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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 国連欧州編 イベリア半島2話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/18 00:38
1994年6月26日 0345 シエラ・ネバタ山脈 ムラセン山山麓の谷間


当直交代の直前。 それは唐突にやって来た。

≪CPよりグラムB BETA警戒状態2A発令! 現在、マドリードのBETAのうち、3群が移動を開始。
主群は南西方面、タホ河沿いにエストレマドゥーラ地方へ侵入を図る模様。 最終予想地点は、リスボンの予想≫

―――リスボン。 半島に確保している数少ない、重要港湾拠点だ。

≪他2群のうち、大型種を含む1群は南南東、カスティーリャ・ラ・マンチャ地方から。シエラ・モレナ山脈方面へ移動中。
過去のデータから、コルドバからセビーリャ経由で、へレス・デ・ラ・フロンテラか、カディスを目指すと予想されます。
最後の1群は、小型種のみで構成されます。 南へカスティーリャ・ラ・マンチャ地方から、ハエン、グラナダ方面へ移動中。
最終予想地はモトリル、乃至、マラガ。
中央、西部、両戦線は第1級警戒態勢に移行。 グラムBは、グラナダ防衛ポイントにて、遅滞防御戦闘。 大隊本隊到着まで、死守指令です≫


―――最悪のタイミングだな。

「グラムBよりCP。 了解。 因みに小型種の数は? 推定で良い」

≪CPよりグラムB。 BETA数は推定1500 突撃級、要撃級、光線級は確認されず≫

「グラムB、戦域情報確認した。 これより防衛ポイントにて、遅滞防御戦闘準備行動を開始する」

≪CP了解。 ・・・グラムB、周防中尉。 中隊主力到達は45分後です。 BETA到達は・・・15分後。 堪えて下さい≫

「了解・・・ ここを抜かれたら。 ジブラルタルが丸裸になるからな」

通信を切り、部下に緊急集合と戦域情報、行動指示を出す。

「5分で居留民を山の上に避難させる。 10分後に防衛ポイントに布陣。 15分後、接敵だ。
俺が今から長に話す。 お前達は主機を上げろ」

『『『 了解! 』』』

「ギュゼル。 悪いが、俺の機体を自律制御で『暖めて』おいてくれないか?」

『了解』

「よし、かかれ!」

一斉に3人が機体に張り付く。
俺は大急ぎで長の家に飛び込んだ。


「何の騒ぎだ? 周防中尉。 いきなり、この騒音・・・」

「BETAが来ます」

「何ぃ!?」

「正確には、この村の西、グラナダの跡地です。 しかし、距離にして10数kmしか離れていない。
BETAの識別可能圏内です。 確か、山麓に避難場所が有ると言われましたね? 大至急向かってください。
手荷物も持っていく暇は無い。 我々は5分後に、グラナダの防衛ポイントに布陣せねばなりません。
接敵は10分後。 急いで!」


