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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 帝国編 13話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/20 23:21
1997年8月2日 0500 日本帝国 長野県安曇野市 穂高有明 中房温泉


朝ぼらけ。 標高1462m、ここ中房温泉は北アルプスの『入門口』、いや『登竜門』と言うべき伝統的な登山口である。
往年には多くの登山客で賑わったこの場所も、今や登山客などあろうはずも無くひっそりと静まり返っている。


「装備の確認は出来たか?」

自分の個人装備を確認しながら、他の3人に声をかける。
久しぶりに着こんだ迷彩服、頭はブッシュハット。 但し足元だけは戦闘靴ではなく、山岳戦部隊用のアルパインクルーザー。 手っ取り早い話が登山靴。

「こっちはOKよ」

「チェック完了」

祥子と緋色が振り向き応える。

「こっちもOK。 圭介?」

「もう少し・・・ っと、よし、OK」

これでパーティ4人全員、装備の確認が終わったな。 時間は0503、出発予定は0510 よし、行くか。

背嚢を背負い、89式小銃を担ぐとその重量は30kgに達する。
今回の行軍行程は2日間、普通ならその程度の夏山行だと20kgも無い程の重量で済むのだが、そこは軍隊。
小銃に弾倉、その他諸々の野戦装備を含めてこの重量、結構きつい。

「学生班第21班、出発」

「了解、出発時刻、0505」

訓練本部付きの下士官教員が時刻を読み上げる。 さて、いきますか。





『野外行軍訓練』

学生の体力低下防止、及び向上を目的とする―――教範に書かれている内容だ。 何時の頃からこんな山岳行になったのかは知らない。
6か月の教程も半ばを越し、8月に入った最初の週に行われる。 前期・後期の学生班40班を4つに分けて北アルプス2ルート、南アルプス2ルートで行う。
俺達のルートの訓練サポートは、東海・甲信越防衛を担当する改編された東海軍管区の第40師団第43軽歩兵連隊(松本市、山岳歩兵連隊)が行ってくれる。
第40師団自体が山岳師団で、山全般のエキスパート揃いだ。

俺達の21班は北アルプスコース。 昔は賑わった標準的な山岳縦走コースで特に危険は無い。
橋が落ちていたり、濁流に呑まれそうになったり、食料が無く蛇を食べたりなんかしない。
ましてや、何処からともなく自動砲台が生き返って射撃を喰らわしたりもしない・・・

「はっ、はっ、はっ・・・」
「ふっ、ふっ、ふっ・・・」

でもキツイ事はキツイ。 現在時刻、0625 出発地点を発って約1時間半が経過している。
出発して20分少々で合戦尾根に突入。 傾斜こそ急だが殆ど危険箇所が無く安心できる緩い山道。
上の合戦小屋まで4つの区間に分けて道標がある。 ま、ウォーミングアップである。
しかし暫くすると樹林帯の中の急登が続く。 急登の途中で安曇野方面への視界の開ける場所があった。 
低く雲が立ち込めている。 青空がのぞいていたし、心配していた天候の状態は大丈夫そうだ。

「これがのんびりした山登りだったら、どれだけ良かった事か・・・!」

「長門、愚痴を言わず進め。 しゃべると余計に体力を使うぞ?」

後ろで圭介と緋色の声が聞こえる。 今回のパーティは俺と祥子、圭介と緋色の4人。
最初は戦術機訓練の班分けで臨む予定だったが、21班(俺の班)と22班(祥子の班)では男女比が偏っている。
そこで祥子と久賀をトレードして、男女比を半々にしたのだ。 22班は市川さんと久賀、和泉さんと奥瀬さんの4人。 同じルートで30分前にアタックを開始していた。
―――因みに後期組の愛姫は、南アルプスに行っている。

途中のベンチ―――簡易休憩ポイントだ―――の傍に湧水地を見つけた。 何の変哲もない、熊が冬眠でもしたかのような窪地から水がまさに湧き出ていた。
さっそく、『基地の不味い水』を捨て、『北アルプスの天然水』を水筒に詰める。 ついでに皆でひと口―――美味い!


