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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 北満洲編13話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/25 22:53
1993年1月15日 1315 北満洲最終防衛線 チチハル北西10km 独立混成第119旅団 野戦陣地


「ふん。 それでお前はこの頃、大人しかったんかいな。」

木伏中尉が、ウィスキーのフラスコを、ちびちび飲りながら面白くなさそうに言う。
「クリスマス・イブ」の大侵攻から、半月以上が経った。
戦線は、あの哨戒に出た夜の、BETAの地中侵攻・側面奇襲の発見が功を奏して、何とか持ち堪えている。
・・・今日も、朝から実戦出撃2回を終えた所だった。

陣地に帰投した俺は木伏中尉に捕まり、四方山話から釣られて、最近の「大人しい」原因を吐かされた、と言う訳だ。

「で? その、時田やったか? やられた第4大隊の奴。 そいつの戦死した原因が、自分に有るんや無いか、ってか?」

「・・・そこまで、自惚れちゃいません、今は。 
あの時の小隊は、4人とも新任のペーペー揃い。 指揮官は、小隊指揮が初めての俺。
確かに、状況認識の甘さが有りました。 もっと、確実な観測ポイントを探すべきでしたよ・・・
ですが、あの時の状況は、俺にとっての限界でした。 経験も、実力も。そして、他の3人も。」

「・・・それで?」

「時田が戦死する事になった、作戦結果に対する指揮官責任は、確かに俺に有ります。 その事からまで、逃げる気は有りません。
ですが、奴が『戦死』した事は、奴の腕も含めて、奴自身の行動結果です。 冷たい言い方をすると。
指揮官だからって、そこまで全て自身が原因だなんて、そこまで俺がどうこう出来たなんて、自惚れちゃいません。
俺に出来る事は、自分の指揮に対する責任の自覚だけです。」

「ふん・・・ 一端な事、ぬかしおって・・・」

「中尉?」

木伏中尉は暫くの間、不機嫌そうに顔をしかめながら、酒に口を付けていたが。
不意に俺に振りかえって、言った。

「そうや。 そいつが死んだ原因は、惨い言い方やけど、そいつ自身の腕の無さや。 極論すればな。
そんな事まで全て、指揮官が『全て自分が原因』やなんて、やってられんわ。

ええか? お前が言うた通り、お前が忘れたらあかんのは、『自分の指揮に対する責任』や。
部隊の任務遂行と、部下を生還さす事。 この二つを両立さす為の、判断責任や。
その結果。 任務の達成・不達成と、部下の生還・未帰還っちゅう、結果責任や。

その途中の、個々の行動責任は、個々人の責任で、その結果は個々人が原因や。
指揮官は、『判断』と『結果』に責任を持つ。 部下個人は、当人の『行動』に責任を持つ。
感情抜きの、冷たい言い方やけどな。」

「・・・・・」

「そやから。 そこまで解っときながら、お前がウジウジ悩んどる様が。 ワシから見たら、『何様やねん、オドレは』 っちゅう事や。」

「ははっ・・・ きっついすね・・・」

「当たり前や。 ここは最前線中の最前線や。 訓練校みたいに、手とり足とり、上げ膳据え膳で甘やかしてくれる、思うとるんか?」

「・・・いや。 済みません。 確かに、甘えていました。 
心のどこかで、事実と現実に、眼を背けたい、逃れたい、って気持ち、有りましたよ・・・」

「で? どうするんや?」

「結果は結果です。 あの時、そう判断したのは俺で、その結果は俺のものです。
そこから目を背けることは、しません。 気持ちで逃れる事も・・・」

「ふん。 ようやっと、そこまで言いよったか。 
そんなら、ここ暫く、隊の連中やきもきさせた罰や。 装備担いで、ランウェイ10周してこんかいっ!!」

「了解っ!」







≪23中隊 詰所 木伏一平≫

(ふん。 一丁前な事、ぬかす様になりよったな。)

