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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 帝国編 21話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/04 00:59
―――BETA発見の報の1時間30分前。 1998年1月19日 1120 朝鮮半島南部・光陽 韓国陸軍光陽補給基地


「・・・こんな所があったとはな」

「兵器の展覧会場だな、まるで」

巨大な倉庫に入った帝国陸軍・宇賀神勇吾少佐と台湾陸軍・謝英石少佐は居並ぶ兵器の種類に驚きより呆れを感じている様だった。

「ここは陸軍技術廠の兵器評価試験場に付属した管理倉庫です。 我が国が採用を検討していた兵器が、特に戦術機関連の兵器は全てここに保管されています」

案内役の韓国陸軍・李珠蘭大尉が悔しそうな声色で説明する。 
当然だ、本来ならここの兵器と共にBETAに立ち向かい、祖国を護る事が彼女の責務だったのだ。

「種類は有るが数はそれほどないな・・・ 良く選ぶ必要があるか」

「選択肢はそれほど多くはない。 兵器には相性と言うモノも有る、それに戦場の条件も。―――李大尉、本当に無断借用になるがいいな?」

宇賀神少佐の確認に、李大尉が頷く。

「―――持って行って下さい。 ここにおいていても結局最後はBETAの腹の中ですわ、でしたら・・・」

「判った、では精々有効に使わせて貰おう。 謝少佐、統一中華軍の選択は?」







―――BETA発見の報の1時間前。 1998年1月19日 1150 朝鮮半島南部・光陽 帝国軍独立混成戦闘団 第2大隊戦闘団陣地


「一番東が、一番危険度が高いと想定される。 頼むぞ、周防大尉」

別れ際、大隊長―――荒蒔少佐が声をかけてきた。 
それはそうだ、今回は防衛線西部の順天(スンチョン)から細長く海に突き出た半島を突き当り、その先の麗水から脱出する。
そして第2大隊は順天から最も離れた東部戦区を担当し、その中でも俺の指揮中隊は最東端を担当する―――中隊の東に友軍は居ない、居るのはBETAだけなのだから。

「ま、何とかなるでしょう。 何とかしますよ、『何時も通り』に」

「ふん・・・ 持つべきは歴戦の部下か」

「・・・やけに持ち上げますね、大隊長?」

「おけ、周防。 今となっては正直な気持ちだ。 正直言うとな、大隊再編直後にこのような派兵だ。 不安が無かった訳ではない」

―――そうだろうな。 師団移籍、大隊再編、新米達も多い。 大隊長としては本土でもう2、3ヵ月は練成を行ってからにしたかったに違いない。

「先任の綾森大尉は信頼できる。 指揮官としても、補佐役としても。 だが率先して先頭を切って大隊を鼓舞するタイプではない。
美園大尉も戦場で揉まれてきた歴戦だが、戦場での中隊指揮は今回が初めてだ―――だからな、周防・・・」

「昔・・・ もう3年以上前になりますか、国連軍在籍当時にイベリア半島で出会ったスペイン軍のベテラン衛士に、こう言われた事があります」

「・・・何と?」

94年の7月。 イベリア半島、スペイン・アンダルシア。 灼熱の太陽とBETAに喰い荒された荒野、そして舞い上がる砂塵。
あの戦場で彼、レオン・ガルシア・アンディオンは―――『ダンディライオン』は俺にこう言った。

『エース』 そう呼ばれる者達の在り方。 戦果でもない、技量でもない。
どんな時にも真っ直ぐ、敢然と、死にさえ立ち向かうその姿。 その絶対的な存在感。 それ故に仲間は鼓舞され、奮戦する