暫く歩き続けると、不意に樹林に取り付けられていた標識を見つける。―――『合戦小屋まであと7分』 よし、最初のチェックポイントまでは後1時間弱だ。

「みんな、合戦小屋まで7分・・・ 5分で行くぞ」

「了解」 「うむ」 「おう」

直ぐ後ろを歩く祥子、3番手の緋色、最後尾の圭介が答える。
少しだけピッチを速める。 予定では0740が最初のポイントのタイムリミット、今のペースだと何とかクリアできる。
随分陽が昇った。 木漏れ日が樹々の間から差し込み、気温は上昇し続けている。 午前中はまだいいが、午後になってこんな樹林帯を登るのは勘弁だな。

「―――おっ!」

いきなり広場に飛び出す。 立派な道標があった、合戦小屋に到着したのだ。 ここは標高2363m地点、中房から早くも900m程の高度を稼いだ訳だ。
現在時間は・・・

「今、何時?」

祥子は息を整えて聞いてくる。

「0645 1時間40分で到達だな。 標準コースタイムが2時間だから、結構稼いだかな」

「ここで休憩するの?」

「いや、チェックポイントの燕山荘(えんざんそう)まで標準で1時間程。 アタックタイム予定で40分、このまま行ってしまおう」

俺の提案に3人とも頷く。
のんびり山登りしている訳じゃないのだ。 各チェックポイントには担当官と補佐の下士官が待機していて、タイムチェックをされる。
区間タイムをオーバーする毎に、5kgの『プレゼント』を渡される。―――冗談じゃない、余計に体力を消耗してしまう。

「じゃ、行きましょう」

祥子の声で皆が再び歩き出す。


山道は急に視界が開けてきた。
背の高い樹林帯を抜け、ダケカンバ(岳樺)林の中を登ってゆく。 視界が開ける所が多くなり、これから縦走する縦走路の尾根が見える。 森林限界はもう直ぐだ。
今回の俺達の班の行軍行程は、中房から燕(つばくろ)岳、大天井(おてんしょう)岳、西岳を経て槍ヶ岳へ。 これが1日目。
槍ヶ岳から千丈沢乗越(せんじょうざわのっこし)を経て双六小屋、秩父平から笠新道分岐へ、杓子平を経て新穂高温泉までで2日目。

都合2日間の行軍行程だ。―――1日の標準コースタイムが15時間を超す、これを学生は11時間前後で走破しなければならない。 
標準的な山岳行だと4日間のコースだ、普通は1日で7時間か8時間が標準的な山を歩く時間だけどね・・・

「ふぅ・・・ 訓練校の総戦演の時より、体力的にはきついわね・・・!」

「でも、精神的にはずっと楽だろう? こなせないタイムじゃないし、落ちた所で次の課程に進めなくなる訳じゃない」

「それはそうね・・・」

祥子の声も少し息が荒い。 だけどピッチは落ちていない、大丈夫だ。
この行軍訓練、実は落第など無い。 無論、全員走破が条件だが、タイムアウトしても続けていられる。
―――要は息抜きの為の訓練だった。
初夏の良い季節に、昔賑わったアルペンルートを眺めながら自然に癒されて来い、って事か。
でも軍として建前が有るから、タイムアタック形式にしているだけの事。 訓練校のヒヨ子達が聞いたら、羨ましいと思うだろうか?