長の顔が、青白い色から、真っ赤に急変する。

「くそっ! おおい! 皆、外に出ろ! 出るんだ! 大急ぎで『神の祠』に行くぞ!」

「親父! どうしたのさっ!」

「マリア! 小さい子供達をまとめろ! BETAが来る! 『神の祠』まで大急ぎだ! 軍人さん達が、ぶちのめしてくれるとよ! 早くするんだ!」

「う、うん。 わかった!」


居留民達が、次々と家々から出てきた。
マリアが大急ぎで、泣いてむずがる小さな子供達をあやしながら、山麓へ続く山道を登って行く。

「ベサレスさん。 念の為に、これを」

「何だ? これは?」

「単眼網膜投影式の、小型通信機です。 今回、スクリーンは使えませんが、音声ならば」

「・・・判った。 頼む、皆を・・・ 護ってくれ」

「任務を、果たします」



敬礼し、機体へ急いで戻る。

『小隊長。 プラス250秒です』

ギュゼルから通信が入る。 およそ4分を費やした。 主機は『暖まって』いる。

「Bリードより各機。 防衛ポイントへ向かう」

『『『 了解! 』』』

4機の『トーネードⅡ』が、青白い陽炎を発して、跳躍ユニットの出力を上げる。
次の瞬間、一気に噴射跳躍で中空に舞い上がった。









グラナダ跡地 防衛ポイント 0358 


未だ暗い視界に、ぼんやりと黒い大波が彼方の大地からやってくる。
戦域MAP上はすでに、BETAの赤で埋め尽くされた。 おおよそ、1500

『くっ・・・』 『なんて、数・・・!』

リュシエンヌと、アリッサか。
無理も無い。 2人とも初陣では無いが、これまでは精々、中隊や大隊での、大隊規模のBETA群の迎撃任務しか経験が無い。
今回は以前の1.5倍の数のBETA。 しかも、小隊の4機のみ。


「リードより03、04、徒に不安がるな。 落ち着いてよく見ろ。 連中は大半が闘士級だ。 戦術機の相手じゃ無い。
厄介な戦車級は、精々が300程度だ。 キャニスターを精々派手に撃ち込んでやれ。 それで大半はカタがつく・・・ 02、何かあるか?」

『02より01、意見具申』

「言え」

『距離を取りましょう。 小型種ばかりです。 馬鹿正直に、近接戦に付き合う事も無いでしょう』

こう言う時。 ギュゼルは意識的に『部下』の立場を強調した行動をとる。
それによって、俺に対してではなく、新任の2人に『教えて』いるのだ。

「よし。 各エレメントの距離を300に保て。 BETAとの距離、100は開けろ。
連中相手に、切り合いは不要だ。 せいぜい優雅に、ダンスのステップでも踏んで差し上げるぞ」

『『『 了解! 』』』

「距離500で射撃開始。 800・・・ 700・・・ 600・・・ 撃てッ!」

WS-16C突撃砲から、36mm砲弾がシャワーのように射出される。
4機が射線をずらしつつ、掃射する。 射線を避けて固まったところへ、120mmキャニスターを連射して、纏めて吹き飛ばす。
地表面噴射滑走を使用しながら、BETAとの距離を一定に置いて射撃を続ける。
大型種や光線級が不在の戦場では、厄介な戦車級と言えど、戦術機に集る前に霧散してしまう。

有視界では確認しづらいが、戦域情報MAPでは、交戦開始後約10分で、1300体程を削っていた。 
残りは200体弱。 散らばっているので纏めては無理だが、数分で殲滅できる数だ。

(よし。 これなら本隊到着まで大丈夫・・・)

≪CPよりグラムB! 近接エリアで大規模な地中侵攻震動波を確認! コード991警戒!≫

―――何っ!?

途端に、複合センサーの震動波が、明らかにBETA地中侵攻の波を捉えた。 出現予想地点は―――

「各機! 800後退! 地中侵攻、来るぞッ!」

『了解!』 『『 りょ、了解! 』』

ギュゼルの落ち着いた声と。 リュシエンヌとアリッサの、驚愕と困惑の声が重なる。
後進噴射跳躍をかけ、一気に距離を取る。 後方の坂の上に陣取ったその瞬間。 地面が破裂した。

