第弐拾四話 大陸揺るがす桜花作戦 後編
『……光の……尾……?』
それが武の9本目の白面の尾を見た時の第1印象であった。
毛の1本1本が針葉樹の葉のように細く、長く、それでいてガラス細工のように繊細で透き通っていた。
その毛先の1本1本に到るまで全て、内側から眩しくも不思議な輝きを放つ白面の尾。
夜の闇に包まれたユーラシア大陸にそびえ立つ1本の尾が世界樹の如く天高くそびえ立つ。
圧倒的な存在の前にここが戦場であることを忘れて思わず人類は見入ってしまう。
『…………捕らえた』
呟いた白面の目が鋭く、鉄原ハイヴに向けられる。
光の尾が細かく揺れる。
まるで大地震が起きる前の初期微動のように静かでありながら巨大な力の具現を予感させる。
揺れはどんどん細かくなりそれと同時に尾の輝きも増していく。
輝きが臨界点に達した時、光の尾を中心に空間が歪み、球体状の波紋が広がる。
一瞬武は自分の体を何かの力が通りすぎていったのを確かに感じた。
次の瞬間聞こえたのは脳天を貫く雷が落ちたような破裂音。
『……BETAがッ!!』
何が起きたのかいち早く気付いた月詠の声につられ、武も鉄原ハイヴの方向を見る。
『あれは……!!』
はるか十数キロ離れた鉄原ハイヴに群がるBETAを不知火の望遠カメラが捕らえる。
そこに映し出された物は、無数の光の輪により包まれたBETAの姿。
要塞級から戦車級まで全てのBETAをそれぞれ光の輪がまるで煉獄の鎖のようにBETAを束縛し動きを封じる。
『やつらの数が多ければ捕らえてしまえば良い。やつらの光線がかわせぬのであれば防いでしまえば良い。簡単な事だ』
ここから見えるBETAだけでもその全てが自由を奪われ、僅かに動く事すら許されていない。
いやそれだけではない。
BETAがその拘束の圧力に耐え切れ無かったのか何体かがブチブチッと握り潰されるように鮮血を撒き散らす。
『――っといかんな。やはり初めて使う能力のせいか加減が難しい』
まるでついうっかり羽虫を握り潰してしまったかのような口調で白面は僅かにその束縛を緩める。
光輝く9本目の尾の正体は『結界の尾』。
眷属である『あやかし』が使う相手を惑わす結界とは違う。
時には敵を封じ込める鎖となり、相手の攻撃を防ぐ盾なる純粋な結界の力。
かつての白面がその身をもって800年間味わい続け、最後の決戦でも煮え湯を飲まされた陽の存在である『お役目様』と呼ばれる人間達の業である。
先程白面は簡単なことだと言ったがそれは違う。
自分の能力を生み出せる白面でもこの能力を作り出す事はできなかった。
他の妖怪達と違い根本的に邪悪の塊であった白面には真逆の属性的に位置するこの力を取得する事は不可能だったのである。
『……な、何ですか? ……あれは?』
武が白面を見上げて問いただす。
『結界の尾……。鉄原ハイヴにいるBETAは全て捕捉した。地中にいるもの含めて……な』
ニヤリと笑う白面。
結界の尾は白面の視界に捉えられる範囲が効果の対象である。
ちなみに白面は千里眼をもっているのでその範囲の広さは光線級の探査能力の射程を軽く上回る。
『――くくく。ではそなたらには我と遊んでもらった礼もあるし、ここは任せるとするか?』
『……マジですか!? 陽狐さん!!』
『あぁ、BETAは文字通り指1本動かせぬ。好きにするといい』
鉄原ハイヴに広がる平坦な大地に光の輪が花のように咲き乱れている。
動けなくなったBETA達は必死に結界から逃れようと足掻いているように見えるがどうする事もできない様だ。
『ですが動けない敵を一方的に狩るというのは衛士としての流儀に……』
そう言って少々抵抗感を示すのは唯依だ。
帝国斯衛軍の衛士は誇り高く真っ直ぐで、少々不器用な性格を持っている者が多い。
黄色の武御雷を授かっている彼女もその例に漏れなかった。
『よっしゃあッ!! 1番槍もらったぁーーーー!!』
『えぇーー!?』
