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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/12 21:38
1996年4月24日 2045 イングランド南部 カンタベリー基地


「何故です!? 何故、我が隊の出撃が許可されないのですかっ!!」

イーデン女男爵(Baroness Eden)ダイアナ・ベアトリス・イーデン中佐は激昂し続けていた。
見事な金髪と白磁の肌。 讃えられた美貌。 未だ30代に達しない彼女は、その美しさも相まって、『アテナイ(アテナ女神)』と呼ばわれる衛士である。

彼女の激昂の理由。 今、対岸の大陸には8万を数えるBETAの大群が蠢いている。 
それを支えるのは、国連軍の僅か3個旅団の戦術機甲部隊のみ。

そして、その事態を憂いた女王陛下直々のお言葉に寄り、派兵された我等! 
それが何故に戦場を駆ける機会と、その名誉を奪われねばならぬのか!

「判っている筈だ、イーデン中佐。 ―――いや、イーデン女男爵」

目前で苦り切っているのは、国連軍第1即応兵団長、ヘルマン・オッペルン・フォン・ブロウニコスキー少将。

ブロウニコスキー少将とて、1人でも多くの戦力が欲しい。 1機でも多くの戦術機が欲しい。
だからこそ、死闘を続ける部下達を大陸側に置いて、『こちら』に増援要求に赴いていたのだ。

その意味では1個戦術機甲連隊の戦力は、喉から手が出る程欲しい戦力だ。
迎撃タイプのトーネードⅡGR.5Bとは言え、今回は純然たる防衛戦。 行動時間の低下は無視できよう。
だが―――出せないのだ。 この部隊は非常に拙い。


「何故です、閣下! 理由をお聞かせ下さい!!」

「くどいっ、中佐! 貴官も判っている筈だ! よりによって、『プリンセス・オブ・ウェールズ・ロイヤル連隊(PWRR)』とはっ!!」

『女王師団(Queen's Division)』―――その名の通り、『英国女王の』師団である。 名目上は。
指揮下に『ロイヤル・フュージリア連隊(機甲)』、『ロイヤル・アングリアン連隊(機械化歩兵装甲)』
そして『プリンセス・オブ・ウェールズ・ロイヤル連隊(PWRR:戦術機甲)』の3個連隊を有する。

極めつけは、『プリンセス・オブ・ウェールズ・ロイヤル連隊』が、女性衛士のみで構成される戦術機甲連隊である事。
そしてその女性衛士達は、全てが爵位家(公爵家~男爵家)の姫君方であり、中にはイーデン中佐の様に貴族の当主を務める者もいる。
何と言ってもこの連隊の『シェフ』は女王陛下だった。

「我等は女の身とて、武人! 死を恐れはしませぬ! 戦場では友軍が必死の防戦を行っております!
彼らを目前にして、このまま待機などと! 『すべて多く与えられた者は、多く求められ、多く任された者は、更に多く要求される』
我々は多く求められ、多く要求される者たちなのです! それに今更、女だからだなどと・・・ッ!!」

「・・・『ルカによる福音書』12章48節。 今更、君に『ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)』を解釈して貰う必要は、私には無い」

自身、プロセイン貴族であり、男爵位も有するフォン・ブロウニコスキー少将は不機嫌そうに吐き捨てる。
いや、実際不機嫌なのだ。

「では言おうか? 貴官達を前線に出す気は毛頭ない。 これが英軍や欧州連合軍指揮下でなら、出戦も適おうが。
駄目だ、今の貴官達は国連軍だ。 出す訳にはいかぬ、政治的に微妙な事になりかねん」

欧州の政治・外交・経済・軍事には、未だに貴族階級が主要なポストを多く占めているのが実情である。
そして王家間が複雑な婚姻関係で結ばれているのと同様、いや、それ以上に各国の貴族の家系は絡み合い、混じり合い、繋がり合っているのだ。

『国連軍』指揮下で、『プリンセス・オブ・ウェールズ・ロイヤル連隊』がもし、壊滅的打撃を被ったとしたら。
欧州連合と国連の間にしこりが残る。 少なくとも軍部間には軋轢が生じる。 これは拙い。
中には欧州各国王家の縁者もいるのだ、この連隊には!

