
「嘘じゃない……」
「じゃあ、父親は誰だ!?」
「サスケさんしか居ないですよ。
あたし、サスケさんとしかやってないし」
「や…る……?」
綱手とシズネが頬を赤くすると、綱手は奥歯が鳴るほど噛み締めてから叫ぶ。
「お前達、何を考えてんだ!」
「サスケさんに罪はありません」
「何でだ!」
「だって、あたしの夜這いが成功したんだもん♪」
クネクネと悶えるヤオ子に、綱手のグーが炸裂した。
そして、ヤオ子の襟首を掴む。
「全ては、お前が原因か!」
「健全じゃないですか。
悶々として想像妊娠するより、全然いいじゃないですか」
綱手は手を放すと額を押さえて、壁に寄り掛かった。
「コイツ、里の外に出しちゃダメだ……。
何をしでかすか分かったもんじゃない……」
「子供作って来ちゃうんですからね……」
「男も作れない、お二人に言われたくないですね」
綱手とシズネのグーが、ヤオ子に炸裂した。
「ヤオ子ちゃんだって、サスケと付き合ってないでしょ!」
「あれは、あたしが唾付けたんで、あたしのものです」
「いつ付けたの!」
「会って直ぐにですね。
アイアンクローを外すために掌を舐めました」
「本当に唾付けたんだ……。
しかも、全然ときめかない状況で……」
「この変態!
一体、どうすればいいんだ!?」
綱手は半狂乱で叫んだ。
その姿を見て、さっきの自分と重ねたヤマトは溜息を吐いた。
「実際、どうすればいいんですかね……。
ヤオ子が子供を産んだなんて、皆に知らせていいのか悪いのか……」
「めでたいことだから、言ってもいいんじゃない?」
「拙いだろ……。
モラルが乱れる……」
「でも、あの大戦の後で、産めや増やせやの状況なんじゃないんですか?
戦時中だと沢山子供を産むと褒美が出たり、手当てが厚くなったりするでしょ?」
「そうだけど……」
「各国、今は新たな忍者を増やすために頑張ってんじゃないですか? 子作り」
綱手とヤマトとシズネのグーが、ヤオ子に炸裂した。
「お前は、言い方が露骨なんだよ!」
「そうですよ!
しかも、ヤオ子ちゃんの年齢で出産なんて!
適齢期っていうのも重要なんですよ!」
「兎に角、ヤオ子は黙っとこうか!」
「チッ!」
ヤオ子の舌打ちに、綱手の機嫌は更に悪くなる。
「暫く秘密にしておこう……。
今は、里に余計な混乱を招きたくない……」
「そうですか?」
「お前、子育て出来るのか?」
「出来ますよ」
「お前、出来ないものなかったな……」
「はい。
話は、終わり?」
「ああ。
連絡出すまで、国境から出て来るな。
それとくれぐれも内密にな」
「は~い」
ヤオ子は、手を振って出て行った。
「頭痛い……」
「定期健診とかどうします?」
「それもあるな……」
「ヤオ子ちゃん、あの歳でお母さんか……」
「何か妙な敗北感があるな……」
「そうですね……。
ヤオ子ちゃんの性格から言って、男は絶対に寄り付かないと思っていましたから……」
「捕食するという手段が、ヤオ子らしいと言えばヤオ子らしいが……」
綱手達の頭の中では、悪魔のように笑うヤオ子の姿が思い浮かんだ。
「サスケは捕食されたのか……」
「四桁越えの夜這いを掛けてたみたいです……」
「一夜に何回襲えば、そんな回数になるんだ……」
「でも──」
シズネの言葉に綱手とヤマトの視線が集まる。
「サスケをその気にさせたのって、何でしょうね?」
「ヤオ子の魅力でか?」
「はい」
「…………」
何も思い当たるものがなかった。
「大いなる謎だが、どうでもいい……。
この始末をどうつけるかが問題だ……」
「そ、そうですね……」
ヤマトは項垂れて綱手に話し掛ける。
「綱手様……。
お願いがあるんですけど……」
「何だ?」
「今夜、自棄酒の飲み方を教えてください……。
とてもじゃないけど、正常な精神状態で眠れそうにありません……」
「私も付き合います……」
「お前達なぁ……。
まあ、分からんでもないか……」
ヤオ子の???=ヤオ子の出産 は、こんな感じで周りに迷惑を掛けていたのだった。