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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 北満洲編‐幕間その1
Name: samurai◆b1983cf3 ID:e178b4cc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/02 03:33
1992年5月27日 1515 中華人民共和国 黒竜江省 依安西方80km 嫩(ネン)江



「レッド03よりCP。W-44-81エリア。残存BETAは確認されず。繰り返す。残存BETAは確認されず。」

≪CPよりレッド03、了解。レッド-Bは引き続きW-44-83エリアまでの哨戒を継続せよ。≫

「レッド03、了解。」

それにしても、酷い有様だ。 俺、帝国陸軍衛士少尉・周防直衛は網膜スクリーンに映る光景を見て、顔をしかめた。
なにしろ・・・

『糞BETAの死骸だらけだな。所々、友軍の残骸もあるが・・・』

レッド04、長門圭介少尉が、同じ印象を受けたのか、そう呟く。

何しろ、付近の荒野、一面BETAの死骸だらけだった。
既に腐敗が始まっており、強烈な悪臭を放ち始めている。

恐らく、後一週間もすれば急速に崩れ、乾燥化が始まるだろうが。
それまでは、まともに息も出来ない程の悪臭なのだ。

18日から始まり、つい5日前に収束した北満洲での、BETAの大規模襲撃の痕だった。

この一連の戦いで、俺たちの所属師団はほぼ壊滅。
中核戦力の戦術機部隊は、戦闘前には3個連隊・324機の定数を充足していたのが、戦闘終結時、残存24機。
実に300機からが失われてしまった。

それだけでなく、基地施設もほぼ全壊。 現在は野営状態だった。

(一番の問題は、それじゃないけどな・・・)

そう思った瞬間、機体ステータスチェックが働き、イエローアラームが点滅する。
今度は、右脚部の膝関節か・・・

「レッド03より、04。右膝が笑い始めた。 RUNはちょい、きつい。 
NOE(匍匐飛行)で行きたいけど。」

僚機の圭介に確認する。

『04より03。構わないけど、俺の機体は、推進剤残量は30%を切った。
帰りの分も考えたら、巡航で20分以上はきついぞ?』

「ああ、俺の機体も同じ様なもんだ。とりあえず、W-44-82まで行こう。10分程度だ。
そこからなら、残りはRUNでも問題無いだろう。」

『了解。リード。』

俺と圭介、2機の「撃震」が跳躍ユニットの出力を定格まで上げて、巡航速度でのNOEを開始する。

今のところ、どの哨戒区域からもBETA発見の報告はない。 NOEでも大丈夫だ、と踏んだ。

『にしても、吹けが悪い。何か咳き込んでる感じだよ。』

「仕方ない。何しろ8日間、まともな整備無しで酷使しているしなぁ・・・ そろそろ、こいつもダメかもな。」

『はぁ・・・ となると、またもや<共食い>か・・・』

そうなのだ。
今現在、俺たち衛士を悩ます一番の問題は、満足な食事がない(毎食C-レーションは飽きた)事や、
寝床も無い(歩兵用の野営テントで寝ている)事ではない。(それも、問題だが)