そんな唯依を無視して水月が不知火の跳躍ユニットに火を灯す。
目の前のBETAを駆逐できるチャンスがあるのにむざむざそれを逃すような事は彼女はしない。
『待て速瀬ッ!!』
『う、うぇええ!? な、何ですか伊隅大尉?』
みちるの命令に逆噴射した水月の不知火が急停止しようとするが、そのままバランスを崩し、74式近接戦闘長刀を地面に突きたて何とか姿勢を保つ。
『さっきも言っただろう! 我らの任務は陽動であると。緊急の場合ならばいざ知らず勝手な行動は命令違反になるぞ』
『えぇぇえええっ!? ハイヴ攻略しないんですか?』
水月は不満の声を上げるが武も同意だ。
こんなチャンスははっきり言って2度とない。
先程の唯依だって本心で言えばハイヴ攻略に賛成のはずである。
ここで命令だからの一言でみすみすそのチャンスを逃すのは馬鹿のする事である。
『勘違いするな。ちゃんと規則にのっとり最高指揮官に掛け合い、正式にハイヴ攻略の命令を受ける必要があると言っているだけだ』
『『『『なるほど……』』』』』
みちるの言葉に武達も納得する。
彼女とてハイヴ攻略はしたいのだ。
だが先も言ったとおり軍に身を置くものとしては当然果たすべき手順を踏まなくてはならない。
下手をすると命令違反になり処罰される事だってありうる。
『まぁ……構わぬが……』
そんな彼女達を見ながら白面はフワリとまた更に上空に浮きあがる。
『教えといてやるが、黒炎や婢妖は先にハイヴ攻略に行っておるからな。あまり交渉に時間を掛けているとBETAがいなくなるから気をつけるが良いぞ』
『『『『『『『………………』』』』』』』
武達の視界に映るその先にはBETAをフルボッコしている黒炎と婢妖の姿が見られた。
人類と違い化物はいちいち煩わしい手続きを踏む必要はない。
白面の結界がBETAを拘束した直後からウンカの大群よろしく黒炎達が鉄原ハイヴに押し寄せている。
『い、急げーー!!』
『指揮官……最高指揮官はどこだーー!!』
『CP応答せよ!! CP応答せよ!!』
急に慌しくなる鉄原ハイヴ戦域をそのままほっとき白面はまた別のハイヴへと飛び立つのであった。
◆
――日本時間 午後23時16分 ノギンスクハイヴ戦域――
『ふふふ……』
戦術機には珍しい複座式の運用を念頭に開発されたソ連軍の第2.5世代戦術機ことSu-37UB(チェルミナートル)の中でクリスカ・ビーチェノワ少尉が微笑む。
『クリスカ……楽しそう』
『…………うん』
複座敷の前方の席に座るのはイーニャ・シェスチナ少尉。
クリスカとイーニャはソ連軍の中でも『紅の姉妹』と呼ばれ恐れられている存在だ。
衛士としての実力は少尉でありながらトップクラスであり尚且つ2人は他の人間との交流を持とうとしない。
どこか壁を作る彼女らに対して衛士としての評価は高いものの、単純な人間としての評判は決して良いとは言えない。
そんな彼女らの生きるべき故郷はこのBETAがはびこる戦場に他ならない。
醜い侵略者の肉をモーターブレードで切り裂き、鮮血を散らし、屍に変えていく事こそが彼女の喜び。
――否、生まれてきた理由だ。
人類最大の反抗作戦であろうと何だろうと彼女らがやる事はいつもと同じ、BETAを駆逐する事のみである。
最初の数時間はよかった。
いつものようにお気に入りの近接戦でゆっくり、されども誰より早くBETAを殺していけた。
だが約1時間ほど前、穏やかな天候が極寒のブリザードとなったその時それは突然現れた。
地中から現れたそれは白面の眷属『あやかし』。
噂には聞いていたが突然戦場のど真ん中に出現したあやかしを自分達だけでなく他の衛士達もBETAと勘違いして撃ってしまった。
だがその巨体は全長2kmを優に超え、モース硬度15以上のBETAの装甲すら凌駕しそうな肉厚な外皮。
更に表面を覆う大量の油は普通の物ではなく化物が生成する特別の物なのだろうか?
