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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 帝国編 4話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/08 02:09
1997年2月14日 0950 国連統合軍太平洋総軍 太平洋方面第11軍(軍集団)司令部 朝鮮半島・平壌


「長白戦線、韓国第1軍より入電。 『BETA群、国境線突破。 咸鏡(ハムギョン)防衛線に到達、戦闘開始す。 0945』―――です」

「羅先(ラソン)の韓国軍第9師団より入電。 『豆満江(トウマンガン)のBETA群、東進開始。 ウラジオストークに警戒勧告を要するを認む。 0933』」

「中国第1野戦軍、蓋馬(ケーマ)高原防衛線布陣完了。 但し第23、第39集団軍(軍団)は壊滅状態、実質戦力は第16集団軍のみです」

「米第8軍団、韓国第9軍団、慈江道(チャガンド)=平安北道(ピョンアンプクド)間の鴨緑江(アムノクガン)防衛線への再配置展開完了。
米第1海兵遠征軍、東港(トンカン)上陸を敢行、損耗率8%  米第3海兵遠征軍、荘河(チョワンホー)上陸完了。 損耗軽微」

「遼東半島、中国第4野戦軍、補給完了。 但し第56集団軍、戦力38%減。 第61集団軍、戦力43%減。 韓国第5軍団と共に瓦房店への展開が完了しました。 
日本軍第6軍、千山北部に第9軍団、南部に第11軍団が再配置完了」

「太平洋艦隊第1艦隊(米第7艦隊)、及び第3艦隊(韓国西海艦隊)、黄海にオン・ステージ。 第2艦隊(日本第2艦隊)、渤海湾へ突入開始しました!」

「第4艦隊(日本第3艦隊)、第5艦隊(韓国東海艦隊)、東朝鮮湾に到達。 支援攻撃開始!」


―――この数日のお蔭で、仕切り直しが出来た。

国連軍太平洋総軍・第11方面軍(軍集団)司令官、アーノルド・フレデリック・バークス大将(米陸軍)は、ようやくの事でここ数日張りつめていた気をホッと抜ける気がした。
先月来、繰り返し侵攻してきたBETAの攻勢によって南部満州は失われた。 中韓国境線、そして遼東半島で熾烈な防衛戦が展開されていたのだ。
だがここにきて数日、BETAは不気味な沈黙を保っている。 不気味ではあるが、兵力の再転換を行えた事は助かった。

無論、完璧などとは程遠い。 
主防衛線である中韓国境線には信頼できる米第9軍から第8軍団を。 そして韓国軍の最精鋭・第1軍と、歴戦の第3軍から第8軍団を配した。 
そして本国から毟り取った第1海兵遠征軍も投入した。

遼東半島は防衛線距離に対して、異常な程の兵力を投入している。 第1海兵遠征軍に続いて、虎の子の海兵隊第3海兵遠征軍を強行上陸させた。
そして日本から遣って来たばかりだが、戦歴の長い精鋭部隊である日本陸軍第6軍を丸々投入したのだ。

海上支援戦力も持ち得る限りを投入している。
合衆国海軍最強の第7艦隊の他、日本帝国海軍から2個艦隊と、韓国海軍の両海艦隊(西海、東海) 都合5個艦隊―――中国北洋艦隊は全滅していた。

(・・・だが、万全と言う訳ではない)

海岸線の低地を背後に控える国境線東部の長白・咸鏡戦線、そして黄海沿岸の平野部を控える西部の鴨緑江戦線、この両戦線には精鋭部隊を配しているが。
険しい山並みが続き、それ故BETAの侵攻脅威度と侵攻速度の双方が低いと見積もられる中央部の蓋馬高原防衛線には、ようやく逃げ込んで来た中国第1野戦軍(実質1個軍団)しかいない。

遼東半島にせよ、当てに出来るのは日本軍の第6軍と、荘河に上陸した第3海兵遠征軍だけだ。 
中国第4野戦軍は第1野戦軍同様に酷い有様だったし、辛うじて遼東半島に逃げ込んだ韓国軍大陸派遣第5軍団は、撤退の最中に散々に叩かれている。
両軍合わせて1個軍団を維持出来るといった程度だった。


(が、やるしかあるまい・・・)