「失礼ながら! 閣下はフォン・ブロウニコスキー男爵家の当主にあられます! 
そして閣下の指揮下部隊には、フォン・アルトマイエル男爵家のご当主も!
一体、どのような違いがっ!?」

「判り切った事だ。 ブロウニコスキー男爵家も、アルトマイエル男爵家も。 我々が死ねば断絶する。 縁者も既に皆、逝った。
イーデン中佐。 欧州連合財務委員会の実力者であるオークランド伯爵(Earl of Auckland)に恨まれる事は、国連としては避けたい。
確か貴官の御一族・・・ 伯父上がオークランド伯爵位を継いでいるのであったな? そう言う事だ」

「くっ・・・!!」

「どうせならば、欧州連合常務委員会と、国連欧州代表部のお墨付きを貰って来れば話は違ったかもしれぬが?」

「・・・解りました。 常務委員会と、代表部! 説得してご覧にいれましょう! 1時間以内にっ!!」

更に顔を紅潮させ、勢いよく執務室を飛び出てゆくイーデン中佐の後姿を見ながら、ブロウニコスキー少将は苦々しく呟いた。


「・・・『スピットファイヤ(鉄火娘、じゃじゃ馬)』馴らしは、私はアルトマイエル男爵ほどには得意では無いのだ・・・」












1996年4月24日 2115 北フランス カレー仮設岸壁


サーチライトで煌煌と照らしだされた、仮設岸壁。 丁度、本日最終便の『特攻輸送船団』が入港したばかりだ。
接岸した大型コンテナ船の起重機から戦術機が吊り降ろされ、トランスポーターへ搭載される。
戦術機を搭載したトランスポーターはそのまま一目散に基地へと走り去る。
荷揚げされた大型コンテナをトラックに搭載する作業が、あちらこちらで行われている。

「はい・・・ はい・・・ そうです、戦術機予備機がトーネード36機、Migが12機、揚陸完了しました。 トランスポーターが向かっています。
予備パーツも有るだけごっそり。 ・・・えっ? そりゃ、トーネードとMigのパーツですよっ! 
流石にイーグル(F-15E)のは、アメリカさんが持ってくるのを当てにするしかないですがね」

野戦電話の向こうで、上官が興奮する様が判る。
そりゃ、そうだ。 今まで予備パーツが無い為に、泣く泣く共食い整備を余儀なくされたのだから。
今の戦力激減は、この共食い整備も大きな原因になっていたのだ。

「あと、お客さんが・・・ ええ、そうです。 ドーヴァーで右往左往していた『東』の整備部隊の本隊の連中、引き連れてきました。
これでMigの稼働率も上がってくれりゃ、良いんですがね・・・ はい、30分後には戻ります。 全揚陸作業確認後に」








2130 カレー仮設基地 第3旅団本部


「予備機が48機、それに予備パーツ。 深刻だったMigの整備要員も本隊が到着。
よし、トーネードの予備機は第1と第3大隊に優先して振り分けろ。 第2大隊はまだ戦力を保持しているからな。 Mig-29Mは6機づつ。 文句は聞かん。 
整備参謀、修理機体の復帰はどの位になるか?」

ようやくの事で少しの光が見え始めた事に、第3旅団長・バッハ大佐は早速状況の確認と共に、防衛計画の練り直しを始める。

「第1、第3大隊に各15機を回します、これで33機と32機。 第2には6機を回し、34機。 第4は16機、第5が17機。 合計で132機。 調整に2時間ばかりかかりますが。
修理機体は明朝、0700までに復帰投入可能機数は第1が8機、第2が7機、第3が7機。 『東側』の第4は12機、第5が11機で合計47機」

「定数216機で、2時間後に132機まで回復。 損耗率15%と見て、明朝時点での戦力は160機程を見込みます」

整備参謀の報告情報を受け、情報参謀が最終的な数字を述べる。

「定数の75%に回復していれば、上出来だ。 衛士の損失を低く抑えきれたのが幸いしたな。 
機体が有っても搭乗者がいなくては話にならんからな。 で、第1と第2旅団は?」

