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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 帝国編 3話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/30 05:15
1997年2月10日 1330 遼東半島 蓋州西南西50km 半島北部防衛戦 第14師団防衛戦区


外気温、マイナス10.5℃。 4年前より寒くなったと感じるのは気のせいではなさそうだ。

「年々、世界的に寒冷化して行っているね。 
2酸化炭素の排出量も有るだろうけれど、ユーラシアの平坦化が進んで北極圏からの寒気がまともに南下してきているしね」

対面でコーヒーモドキを飲んでいる源さんも、テントの外の景色―――粉雪の舞う寒々とした光景を見ながら遣り切れなさそうに言う。
今日はまだ『仕事』の出番が無い。 いや、ここ数日『向うさん』は大人しいものだ。―――この後が怖いが。

「そう言や、周防さん。 アンタは欧州方面に行ってたんだって? 向うも寒いのかい?」

同じテント―――仮設戦闘指揮所―――で暖を取っていた戦車隊指揮官、第14機甲連隊第1大隊『スティールガンナーズ』の2中隊長(大尉)が話を振ってきた。
俺達第3戦術機甲大隊と協同して、戦闘団を組んでいる部隊の指揮官だ。

「ええ。 と言っても戦場は殆ど地中海方面でしたから。 割と暖かなものでしたよ。
北海戦線じゃ、洒落にならない気温だそうですが・・・」

近年、大西洋のメキシコ湾流の流れが少し変わってきているらしい。 
不凍港のスカンジナビア西岸(旧ノルウェー)でも、北の方は結氷するようになったらしい。
もっとも、9世紀から10世紀にかけても同じような気象だったそうで。 BETAがどうこう言う訳でもなさそうだが。

「そうかい。 しかしま、何だな。 戦場は南下してくる一方だが、お陰で凍結故障の心配が下がっただけはマシだな?」

「洒落にならないですよ、それ・・・」

「帝国の装備は、寒冷地仕様が当初不十分でしたからね。 92年や93年頃は随分と泣かされましたね・・・」

戦車隊の大尉の言葉に、源さんも当時の苦労を思い出して顔を顰めている。
大陸派遣が決定した91年の冬など酷かったらしい。 何せ戦術機の損耗の1/3以上が、寒冷地仕様の不備での故障と言うものだったのだから。
俺が以前満洲に居た当時、92年から93年の冬も洒落にならなかったが、あれでも対策はしていたと言うしな。

その点、ソ連軍は戦術機の寒冷地対策は1歩も2歩も進んでいる。 流石は冬の国。 中国軍も負けず劣らず優秀だ。

急に寒さを覚える。 強化装備の上に防寒ジャケットを着こんじゃいるが、それでも寒い。
急造のストーブ(整備隊が自作してくれた)に掛けてあるポットから、コーヒーモドキをカップに注ぎ、一口飲む。 ―――不味いが温まる。


「でもなあ、故障率は多少改善されたが・・・ 問題は補充だよ、補充! 
あんたら戦術機部隊は優先補充が有るけどよ。 俺達戦車乗りはその次だからなぁ・・・」

「まだ来ませんか? 補充・・・」

「・・・来ないねぇ。 ま、ぼやいてもしょうがねぇ。 何とか手を打ってはいるさ、いつ来るかわかんねぇけどよ」

富士学校の下士官特技教育課程も、無制限に枠を広げる訳にもいかないしな。
戦線が崩壊したり、崩壊しなくとも戦況が不利になったりで真っ先に人的損害、それも特技章持ちの損害が大きいのが機甲科だ。

何せ、BETAに差し込まれたら逃げようがない。 
要塞級や重光線級と言った、『鈍足』連中以外はほぼ、戦車より足が速い。 最高速じゃ無くて、不整地での走破能力の高さの事だが。

「まったくよ、頂けぇなぁ・・・」

そう悔しそうにそう呟いて、戦車隊の大尉はテントを出てゆく。
こっちにしても人事じゃない。 支援砲撃車両の減少は戦術機部隊にとっても死活問題だ。



「戦車隊もそうだけど、僕らもね。 幸い、ウチの大隊は損失出していないけれど。 第1、第2と第5は1機、2機損失出しているし。
今のうちに補充は欲しい所だね・・・」