手持ちの兵力は、数の上では各兵種合わせて32個師団に上る。
だが、実際に当てに出来るのは米陸軍の3個師団と海兵隊の2個師団、日本軍の8個師団、韓国軍の9個師団の22個師団。
中国軍と韓国軍の満洲派遣師団を併せた10個師団は最悪、数の上だけと考えねばなるまい。 

「現在、BETAの主攻勢ルートは3ルートです」

プロジェクターに映し出されたデジタル戦域MAPを操作しつつ、G3(作戦主任参謀:司令部作戦参謀部長)が状況を説明する。

「第1は長白山脈から咸鏡山脈への侵攻BETA群。 主にH19・ブラゴエスチェンスクハイヴからのBETA群、追加を含め約3万8000
一部は一旦北上し、豆満江沿いに侵攻。 琿春(フンチョン)を突破し、ウラジオストーク方面へ侵攻が確認されました。 数は約4000」

長白・咸鏡方面のBETAは総数で約3万4000となった訳だ。 極東ソ連軍には迷惑だろうが、支えて貰うより他に無い。

「第2は龍崗山脈を越えて慈江道・平安北道の鴨緑江防衛線突破を目指すBETA群。 H18・ウランバートルハイヴからです。
数は一時2万を割りましたが・・・ その後増えております、現在確認した総数は約3万6000」

ここが最も深刻だった。
BETAの数が多い上に、山岳防衛線を突破されれば韓国の首都・ソウルまで平野部が広がっている。
その様な事態になれば恐らく、韓国政府は南部へ遷都するだろう。
―――最後は遼東半島。

「第3は遼東半島。 千山の北部へH14・敦煌ハイヴからの個体群、これも一時かなり削りましたが、その後増加傾向にあります。 約2万7000
こちらには鴨緑江防衛線前面のBETA群の一部が、千山南部に回り込んでおります、約5000」

11軍司令部の目論見としては、出来るだけ鴨緑江前面のBETA群を遼東半島方面へ誘引したい考えだった。
防衛線の中では最も重要である(突破されれば、平壌・ソウルまで平野を一直線だ)鴨緑江防衛線を維持し、出来る限りの火力でBETAを殲滅したい。

―――その為に海上支援戦力の大半、米第7艦隊に日本第2艦隊、韓国西海艦隊を黄海と渤海に集中展開させている。
陸上兵力も日本軍の2個軍団(第6軍)に、中韓連合の1個軍団、そして第3海兵遠征軍(第3海兵師団主力)を展開させた。 
4個軍団相当の戦力だ、一半島の守備戦力としては破格の兵力だ。―――1秒でも長く、BETAの攻勢に耐えて貰う為に。


「ところでG4(後方主任参謀、司令部後方参謀部長)、蓋馬高原への補給はどのような進捗だ?」

バークス大将は傍らの幕僚団の中から、後方支援・兵站の全計画を掌握するG4(後方主任参謀)へ問うた。

現在、中国軍は戦術機関係以外の兵站が破綻している。 戦車や自走砲、はては機関砲弾や小銃弾に至るまで、旧「西側」諸国軍とは規格が違う。
大連の統合兵站基地を空にする程の勢いで補給を進めているが、遼東半島の第4野戦軍は兎も角、蓋馬高原の第1野戦軍は兵站残量が危機的な状況だった。
中国第1野戦軍が戦力として当てに出来ると出来ないとでは、状況は大きく違う。 が、帰ってきた答えは捗々しくは無かった。

「・・・残念ながら、予定を大幅に下回っております。 現在の補給率は43%、これは当初予定していた達成率から42%下回ります」

「43%だとっ!? どう言う事だ!?」

合衆国の兵站計画基準で言えば、最早計画自体が破綻しているに等しい。
思わずG4を責めるかの勢いで(実際、叱責されてもおかしくは無い数字だ)バークス大将は語気を荒げる。
予定では、今日の時点で85%まで兵站補給を完了している筈であった。 であれば、火力量でBETAを押し止められると言うのが、司令部の結論だったのだ。
周囲の同僚達からの視線も感じながら、G4が答える。

「小官の不手際を弁明するのではありませんが・・・ 
蓋馬高原への補給路は、平壌から北上して安州(アンジュ)で清川江(チョンチョンガン)沿いに北東へ向かう高原ルート1本のみです。
鉄道線路は慈江道(チャガンド)の道都である江界(カンゲ)までは複線ですが・・・ そこから先へは単線が2路線のみ。 
そして両江道(リャンガンド)へ向かう線路は有りません」