第3旅団は目処が立った。 問題は左右両翼の僚隊だ。

「兵団本部経由の情報です。 こちらと似たり寄ったりですな、現在の戦力は81機と83機。
予備機は両旅団共に、我々と同数の48機が揚陸されました。 2時間後には第1旅団は129機、第2旅団が131機。
要修理機の復帰は第1が45機、第2は47機との報告です。 兵団合計で明日の朝の時点で450機から480機程。 
なお、第13強行偵察哨戒戦術機甲中隊(スピリッツ)は含まない数字です」

旅団本部にも、ようやく生気が戻って来ている。
これまでが、これまでだ。 補給も補充も見込めない状況での固守(死守)を要求され、半ば以上皆が戦死を覚悟していた状況から、生き残る目が見えてきたのだ。

ただその為には・・・

「これからの2時間が勝負だ。 損害を極小に抑えつつ、可能な限り戦線を持久。
言うなよ? 言っている私自身、自分のセリフが信じられんのだ、そんな芸当が出来るのかとな」

2時間後には、予備機の投入が見込める。 しかし、保つか?
バッハ大佐は自嘲したが、兵団本部も同様だったのか。 10分後、兵団本部から発せられた受取指定の無い広域通信に苦笑した。
どうやらブロウニコスキー少将も、最後の腹を決めたと言う事か。



『 "People expects that every man will do his duty"(人類は、各員がその義務を果たす事を求める)』―――(1996年4月24日 2155 国連軍第1即応兵団司令部より発せられた督戦電)
















1996年4月24日 2300 北フランス カレー・ダンケルク間 第2防衛線


『次の波状攻撃が来たら、もう保たんかもしれん』

疲労の色が濃い、困憊した表情で呟くのはポーランド軍第303戦術機甲大隊『コシチュシコ』大隊長・ズジスワフ・クラスノデンブスキ少佐。

『しかし、実際の話。 ここを抜かれたら第3防衛線も危ない。 そうなったら最終防衛線も目前よ?』

戦術MAPを確認しつつ、表情を歪めるのはラトビア軍独立第1戦術機甲大隊『リガ』大隊長・ウリャーナ・セミョーノヴァ少佐。

『増援は・・・ 彼らだけか。 精鋭部隊だが、数が足らぬ・・・』

ルーマニア軍第8戦術機甲大隊『ドラゴニ・トランシルヴァニア』大隊長・ゲオルゲ・ハジ少佐が嘆息する。

「どこもかしこも、手不足です。 こっちも半分の2個小隊はカレー=ブーロニュ・シュル・メール間の防衛に駆り出されております」

増援に対して、あからさまに落胆しないで欲しい。 こっちにも士気の問題と言うものが有る。―――俺としては声に出して言いたいのだが。
流石に2階級上位の指揮官達に対して、それは拙いか。

『で、周防中尉。 増援のF-15E、2個小隊。 これは有り難いわ、正直1機でも欲しかった所。 ―――他は、やはり?』

「はい、セミョーノヴァ少佐。 『むこう』も、『フェリン』(エストニア軍第3戦術機甲大隊)と、『ベルチェーニ・ラースロー』(ハンガリー軍第4戦術機甲大隊)が悲鳴を。
『ヴィリニュス』(リトアニア軍第1戦術機甲大隊)と、ウチの中隊長が2個小隊率いて向かっております」

『各旅団共に、既に予備戦力は払底したからな。 現状を突破されれば、第3防衛線は無意味だ、戦力が無い。
最終防衛線に残存戦力を集中するしかないな・・・』

クラスノデンブスキ少佐に皆が同意を示す。
事態が急速に展開したのは約1時間前の2200過ぎ。 BETAがそれまでの波状攻撃から転換、一気に大群でもって押し潰しにかかってきた。
こちらとしてはある程度は想定済みの事態だ。 即座に第1防衛線を放棄し、戦力を第2防衛線に集中。
そして洋上の艦隊からの艦砲射撃と、今日になって揚陸・砲撃展開を済ませた欧州軍野戦機甲砲兵部隊(8個連隊相当)の支援砲撃を加え、必死の持久戦を展開しているのだが・・・

「カレー正面の第3旅団主力の3個大隊は、既に1個半大隊分の戦術機戦力しか残っておりません。
ダンケルク、ブーロニュ・シュル・メールも然り。 トーネードⅡは200機そこそこです。 戦力は1/3近くに落ち込んでいます」

