目を覚ますといつもと天井が違った。
窓からカーテン越しに柔らかい光が注いでいる。
「...ぁれ?」
ボーっと天井を見上げながらカーテン開けて寝たっけ?と益体もない事が浮かんできた。
ゆっくりと周りを見渡すがやっぱり知ってる所じゃない。
すると自分の左側でもぞっと動く気配がする。
腕にかかる重さからルリちゃんかなっと見てみるといつもと印象が違っている。
「ん?」
布団を持ち上げて止まる。
ルリはフリルがついたシルクで編まれたネグリジェを着ている。
むしろ自分も同じような格好である。
じゃあっと右側を見るとラピスがいた。
やはり彼女も同じ格好である。
そこまできてようやく自分がピースランドへ来た事を思い出した。
プレミアとの話が終わり、3人は広間へと案内された。
着くと10人程が座れるテーブルの中央に花が飾ってあり、三人分の席とワイン、グラスなどが用意してある。
奥にはピアノが置いてあり、ヴァイオリンとチェロをあわせた演奏が流れている。
そして脇には数人のメイドが控え、執事までいる。
途中で起きたラピスを含め、アオとルリは唖然としていた。
「あの、これ...」
「はい、マエリス様がこちらでの食事には慣れてないであろうからと、一番狭い広間にご用意させて頂きました」
「一番狭いですか...」
それでもアオ達が今住んでいるところくらいはあるだろう。
更に広い所だったらどうなってたんだろうと考え、アオとルリは冷や汗を流す。
執事に促されるまま席まで行くと、控えていたメイド達が椅子をひきそこへ座る。
するとナプキンなどを手早く用意されてしまった。
3人は緊張してすべてなすがままになってしまった。
料理が始まってからは執事がフォークとナイフの順番などマナーを教えていく。
食事というよりも勉強会のようになってしまい食べた気はしなかった。
その後3人はお風呂へと案内されるが、そこでもメイド達が待ち構えていた。
更衣室でてきぱきと服を脱がされた挙句、中では洗われてしまった。
余りの事に呆気に取られてしまい、ラピスでさえされるがままになっていた。
そうしてお風呂を出るとまた身体を拭かれて着替えさせられる。
後は寝室へ向かったが、寝室でもネグリジェへと着替えさせられる事となってしまった。
本当なら3人の部屋は別々になる所だが、マエリスから同室にと厳命されていたそうだ。
そんな事を思い出したアオは昨日で何か大切な物を失った気分になっていた。
あんな生活には一生慣れないだろうしむしろ慣れたくない。
アオが起きたせいか、ルリももぞもぞと動くと目を覚ます。
「ん...?」
「おはよ、ルリちゃん」
「...おはよございます」
そうして朝の口づけをすると次第にルリの目が冴えてくる。
今日はルリの目がはっきりした所でルリへ耳打ちをする。
「ネグリジェ似合ってるよ♪」
ルリの顔が一瞬で真っ赤になった。
文句を言おうとする口をすかさず自分の口で塞ぐ。
思わず逃げようとするが、腕に力が入らずなすがままになる。
ルリの目がとろんと溶け始めた頃にようやくアオは離れる。
「...ばか」
所が変わってもやってる事はあまり変わらないらしい。
その後ラピスが起きた後は同じく朝の口づけをすると、今度は似合ってるよと頭を撫でた。
ラピスは嬉しそうな笑みを浮かべていた。
起きた後は慌ただしく過ぎ去っていった。
食事から始まり、身支度を済ませた後、執事から予定を聞かされる。
3人は聞いていく内に表情が絶望的になっていった。
何故なら30分後からの大広間で開かれる国内メディア向けの会見に始まり。
海外メディア向けの会見。
王族・貴族との食事会。
城下町でのパレード。
テーマパークでのパレード。
そして晩餐会と移動時間くらいしか休憩がないのだ。
だが、そんな事で落ち込んでいる余裕もなくバタバタと着替えにヘアメイク。
その間に用意されている台詞の暗記をしていく事になった。
そして会見が行われる。
終わるとまた着替えにヘアメイクといったように予定に追われっぱなしで落ち着いたと思ったらもう晩餐会も半ばになっていた。