「・・・むう」

「山間部の道路は、トラック1台が通れる幅しかありません。 しかも所々で線路の路盤や道路の地盤の補強工事が必要です。
無論、それらも並行して総力を挙げて行っておりますが、片道300km以上の補給路行程の大半がそのような状況です。 部下達も必死なのですが・・・」

陽気である意味、能天気とも言える合衆国陸軍鉄道輸送部隊や、土木作業のプロフェッショナルである工兵隊でさえ、困難を覚えると言う。
韓国陸軍の輸送部隊や工兵隊、日本帝国陸軍鉄道連隊も出張っての吶喊作業が行われているが、今になっても間に合っていない。

更に横合いからG1(行政・人事主任幕僚、司令部行政参謀部長)が口を挟む。

「閣下、問題は補給路のハードだけではありません。 防衛戦区に指定された北部4道(咸鏡北道、両江道、慈江道、平安北道)の住民疎開が混乱しております」

「・・・韓国政府は、責任を持って完遂さすと言っておったが・・・」

「当てにはできません。 防衛戦区である4道の人口は約460万人。 
北部の人口約2800万人(韓国全体は約7600万人)の大半が平壌を中心とする平野部に固まっているとはいえ、小国の人口に匹敵します。
しかも、南部に比べて社会インフラ整備が遅れた地域でもあります。―――実は、補給路の基点である安州に避難民が殺到しております。
平壌と安州間の鉄道路線が麻痺状態で、兵站物資は江界どころか安州にさえ蓄積できていない有様なのです」

実際、その影響は平安北道に展開する米第8軍団へも顕れているのだ。 第8軍団長のレスター・シモンズ中将からは、兵站補給について矢の催促が来ている。
―――だが、進捗しない。 客車(避難民輸送)と貨物車(兵站輸送)とで、牽引車両を取り合っている現状では! それに路線も飽和状態での運行だ!


司令部の空気が重くなってきたその時、1人の通信参謀が飛び込んできた。 通信参謀部長に通信紙を手渡す。
一瞥した通信参謀部長が顔色を変える。 鉛を飲み込んだような表情で、バークス大将へ顔色を失いつつも報告した。

「閣下、最悪の事態が発生しました。―――列車の衝突事故です。
安州駅の5km南で避難民輸送列車と、兵站輸送列車が正面衝突。 兵站列車に満載されていた150トンもの弾薬類が誘爆しました。
他にディーゼルオイル、ガソリン、軽油、戦術機用推進剤・・・ しめて100トン。
避難民、約2000人が爆発に巻き込まれて死亡したとの報告が・・・」

「・・・何故だ?」

バークス大将の顔色は蒼白に近かった。

「平壌から安州までの間は、線路は複々線の筈だ・・・ なぜ、事故が起きた・・・?」

「報告では、避難民の間に暴動の予兆が。 現地の民生部門が勝手に軍需用路線に割り込ませたようです、しかも反対の下り線に・・・ 辺りはクレーターの様相だと」

弾薬150トンに、各種燃料100トンが誘爆―――駄目だ、安州への輸送路は途絶した。

「・・・他に輸送路は?」

バークス大将は、腹から振り絞るような声でG4に確認する。

「地方の路線を総動員すれば、あるいは・・・ しかし、そこも避難民がごった返しておりますし・・・」

「やるのだっ!!」

司令官の怒声に、司令部要員全てが思わず背筋を伸ばす。
顔面を朱に染め、目を吊り上げている司令官―――バークス大将にはそれでも、政治・軍事両面を把握しないとなれない(戦馬鹿ではなれない)合衆国将官としての状況把握が有った。

「何としても国境線防衛を完遂するのだ! さもなくば、この国は早晩BETA共の手に落ちる。
そうなれば極東防衛線は、一気に日本帝国本土となる!」

(―――それは、拙い)

あの国は、無意識にアメリカに対する反感を根強く持っている国だ。 中国、韓国両国に対する歴史的な意識も多分に残っている。
経済と軍事力は1流でも、国内情勢は不安定。 外交は2流か3流。 そんな国が主戦場になってみろ。
バンクーバー条約に批准しているとは言え、どこまで国連軍の―――極東では、日米安保により米国軍の―――指揮下で命令に従うか。
心許ない、全くもって心許ない。