―――どんな時にも、その姿を顧みる。
―――どんな戦況でも、その姿は屹立する。
―――どんな危地にも、その姿は立ち塞がる。

『エース』 その者は戦果多数でも、技量優秀でもそうは言わぬ。
『エース』 その者は『導く者』なのだ


「・・・一言付け加えておく、決して死に急ぐな。 だが最後は―――貴様を頼るぞ、いいな? 周防」

「―――『何時も通り』です、大隊長」







―――BETA発見の報の30分前。 1998年1月19日 1220 朝鮮半島南部・光陽 帝国軍独立混成戦闘団 第2大隊戦闘団陣地


朴大尉は相変わらずだ、精彩が無い。 これは本気で李大尉に相談するか?
そう思って大隊本部にいる筈の李大尉を探そうとしていたら祥子と会った。

「直衛、本部に用事?」

「あ? ああ、ちょっと野暮用だよ」

「野暮用?」

―――さて、どうしたものか? 祥子にその辺の事情を話して、2人で李大尉の所に・・・
そんな事を考えていたその時、戦術機の跳躍ユニットの轟音が聞こえてきた。
聞き覚えがある、耳によく馴染んだ音だ―――『殲撃8型』、世界で最も使用されている戦術機、F-4の流れを汲む機体。

「・・・中国軍か」

「そうね、後ろに台湾軍も居るわ」

本当だ、空を仰ぎ見ると後方に台湾陸軍の主力戦術機である『経国』が続いている―――F/A-92TⅡ、跳躍ユニットを『AK-F3-IHI-95B』に換装した最新輸出タイプだ。

さて、これで望み得る役者は全て揃った。 あとは来客がどれだけでやって来るかだ。
出来る事ならば、是非に閑古鳥が鳴いて欲しいものだ。 他戦区の友軍には苦労をかける事になるけれど。

臨時の降着場に降着した1機の『殲撃8型』から衛士が降りてきた。 遠目ではまだ誰だか判らない―――朱文怜だった。
向うもこちらに気付いたのだろう、彼女は歩み寄って来て、そしてにっこりと笑ってこう言った。

「あら? ようやく戦場にお出まし? 直衛、随分とごゆっくりね?」

思いっきり言葉に棘がある、表情も一変して険しい。 一見して不機嫌なのが判る。

「撤退支援お疲れ様。 で? 今度は我先に逃げ帰るの?」

挑発的な表情と声色だ、見た事も聞いた事も無い、こんな彼女は。

「―――任務を遂行するだけさ。 それ以上でも、それ以下でも無い」

当り障りのない言葉を選んだつもりだったが―――どこかで彼女の逆鱗に触れたようだ、小柄な体全体に怒気が籠るのが判った。
文怜が激発しそうになったその瞬間、別の声が耳を打った。

「文怜! いい加減にしなさい!」

「―――美鳳? 君も無事だったか」

趙美鳳だった。 良かった、2人とも無事だった。 しかしなんだ、この2人の雰囲気は・・・?
文怜は美鳳の方をチラッと見たきり、今度はプイッと顔を背けて離れて行った。 部下の様子を見に行ったようだ。
そんな文怜の様子を溜息混じりに見送った美鳳が、今度は俺に急に謝って来た。

「ごめんなさいね、直衛。 驚いたでしょう?―――祥子、お久しぶりね」

「確かに・・・ どうしたんだい? 彼女は?」

「お久しぶり、美鳳。 文怜はどうしたの?」

―――ふぅ

またもや溜息混じりの美鳳。 そして彼女から聞いた文怜の怒りの理由。
多分、文怜自身も頭では理解しているのに、感情がついて行っていないが故の苛立ち。
ああ、そうか―――内容は違えども俺が感じた違和感と自己嫌悪、あれと同類なんだな。