ワシはフル装備で、ワンウェイを走っとる部下を見とった。
去年の4月に来よった頃は、何や右も左も判らんで、自信無さ気な奴やったけど。
ここ暫く続いた大喧嘩で、ちょっとはマシな衛士の顔になりよったわ・・・

「木伏。 ご苦労さんねぇ~。」

丁度、詰所におった水嶋が、いちびった口調で、ぬかしよる。

「ふん。 何時までも腑抜けられたら、迷惑やからのぉ。」

「な~んて言っちゃって。 何だかんだで、結構、可愛がってるじゃない? 周防の事。」

「アホ言いなや。 可愛がっとるんは、綾森やろうが。 お前も何だかんだで、えろう面倒見とるんと違ゃうんか。」

「祥子の『あれ』は、紛れも無く『恋心』 私のは『からかい』 
もしかしてアンタ、照れてるっ!? うひゃあ~~!!」

「ど、ド阿呆っ! 何ぬかしよる!」

ホンマ、このアマは・・・

ふん。まぁ、何や。 あいつは上手くいけば、化ける。 ワシはそう思っとる。
今は、長門みたいに余裕もあらへんし、伊達みたいに肩の力も抜けきってへん。
そやけど、現実を直視でけて。 それに向かう度胸が付いたら。

「・・・ま、楽しみなんやけど、な・・・」

「えっ? 何?」

「何でもあらへん。 ほな、当直将校、頼むで。」

「了~~解」


それまでは、しゃーない。 ちょっとは面倒見たろかいな。







≪仮設PX 伊達愛姫≫


外を見ると、直衛がフル装備でランウェイを走っていた。 あの馬鹿、何しでかしたのよ?
さっき、木伏中尉に捕まっていたけど。 何やら、中尉にしては珍しく、シリアスな顔していたっけ。

いつもあんな表情してたら、中尉も 『満洲のお笑い芸人』 なんて、言われなくって済むのにねぇ?
あれで素は、かなりのハンサムなんだし(みんな、知らなかったでしょ?)
女の子にも、モテると思うどなぁ。


「・・・・で? 伊達少尉。 私を誘った理由、聞かせて貰えないの?」

おっと。 永野少尉が不機嫌そうに。 忘れてたわ・・・
私は改めて永野少尉に向き合った席に着く。 手元にはコーヒーモドキ。 しょうがないじゃん? これしか無いんだしさぁ。
で、単刀直入に切り出す。

「聞くけど。 ウチの周防の事、まだ恨んでる?」

「何を言っているの・・・」

「死んだ時田中尉って、貴女とは同じ訓練校よね。 で、『そう言った仲』だったって、42中隊の人から。」

「・・・・そうよ。 悪い?」

「全~然? こんな場所だし。 お互いに支えあえる相手がいるのは、悪い事じゃないでしょ?
あの時、貴女が思わず単機突入しかけた行動は、理解出来なくもないわよ。」

コーヒーを一口すする。(面倒だから、コーヒーったらコーヒーなのっ!) ・・・不味いわ・・・
で、永野少尉を見ると・・・ うわぁ、コワい・・・ 般若よ、般若。

「貴女に、私の気持ちの、何が解るのよ・・・ 貴女に、何が解るのよっ!」

うわっ、一気に注目の的。 周りの視線が、痛いよ・・・

「落ち着きなさいって。 私、『行動は理解出来なくもない』って言ったよ?
アンタの気持なんて、解る訳無いじゃん。 本人じゃ無いのに。
私の中隊にも、以前にアンタと同じ行動、やった人がいるのよね。 ま、その人の場合は、恋人じゃ無くって、親友だったんだけど。」

祥子さぁ~ん。 ネタにして、ごめんなさぁ~~い!


