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No.27656の一覧
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[17] 最終話[メランド](2011/08/13 00:47)
[18] エピローグ[メランド](2011/10/23 20:44)
[19] 第2部~プロローグ~[メランド](2011/12/04 23:08)
[20] 番外編 01[メランド](2012/08/26 23:39)
[21] 01[メランド](2012/08/19 23:20)
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[27656] 10
Name: メランド◆1d172f11 ID:00d6c168 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/31 00:11





「わぁ~! ドリルエステバリスだぁ~!!」


 開口一言、暢気な声を上げたヒカルちゃん。
 アキトとガイが目を輝かせる横で、私は頬をヒクつかせていた。


 比較的大きなフレームであるOGフレームよりさらに2回りは大きいであろうその体躯。
 右腕の肘から先には足先まで伸びる大きなドリル。空いた左手にも小さなドリル。ついでに両膝にも小さなドリル。どこみてもドリルドリル。
 よかったなセイヤ。もしもこれで頭にもドリル生やしていたらおまえを殴り倒していたところだ。


「…………んで、コイツは何なんだよ?」


 少し呆れ気味、棘のある口調でリョーコちゃん。
 気持ちは分かる。私も文句の一言も言いたい。しかし形的には私が作ってくれと言ったようなものなので文句は言えない。
 冷めた目で見られつつもセイヤはまるで気にしたそぶりもみせずにふんぞり返りながら機体の説明を始めた。


「くっくっくっ。よくぞ聞いてくれた。これぞエステバリス対艦フレーム。通称、ドリルエステバリス!!」
「てめ、今ヒカルが言ったことパクッただろ!?」
「まあ聞けって。とりあえずまずパイロットであるおまえらに機体の説明をする。いいか?」


 私はとりあえず頷いた。
 ちなみにここ格納庫にはパイロットである私たちの他にプロス、ゴート、ルリちゃんの3人も来ていた。
 何やらプロスペクターが電卓持ちながらブツブツ呟いてるのが怖いが、とりあえず気にしないことにした。


「まずは左手、ドリルブーストナックル。これは単純にワイヤードフィストにドリルつけただけの代物だ。ロケットパンチにしたかったんだがいちいち回収不能になるのが面倒なんでこういった形になった」
「フム。まあ破壊力自体は上がってそうだな。次は?」
「リン、そう慌てなさんなって。お次は脚部ドリル。通称ドリル・ニー。対近接用ドリルってところだな」
「……近接すぎんだろ。懐入らねえと使えねえじゃねえか」


 リョーコちゃんの呟きに私もウンウンと同意する。
 しかしアキト、ガイ、ヒカルちゃんには好評らしく、3人とも「すげぇ!」なんて言っていた。ちなみにイズミちゃんはウクレレ弾いている。もう好きにしていい。


「そして最後!! 超目玉!! これぞ対艦の要、通称ギガ・ドリル!! どうだ!? すっげえだろリン!? きっちりおまえの要望に沿った作りになっているぜ!!」
「……リンさん、もうちょっとまともな要望はなかったのですか?」
「ち、ちがうぞルリ!! 私は別にこんな要望は出してなんか……」
「ハッハッハッ!! そのとおりだぜルリルリ!! こんなんリンの要望じゃねえ。このドリルにはもう一段階先がある!!」
「もう一段階先…………?」
「そうさ!! これには実戦で試してみるのが一番だ。さあ、リン。さっそくシミュレーターに乗ってくれ!!」


 興奮気味のセイヤに手を引かれ、私はシミュレーターへと案内された。


 …………え? 何? なぜ私がテストパイロットになること確定してるんだ?
















 第9話 ドリル














 シミュレーターはエステバリスの単独戦闘を想定して行われた。
 まあ実際にはエステの単独戦闘なんてありえないのだが、どうもセイヤはドリルエステバリスの性能を見せ付けたいらしい。
 まあ私は本来単独戦闘の方が得意なので特に問題はないが……。


「セイヤ。この機体、やたらと挙動が安定しないぞ。ちょっとピーキー過ぎやしないか?」
『ああ。ドリルの回転による重力制御システムを考えたらそのサイズになった。馬力が上昇した変わりに旋回能力ほぼゼロに近くなったから動かしにくく感じるのは仕方ないな』
「……おまえ、柔軟さが売りのエステに柔軟さを消してどうするんだ。これ欠陥品じゃないか?」
『欠陥なワケあるか!! この俺とおまえの魂が刻まれた機体だぞ!! ドリルなんだぞ!?』


 よく分からない主張をするセイヤに、つい私はため息をつく。
 まあ、百歩譲ってドリルはいい。しかし、武装がドリルのみってどういうことだ?
 この機体、接近戦しかできない。むしろ突貫フレームの名の方が相応しい気がするのは私の気のせいか?
 せめてラピットライフルでもあればまだいいのだが……。


 画面の向こうでバッタが蠢く。3方向に別れ同時に私の機体目掛けて突進してくる。
 ……あれ? 迎撃しようにも、まともな武装が…………。


「このッ!!」


 すかさず左手のドリルブーストナックルを射出。
 バッタ一匹を紙くずのように簡単に引き裂いたが……当然残る2匹は健在。
 無防備な私目掛けて体当たりを仕掛けてきた。
 私は避けることができず、まともに喰らう。フィールドを全開にしてやりすごしたが、


「鈍重すぎるぞ!! こんな旋回速度では沈めと言っているようなものだ」
『そこをかわすのがおまえの仕事だろが。と言いたいところだが、その機体はかわすようにはできてねえ。その代わり耐久力は砲戦フレームの3倍だ。少々喰らっても沈まん』
「中のパイロットのことも考えてくれ……。セイヤ、このドリル・ニーだが、使い物にならんぞ。膝を相手にぶつけるなんざ不可能とは言わないが面倒過ぎる」
『ああ。まあ、その武装はエステの重力制御がメインだからな。ギガ・ドリル使う時の重力制御システムの要になっている。つまり、本来戦うための武装じゃねえ』
「実質武装2つじゃないか!? もういい!! ギガ・ドリル!! いくぞ!!」


 私のIFSが光り輝く。
 それに伴い唸りを上げて回転するドリル。目標は――――敵、戦艦!