「そうですね。 エレメント組むと組まないでは大違いですし。 何か話聞いていますか?」

「いいや、何も。 周防君、君は?」

「同じです。 大隊長も、旦那(藤田先任参謀)の筋からの情報も無いって、こぼしていましたよ」

旅団5個大隊の内、現時点での損失は4機。 戦死は2名、重傷2名。
ここまでで済んでいるのが奇跡的な程、損失は少ない。

しかし今回、予想以上に長丁場になりそうだった。 できれば小康状態の今のうちに補充は済ませておきたいのが、指揮官連中の儚い願いだ。

―――シュン シュン シュン

湯気の音だけがやけに響く。
外は相変わらずの粉雪だ。 積雪する程の降雪量じゃないが、気温の低下はこれ以上は拙いか?
戦術機の各部がそろそろ酷使と相まって、金属疲労を起こしそうで気にかかる。 整備の連中もヤキモキしている。

ふと、ディーゼル音が聞こえてきた。 これは4スト、案の定高機動車が1両走ってくる。
やがてテントの前で停車すると、数人の将校が降り立ってきてテントの中に入ってきた。



「ふう、流石に寒いな」

先頭の1人は大隊長の広江少佐だった。 残るは大隊幕僚の中尉連中だ。

「高機動車は吹きっ晒しですからね。 どうです、コーヒー?」

「ああ、貰おう。 皆にもな」

サービスだ、全員の分をカップに注いで渡してやる。
皆が折椅子に落ち着いてコーヒーを口につけるのを待ってから、源さんが切り出す。

「で、どうでした? 旅団本部の方は・・・?」

「・・・攻勢は不可だ。 このまま受け身で持久する。
連中が小休止ならそれで構わん、寧ろ有り難い。 その時間で避難と撤収が進む」

「工兵の連中に聞きましたが、この3日で『悪魔の園』も8割方が敷設完了したそうです。
今日1日あれば、回廊の縦深陣地全域に敷設完了とか。 もう4、5日は粘れそうですね」

「周防、『悪魔の園』は1層でか?」

「いえ、2層だそうで」

その答えに、広江少佐も人の悪い笑みを浮かべる。

―――『悪魔の園』

元々は第2次大戦期に欧州戦線や北アフリカ戦線で言われ始めた言葉だ。
人の神経を逆なでする、あらゆるトラップを仕込んだ地雷原の事なのだが。

BETA相手の今の戦争では、防衛線前面に敷設する対BETA地雷原をこう呼ぶ。
2層で、と言うのは。 対大型種BETA用地雷4割に、対小型種BETA用地雷6割を敷設した上に土砂を被せ。
その上に対大型種用8割、対小型種用2割の割合で敷設する。

それも全域に渡ってでは無く、一部『回廊』―――地雷を敷設しないスペースを設定しておく。
地雷原の中でBETAをそのスペースに誘導する為だ。 因みにアンブッシュ部隊は、そのスペースを火制範囲内に収まるように配置している。
わざと無防備なスペースを作りだす事で、こちらに有利なキル・ゾーンを形成するのだ。

それも地雷原が1層か、2層かで効果が全く違ってくる(1層だと、前衛の突撃級が粗方引っかかって潰してしまう)
広江少佐がニンマリしたのは、工兵隊の苦労と頑張りのお陰で次の戦闘が随分楽しそうになったからだ。

「よし。 兵站(大隊第4係(兵站)主任幕僚) 後でな、ウチからだと言ってな、工兵に差し入れしておいてくれるか?」

「了解です。 何、ここまで撤収する途中で酒樽満載したトラック数台、確保しましたから」

「おいおい、そりゃマズイんじゃないのか? 民間の物だろう? 後で訴訟起こされたら面倒だ」

兵站幕僚の発言に、人事(大隊第1係主任)幕僚がビックリして問い質す。
第1係は庶務も兼務だから、この手の無許可徴収に相当する事には敏感だった。

「大丈夫。 取得物の1割は拾った者の権利だ。 なあに、連中だって馬鹿じゃない。 途中損失分はおり込み済だろうさ」

兵站は気にも留めない。
主計将校は兵站学校で民事や商法、その他の法律も学ぶから、その抜け道か?

