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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 北満洲編9話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:e178b4cc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/18 21:28
1992年9月10日 1018 黒竜江省 依安基地 第2大隊 第23中隊長室


「「「「「「 出張!? 」」」」」」

同時にハモッたのは6人。- 和泉少尉、祥子さん、神楽、圭介、愛姫、そして、俺。
午前のブリーフィングが終わり、これから機体の整備点検に立ち会おうか、と思っていた矢先に中隊長から呼び出された。
出頭したら、中隊長と、木伏小隊長、水嶋小隊長まで居た。
何事かと思っていたら、中隊長から出た言葉は「今日の午後から、出張に行け。」だった。

大陸派遣軍に配属になって、早や5か月。 色んな任務や戦闘は経験したが、『出張』は初めてだ。
そりゃ確かに、軍人も組織の人間であって。しかも軍と言う組織は、実に様々な枝の組織に細分化されている。
だもので、確かに『出張』と言う事も無きにしも非ず、なのだが。
ハッキリ言って『衛士』兵科の俺達が出張と言うのは、些か想像出来ないのだ。 一体何の仕事で・・・

「そうだ。 本日1500時より、綾森少尉、和泉少尉、神楽少尉、周防少尉、長門少尉、伊達少尉の6名に、大連までの出張を命じる。」

・・・中隊長。 仕事の中身は? 出張目的は、一体何なんです・・・・?

「・・・目的は? 出張の内容は、どう言ったモノでしょうか?」

一応、この中では最先任の祥子さん(同期でも、和泉少尉より、士官序列が上だった)が、俺達が一番知りたい事を聞いた。

「6人とも。大連が統合軍(日中韓連合軍事組織)の、後方兵站基地である事は知っているな?」

「「「「「「 はい。 」」」」」」

「ん。 で、だ。 同時に、我が大陸派遣軍の、後方兵站本部でもある。
今回はそこに、部隊に新規配備される92式の、受領を行ってきてもらう。
中隊分だけでない。 大隊全機分のだ。
場所は、後方兵站本部の兵器管理廠第2部。 まぁ、向こうで受付けすれば、案内してくれる。
期間は、状態確認・受領で1週間程。 帰隊は17日の2200時だ。」

・・・・腑に落ちない。
大体そんなの、普通は旅団本部の兵器管理部隊と、整備大隊の戦術機整備主任将校とで行うもの、と思ったけどな。
あと、作戦次席参謀が同席するか。

すると、同じ事を思っていたのか(ま、誰でも同じか)、和泉少尉が疑問を唱えた。

「しかし、大尉。 それでしたら普通は兵器管理と整備から派遣するのでは?
よしんば、戦術機部隊から人を出すにしても。 6名は多いのではないでしょうか? 
中隊の半分ですよ・・・・?」

そりゃそうだ。 1個中隊12名。 そのうちの半数が出張で不在。
最前線の戦術機中隊で、普通有り得ない。

すると、それまで黙っていた、2人の小隊長が説明し始めた。

「まぁいいじゃないの、出張。 どうせ、そんなに忙しくなる訳じゃないし。
仕事なんて、分担しても実質2日で終わるわよ。 残りは羽伸ばして来なさいって。」

「まぁ、あれや。 ホンマは明日からローテーションで、ウチの旅団は後方の長春まで下がる。 1週間の休暇配置や。
それ見越して、お前ら6人、大連まで休暇に行ってこい、ちゅうこっちゃ。
なんせ、ウチの中隊で未だ、まともに休暇取ってへんのは、お前らだけやしな。」

そう言えば。 4月に部隊配備になってからこの方、『休暇』と言うものを取った事が無い。 
前線配備部隊に居る為か、「休日」も基本的に無かったな・・・
「待機状態」はあったけど。

5ヶ月間、無休でお仕事、か・・・ 俺の親父の居る民間の会社だったら、労働争議モノだな・・・

「ま、そう言う訳だ。 出張終了後は、部隊はチチハルに移動しているからな。そっちに戻ってこい。
移動に2日。任務に2日。 残り4日は、大連で羽を伸ばしてこい。 良い街だぞ?」