「グラムBよりCP! コード991! グラナダ防衛ポイント南東2km! 推定個体数、2000! 要撃級を確認、300!」

≪CPよりグラムB、了解! 本隊到着まであと、17分! なんとか堪えて下さい!≫

「グラムB、了解・・・ って言ったって。 了解するしか無いか、なぁ? CP?」

≪判っていらっしゃるなら、お仕事して下さい≫

「見返りでも、欲しいものだ」

≪蒋中尉に恨まれるので、ご遠慮します。 オーヴァー≫


「やれやれ・・・ 失敗したか。 
ギュゼル、エレメントB、左から頼む。 俺のエレメントAは右手から掻き回す」

『了解。 ま、基地に帰ってから、再トライしたら? 
アリッサ、行くわよ。 ついて来なさいッ!』

『了解!』

「よし、リュシエンヌ、右手から掻き回す。 高速迂回して 『待って下さい! 隊長、BETA群が谷間方向に!』 ・・・何っ!?」

戦術情報MAPを確認する。
地中から飛び出したBETAの中の1群が、方向を東南東―――谷間の村の方向へ移動を開始している。 このままでは・・・

『隊長! 救助を! 居留民達が、BETAにッ!』

『た、隊長・・・』

リュシエンヌの切迫した声と、アリッサの戸惑いの声。
ここで谷間へ向かわなければ、確実に居留民は全滅する。 しかし・・・

「行動に変更無し。 このポイントで遅滞迎撃戦闘を続行、本隊の到着を待つ」

『隊長ッ!!』 『そんな・・・』

『リュシエンヌ! アリッサ! 馬鹿! 状況を確認しなさいッ! 今ここを抜かれたら、海岸線まで防衛部隊は居ないのよ!?
地中海に出られたら・・・ ジブラルタルは丸裸よ! 対岸のモロッコまで、光線級の射程圏内になるわ!
それだけじゃ無い! そのままコルタ・デル・ソル(太陽海岸)を西に向かわれたら! ジブラルタル戦線が崩壊よ! 判っているの!?』

ギュゼルが激しく叱責する。
そうだ。 ここを何としても、守り通さなければならない。 抜かれたら―――アフリカの数億の人類が、直接・間接的にBETAの脅威に晒される。

「命令に変更は無い。 本隊到着までここを死守する。 言った筈だ、『人類の数の確保』が本務だとな。
ここで数10人を救って、数億人を危険にさらす事は出来ない。
これが―――俺達の任務だ」

1年前の記憶が蘇る。 思い出したくもない。 忘れてはならない。 あの光景。

「予定通り。 前方の要撃級から始末する! 光線級は居ないようだ、各機、空間の有効利用を行え! 
水平面機動は、余り使うなよ! よし、続・・・『リュシエンヌ! どこ行くのよッ!?』 ・・・馬鹿野郎!!」

咄嗟に制止に入ろうとした瞬間、要撃級の突撃が始まった。

「くそっ!」

水平噴射跳躍で交わして、側面に120mmを撃ち込む。


「リュシエンヌ! 何をしている、戻れッ!」

『隊長! 居留民の護衛に向かいますッ! 単機で何とかしますッ!』

リュシエンヌの『トーネードⅡ』が、跳躍ユニットを全開で飛び上がって行く。

『あの子を! あの子に、約束したんですッ! 護ってあげるって! だから・・・ だからッ!!』

『馬鹿! リュシエンヌ! 命令無視に、上官抗命罪よ!? 今なら間に合う、戻りなさいッ! 戻って! リュシエンヌ!!』

リュシエンヌの叫びに、ギュゼルが悲痛な声で制止する。
しかし、リュシエンヌの『トーネードⅡ』はそんな声が聞こえないかの様に、A/Bまで吹かして姿を消した。

『小隊長・・・! 直衛! どうするのッ!?』

両手で持った突撃砲を、左右の小型種BETAに撃ち込みながら、ギュゼルが叫ぶ。

『ど、どうなっちゃうんですか!? リュシエンヌは!?』

アリッサがギュゼルをバックアップしながら、120mmを後ろを向けた要撃級に撃ち込んで無力化した。

俺の左右から迫って来た要撃級をバックステップで交わし、急速に前方から迫ってくる戦車級の群に、120mmキャニスターを2連射で叩き込んで始末する。

「・・・陣形を、デルタに変える。 トップは俺が張る。 ギュゼル、ライトバック。 アリッサ、レフトバック」

『ッ!! 了解・・・』
『そ、そんな! リュシエンヌが一人に!』

「早くしろ、アリッサ! ・・・リュシエンヌは『切る』 生き残ればそれで良し。 駄目なら・・・ BETAの腹の中だ」

『隊長ッ!!』

『アリッサ! 死にたいの!? 早くフォーメーションを組みなさいッ!』 『は、はいッ!』

3機でデルタ・フォーメーションに組み直し、BETAと対峙する。

残り、10分














『リュシエンヌ! 何をしている、戻れッ!』

隊長の声が鳴り響く。 ああ、凄く怒ってる。 私、何しているんだろう。

「あの子を! あの子に、約束したんですッ! 護ってあげるって! だから・・・ だからッ!!」

そうだ、私は、あの子に―――マリアに、約束した。 『護ってあげる』って。
それが、私の誓い。 衛士としての。 
馬鹿かも知れない。 うん、きっと馬鹿だ、私は。


『馬鹿! リュシエンヌ! 命令無視に、上官抗命罪よ!? 今なら間に合う、戻りなさいッ! 戻って! リュシエンヌ!!』

クムフィール中尉―――ギュゼル姉さんの声が切迫している。
配属以来、何かにつれ隊長に叱責されて、落ち込みがちの私とアリッサを励ましてくれた。 まるで姉のような女性。