「大丈夫、気にしていないよ。 文怜の苛立ちは理解できる・・・ つもりだ。 だからって、俺が軍上層部に対してどうこう出来る訳じゃないけど、ね・・・」

「本当にごめんなさいね。 彼女も普段はあんな事言わないのよ、今までは私にだけ―――甘えたかったのよ、貴方に。 旧友の貴方に」

「美鳳は欧州時代から、文怜や翠華の大姐(ダージェ:お姉さん)だったからな。 友人だからこそ言ってくれた本音だと、そう受け取っておくよ」

「そう・・・ そう言ってくれると助かるわ。 それじゃ、私は部隊の方に戻るわ―――直衛、それに祥子も」

「―――ん?」

「何かしら?」

暫く俺と祥子の双方の顔を見ていた美鳳が、こう言った。

「―――生き残るわ、私達。 生き残るのよ、絶対に」










1998年1月19日 1300 朝鮮半島南部・光陽 帝国軍独立混成戦闘団 第2大隊戦闘団陣地


統一中華軍が合流を果たし、一気に戦力は倍増していた。
所属不明のまま臨時に大隊に編入の形になっていた韓国軍の李大尉と朴大尉の中隊も、部隊を纏めて布陣している。 
李大尉の中隊(3機欠の9機)も、朴大尉の中隊(1個小隊欠の8機)も大隊本部付きの予備戦力として大隊指揮小隊の両翼を固めている。

その朴大尉の中隊が光陽北15km地点で南下してくるBETA群を発見した報が入ったのが10分前。
直ちに第1級戦闘態勢が敷かれ、全戦術機甲中隊―――28個中隊(帝国軍、韓国軍、台湾軍、中国軍)が一斉に展開を開始した。

≪BETA群第1派、約6000! 防衛ライン前方8km地点、更に南下中!≫
≪ランドサット情報入りました、BETA群第2派、約1万。 光州方面より東進南下中です!≫
≪第3護衛艦隊旗艦、『秋月』より入電!―――AL砲弾、ALM発射開始しました!≫

『BETA群が制圧砲撃キル・ゾーン突破後に、『特火点』を点火!―――有線、異常無いか!?』
『第1防衛隊! 『特火点』点火後、BETAを視認と同時に阻止砲撃開始!』
『第2防衛隊、第1の交戦開始と同時に西へ迂回! 側面から突き崩す!』

震動センサーがBETA群の規模を、音響センサーがその距離を知らせてくる。 まもなく数千のBETA群がこの狭隘な地形に殺到してくる。

―――『ゴクッ』

誰かの喉が鳴った。 緊張しているのか、多分新米の誰かだろうか。 
23期Aの倉木、河内、宇佐美。 そして23期Bの浜崎、鳴海の5人の少尉達。 半年の卒業時期のズレはあるが、この5人にとっては今回が初陣だ。

「―――倉木、河内、宇佐美。 それに浜崎と鳴海」

―――『は、はいっ!』 『なんでしょう! 中隊長!』

声が引き攣っているな、バイタルモニターでも緊張と興奮が読み取れる・・・

「貴様達、国に帰ったらやりたい事があるか? 今すぐじゃ無くても良い、将来でもな」

唐突に何を?―――そんな表情の5人の部下達。 
それはそうだろう、直ぐにでもBETAとの交戦が迫ったこの状況で、一体この上官は何を聞くのだ? そんな表情だ。

「何でもいい、言ってみろ」

戸惑いの表情を浮かべながらも、5人とも俺の『命令』通りに口々に話し始めた。

『俺は―――稼業を継ぎたいです。 実家は東北で酒造りをしています』
『親はもう年だし、兄貴も姉貴も戦死しました。 弟妹はまだ小さいし・・・ 自分が親の面倒見てやりたいです』
『私は・・・ 戦争が終わったら、上級学校に行きたいです。 絵を描きたいんです・・・』

倉木、河内、宇佐美がためらいがちにそう言った。

『私は生きて故郷に帰りたいです。 約束したんです、幼馴染と。 生き残って、一緒になろうって・・・』
『俺、片思いの娘にまだ何も言ってなくって―――生き残ったら、真っ先に彼女の所に行きたいです』