体に突き刺さる弾丸をいなし、弾いてしまった。
あっけに取られる自分達を尻目に口から大量の黒炎と婢妖を吐き出し、また自身もBETAを喰らい、その巨体で押しつぶしていった。
ふざけるなとクリスカは思った。
自分の得物を横取りされたのだ。
衛士としてのプライドが汚された事と、衛士という職そのものを自分の生きる理由と考えている彼女は怒りの矛先を一瞬あやかしと黒炎達に向ける。
……だがどんなに怒りを覚えても彼女もまた1人の軍人。
これがただの訓練等、実戦の作戦範囲外での事であれば問答無用で死の制裁を与えてやっただろうが今はそうもいかない。
最初のように突然の事で誤射してしまったのならいざ知らず、故意に味方に攻撃を仕掛けるなどありえない。
CPの命令に従い突撃砲を使って自分達もBETAを駆逐していった。
それから数分たった時だろうか?
イーニャの言葉で自分も気付いた。
BETAの様子がおかしい――と。
既にあやかしの周辺にはBETAはいなく、あやかしも何故か動きまわろうとしなかった。
延々とノギンスクハイヴ周辺に群がるBETAに弾丸を浴びせていたのだが、BETAがこちらに向かってくる様子がまるで無いのだ。
いやそれだけではない。CPから通信連絡でわかったのだが、ブリザードが吹いた直後から自分達を含めるあやかし周辺の2個大隊の戦術機の姿がレーダーから完全にロストしていると言うのだ。
不思議と通信だけは通るから指揮系統には支障はなく混乱しないですんだのだが、それにしてもおかしい。
その時クリスカはつい最近人類に伝わった白面の眷属、あやかしの能力について思い出す。
たしかあやかしは結界を張ることが出来て、いかなるレーダーにも引っかからないのではなかったか?
あやかしの結界の中は嵐になるという。ならばこのブリザードが吹く範囲こそがあやかしの結界と言えるはずだ。
クリスカとイーニャは恐る恐る結界の範囲ギリギリまでSu-37UB(チェルミナートル)の歩を進める。
標的は目の前の200m先にいる結界の外の重光線級。
信じられないがこれほどの距離を近づいてみても重光線級はまるで気付いた様子がない。
突撃砲をゆっくり構え、狙いを定める。
自分の心臓の鼓動がうるさい。
意を決してクリスカは引き金を引いた。
水風船が割れるような音を立てて重光線級は自分のレーザー照射器官を破裂させ崩れ落ちる。
一瞬周りのBETA達が何事かと言う感じで慌てた様子を見せたが、すぐに何も無かったかのように無表情にあたりをうろつく。
『――やっぱり……!!』
『うん……クリスカ。どうやらそうみたいだね』
クリスカとイーニャは確信する。BETAは自分達の姿が『見えていない』のだと。
いや正確に言えばBETAは視覚に頼っているわけではないからこの表現は不適切なのだが、ともかくBETA自分達を捕らえていないという事は確かである。
『ふ……ふふ』
正直これは楽しい。
本来クリスカもイーニャも突撃砲はあまり好みではない。
近接戦でBETAを屠るあの感覚にこそ彼女達は喜びを見出していた。
いや彼女達だけでなく近接戦こそが衛士の華だと言うのが殆どの国の共通認識である。
だが……これはいい。
BETAに全く気付かれずに36mmで一方的にその醜い体を削っていける感覚は接近戦に勝るとも劣らない。
それにもう1つ彼女の心を躍らせる存在がある。
白面の眷属である黒炎と婢妖である。
はっきり言って強い。
BETAとの相性もあるだろうがそれでも比較にならない。
あやかしの結界の中で待機している黒炎はたまに入ってくるBETAを1瞬でレーザー照射で駆逐し、結界外で戦っている彼らの近接戦闘能力も素晴らしいものを持っている。
なによりあの頭巾を被った僧兵のような妖怪。
クリスカは口の端を上げて結界の外でBETA達を圧倒するその戦いぶりに釘付けになる。
『私は血袴ッ! 白面の御方に仇名す己らを滅ぼさんッ!!』
数万の婢妖から形を成す血袴の体は大型級のBETAと比較しても何ら遜色は無い。
自分に真っ直ぐ向かってくる要撃級の無骨な一撃を薙刀で軽くいなし接合部分を切り裂く。
『愚図がッ! その程度の実力で我らに敵うものかよ』
軽く舞うように薙刀を振るう血袴の腕は人間の達人クラスでも歯がたたない。
ましてや知性も何もないBETAが相手になろう筈もない。
大地に沈んだ要撃級を踏みつける血袴に50匹近い戦車級が一気に襲いかかる。
『バカ者どもが、そこで見ておれ』
血袴は左手に持った弓を戦車級に向ける。
普通弓を使う場合両手が塞がるものだが血袴に関してはその常識は通用しない。
手に持つ弓の弦がひとりでキリキリと音を立てながら引き伸ばされていく。
何も無い空間に現れる矢は婢妖の集団。
巨大化した血袴の婢妖弓は1射で1000を越える婢妖を放つことが出来る。
風を切り裂き不規則な機動で婢妖の群れが戦車級の行く手を阻む。
『ははは。白面の御方に逆らう化物にふさわしいわ』
硬質化した婢妖が戦車級に食い込みそのまま内側へと侵入していく。
婢妖お得意の取り憑きである。
自我のないBETAはあっさり婢妖にその肉体の主導権を奪われ共食いを始める。
『ぬッ!!』
血袴に突撃級が突っ込んでくる。
15mを超える巨体でありながらその突進力は時速170kmに迫る!