「いずれにせよ、部隊の連中が勝手に手を出さないように、気をつけなきゃならん・・・」

「うん、その通り」

「・・・周防大尉、その中にはあなたも含まれるのですが?」

「なんでっ!?」

俺の驚きに、運用・訓練担当の第3係主任幕僚が頭を抱える。 ―――そこまでうんざりした顔しなくても・・・

「・・・しょっちゅう、部下を引き連れて脱柵(無断外出)しているのは、何処のどなたですか?」

「コミュニケーションは大切だぞ?」

「軍紀はもっと大切です!! 勘弁して下さいよ、取り締まるこっちの身にもなって下さいって・・・」

「そうです。 『第3中隊長は無罪放免で、どうして自分たちだけが!』 衛士連中にそう言われると、こっちも言い訳に困ります!」

人事と運用に揃って言い詰められて、ちょっと返答に窮する。 
いや、別に無罪放免じゃないぞ? 大隊長からお小言と始末書の山を申し付けられているぞ?
と、その時ニヤニヤしながらその光景を眺めていた大隊長が、おもむろに宣告した。

「皆、大丈夫だ。 今後、3中隊長の脱柵については、2度と無かろうよ」

「「「「「 はっ!? 」」」」」

5人そろって―――幕僚たちと俺―――首を傾げる。 自分で言うのも何だが、一体どうやって?

「ある事無い事、13中隊長(第1大隊第3中隊長)に話しておいたからな。 なに、こいつは早々に尻に敷かれている男だ。
何かあったら、彼女に話を通した方が早い。 だろう? 周防?」

ぬぐ、言い返したい。 言い返したいが、言い返す程の度胸が無い自分が情けない・・・

「・・・因みに、長門君はあれやこれやと理由を付けて、表向き利口にやっているらしいよ?」

―――三瀬さん情報ですか。 圭介と同じ大隊だし。 と言うか、そこで止め刺さんで下さい、源さん・・・



「ま、周防大尉をいぢめるのはこの辺にしておいて。 皆、状況確認だ」

―――いぢめるって、最近日課になってませんか?

俺の微かなジト目も気にせず、広江少佐はテント内のテーブル状に作戦地図を広げて状況説明を始める。

「現在の戦線は、蓋州西南西50km地点。 千山山脈の端っこだ」

少佐はそれが重要とばかり、地図上の山脈を指揮棒でトン、トン、と叩いて周りを見渡す。

「千山山脈は、標高こそ1000m級から400、500m級の比較的低山の集まりだが、その姿は急峻な山並みだ。
機甲部隊どころか、歩兵部隊でさえ移動に困難を覚える程にな。 道も狭い。 今までは逆にこの山脈の特性を利用して、防衛線を展開出来た」

その言葉に皆が頷く。 そう、BETAは平坦地を好む。 理由は判らない。 
連中は他に移動個所が無ければ山岳地帯へも進入するが、逆に平坦地が有れば距離のロスなど無視して平坦地を突進してくる特性が有る。

遼東半島はその半ばまでが、中韓国境地帯の龍崗(ロンカン)山脈から続く千山山脈によって南北に分けられている。
そのお陰で蓋州を放棄した現状でも、BETAは南の万福へ南進せず西南西方面―――渤海湾海岸線沿いに突進を続けている。

万福には韓国軍第5軍団が布陣して防衛線を張っているが、この部隊は手酷く叩かれて戦力が半減している。 とてもBETA群の突破阻止戦力にはならない。

後詰には帝国軍第11軍団が居るが、彼等はまず遼東半島南部に居住する民間人脱出の支援と言う厄介な任務が有る。
戦略的に見ればBETA様々だった。 あのまま南進されれば、遼東半島戦線が一気に瓦解する所だったのだから。