ごめんなさい。 みんな。 私には出来なかった。
ごめんなさい。 ギュゼル姉さん。 クムフィール中尉。 戻れないの・・・
ごめんなさい。 アリッサ。 折角仲良くなれたのに。 もう、ダメみたいね・・・
―――そして
ごめんなさい。 周防隊長。 私、馬鹿でしたか? 馬鹿でしたよね。 ごめんなさい―――抱いて欲しかったな・・・


「くそおおぉぉぉ!!! どけぇ! BETAあぁぁ!!!」














『直衛! 本隊は!?』

噴射跳躍と、多角噴射滑走で群れを交わした俺を、一斉に追撃してきた要撃級の後背へ120mmを叩き込みながら、ギュゼルが叫ぶ。

『弾薬、残り少ないです!』

36mmを左右に乱射して戦車級を掃討しながら、アリッサが悲鳴を上げる。

「今確認した! あと1分! 堪えろッ!」

『了解!』 『うううぅぅぅ~~!!』

正直。 3機だけでこの数を支えているのは、奇跡だ。
既にアリッサの機体は、左右の跳躍ユニットがやられて、噴射滑走しか出来ない。 前面には出せない状況だ。
ギュゼルも俺も、機体のあちこちを集られて齧られている。 幸い俺の機体は、推進系は無傷なので前衛をワン・トップでやっている。
ギュゼルは右の跳躍ユニットを、要撃級の1撃で破壊されていた。


『グラム・リーダーよりグラムB! 聞こえるか? まだ生きているか!?』

「生きているか? は、無いでしょう? 中隊長。 孤軍奮闘の部下に対して・・・」

『貴様がそう簡単に、くたばるタマでは無い事は、重々承知している。 憎まれっ子、未だ憚っていたか!』

「お陰様で。 しかし1機、恐らく失いました」

『何?』

手短に、経緯を説明しながらも、BETAを屠って行く。 中隊の他の3個小隊が合流して、一気に形勢が逆転した。


『周防。 馬鹿者、貴様のミスだ。 指揮官としての、貴様のミスだぞ?』

「はい、大尉」

『他の2機は・・・ 無理か。 レッジェーリ! 第3小隊で周防と追従しろ! 居留民の状態の確認だ!
ここは片付ける。 あと5分で大隊主力も到達する。 急げ!』

『了解!』

『了解ぃ! 直衛、付いてきな! 3小隊、いくぜッ!』

『『『 了解! 』』』

ファビオの陽気な声に、3小隊が唱和する。 この隊は、隊長に似たか。 皆、ノリが良い。

「急ぐぞ、ファビオ!」

『おう! お前さんの可愛い部下を死なすのは、気が引けるからなッ!』

こう言う時は、こいつのノリは感謝して良いのか悪いのか。

味方が来た安堵感と、部下の生死の焦燥感、そして任務を『放棄』せざるを得なかった悔悟で、頭の中が上手く纏まらなかった。

















「はぁ・・・ はぁ・・・ はぁ・・・」

駄目だ。 多分、折れた肋骨が何本か、肺に刺さっている。 さっき、血を吐いた。
要撃級の1撃を管制ブロックにまともに喰らった。 咄嗟に後進噴射をかけたけれど、ギリギリ間に合わなかった。
最も、相撃ちで120mmを叩き込んでやったけど・・・