『ハッ!』
だが血袴は軽い身のこなしで突撃級の装甲角に飛び乗り、そのまま突撃級の体に潜り込む。
忘れてはならないが血袴も婢妖の1種なのである。
BETAに取り憑くことなど朝飯前だ。
『どけいカス共!!』
突撃級を操りそのままBETAの群れに突進をかまし、自分の上半身だけを突撃級から出し薙刀で左右にいるBETAを蹴散らす。
それはさながら馬上から雑兵を蹴散らす騎馬兵の姿に似ている。
『……すごい』
クリスカが他人を褒めるのは珍しい。
いや思わず本音が漏れてしまったのだろう。
衛士としてなら誰しも心得のある武術。
彼女の目から見ても血袴の武の領域は神業と言うほかない。
『クリスカ……たたかってみたいの?』
心を読みすかされたのか、それとも顔に出ていたのだろうか?
イーニャが後ろにいる自分をその目で見ようと振り向きながら問いかける。
『…………うん』
クリスカはただ一言だけをもって返す。
36mmの弾丸でBETAを駆逐しながら彼女は白面の眷属たちの戦いぶりをその目蓋に焼き付ける。
近接戦で自分はあの妖怪と何合打ち合えるだろうか?
いつか機会があれば試合ってみたい。
強者に挑みたいという衛士としての本能が疼き出す。
それに比べてたらBETAは何と愚鈍な事か……。
この星のBETAはもう駄目だ。
あと数日で白面に滅ぼされるだろう。
その現実を目の当たりにしたクリスカは、平和な世の中になった時の自分達の存在意義について思うところがあった。
だが案外楽しく過ごせるかも知れない。
クリスカは武装を36mm突撃機関砲から120mmの滑空砲に切り替える。
標的は重光線級。
『――死ねッ、ウスノロ……。お前ではもう私を楽しませられない』
◆
――日本時間 午後23時21分 ロギニエミハイヴ戦域――
『や、やった……勝った……! 人類が、人類が……勝ったんだ!!』
スウェーデン王国軍陸軍所属ステラ・ブレーメル少尉がロギニエミハイヴから打ち出される射出物。
それを見てステラは涙を流す。
フェイズ5以上のハイヴは不定期的に射出物を宇宙へ打ち上げられる機能を有している。
これが母星への連絡便か、あるいは他の星に向けた着陸ユニットなのか人類はわかっていない。
だが、この時の射出物はステラにはBETAの脱出船に見えた。
数時間前から緊急連絡を受けた白面の進路変更。
そこからの異様と言えるほどの快進撃。
10以上のハイヴを破壊し続けついにBETAも地球からの撤退を選択した……ただの偶然かも知れないがそれでも彼女にはそう見えた。
だが次の瞬間、大きさ数百メートルにもなるBETAの脱出船が光の網に捕らえられた。
『な、なにあれ……』
突然頭から冷水をかけられたかの様な目の前の光景にステラの流れていた涙が一気に止まる。
その光の網に捕らえられた脱出船を数百万のレーザー照射が襲う。
黒炎のレーザー照射『穿』である。
圧倒的物量を用いた黒炎の1点への集中照射がBETAの打ち上げた脱出船に小さな穴を空けて、そこから一気に亀裂が走り空中爆発を起こす。
『黒炎共! 白面の御方に逆らう愚か者を1体たりとも逃してはならぬぞ』
『まずは光線級を片付けます。黒炎は私とくらぎを背後からレーザー照射。反射を利用して蹴散らします』
『『『『――了解ッ』』』』
南の空から『くらぎ』、『斗和子』、『黒炎』、『婢妖』の大軍団がボスニア湾を抜けて上空から押し寄せる。
対空兵器を持つ光線級の存在により人類は航空兵力の一切を諦める事となったが、白面の眷属達にはそれは当てはまらない。
『しゃらくさいわ虫けらが!』
『愚かね……』
くらぎと斗和子が正面からBETAのレーザーを受けるもそのま全て跳ね返す。
斗和子もくらぎと同様に敵の攻撃を反射する力を有しているのである。