部下の話を目を瞑って聞いていた、そして改めて思った。 色々な人生、色々な人の歴史があるな。 そしてそれは、こんな所で中断させていいモノじゃない。

「良い酒を造れ、倉木。 出来れば安く融通してくれ。 
親御さんを大切にしろ、弟さんに妹さんは小さいのか、お前が頼りだ、河内。
個展を開く時は招待しろよ? 宇佐美」

3人が小さく頷く。

「幼馴染もお前の事を想って頑張っているだろう、国に帰ってとびっきりの笑顔を見せてやれ、浜崎。
片思い?―――当って砕け・・・ るな、鳴海。 どうして片思いだと判る? もしかして向うもお前の事を好きかも知れないんだぞ?」

浜崎がぎこちないが笑顔を浮かべ、鳴海が照れ臭そうにしている。
と、その時通信回線に割り込んで来た無粋者達がいた。

『で? 中隊長は何をしたいんです?』
『はは! 摂津、野暮は言うなよ!』
『綾森大尉は、素敵な女性ですから』

まったく、古参連中はこれだから・・・ 実戦経験のある瀬間、松任谷、蒲生の先任少尉達も含み笑いをしている。

「俺か? 俺は・・・ 俺はな、ここのクソッたれなBETA共を殲滅して、生きて国に帰って・・・ 彼女と一緒になるさ」

『うひょう!』 
『おー、おー、言ったよ、この人!』 
『ようやくですか? 綾森大尉が婚期を逸したら中隊長のせいだと、大隊ではもっぱらの評判でしたよ?』

摂津中尉、最上中尉、四宮中尉が囃したてる(四宮は、『やれやれ・・・』と言った感だが)
先任少尉達ばかりでなく、新米少尉達も笑っている。 ぎこちないが笑顔が浮かんでいる、よし。

「やかましい、外野。 悔しかったら良い女、良い男を早く捕まえろ。 
つまりだ、俺達の道を塞ぐ事を許すんじゃない! クソッたれBETA共にたっぷり教育してやれ!―――重金属雲発生! 中隊、攻撃開始だ!」

―――『了解!』

部下達が唱和する。
目前の上空に広がってゆく重金属雲。 風が出てきた、後方の護衛艦隊からのAL砲弾・ALMがしきりに降り注ぎ、光線級の迎撃レーザー照射が上空に乱舞する。
網膜スクリーンに映る若い顔、顔、顔―――ここでは死なない。 ここは俺の、俺達の死に場所ではない。 死に場所にはしない。 自分も、部下達も。

「生き残るぞ! 全員、ついて来い!」

―――『応!』










1998年1月19日 1310 朝鮮半島南部・光陽=順天防衛ライン


≪BETA群、面制圧砲撃キル・ゾーンを突破! 約4000!≫

光線級の迎撃レーザー照射に晒されながらも、重金属雲を突いて殺到した徹甲弾や榴弾、クラスターミサイルが作り出す鉄と炎の雨を潜り抜けてきたBETA群。
数がかなり減っているのは個体防御力の低い小型種が減ったのだろう。 これはこれで有難い、大型種相手の戦闘中に集られるのは良い気がしない。

≪距離1万! 『特火点』、点火用意!―――5、4、3、2、1、点火!≫

その瞬間、凄まじい轟音とともに火球が発生した。 
火球は歪な円錐形を描き、やがて拡散してゆく―――衝撃波が襲いかかり、その直後爆心地点へ向けて強風が背後から吹きつける。

≪第1、第2、第3特火点、点火成功! 続いて第4、第5、第6特火点、点火―――今!≫

再び先程と同様の情景が再現させた。 
火球の爆発出力は約5kt、爆発点気圧は約22万気圧で風速は約400m/s、爆風圧は250万Pa(パスカル)。 並みの台風の10倍のエネルギーだ。

