<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

Muv-LuvSS投稿掲示板


[広告]


No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[7678] 北満洲編-幕間その3
Name: samurai◆b1983cf3 ID:e178b4cc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/04 02:31
1992年6月5日 1210 黒竜江省 依安臨時キャンプ


「で? 結局、お前はその中国娘から、好きや言われて。 
んで? モノにしたんかいな?」

「・・・してませんて。 
もともと、いきなり告白されて。 正直、頭真っ白け、ですよ。
その後も、ずっと任務中でしたし。 
長春郊外までの護衛任務が終わったら、彼女たちの部隊は、華南に移動しましたし。」

「なんやっ!?勿体ない・・・ 
おい、長門。 その子、べっぴんさんやったんやろっ?」

「ええ。 ちょいと元気の余ってる所は有りましたが。 
活動的な美人、と言うより。 見た目はまだ美少女、でしたね。 蒋翠華少尉は。」

「うわっ!もったいなぁ~・・・ 
おい、周防? お前、まさか<漢汁>不足か!?」

「木伏中尉。 まぁ、周防少尉の理性ある行動、と言う事で・・・」

「はぁ? 源。 お前さんみたいに、黙っとってもオンナが寄ってくるみたいなヤツは、そうそうおらんねんで?
チャンスはモノにせなっ!」


ふぅ、何でこうなったんだ?

俺と圭介が、臨時任務で<フェンリル>に加わり、避難民の護送を完了させて帰還したのが、昨日の夜。

で、今は昼飯時。
皆、タンクトップと作業跨衣姿。 因みに泥だらけ。

俺達の部隊は戦術機部隊。 俺達は衛士。
なのに、肝心の戦術機が1機も無い。

だもので、今は施設工兵科の助っ人要員。 
てっとり早い話が、土木作業員の真似事をしている。

で、俺。 周防直衛帝国陸軍衛士少尉は、上官に昨日までの「経緯」を、根掘り葉掘り聞かれている。

(ってもなぁ・・・ 正直に話して、後で馬鹿見るのは目に見えているしなぁ・・・)

俺は、昨日までの数日間を思い返していた。






<<7日前>>

1992年5月29日 1420 吉林省 通楡(トンユ)近郊。


戦術機数機と、戦闘車両が4両、輸送車両が10両の小集団が、平原を南下していた。
よく見てみると、オープントップの輸送車両に乗っているのは皆、民間人だった。



―――っ! 

いきなり、機体のステータスアラームが喚き始めた。
元々、調子の悪かった右脚部膝関節だ。 

ガクンッ!

次の瞬間、衝撃が走る。 右足がロックした。 バランスが崩れる。
オートバランサーが作動し、辛うじて転倒をまのがれる。

『フェンリル04より、レッド03! 大丈夫っ!?』

『フェンリル01より、レッド03。 どうした? 機体の不調か?』

「レッド03より、フェンリル04。大丈夫だ。
フェンリル01。こちらレッド03。 右足が逝っちまいました。 作動不能。」

『むっ・・・ 他は? 右足だけか?』

「左脚足首部緩衝機構、左肩部回転機構、上方視認モニターが、イエローアラートです。
推進剤残量、10%切りました。」

『・・・・解った。 レッド04。そっちはどうだ?』

『レッド04よりフェンリル01。 左脚部全体がイエロー。 跳躍ユニットは昇天しました。』

『そっちも時間の問題か・・・ 解った。 レッド03、04。 機体を放棄しろ。
貴様らに合わせていては、埒が明かん。
レッド03は、フェンリル04に便乗。 レッド04は、フェンリル03に便乗しろ。』