(あの国は、後方兵站基地として機能する事がベストなのだ。 合衆国の負担を軽減する為にも。―――主戦場とすべきではない)

あの国が戦場となれば、戦力的な面から恐らく長くは保つまい―――中国軍でさえ、この有様なのだ!
そして国連軍太平洋方面第11軍―――実質、合衆国太平洋軍―――には、陥落した場合のあの弧状列島を奪回するだけの戦力は無い。
最終局面では恐らく、損害軽減の為に撤退もオプションの一つとして考え得る。 国防省は、連邦政府は、そして議会はそれを承認するだろう。
―――予想される奪回作戦の戦力保持の為にも。 だが、それには多大な犠牲が付きまとう事となる。


「何としても、国境線で喰いとめるのだ!」


失敗すれば、ホワイトハウスの極東戦略のタイムスケジュールが大幅に狂う事となるだろう。

(―――そうなれば、最早ペンタゴンは俺を庇うまい) 

本国召還、調査委員会にかけられた後に予備役編入、そんな楽しからざる未来はご免だった。












1997年2月15日 1350 遼東半島 瓦房店北東15km 日本帝国陸軍第9軍団・第14師団戦区


≪CP・ゲイヴォルグ・マムより『ゲイヴォルグ』、峡谷内にBETA群侵入! 迎撃命令出ました! 戦区の残存BETA数、約1万! 
大隊前面BETA数、約2200! 進入経路、N-55-22からN-48-21へ! 迎撃はN-46-19からで頭を押さえられます! 光線級に注意を!≫

大隊CP・江上聡子中尉のオペレーションが入る。
網膜スクリーンに大隊長・広江直美少佐が現れる。 流石に『満洲の女帝・女傑』と呼ばれた歴戦の衛士、目前に迫るBETAの大群を前に顔色一つ変えていない。

『ゲイヴォルグ・リーダーよりCP、了解した。―――大隊! これからメインディッシュに取りかかる!
先鋒は周防、貴様の3中隊、『フラガラッハ』だ! 右翼は『ゲイヴォルグ』が張る。 源! 2中隊、『グリューナク』は左翼に展開!
フォーメーション・ウイング・ダブル・ファイブ! BETA共を海岸部まで押し返すっ!』

『了解! グリューナク・リーダーより各機! 『フラガラッハ』左後方50に占位!』

『ゲイヴォルグ各機! 『フラガ』の右後方40に占位しろっ! 側面の斜面に警戒しろよ!? 前が詰まると後ろから戦車級がはみ出してくるぞ!』

上官と先任の声を聞きながら、毎度のことながら先鋒役を任された周防直衛大尉は一息大きく深呼吸し、気合を入れる。 そして―――

「フラガラッハ・リーダーよりフラガラッハ各機、毎度の先鋒役だ。―――先頭の突撃級は全て喰え! 余所の中隊にご馳走は渡すなよっ!?」

『『『―――了解!』』』


3個中隊、36機の疾風弐型(F/A-92E)がサーフェイシングで高速移動。 3つの鶴翼を形成してBETA群に向かう。
比較的底の浅い峡谷を縫う様に移動する。 下手に高度を上げれば、たちまち光線級に狙い撃ちされてしまう―――頭上にレーザー照射が飛び交っていた。
暫く異動したその先に、目指すBETA群、その先頭集団の突撃級BETAが突進してくる様が目視できた。 その数、凡そ150

≪フラガラッハ・マムよりフラガラッハ01へ! 先頭の突撃級、個体数152! 彼我の距離1800m、時速110km/h! 接触は30秒後!≫

―――突撃級が150程。 悪くない。 この地形だ、斜面の傾斜を上手く利用すれば背後に回り込むのはさほど困難ではないだろう。
3個中隊で有れば、殲滅に要する時間はさしてかからない筈だ。

≪中衛の主力は要撃級350、戦車級約1000! 他の小型種が600から700、光線級は現在22体を確認しました!
距離3300m、時速60km/h、接触は2分54秒後。 後衛は確認されず! 要塞級、重光線級は確認されず! ―――以上です!≫