戦術機の整備が出来ないことだ。

糞BETAは、基地機能をしっかり、すっかりぶち壊し、喰い尽してくれた。
お陰でオーバーホールどころか、簡易整備すらままならない。

野戦整備車両が、後方から出張って来てくれているが、それでも限界がある。
予備パーツも無い。

結果はどうなるかと言うと。

臨終を迎えた機体・気息延々の機体から、使えるパーツを根こそぎ剥ぎ取り、まだ稼働している機体の予備パーツにする。

所謂、「共食い<カニバリズム>整備」を行っている状態だ。
実に、敗戦部隊の末期症状と同じなのである。

『ちくしょ、やっぱり出力系がそろそろダメかな。どうしても、吹き上げが足りない。推進剤の燃費が悪くなっている。』

圭介の機体は、主機の出力系か・・・

「俺のは、駆動系だ。そのうち、機体がフリーズしそうで怖いよ。」

『お前のは、伊達の機体との<ニコイチ>だっけ? 俺のは三瀬少尉の機体とだけど。』

「あぁ。愛姫は結構、機体をぶん回すから。使えるパーツっても、結構疲労が蓄積されていたのかな。」

因みに、<ニコイチ>とは、2機の機体のパーツを寄せ集めて、1機をでっち上げる事だ。

現時点で、機体を「取り上げられた」旧・臨編第33-C,D小隊の衛士は、木伏一平少尉、
源雅人少尉、三瀬麻衣子少尉、伊達愛姫少尉の4名。

そこで、臨時の臨時小隊を、01・水嶋美弥少尉を小隊長に、02・綾森祥子少尉、
03・周防直衛少尉、04・長門圭介少尉で編成。

現在、第3機甲軍団司令本部直属の偵察・哨戒小隊となっている。

今は午後の2直目。後40分少々の哨戒任務に、俺と圭介のエレメントが就いている。



NOE開始から5分。 お互い機体の調子の悪さにヤキモキしているところに、CPから回線通信が入る。

≪CPよりレッド-B。現在地を知らせ。≫

「レッド03よりCP。レッド-B現在地、W-44-82東方10km。巡航NOEで西進中。」
現在地・進路を連絡する。

≪CP了解。レッド-Bは通常哨戒任務を解除。指定ポイントまで進出し、当該区駐留の友軍部隊の指揮下に入れ。 
指定ポイントは、W-45-90。 友軍部隊は<フェンリル> 指揮官コードは<フェンリル01> 以上。≫

「・・・レッド03よりCP。 了解・・・ でも、内容くらい教えて下さいよ、三瀬少尉。」

臨時にCP将校代理をしている、三瀬麻衣子少尉に、些か恨みがましい口調で問いかける。
何せ、本当に機体のステータスは余裕が無いのだ。
これ以上、厄介事は勘弁して欲しい。

≪CPよりレッド03。周防少尉。 民間人の保護と、安全区までの避難護衛よ。≫

「民間人っ!?何で、そんな場所にっ!?」

『指定ポイントは、BETAとの最前線付近ですよ? そんな所に、集落なんかないでしょうに・・・』

圭介も、俺とおなじ疑問を口にする。 
当然だ。 誰が好き好んで、あんな化け物と隣り合わせの土地に住むものか。

≪・・・こっちも知らないわよ。兎に角、司令本部からの正式命令よ。 四の五の言わず、さっさと行きなさい?≫

むっ・・・ 機体を取り上げられたから、少々不機嫌そうだ。 触らぬ神に祟りなし。

「レッド03、了解・・・ はぁ、04、圭介。お仕事、お仕事・・・」

『勤労少年は、大変だぜ・・・』

≪帰ってきたら、王炊事班長が、取っておきの肉団子スープ、作ってくれるって。≫

げっ!あの、野鼠の肉団子!?

「03よりCP。 C-レーションで結構ですっ!!」
『04よりCP。 同じくっ!!』

≪?・・・ 美味しいのに・・・≫

あんた、味覚は本当に日本人かっ!?
俺と圭介は、同時に心の中で突っ込んだのだった・・・




1992年5月27日 1535 W-45-90エリア近郊 


『04より03。あれじゃないのか?』
圭介より通信が入る。

俺は戦域MAPを確認。事前に連絡されていた<フェンリル>の部隊構成と、MAPのフレンドリー・コードを見比べる。

「・・・戦術機が6機。 4機が中国軍の殱撃8型(J-8F・フィンバックB)、2機が韓国軍のF-5EタイガーⅡ。
機械化歩兵部隊が、中国軍の88式歩兵戦闘車1両、80式装甲兵員輸送車が3両の1個小隊。 輸送用の半装軌車が10両・・・
間違いないな。 <フェンリル>だ。」