「レッド03、了解」
『レッド04、了解』

『フェンリル01より、サラマンダー。 機体を2機、爆砕放棄する。 発破のセットを頼む。』

『サラマンダー、了解。』 機械化歩兵部隊の小隊長が答える。

はぁ、とうとう、機体放棄か。 正直、ここまで良く保ったが。
できれば、最後まで保たせたかったな・・・

『レッド03。 こちらフェンリル04。 今から機体を前付けするわ。 コクピット解放して。』

「レッド03。了解した。」

フェンリル04の殱撃8型(J-8F)が前付し、コクピットを解放。 両腕をその下に移動さす。
「落下防止」の為だ。

俺も「撃震」のコクピットを解放。
フレームを伝って、フェンリル04に乗り移る。

コクピットに備え付けの簡易補助シートに着座。ハーネスを取り付ける。

「準備OKだ、蒋少尉。」

「ん。 フェンリル04より01。 レッド03収容完了しました。」

『よし。 レッド04の収容も完了した。 ―――サラマンダー?』

『準備OKです。 起爆タイマーは2分後にセット。』

『よーし。 全隊、出発!』


車両群が動き出す。 戦術機は残った6機が、その周りを円周上に囲んで護衛する。

移動を開始して暫くすると、後方で轟音が2回。
俺達の「激震」の最後だった。


「でも、よくあんな、ガタのきた機体に乗っていたわね? 
日本軍って『兵器に兵士が合わせろ』なんて、言われているって聞くけど。
まさかこれ程だなんて・・・」

蒋少尉が、信じられない、と付け加える。

俺は憮然としつつ、一応抗弁する。

「翠華。 いくらなんでも、それは無い。 そんな話は、半世紀以上昔の話だ。
俺と圭介の機体が、ガタが来ていたのは、18日以降、まともに整備していなかったからだよ。」

実際は、何機も予備機を使い潰したんだけど。

「えっ!? どうして・・・?」

「俺達の元の部隊は、日本軍の第21師団。基地は依安基地だ。」

「あっ・・・ ご、ごめんなさい・・・」

翠華も、日本軍第21師団が壊滅した事。 依安基地が機能停止な程、破壊された事は知っているようだ。 

だけど。

「気にするな・・・ って、翠華。何気に謝りすぎだぞ? 昨日から・・・」

「う、うん・・・ ごめん、直衛  ・・・・あっ!」

「また・・・ はぁ。」

「うぅ・・・」


そうなのだ。 昨日からこの方、翠華は何かあるとやたらと謝る。
元々の印象が、元気の良い女の子、だったのだから、ギャップが大きい。

だもので、なんとなく、会話が続かない。
お互い無言で、ひたすら戦術機の揺れに身を任している。
俺なんか、只の便乗者だから、余計に気まずい。


「18日・・・」

「ん?」

「18日からの戦闘。 直衛も参加したんでしょ?」

翠華が話を振ってきた。 助かった・・・

「あぁ。18日から22日まで。 休み無しだったよ。 
翠華は? <フェンリル> は戦闘参加したんだろう?」

「私達は元々、こっち方面の部隊じゃないの。 偶々、南の大連にいて。 
で、戦略予備として、最後の局面・・・ 長春からの反攻部隊に急遽加わって。
最後の半日だけよ。 戦闘に参加したのって。」

使える戦力は、根こそぎ投入だったんだな・・・

「そうか。 ま、でも俺達防衛線の部隊は、ズタボロだったから。
正直、増援が来てくれた時は、泣けてきたよ。嬉しくってさ。
これで助かったって、思ったな・・・」

「泣いた? 4日間もBETAの大侵攻に耐え抜いた、猛者が?」 クスクスと笑う。

あ、やっと笑った。 ちょい、嬉しい。

「猛者なもんか。 俺はあの戦闘が初陣だったんだぜ?
最初は訳がわからず、上官に怒られるし。
2日目に奇襲を受けて、包囲された時なんかは、怖くてデカイ方まで、漏らしちまった・・・
生き残れたのは、何かの奇跡だよ。 ホント・・・」

