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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 国連極東編 満州2話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/09 02:03
1993年9月4日 1315 国連軍大連第3駐屯基地 第882独立戦術機甲中隊


「・・・この様に。 現在、華北、内蒙古、北部満洲にて、極めて大規模なBETAの同時3方向侵攻、と言う重大な局面が生じています」

オベール中尉のブリーフィングが続く。 
アルトマイエル大尉はその横で、眼を閉じ、腕組みして座っている。 表情は険しい。
他に連中は、俺を含めて極めて緊張した表情だ。 曲がりなりにも、多くの戦場を戦い抜いた衛士達でさえ、今の状況には戦慄を覚える。


現状を要約すれば、こうなる。

8月26日 H14重慶ハイブの個体群増加を監視衛星が捉えた。 F群とG群。
8月27日 以前から観測されていた、H17マンダレーハイブの増加個体群(E群)が、北東・雲南方面へ移動。 
8月29日 マンダレーE群は、H14重慶ハイブに合流。 同時に重慶ハイブの個体数増加が一層顕著になる。
8月31日 重慶ハイブのF群、G群が押し出される形で東進を開始。 
      同日、H18ウランバートルハイブ、H19ブラゴエスチェンスクハイブにおいても、個体数の増加を確認。
9月2日 重慶ハイブのF群、G群は、華中方面軍の第1防衛線手前、湖北省・武漢の西20kmで突如北上開始。 
      同時に重慶ハイブへ到着していたマンダレーE群が、東進を開始。
      ここに至り、北京政府は行政府移転開始。
9月3日 重慶F群、G群、山東省・済南防衛線南20kmに接近。
      ウランバートルハイブの増加個体群(B群)南下開始。
      北京政府、河北省・塘古より海路脱出。 上海へ移動。
9月4日 河北省・石家荘~山東省・済南の華北方面軍南部戦線が、重慶F群、G群に突破される。
      その後、F群は北東へ進路を変え、河北省・天津、山海関方面へ突進の姿勢を見せ。 G群は山西省・太原から北上し、大同方面へ突進する。
      そしてこの日、ウランバートルB群が内蒙古・フフホト~河北省・張家口の、華北方面軍北部戦線で交戦。
      北満洲では、H19ブラゴヴエスチェンスクの増加個体群(C群)が南下を開始した。


華北戦線は、最早立て直せない。 南北からBETA群の挟撃を受け、じわじわと満洲方面へ後退中だった。
天津も、無理だろう。 その後の山海関を突破されれば、その先は東北平原。 つまり遼東の地、南満洲だ。

満洲方面軍も、南部への戦力抽出が出来ない状況だ。 まずは、H19からのC群を殲滅しなければ、背後から撃破されてしまう。
華中方面軍は、その後に東進を始めたマンダレーE群と激戦の最中だった。 戦力を華北に送る余裕は、こちらも無い。


BETA推定個体数。 重慶F群・5万8000、G群・3万2000  ウランバートルB群・3万8000  ブラゴエスチェンスクC群・4万1000
総計、16万9000
他に華中のマンダレーE群、4万6000

極東戦線全域が、パニック状態に陥っていた。


「現在、満洲南部戦域で稼働状態の戦力は、中国軍が戦術機甲2個師団、機甲3個師団を主力とする第31打撃機甲軍団。 元々は華北の虎の子部隊です。
韓国軍は戦術機甲1個師団、機甲1個師団を中核とする、第7機甲軍団。 日本軍は1個戦術機甲師団(第9戦術機甲師団)と、2個機甲旅団が瀋陽に駐留中。
国連軍は第37戦術機甲師団と第41戦術機甲師団、他に3個機甲旅団を主力とする第17打撃機甲軍団が急速展開を行っている最中です」

戦術機甲師団6個、機甲師団6個半相当か。 華北方面軍の残存戦力を期待値込みで換算しても。
精々、戦術機甲8個師団、機甲8個師団程度か。 駄目だ。 戦力が足りない。

今年1月の『双極作戦』では、戦術機甲15個師団相当、機甲8個師団相当を投入して、そしてS-11弾頭弾の集中使用を行ってようやく、約19万のBETA群を殲滅出来た。
戦術機甲戦力が半数にしかならない今回、少なくとも2方向からの、約17万にも達するBETA群に対する防御戦闘としては、余りに戦力が無さ過ぎるのだ。