成程。 そう言う訳ならば、遠慮なく。


すると、水嶋中尉が、急に思い出したように言った。

「あ、そうだ、アンタ達。 出張旅費請求は、前払いでしときなさいよ。 食費と宿泊費もね。」

「「「「「「 どうやるんでしたっけ・・・・? 」」」」」」

「・・・・あんたら、ねぇ。 他は兎も角、祥子、あんたまで・・・」

「す、すみません。中尉。 久方ぶりなので、つい失念を・・・」

珍しく祥子さんが焦っている。 しっかし、『他は兎も角』って、何気に酷いですね? 水嶋中尉・・・

「はぁ。 旅団本部主計隊の庶務主任に、出張命令書を持っていきなさい。 そしたら、あっちで一切の処理やってくれるから。」

「「「「「「 はっ! 」」」」」」

俺達は大尉から各々、出張命令書を受領して、中隊長室を退室した。





≪23中隊長室≫

「大連かいな。 今は暑くも無く、寒くも無く。 エエ季節やなぁ。」

「木伏、行った事あるの?」

「ワシは初等学校の3年から6年まで、大連に居ったからのぅ。」

「へぇ? 初耳。」

「親御さんの仕事が、こっちだったのか?」

「そうでんねん。 ワシの親爺は、満鉄(旧・満州鉄道。 現・満洲日華合同鉄道)の技師でして。 今は、本土の鉄道省の方に移ってまっけど。
ま、その縁で、4年程住んでましたんや。

特に5月の頃は『アカシアの大連』っちゅうて、アカシアの白い花が満開で、綺麗でっせ。
夏は星海公園で海水浴。 休みの日は労働公園で、のんびりするんも良えし。
天津街は賑やかやし。 夜になったら、中山公園のライトアップも、綺麗やったなぁ・・・」

「・・・懐かしき、幼い頃の思い出。と言う訳か。 木伏。貴様も行かしてやれれば、良かったのだがな。」

「いえいえ。 思い出は、遠くにあって想うもの。って言いますやろ。
返って今行ったら、想い出も、壊れるかも知れまへんわ。 わはは・・・」

「・・・・・似合わなぁい。 ふふ~ん。」

「なんやと? 全く、情緒の欠片も解さん、無骨女が。」

「あんですってぇ~~~!?」

「なんやとぉ~~~!?」

「・・・・貴様等・・・・」







≪依安基地 1210 PX≫


「ふぅ~ん。それで、みんな出張だったんだ。」
美濃が味噌汁飲みながら。

「うむ。最初は戸惑ったものだが。 まぁ、中隊長が気を廻してくれた、と言う所であろうな。」
神楽が綺麗に魚を平らげる。

「休暇なんて、私、はじめてだよ。 何食べようかなぁ?」
愛姫。 飯二杯目。

「・・・・やっぱり、お前は『食い物』が、最優先任務なんだな。」
俺がお茶を啜り。

「・・・・愛姫から『食欲』をとったら。それは愛姫じゃないぞ? 直衛。」
楊枝を使いながら、圭介。

「直衛! 圭介!」
・・・何故憤慨する? 愛姫よ。

同期5人で昼食中。 何はともあれ、騒がしい。
飯を食い終わったら、出張の用意をして。 依安から連絡の軍用列車に乗って、チチハル経由でハルピンに。
そこで乗り換えて、満鉄で大連まで。

「何時間だ?」

「依安からチチハルが1時間30分。 チチハルで乗り換え30分。 チチハル~ハルビンが2時間。 乗り換えが、連絡待ちで30分。 
ハルピンから大連が12時間。 都合、16時間30分か。 
到着は明日の朝。0730時。」

お、圭介。早い。

「兵站廠での仕事は、明日と明後日で終わりだな?
帰りは、17日の朝、0730時発で・・・ 14時間半。 2130時。 帰隊は2200時だな?」

生真面目だな、神楽。 もう帰りの確認か?

「って事はぁ。 13日から16日まで、遊べる訳よねぇ? さてさて・・・」

「遊べる」じゃなくって、「食い倒れ」られる、じゃないのか? 愛姫。

「お土産、期待してないからねぇ~~?」

「「「「 ・・・・ 」」」」

何だ? その言葉と裏腹の、差し出した手は? 美濃よ?