俺と圭介の「撃震」は、<フェンリル>とのランデブーコースに機体を乗せる。

「こちら、日本帝国軍第3機甲軍団・偵察哨戒小隊・Bエレメント<レッド-B> リードのレッド03です。
<フェンリル>リーダー、応答されたし。」

・・・・・

「? こちら、レッド-B。 <フェンリル>、応答 『こちら、フェンリル01』・・・」

ようやく、返事しやがった・・・ しかも、音声のみ・・・

『フェンリル01より、レッド03。貴エレメントを確認した。 IFFが些か不調でな。申し訳ない。』

IFF不調!? 勘弁しろよ・・・

『レッド-B。済まないが、北西2kmの地点に小規模なオアシスが有る。 
そこまで移動してくれ。 部隊は一旦、そこに集結する。』

「レッド03より、フェンリル01。了解。 集結ポイントまで移動します。」


『何か、先が思いやられそうな予感・・・』
「言うなよ・・・」

圭介のこの手の「予感」は、往々にして的中する。 俺は些か以上に暗澹たる気持ちになってしまった。




1992年5月27日 2010  W-45-90エリア近郊のオアシス


<フェンリル>が、ここに移動したのは理由があった。
「避難民」が、この場所に居座っているからだった。

「厄介事に巻き込んでしまって、申し訳ないな。少尉。」

フェンリル01。中国陸軍の衛士、周蘇紅(チュウ・スゥホン)上尉(上級中尉)が振り返りつつ、苦笑する。

「いえ。民間人保護任務です。厄介事などと・・・」

「ふむ? ・・・・ふむ。 なかなか殊勝な心がけだな? サムライの心がけ、というやつか?」

ずいっ、と、俺の顔を覗き込むように、顔を近づける周上尉。 

うっ、近すぎるって。 
上尉の翡翠のような瞳が、面白そうに光っている。
小柄な人なので(160cm無いだろう。155cm位か)、背伸びして見上げるように俺を見る。

あ、む、胸が当たってますって!上尉! 

小柄なくせに、出るとこは出て、引っ込む所は引っ込んでいるプロポーションだ。
あまり、そう、ひっつかないでくれっ・・・!!

「いっ、いえっ。帝国軍人としての心構えでありますっ!」

実際、帝国軍では入隊当初から「醜の御盾」たる事を、事あるごとに叩き込まれる。
それは、「すべての民」にとっての「盾」でもある。 そこに民族・人種は関係ない。
俺はそう解釈している。


「・・・ま、いい。兎に角、我々<フェンリル>の任務は、このオアシスにいる『避難民』を、後方の安全区まで護送する事だ。
今のところ、付近にBETAは確認されていないが、気は抜けない。
最も、大型種が出てくる『門』は、最低でもここから300kmは北だからな。それは心配無いが。
気をつけるのは『はぐれ』の小型種だ。
戦闘終了後5日経過した。地上に出てきた連中は、大抵はエネルギー切れだと思うが、完全に大丈夫とは言えん。
まぁ、戦術機2個小隊が有れば、大抵は対処可能か・・・」

「はっ。小官もそう考えます。」

「ん・・・ あ、それとな、少尉。」

「はっ。」

「私の隊では、余程でない限り、堅苦しい事は抜きにしている。 
君と、04の衛士も、そのつもりでいてくれ。」

へぇ? 以外だ。 
中国軍って、結構そう言う所は、四角四面だと思っていたんだが。

「以外か?」

人の悪そうな笑みを浮かべて、周上尉が言った。

「い、いえっ! そのような事はっ・・・」

「ふふ・・・ 」

焦るなぁ・・・

と、周上尉は次の瞬間、苦笑とも、自嘲とも、何とも言えない笑みを浮かべて呟いた。

「教条主義者の政治将校が、いないのだ。
せめて、こんな時くらいは、人間味を出しても悪くはなかろう・・・ 」







1992年5月27日 2205  W-45-90エリア近郊のオアシス


「つまりね。避難民って言っているけど、彼等は遊牧民なのよ。」

ブルーバード01・韓国陸軍衛士の、朴貞姫(パク・ジョンヒ)少尉が羊肉の串焼きを頬張りながら言った。
まだ幼さの残る顔立ちの女性衛士だが、19歳。俺や圭介より1年先任である。