オベール中尉の説明が続く。

「今回、陸上戦力の不足を補う意味で、渤海湾、及び黄海に展開中の統合軍海軍部隊。
つまり、日本帝国海軍北支派遣艦隊、中国海軍北洋艦隊、韓国海軍西海艦隊による、沿岸周辺域への大規模艦砲射撃と、母艦戦術機戦力による支援攻撃を実施します。
統合艦隊の渤海湾展開完了は、明日。 9月5日 0950予定」


それまで黙っていたアルトマイエル大尉が口を開く。

「・・・海上からの支援は、どの程度になる?」

確かに、気になる所だろう。 上手くいけば、山海関辺りの隘路で、相当数のBETAを殲滅出来るかも知れない。

「はい。 日本海軍北支派遣艦隊は、第6戦隊の戦艦『加賀』『土佐』、第7戦隊の戦艦『薩摩』『安芸』、第8戦隊の戦艦『長門』『陸奥』
この6隻を主力とする水上打撃戦任務部隊。 16インチ砲48門、Mk41 mod2 VLSを1隻当り90セル搭載。
そして、第3航戦の戦術機母艦『雲龍』『翔龍』、第4航戦の『天龍』『神龍』、第5航戦の『瑞龍』『仙龍』、この6隻の戦術機母艦戦力から成る、母艦戦術機甲任務部隊が中心です。
戦術機戦力は360機。 機体はF-4EJⅡ改 ≪翔鶴≫ F-4EJの艦載機型です」

戦術機戦力は1個師団強相当。 砲撃制圧力は・・・ 昔の陸軍軍人曰く 『戦艦1隻の砲力は、陸軍7個師団の攻撃力に相当する』

今現在は総合火力や、技術力の向上でそこまで極端ではないが。
それでも戦艦の全力砲撃力は、陸軍師団3個師団相当、とも言われる。
それが6隻、18個師団相当の攻撃力。


「中国北洋艦隊は、駆逐艦とフリゲート艦が主力で24隻。 韓国西海艦隊もほぼ同様の戦力で、22隻。
この両艦隊は、主に艦対地ミサイルの発射ベースとなります。
日本艦隊の巡洋艦、駆逐艦戦力も協同しますので、巡洋艦、駆逐艦戦力は合計で78隻。 艦隊合計で90隻。
統合艦隊司令長官は、日本海軍の有賀幸平中将。 母艦任務群司令官は柳本隆作中将です」

「ふん・・・ 流石は、破れても未だ世界第3位の大海軍。 日本帝国海軍の面目躍如の布陣だな。
欧州ではこれ程の海上支援は受けられん。 局所展開能力は、或いは英国本国艦隊(グランドフリート)を上回るな」

「あら。 あちらも中々のものですけれど? 最も、母艦戦術機甲戦力では、アメリカ・日本には及びませんけれど・・・」

オベール中尉も欧州での戦歴から、日本の海軍力の評価は良い様だった。


アルトマイエル大尉が立ち上がり、最終指示を出す。

「我が『中隊』も、防衛線の一角を担う事となった。 担当戦域は阜新。 瀋陽の西120km地点だ。
この防衛線の主戦力は、日本軍の第9戦術機甲師団。 まぁ、我々は遊撃・索敵部隊と言ったところだな。 
BETAを見つけたら、精々派手に鈴を鳴らせば良い」

第9戦術機甲か・・・ 今年4月からの第3次派兵戦力。 確か満洲に到着したのは、先月の中頃では無かったか?
BETAとの戦闘経験の全くない、所謂『戦闘処女』部隊だ。 少々、不安が残るな・・・


「中隊の移動は、明日0500 各員、それまでに機体のトータルチェックを行え。
本日2000に最終ブリーフィングを行う。 以上だ」

「敬礼ッ!   直レ    解散ッ!」

オベール中尉の号令で敬礼。 大尉の答礼で解散となった。







≪1630 国連軍大連第3駐屯基地 戦術機ハンガー≫


整備班と機体のステータスチェックを行っていると、圭介がやって来た。 他にも1人。

「直衛、チェックはまだ掛かるか?」

「いや? あと5分くらいだ。 何だ? 何か話しか?」

「別段、取りたててと言う訳じゃない。 こっちが終わったんでな。 じゃあ、PXでも行ってるわ」

「おう。 後で俺も行く」

んじゃ、な。 圭介がそう言ってハンガーを出て行く。 一緒に居るのは、確か・・・ リッピだったな。 ヴェロニカ・リッピ少尉。
ああ、圭介と同じ第1小隊だったな。


「少尉殿。 OSの設定変更、完了です。 ・・・しかし。 良く考えますな、こんな事」

「こうして欲しい、って言ったのは俺だけどね。 実際に組み替えたのは、以前の部隊で機付き長をしてくれていた整備班長さ」

何をしているかと言えば。
以前、23中隊時代に「疾風」に施したOSのプログラム設定を、「イーグル」にもしてみよう、と言う事になった。
偶々、ブリーフィングで話が出て、説明したんだが。 特に大尉が喰いついて来て。
『中隊全機に対して、OSの設定変更を行う!』 と宣言したのだ。
結果として俺が整備の連中に内容を説明し、プログラムの変更を今まで手伝っていたと言う訳だ。