「・・・・ごっそさん。 さて、支度するか。」

「俺も。 んじゃ、1430時に、衛門前集合な?」

「うん。」 「承知」 「いってらっしゃーい。」









1992年9月10日 2130 満鉄・哈大高速鉄路(ハルビン・大連高速鉄道線) 夜間寝台列車


そもそもは、俺達の部隊が明日、11日からローテーションで1週間、最前線の依安から、後方の長春に移動・休養する事になっていたからだった。

年中無休の、BETAとの大戦争中とはいえ。 前線の部隊を、ずっと貼り付けせたままでは、効率が悪いのだ。
肉体的・精神的疲労は急速に蓄積されて、戦意も士気も落ちる。 
そんな部隊は、戦場では、ちょっとした事で急速に崩壊する。

半世紀前にボロ負け喰らった前世界大戦時の戦訓から、帝国でも部隊のローテーション配置が一般的だった。

これは、前線配備(戦闘任務)、後衛待機(哨戒・訓練)、後方休養(休養、補充)を一定期間で、ローテーションを組んで回る事だ。

戦闘で疲弊した部隊は、後方で補充を受け、同時に休養する。
後衛待機の部隊は、前線配置に就き。
後方休養だった部隊は、1歩前線に近い「後衛基地」で、訓練と哨戒任務に就く。

これを繰り返すのだ。

帝国大陸派遣軍では、常時最前線に1個師団と、3個旅団が配備。
後衛基地には、1個師団と1個旅団。
後方休養は、1個師団と1個旅団。

師団は1ヶ月インターバルで。
旅団は前線3週間。後は1週間ずつ。

因みに、後方休養場所は長春。 後衛基地はチチハル、大慶、ハルピンの3か所だ。

とは言え。4か月前に一度崩壊しかけた我が軍では、ようやく全軍の布陣が完了したばかりだったので、このローテーションも最近ようやく機能し始めた。
俺も、配属後初めての「休養」を、楽しみにしていたものだ。



「なあ、圭介? 大連で休暇って、何する?」

寝そべりながら、圭介に話しかける。  ・・・・我ながら、情けないセリフだ。

ここは夜行寝台車の二等寝台室。 1部屋にベッドが二つ。 一応、洗面台もある。
下っ端とは言え、これでも一応は軍の将校。
旅団の庶務主任が手配してくれたのは、夜行寝台特急の二等車だった。(庶民は普通、三等寝台車を利用する。 二等では、料金が高い!)

俺と圭介。 祥子さんと和泉少尉。 神楽と愛姫が同室。

「・・・・4日間。 折角の休暇を、男二人連れ、なんて不毛な時間は、過したくない。」

なんだよ、そのジト眼は。

「ふん、俺だって。 しかしなぁ、地理不案内だしな・・・」

「俺は、案内してくれる娘でも見繕う。 お前は勝手にどうぞ。」

「薄情者。」

「・・・・綾森少尉でも、誘えば良いじゃないかよ。」

「・・・・和泉少尉と、一緒かもしれんだろ。 同期同士なんだし。」

「・・・・はぁ。」

「何だよ・・・?」

「~~~っ! 何でもねぇ! この鈍感。 もう俺は寝る!」


くそ、さっさと布団かぶっちまいやがった。








1992年9月11日 1400 遼寧省 大連 統合軍大連基地 帝国軍大陸派遣軍 後方兵站本部 兵器管理廠


第1日目は、拍子抜けするほど簡単に仕事が終わった。
0830時、兵器管理廠に出頭。
0900時から、大隊が受領する機体のステータスチェックを、6人で手分けする。
1200時ちょうどに終了。 昼食。
1300時から、確認書類にサインして。
1400時、初日終了。

因みに明日も、ほぼ同じスケジュールだった。

「はぁ~~~・・・・」
「へいわ、ねぇ~~~・・・」
「ひまだなぁ~~~・・・」
「予想外ねぇ~~・・・」
「拍子ぬけ、だな・・・」
「・・・すぅ、・・・すぅ・・・」

皆、やる事が無くなって、ほけー。としている(一人、早やスヤスヤと、寝てるバカがいるが)