余りの慌ただしさに思考回路がおかしくなっていたようだ。
ふと隣を見たら、ラピスも似たようなものだったのか、こちらを見て困ったような笑顔をしていた。
その向こうには衛兵の代わりにアオが立っている。
近くにいる事に安堵するとまた正面を向き、食事を続けた。
晩餐会も終わり、お風呂で洗われて寝室で着替えさせられ、ベッドに入った所でようやく緊張が取れた。
ルリとラピスは盛大なため息をつくと、二人の間で身体を起こしているアオの太ももにかじりつく。。
「どうしたの、ルリちゃん、ラピス?」
「今日一日で私には王族なんて無理な事がわかりました」
「アオ、先立つラピスを許して...」
「そんな事言わないの」
アオは苦笑しながら二人の頭を撫でる。
「アオさん」
「なに、ルリちゃん?」
「後何日いますか?」
「それを決めるのは私じゃないよ。ルリちゃんとラピスが決めないとね」
「そうですか。ラピスはどう考えます?」
「私はルリが決めた事ならいいよ」
「それはずるいです...」
「ルリちゃんの方がお姉さんだから」
「むぅ...」
「ゆっくり決めな?」
「...はい」
アオはルリとラピスに足を話して貰い、布団へ潜り込むと二人にお休みの口づけをした。
そうして、夜は更けていった。
三日目以降は二日目に比べるとだいぶ楽になった。
ただ、会見などの外向けな行事がほぼ無くなった代わりにプレミア・マエリスとの打ち合わせが多くなった。
アオ、ルリ、ラピスと話し合った方が客観的な意見と詳細なデータによる検証をしてくれるから会議なんかよりよっぽどいいらしい。
そしてアオ達がピースランドを来訪してから一週間が経った。
ルリはプレミアとの話し合いの際、一番に明日発つ事を切りだした。
「そうか、明日発つか」
「はい、急で申し訳ありません」
「何構わん。その為に予定を極力入れなかったのだからな」
「ありがとうございます」
プレミアとマエリスは寂しそうに微笑んでいた。
その夜、アオは珍しく一人でベッドに寝ていた。
断じて喧嘩した訳ではないが、少し物足りない。
それと同時に目はこれ以上ないくらい優しい色を浮かべていた。
「アオさん、すいません。今日は一緒に寝れません」
「アオ、ごめんなさい」
ネグリジェに着替えさせられ、さぁ寝ようという時のことである。
ルリとラピスはそう言って頭を下げていた。
「へ?」
突然の事にアオはきょとんとしてしまった。
二人はそんなアオに申し訳なさそうにしながらも、どこか恥ずかしそうにもじもじとしていた。
「あの、今日は父と母の所で寝ようと思うんです」
「ルリと話して決めたの」
その言葉を聞いた時、疑問が氷解した。
それと同時に嬉しくてアオは二人を抱き締める。
「うん、いいよ。一杯甘えておいで♪」
可愛くてしょうがないとばかりに頭をわしわしと撫でる。
せっかくメイドが梳いてくれたのに台無しである。
そんなアオにルリとラピスは嬉しそうに笑った。
「あ、でも行く前に...お休み、ルリちゃん、ラピス」
「お休みなさい、アオさん」
「お休み、アオ」
日課は忘れない。
その事を何度も思い出し、アオは嬉しそうにニコニコと笑っていた。
ただ、物足りない事には変わらない、そのままルリとラピスの枕を抱いて寝る事にした。
そして、メイドへと伝えてルリとラピスはプレミアの寝室へと案内された。
話は既に聞いたのか、マエリスも部屋で待っていた。
2人はとても嬉しそうにルリとラピスを迎えてくれた。
プレミアとマエリスは2人を間に挟んで布団へと潜り込んだ。
寝室には遅くまで話声が響いていた。
日付が変わり、ついに3人がピースランドを発つ日となった。
「ルリ、ラピス、またいつでも帰ってこい」
「いつでも連絡をして来なさいね」
「「「「「姉さま方!次はもっと遊びたいです!」」」」」
「はい、必ずまた来ます。連絡もいれるようにしますね」
「うん、私も。それと次は一杯遊ぶ」
プレミアとマエリスは頬笑みながら、弟達は涙が止まらないようだ。
そして、プレミアとマエリスはアオへと目を向けた。