『そして我等、東欧州社会主義同盟軍のMig-29Mは、6個大隊が最早、6個中隊のみ。 70機そこそこか』

『ここには約半分の36機だけ。 1個大隊分に、増援のF-15E、8機を合わせても44機』

『向かって来ると推定されるBETA群は、カレー前面に約2万、ダンケルクと、ブーロニュ・シュル・メールに各々1万5000。
そして3拠点の隙間、2か所に各7000から8000か・・・ 都合、6万5000』

最後のハジ少佐の言葉に、皆押し黙ってしまう。
この4日間で2万に近いBETAを削ったのだが、ここにきて連中も損害を無視できなくなったか。
いやいや、波状攻撃でこちらの戦力をジワジワと削った後に、一気呵成に押し潰す。 これは北満州や、シチリア島でも見受けられた連中の『戦術』だな。

『と言う事は、地中侵攻もあり得るわね。 どう思う? 周防中尉?』

網膜スクリーン上のセミョーノヴァ少佐が聞いてくる。
表情から見て単なる確認のようだ。 彼女など、俺の倍以上の戦歴の持ち主なのだし。

「過去の戦訓、小官の戦歴からみても、ギリギリまで支え切っているその時点で、側面か後背への地中侵攻、これでしょう。
今まで同じ手口で散々な目に遭っています」

誰しも、戦場を往来した者なら大体の想像は付く状況だ。
同じ考えなのだろう、セミョーノヴァ少佐が微かに微笑んで頷く。―――しかし、30代に突入したと嘆いていたのを見た事が有るが、下手をすると20代半ばに見える女性だ。

(―――女は化けるね、ホント・・・)

そんな事を漠然と思っている内に、先任大隊長のクラスノデンブスキ少佐が方針を固めた。

『ここで悲観していてばかりでは、何も始まらん。 兎に角、第2防衛線を固守する。 
最悪、地中侵攻が生じた場合は各隊、第3防衛線まで下がれ。 ここで戦っても、包囲殲滅されるだけだ。 
何としても、あと3時間保たさねば』

あと3時間。 3時間すれば、増援の欧州艦隊の母艦戦術機甲部隊、370機が救援に来る。それまで持ち堪えれば。 持ち堪えれば、明日の朝日を拝む事も可能だ。

そして明日の昼前には第38旅団―――米軍の即応部隊が到着する予定だった。 5個戦術機甲大隊と支援部隊、艦隊からの支援火力も増加する。
そこで48時間を耐え凌ぐ事が出来れば・・・ 米第7軍が到着する。 今までの死戦も浮かばれる。

そんな風に、皆が思った矢先―――


≪HQより防衛線全部隊! 緊急信! BETA群6万以上、行動を開始した! 繰り返す、BETA群6万以上、行動を開始した!≫

≪CPより『コシチュシコ』、前面のBETA群、約7600。 突撃級、約800。 要撃級、約1200。 光線級も確認されています、約60。
BETA前衛は防衛線前面、約10km地点を100km/hで侵攻中。 接敵予想、2310。 後続は60km/h、接敵予想、2314≫

≪艦隊砲撃管制より、『コシチュシコ』 貴隊方面へは『リュッツオウ』、『アドミラル・ヒッパー』、『プリンツ・オイゲン』、『エムデン』、『ケーニヒスベルク』を振り分ける。
英国艦隊からも、いくらか分派するそうだ。 堪えてくれ!≫

ドイツ艦隊からの砲撃支援内容は、正直心もとない気がしないでもない。
『リュッツオウ』は巡洋戦艦だ。 その主砲はL47・305mm砲が連装4基8門。
陸軍の重砲に比べれば一回り大きい巨砲だが、『戦艦』の主砲―――15インチ(381mm)や16インチ(406mm)と比較すると、どうしてもパンチ力不足だ。
他の4隻は巡洋艦。 その主砲は6.1インチ(155mm)か、5インチ(127mm) 速射能力は頼もしいが、戦力的には野戦重砲2個大隊と言った所か。
いや、訂正。 VSLを含めて砲兵2個連隊といった所だな。

これにドイツ軍の1個装甲砲兵連隊が支援してくれる予定だから、1個砲兵師団相当の火力支援。
支援火力としては十分なのだが・・・ 十分でないのはこちらか。 戦術機は50機に満たない。