「まぁ、有効性が確認できれば。 国連軍全体でも運用されるんじゃないですかね? 現に日本軍では標準運用なんでしょう?」

「ああ。 今は全戦術機に改良版が搭載されているよ。 演算量増大によるタイムラグも、新型のCPUが開発されれば、解消できるんじゃないかな?」

今開発が進んでいる、第3世代機用のヤツも、そのうち第2世代機に搭載されるだろう。
そうすれば、今まで以上に機動性の幅が広がる。

「ん・・・ これで良し。 オール・チェック。 ご苦労様です、少尉殿」

「ああ。 ご苦労さん、軍曹。 皆、理解が早くて助かったよ」

「ははっ こと戦術機に関しては、我々は少尉の倍以上の年月、いじってきてますからね」

「ま、専門家に任せておけば、問題無いよな?」

「そう言うこってす」

整備の、特に古参に対して、ぞんざいな態度をとる衛士は居ない。 そんな馬鹿者は、とっくにBETAに喰われて死んでいる。
別に阿るんじゃ無く、素直にその専門技術には、驚嘆する。

「じゃ、俺はこれで上がるよ。 ご苦労様」

「はっ! 失礼します」













≪1730 国連軍大連第3駐屯基地 PX≫


最近思うのだが。 俺は特に『食』に関して、純然たる日本人、と言う訳ではなさそうだ。
派遣軍の中には、米の飯や味噌汁、漬物。 そう言った『和食』が恋しくて、そして肉食中心の(そればかりの)戦場食にうんざりしている奴も少なくない。

反面、どんな食事も美味しく食える奴も居る。 代表的なのが、同期の伊達愛姫少尉だった。
おれも実は、そんなに食事が苦痛では無い。
この1年、色々と国際色豊かな食事には、楽しみで美味かった。

まぁ、それにしても国連軍の、この食事の内容には、一言言いたいが。
量は多い。 栄養価も無論、きちんと計算されて過不足が無い。 が、それだけだ。
不味い、と言うより。 兎に角、微妙。 献立考えた責任者、出てこい。 全く。


「そんなの。 全く贅沢よ、貴方達。 欧州や地中海、中東戦域じゃ、これでも上等なのよ?」

ヴェロニカ。 ヴェロニカ・リッピ少尉が呆れて言う。
食のこだわりに関しちゃ、欧州ではフランス人と双璧の、イタリア人の言葉じゃないな・・・

でもまぁ、そうかも知れない。
欧州は今年の7月、北欧戦線が崩壊して、全ユーラシア域を失った。
残るは英国とアイルランド、アイスランドと、地中海の島々だけだ。
農業生産が全滅した結果、100%合成食材に頼るより方法が無い。 味もそうだが、一々献立も変えるなんて余裕もない。
朝・昼・晩。 3食毎日同じメニュー、なんて事も珍しくはないそうだ。


「まぁ、メシに関しては、どうとも言えないとして。 どうなんだ? 今回、保ちそうかい?」

ファビオが些か、自信なさげに聞いてくる。 ヴェロニカも同じだ。

「私は・・・ 大丈夫って、言いきる自信が無い。 『スワラージ』作戦は同じくらいの規模だったけど、完敗だったし・・・」

ヴァン・ミン・メイ少尉が暗い表情で呟く。 彼女は昨年の『スワラージ』作戦に東南アジア国連軍として参加したと言う。
結果は・・・ 無残な完敗だった。

「私も、メイと同じ。 こんな大規模作戦、正直初めてなの。 ずっと華北に居たから、北満洲の大規模作戦には参加していなかったし・・・」

ギュゼルも不安げに言う。

「私とファビオも。 シチリアのメッシーナ戦線や、モロッコのジブラルタル戦線で戦ったけど。
こんな大規模侵攻の防衛戦は、初めてよ・・・」

ヴェロニカが、ファビオと顔を見合せて呟く。

と言う事は・・・


「少なくとも。 この中で大規模防衛線を経験しているのは、お前さん達3人だけなんだ。
どうなんだ? いけそうか? それとも、ヤバそうなのか?」


俺と圭介、久賀がお互い顔を見合す。

ここで大丈夫だ、なんて無責任に言う事は簡単だが。 そんな事、戦闘が始まれば、すぐに吹き飛んでしまう。
だけど、不必要に不安がらせるのもマイナスだ。 萎縮して戦場でやられては、元も子もない。