「初陣っ!? うそぉ!?」

「ホント。 って、何でそう思うよ?」

「だって・・・ 直衛って結構、戦場の雰囲気に慣れしている感じ、するし。
あ、長門少尉もね。 同い年でも、私や文怜とは、ちょっと違うかなぁ?って・・・」

「違わないって。 そう見えるんなら、きっとまだ麻痺したまんまなんだろうな、感覚が。
・・・って、翠華と朱少尉は? 初陣じゃないんだろ?」

「え? うん。 でも、私達の初陣って、大隊規模のBETAと遣り合った時だったし。
味方は戦術機1個大隊と、機甲部隊も1個大隊いたから。 
あっという間だったよ。 1ヶ月前ね。

2回目の出撃が・・・ 21日の長春からの反攻作戦。
でも到着した時には、ほとんど勝負がついていたし・・・」

やっぱり、凄いよ、直衛って。
翠華はそう、呟いた。

昨日の朝の、出発前のゴタゴタ以降。 何となく、お互い名前で呼び合うようになっていた。

彼女の、『君の事。 本当に好きになったみたい。 私。』 と言う衝撃発言が引き金、かどうかは解らない。

最も翠華自身、意識せず口に出た言葉だったらしく。 言った後、顔を真っ赤にして慌てふためいていたが・・・

兎に角。 その時までは、そんな感じで。
別段、「モノにする」どうこう以前の話だったんだよな・・・







1992年6月5日 1830 黒竜江省 依安臨時キャンプ 仮設炊事給食場


「あら。でもそれじゃ、その娘はやっぱり、周防少尉に好意以上の感情を持っていたってことよ?」

三瀬麻衣子少尉が、晩飯のライスカレーを混ぜながら言った。

「そ、そうなんでしょうか?」

思わず、確認形になってしまう。

「結構ニブイわねぇ~、君わぁ・・・ 折角、祥子の驚く顔が見れる所だったのに。」

「鈍くてスミマセンね? 水嶋中尉・・・ って、どうしてそこで、綾森少尉なんですか・・・」

「ん? だって。 面白いじゃない? 君を挟んで、日中三角関係♪」

く、くそ・・・ 駄目だ。
やっぱりこの人、木伏中尉の同類だ。 水嶋美弥中尉と言う人は・・・
面白けりゃ、基本何でもOKな人だった・・・

「水嶋中尉? 祥子の同期として、言わせて頂きますが・・・
あの子はそっち方面は、至って純情と申しますか。 初心な子なんです。
からかうのも、ほどほどにお願いしますね?」

「OK、OK。 んじゃさ。周防少尉<だけ>なら、いいの?」

「それは、中尉のご自由に、と言う事で。」

「ちょっ! 三瀬少尉っ!?」

プルータスよ、お前もか・・・

にたり、と笑った水嶋中尉(ある種の捕食動物みたいな目だった)