「その人、ものの見事に、BETAの中に孤立しかけちゃってさ。
みんなが『戻れ』って言っているの、耳に入って無かったよ。
あ、その人の親友――私の1期先任の人だけど―――も、その人に『来るなっ!』って、最後まで言っていたわ。」

永野少尉が目を逸らす。 解るよね? 私の言いたい事。

「そんなものかもね。 
心の繋がりの強い者同士だからこそ、相手を危険に晒したくない。 自分の命が、消えようとしている時でさえ。
身の危険を冒しても、相手を助けたい。 心の繋がりの強い者同士だからこそ。 自分の命を、危険に晒してでも。
悪い事じゃ無いと思うよ ――――― 『地方人(一般人の軍隊スラング)』だったら、ね?」

「―――っ!!」

「でも。私達は軍人。 衛士だよ。 人類の期待、人類の希望を託された、ね。
残酷な言い方だけど、泣き喚くのも、懺悔も、全て。 終わってから、存分にしようよ。」

「・・・・・」

「因みに、その孤立しちゃった人を救出したのは、BETAの群れに単機突入した、周防よ。」

「えっ・・・・?」

「後で、臨時指揮官の先任少尉・・・ 今の小隊長に、こっ酷く、どやされてたわ。 
当然よね? 1機損失が、2機、最悪3機損失になっていたかもしれない。 指揮官としては、部下のそんな独断専行は、許す訳にいかないもの。 
救出されたその人も、自分の行動が招いた結果に、もの凄く後悔していたわ。 そして、その人のすぐそばに居たのが、周防よ。 

・・・あいつは。 貴女の、あの時の気持ちを。 あの時、一番良く解っていた。 そして、その行動が招く結果の、貴女の気持も。
それに・・・ あの時のあいつは、『指揮官』だったのよ?

あいつの事、非情だなんて、思わないであげて。 
恨むな、とは言わない。 そこまで、貴女の気持に踏み入る権利は無いもの。
でも、少なくとも、あの時のあいつは。 貴女の気持も判った上で、指揮官として行動しなくちゃいけなかった。
その事だけは、解ってあげてよ。」

一気に言い終わった。 ふぅ・・・ らしくないな、私・・・


「・・・まだ、正直言って、気持ちの整理はつかないわ。 でも・・・
貴女の言葉に、嘘は無いって事は、解った・・・」

「ありがと・・・」

「・・・ねぇ? 聞いていい?」

「何?」

「周防少尉って。 貴女の好きな人?」


一瞬で主機に火が入りました。 F110-GE-129・愛姫ちゃんカスタム、フルブーストです!

「―――ばっ! 馬鹿言わないでよっ! 誰があんなっ!」

「そう? さっきから、凄く真剣で、愛おしそうで、寂しそうな顔していたわよ? 貴女って。」

な、何をおっしゃってるんですか? この人は!?

「私とあいつは! 訓練校修了して、新任配属されて以来の、同期同士なの! 
そりゃ、9か月も同じ部隊で、こんな所で一緒に戦ってたら。
ちょっと位は面倒見てやろうか、って気にはなるわよっ!」

そうよ! そうなのよ! そうに決まっているの!

「ふぅ~~ん? ま、いいでしょ・・・
でも、さっきの言葉だと。 貴女と周防少尉って、去年の4月にこっちに配属になったの?」

「そうよ?」

「・・・凄いのね。 確か、同期で訓練校修了して、直ぐにこっちに配属になった人達って。 今、殆ど生き残っていないじゃない。
確か、配属後半年で、戦死率が70%を越えていたでしょう?」

「あ~~・・・ そう言えば、そうね。 ま、その殆どが、去年の5月に死んじゃったんだけどね・・・」

「確か、『5月の狂乱』よね。 その頃私は、訓練校修了後で、本土の練成部隊に居たけど。 正直、怖くなったわ。」

「ん? って事は。 貴女も同期?」

・・・あれ? なんだかびっくりしたような、呆れたような・・・

「貴女ね・・・ そんな事も確認せずに、今まで話していた訳? もし、私が先任だったら、どうするつもりだったの?」

「ははは・・・ ど、どうしてたんだろうね・・・?」

「はぁ・・・ ま、良いわよ。 改めてだけど。 熊谷訓練校、第18期・前期生出身。永野容子よ。」

「うん。 仙台第1訓練校、第18期・前期生出身。 伊達愛姫。 宜しくね。」

「同じ旅団だしね。 私の中隊には他に、同期が一人居るわ。 後で紹介する。」

「ん。 私のトコは、賑やかだよ。 同期が私含めて5人も居るから。」

「5人も!? 中隊の中核じゃないの・・・ 凄いわね。」

「あ、そうだ。 良いこと思いついた。聞いてよ・・・」


うん。 衛士が死んだ仲間を、いつまでも引きずってちゃね。 
忘れちゃいけない。 その生き様、死に様は、誇らしく語らないと。
でも、引きずって、結局死んじゃったら。 先に逝った先達に、お仕置きされちゃうよ。