「おっ! 『燕山荘(えんざんそう)』だ!」

圭介の声に頭を上げるとダケカンバの林の奥、山の上に『燕山荘(えんざんそう)』がチラッと見えてきた。
燕岳の山頂の少し下にある山小屋、今は軍が管理している今回最初のチェックポイント。
やがて遂に森林限界を抜けた、燕山荘から燕岳へ伸びる稜線がハッキリ見える。 登山道は砂礫の道になってきた、最後の急登が続く・・・

「はっ はっ はっ」
「ふっ ふっ ふっ」
「ほっ はっ」
「ふっ はっ」

あそこまで行けば、最初の小休止だ! 4人とも思わずペースが上がる。 徐々に背嚢の重みが身に沁みて来る、余分なデッドウェイトの銃火器類が恨めしい。
普通より10kg近く重い装備を背負っての、このハイペース。 いくら軍人が鍛えているからって・・・

砂礫の道の途中で標高2600mを示す石の道標があった。 ここまで1140mの高度を稼いだのだ、そして小屋まであと110mの高度を稼げば到達!
暫くすると左の斜面の上部に小屋が見え始めた。 道は整備された段差のある『階段の山道』、歩きやすい半面、結構体力を使う。


「~~~ッ っしゅあ!」
「到着~!」
「はあ!」
「ついたぜー・・・」

標高2710m、燕山荘に到達! 時間は・・・?

「第21班ですね、現在時刻0725、アタックタイムは2時間20分です」

ポイント管理の下士官が時刻を教えてくれる。 制限時間は2時間40分だから、20分を稼いだ訳だ。

「はあ、はあ・・・ よし、時間も丁度いいし、ここで小休止しよう」

「そうね、朝食時だし」

山荘の脇のテーブルに陣取り、背嚢から携帯糧食を取り出す。 と言っても、ビタミン添付のスティックバーを2本に水筒の水だけだけど。

「うわあ・・・ 綺麗ねぇ・・・」

眼前に広がるパノラマに祥子が思わず感嘆する。 つられて見た緋色は思わず口を開けたままだ。
快晴の青空に、燕岳から高瀬川の流れる大きな谷を隔てて、『裏銀座』の峰々が大迫力で連なっている。
烏帽子岳に野口五郎岳。 更に南方面に向かうと水晶岳、鷲羽岳と続いていく。
そしてその更に左手、北鎌尾根と東鎌尾根の頂点に目差す槍ヶ岳がすっくと聳えていた。
その雄姿たるやまさに天上の槍の如くだ。―――大槍、小槍もくっきり見える。

今回のコースは一般に『表銀座』と呼ばれる、北アルプスでは実に有名な山岳縦走コースだ。
初心者でもなんとか歩けるコースとして、昔の平和だった時代には賑わったそうだ。 そしてその眺望も素晴らしい。

「祥子、緋色、そっちの斜面を見てみな。 『女王様』がいらっしゃるぞ?」

「女王様?」 

「ん?」

祥子と緋色が、訝しげな表情で少し離れた斜面を覗きこむ。 そして・・・

「あら!」

「可愛い・・・」

2人とも思わず笑顔が出ている。 彼女達が見ているのは高山植物の女王、『駒草』 
高山植物の中でも特に気品が有ると言われて、高山のザレた稜線のみに咲く花。 薄いピンクの花弁が美しい高山に咲く貴婦人だ。


―――因みに、燕岳周辺の岩はけっこう奇妙な形をしたものが多い事に気付いた。 中には人差し指で燕岳を指さしている様な岩まであったりした。

『ご覧、あれが燕岳よ』(水嶋大尉)
『わかっとるわい!』(木伏大尉)

―――って感じだ。

もう少し指の位置が真ん中よりだったら、FU○Kしているみたいで非常に愉快だと思ったのだが。
流石に八百万の神々は西洋文化を知らず、そこまで愉快な細工を岩に施さなかったか。
そんな感想を圭介と二人、こっそり話し合って笑い飛ばしていた。 
祥子と緋色が不思議そうに見ていたが、とてもあの2人には話せない。


―――閑話休題、それはさておき。
素晴らしい眺望と、綺麗で可愛らしい高山の花々を眺めながら。 その後は15分で食事を済ませ、いよいよ表銀座縦走路に突入する。 
まずは大天井岳方面に向け進み、『蛙岩(げえろいわ)』を目指す。
この尾根はあまり激しい上り下りが無いので、速歩程度に気持ち良くピッチを上げる事が出来るのだ。
稜線上のなだらかな縦走路を気持ち良く飛ばす。 あっという間に燕岳は後方に遠ざかってゆく。 暫くすると『蛙岩(げえろいわ)』が見えてきた。