事務所棟の裏庭の芝生の上。 午後の太陽が降り注ぐ。 風も気持ちいい。
あ~~・・・ 仕事する気になれんな・・・


「そう言えば、今回の機体。 寒冷地仕様って知らなかったな。」

俺は午前中見た92式を思い出した。
細かい仕様が、今まで使用していた機体と異なるのだ。
主機周りの凍結防止装置とか、機体表面のコーティングとか。

「ま、ね。 今まで使っていた機体は、元々ASEAN軍が発注した機体だったらしいし。
言ってみれば、熱帯仕様よねぇ。
流石に、ビーチで楽しむ水着を着て、真冬の満洲で雪遊びは出来ないでしょ?」

和泉少尉の例えは、笑ってしまうが、的確だった。

「でもま。男の子としては、分厚い防寒着より、ビキニ姿の女性の方がいいよねぇ? 周防少尉?」

「何で、その言い回しで、俺なんですか・・・」

(「何よ。 祥子のビキニ姿と、分厚い防寒服姿。 どっちが良いのよっ!?」)
(「ビキニ姿っす!!」)
(「うんうん。素直で宜しい。」)
(「しかし。ビキニ姿、と言えば。 この中では、神楽と和泉少尉が双璧では? スタイルが。」)
(「圭介っ!?」)
(「ん。君も素直で宜しい。けいすけクン。」)
(「・・・愛姫は、一部愛好者有り、か?」)
(「・・・直衛。間違っても口に出すな。 ここでKIAになりたいか・・・?」)
(「でも。神楽には、流石に私も負けそうよぉ~・・・」)
(「全体的なバランス、いいもんな。あいつ。」)
(「・・・詳しいな? 直衛?」)
(「ひゅー、ひゅー。やるわねぇ? 男の子。 しっかりチェック済?」)
(「言ってたのは、源少尉です。」)
(「・・・・あの、むっつりスケベ。 帰ったら麻衣子に言ってやろ♪」)
(「三瀬少尉と、源少尉。そう言う関係で?」)
(「そうすべく、鋭意努力中よん ♪」)







≪side 愛姫≫

馬鹿3人衆(紗雪さん、ごめんね?)が、何やらひそひそ話に興じている。
どうせ、碌な事じゃないんだから。

ふぁ~~~あ・・・・ 気持ちいい。 ホントにこのまま、眠っちゃいたいよぉ・・・



≪side 緋色≫

何やら3人で話し込んでいる。 実に楽しそうだ。
こう言う時、実は、少しばかり落ち込んでしまう。
私は、周防や長門、和泉少尉の様に、中隊の仲間と腹を割って話すと言う事が、苦手なのだ。
と言うより、どうすれば良いのか、解らぬ。 それに、少々・・・ 羞恥も、その・・・

・・・むぅ。いかん。 折角の休暇を前に、この様な事では・・・



≪side 祥子≫

3人とも、何やら楽しそうね。
・・・紗雪の、さっきの視線がちょっと気になるけど。
でも、気分転換には良かったかな?
私はあまり関わらなかったけど。 先月に戦傷を負われてしまった、河惣少佐の事で、ここに居る皆はちょっと、気落ちしていたから。

・・・そう言えば。 少佐は大連の国連軍病院に入院中だったわね・・・
うん。 お見舞いに行くよう、言ってみよう。
みんな、賛成すると思うわ。







1992年9月11日 1600 遼寧省 大連 老虎灘(ラオフータン)大連国連軍病院


「皆、わざわざ見舞ってくれて、有難う。」

私たち6人が見舞った時。 河惣少佐が、嬉しそうに迎えて下さった。

少佐は先月、92式の実証評価調査で北満洲に赴任し、その際の戦闘(原因を聞いて、中隊の皆が憤激したものだ)が元で、左足を失う重傷を負われた。
今は疑似生体の移植手術も成功し、リハビリ中だと言う。
あと10日もしたら、退院できるそうだ。 

その時、少佐の救出に向かったのが、私達第23中隊≪ゲイヴォルグ≫と、本土の第1連隊の試験小隊≪フラッグ≫だったのだ。

少佐は、私達の中隊長、広江大尉とは士官学校の同期生で、親友だ。
あの時の大尉は、普段のふてぶてしいまでの余裕が消え、必死だった。
その気持ちは、私にはよく解る・・・