≪旅団司令部 作戦会議≫


会議室代わりの大型テントには、旅団長以下、司令部幕僚。 そして各部隊の大隊長クラスが参集していた。

雰囲気が重い。
致し方なかった。 ここ数カ月の戦況推移、部隊の状況、等々を鑑みれば、明るい要素の欠片も見当たらない。

「・・・以上、H18、H19の両ハイブのBETA個体数は依然、増加傾向にあります。
その事から近日中の再侵攻も、予想される状況であります。」

G2(情報参謀)から、聞きたくも無い情報を伝えられる。 
が、彼等指揮官クラスともなると、気分は兎も角、情報は何よりも重要性を増す。
そんな事は、骨の髄まで叩き込まれている連中である。 皆、真剣な表情でその情報を頭の中で整理・検討していた。

G2の次に報告を始めたのは、G4(補給・兵站参謀)であった。

「現在、旅団の各種物資備蓄状況は、以下の通りとなります。
・食糧、医薬品。 108%
・各種燃料。 73%
・弾薬。 69%
・戦術機関連機材  71%
・戦闘車両関連機材  69%
・各種工作機材  72%

当分、籠っていくには何とか凌げますが、大規模侵攻を後2,3回続けられると、消耗が補給を大幅に上回ります。
特に戦闘用各種物資・機材において、顕著な傾向となっております。」

こちらもこちらで、うすら寒い状況だった。
特に、弾薬や戦術機、戦車といった、戦闘部隊関連の兵站が、ギリギリのラインにまで落ち込んでいる。
確かに、これで後2、3回も大規模戦闘が発生すれば――――旅団の戦力は、枯渇する。


「確認したい。」

戦術機甲第5大隊長の、柴田少佐が挙手する。

「どうぞ。5大隊長。」

「今、G4の報告された内容は、理解した。 
では、兵站線、及び兵站計画全般は、どのような状況なのだろうか。
我々としても、無い物強請りをする訳ではないが、やはり万全な状況と、補給もままならない状況とでは、全く戦い方も異なってくる。」

柴田少佐の問いに、他に何人かの部隊長が同意する。


「当初の兵站計画自体は、方面軍の兵站量確保を、確実にできるものでは有りますが・・・
現在は、計画のそこかしこに、齟齬が生じている状況です。」

「と、言うと?」

「原因は、統合兵站計画の大幅な見直しに有ります。
現在、極東・アジア全域に於いて、最優先兵站地域は、東南アジア戦域。 次に華南、華中戦域。
華北・満洲戦域は、優先順位に於いて、最後となっております。」

唸り声が上がる。

「更には、華北と満洲での、分配の取り合い、これも拍車をかけている。
華北戦域は承知の通り、北京をはじめとする、中国の政治の中心地域を含みます。
更には、その「裏庭」となる山東半島や、渤海湾沿岸地域の防衛力強化もまた、中国中央政府が重視している。
何しろ、H18からモンゴル高原、大興安嶺南端を経て、直接の脅威を首都が受けている。
自然、満洲方面より、華北方面への配分に偏ります。」