暫く考えて、言葉を選んで話し始める。

「正直、今の陸上戦力だけじゃ、無理だ。 2日も保たない」

最初の一言だけで、4人の顔色が変わる。

「今回の要点は、海上からの支援戦力だ。 艦載戦術機が360  これは1個師団戦力に相当する。
海軍機は戦域制圧支援が主任務だから、BETA群との接近戦闘には入らないだろうけど。 反面、打撃支援としては陸軍機より遥かに攻撃力が高い。
それに、戦艦戦力だ・・・」

ひとまず、言葉を切る。 

「戦艦の艦砲射撃。 これは俺も初めてだけど。 いいか? 陸軍の砲兵部隊で最大級の重砲が203mmだ。
だけど、海軍じゃこのレベルの砲は、重巡洋艦の主砲に過ぎない。 155mmなんか、軽巡洋艦の主砲だし、127mmは駆逐艦の主砲だ。
海軍じゃ、この位は『中・小口径砲』なんだ。 陸軍の重砲が、だぞ?」

俺の言いたい事が、なんとなく判って来たのだろう。 4人とも、顔つきが変わって来た。

「対して。 戦艦の主砲は今現在、最も小さい主砲で、英国のキング・ジョージⅤ級の14インチ(356mm)砲
次が、他の英国戦艦や、イタリアのヴィットリオ・ヴェネト級、フランスのリシュリュー級の15インチ(381mm)砲
今回派遣された日本の6戦艦や、英国のライオン級、米国のアイオワ級なんかは、16インチ(406mm)砲だ。 陸軍重砲の2倍の巨砲群だよ。
この艦砲射撃の威力と、VLSを始めとする艦対地攻撃力。 今回は全艦隊で90隻だ。 正直、陸軍の1個軍以上の攻撃力が見込めると、判断しているんだ」

「直衛はな。 実の兄さんが海軍大尉でね。 親類にも海軍軍人が居るから、その辺はかなり詳しい」

「別名、『陸軍≪海上≫少尉』って言うんだけどね」

こら、久賀。 最後の一言、多いぞ。


「少なくとも。 天津から北上してくる重慶のF群には、かなり打撃を加える事は出来るだろう。
BETAの最終進路が解らないけど、沿岸部に集まってくれば。 他のG群やウランバートルB群も叩けると思う」