火球はやがて歪なキノコ雲となり、黒々とした姿を上空に巻き上げる。 
あの下では半径1000m以内では100万Pa―――1平方m当たり10トンと言う超高圧の元、BETA共が一瞬で蒸発するか、粉々に押し潰されている筈だ。
それでなくとも爆心地温度は6000度と、太陽の表面温度に等しい。 半径500mで3200度、半径1000mでも1600度の高温に晒される。

≪第1から第6特火点―――S-11、6発、起爆成功です!≫

HQから歓喜に似た声が響く。 そうだろう、少なくとも4000程度のBETA群ならばあれで大半は消滅している筈だ。

一体どれ程のBETAがやって来るか判らず、そして何より損害を最小限に留めての撤退を要求される中、今や正に日中台韓『統合軍』と化した光陽=順天守備隊が出した答えがこれだった。
戦術機に搭載されるS-11を降ろし、それを数個並列接続した『特火点』をBETAの進路上に設置。 爆発指向性を極端に前面に絞って爆発させる。
BETAが突進してくる進路は地形から粗方読める。 連中は山岳地帯より平坦地を好む、ならばその平坦地とその左右に上から撃ち降ろす様な場所で点火させてやれば良い。
S-11の爆発エネルギーは前面に向かい、また3個の爆発エネルギーの相乗作用も見込める。


『す・・・ すげ・・・』
『ッ・・・!』
『こ、こんなに爆発力があるのかよ・・・?』

新任少尉連中が言葉を喪っている。 確かに初めて見るS-11の爆発情景は衝撃的だろう。 俺も93年の初頭に『双極作戦』で目の当たりにした時は衝撃だった。
爆心地より5000mは離れたこの地点でも、爆発指向性を特定しても、その爆発力は凄まじいの一言だ。

「リーダーより各機、気を抜くな。 BETAは全滅していない、生き残って突進してくる奴等は居る」

『あ、あの中を・・・!?』
『し、信じられません・・・』

この声は―――最上の第3小隊の宇佐美鈴音少尉に、摂津の第2小隊の浜崎真弓少尉か。
半期違いの23期AとBの出身だが、普段から仲が良かったな、この2人は。

「そうだ、この中をだ。 信じられん事にな。 だが、それがBETA―――人類の敵のしぶとさだ、覚えておけ。
最上! 摂津! 第3大隊が射撃を開始する! 連中の獲物は大型種だ、小型種の掃除はこっちでやるぞ!」

『C小隊了解。 フラガラッハC! 弾種はキャニスター!』

『了解! フラガB! 突撃砲弾は気にせずばら撒け! 小型種相手に節約は自滅だぜ!? 補給コンテナは後ろにたんまり有るからな!』

『中隊長! 第3大隊、射撃開始!』

甲高い発射音と共に、57mm砲弾が高速でBETA群に向かう。 
S-11の爆発から生き残った数少ないBETAにAPFSDS弾が殺到する―――大半は個体防御力に優れた突撃級だった。
36mm砲弾では容易に貫通出来ない、いや、それどころか突撃砲の120mmAPFSDS弾でも一撃での射貫は難しい突撃級の装甲殻を、距離3000で貫通していく。
次々に高速57mm砲弾をBETA群に撃ち込む第3大隊がスクリーンに映った。 機体は89式『陽炎』―――F-15Jだ。

米軍や帝国海軍戦術機甲部隊、それに豪州軍や中南米諸国軍が戦術機用主力制圧火力として採用している支援速射砲、『M-88 Barrett』
砲口径57mmは欧州のラインメイタルMk-57中隊支援砲と同様。 但しこちらの方が多少大型で重く、そして威力が大きい。
韓国軍の倉庫から持ち出した数々の『オモチャ』、その中に有ったモノの一つだ。
遠距離からの制圧支援砲撃にはもってこいの火器だ、これを使わない手はない―――問題があった。

