== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
密かに行なわれた、サスケの万華鏡写輪眼移植の手術。
そして、イタチへのサスケの目の移植手術。
サスケの包帯が取れるまでの暫くの時間……。
ヤオ子は、第七班のメンバーに気を遣って、一人復興途中の里へと向かう。
里の中では第四次忍界大戦へ向けての動きも見え隠れする。
「復興も道半ばなんですけどね……」
資材調達の場所で生地を手に入れると、ヤオ子は顔岩へと向かう。
そして、デイバッグから裁縫道具一式を取り出すと里を見下ろしながら、何かを作り始めた。
第109話 ヤオ子とイタチの葬儀
ヤオ子の手の中で徐々に形になっていく、それ……。
大きさを整え、柄を整え、そして、最後の仕上げに入る。
うちはの家紋を大きく下書きに加えると、下書きに沿って少しずつ着色して生地に染み込ませていく。
「うん。
いい出来です。
服屋さんで任務をしててよかった。
少し手作り感が出てしまいましたが、そこはご愛嬌です」
ヤオ子は裁縫道具をデイバッグに仕舞い、色当てに使った着色料を仕舞う。
仕上がった外套に大きく浮かぶ、うちはの家紋を見て、ヤオ子は頷く。
「暁の外套より……いいですよね」
ヤオ子は作り上げた外套を丁寧に畳むと、顔岩を後にした。
…
翌日……。
サスケの包帯が外れる。
医療忍術で細胞を活性化させるので、本来、ここまで慎重になることもないが大事を取った。
サスケは、自分の視力を確かめる。
「問題ない……。
今までと変わりなく見える」
サスケの言葉に、ナルト達に安堵の息が漏れる。
そして、サスケは立ち上がると綱手を見る。
「感謝する」
「素直に『ありがとう』と、言って貰いたいものだな」
「綱手のばーちゃん。
それは無理ってもんだ。
サスケは、昔っから歪んでんだから」
「どういう意味だ?」
「素直にありがとうって、言えないんだってばよ」
「そんなことはない」
「じゃあ、もう一度言ってみろよ」
「……もう言った」
「ほらな」
周囲に笑いが漏れる。
サスケは少し不機嫌な顔を表したあと、綱手に再度話し掛ける。
「イタチの体は……」
綱手が視線で手術室の一つを示すと、サスケは無言で手術室に向かった。
「サスケ……」
ナルトはサスケの名を溢すことしか出来なかった。
そして、ナルトだけでなく、誰もサスケの後を追うことは出来なかった。
…
サスケは手術室に横たわる、イタチの顔に手を触れる。
「兄さん……。
ちゃんと目が入ったんだな……」
そして、サスケは、自分の目蓋を撫でる。
「目から兄さんの瞳力を感じる……。
・
・
この目で終わらせてくるよ……。
これからは兄さんの目がオレの目で……。
オレの目が兄さんの目だ……」
これが兄との最後だと思うと、思い出と共に涙が零れる。
暫くの間、感情に任せるまま無言の兄と会話を続けると、サスケは涙を拭う。
「そろそろ行こう……。
皆を待たせてしまっている……」
サスケは、イタチを抱きかかえる。
「あの背中と同じぐらい大きくなったんだよ……。
兄さん……」
サスケは、イタチと共に静かに手術室を出た。
…
木ノ葉から少し離れた丘の上……。
今回は、事情を知る者以外にタスケも居る。
木の葉の中でサスケを目撃させないための配慮だ。
タスケがサスケを逆口寄せすると、サスケはイタチを抱いたままで現れた。
ナルトがサスケに話し掛ける。
「土葬にするのか?」
「いや……。
火を操るうちはの者のように火葬で送ることにする……」
「そうか……」
ナルト達はイタチを抱く、サスケをそのままに火葬のための木を組み上げる。
「あまり立派なものじゃないけど……」
「気にしてない……。
ありがとう……」
サスケが前に進むと、ヤオ子が駆け寄る。
「サスケさん……これ。
手作りなんですけど……。
着せてあげてくれませんか……」
ヤオ子の手には、昨日作ったうちはの家紋を背負う外套が握られている。
「うちはの家紋を背負うべき人です……。
暁の外套は似合いません」
「そうだな」
サスケはヤオ子から外套を受け取ると組み上げられた木まで進み、イタチを横たえる。
そして、ヤオ子の外套をイタチに掛ける。
「お別れだ……。
兄さん……。
忘れない……。
ありがとう……」
組み上げられた木に火が灯され、イタチは炎に包まれていく。
それを見ながらサスケの背中が震え、地面を涙が叩いている。
「出来るなら……。
遠い空から見守っていてくれ……」
空に上がる煙と共に木ノ葉を守って、弟を愛した優しい英雄は永遠の旅路に旅立っていった。
ヤオ子は、少ない人数でしかイタチを送れないことを悲しく思う。
しかし、盛大に送ることはイタチの守り通した真実を世間に知らしめることになり、イタチの思惑ではないと認識している。
だから、しっかりと胸に刻む。
絶対に忘れないことを誓う。
そして、安らかな眠りを心から祈った。