「ほらほらほらっ! きりきり吐けぃ!」

「有る事、無い事、千里を突っ走らないうちに、ね?」

・・・くそう。 先任たちが、性悪の魔女に見えてきた・・・






<<7日~6日前>>

1992年5月29日 2350 吉林省 通楡(トンユ)南東10km。


「・・・・んっ・・・」

仮眠から目が覚めた。 時間は2350 夜間当直交代、10分前。

「ふわぁ・・・ やっぱり、疲れてんなぁ・・・」

こきこき、と、首を鳴らす。

夜空は満天の星空。 日本じゃこんな凄い夜空は見えないぞ。

寝袋から抜け出す。
当直中のフェンリル04の機体まで、眼を覚ます為にゆっくりと歩み寄る。

「翠華。交代5分前だ。 コクピットを開けてくれ。」

『直衛? うん、ちょっとまってて。』

コクピットが解放する。 俺はウインチに摑まり、コクピットフレームを足場にして中に入る。

「外、星空が綺麗だぜ。 でも、夜は冷えるなぁ~・・・」

「まだ5月だしね。 夏でもこの辺は、夜は冷え込むのよ。」

確かに。 緯度的には北海道北部。 稚内とほぼ同じだしな。
日本の、本州の生まれ育ちには、ちょっと涼しすぎる気候だ。


「・・・よし、データリンク、確立。 翠華、お疲れさん。寝てこいよ。」

「・・・・め?」

「うん?」

「ここにいちゃ、だめ?」

うっ! 一瞬、心臓の動悸が止まりかけたぞっ!? 
縋る様な、不安そうな、なんて表情するんだよ・・・

「・・・ここ、って言ったって。 寝れないじゃないか。」

「簡易シート、あるもの。」

「疲れ、とれないぞ? やっぱり、横にならないと・・・」

「・・・・・だめ?」

反則だ。 反則だぞ? 翠華。 その顔と声は・・・

「・・・・しょうがねぇな。 自己責任だぞ? 翠華・・・」

「うんっ!」

ちぇ、嬉しそうな顔して・・・ やっぱり、可愛いや・・・


「・・・空、綺麗だねぇ・・・」

「うん。日本じゃ、お目にかかれないな。」

「そうなの?」

「少なくとも、俺の育ったトコじゃね。」

「直衛の故郷? どこ?」

「生まれは大阪って街。 そこから、博多、横浜、名古屋。 今、実家は東京の東の外れ。」
「・・・つまり、都会っ子?」

「そうだな。 街の灯りが、明る過ぎてさ。 夜空が余り見えない。」

「へぇ。 私は成都の外れの、四川省の田舎町だったから。 夜空は綺麗だったわ。
小さい頃、あんまり星空が凄過ぎて。 怖くなって泣き出しちゃったのよ。」

「あははっ! 意外と女の子っぽい。」

「ひどぉいっ! <女の子>よっ!? 私はっ!」

ぽかぽか、と、翠華が俺の二の腕をたたく。

「ごめん、ごめん。 でもま、俺も田舎の婆様に同じ事言われたな。 
『あんたは小さい頃、星空見て大泣きして、ばあちゃんにしがみついたんだよ。』って。
覚えてないんだけど。 多分、3,4歳の頃の話しかな?」

「お婆さん? お元気なの?」

「ん? 3年前に死んだ。 老衰でさ。 
天寿を全うしたから、満足だったんじゃないかな?」

「・・・そっか。 良いお婆さんだったんだね・・・」

あ、やべ。 翠華の婆様は、確かBETAに・・・

≪お婆ちゃんもっ! 叔母さんもっ! 従弟の亜嶺もっ! 
美蘭姉さんのお腹には、赤ちゃんがいたっ!
みんなっ! 喰い殺されたっ!≫

彼女の慟哭が蘇る・・・

「ご、ごめん・・・ 俺、考え無しで・・・」

「・・・ふふっ 直衛も、何気に謝ってばかりだね?」

「うっ・・・」


「ねぇ?」

「ん?」

「直衛って、<戦う理由> 持ってる?」


戦う理由、か・・・

漠然と、BETAが憎いとか、国を守りたいとか。
訓練校に入る前はそう思っていたな。

訓練期間中は、家族を守りたい、ってもの理由に入った。

でも、最近は・・・ 
と言うか、「あの」激戦の最中、そう言った思いは、全く浮かばなかった。

あの時を振り返れば。
ただただ、中隊の仲間が死んでいくのが、悔しくて、悲しくて、怖くて。
そんな思いが嫌で、嫌で。 必死で戦っていたな。 

これ以上、死なないでくれ、って。
俺がここで下手を打ったら、他の仲間がやられるかも、って思うと、怖かった。
だから必死で戦った。 だから戦い続けられた。

思うに、祥子さんが2日目の最後、佐伯郁美中尉(戦死・1階級特進)がBETAに囲まれた所へ無謀に突っ込んだのも。
同じ思いだったんだろうな。
彼女の場合、同期で、親友同士だったし。


