暗い密林の中―――ライフルを装備した迷彩服の男が周囲を警戒している。
辺りに脅威がないと思った男は、おもむろに倒木に座り休息を取り始めた。
懐からタバコを出すと口にくわえ火をつけようとした。
その男にとって、そこには誰もいないはずだった。
次の瞬間――
「グァ……」
うめき声と共に男は前のめりになって崩れ落ちた。
見ると男は心臓を撃ち貫かれている――即死だろう。
「………」
ガサガサ、と草木が揺れる音がする。
男が座っていた倒木の影にバンダナを巻いた男がうつぶせになって隠れていた。
撃たれた男と同様に迷彩服を着ている。
バンダナを巻いた男は何事もなかったかのようにその場を後にしようとした。
「………!」
辺りに気配を感じる。
3……4……5人だ。
どうやら見つかってしまったらしい。
敵兵は男を包囲するように陣形を組む。
バンダナを巻いた男は再び倒木に身を隠すと、持っていたライフルの残弾を確認する。
一人も生かすわけにはいかない。
しばしの静寂の後―――敵の隊長らしき男が合図を出した。
「全員伏せろ!!」
宗介は銃撃戦が始まると隣にいたかなめの胸倉を掴んで伏せさせ、素早く銃を抜き銃声のあった方へ発砲。
次の瞬間、辺りに静寂が訪れる。
かなめは深いため息をつき、ラピスは「またか…」といった表情をする。
レジの店員と客は唖然とその光景を眺めていた。
宗介の放った弾丸は、銃撃戦を行っている映像を流していたTV画面に当たっていた。
ちなみに、そのTVの周りには『メ○ル○ア・シリーズ最新作』と書かれたポスターが貼っており、その『○タ○ギ○・シリーズ最新作』と思われるゲームソフトが並べられていた。
「………」
7月24日 1730時(日本標準時)
駅前商店街
事務室でこってりと絞られ、学校や住所を書かされたあげく、『メ○ル○ア・シリーズ最新作』のポスターをなぜか渡され三人は解放された。
「二度と行けないじゃない、もう……」
事務室の外から出てかなめは言った。
「ここいらでレンタルやってるのはゲオだけだったのに……」
「だが、千鳥。あれが本物の銃撃戦ならば俺の取った行動は最適な……」
「うるさいっ!あんたの所為で『Xファイル』が借りられなかったじゃないっ!!」
モルダーとスカリーがどうなったのか、気になって仕方のないかなめであった。
「ふむ……」
「どうすんのよ。続きが気になるのに…」
そんなかなめに救いの手を差し伸べたのはラピスだった。
「私の家の近くにTUTAYAがあるから借りてこよっか?」
「ホントに?借りてきてくれんの?」
「うん」
「いよっしゃー!さすがラピス!私達いつまでも親友だからね」
リアクションの大きいかなめに後ずさりながらもラピスは頷いた。
「じゃあ私こっちだから」
「うん。明日学校で!!」
ラピスは二人を見送ると帰り道を歩き始めた。
自分の後をつけている人間に気づかずに…
ネルガル本社 会長室
天河明人は就業時間が過ぎたのにも関わらず、いまだ会長室に居た。
『マスター帰らないのですか?』
「ん?もうそんな時間か……」
明人は時計をチラリと見る。
「帰りに食材を買わなけれ……」
どうやら明人は今日の夕飯の事を考えていたようだ。
その時、明人の携帯が鳴る。見るとラピスからだった。
「はいはいっ………ラピスどうした?」
しかし携帯から聞こえる声はラピスではなかった。
『ざ~んねん。生憎俺はかわいらしいお嬢さんじゃない』
あとがき(いいわけ)
今回は無し。
修正
レミング博士の説明を別の所に……