「でも不思議ね。 どうしてこのように読むのかしら・・・?」

「そうですね・・・ 周防、何故だ?」

「・・・知らん」

カエルいわ、じゃなくて、げえろいわ。 カエルがゲロゲロ鳴くからか? でも、こんな高山にカエルが居るか?―――謎だ。

大天井岳へ続く稜線を進む、天上沢の谷から吹き上げる風が結構きつい・・・。 まだ迷彩野戦服を脱ぐ気にはなれない。
快晴でも、標高は2500m以上だ。 気温は15℃前後、おまけに沢からの吹き上げがキツイ。 体感温度はもう少し低いだろうな。
後ろの3人とも、暫く無言で歩いている。 余計な体力は消耗したくない、今日の本番はまだまだこれから待ち受けているのだから・・・






同日 1200 北アルプス西岳 『ヒュッテ西岳』


第2チェックポイントの西岳ヒュッテで昼食を摂りながら休憩中。
本当の名称は、『第43軽歩兵連隊・西岳駐留分所』 でもそんな野暮な正式名称は誰も言わない。
43連隊の連中だって、『ヒュッテ西岳』と、往年のアルピニスト達が愛した山荘の名で呼んでいる。―――他の山小屋もそうだ。

「本日、最大の難関ね!」

「何とか体力は温存してきました。―――やりましょう!」

―――祥子と緋色が北鎌尾根、そしてこれから挑戦する本日最大の難敵・東鎌尾根を見つめている。 ・・・訂正、睨みつけている。 怖い。

「・・・なあ、あの2人、なんであんなにテンション高いんだ?」

圭介がこそっと聞いてくる。―――俺に判るか。
それより東鎌尾根だ、ヒュッテから最低鞍部の水俣乗越(みずまたのっこし)まで約220mを一気に降下する。
そこからは延々と槍の頂上まで『鎌の様な険しい急峻な尾根』の登りが続く。 
水俣乗越から槍ヶ岳山頂まで、約720mを一気に突き上げる急登の尾根だ。 ・・・大丈夫かな、あの2人。 変にテンション上がり過ぎなきゃいいけどな。





「きゃあ~~っ!!」

いきなり背後で悲鳴が上がった。
反射的に振り替えると・・・ 祥子と緋色がいないっ!?

「落ちたぞっ!!」

圭介が険しい表情で急な斜面を見下ろしている。
見ると直ぐ数m程下の急斜面に、祥子と緋色が必死になって草の幹にしがみつき滑落を止めている。

「祥子! 緋色! 無事か!? 怪我は!?」

「・・・だ、だいじょうぶ・・・」

「あ、ああ・・・」

2人とも茫然としていた。
水俣乗越までの下りは急だ。 右手はほぼ垂直の岩肌、左手もこれまた急峻な絶壁、道幅は1mも無い。 所によっては数10cm程だ。
草むらのすぐ下はポッカリ切れ落ちて空間が空いている。 急遽ロープを降ろした。 
2人とも必死で体勢を立て直し、ロープを握り締めジリジリ這い上がってきた。―――助かった。

「ゆ、油断したわ・・・ 岩壁の鎖を掴んでいなかったの」
「わ、私もだ・・・」

―――なんだと?