「・・・・満洲方面とて、抜かれれば、首都を直撃される立地条件なのだぞ。」

「更には、朝鮮半島方面よりの兵站総量は、韓国政府が昨年末に策定した本土防衛要綱により、満州派遣部隊への兵站よりまず、本土防衛を重視する内容となっております。」

沈黙が降りる。

「・・・・帝国も、国防省よりの決定事項として、まずは北九州・西日本の日本海側の防衛力強化を優先する、と。」

「つまりっ! 大陸派遣軍は、満洲で戦力的餓死をせよと! こう言っておるのか!? 二条通り(国防省所在地)の馬鹿共はっ!」

「弾薬も無い! 戦力も無い! そんな状況で、『本土の盾』とも言うべき、大陸防衛を完遂できると思っているのか! 京都の糞ったれ共は!!」

各所から、怒号と罵倒が飛び交う。

まるで、自分の決定事項を罵倒されている気分になったG4は、心の中で、俺だって、京都の連中に、罵声の一つも浴びせてやりたいんだ。
そう愚痴りつつ、報告を続けた。

「以上、これまでの内容と、前線の兵站量確保の問題とを勘案し、最終的には大連の総予備備蓄物資の放出を決定した。
これにより、一時的に防衛線各部隊への兵站は、必要十分な量を確保できるに至る予定だが、反対に総予備備蓄は、40%を切る事になる。
この総予備備蓄を回復させる為には、 現状の兵站計画では最低でも1.5年の時間が必要となる。」


「つまり。 今度戦線が崩壊したら、一気に大連まで戦場となる。 しかも、それさえも確保が非常に難しい。 
そう言う訳ですな? G4。」

戦術機甲第2大隊長・藤田伊与蔵少佐が、静かに尋ねた。
「旅団最精鋭部隊」「派遣軍の火消し役」と言われる、第2大隊を率いる部隊長であるが、藤田少佐は実に物静かな、そして朴訥で誠実な人柄の指揮官だった。

「は・・・ それは・・・」

「G4?」

いきり立つでなく、居丈高でもなく。 真剣に、真摯に問いかけてくる藤田少佐には、流石に曖昧な返答は出来ない。
彼は部下の信頼だけでなく、上官や同僚の信用も厚い人格者である。

「・・・最悪、そう言う結果も、想定しなければならないでしょう。」

ちくしょう。 俺だって、こんな報告なんてしたくは無いんだ。
G4は心の中で毒づきながらも、渋々認めた。


その時、それまで黙って参謀の報告を聞き入っていた、旅団長・松平孝俊准将が口を開いた。

「諸君。 統合的な兵站計画の責は、G4にある訳では無い・・・ その辺で勘弁してやれ。
ついては、現在の重要課題である、兵站に関係する作戦行動について、G3(作戦参謀)から通達させる。 G3?」

「はっ これより諸官には、派遣軍の現状を何とか立て直すべく、立案された計画を達する・・・」


各部隊長達は、その作戦内容を聞き、驚愕すると共に、己の置かれた状況を再認識して、そろそろ俺達も祀られる番か。 そう覚悟した。










≪戦術機甲第2大隊長室≫


作戦会議から戻った藤田少佐を、大隊詰所に使っているテントで、2人の部下が待っていた。
第2中隊長の黒瀬保彦大尉と、第3中隊長の広江直美大尉。
先に口を開いたのは、黒瀬大尉だった。

「では、大隊長。 本気で方面軍はそんな博打をやらかそう、って言うんですね?」

中隊長としては、若手のグループになる黒瀬大尉は、納得し難い思いを露にして問いかけた。

「うん。 既に決定事項だよ、黒瀬君。 
方面軍は、来る1月18日。 3日後に行動を開始する。
我々は迂回機動戦力の一部として、参加する事になる。」

「しかし。 余りにリスクが大きすぎませんか? 如何に過去のデータを分析し尽くした、とは言え。
奴らの行動は、常に我々の予想を覆して来ました。
ここで、万が一失敗したら。 本当に今度は、遼東半島まで一気に下がる事になってしまいますよ。」

「その危険性も、考慮しての事だよ。」

「しかし・・・」


「黒瀬君」

それまで黙って、二人のやり取りを聞いていた広江大尉が、僚友の言葉を遮る。

「黒瀬君。 最早、方面軍司令部での決定事項だ。 今ここで大隊長に喰ってかかっても、決定は覆らない。
我々の為すべき事は、計画の一部である大隊の行動の中で、如何に任務を完遂し、部下達を生還させるか。
その内容を論じるべきじゃないのか?」