―――最も、戦術的・・・ いや、部隊的には有り難くない。 こっちは『圧力』を一手に引き受けているのだし。

俺の内心のボヤキを余所に、広江少佐の説明が続く。

「・・・が、頼もしい千山もここまでで終わりだ。 この先、遼東半島は比較的平坦な地形が連続する。
第1次防衛線の終端は瓦房店(ワーファンティエン) ここで千山山脈は終わり、半島の南北が繋がっている。
幸いにもここまでくれば営口に陣取る光線属種の照射認識範囲外だ。 海上からの支援砲撃は十分望めるし、時間限定だが航空支援も望める」

問題はBETA群前衛と中衛との距離、及び速度差。 そして中衛と後衛のそれによるが。
中衛には光線級が、後衛には重光線級が含まれている事が多い。
前衛の突撃級の群れを捌き切る前に、中衛の本隊に突っ込まれては混戦になれば光線級の排除が難しくなる。
更にそれに手間取れば、前衛の生き残りは奥へ奥へと突進するし、後衛が到着すれば重光線級の『ブッといヤツ』(重光線級のレーザー照射)がお出ましだ。
部隊壊滅パターンのひとつだった。

「その前にここで、可能な限りの持久戦とBETAの数を削る。 
幸い、第2師団が隣接戦区への展開を完了した。 乙編成師団だから、戦術機甲部隊は3個大隊―――1個連隊分だが、他は我が師団と同等だ。
軍団本隊が布陣する瓦房店前面10km地点まで、約40kmを2個師団で守る。 どうだ? 随分な兵力集中じゃないか?」

今回は第2、第14師団が前面に出て、両師団で守る戦域範囲は約40km
各師団20kmの範囲だ、これは十分に戦力を集中出来る。 通常、連隊以上の戦術機甲部隊を含む師団間の間隔は約40~50km  通常の半分を守ればよい。

俺達は中央部を走る千山の山並みに姿を隠し、目前(北の方向)の沿岸部を突進して地雷原に突っ込んだBETAを、支援砲撃部隊(戦車部隊と自走高射砲部隊)が火網に絡め取る。
地雷原を突破したBETA群に対しては、予め標定を完了させている師団砲兵連隊、M110A2・ 203mm自走榴弾砲と90式155mm自走榴弾砲、それにMLRS部隊が制圧砲撃を加える。

俺達、戦術機甲部隊の出番はその後。 地雷原を突破し、火力の制圧攻撃をも潜り抜けたBETA群を、第2師団前面の地雷原到達までの間に可能な限り削り取る。
後は―――第2師団に任せればよい。 最後は軍団本隊―――第3、第4師団が砲門をズラリと敷き詰めて大歓迎してくれる。


「これで、何とかせねばならん。 再度の『特殊爆弾』起爆は、中国軍の反感を増大しかねんからな」

広江少佐の最後の言葉に、皆が神妙に頷く。
1週間前、蓋州放棄の戦いの最後の撤退戦闘で、第6軍司令部命令で行ったBETA殲滅作戦。
何の事はない、S-11弾頭(戦艦用の大型弾頭)を3個セットで1基とし、これを5か所に予め設置していたモノを起爆させたのだった。

起爆装置は単純な時限起爆装置と信号起爆装置を併用したらしいが(保険だ。 どちらかがBETAに齧られたら目も当てられない)
結果として、3基の起爆に成功した(2基はやはり、起爆装置を齧られた様だ)

S-11は戦術核に匹敵すると言われる高性能弾頭だが。 実際にあれだけ狭範囲で集中して起爆さすところは、初めて目の当たりにした。
一瞬、光球が発生したと思ったら次の瞬間、網膜スクリーンの光量調整が間に合わない程の勢いで大きくなって行った。
周囲に特大の土埃を発生させある程度まで成長したその光球は、唐突に消滅し巨大なキノコ雲へと姿を変えた。
と同時に凄まじい轟音が届き、機体の背後から猛烈な勢いで突風が爆発点方向へ吹き荒れていった。