「でも、またどうして、皆揃って大連へ?」

そう言いながら、私達に果物を切り分けてくれる。 林檎だった。
今時、天然ものは大陸では入手が難しい高級品なのに。 ・・・でも、美味しそう。

「実は出張中でして。」

紗雪が説明する。
ローテーションで、休養配置ついでの、休暇出張。
なるほど、と呟く少佐。

「ふふ。 広江にしては、なかなか粋な計らいね。 彼女は昔から無頓着な所が有ったけど。
少なくとも、部下の事は、よく面倒を見るタイプだったわ。」

少佐はそう言って微笑む。

何か、印象が変わった。
言葉遣いも、前はかっちりした、軍人口調が印象的な、クールで有能な女性将校。といった印象だったのだけど。

今の少佐は、女性らしい、しっとりした口調と言葉遣いで。
元々が綺麗な人だから、こうやって微笑むと同性の私でさえ、見惚れてしまいそう。

あ。 直衛君が、ぼーっとして見てるっ! 少佐の事! もうっ!

そんなこと思っていたら、少佐と目が会ってしまった。
先程からこっちを見ていたのか、くすり、と笑われてしまった。
・・・・気付かれたかしら?


「で、明後日から休暇なのね。 ん・・・ でも、ごめんなさいね。 私はこの街の事、詳しくないのよ。」

「いえ、ご心配無く。 観光ガイドなんかも有るようですし。 
いざとなったら、ガイドは自分で見つけますよ。」

「女の子の、な。」

長門君に突っ込む、直衛君。
あ、長門君が、余計な事言うなっ! って、眼で威嚇している。
直衛君は、我関せず、で流しちゃってる。

相変わらず、仲が良いなぁ、この二人。

「ふむ? 長門少尉は、なかなか社交家のようね?」

「少佐。 圭介は只の『女誑し』なだけですよぉ」

い、愛姫ちゃん・・・


すぱーんっ!  ・・・・あら、良い音・・・


「いったぁ~~~いっ! 何よぉ! 圭介も、直衛もぉ! 人の頭、ぽんぽん叩くなぁ! 
ホントに馬鹿になったら、どうしてくれるのよぉ!!」

「「お前はこれ以上、馬鹿の底が無い。」」

「むかつくぅ~~~!!」


・・・・どこかで、見た光景よね・・・


「ふぅ・・・ 愛姫、ここは病室だぞ? 余り大声を出すものでは無い。
それと、周防、長門。 如何に同期生同士の間柄とて、愛姫は女だぞ?
貴様達、男子として、その振る舞い。 些か忸怩たるを覚えんのか?」