「確かにそうですが、広江さん・・・」

「君も、理解している筈だ。 そうだろう? そうであるべきだ。 君は中隊長なのだよ。
であるならば。 我々の為すべき事は何か? 自ずと決定すると言うものだ。」

「・・・失礼しました。 少々、頭に血が上りすぎたようです。」

「うん。 それでこそ、だ。
では、大隊長。 これよりは作戦概要に従い、大隊行動の細部の詰めに入ると言う事で。 宜しいでしょうか?」

「うん。 確かに、黒瀬君の言う通り、博打的な要素は濃い。 であるからこそ、我々は考え得る状況を想定し、対応を確立させねばならない。
それが、部下達に対する責任と言うものだな? 広江君、黒瀬君。」

「「 はっ 」」







詳細の打ち合わせが終わったのは、2100時を既に過ぎた頃だった。
黒瀬大尉は、中隊詰所に戻り、テントには藤田少佐と、広江大尉の2人が残っていた。

「・・・しかし。 黒瀬君には、ああ言いましたが。 私とて内心は同じですよ、大隊長。」

「君にしては、よく激発しなかったものだと、感心しているよ。」

上官の切り返しに、広江大尉は思わず苦笑する。
確かに、以前ならば真っ先に激発したのは、自分だったろう。


「一応、私の方が先任ですから。 黒瀬君は昇進してまだ半年です。 
良い指揮官ですが、まだまだ ≪冷めた芯≫ で対応するには、彼は若いですから。」

「若い、か。 君とて、世間一般には、まだまだ『若い』のだぞ?」

「世間では、ですよ。 戦術機乗りとしては、もう『姥桜』ですよ。 私は。」

「姥桜とは・・・ まだ27だろう? 君は。」

「もう、ですよ。 戦術機に乗って、7年ですから。」

「そんなになるか。 君と知り合ってから。 そう言えば、あの頃は君も、本城・・・ いや、河惣君か。 
君達はまだ、士官学校を卒業したばかりの、新任少尉だったな。」

「ええ。 お陰様で、仏の顔をした鬼達・・・ 藤田大尉や、河惣大尉に、散々絞られましたよ。」

「はは。 懐かしい。」

「私は、今思い出しても、冷や汗が出ますが?」


懐かしい光景が、脳裏に蘇る。
中隊長になったばかりの頃の、自分と期友の河惣。
2人の中隊に新任として配属になった、二人の新米少尉。

河惣の元には、ハキハキ物を言う、真面目だが表情豊かな女性少尉。
自分の元には、血の気の多い、男勝りの女性少尉。 だが、ふとした時に、女性らしさも垣間見せていた。


「・・・そう言えば。 河惣君の怪我はどうだったのだ?」

「9月に見舞った部下の報告では、疑似生体移植は上手くいったようです。
今頃は、烏丸(兵器行政本部)で、元気にやっているでしょう。」

彼女も決して、平静な内心では有るまい。 
期友と、その部下にして、婚約者を見舞った悲劇については、今でも悔やまれる。


(感傷だな・・・)

藤田少佐はそう断じて、内心から過去を追い払う。 過去の感傷では無く、今の現実を考えるべきなのだ。

「作戦内容に、文句の10や20、言ってやりたいのは、僕も同じだ。 できれば、京都の連中だけでなく、北京やソウルの連中にもね。
だが、そんな贅沢を許される身では無いな、お互いに。
であればこそ。 最後まで、見苦しく足掻く手筈だけは、整えたいのさ。」

「同意しますよ。 では、私はこれから、部下達に説明をしなければなりませんので。 失礼します。」

「ああ。 僕も同じく、だ。」


2人の指揮官は敬礼と答礼を交わし、テントを出た。
これから彼等は、部下達に今まで以上に過酷な地獄を這いずり回れ、と命令せねばならなかったからだ。




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