「戦う理由か・・・ 今は、仲間の為、かな。
俺が下手打ったり、怖くなって逃げ出したりしたら、仲間がやられるかも知れない。
そう思うと、もの凄く怖かったよ。
そんなの、絶対嫌だしな・・・」

「うん。 そうだね。 私って、まだ実戦経験は全く不足しているけど。
それでも、そう思う。
周上尉や、趙少尉、文怜が死ぬところ、見たくないし・・・
私が怖がって、震えて、何も出来なくって。 
それで皆が死ぬなんて、絶対に嫌。
そっか・・・ 直衛も同じだったんだ。」

「ん・・・ ま、大なり小なり、皆同じ思いは持っていると思う。
理想論や、大義なんてのを貫いて戦うなんて。俺には、きつ過ぎるな。」

「うん。でね・・・」

「ん?」

「サチコ、って人。直衛の好きな人なんでしょ?」

「なっ!? なんで、祥子さんの事っ・・・・!」

「・・・長門少尉から、聞いたの。 と言うか。聞き出した、かな?
直衛の好きな人って、誰?って・・・」

「・・・・あ、あの阿呆わぁ~~・・・・」

「ふふ。 私が無理やり聞き出したんだから。許してあげて。
凄く、言い辛そうにしていたわ、彼。」

「はぁ~・・・」

「ごめんね?」

「ま、いいよ・・・」

「その人が、BETAに囲まれそうになった時に。 
直衛、単機で突入して救出したんですってね?」

「そんな事まで・・・ 」

「だから。多分、その人が、直衛の <死ぬ理由> だね・・・」

「 <死ぬ理由>?」

「うん。<死ぬ為の理由> <死ねる理由> 
今、正に死ぬ時に、<最後に思い浮かべる存在>・・・
<戦う理由> とは、似ているけど、最後で決定的に違う理由で、存在の事。」

「それって。死を受け入れる為の、理由と言うか、存在、みたいな? と言うより、想い?」

「そうだね。 何も、恋人とか、そんなんじゃなくってもいいの。」

ああ、そう言う意味か。

・・・・そうだな。 どうだろう?
確かにあの時、気が付けば単機で突っ込んでたけど。
明確に、そう意識していた訳じゃ無いだろうな。

でも、改めて言われてみると・・・ どうだろうか・・・?


「私、怖いよ。死ぬのって・・・」

そりゃ、誰でもそうだよ。翠華。
誰だって、死にたくないさ・・・

「でも。もしかしたら。
自分の死を選択しなくちゃいけない時が、来るかもしれないでしょ?
選択するのは、覚悟、だろうけど・・・
でも、怖い。
せめて、何かにしがみ付きたい。 何かの想いに支えて欲しい。
私は、怖がりだから・・・」

俺だってそうさ。 怖いよ。 死ぬのって。

「だから、直衛を好きになった時、私、自分が嬉しかった・・・」

「えっ?」

「好きな人の事、想っていたら・・・ 思い出を、思い出していたら・・・
きっと、嬉しいから・・・ 死ぬ事、紛れるから・・・」

翠華、お前・・・

「私は・・ 私もっ! 死ぬ理由、欲しかったのよっ! 
怖かったっ! 今でも怖いのっ! 気が狂いそうっ!
だからっ・・・ だからっ・・・」


気がついたら、翠華を抱きしめていた。

こいつは・・・ 一生懸命で。 明るく振舞って。
でも、怖がりで、臆病で。 
きっと、一人で震えて、泣いていたんだろうな・・・
決して、皆にはそんな姿を見せないで・・・

俺だから、か・・・ 

「好きになっていいさ。 
俺、お前の想いに、答えられないかもしれない。
でも。 すっげえ勝手な言い分だけど・・・ 
好きになってくれるのは、嬉しいさ・・・」

馬鹿っ! そんな事! お前、何言っているっ!? 
お前は翠華をどう思っているっ?