機体は、もう動かない。 推進系が全てダウンした。 右上腕部のコントロールが利く位だ。

目の前で、中年の男性がBETAに喰われている。 向こうでは、小さな女の子の悲鳴が聞こえていたけど・・・
ああ、ダメ。 死んでいる。 貪り食われている。


「うっ・・・ うあっ・・・」

何とか制御の利く右腕を操作し、36mmを発射する。
少女の死体と一緒に、10数体のBETAが吹き飛んだ。

向うでは、マリアが倒れている。 違う、マリア『たっだ』死体だ。 上半身が無くなっている。 戦車級に生きながら喰い殺された。


(『助けてッ! リュシエンヌ! 母さんが! お祖母ちゃんが・・・ 父さんが! 食べられちゃったよッ!!』)

隊長が、長に渡した通信機。 そこから聞こえてきたマリアの悲鳴。
それを聞いた時。 私の理性は蒸発した。

約束を守れなかった。
皆の願いを無視してしまった。
隊長の制止を振り切ってしまった。

その結果は? 目の前の、殺戮劇だ!!


「ちく・・・しょう・・・ さわるな・・・ マリアに、さわるなぁ!!」

また36mmを連射する。 マリアの死体を喰らおうとした闘士級を、粉々に吹き飛ばした。
戦車級が集り始める。 どうやら、私の機体が未だ稼働している事に、気付いたようだった。

(これで。 これで、終わり・・・ 不思議、ね・・・ 怖くないな・・・)

不思議だった。 多分、死ぬ時は物凄い恐怖感に苛まれながら、死ぬのだろうと思っていた。

(聖母≪マリア≫様の、ご加護かな・・・ ふふ、あの子も、マリア様、だったしね・・・)

これから死のうとしている人間が。 何て間の抜けた事を。

(隊長・・・ 隊長が、国連軍に居る理由、聞いたんです、私・・・)

極東の地で。 多数の避難民を護る為に。 BETAと一緒に、他の避難民に発砲せざるを得なかったと。
そして、軍法会議にかけられて。 そして国連軍に追いやられた事も。

(それでも・・・ やっぱり、隊長は・・・ 自分を、変えなかったのですね・・・)

BETAと戦い抜いて、人類を護る衛士としての覚悟。 それを変える事が無かった。
そうだ、最初からそうだった。 あの人は。 その為に、同胞の血で手を汚そうとも。 

今だってそう。 あそこでBETAの侵入を許せば。 本当に、アフリカが危ないよ・・・


(・・・私って、本当に馬鹿だ・・・)

そんな隊長に、迷惑ばかりかけて。 挙句の果てに、死んじゃうなんて・・・

戦車級が機体を齧り始めた。

―――ギャリ、ギャリ、ギャリ

嫌な音だ。 もう直ぐ、私を喰えると思っているのか・・・

(・・・そんな事、させない・・・)