洋上からの艦砲射撃と艦対地ミサイル、野戦自走砲の155mm砲弾とMLRSからのALミサイルが一斉に飛来する。
やがて迎撃レーザー照射が夜空に舞う。 発生する重金属雲。 そして粉塵爆発。

『・・・さて、踊ろうか? 諸君』

あと3時間、踊りきれるか? あと12時間、生き残れるか? 
そんな事は神様にでも聞いてくれ。 今、この生と死の狭間の一瞬に比べれば、考えるだけ無意味だ。

3個中隊のMig-29Mが、所定のポジションを占位した。 接触まであと2分、距離にして3km少々。

「ドライジン・リードより各機。 まずは何時も通りだ、突撃級の足を止める。 数が多い、多少遠いが2000で射撃開始」

『『『 ラジャ 』』』

戦術MAPでは、一直線にこちらへ向かって来る。
網膜スクリーンに映し出された兵装選択エリアから、キャニスター弾に代わってAPFSDSを選択。
右手腕がレギュラーポジションに自動で移動、左手腕がキャニスター弾倉を抜き、腰部装甲ブロックに収め、隣のAPFSDS弾倉を抜く。
M88支援速射砲に弾倉を装填し終わり、アイコンが初弾を送り込まれた事を示すグリーンに代わり、速射砲は自動的に砲撃ポジションに戻った。 この間、5秒。

そしてFCSにアクセス、遠距離に映し出された突撃級の画像をズームしてレティクル(Reticle)に捉える。
更に精密射撃モードを選択、目標を節足部にまで絞り込みピパー(Pipper)を合わす。 
激しく動く動的目標だ、レティクルからピパーが微妙に上下左右にブレてラグ・ライン(Lag Line)が伸び、なかなか定まらない。 15秒。

距離が詰まってきた。 ズーム倍率を落として照準する。 次第にレティクルとピパーの誤差―――ラグ・ラインが収束し始める。

「はあ・・・ はあ・・・ はあ・・・」

荒い息が聞こえる。 誰だ? ―――俺か。 20秒。

支援砲撃の炸裂が真近に感じる。 数千mは離れている筈なのに、どうしても近くに感じてしまう。 
震動が腹に堪えそうだ。―――スウェイ・キャンセラー。 いや、OFFのままでいい。 計器だけじゃ無い、直感も動員しないと。 
レティクルとピパーが合さった。 ロック・オン! 25秒。

「―――射撃用意・・・ 3、2、1、ファイッ!!」

8機のF-15Eから一斉に、中口径高初速砲弾が吐き出される。
36mmのシャワー程の発射速度ではないが、120mmの様なもどかしい遅さより速い。
腹に響く重低音と、射撃の反動が僅かに伝わってくる。 5秒程の射撃で突撃級の片側前後2本の脚を吹き飛ばす。
片脚全てを吹き飛ばされた突撃級がバランスを崩して横転、その場でもがく様に止まる。 ―――よし、次だ。

予め決めていた射撃時間は1分間。 それ以上だと差し込まれる。

「むっ・・・! くっ!」

目標が僚機と被らないよう、確認しつつ可能な限り素早く、正確に―――くそっ! 俺は砲撃支援の経験は無いんだ、せめて突撃前衛だったなら・・・!

射撃に5秒、再照準に2秒。 1分間の集中射撃が終わった時点で、2個小隊で削った突撃級の数は約80体程。 全体の1割程度か。
もう突撃級がそこまで迫って来ていた。

『ご苦労、『ドライジン』、『ウィスキー』! 『リガ』、『ドラゴニ・トランシルヴァニア』、 次は我々の番だ! 
『コシチュシコ』が正面を受け持つ! 左右を頼む!』

『リガ、了解したわ』

『ドラゴニ・トランシルヴァニア、了解。 近接の精髄、披露するとしよう!』

言うやいなや、3個中隊のMig-29Mが突撃級の群れの中に躍り込む。
サーフェイシングを多用し、右に、左に、高速で移動する。 その間にモーターブレードが突撃級の側面や後背を切り裂き、36mm砲弾の雨を浴びせかける。