M-88は確かに優れた火器であるが、帝国製戦術機との相性は『今ふたつ』程宜しくない。
友軍の戦術機甲部隊は94式『不知火』に、F/A-92TⅡ(台湾軍)とKⅡ(韓国軍)の『92式弐型ファミリー』
そして帝国軍の89式『陽炎』と中国軍の殲撃8型F(J-8F。 OBWを採用した『フィンバックB』)
この中で米国製火器との相性がいいのは89式『陽炎』、そして元々F-4系から発展した殲撃8型Fの2機種。

その2機種の内、殲撃8型Fは火器管制システムのアンマッチで見送り(帝国海軍の84式『翔鶴』はF-4系だが、システムを全面更新して対応している)
結局は89式『陽炎』を装備する第3大隊に、遠距離制圧砲戦のお鉢が回ったと言う次第だ。
第3大隊長の大江少佐は帝国軍の戦術ドクトリンには無い、慣れない遠距離砲戦任務に顔を顰めていたが。


≪BETA群、間もなく殲滅完了!≫

『第3大隊、『グラディエーター』だ。 突撃級の掃除は粗方終わった!―――小さいのが来るぞ! 後は頼む!』

帝国陸軍第1、第2大隊。 帝国海軍第341戦術機甲戦闘団。 韓国軍2個中隊に中国軍6個中隊、そして台湾軍8個中隊(1個中隊欠の連隊規模) 
合計25個中隊が一斉に行動を開始した。










1998年1月19日 1330 朝鮮半島南部・光陽防衛地区


連続した重低音と共に砲弾が吐き出され、小型種の一群が赤黒い霧に変わる。 不意に右2時方向に戦車級の一群、約40体が急速に接近してきた。

「フラガA! 2時方向、射撃時間2秒!―――撃ッ!」

4機の戦術機から一斉に火線が吐き出され、小規模な戦車級の群れに降り注ぐ。 砲弾の雨を喰らった戦車級が一気に数を減らし、霧消していった。

『くっ! くそ、くそ! 死ね!』

―――喚いているのは4番機の倉木少尉か?

初陣の倉木には中隊副官の四宮を付けている。 Bエレメントは俺と松任谷で構成するAエレメントより前に出ないよう厳命して。

「射撃止め! 射撃止め!」

『フラガラッハ10、倉木少尉! 『射撃止め』よ!―――倉木!』

『う、うあ?』

『射撃止め! 聞こえなかったの!?』

四宮の軽い叱責でようやく倉木も我に返った様だ、引きっぱなしだったトリガーを離したか、射撃が止んだ。

周囲を見渡す。 『特火点』―――S-11、3発の集中爆発と、20分少々の掃討戦で約6000のBETA群は大地にその無残な骸を晒していた。
その爆発から辛うじて突破してきたBETA群も、第3大隊のM-88の遠距離阻止砲撃と、25個中隊による殲滅機動戦でほぼ全てを掃討完了した。

「リーダーより各小隊、ダメージ・レポートだ、5分やる。 四宮、中隊集計だ。 こっちも5分でやれ」

―――『了解』

最上、摂津、四宮の各中尉がダメージ・レポートを集計に入った。
やられた機体は無い。 小型種に集られた機体も出さずに済んだ。 新任達も何とか無事に『死の8分』を越させてやる事も出来た、上々だ。