朦朧とした意識の中で、操縦桿を操作する。
戦車級がコクピットを食い破って、その硫黄臭い呼気を吐き出しながら、私に迫ったその時。

「くそおおぉぉぉ!!」

36mmの発射音と、私の悲鳴。 どちらが先だったか・・・


「ぎゃああああぁぁぁ!!!!」














居留民の避難場所は、地獄だった。
バラバラに食い散らかされた、人間の死体。 
バラバラになった、BETAの死骸。


『ぎゃああああぁぁぁ!!!!』

その時、36mmの射撃音と同時に、悲鳴が聞こえた。

「ッ! リュシエンヌ!?」

リュシエンヌの声だ。 
周りをサーチするまでもなく、100m程先の大破した『トーネードⅡ』が、自機に集った戦車級を、超至近射撃で『削ぎ落として』いた。


『・・・直衛。 ここいらのBETAは、もう居ないな。
単機で、300体近く倒している。 新任が、良く頑張ったよ・・・』

リュシエンヌの機体に近寄る。 機体は完全に破損している。 管制ブロックはへしゃげて、装甲は食い破られていて ―――中から、鮮血が流れていた。

ファビオに周辺警戒を依頼し、機体のコクピットを解放して外に出る。


「・・・リュシエンヌ?」

大破したコクピットに上り、声をかける。
リュシエンヌ―――俺の部下の衛士。 未だ少女の面影を残す彼女は、両足を食い千切られていた。

「・・・ぜっ ・・・ぜっ 」

もう、虫の息だ。 大腿部の動脈が喰い千切られている。 失血死寸前だった。
近寄って、体を抱え起こす。

「リュシエンヌ? 俺だ、周防だ・・・ 判るか?」

「・・・ぜぇ ・・・はっ た、たい・・・ちょ・・・?」

「ああ。そうだ。 ここは防ぎ切った。 お前が防いだ」

「わ・・・ わたし・・・ ご、めんなさ・・い・・」

「お前はやった。 衛士として防いだ。 命令違反は有った。 
しかしな、これもまた、衛士の戦いだ。 お前は戦い抜いた。 お前の、父親と同じように」

もう目が見えないのか。 微かに手を上げて、俺を探している。
その手を握ってやる。

「わ・・・たし・・・ がんば・・・ た、けど・・・ ダメ。 たいちょ・・・ みたい・・・ なれな、かった・・・」

俺みたい? 何を言う。 俺みたいなんかになるな。

「・・・たい・・・ちょう・・ わ、わたし、は・・・ やっぱ、り、たいちょ・・みたい・・ なれ、ま、せん・・・ すお・・・ ちゅ・・い・・・」

「おい! リュシエンヌ! 俺みたい? 何がだ!? おい!」

「・・・だい、て・・・ ほし、かっ・・・ な・・・」


―――目の前で。 若い、未だ少女の面影を残す女性衛士が、息を引き取った。















1994年6月29日 1400 モロッコ テトゥアン


ジブラルタル戦線の後背地、モロッコのテトゥアン基地。
第88独立戦術機甲大隊は、この基地をジブラルタルでの拠点としていた。


―――戦没者碑

故国を失った将兵にとって、いずれ自分も入る『墓』

小隊の3人。 ギュゼル・サファ・クムフィール中尉、アリッサ・ミラン少尉。 そして俺、周防直衛中尉。
3人でここに来ていたのは、戦死したリュシエンヌ・ベルクール少尉の『慰霊』の為だ。
いずれ、正式に戦死認定処理が終了すれば、中尉に特進叙任される。


「あの娘。 隊長の事、好きだったみたいです・・・」

アリッサがぽつりと言う。

「そうね。 何となく、判った。 翠華に遠慮していたのか知らないけど。 
直衛、貴方は気付いていなかったでしょう?」

ギュゼルの声は、批難4割、思いやり6割と言ったところか。

「・・・情けない事にね」

「翠華は、『気にせず、アタックして抱いて貰いなさい!』って、よく言っていたわ」

「でも。 リュシエンヌって、不器用なとこ、あったから・・・」

「・・・抱いても。 俺はあいつの気持ちに応えてやる事は、出来なかったよ」

現に、翠華ひとり、幸せにしてやれ無さそうな俺が。

「そんな事。 悩んだって仕方無いじゃ無い。 抱いて、抱かれて。 その後どうなるかなんて」

「・・・ギュゼル。 何気に凄い事言うな。 以前の君とは、思えないぞ?」

「衛士だからね。 生きている内に、何かを抱え込んで。 何も出来ないで死ぬのなんて、まっぴら」

何か、吹っ切れた感じがするが・・・ 吹っ切れすぎだろ? 全く・・・


お前。 俺みたいになれなかった、そう言ったな? リュシエンヌ。 
何だよ、それって。 ―――寧ろ、逆なのさ。


あの時。 俺は居留民を護る事より、後方の安全を優先した。 命令を無視したお前を、切り捨てた。 
指揮官として、そうせざるを得なかった。 あの判断を過ちとは思わない。
お前を止める事が出来なかった事は、俺のミスだけどな。

・・・正直。 正直言うとな、リュシエンヌ。 俺はお前に嫉妬したよ。
馬鹿な行動だ。 馬鹿な判断だ。 軍人として、衛士として、やっちゃいけない事だ、お前のした事は。

でもな。 そんなお前に、俺は嫉妬したよ。 いや、羨望かな? あそこまで突っ切れたお前に、心の片隅で。


だから、本音を言うとな。 そんなお前を、散々怒鳴り散らして、散々叱って、散々扱いた後に。



(抱かれたいって。 好きだって。 お前、死んでから言うな、馬鹿 ―――抱いてやりたかったよ。 いや、抱きたかったよ。 リュシエンヌ)











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