いやそれだけではない。
今斗和子とくらぎは矢面に立ち、その後ろに黒炎、婢妖と続く。
正面から来るBETAのレーザーを斗和子とくらぎが壁役となって防ぎ、後ろから黒炎が『穿』で斗和子とくらぎを背中から撃つ。
背中に受けた『穿』は反射角を変えて正面にいるBETAに当てる。
敵の攻撃は全て防ぎ、こちらの攻撃は全て当てるという一方的なものである。
『良し! 地上の光線級は全て蹴散らした。黒炎、婢妖共ロギニエミハイヴを一気に攻め落とせ!』
『御意ッ!!』
『ハッハーー!! 待ちくたびれたぜぇい!!』
婢妖と黒炎が一気に地上に舞い降りる。
飛び道具等空からの攻撃を仕掛ければ一方的に片付けられるのだが彼らはそうしない。
これは単に自分達の好みである。
爪で引き裂き、牙で肉を食いちぎる。
獰猛な化物の本能を満たすには近接戦闘こそが最適と言えるのだ。
『1番隊、4番隊は右翼、左翼に展開。2番隊は天頂、月を背負え!!』
斗和子が黒炎に指揮を出す。
数の上でも絶対有利だが陣形を組む知識くらいは持ち合わせている。
『甘いッ!!』
斗和子の背中に要撃級の前腕が食い込むが、その力が反射され攻撃を仕掛けた要撃級に無数の傷をこしらえる。
動きが鈍くなった要撃級の首に見える尾節を斗和子の尻尾が切り裂き、体を縦に裂く。
『…………くくっ』
そんな斗和子を見てくらぎが笑い声を上げる。
『どうしたの? くらぎ』
『いや何、斗和子殿の変わりようは我ら御方様の眷属の中でも噂になっておりましてな。こうしてかつての力を振るってる姿を見て安心しただけの事です』
『当然の事を言わないで頂戴。私としてもBETAは絶対に許しては置けない存在。かける情けなど持ち合わせていないわ』
『ふ、左様か。何にせよ心強いですぞ』
斗和子とくらぎは突進してくる連隊規模(約1000)の突撃級に対して2体で向かい打つ姿勢を取る。
いくら群れを成そうとも斗和子とくらぎから見たらBETAは雑魚に過ぎない。
雑魚の群れはクジラ2体相手には何万体いようとも食い物にしかならないのである。
『くらぎは左翼、私は右翼のBETAを! このまま一気に蹴散らすわよ。くらぎ』
『まかせよッ!!』
『そして……誰もが安心して笑顔でいられる、平和で平等な未来を築き上げるのです!!』
『え゛を……』
パキィンという何かガラスが砕け散った音を立ててくらぎが沈黙する。
『くっ、くらぎの動きが止まった?』
戦術機の中から斗和子たちの無双ぶりにあっけに取られながら傍観していたステラが、くらぎの謎の動きに目を向ける。
時が止まったように静止したくらぎに突撃級のぶちかましが直撃し、伸身の2回転1回捻りの月面宙返り(ムーンサルト)を決めながらくらぎが吹っ飛ぶ。
『くらぎぃ~~!!』
『そ、そんな……。白面の御方の分身であるくらぎがまさかBETAにやられるなんて……』
ここまで一切のBETAの攻撃を寄せ付けなかった白面の軍勢が手傷を負ったことに、ステラの顔から血の気が引く。
いやステラだけでなく他の人間にも少なからず動揺が走っているようである。
『うろたえるんじゃねえ! 人間共ッ!!』
黒炎が上空からステラ達に大声を上げる。
『斗和子様の一言でくらぎ様はくたばった。突撃級の突進を食らう前にすでに、くらぎ様は斗和子様の力によってやられていたのさ!!』
『『『『えぇ~~~~!?』』』』
黒炎の説明に地上にいる人間が思わず声を上げる。
常識的に考えてそんなことはありえないだろうと。
だがあの絶対無敵の白面ですら斗和子の1言に大ダメージを受けるのだ。
くらぎ程度の防御力では命を落として当然と言えよう。
『って! そんな事あるわけないでしょう! 起きなさいくらぎ!!』