・・・記録映像でしか見た事のない、原爆投下映像。 1944年、ドイツ第3帝国のベルリンとハンブルクへの原爆投下映像とそっくりだった。

後で判った事だが、想定でその威力は正に戦術核並み。 爆発出力は15kt相当、爆発点気圧は40万気圧前後、爆心地爆風圧400万パスカル(1平方メートル当たり40トン!)
そのエネルギーは爆心中心で平方センチ当たり150カロリー、温度に換算して約9000度。 半径500m範囲で約5000度、1km圏で約2700~2800度に達したと言われる。
太陽の表面温度が約6000度と言われる。 その爆発威力の凄まじさが判ると言うものだ。

諸説あるが、一般にダイヤモンドの融点(固体から液体化する温度)は3500から3600度、沸点(液体から気体へ位相する温度)は4800から5000度と言われる。
2000度を越せばダイヤは黒鉛に変わる。 爆心地から2km圏内のBETAは文字通り消滅していた。 気化していたのだ。

直径4kmの円周が接するように3か所。 その範囲内で約2万に近いBETA群が消滅した。
これは遼東半島方面へ進入しようとしてきたH14・敦煌ハイヴからのBETA群、約3万5000の57%に達する。

残ったBETA群も何らかの不具合でも生じたか、怒涛の如く攻め寄せていたのが嘘のように、営口に比較的小規模(旅団規模)の群れを残し、残余は遼河南岸に溜まっている。
何より損害補充でも無かろうが、丹東防衛線前面のH18・ウランバートルハイヴからのBETA群2万5000の内、約1万が遼東方面へ移動している事が確認された。
3つの戦線の内、比較的戦力の薄かった丹東防衛戦線はこれで一息つく事が出来た。―――本当に、一息だけだったが。

今は北部の長白山脈防衛線だけが活発だ。 最も険しい2000m級の山々が連なる山岳戦故、BETAの進撃速度が極端に遅く、今の所防衛は優位に推移している。


「もう一度あの『特殊爆弾』を起爆すれば、中国軍も流石に上の上レベルで黙ってはいないでしょうね」

「しかし、源大尉。 彼等は国内で戦術核を使った焦土作戦を展開した前科持ちです。 
それに4年前の『双極作戦』でも友軍誤爆を気にも留めず、S-11砲弾の飽和砲撃を敢行しました。
あれでどれ程の帝国軍戦力が潰された事か・・・ッ!」

源大尉の達観? に対して、通信・情報を管轄する第2係主任幕僚が噛みつく。
大隊幕僚と同時に、大隊CP将校を兼務する彼女―――江上聡子中尉は中国軍の『身勝手』が納得いかないのだろう。

「・・・江上、その辺にしておけ」

「何故ですっ!? 周防大尉! 大尉だって、『双極作戦』じゃ巻き込まれかけたクチじゃないですか! 
源大尉だって、広江大隊長も! どうしてそう言えるんですかっ!?」

「お前・・・ 仮にだ、仮に帝国本土で同じ状況だとして、『それ』を中国軍が使ったらどう思う?」

「えっ・・・?」

余り仮定したくない状況だけど、こんな状況しか仮定出来なかった。
ちょっと例えが極端すぎたか? ま、いい。

「許せるか? 感情的に。 戦術的に正しいとしてだ。 諸手を挙げて歓迎できるか? ―――出来ないだろう? そう言う事だ」

「哀しいかな、人は感情の生き物だからね。 頭では判っていても、感情が拒絶する事はままあるのさ。
軍人として冷徹に徹した所で、我々とて木石じゃないよ。 それは彼等も同じだね」

「ましてや、我が帝国と中国、それに韓国の間には一言では言いきれぬ歴史的なしこりも未だ払拭できていない。
現に第6軍司令部は蜂の巣をつついた状況だ、中国第4野戦軍から猛抗議が殺到している。
師団の2部(情報部)からのネタではな、本土では外務省がカンカンになって怒っているらしい。 在日中国大使から厳重抗議が入ったとか。
外務省と国防省もガタガタ遣り合っている。 下手をすれば上の上あたり、2、3人首が飛ぶかもな」

俺と、源大尉、広江少佐。 大隊の上官3人の言葉に、江上の勢いが見る見る無くなってゆく。

「それはっ! そうですがっ・・・!」

悔しげに俯く江上を、広江少佐が諭すように言う。

「納得しろとは言わんよ、だが理解しろ、江上中尉。 君は将校だ。 将校ならば、納得できすとも理解しろ。
理解したうえで、命令に従え。 そしてその分掌範囲内で指揮を取れ。 理不尽かと思う、だがそれが我々に課せられた義務だ」