『・・・中隊長、何か?』

不意に直率小隊で4番機をしている倉木匠少尉が通信で聞いてきた。

「ん? 何だ? 『何か?』って?」

『あ、いえ。 自分の機体の方に向かって、突撃砲・・・ ですか? それを上下させてられたので。 てっきり自分に何かと・・・』

―――ああ、しまったな。

「ん、ああ、済まん。 そう言うつもりじゃなかった、ただ無意識の動作だ、気にするな」

部下を喪わずに第1派を切り抜けた事と加え、久々に使った火器の使い勝手とマッチングの良さに知らず舞い上がっていたか。
いかんなぁ、指揮官がこの調子じゃ・・・

『中隊長、その突撃砲・・・ じゃないですね、『近接制圧砲』ですか? 威力がありますね』

小隊3番機の松任谷少尉が話を振って来た。 思わず頬が緩みそうになるのを堪えて返事を返す。

「うん、まさかこの極東でこいつにお目にかかれるとは思っていなかった。 大型種にも有る程度対応できるし、小型種の掃討には十分だ」

右主腕に持った火器を眺める―――BK-57 リヴォルヴァーカノン。 欧州時代に使った事のある火器だ。
韓国軍も導入検討をしていたのだろう、『倉庫』に20基程が保管してあった。 俺が真っ先に飛びついたのは無理も無いだろう?

それに使って判ったが、案外94式『不知火』とのマッチングが良い。 この調子なら92式『疾風弐型』とも合うかもしれないな。
火器管制システムは94式も92式もほぼ同じものを使っている。 それにBK-57自体が欧州ではトーネードⅡでの使用を考えて開発された。
日本製と欧州製の戦術機は案外マッチングが良い傾向にある、これは本当に使えそうだ。

『でも、携帯弾数は突撃砲の36mmより少ないですよ』

倉木が不安そうな表情で言う。 確かに新米にとって、2000発の携帯弾数を誇る36mm砲の方が、1200発の携帯弾数しかないBK-57より安心感があるだろうな。

「トリガーを引きっぱなしにするんじゃない。 数を撃つんじゃない、選んで、狙って、必要な時に撃て。
ベテランと新米とではな、弾倉の交換頻度が倍以上違うんだ。 それだけ無駄弾をばら撒いている証拠だ、弾倉の消費も早い。 ストックが尽きたら近接格闘戦だぞ?」

『ほ、補給コンテナは・・・?』

「今回はコンテナの余裕が有るがな、いつも、いつも同じ戦況ではない。 時には砲弾を節約しながらの戦闘も強いられる、覚えておけ」

網膜スクリーンの中で神妙な顔で倉木が頷く横で、松任谷が何かを確認する様な表情で頷いていた。 
大方、昨年の遼東半島撤退戦の時の事を思い出しているのだろう。
部下にレクチャーをしながら横目で各種センサーやレーダー情報を確認しつつ、周囲にBETAの脅威情報が無い事を確認する。

『中隊長、C小隊損失無し。 各員バイタル、安定』

『B小隊も損失無し。 浜崎が戦車級数体と接触しましたが、突撃砲の損失のみ。 交換済みです』

『A小隊損失無し、中隊損失無し、以上です!』

最上、摂津、四宮の報告が入った。 中隊損失無し―――良いな、実に良い。

「よし、リーダーより各機、引き続き周辺警戒。 フォーメーション、サークル・ワン」

中隊の全機が俺の機体を中心に、円周状の隊形を取る。 同時にCPから戦況情報が入ってきた。

≪CP、フラガラッハ・マムよりフラガラッハ・リーダー。 第1派は完全に殲滅、繰り返します、第1派は完全に殲滅!≫

通信回路に歓声が流れる。

「よし、皆、よくやった。 第2派到達までは時間が少しある、その間に第1陣が脱出する。
これより陣地移動を開始する! 順天の南、半島の付け根まで移動。 そこで第2防衛隊に編入、第2派を迎え撃つ!」

―――『了解!』

部下の元気な応答を聞いてから、大隊通信系に切り替える。

「第22中隊、フラガラッハ。 掃討完了、損失無し」

一瞬のタイムラグを置いて大隊長の顔が網膜スクリーン上に映し出された。

『周防、損失無しか? 良くやった。 21中隊も23中隊も損失無しだ、韓国軍の24中隊、25中隊も損失は無い。 
よし、戻って来い。 大至急、順天に移動だ。 脱出するぞ!』




順天。 脱出地点で有り、生き残る道へと続く場所。

生き残って見せる、何としても。





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