 敵戦艦はディストーションフィールド、それもナデシコクラスの出力に設定してある。
 これが貫ければ、色々問題はあるもののこの武装に最低点ながら点数を与えることができる。
 右手を突き出し、そのまま一直線に戦艦に迫る。


「はぁぁぁぁッ――――って何だ!? コレは!?」


 セイヤが画面の隅でニヤッと笑いながら眼鏡を直す。
 見ていた全員の顔が驚愕に染まる。


「「「「「ド、ドリルがおっきくなった!!!!?」」」」」


 そう、今のギガ・ドリルは巨大化し、ドリルエステと同じくらいの大きさにまで膨れ上がっていた。
 その姿はまるで、私のエステがドリルに引っ張られているようにも見えた。


『ハッハッハッ!! これがギガ・ドリルだぁッ!! 細かい説明はいい!! これがドリルなんだよッ!!』


 巨大ドリルは、まるで紙くずのように敵戦艦を引き裂いたのであった。











* * * * * * * * * * * * * * * *







「へへへ、どうだリン。期待に沿えるデキだっただろ?」


 セイヤが子供のように笑いながら私に問いかけた。
 かなりの自信作だったのだろう。趣味を前面に押し出したとはいえ、皆の度肝を抜くことができて満足そうだった。


「くぅぅぅッ!! すっげえぜ博士!! 俺は!? 俺の分のゲキガンドリルはないのか!?」
「ギガ・ドリルだ!! まだあれ一つしかフレームはねえよ。それにあくまでまだシミュレーションだ。実戦投与にはまだまだ調整が必要だ」
「じゃ、じゃあ、今度の戦闘では俺のゲキガンガーにドリルをつけてくれ!! 必ず俺がキョアック星人を倒すから!!」
「おめえに託すと壊されそうで嫌なんだよ。とりあえず、このフレームはリン用に調整してある。おまえは後だ」
「ブラック!! 今度おまえのゲキガンガーに乗せてくれ!! いいだろ!? なっ!?」


 ヒートアップしてウザイガイから離れ、私はドリンクを口にした。
 その横にはルリちゃんの姿。何か聞きたそうに私の顔を見ていた。


「どうした、ルリ? 何かあったかね?」
「いえ。リンさんは本当にあれが実戦投与できると思っているんですか? 確かに破壊力は凄いですけど、他がゼロじゃないですか。そもそも戦艦くらい、ナデシコなら落とせます」
「……まあ、そのとおりだがね。エステでも戦艦を落とせる、そんな武器が開発できた。これはいいことなんだろう。それに、実戦でもまったく使えないというワケでもない」


 対艦フレームの弱点は殲滅戦闘には向かないこと。
 対多数にはまるっきり役に立たないお荷物になるが、そこは他のエステとの連携でどうとでもなるような気がする。


 しかしそうなると、頭数が足りなくなる。
 今現在、3人一組での運用が可能なエステバリス隊なのだが、1機足手まといがいると2人がすべてを負担しなくてはならなくなる。


 しかしそれらの問題を無視してもあの破壊力はすさまじい。正直、フィールドランサーどころではない。本当にあれがオモチャと言えるほどの破壊力を持っている。
 火星での戦いで使う機会があるかもしれない。一時どうなることかと思ったが、どうやら良いほうに転んでくれたようだ。
 私はニヤッと口角を上げた。


 火星到達まで残りおよそ2週間。


 それまでの間に、まだ、どれだけのことができるのだろうか?


 私は冷えたドリンクを飲み干したのであった。











* * * * * * * * * * * * * * *








<Side フクベ>






 ――――リン・如月。


 この名を知ったのは、火星大戦終了後のことであった。


 追い込まれた火星在留軍が見せた光。それが彼女だった。
 その彼女が生き延びて、再び私の元で火星を共に目指す。
 最早、これは運命なのかもしれない。私の死地はあそこしかない。


 彼女は謎が多い。
 報告書でしか彼女のことは知らないが、なぜ彼女はあれだけの腕を誇るのであろうか?


 火星でもいいパイロットはいたが、彼女の腕前は私の見た誰よりもいい。
 天才というものであろうか? そんな言葉で済ませてしまっていいものであろうか?


 彼女の瞳の奥に秘める闇。それに気付いている人間は他にいるのだろうか?


 彼女は何を目指す?
 私を殺すことか?
 それとも彼女もまた、死地を求めているのだろうか?


 この艦は若い。
 艦長含め、未熟な人間ばかり。
 そんな中で、彼女は私に何を示すのだろうか?


 すべては火星へ。


 フクベはポットに入ったお茶をカップに注ぐと、ゆっくりと口をつけたのであった。










 あとがき


 全然話は進まない中、ドリルばかりは10書き終えました。

 予定ではもう2~3話ほど小エピソードを挟みつつ火星到達、第一部終了といけたらいいと思っています。


 ちょっと完全に作者の趣味がでたエピソードでした。すみません。

 次回から、少しづつ話に進展があればと思っています。


 それではまた次回で。







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