第3中隊CP将校である渡会美紀少尉の緊張した声が伝わる。
初陣衛士同様、戦場に不慣れなCP将校はリアルタイムで刻々と変化する戦況の把握を捉えきるのが難しい。
専門教育を施され、訓練を積んできたとは言え、やはり場馴れの違いがある。 部隊にしても、CPにパニックを起こされたら戦況把握が不可能になってしまう。

―――接触まで20秒

「フラガラッハ01了解。―――マム。 今回、戦闘管制中に舌を一度も噛まなかったら、帰還後に特配の甘味物をやろう。 どうだ?」

≪はえ!?―――ちゅ、中隊長!?≫

中隊長の周防大尉が突然、笑いを込めて振ってきた話に、渡会少尉が素っ頓狂な声を上げる。

『そりゃいい! 俺も一口乗りますよ!』

陽気な声で便乗するのは、第2小隊長の摂津大介中尉。

『ついでに口籠らなければ、酒保で菓子でも奮発してやるぞ?』

悪戯っぽい笑みを浮かべる第3小隊長の最上英二中尉。
上官3人にからかわれ、その事に気付いた渡会少尉が顔を真っ赤にして抗議する。

―――接触まで10秒

≪だ、大丈夫ですっ! それに、私そんな子供じゃありませんっ!!≫

「そうか? なら要らないのか、残念・・・ じゃ、渡会を抜いた中隊の面子で・・・」

≪あっ! あうっ!≫

渡会少尉が思わず情けない声を出す。
そんな遣り取りを聞いていた中隊の面々から忍び笑いが漏れる。

―――接触まで5秒

「美味い酒に食い物、好きな相手! あり付きたければ生き残れっ! ―――来るぞっ! 中隊、攻撃開始! つっかかるなよ!? A小隊、節足部を狙え!」

『B小隊! 吶喊は無しだ、足を撃ち抜けっ!』  『C小隊、距離を保てよ―――撃てっ!』

12機の疾風弐型から120mm砲弾が、36mm砲弾がBETA群に叩きつけられる。
開けた場所なら、B小隊(突撃前衛)を破城鎚として突破口を開け、そのまま背後に回り込むのだが今回は陣形が迎撃陣形だ、それは出来ない。
接触から数秒後、第3中隊『フラガラッハ』は突撃級との距離を保ちつつ、後退しながら射撃を続ける。
左右の両翼では、第1と第2中隊が斜面も利用しながら、側面から砲弾を叩きつけている。

機動しながらの中・遠距離射撃は命中精度が落ちる。 余程機体制御と射撃の反動を上手く利用しない限り、砲弾は明後日の方向へ飛んで行ってしまう。

「機動射撃はするな! 但し、一斉射に2秒以上かけるな! 二斉射以上はやるな! 直ぐに距離を取れ、足を止めるなよ!?」

自身も突撃砲を操り120mm砲弾を叩き込みながら、周防大尉が中隊に指示を飛ばす。
古参連中は問題ない。 やるべき事は承知しているし、これまでも散々叩き込まれてきた連中だ。
問題は経験の浅い部下達。 特に昨年の10月に訓練校を卒業して配属された新任が2人居る。 
特性もあるが、部下の負担を増やしたくない事から2人ともA小隊―――中隊長直率の小隊に配していた。

「八神、松任谷を押さえておけ。 前には出すな」

『了解です。―――04より10、松任谷! ランチャーを抱えた制圧支援機は機動性がすこぶる落ちる! 最後尾から動くなよ!?』

『―――了解』

打撃支援を行う04、八神涼平少尉が新任でエレメントを組む松任谷佳奈美少尉に注意を促す。
最も、表情の読めない―――いや、年と経験の割に冷静と評価される松任谷少尉の声は素っ気なかったが。

突撃級が5匹、A小隊とB小隊の間に割り込んでくる。
正面から抑えるのは無理だ、距離が無い。 後退するにも、そろそろ予定地点が迫っている。―――となると。

「右から突っ込むぞ! 小隊、咄嗟射撃!」

言うなり、隊長機を先頭に突撃級の群れの中に突っ込んで行く。
スラスターを吹かして機体をスライドさせ、突進を交わしながらダッシュ―――すれ違いざまに36mm砲弾を柔らかい側面の腹部や節足部へ叩き込む。
隊長機に続く強襲掃討任務機―――フラガラッハ07―――が、反対側の突撃級へ2門の突撃砲から36mm砲弾を浴びせかける。
続行する04、打撃支援任務の八神少尉機が前の2機が空けた穴を拡張しつつ、左右に射弾を叩き込んで行く。
最後尾の松任谷少尉機は他の3機の様な小刻みの機動はせず、一直線に続行しつつ、まだ蠢いている左右の突撃級へ砲弾を叩き込む。
―――ランチャーを背負ったままの機体では、機敏な戦闘機動は出来ない。