あ、あら。 先任として、注意しなくちゃいけなかったのに。
にしても。 神楽少尉は相変わらず、生真面目ね・・・

「ふふふ・・・」

「「「「少佐?」」」」

「本当に、仲が良いのね、貴方達は。 模擬戦での息もピッタリだったけど。
確かに普段、これだけお互いにコミュニケーションがとれていたら、納得だわ。」

「・・・・少佐ぁ。 私は被害者ですぅ・・・・」

愛姫ちゃん、涙目だわ。

「しかし。 愛姫も一言多いのは、確かだ。」

「緋色っ!? 裏切り者ぉ!!」

「むっ・・・ 人聞きの悪い。」


はぁ、この子達ってば・・・ 思わずため息をつく。
紗雪は我関せず。 ホント、感心しちゃうわ、貴女のその性格。 ある意味、羨ましいわね・・・

喧々囂々の後任達を、少佐が優しそうな瞳で見ている。
彼等は少佐にとって、この地で知り得た、大切な『何か』なのだろう。
それは多分、紗雪も同じ。

私はちょっと、居心地の悪い疎外感を、ちょっぴり感じた。


「そうそう。 貴方達、14日の夕方以降、時間空いているかしら?」

「すみません。 私、こっちに同じ訓練校出身の同期がいまして。 
予定入れちゃったんです。」

紗雪と同じ訓練校って事は、熊谷訓練校ね。

「自分も、人と会う約束を取り付けるべく、努力中でして。」

長門君、本当に『努力』惜しまないのね。 そう言う事は・・・

「私達、行きたい所ありまして・・・」

愛姫ちゃんと、神楽少尉。 凸凹コンビだけれど、仲は良いものね。

「綾森少尉と、周防少尉は? どうかしら?」

「俺は特に予定は有りません。 
と言うか、これからどうしようか、思案していた所です。」

直衛君。 その・・・ えっと・・・

「綾森少尉は?」

「あ、はい。 あの、私も、特には・・・」

本当は、誘いたいんだけど・・・ って言うか。 誘って欲しかったんだけどなぁ・・・

「そう。 じゃあ、2人とも、1730時に後方兵站司令部に来てくれない?
丁度、国連軍主催の夜会が有るのよ。 1900時からなのだけど。
まぁ、夜会と言うより、パーティーね。 
別段、構えなくていいわ。 軍関係者の、親睦会のようなものだから。
どう言う訳か、私にも前々から招待状が来ていてね。 全く、こっちは入院患者なのにね。」

そう言って、少佐は苦笑する。
夜会? はぁ、そんなの、今時やっているのね・・・

「招待状には、2名とあるのよ。 
でも、生憎こちらには知り合いがいなくて。 それにまだ、退院できないし。
貴方達。 私の代役、お願いできないかしら?」

えっ!? 私達が? 代役? パーティ?

「・・・・あ、あの~~ 少佐?」

恐る恐る、直衛君が手を挙げる。

「? 何?」

「俺達は、少尉ですけど・・・ 少佐が招待されたのでしょう? それなのに、3階級も下の俺達が代役では・・・
主催者に、失礼では無いでしょうか?」

最もね・・・ 階級が全て、じゃないけれど。 それでも少佐の代役が、少尉二人と言うのは。

「大丈夫よ。 むしろ好都合。」

「「はい?」」

「主催者、と言うより、単に『場所貸し』なのよ。 国連軍は。
本当の主催者は、本土の戦術機生産メーカー。 河西、石河嶋、九州航空、愛知飛空の4社なの。
ゲストは、中国軍や韓国軍、ASEAN軍の戦術機行政の担当官達。 まぁ、他にも色々いるけれど。
『主催者』からすれば。 帝国軍の正式採用の基データを提供した実戦部隊の、現役衛士将校が出席する事は、実際の生の声を聞いて貰える訳でしょ?
願ったり、叶ったり、よ。」

なるほど。戦術機の拡販にご協力を、と言う事ね。
少佐がご招待されたのも、92式を推進された実績有っての事でしょうし。

あ、でも。

「夜会と言われましても・・・ 私達、今、礼装一式、持っていませんわ・・・」

「・・・・・」

「「 ・・・・・ 」」

「大丈夫よ。」

「「 はっ!? 」」

「大陸派遣軍の礼装関係一式は、確かここ、大連の後方兵站司令部の、被服局で保管しているもの。」

「「 えっ!? 」」

「・・・知らなかった?」

「「 (こくこく) 」」

「まぁ、無理ないわね。 戦闘部隊、それも戦術機甲部隊ともなれば、そんな事気にする余裕はないでしょうし・・・
軍装一式は、将校は自己負担でしょう? 貴方達も、俸給から月々、差し引かれている筈よ。
で、そうした通常軍装以外は、後方の兵站本部で一括保管するの。 前線に持っていっても、意味が無いし。
だから、貴方達の礼装は、今は大連にある筈よ。 確認しましょうか?」

そう言って少佐は、私達の軍籍番号、所属部隊、氏名を記録して、ちょっと待っててね、と言い残して病室を出て行った。
・・・すっかり調子は良いみたい。
歩いている姿は最近、疑似生体移植手術を受けたとは思えない程、自然だった。