目前の敵を回避するだけでなく、その背後や周囲の個体の動きを瞬時に観察して、次の動作を予測し機動してゆく様は、さながら群舞を見ているかの如く。
Mig-29Mの通り過ぎた後には、突撃級が汚らしい内贓物と体液を撒き散らして停止していた。

「ドライジンよりウィスキー。 左翼の支援砲撃を頼む。 右翼はドライジンが」

『ウィスキー、了解だ。 周防、支援砲撃は慣れたか?』

ウィスキー小隊長、マイケル・コリンズ中尉との会話の間に、旋回をかけようと横腹を晒した突撃級の1群に57mm砲弾を見舞う。
直後、1機のMig-29Mの横から突進をかけてきた突撃級の節足部を狙う―――狙撃成功。

「日々修行中だよ。 全体を見る目を養うには、丁度いいかもな。―――『リガ』、中央へ偏向し過ぎです。 『コシチュシコ』の周りがBETAだらけに。
右翼へ誘導して下さい、こちらからケツを撃ち抜きます。 『コシチュシコ』、後続BETA群、射撃範囲まであと1分。 そろそろ支援砲撃再開します!」

『全体を見る目か、確かにな! 『ドラゴニ・トランシルヴァニア』、そのまま左に! 突撃級が側面を晒した、このまま砲撃支援、入ります!』

俺とトマーシュのエレメントが『リガ』の高速機動で釣り上げられた突撃級の側面と後背に57mmを撃ち込み。
ライアンとレーヴィのエレメントが『コシチュシコ』の砲撃支援に入る。
左翼ではウィスキーが同様に『ドラゴニ・トランシルヴァニア』の支援砲撃を行っていた。


≪CPより『コシチュシコ』! BETA先頭集団、個体数585を確認! 突撃級、200体以上撃破! 1分後、支援砲撃始まります!≫

『よし、コシチュシコ・リーダーより全機! 十分引っ掻き回した、突撃級は最低でも数分間は突撃態勢が取れん! 今のうちに防衛線の内側まで戻るぞ!』

『『『 了解! 』』』

Mig-29MとF-15Eが一斉にサーフェイシングで後退する。
見るとMig-29Mが3、4機足りない気がする。―――レーダーの輝点を数えてみると、やはり4機足りない。
混戦で気づかなかったが、近接戦で喰われたか。

ふと、砲撃支援は十分機能していたのかとの思いがよぎる。 もしかしたら、不十分な砲撃支援ではなかったか?

『周防中尉。 突撃前衛上がりにしちゃ、なかなかの砲撃支援だったわよ?』

網膜スクリーンに映る、『リガ』のセミョーノヴァ少佐が、上気した表情で話しかけてきた。 1機足りない。

『そうだな。 米軍機の搭乗は2回目だったか? だが砲撃支援の経験は無いと言うから、どんなものかと心配だったが・・・ 十分だった』

『コシチュシコ』のクラスノデンブスキ少佐も笑っている。 こちらは完全な混戦だった中央部で2機失っている。

『コリンズ中尉は砲撃支援上がりだそうだな、流石の的確な支援だ』

ハジ少佐の『ドラゴニ・トランシルヴァニア』 やはり1機を失っていた。


『今後も支援の要請は、『スピリッツ』にお任せを』

マイケル・コリンズ中尉がおどけて答える。

『通信1本で、西から東へ』

ライアン・ギグス中尉。

『砲撃支援から、突撃前衛まで』

スタニスワフ・レム中尉。

『幅広く承ります。 俺たちゃ戦場の渡り鳥』

トマーシュ・ロシツキー中尉。

『なかなか、頼もしい子達ね?』

セミョーノヴァ少佐がコロコロと笑う。 ――― 子供扱いですか、参ったね。

「地獄巡りで、自分を見つけた連中なもので。―――そろそろ、降って来ますよっ!」

俺の言葉が終わらぬうちに、甲高い飛翔音と共に砲弾とミサイルの豪雨が夜空の天空から降り落ちて。―――迎撃照射!