「そうなったら、こっちの仕事はF、G、B群の残敵掃討と、ブラゴエスチェンスクC群に対する、統合軍北満洲方面戦線への増援、ってとこだな」

「ま、楽観はできないが、悲観するにはまだまだ早い、って事さ。 去年の5月も、今年の1月も。 俺達はなんとか切り抜けた。
今回が前以上に悪いとは、思わない」

俺と圭介、久賀が話を締める。 
4人とも、何とか最悪の心理状態は脱したようだ。


「いよぉ~し! んじゃ、さっさとクソBETA共を殲滅して回るとするかぁ!」

ファビオがさっきとは打って変わって、陽気な声で言いきる。

「はぁ・・・ ファビオ。 貴方ってホント、現金ねぇ・・・」

ヴェロニカが呆れている。

「イタリアの人って、みんなこんな感じなの?」

ギュゼルが溢した言葉に、ヴェロニカが噛みつく。

「ちょっと、ギュゼル? 撤回して頂戴。 あんな≪ナポリ者≫と同じに見ないで。 
私はミラノっ子よ。 北部出身なの。 能天気な南部者と同じにしないで!」

ヴェロニカの迫力に、ギュゼルがたじろんでいる。

「ひでぇなぁ、ヴェロニカ。 同じイタリア人同士、仲良くやろうぜぇ?」

「うるさいッ! アンタはパスタ食べて、カンツォーネ歌って、女の子のお尻追っかけてればいいのよッ!」

ガァーー!! と、ヴェロニカが吼えている。

「それが人生だッ! なぁ!? 兄弟ッ!」

阿呆、俺に振るな。

「・・・何? 直衛も同類?」
「いや。 全力で否定する」
「つれねぇなぁ、直衛! 正妻候補と妾候補、両手に花の≪漢≫がよぉ?」

「「「 ・・・さいってぇ~・・・ 」」」

ヴェロニカ、ギュゼル、メイ。 女3人、ハモリやがった。


「さぁて。 確かブリーフィングは2000だったよな? 俺はそれまで、ひと眠りしてくる」

圭介が我関せずと席を立つ。

「俺はTVでも観てくる」

久賀がサロンへ向かう。

「ちょっと、直衛? さっきのファビオの話。 どう言う事?」
「確か、翠華って恋人とか言ってなかったかしら?」
「・・・不潔だよ、直衛・・・」

女3人の共同攻撃、どうやって交わしたものか!
本気で冷や汗が止まらない。

「部隊の融和も大事だよなぁ! ちゃあ~んと、説明しとけよぉ? 兄弟! チャオ!」

馬鹿パスタ野郎! 命名復活だ! このボケ!


「あら? 何を騒いでいるの、貴女達・・・?」

オベール中尉が小首を傾げてご登場だ。 ヤバい、本気でヤバいッ!!

「あッ! 中尉! 中尉も聞いて下さい! 直衛ってば、二股かけているそうなんですッ!」
「それも、以前の上官と、他国軍の女性衛士を・・・」
「女の敵ッ!」

怖い。 本当に怖い。 何がって? この馬鹿3人の話を聞いた瞬間、オベール中尉の雰囲気が180度変わった事がだよッ!!

「・・・詳しく、説明して頂けるかしら? 周防少尉・・・?」

ああ。 その美貌に相応しい、綺麗な笑みなのに。 俺にとっては、まるで地獄の閻魔に微笑まれているようだ。

例えれば。 浮気が発覚して、祥子と翠華に包囲されているような・・・ しないよ? そんな事。 絶対。 恐らく。 多分・・・








≪1900 PX≫


1時間以上、女性陣4人に問い詰められ。 洗いざらい白状させられ。 
ようやく解放された後の、魂の抜け殻と化していた俺は、PXのテーブルに突っ伏していた。


「ご苦労だったな、周防」

不意に声をかけられ、誰かと思えば、アルトマイエル大尉だった。 両手にコーヒーカップを抱えている。
1つを受けとり、飲む。 相変わらず不味い『コーヒーモドキ』だが、フラフラ彷徨っていた魂が、ようやくご帰還してくれたようだ。


「・・・見られてたんですか?」

「うん」

「・・・どの辺から?」

「戦況を説明している辺りから」

・・・! 最初っからかよ!

「部下の苦戦に、上官の支援は無し、でしょうか・・・?」

「こと、男女の関係に関しては。 自学自習も、また良しだ」

こーゆートコ、あっさりしているなぁ・・・


「試しにお聞きしますが。 大尉ならあの状況では、どうやって対処を?」

「私なら。 そもそも2人の女性を同時に愛そうなどと、大それた事はしない」

いや、本命は1人なんですけど・・・


「では、今一人は遊びかね? それも感心しないぞ?」

「いや、遊びじゃないです。 少なくとも、彼女は大切な女性だし」

翠華の事ね。


「愛する女性と、大切な女性。 君の中での区別がどうなっているのか、私には与り知らぬ事だが。
せめて誠実である事は、忘れない方が良かろうな。 人は情実の前では、時としてあらゆる事を無視させるものだ」

何か、経験談っぽい気もするけど。

「・・・ご忠告、痛み入ります・・・」


大尉は苦笑して、コーヒーを一気に飲み干した後、席を立ちあがった。

「私はブリーフィング前の確認をしてくるが・・・ 周防、先ほどの戦況説明な。
あれは・・・ わざとだな?」

「・・・判りましたか」

「私の戦歴を、君達少尉連中と同じに考えるな」

大尉はそう言って歩き去る。
ふと、出口で足を止めて振り返り、俺に声をかける。

「その気遣い。 誠に有難いぞ」




見えなくなった大尉の姿を思い出し、コーヒーを飲みながら頭の中で反芻する。

(・・・気遣い、か)

本当は、これ以上本当の事を言ってしまうと。 あの4人は戦う前に戦意喪失してしまうと考えたのだ。 俺も、圭介も、久賀も。
あの時俺達は、意識的に光線級の事に触れなかった。
もし連中が大挙して出現すれば。 例え重装甲を誇る戦艦群であっても、その主砲射程内まで海岸線に近づけば、確実にレーザー照射を受ける。
戦場が内陸に進めば進むほど。

