「ア……君…」
意識がはっきりとしない。
スピーカー越しのような誰か声が聞こえる。
「ア…ト君…」
意識がだんだんはっきりとしてくる。
モニター越しのような視界が見えてくる。
「アキト君…」
意識がはっきりとしてきた。
『……ここは…どこだ…』
自分の声の筈だが何処か機械的に聞こえた。
どうやら俺はどこかの格納庫にいるらしい。
「アキト君!?」
『イネ…ス…か?』
「ええ……よかった……目が覚めて……」
モニター越しのような視界にイネスの泣き顔が映る
『また心配をかけたか…』
その涙を拭ってやろうとアキトは手を伸ばした
けれどモニター越しに映る自分の手は機動兵器のそれでありあきらかに見慣れた手ではない
『……どういう事だ?』
首を動かし自分の身体を見てみる。
視界に入ったのはコクピットのいるはずの自分の身体ではなく自分の愛機、ブラックサレナに酷似した機動兵器だった
『そんな…まさか…!』
俺は…人間だったはずだ…
「……ごめんなさいアキト君……」
『イネス?』
「アキト君の身体は前回の戦闘の時にすでに限界を超えていてあのままだったらいつ死んでもおかしくない状態だった…」
確か俺はネルガルの格納庫に戻ってきてすぐに意識を失って……
それで……
「だから私はアキト君の身体をブラックサレナの後継機になる予定だった新型機に組み込んでアキト君が生きていられるようにしたの…」
『じゃあやっぱり俺は……』
「今のアキト君は人間ではなく機動兵器よ……」
『そうか……』
「ごめん…なさい…例え…人間じゃなくなっても…お兄ちゃんには生きていて欲しかった…から…」
『イネス…いやアイちゃん、泣く必要はない。
いつ死ぬかわからない身体よりは断然ましだ。』
自分が人間じゃなくなったことに未練はない。
むしろ戦いやすい身体を手に入れたと思う方が強い。
「お兄ちゃん……」
ふと、いつも一緒だった桃色の髪をした少女を思いだした
『そういえばラピスはどうしたんだ?』
「あの子は今は寝ているわ。移植手術が終わるまでずっとアキト君の傍にいたのよ」
『そうか……じゃあこの事は知ってるのか。』
ラピスは俺がこんな身体になってしまったことをどう思っているのだろうか?
「あの子もアキト君がいないと駄目な子だからね、アキト君が倒れたときは声もださずに泣いてそのば座り込んでたから……」
『それは……すまなかったな』
「その台詞は後でラピスに言って上げて」
『それもそうだ』
おかしそうにくすくすと少し笑ったあとイネスは思い出したように告げた
「そうそう、明日からその身体のデータとりと改良だから今日は休んでてね」
『ああ……どうやってところでこの身体は眠るんだ?』
「説明…したいところだけど残念ながら私もよくわからないわ、
人間の身体の時と同じように眠れるんじゃないかしら?」
『そうか……』
眠る事に意識を持っていくと電源を切るように意識が途切れる。
そういえば飯とかはどうやって食べるんだろう?