≪CPより、HQ情報! 2335時、艦隊は全力効力射を開始! 全戦術機甲部隊は現地点から1km下がれっ! 巻き込まれたく無きゃ、急げっ!!≫

朝方に続く、脇目も振らない艦隊全艦による全力射撃。
上手くいけば、1万は削れるか? いや、駄目だな。 光線級がまだ残っている。 砲戦時間にもよるが、2時間程度として6000程か。 多くて7000。
それでも6万を割る事は出来る。 現在、4月24日の2335時。 母艦部隊到着まで約2時間30分。 米軍の増援第1派は4月25日1100時到着予定。 あと11時間25分。


耐えればこちらは次の1手を打てる。 耐えられなければ―――ブリテン島が戦場になる。
















1996年4月25日 0020 カンタベリー基地


「思いがけず、時間を費やしてしまったわ。 最早1秒たりとも無駄には出来ない! トリア! ローザ! 準備は宜しい!?」

「完了です、C.O」

「何時でも宜しいですよ」

ダイアナ・ベアトリス・イーデン中佐の問いかけに、第2大隊長・ヴィクトリア・サスキア・ヘッディントン少佐(ヘッディントン男爵令嬢)と、
第3大隊長・ローズマリー・フィリパ・ヴィア少佐(ヴィア男爵令嬢)が答える。

雰囲気が似通っているこの2人の大隊長、実は従姉妹同士だ。 
プラチナブロンドのロングヘアをアップにしたヘッディントン少佐と、ヘイゼルのショートヘアのヴィア少佐とで見分けは容易だが。

ヘッディントン男爵もヴィア男爵も、共にセント・オールバンズ公爵の従属爵位称号だ。 今は分家として独立している。
他の分家にバーフォード伯爵家があるが、その家の姫もまた、『プリンセス・オブ・ウェールズ・ロイヤル連隊』の衛士だ。 未だ任官したての少尉であったが。


「対岸は大火事よ。 防衛線を護る戦力の減少が酷いわ。 このままだと、今日の朝日を見る事が適わないばかりか、1時間と保たないかもしれないわ。
1時間半後には海賊ども(海軍)の戦術機部隊が支援に入ります。 それまで絶対死守!
正午前には新大陸からの増援が1個旅団、戦術機甲戦力は5個大隊。 私達の連隊が頼みの綱よ。 
いい事!? 大英帝国の名誉にかけて、ここは護り通す! "God Save the Queen" 神の恩寵よあれ!」

カンタベリーからドーヴァーまでNOEで高速移動。 ドーヴァーで給油を受け、そのまま対岸のカレーへ。 30分後には戦場に到達予定だ。

『女王陛下の剣』、108機のトーネードⅡGR.5Bが青白い焔を跳躍ユニットから立ち上らせ、漆黒の彼方へと飛び去ってゆく―――










「・・・ああ、そうだ、ヴィルヘルム。 はねっかえりのジャジャ馬娘達、1個連隊。 そっちに押し付ける。 
何? ・・・文句は聞かないよ。 配分は第1、第2旅団にも通達してある。 
ああ、そうだ。 扱き使ってくれ。 向うが送りつけてきたのだ、今更文句は言わさん。 では健闘を」

通信機の向う側で、盛大に文句を垂れている部下―――第3旅団長のヴィルヘルム・バッハ大佐の抗議を無視して、ブロウニコスキー少将は通信を切った。

全く、信じられない。
欧州連合常務委員会、欧州連合軍総司令部、国連欧州代表部、国連欧州方面軍総司令部、各々の正式命令書。 なにより、英国女王の勅命まで。

あの小娘たち、実家の人脈をフル稼働しやがった。
これだから、本当の地獄を知らない中途半端に実戦を知っている連中は、手に負えない。

まあ、いい。 今夜こそ彼女達も本当の地獄を見い出せる事だろう。
その結果がどうであれ、自分の預かり知らぬ事だ。 その責は神と王が負え、自分は知らない。


暫く一人きりになった執務室を見渡し、そして控室の副官に声をかけ、出発の用意を行う。
今朝から今まで、後方との調整もあってカンタベリーに足止めされていたが。 部下達が死線を潜っている時に、自分が対岸に居る事に我慢がならなくなったのだ。

「ふん。 カレー、そしてダンケルクか・・・」

忘れもしない、85年のあの日。 惨めな敗残兵として大陸からこのブリテン島へ落ち延びたあの日。
11年近くを経て、ようやく大陸の地に踏み立つ事が出来たのだ。 例えそこが地獄そのものであったとしても。









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