突破した後では、5匹の突撃級BETAが側面を穴だらけにされて停止していた。

『ぜっ! はっ! ぜっ!―――このっ!』

背後のエレメント機から、荒い息と声が聞こえる。 周防大尉とエレメントを組む新任の衛士だ。
ふと、戦術戦域MAP上で左右の第1、第2中隊が動き始めた様が確認出来た。

(そろそろ決めるか? 大隊長・・・ 源さんの『グリューナク』も動いた。 ここで一気に包囲殲滅するか―――間に合うか?)

接敵から凡そ2分が経過した、残る突撃級は50体弱。 ここで背後を取れば一気に殲滅は可能だ。 残された時間は・・・

≪CP、フラガラッハ・マムよりフラガラッハ01! 後続の敵主力、距離1000! 1分後に接敵します!
光線級は最後尾に27体を確認! 注意して下さい、連中、距離を保っています!≫

CPの渡会少尉から後続集団の情報が入った。 どうやら本当に、早々に突撃級を始末しないと厄介な状況に陥りそうだった。

『ゲイヴォルグ・リーダーより各機! 殲滅するぞ! 『ゲイヴォルグ』! 『グリューナク』! 前に出ろ!
周防! 『フラガラッハ』はこのまま底を護れ! 団体がご到着前に、突撃馬鹿を始末するぞっ!』

広江少佐の指示と同時に、2個中隊が左右を突進して突撃級の裏を取る。
同時に周防大尉は指揮下の中隊に一定距離を取らせ、包囲網を完成させた。

『ゲイヴォルグ、食い放題だ! かかれ!!』

『グリューナク・リーダーより各機、無理はするな! だが殲滅しろっ!』

(・・・全部食っちまいそうな勢いだな、大隊長は。 それに『無理はするな』なのに、『殲滅しろ』とは。 源さんも言うようになったよ)

噴射炎をあげて突進する僚隊を見つつ、周防大尉は場違いな感想に思わず苦笑する。
同時に戦域MAPを確認、更に部下の機体のステータスチェックとバイタルチェックを素早く済ませる。
―――大丈夫だ、全員問題無い。 エレメントを組む07がやや興奮状態ではあるが。

「フラガラッハ・リーダーよりフラガラッハ各機、このまま底を護るぞ! 最上! 摂津! 最後まで気を抜かせるなよ!?」

『了解です』

『了解! おら! 気を抜いた奴は帰還後に腕立て100回だ、いいな!!』

比較的冷静な最上中尉に比べ、摂津中尉の姿に思わず過去の自分の姿を重ねてしまう。 言ってみれば彼は『孫弟子』か。 

(―――そんな所まで影響受けんでもよかろうに・・・ と言うより、あれは美園の影響が大だな)

自分の小隊を確認する。
先任の八神少尉は落ち着いている。
松任谷少尉は・・・ ポーカーフェイスだが、バイタルは誤魔化せない、やや興奮状態か。 だが規定範囲内だ、OK
残る一人は・・・