「アオ殿、そなたにルリとラピスを預ける」
「アオさん、あの言葉違える事なきようお願いします」
「はい、私の全てを賭けてでも守り通し、共に生きます」
そうしてアオ達3人のピースランド来訪は終わった。
このアオ達の来訪は事実、ピースランドにとっての転機となる。
行方不明だったプレミアとマエリスの子供が見つかり、一人は現在違法となっているIFS強化体質者そしてそのクローンも発見された。
そんな二人をプレミアとマエリスが認知した事は世界中へ驚きを持って報じられる事となった。
そして落ち着いた雰囲気でラピスを気遣うルリと愛らしい上に明るく可憐なラピスの好対照な二人の姿に、全世界が熱狂した。
ただ、常に付き従っているアオへと向ける二人の表情から、ただならぬ関係だとの噂が流れると【百合の聖地】としても有名になってしまった。
それ以降、ピースランドテーマパークの入園者は女性同士のカップルが急増する事になる。
そしてテーマパーク自体も金にあかした模倣から『世界中の本物を楽しめる』という形へと変わっていく。
レストランからお土産屋までそれぞれの地域に根差したお店を頼み込んで引っ張ってきた。
食材、材料も全て現地の物を取り寄せているとして世界中のモノが楽しめると評判になる。
更に、プレミアはルリとラピスのようなIFS強化体質者の保護を開始すると発言。
それと同時に一般的なIFSの奨励を行い、アオ達を広告塔に普及活動を始める。
IFS強化体質者保護の交渉はピースランドとネルガルの橋渡しをアオ達がする事となる。
そこで、IFS機器を全国に配備するという利権と引き換えにピースランドで被害者の保護を請け負うという形に納まった。
これにより、IFS普及率は地球上では一番高い国となる。
しかし、アオ達が広告塔になった結果IFSをつけて入軍すると3人の傍にいれるという噂が広まる事となった。
その結果、ピースランド軍へのIFS普及率が100%近くまで上がりIFS搭載の人型機動兵器が大量配備される事になっていく。
そして...
「帰って来たよ!帰って来たのですよ!」
「疲れました~」
「はぅぁぅ」
3人はネルガルの応接室でぐったりしていた。
「色々と問いただしたい事が山盛りだけど、ひとまずお疲れさん」
「あい、お土産。エリナとプロスさん、ゴートにNSSのみんなへもあるよ~」
そう言うと大きい紙袋が5個どすどすと並べて置かれる。
「これは、凄いな」
「うん、ナガレにはピースランド限定の香水だよ。かなりいい匂いだったからおすすめ。
エリナにはドレス、私とルリちゃん、ラピスが3時間かけてエリナが似合うと思ったのを選んだ。
プロスさんには高級ボールペンとネクタイピンにマネークリップ。ゴートさんは迷った末にスーツ一式、靴もついてるよ。
NSSのみんなは覚えてる限りのそれぞれの趣味にあった物を買ってきたよ」
「わざわざすまないね。へぇ、ほんとにいいなこれ」
「でしょ」
喜ばれて嬉しいのかアオは満面の笑みだ。
「これ、シルクじゃないの。フリルドレスで色っぽくまとまってるし、いいの本当に頂いちゃって?」
「気に入ってくれた?」
「えぇ、着るのが楽しみだわ。ルリとラピスもありがとね」
「いえ、気に入って頂いてよかったです」
「気にしないで、エリナ」
エリナもドレスを見て目が輝いていた。
姿見で合わせて見てきゃいきゃい騒いでいる。
「これは...いいものですね。今後使わせて頂きますよ」
「カードマネーの時代にマネークリップはあれかなって思ったけど、そういうイメージだったので」
「いえいえ、現金も持ち歩いてますから。お二人もありがとうございます」
プロスは自分のセンスにあった物だったようででご満悦。
既に付け替えて終わってる所は流石である。
「むぅ...スーツか」
「だって、ゴートさんの趣味知らないんだもん。だからせめてブランドはいいものです」
「おぉ...これは、高かったんじゃ?」
「頑張りました!」
「感謝する」
ゴートはスーツでちょっと悲しそうだったが、ブランドがブランドな為におぉ!と驚いた上ご満悦だ。