ブリーフィングを終えて、各々配置に戻る事になった。
俺の指揮する中隊はここから数100m先に展開している。 高機動車に乗るまでも無い、歩いて帰る事にした。
―――と、思ったのだが。 直ぐに1両の車両(82式指揮戦闘車)に捕まった。 見れば江上中尉が乗っていた。(運転は通信班の兵だったが)

「大尉、歩きですか? 宜しければ乗ってゆかれますか?」

「あ~・・・ じゃ、お邪魔する」

―――なんて意志薄弱な奴だ。

乗車と同時に発進する。 乗り心地は・・・ 悪いな。 それに狭い。 
これは仕方が無い、82式指揮戦闘車はCPが前線後方で陣取る場所だ。 内部の後部乗員室は所狭しと通信機器が設置されている。

揺られていると、ふと江上が先程の話題をぶり返してきた。

「本音を言えば、お前さんと一緒だよ。 今更お前達が言う事か?ってな。 しかし俺が出した例え、あれも本当だな? 本土でやられたら頭にくる」

「じゃ、我々はどうすれば? 黙って死戦を展開しろと?」

「・・・そう。 黙って死戦を展開するんだ、それが軍人本来の姿なんだよ。 国家の番犬が、飼い主に意見してどうなる?
おい、言っておくが奴隷根性などと言うなよ? 国家は番犬に相応の褒美も与えなきゃならない、その状況も作らないとな。―――判るか?」

「・・・少なくとも、大尉の様な人は帝国軍の中じゃ、少数派と言う事だけは」

「少数派じゃ困るな、帝国は現代国家だし、世界でも有数の国力を持った国家なのにな」

「・・・」

―――おい、そこで黙るなよ。 雰囲気が不味くなるだろ?

「―――かつて、こんな事を言われた事が有る。 『国と、国民の生命、財産、権利が危ういと判断される場合。 その場合には国家は、そして軍は、躊躇うべきではない』」

「・・・え?」

「こうも言われたな。 『国民は、国家が契約内容を履行する限り、その求めに応じて義務を果たす。 そうして初めて、権利を主張できる。
国家は、国民に義務を負わす為にも、その契約を完全に履行すべきなのだ。 どちらか一方的なものではない』
言われた時は正直、反感を覚えたものさ」

「・・・今は、違う?」

承服できない。 が、行っている事の意味は判る気がする。 そんな表情で江上が聞き返してきた。

「ああ。 だからな、俺は―――必要と判断される場合なら、国内でのS-11の飽和攻撃でも許容する。
感情は無理にでも抑え込む。 それが―――俺が国家と国民・・・ 帝国と交わした契約だからな」

(はは、なあ、オーガスト。 信じられるかい? あの時、君に言われた言葉だ。 それをそっくりそのまま、俺が言っているぜ・・・?)

94年の冬、初めてアメリカに、N.Yに任務で行った時に米陸軍のオーガスト・カーマイケル中尉(今頃は大尉位になったか?)に言われた言葉だった。
言われた時は、今の江上同様に承服しかねなかった。 その後色々と見聞する事も、学ぶ事も出来た。

アメリカの考えが正しいなんて思っちゃいない。 しかし帝国の主観が全てだとは、露ほども感じていない自分が居る。
全ては相対的だ。 そこに主観は存在しない。 そして今の世界情勢―――BETA大戦にあっては、主観は時として身を滅ぼす。 実に簡単に。

「良い例が今の中国だが・・・ 止めておこう、今話している時でも無いし、今まで散々、座学なんかで学んだだろうしな。
今言える事は、『自分の責任を果たせ』、これだけだな。 文句はそれからだ。 当然、俺もな」