「このっ・・・ バカ! だから言っただろ! 知らずに疲労しているんだって! 大方、石に躓くかなんかしたんだろう!?
もう今日は7時間以上、ハイペースで飛ばしているんだ。 いくら俺達が普段から鍛えているからって・・・ 山を舐めるなよっ!?」

「同意。―――こればっかりは、綾森さんも緋色も。 直衛の言う通りだ」

思わず大声を出してしまったが、本当に心臓が止まるかと思った。
あと1m落ちていたら・・・ 2人とも助からなかった、滑落死していた筈だ。

「ご、ごめんなさい・・・」
「反省している・・・」

「ま、まあ、気を付けてくれればそれで良い・・・ ところで怪我は?」

「ちょっとだけ。 擦り傷が・・・」
「少し腰を打った・・・ 切り傷も、な・・・」

2人とも大怪我はないが、所々血が噴出したり、滲んだりしている。 ひとまず安全なところまで降りよう。 水で傷口を洗った方が良い。

途中で水筒の水で彼女達の傷口を洗い流し、ファースト・エイドから消毒液と絆創膏を取り出して処置をする。
その後は少し慎重に、若干ゆっくりとしたペースで下る。 所によっては道どころじゃない。
切り立った急峻な岩場の尾根に、鎖と申し訳程度の梯子だけがついている場所とか。 
幅20~30cm程度の丸木を渡しただけの、一歩踏み外すと数百m真っ逆さまと言う場所も有った。

そんなこんなで、ようやく水俣乗越に到着。 一息入れる。
眼下には槍沢が展望出来た。 槍の山頂から遥か上高地まで続く広大な谷間だ。 今日はこの綺麗なU字谷を上から眺めながら登る。 
何時だったか写真で見たスイスアルプスの谷間の風景に似ている気がする。
既に失われた美しい風景と同じパノラマが、この日本にはまだ存在する。 それが嬉しい、これも日本アルプスの魅力かもしれない・・・








「ぜえ、ぜえ、ぜえ・・・」

「ひっ、ひゅ、ひっ・・・」

「はあ、はあ、はあ・・・」

「んっ、はっ、はっ・・・」

4人とも息が荒い。
水俣乗越から登り始めて2時間以上。 ひたすら急峻な登りにアタックし続けた。
急な痩せたガレ尾根にかかった連続した梯子、垂直の岩場、オーバーハングで下がすっぱり切り落ちている場所に申し訳程度にかかる鎖場。
ようやく土の道かと思えば、足を取られ易い砂礫の急登。 道幅は狭く、九十九折りになっているが登りの角度が急だ。
休憩できる場所も無い、精々が立ち止り息を整えるだけ。 その間に水を少し口に含む、飲み過ぎると一気に脱力感に襲われてしまう。

午後も1500時近くになって、急に風が出てきた。 沢から吹き上げの冷たい風に、汗だくの体から体温を急激に奪われる。
慌てて防寒具を着こんでアタックを再開するが、体が重い、思うように脚が進まない。

「ちく・・・ しょう! はあ、はあ・・・」

「ひゅ・・・ ひゅ・・・」

「ぜっ・・・ ぜっ・・・」

「ペース・・・ 落と・・・ すか・・・?」

何とか言葉を出せるのは俺と圭介の2人だけ。 祥子と緋色は絶息も甚だしい。

「これ・・・ 以上・・・ 落としたら、止まっちまう・・・ぞ」

東鎌尾根上部を這うように歩き続ける。
さっき『ヒュッテ大槍』を通過した。 今は全く無人の緊急避難施設に指定されているかつての山小屋。
岩場を一歩一歩踏みしめながら歩き、ガレ場に足を取られながら槍の穂先のトラバースに入る。 最終段階に突入だ、しかし身体が動かない・・・

背にした背嚢が50kgにも60kgにも思えて来る。
東鎌尾根の途中、体力を消耗した祥子と緋色の装備の一部を俺と圭介で分担した。
彼女達の装備重量は20kgちょっとに減ったが、反対に俺と圭介は40kg近い荷を背負う事に・・・

「うわっ・・・!!」

不意に足を取られて転倒してしまう、浮き石を踏んだらしい。
幸いと言うか、ここまできたら転倒しても滑落死する様な傾斜じゃないから助かったが・・・ 足にきている、太ももが軽く痙攣を起こしているのが判る。