そんな中、ルリとラピスは戻ってきたという安心感からか二人で寄り添って寝始めてしまった。
「あら、寝ちゃってる?」
「ふむ。帰った方がいいんじゃないかい?」
「ん~、いきなり起こすのも悪いからある程度話しちゃうよ」
そういうとアオは大きめのストールを荷物から出し、二人にかける。
アカツキも二人が風邪をひかないように温度と湿度の設定をあげる。
「手間かけちゃうね」
「いや、構わないさ」
「ん~と、どうしよ何から話せばいい?」
「そうだね、IFS強化体質者を預かるって件から頼むよ」
「ん、了解」
そうしてアオは説明を始める。
ピースランドがIFS強化体質者の保護をする代わりにネルガルへはピースランドのIFS機器に関する利権を与えるよう考えている事。
そしてプレミア軍でのIFS付与志願者が急増している事から、IFS搭載の人型機動兵器を大量購入予定がある事。
後は、引き取ったIFS強化体質者は一般的な授業に加えてアオとルリがIFSの教育を行う事を伝える。
「ん~、そうかい。IFS強化体質の子が取られるのは痛手だけどピースランドと繋がりが深まるならむしろプラスかな?」
「まさかここまで話が広がるとは思わなくてね。先に言えたらよかったんだけど」
「いやまぁ、結果プラスなら問題ない。それに保護はしても大人になったら自由なんだろ?その時にうちに来て貰うさ」
「プロスさんなら確実に捕まえてくるだろうね」
「むしろ合法的に働いて貰えるようになるんだ、文句なぞ言わせないさ」
「私達に懐かせちゃおうかなぁ」
「ほんとにそうなりそうだからそれだけは勘弁してくれないかい?」
「残念」
アカツキの直観は正しかったと後に判明する事になる。
「それとね、プレミアさんとマエリスさんには私達の事話したよ。それで例の件に協力してくれる事になった」
「へぇ、どういった形になるんだい?」
今度は火星自治政府樹立の件を話していく。
火星への投資として、軍備に必要なお金はピースランドが払う事。
自治政府樹立後すぐに火星へ支店を出し、火星圏の金融を牛耳ろうとしている事を伝える。
「ネルガルにも手伝って貰ってるって言ったらあの坊主が噛んでるなら勝算があっての事だろうって即答で決めちゃった」
「そこまで買われてるのか、1回会っただけなのに侮れないなあのじじい」
「結構豪快で親馬鹿だったよ。ミスマル・コウイチロウに似てるね」
「そっちも曲者じゃないか。どちらも下手な事すると首を齧りとられるからな。いや参った」
「その割に楽しそうだけどね」
「どうしようもない輩との相手とは比べ物にならないさ」
「そういうものなの?」
「あぁ、そういうもんさ」
こういう時の二人の会話は旧友と話しているような雰囲気になる。
お互い気兼ねなく話せる相手が希有な為二人には貴重な時間である。
アカツキに取っては幸か不幸か、アオからの認識では最高の親友として見られていた。
「あぁ、そうだ。二人の名前変わったからよろしくね」
「そうか、確かにそうなる訳だね。あそこは確かフリーデン家だったね」
「そう、ルリちゃんは【ルリ・フリーデン】、ラピスは【ラピス・L・フリーデン】になったから手続きよろしくね」
「ドイツ語で平和。だからピースランド。安直だねぇ。プロス君頼むよ?」
「えぇ、手続きしておきます」
プロスへと指示を出したアカツキは何か思い出したようにぽんと手を打つ。
「あぁ、こっちも忘れていたよ。ボソン通信可能になったよ」
「ほんと?」
「あぁ、ここに書いてあるのが仕様書だ」
「これなら、うちからでも繋げられるね。ありがとう」
「いや、こちらも当初はここまで早く活用出来るとは考えてなかったからね。助かってるよ」
「じゃあ、ちょっと使ってみる」
アオはコミュニケの設定を合わせていく。
そして設定が終わるとオモイカネを呼びだした。
その瞬間
『アオ!』『久しぶり!』『会いたかった!』『一週間連絡ないから寂しかった』『どこ行ってたの?』『こっちにはいつ来るの?』
アオの周りがウィンドウだらけになってしまった。