「・・・10、落ち着け。 俺より前に出るな、俺の機動を確認して動け。 決して独りで戦うな」

『ぜっ はっ・・・ だ、大丈夫ですよ、中隊長! 俺は大丈夫ですっ!』

そう言いながらも、フラガラッハ10は突撃砲の36mm砲弾を無暗に―――突撃級の装甲殻に当てている。 あれでは弾き返されるだけだ。

「馬鹿、36mmで装甲殻は射貫出来ないと言っただろう。 節足部を狙え! 何度も同じ事を言わすな!―――帰還したら、腕立て200回だ。 いいな? 秋よ?」

『指揮官横暴・・・「何か言ったか?」・・・いいえ! 周防少尉、節足部を狙いますっ!!』

エレメントを組む新任衛士―――周防直秋少尉機の射弾が突撃級の節足部に集中し始めた。 1匹の突撃級がつんのめって停止する。


確認の間も同時に攻撃を行っていた周防大尉は、突撃級の後ろに回り込んだ2個中隊の攻撃で突撃級が急速に数を減じたのを確認した。―――先頭集団の殲滅は完了した。

部下達が集まってくる。

『秋よ、ちっとは松任谷を見習え。 こいつは至って冷静だったぞ?』

『八神少尉、松任谷は冷静じゃなくって、元々表情が無いんですっ!』

『・・・周防、後でシメる』

『中隊長をか?』

『・・・覚えておきなさい?』

―――部下達の会話を聞きながら周防大尉は、これは早々に部隊間異動して貰わなければな、と思った。
身内が同じ中隊に居るのは何かと拙い。 しかも練度と編成の都合とはいえ、自らのエレメントとは。

(・・・大隊長の隊にトレードに出すか。 向うで扱いて貰うのも手だな)

かつて自分がそうであったように。
何、あいつは自分より図太い所が有る。 あの『夜叉姫』の元でもやっていけるだろう・・・

『松任谷! 大体、お前は訓練校時代から・・・!』

『・・・言い訳はみっともない。 それでも男?』

従兄にあたる中隊長の思惑など知らず、まだ実戦経験の少ない周防直秋少尉は戦闘の興奮を持て余していた。―――どうやら松任谷少尉もそうであるようだったが。

「おしゃべりはそれまでだ! 中隊、これからが本番だ。 
狭い峡谷だ、油断するとあっという間に集られて死ぬ。―――来たぞっ! 制圧支援開始っ!」

『10、FOX01!』 『12、FOX01!』

2機の制圧支援機が多目的自立誘導システムから、一斉にミサイルを射出する。 第1、第2中隊の制圧支援機もミサイル発射を開始した。
192発の小型誘導弾が白煙をあげて飛び去ってゆく。 暫くして光線級の迎撃レーザー照射が始まった。

『フラガラッハ! 突っ込め! 光線級を始末しろっ!』

大隊長・広江少佐が叫ぶ。 狭い地形、全力制圧支援、密集状態のBETA群、迎撃レーザー照射―――この12秒で決まる!

「フラガラッハ全機! 今だ、跳べ! 高度50!」

12機の疾風弐型が跳躍ユニットのAK-F3-IHI-95Bを点火させてBETA群の頭上を飛び越す。―――インターバルの12秒だからこその芸当。
一気に後方まで跳躍した第3中隊、『フラガラッハ』の目の前に、無防備な光線級が現れた。 他の小型種もいるが、戦車級以外は無視しても構わない。

「光線級を平らげろっ! 他は『ゲイヴォルグ』と、『グリューナク』に任せておけ! ―――かかれっ!」














1997年2月16日 0010 国連統合軍太平洋総軍 太平洋方面第11軍(軍集団)司令部 朝鮮半島・平壌


「閣下! 鴨緑江戦線と蓋馬高原戦線の間が、BETAに破られました!」

情報参謀が凶報を持ち込んだのは、日付が代わって間もない頃だった。
それまで、戦況はなんとか想定通りに進捗していたのだったが・・・

「状況は!? どこの部隊が破られた!?」

バークス大将は眼を血走らせた状態で聞き返す。 視線は戦略戦況MAPに張り付けのままだ。

「韓国軍の第11軍団です。 満洲からの引き上げ部隊で、戦力は60%にまで落ち込んでいました。
地中侵攻を喰らったようです、10分前の交信以降、軍団司令部とは音信不通です。 恐らくはもう・・・」

(・・・壊滅、全滅か)

拙い状況だ。 鴨緑江防衛線と蓋馬高原防衛線の後背に回り込まれてしまう。
特に蓋馬高原。 中国第1野戦軍はこのままでは壊滅してしまう。 そうなれば、咸鏡戦線が孤立する!

「・・・戦略予備の韓国軍第3軍の残りを急派しろ。 それから遼東半島の第3海兵遠征軍を呼び戻せ、東港に投入する」

「閣下、それでは遼東半島が手薄に・・・! それに一度上陸した海兵隊の急速配置転換は困難です!」

「やるのだっ! 何としても穴を塞げ! 海軍に連絡だ、全力支援を乞う、とな! 急げ!!」



―――ひとつの穴が空いた。 大きな穴だ。 それがどう変化をもたらすか、未だ混沌としていた。



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