そうなっては、支援砲撃もままならなくなるだろう。 こっちにとっては非常に苦しい。
支援砲撃が薄い状況での、大規模BETA群への突撃がどれ程厳しいか。
この1月の戦いで身に染みている。 光線級が出てきた時の悲惨さは、忘れない。 それで俺達は美濃を。 同期の美濃 楓を喪った。


でもそんな事。 少なくとも今言うべきじゃ無いだろう。
少なくともそう考えた。 俺達は。 いずれ地獄は嫌でも直面する。
その時のフォローをこそ、すべきなのだ。 今、要らぬ不安を与えるべきじゃない。

見れば、1935 あと25分でブリーフィングだ。


(そろそろ行くか・・・)

色々あって、何ともすっきりしない気分で、俺はPXを出た。








≪2005 国連軍大連第3駐屯基地 第882独立戦術機甲中隊ブリーフィングルーム≫


いきなり、アルトマイエル大尉が口火を切った。 凶報だ。

「天津南部の、中国軍第363軍団が壊滅した。 30分前だ。 これで今夜中には、天津市街はBETAの餌場となった。
市民の推定被害者数は約27万人。 脱出できなかったのだ。 余りに展開が急速に過ぎた」

防衛線の崩壊と、大量の市民がBETAに喰い殺された。
大尉の状況説明が続く。

「この事態を受け、満洲方面軍南部戦線司令部は、華北方面軍残存戦力を一斉に南満州へ退避させた。
これにより、思った以上に戦力が上乗せされた。 戦術機甲4個師団、機甲4個師団。 他に砲撃任務部隊が8個旅団、機械化歩兵装甲師団5個
・・・まぁ、殆ど戦わず、市民を見捨てて退却したのだ。 傷は少ない」


苦々しげな声で大尉が話を切る。
欧州でも散々報告された状況だ。 大尉もかつて似たような経験をしたのだろう。
横に立つオベール中尉も、怒りを抑えるような表情だった。

俺達も同じ気分だった。 天津の27万人だけじゃない。
中国政府が放棄した旧首都の北京には、未だ500万人近い市民が残留していた筈だ。
防衛線が一気に錦州―――南満州まで東に移った事で、それ以西の都市。 唐山の200万人、承徳の65万人、秦皇島の55万人も。
大きな都市だけで850万人 周辺地域を含めると、1000万人近い市民が、BETAの前に無力なまま、取り残された。 いや、切り捨てられた。


「統合軍総司令部は、何と・・・?」

圭介が絞る様な声で聞く。

「・・・ 『南満州、特に遼東半島と、錦州回廊死守の為には、止むを得ない処置』との仰せだな」

大尉も、この愚行には怒り心頭のようだった。


「各国政府は? 中国政府、韓国政府・・・ 日本政府の反応は?」

俺は戦況もさることながら、今後の各国間の関係も心配だった。
1月に中国が事前通知なしに集中使用した、S-11弾頭弾の件で、日本・韓国政府と、中国政府の間がギクシャクしている。
極東戦域での共闘関係にヒビが入る事は、最終的に俺の祖国にも、非常にマイナスだ。
今回、この決定を直接下したのは、方面軍南部戦線司令部だが。 

「・・・今のところ、現地司令部の決定を追認する方向のようだな」


「政府が、国民を切り捨てるのですか・・・」

ギュゼルが歯ぎしりして、言い捨てる。 彼女もまた、国を失った際には過酷な体験をしてきているのだ。



「兎に角。 今は今後の反攻作戦に全力を注ぐしかない。 1分1秒でも早く作戦が達成されれば。
それだけ多くの市民を救う事が出来る・・・」

大尉自身、自らに言い聞かせるような口調だった。 BETAが防衛線に到達する頃には。
放棄された地域の民間人はほぼ、全滅した後だろう・・・

「我々は、当初の予定を繰り上げ、明日0130、当基地を進発する。 阜新到着予定は明日0330 直ちに警戒態勢に入る。
各人、身の回りの整理はそれまでにしておけ。 以上だ」

「敬礼ッ!」


アルトマイエル大尉と、オベール中尉が退出する。


「・・・クソッ! クニでも、こんな大規模な犠牲を前提の作戦は、無かったぜ!」

ファビオが吐き捨てる。

皆、押し黙ったままだ。 事前想定の、余りの犠牲者数の多さに、頭が麻痺してしまっている。

重苦しい空気だけが、立ち込めていた。








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