これにはアカツキだけじゃなく、エリナやプロス・ゴートも驚いていた。
「オモイカネ、落ち着いて。周りを見てみて?」
『わかったよ、アオ』
そうしてウィンドウが一つに戻ると周りをぐるっと見渡していく。
オモイカネはどういう事だろうと考えているのか固まっている。
おもむろにアオの方へ向くと聞いてきた。
『会長室ですか?』
「そう、ボソン通信が出来たからね試してみたの」
『ほんと!?それならこれからはいつでも話せる?』
「うん、話せるよ。それじゃ、挨拶してね。こっちじゃ初めてでしょ」
『あ、そうだね。ネルガル重工ナデシコフリートサポート艦及びナデシコC試験艦ユーチャリス搭載AIのオモイカネです』
律儀にぺこりとウィンドウがお辞儀する。
「いや、なんか凄い人間的だね」
「悪戯ばかりするし、勝手に色々録画して保存してるし困ってますよ」
『え!ばれてる!?』
「ラピスが見てるので知った」
『あぁ、気付かれないように見てって言ったのに』
そんな会話を続けるアオとオモイカネにアカツキは大笑いしている。
アオは肩をすくめるとちくちくとオモイカネをいじめていく。
そうしてオモイカネも合わせて、5人で滞在中にあった事などを談笑していく。
ルリとラピスはまだまだ起きそうにない。
「さて、そろそろルリちゃん達起こそうかな」
「こちらで運ぼうかい?」
「ダメ。他人に触らせたくない」
「過保護だねぇ」
「すいませんね~」
「ま、構わないさ」
そうしてルリとラピスを起こしにかかる。
ルリもラピスも目を開けるが、ぽーっとして頭が動いてないようだ。
というよりもアオを見て何かを待っている。
「彼女達どうしたんだい?」
「...あ~、やるしかないのかな。これ」
その言葉の意味がわからずアカツキ達4人はきょとんとしてる。
アオはしばらく悩んだが、意を決したようだ。
「え~っと、こんな所でスイマセン」
一応謝ってから、二人へと口づけをしていく。
それを見たアカツキ達は絶句して固まっている。
「ルリちゃん、ラピス。おはよう」
口づけされた二人は段々と目の焦点があってくる。
「あ、アオさん。あれ、ここは。寝ちゃってました?」
「ん、アオ?」
「うん、二人とも寝ちゃってたのよ。そろそろ帰ろうと思って起こしたんだけど...」
「「けど?」」
「はい、お寝坊さんを起こす為にいつものをさせて頂きました。みんなの前で」
そう言われて周りを見渡す...と顔が真っ赤に染まった。
ラピスもピースランドからこっち、だいぶ年頃の女の子らしくなった。
「はい、状況を把握できた所で帰りますよ?」
「「...はい」」
いまだに真っ赤である。
そんな二人が可愛いので、アオは頭を撫でてあげる。
そんなアオにようやく復活したエリナが問いかける。
「ね、アオさん。いつもしてるの?」
「え~っと...起床・出勤・帰宅・就寝の時には必ず...」
「いやはや、お熱いですな」
「...むぅ」
「それでも...負けてたまるものか」
アカツキはそれでもまだ諦めないようだ。
そうして3人はネルガルを後にすると1週間ぶりに自宅へ戻る事となった。
「「「ただいま~!」」」
「あ、お帰りなさい。アオさん、ルリちゃん、ラピスちゃん。
テレビ見てルリちゃんとラピスちゃんが映っててびっくりしちゃった、凄かったね。」
「出かける時に内緒にしててごめんなさい」
「いいのよ、気にしないで。あれだけ凄い所なんだから言えないのはしょうがないんだしね」
「ありがとうございます。【ルリ・フリーデン】となりましたけど、改めてお願いします」
「私も【ラピス・L・フリーデン】です。お願いします」
そう言うと二人は頭を下げた。
マナカは正直二人が姫だったという事もあり、どう対応していいか不安だった。
だが、二人を見て何も変わっていないと安堵した。
「そっか、変わったのは名前だけだもんね。ルリちゃんはルリちゃん、ラピスちゃんはラピスちゃんだよね」
「「はい」」
そうしてマナカは二人を抱き締める。
「お帰りなさい。ルリちゃん、ラピスちゃん」
「「ただいま」」
そうして3人は【我が家】へと帰って来た。