やがて高機動車は中隊陣地(と言っても、只のちょっとした広場みたいな場所)に着いた。
高機動車を降り、中隊指揮所のテントへ向かう。 これから中隊ブリーフィングだ。

「時に江上、何しに来たんだ?」

「・・・今頃聞きますか? 周防大尉。
通信コード表が定期変更の時期なので、3中隊に渡しに来たんですよ。 渡会少尉はどこに?」

「渡会なら・・・ ああ、おい! 渡会!」

丁度、中隊指揮所のテントから顔を出した渡会美紀少尉を呼び付ける。

「はいっ! なんでしょうか、中隊長!」

駆け寄ってくる姿はリスか何かを連想させるな。 いや、元気一杯の新任将校なんだが。
渡会少尉が俺と江上に敬礼する。 向うの身長が低い(150cmちょっとか?)ので、特に俺とは30cm程の差が有る、まるで見上げる様な敬礼だ。

「江上中尉が改編された通信コード表を持ってきてくれた。 出撃もそろそろ近い、可及的速やかに処理しておけ」

「はいっ! 了解しました!  あ、有難うございます、江上中尉!」

コード表を受け取ると、脱兎のごとくの勢いで指揮戦闘車両へ走って行った。 これから何やかやと調整する訳か。

「・・・元気な子ですね、相変わらず」

「・・・もう少し落ち着きが有れば、言う事無い」

落ち着きと言うか、もう少し大人になって欲しいと言うか。
昨年の10月に管制官学校を修了した新米少尉のCP将校なのだが。 国内の部隊―――本土防衛軍で『修行』する前に前線部隊配備になった。
頑張り屋なのは評価しているし、人のアドバイスも素直に受け入れる性格の良さも持っているのだが・・・

「中隊では、マスコットの様なものだとか?」

「放っておけないんだろうな、一見すれば中学生でも通る。 彼女がウンウン唸りながら仕事していると、何かにつけ手伝おうとする連中が多くてね・・・」

自分の仕事をうっちゃってまで。 余りに酷い時が有ったから、一度中隊全員に雷を落とした事もあった。
その姿を見た大隊長が、しみじみと『人は、成長する生き物なのだなぁ・・・』と、のたまってくれた時は流石に憮然としたものだ。

「良いんじゃないですか? 3中隊、雰囲気良いですよ?」

「・・・そうかい。 じゃ、俺はこれからブリーフィングだから。 送ってくれてありがとさん」

敬礼して別れる。 江上はこれから2中隊まで出前を届けに行くようだ。
―――ふと思った。 あいつ、いつ衛士をリタイアしたんだ? 俺が2年目少尉の時は新任の衛士で同じ中隊だったのにな?






「ああ、江上中尉ですか? 確か94年ですよ。 大隊長が内地に帰るちょっと前かな? 8月か9月。
突撃級に横合いから突っ込まれまして。 幸い、直ぐに僚機がフォローに入ったから助かりましたけどね。
管制ユニットは大破。 中尉も両足がぐちゃぐちゃに潰れちまって。 切断して、疑似生体ですよ、確か」

当時を知る摂津中尉が教えてくれた。

帝国軍に復帰して以来、懐かしい顔ぶれにも再会できたが。
同時にもう2度と会えない顔ぶれも増えていた。 軍務に復帰できたのなら、それで良しとしよう。

ネガティヴな思考は余所へ置いておく。 今は目前の防衛戦に集中だ。

最上と摂津に大隊の作戦概要を伝える。
戦術機甲部隊の出番は、BETAが地雷原を突破した後、通称『ゾーン』に入った後の打撃戦と、第2師団前面への誘導が役目だ。

「だから、間違っても千山方面への突破は許すな。 山麓の『壁』は第2と第5大隊が務める。
ゾーン入口からBETAを絞り出す勢子の役目は、第1と第4大隊。 俺達第3大隊はBETAの鼻先にくっついての誘導役だ。
だから今回、突破戦闘は行わない。 付かず、離れず、派手に弾幕を張って連中の気を引け。 間合いを間違えるなよ?」

「了解。 摂津よ、今回は残念だったなぁ」

「・・・俺は『吶喊野郎』じゃないっスよ。 確かに『吶喊娘』にゃ、扱かれましたけどね」

「今頃、美園がくしゃみしているぞ?」










1997年2月11日 0550 遼東半島撤退戦の第2幕が上がった。





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