「貞姫、はしたないわよ?」

ブルーバード02・やはり韓国陸軍衛士の李珠蘭(リ・ジュラン)少尉が窘める。
こちらは、落ち着いた、お姫様然とした女性衛士だ。
朴少尉とは、同期らしい。

因みに最初、「『イ』少尉」、と言ったら、『イ、じゃなくて、リ、よ。』と訂正された。
何でも、「イ」は南部の発音。「リ」が北部だそうだ。 

で、李少尉は北部のピョンヤンの出身だそうで。
因みに朴少尉は、南部の光州だそうだ。

「遊牧民ですか? 
でも、この辺りは漢族や、ツングース系が住民ですよね? 満州族とか。
漢族は農耕民だし、ツングース系は半分狩猟、半分農耕でしょう? 
遊牧民はいないのでは?」

何気に、歴史・民族誌に詳しい圭介が疑問を挟む。

ふぅ~ん? 遊牧民って、ここらにはいなかったのか?
なら、なんでこんな所に居座っているんだ?


「それは、さ・・・」

ちょっと、言いにくそうに朴少尉が、中国軍衛士達を見る。

その視線に苦笑しつつ、中国軍衛士がこっちを見ながら話し始めた。

「彼等は元々、中国人じゃないの。」

フェンリル02・中国陸軍の趙美鳳(チョウ・メイホウ)少尉だった。

周上尉とは反対に、長身の女性衛士である。 175cmはあろうか。
些か以上に「お転婆」な印象の上官と反対に、落ち着いた感じの女性だ。 
20歳だと言う。

「・・・中国人じゃない?」

どういう事だ?

「彼等はモンゴル族なの。」

「・・・・モンゴル・・・ あっ、ウランバートル・ハイブ・・・」

そうだ。彼らの故郷は既にBETAの勢力圏だった・・・

「ええ、そう。 
故郷を追われて、東へ東へ。そうやって『避難』してきた人たちよ。」

確か、モンゴル政府は国ごと消滅した。
彼等は完全な「流亡の民」か・・・

「成程ね・・・ 故郷には帰れない。
でも、今更『石の家』には、住めない、って事ですか・・・」

圭介曰く、遊牧民は都市定住を「石の家に住む」と言うらしい。

「気持は、解らないではないのだけれど・・・」

うつむき加減に、フェンリル03・中国軍衛士の朱文怜(チュ・ウェンリン)少尉が呟く。
彼女の故郷は、四川省の「重慶」だった。 
今は、ハイブになっている・・・

「でも。それでもやっぱり、安全区へ行くべきよ。
ここに止まっていたら、いつか必ずBETAに喰い殺されるものっ」

そう言うのは、フェンリル04・中国軍衛士の蒋翠華(ジャン・チュイファ)少尉。
彼女も四川省。成都の出身。 家族は今、福建省に避難していると言う。


上海出身の周上尉や、杭州出身の趙少尉と違い、朱少尉と蒋少尉は故郷から逃げ出す時に、親族を幾人か失っていると言う。

「幼馴染や、学校の友達も、半分以上が助からなかったわ・・・」

ぽつり、と蒋少尉が呟く。

朱少尉がその言葉を受けて、呻くように続ける。

「だから、助かる人が、助けられる人が、死んでいくのは、もの凄く、悔しい、悲しい・・・
私も、小翠(シャオチュイ、「翠華」の愛称)も、もうそんな光景、見たくないのよ・・・」


朱少尉と蒋少尉は、俺達と同い年の18歳。
今よりずっと以前の、まだほんの子供の頃に、そんな強烈な体験をしたのか・・・

未だ本土にBETAの襲撃を受けていない、日本人の俺と圭介は、なんとなくかける言葉を失って、無言で羊肉を食い続けた。


「何だ、お前達? 辛気臭い顔をして。 
美鳳、文怜、翠華。 最早我が軍では、希少価値モノの男性衛士が目の前にいるんだぞ?
そんな辛気臭い顔していちゃ、セックスアピールもくそも、ないだろうが?」