「・・・知らなかったわ。」

「礼装かぁ。そう言えば訓練校卒業時に、採寸した覚えが有るわねぇ。」

「存在を忘れてたわね。」

「俺も、同じく・・・」

「何よ、祥子も周防君も。 
少佐も言っていたでしょ? 軍装の調達代金、月賦で俸給から差し引かれているって。」

「・・・俸給明細なんぞ、見ませんから。」

「最近は、私も・・・」

「まぁ、それはそうねぇ。」

「そんな余裕、有りませんでしたよ。」


はぁ。ま、私も紗雪も、礼装の居場所までは気にしていなかったから、同様ね。

そうしている内に、少佐が戻ってこられた。
やはり、私達の礼装一式、大連に保管してあるとの事。

確認と受け取りが有るので、約束の時間まで早い、1600時に兵站本部に集合、と言う事になった。


でも、夜会かぁ・・・ 憧れない、と言ったら、嘘になるわね・・・








1992年9月12日 1000 遼寧省 大連 統合軍大連基地 帝国軍大陸派遣軍 後方兵站本部 兵器管理廠


「OBL(オペレーション・バイ・ライト)?」

2日目の機体確認作業中、聞き慣れない単語を耳にした。
俺と一緒に、機体のチェックをして回っている、兵器管理廠の技術中尉からだった。

「うん。 周防少尉、君もOBW(オペレーション・バイ・ワイヤ)システムは知っているね。 うん、第2世代機の特徴だからね。
しかし、第3世代機では、OBLシステム搭載が標準化されるようになるだろう。
これによって、より高度な機体制御が可能になる。 帝国も、次期主力戦術機用に研究・開発を進めているんだよ。」

「へぇ・・・ 今まで以上に、高度な機体制御ですか。 凄いな、それって。」

「でな。 今帝国は、OBWのより高精度・高性能化と、OBLの実証試験を行っている。
従来機の能力向上と、第3世代機用のシステム開発だね。
OBLは実は試作型が完成している。 立川(開発試験団・審査戦術機甲隊)で、搭載試験を行っていてね。
結果はなかなか良好だ。
で、今回、実戦での運用実証試験を行う事になった。」

「・・・それって、まさか・・・」

技術中尉は、満面の(でもどこか、斜め上に抜けた感じの)笑みを浮かべた。

「うん、そうだ。 大陸派遣軍でやって貰う事になった。 全面的にね。
OBWの高精度・高性能化対応システムは52師団と54師団、第108、第112、第116旅団の全戦術機に。
OBLは、23師団と、第119、第120旅団の全戦術機に、ね。」

「・・・ウチの旅団、またモルモットですか。」

「ま、そう言うなよ。 実際、立川でも好評だったんだし。
前線の戦闘部隊でコンバット・プルーフされれば、改良も早くなる。
それだけ完成品の進捗も早まる。 君等衛士にとっても、悪い話じゃないだろう?」

「ふう。 ま、そうですね。 役に立つものなら。 何だって歓迎しますよ。」

「うん、うん。 宜しく頼むよ。」









1992年9月12日 2230 遼寧省 大連 統合軍大連基地 帝国軍大陸派遣軍 士官宿舎


「へぇ、OBLシステムか。 面白そうだな。」

今日聞いた話を圭介にしたら、結構乗って来た。 やっぱりこいつも、根っから戦術機乗りだな。

「ああ。 今まで以上に、機体の機動制御が高度化されるそうだし。 面白い戦いが出来そうだな。」

「うん。 それと、直衛。 お前と児玉伍長とで、改修した例のOS実装プログラムな。
実は、あれの話も仕入れて来たんだ。」

「ん? どう言う話だ?」

「実は、正式に富士(教導団)で検証する事になったらしい。
で、向こうでデータ取りして。 アップデート版のOSを年内目途に、全戦術機部隊に展開する予定だってさ。」

「へぇ! そりゃすげぇ!」

「すげぇのは、お前なんだぜ?」

「ん? なんで?」

「はぁ・・・・ 言ってみれば、お前と児玉伍長が開発者みたいなモンだろ?
実は、俺と一緒に回っていた技術少尉が、富士に伝手が有るらしくてよ。
向うでも 『誰だ? こんな事考えた変態は?』 って、評判だとよ。」

「へ、変態・・・・」

ちょっと、ショックだぞ・・・

「ま、誉め言葉だ。 有難く頂戴しておけよ。 『満洲の変態』」

「うっせぇ!!」


コン、コン。

ドアノックの音がした。

「どうぞぉ~」

ドアが開いて、入って来たのは、愛姫と神楽。 
愛姫は、両手につまみと、紙コップ。
神楽は、ウィスキーに、老酒だ。

「おっ!? どこから仕入れた?」
「愛姫、神楽。 グッジョブ!」
「へっへぇ~~! 老酒は、中国軍の主計大尉のおじさんからさ! 食堂で知り合いになってさ!」
「ウィスキーは、先程までのカードの戦利品だ。」