「・・・だいじょうぶ?」

祥子がふらふらしながらも、心配そうに声をかけて来る―――彼女も膝が笑っている。

「肩・・・ 貸すわよ?」

「・・・止めとけ。 さっきの緋色見たく、途端に2人そろってすっ転ぶぞ?」

つい5分前、同じようにバテて転倒した圭介に肩を貸した緋色が・・・ そのまま仲良く一緒に転倒してしまった。
4人とももう踏ん張りが利かない。 後は意地だけでゴールまで行くしかないな。

再びゆっくり歩き出す。 もう目の前なんだ、もう本当にすぐそこに見えている。
小屋も、担当官や助教の下士官達も。 ああ、先発していた他の班や別ルートから登ってきた班の連中も。

「周防! 長門! へたばるのは早いぞ! ドーヴァーの乱痴気騒ぎに比べちゃ、ずっと楽だろうが!!」

―――久賀め、言ってくれる。

後ろを振り返り、3人に目で合図する。 3人とも頷いた。―――舐められてたまるか。

声にならない気合を発して、最後の数10mを一気に飛ばす―――筈だったが、引き摺る様な足取りで進む。

30m―――久賀が何かがなっている。 市川さんも何か言っている。
15m―――和泉さんと奥瀬さんの声が聞こえた。 何を言っているのか咄嗟に判らなかった。
5m―――倒れそう。 ヤバい。

―――ゴール!!

「ぜっはあ!!」

つ、ついた・・・ やっと到着・・・ 時間は・・・

「はあ、はあ、はあ・・・ だ、第21班、到着・・・」

「第21班到着、確認! 現在時刻、1545! アタックタイム、10時間40分で有ります!」

―――10時間40分

タイムリミットは11時間だったから、20分の差で何とかセーフ!! 中房から高度約1560mを稼いだ訳だ。
俺も圭介も、祥子も緋色も。 暫く声が出なかった。 標高が有るから空気が薄い、なかなか呼吸が整わない。
先に到着していた22班の4人に背嚢を外して貰い(情けない事だ・・・)、ようやく一息ついた。


その後、暫く息を整えてから4人で槍の穂先(山頂)へ登った。
酷く狭い山頂からの眺望は素晴らしいの一言だ。 穂高連峰がその荘厳な雄姿を連ねている。
下を見ると槍ヶ岳山荘と大喰岳(おおばみだけ:3101m)が直ぐそこに見える。
天上沢方面を俯瞰する。 深く切り込まれた沢と斜面の緑、そして雪渓の白の対比が美しい。 太陽の光が稜線と雲の影を沢の底にくっきり映し出している。
踏み越えてきた大天井岳より伸びる『喜作新道』 祥子と緋色が滑落して危なかった、西岳から水俣乗越への下降路も綺麗に見える。

吹き抜ける冷たい風が今は心地良い。 夏の高山の陽光が輝いている。 見上げた蒼空はどこまでも突き抜けて行きそうな、深い、深い藍の色だった。

「・・・美しいな」

緋色がポツリとこぼす。
そうだ―――美しい。 この国は美しい。









1997年8月3日 1530 日本帝国 岐阜県高山市 奥飛騨温泉郷 新穂高温泉


「着いたぞー!」
「完全走破!」
「やっと終わった!」

俺で、圭介で、久賀。
2日目の最終ゴール、岐阜県側の新穂高にようやくゴールした。 時刻は1530、今日の走破タイムは11時間30分。

今日は0400、真っ暗闇の早朝に出発。 第21班の4人だけじゃなく、第22班も同行して8人パーティでにぎやかにする事にした。

途中で拝んだ『御来光』は本当に荘厳の一言だった。
谷に朝日が差し込むと景色が色彩を帯び、一気に空気が動き出す。 幽谷の沢に沈んでいた雲が、光を浴びて急上昇を開始する。
見渡す限りの稜線にも朝日が当り、振りかえると朝焼けの光と雲海が作り出す素晴らしい光景が展開していた。

そこから雪渓を渡り、高山植物が咲き乱れるお花畑に魅入り。 快晴の中、気分良く登り、降り。 爽快な楽しい山歩きである。
そして標高2720mの笠新道分岐から新穂高温泉郷まで、一気に高度1630mの大下降!―――実は今日のこの下りの方が厳しかったのだ、足にくる。