頭の中で、<もう一人の俺>が喚き立てる。
ああ、奴の言い分は正論さ。

「・・・うっ、うえっ・・・・ ひぃん・・・・」

「俺、忘れないから。 
俺のこと好きになってくれた、一生懸命な、それでいて、怖がりで。
そして・・・ 優しい心の女の子の事、絶対、忘れないから。」

「うっ・・・ うわあぁぁ・・・んっ・・・」

「その女の子の想い・・・ それは、俺の思い出の中に、ずっと在り続けるから。
ずっと、ずっと、覚えているから・・・
だから・・・ だから・・・ 翠華・・・」

「ふっ・・・ふえっ・・・ええぇぇ・・・ん・・・」

「お前も、忘れないでくれ。 俺の事。
こんな、自分勝手な事をほざく、自己中心な最低野郎だけど・・・
俺の事。 お前が俺の事を好きになった、その事。 
忘れないでくれ・・・ 俺も、忘れないから・・・」

「な・・・え・・、なお・・えっ!」

「翠華・・・ ありがとな・・・ ありがとう・・・」

「直衛っ・・・ 直衛ぇぇ!!」

コクピットの中に、翠華の泣き声が響き渡る。


夜空を見上げる。 満天の星々。

あぁ、この星は。 こんなにも美しいのに。

この星で生きる事は。 こんなにも、残酷だったのか・・・







1992年6月5日 2330 黒竜江省 依安臨時キャンプ


性悪な魔女(?)や、厄介な上官から解放されて。
俺はキャンプから夜空を見上げていた。


3日前の夕刻、<フェンリル> は避難民を長春南郊外の難民キャンプまで護送。
任務を終了した。

ウィソやユルールが、「またねっ」と言って手を振っていた、その姿を思い出す。
辛い事の方が多いだろうけど、皆で生き抜いてほしいと思う。


<フェンリル>と、<ブルーバード>とは、2日前に別れた。

<ブルーバード>の朴少尉と、李少尉の二人は配置換えで、朝鮮半島北部の清津基地に配属だそうだ。
半島北東部の要衝だから、張りきっていたな。


<フェンリル>は・・・ 華南戦線に移動していった。
重慶ハイブと対峙する最前線だ。
マンダレー・ハイブからの攻撃もある。

彼女達は、大連から海路、華南戦線の中枢、広州へ向かうと言う。

周上尉とは、握手して別れた。 微笑んでいた。
趙少尉は、体に気を付けてね、と。
朱少尉は、翠華と俺を交互に見やって、小声で「感謝します」と。

俺は何も言えなかった。
ただ、握手を返した。 ただ、頷いた。 ただ、微苦笑した。


翠華とは、結局そのまま別れた。

俺自身、彼女と、どうこうなろうと想っていた訳じゃない。
俺は、まだまだ、臆病で、自分勝手な餓鬼だ。
彼女の想いを知りつつ、結局自分の身勝手を押し付けたんじゃないのか?

俺の中の<奴>がそう呟く。

ああ。そうだろうよ。 そうだろうさ。 
俺は、自分の自分勝手を、翠華に押し付けたんだろう。
<奴>の言い分は、本当さ。

だから。

だから、俺は謝罪もしない。 許しも乞わない。 罵るなら、罵ってくれて構わない。

だから、俺は・・・ ――――――翠華を忘れない。 


(「こんな、狂った世界だけど・・・ 貴方を想えば、私は戦える。
貴方の思い出が有れば、私は恐れない。
貴方が覚えてくれる限り、私は生きていける。
そして・・・
貴方を好きになった事を。 死の瞬間まで、私は嬉しく思うの。」)


さようならっ! 直衛。 ありがとうっ!


そう言って翠華は大連に向かう軍用列車に乗り込んだ。




前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.037240028381348