愛姫は、どうせ良く食うから、その線で厨房管理の親玉に、気に入られたんだろう。
神楽は・・・ そう言えば、さっきまで国連軍の連中と、カードをしていたな。
こいつはポーカーフェイス得意だから。 しこたま勝ったのだろう。

俺達は皆、18歳。 本土じゃ、未だ飲酒制限年齢だ。
だけどここは戦地。 しかも北満州は夏でも夜は冷え込む。
で、赴任当初から「準標準・衛士装備」=アルコールを、ちびちび飲りだした。


「楓がいれば、同期みんな、そろい踏みだったのにねぇ」
「うむ。 しかし、楓は1杯で出来上がる。 2杯で呂律が回らぬ。」
「3杯目の途中で、寝ちまうしな。」
「で、直衛が送り狼になったのか・・・」
「「ええっ!?」」
「嘘だっ! 冤罪だぞっ!? あの時は柏崎中尉と、三瀬少尉も一緒に運んだぞっ!」
「・・・ちぇ。」
「・・・圭介・・・」


つまみの乾物、ビーフジャーキー(モドキ)が無くなっていく。
酒の方も、1番強い神楽が、くいくい、飲んでいって。
2番目の圭介も、ピッチが速い。
3番目は俺で、ま、普通には飲む。
一番弱いのは愛姫で、ウィスキーを嘗める様に、ちびちび飲っている。



「れさぁ~~・・・ すおー、あんた・・・ひくっ・・・ さりこ(祥子)さんとは・・・ひぃっく、・・・どこまでぇ? いっらのぉ~~・・・」

「むぅ・・・ 私も・・・ んくっ・・・ 知りたいものらなぁ・・・」

しっかり、すっかり、出来上がってやがる。 この二人・・・

「まぁ~~さぁ~~かぁ~~~、・・・あんらけ、想わせ・・・ひくっ・・・ぶり、しといて・・・ 
手ぇ出さない、なぁんて事っ! ないでしょ~~ねぇっ!!!」

「・・・彼女は・・・ 私達にとっても・・・ひくっ・・・頼りがいのある、ひゅっ・・・先任ら・・・ 
きぃさぁまぁ・・・まさかぁ・・・あそび、では、ひっく・・・なかろぉなぁ・・・?」

勘弁しろ、この酔っ払いども・・・ 絡み酒かよ・・・

「このモノはのぉ、やる時はしっかり 『ヤっちゃう』 男よ・・・・」

ここにも、いやがった。 酔っ払いが・・・

「なになに~~~!? けーすけー! いってみろぉ~~~!!」

「うむ・・・ 長門、 同期の桜で・・・ひっく・・・隠し事は・・・いかんろ。」

「ん・・・ あれはぁ・・・中学のぉ・・・ 3年らったか・・・
実に・・・じつぅ~~~にっ! 艶っぽい、女教師が、赴任してきてなぁ~~~」

・・・おい。やめろ・・・

「「おおっ!?」」

「その姿は・・・ 天女か、傾城か・・・ いやいや、俺も若かった・・・ときめいたものよ・・・」

てめぇ。 俺と同い年じゃねぇのかよ・・・

「・・・で、その中でぇ・・・ もっとも、熱を上げておったのが。 ほれ、そこ。 そこな、小僧であったのよっ!」

「ぎゃはははっ!」 「わはははっ!」

こ、こいつら・・・!!
いかん! これ以上、あの状態の圭介を暴走させたら!!

「その小僧は、遂に意を決しおってなぁ・・・ 
その、天女だか、傾城だかの、美貌の女教師にのぉ・・・ こい『やめんかぁ!!! このボケェ!!!』・・・・ぐぼぉえっ!!!」

圭介のストマックに、渾身の一撃っ!

ふん。 悶絶したか。


「すぴー・・・ すぴー・・・・」 「んん・・・ んふぅ・・・」

・・・酔っ払い娘2人組は、ようやっと沈没か。

よしっ!! このまま放置しとこう。

「ぐぉぉぉ・・・ な・お・えぇ・・・・」

何かの断末魔が聞こえたが。 無視だ。 幻聴に違いない。 きっとそうだ。

さて。 良い子は寝ようか。




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