そして遂に林道に到達! 笠新道分岐より3時間35分を要してしまった。
「平らなところが嬉しい!」―――祥子が思わず叫んだ、まさにその一言に尽きる・・・。


ゴールしたその足で、指定された軍委託の温泉旅館へと直行する。 この辺はまだ民間のこうした旅館が営業しているんだな・・・
昔ながらの風流な露天風呂に浸かる。 遥か彼方に昨日登った槍の穂先が見えた。
槍が見えるのは数ある露天風呂の中でこの一か所だけ、それも男湯。
女性陣には悪いが、圭介や久賀、市川さん。 そして途中で合流した他の班の連中も交じって、ワイワイ賑やかに湯に浸かりながら風景を楽しんだのは愉快だった。




温泉に浸かり2日間の疲れを癒し、学生仲間同士で久しぶりに娑婆の美味い食事と酒を満喫し。
ほろ酔い加減の良い気分で旅館をふらっと出たのが、2100時。

ちょっとのぼせた、勢いに任せて飲みすぎたかな・・・ 火照った体と頭を覚まそうとしたのだが―――先客がいた。

「・・・祥子?」

前の影が振り返る―――浴衣姿の祥子だった。

「んふふ~・・・ なおえ?」

―――いや、浴衣姿の酔っ払いだった。

「まったく・・・ 祥子は酒は弱いんだからさ、あんなに飲まなくても。 和泉さんも容赦しないからなぁ・・・」

ふらふら、千鳥足ぎみの祥子の体を支えてやる。

「いい気持ちよぉ~・・・?」

「はいはい・・・ 少し酔いを覚ましな、水でも貰おうか?」

「い~ら~な~い~・・・」

その瞬間、かくんっ、と祥子の膝が崩れる。
慌てて支えて、近くの籐椅子を見つけそこに一緒に座る。 いや、俺も何処か座り込みたかったんだな。

祥子がちょこん、と頭を俺の肩に乗せてきた。 彼女の方を見ると―――何気に乱れた、ちょっと開いた胸元が白く艶めかしい。
ここでケダモノになるのは、帝国軍人としてあるまじき事だぞ、うん。

―――っと、祥子が何か言いたそうな表情だ。

「どうかした?」

「・・・私、指揮官向きじゃないのかしら・・・?」

「・・・どうして?」

「ん・・・ 私が先任なのに、今回リーダーシップは直衛か長門君が取ってた、ずっと・・・ 私は何も出来なかったもの・・・」

意外と―――いや、そうじゃないな。 根が真面目な彼女らしい悩みだ。

「別に意識した訳でも、祥子を蔑にした訳でもないよ・・・ 俺も圭介も、祥子と緋色がいたから突っ走れただけさ」

「そうなの・・・?」

「うん、そう。 俺はそう。 多分、圭介は緋色がいたから突っ走った。 彼女は―――普段はああだけど、いざとなれば一歩引いて見守れるやつだから。 祥子もそう」

だから気にする事は無いのにな。 俺と圭介だけだったら、何処まで突っ走ったか判ったモノじゃない・・・

「・・・ちょっと落ち込み回復。 すこぉし、自信回復かな・・・」

「回復して下さい。 じゃないとみんな困る。 俺も困る」

「・・・直衛も?」

「うん、俺も」

「そっか・・・ そっ・・・ か・・・」

―――んん? 何か、肩のあたりで健やかな息の音が・・・

「・・・こんな所で寝るなよ、祥子。 風邪ひくぞ?」

「ん・・・ んん・・・」

―――駄目だ、酔い潰れたよ。



見上げれば満天の星。 真っ暗な夜空に、無数のガラス細工の欠片が散りばめられた様だ。

「・・・美しいな」

緋色が昨日言った言葉を思い出して、俺も言ってみる。

そうだ―――美しい。 この国は美しい。 美しいのだ。




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