あっはっはっ

豪快に笑って、周上尉が輪に加わる。

「ぐっ!」 
「ぐほっ!」

俺と圭介が、思わずむせる。
いったい何を言い出すんだ、この人は・・・

「「「上尉!」」」

3人が顔を赤らめ、叫ぶ。

「どうだ? 周防少尉、長門少尉。 
ウチの隊はこれでも結構、綺麗どころ揃いだと踏んでいるんだが?
何、中日友好の懸け橋だ。3人の中で気に入ったのがいれば、今晩、私は何も見なかった事にするぞ?
この際、国際結婚もいいぞ?」

「上尉、お戯れが過ぎますよっ そんな急に、趙少尉や、朱少尉、蒋少尉に失礼でしょうっ」

何故かうつむき加減の中国女性陣3人を横目で見ながら、俺は思わず強い口調で言ってしまった。
・・・流石に、他国軍とは言え、暫定的に上官に対してまずいか?とも思ったが・・・

「何だ?ウチの娘達では不満か? 
ん? じゃ、朴少尉のようなタイプが好みか? 
李少尉は、ウチの文怜と似たようなタイプだからな・・・」

「「んなっ!?」」

思わず、朴少尉とハモってしまった。
で、二人思わず、顔を見合せ、お互い赤面する・・・


「直衛の好みか・・・
この中じゃ、趙少尉成分と、朱少尉・李少尉成分を足して、割って。プラスアルファ、だな・・・」

おい、そこの。 
下手な事、ぬかすんじゃねぇ!!


「ほほう? 3人も相手にするか・・・ ふむ。豪気、豪気。」

カラカラ、と呵々大笑する周上尉。

「なっ!? ちっ、違いますってっ!!! ・・・・?」

えーと?
趙少尉? 何ですか? その俯き加減の、恨めしそうな表情?
朱少尉? 横目で、ジト眼で見ないでくれ。
李少尉? あの、視線がとっても冷たいです。 ツンドラ気候の如く・・・


「あ、でも。 朴少尉や蒋少尉も有りか?
二人とも、伊達とキャラ被るところがあるしなぁ・・・」

圭介、手前ぇ・・・ も、誰か・・・ 止めてくれ、この馬鹿・・・ 
って、何、愛姫を引き合いに出してるんだよっ! んなんじゃねぇよっ!!


「・・・今度は、否定しないんですね・・・」

ぽつりと呟く、クールビューティ・趙少尉。
はいっ!?

「私は、小翠みたいに、明るくないし、可愛いくないし・・・」

いえいえ。 十分お淑やかな美人さんですよ? 朱少尉。

「高慢とか、アイスドールとか・・・ 私だって、好きで言われている訳じゃありません・・・」

李少尉!? な、泣き出しちゃったよっ!? この人・・・

「「・・・・っぽ・・」」

おーい? 朴少尉? 蒋少尉?


・・・・って、えっ? 皆の椀に入っている、液体は・・・

ぐいっ。 一口飲む。
ぐえっ! 何だっ? この強烈な酒はっ?

「白酒だ、な・・・」
「圭介?」
「中国の蒸留酒。別名『白乾児(バイカール)。 因みに、アルコール度数50度以上。』
「げっ!」

「皆、酔っ払いかよ・・・」




その後、延々と艶っぽい酔態で、愚痴り始めた超少尉、朱少尉、李少尉につかまり。

ぽーっと、顔を赤らめた、朴少尉と蒋少尉の視線に耐えつつ。

俺はある女(ひと)の姿を脳裏に描いていた。
もっとも、その姿は何故か眉間に少し皺をよせて、不機嫌そうだった・・・



隣では、圭介が周上尉と馬鹿話に興じている。

こいつの要領の良さに、ほとほと感心しつつ。
俺が解放されたのは、日付が変わり、皆が沈没した頃だった。


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