斗和子が眉間に皴を寄せて仰向けに倒れているくらぎを尻尾で手繰りよせビンタをする。
『……ハッ!? 冥界の門は? 今冥界の門に吸い込まれるシュムナの気持ちが手に取るように分かった気がしたのだが』
『それは夢です! くらぎこのまま総本山を落とした時のように『合体』して一気にハイヴを落すわ』
『はっ? 一体何故?』
白面の眷属の中で斗和子とくらぎは互いに合体する能力を持っているのである。
もっとも良くあるロボットアニメのそれとは違い、合体したからと言って攻撃力が何倍に跳ね上がるわけでもなく、むしろくらぎの中に斗和子が潜むだけなので戦闘力が2体の時より下がると言える。
『何故? 決まってるじゃないの。これ以上素肌を人前に晒すなんて恥ずかしいからに決まってるでしょ!?』
『ギェエエ~~ッ! もうやだこの人(?)~~ッ!! 御方様~~!! ってゆーか服着ろよアンタ!!』
『お、オレ達は真面目に戦うぞ婢妖!!』
『こ、心得た黒炎よ!! ついでだ人間も我らについて来い!』
涙声のくらぎを無視して黒炎と婢妖が一生懸命に人間と連携を取りながらロギニエミハイヴを攻略していく。
『け、けっこうお茶目な集団なのかしらね……白面の御方様の部下って……』
突撃機関砲を両手に携えながら未だに漫才している斗和子とくらぎを見てステラは呟くのであった。
◆
――1999年10月29日 日本時間 午前00時00分 仙台基地――
日付が変更される時間を時計の針が刻んだ頃の仙台基地。
白面の突然の進路変更はこちらにも情報は流れていたのである。
最初は白面の動きを非難する声も上がったが今は誰も文句を言う者などいない。
いや言えないのだ。
圧倒的な戦果を、結果を出してしまえば最早それまでの過程など些細な問題に過ぎない。
「ヴェリスクハイヴ粉砕!! ハイヴ攻略に成功しました!!」
「アンバールハイヴの内部から竜巻の発生を確認!」
「ウラリスクハイヴの全BETAが光の輪により行動不能! これより掃討を開始します」
「重慶(チョンチン)ハイヴ、モニュメントが内側より破壊!!」
「ブラゴエスチェンスクハイヴ周辺に霧が発生!! 周辺のBETA共々溶解していきます!」
「マシュハドハイヴ。御方様の火炎で吹き飛ばされました!」
「エキバストゥズハイヴの周辺5kmの地面が陥没。中から婢妖と黒炎が飛び出てきます。その数測定不能!!」
管制室から仙台基地全体に、そしてそれを受けた報道機関が生中継で全国にハイヴ攻略成功の情報を流し、そのたびに人々は歓声を上げ、涙を流す。
叫ぶ声は最早言葉になっていない。
天に向かってひたすら吼え、仙台基地全体が揺れているようだ。
隣りにいる者達と抱きしめ合う者もいれば、外の運動場で仰向けになって笑い転がる者までいる。
「くっくっくっく……ア~~ハッハッハッハッッ!!」
「アハハハッ! も~~! 痛いじゃない夕呼ッ!!」
仙台基地のブリーフィングルーム。
夕呼が友人のまりもの背中をバシバシ叩き、まりももお返しとばかりに叩く。
最初は管制室にいた夕呼だったがつい2時間程前に抜け出して来て、この部屋でまりもや207B分隊達と一緒に白面の戦果の報道を聞いていた。
完全に職場放棄だが咎める者は誰もいない。
もうここまで来たら素直に白面の言うとおりに、お茶を飲みながら友人と一緒に過ごした方が正しいと言う物だ。
「まいったまいった! いや~~! 降参ッ! 何が1ヶ月よ! 嘘ばっかり……くっくっく……」
今頃諸外国のお偉い方は大慌てだろう。
確か彼らの予定ではオリジナルハイヴを潰してから何とか白面とあれこれ駆け引きに持ち込みたかったはずだ。
だが1日で全部のハイヴを落とされてしまっては何を駆け引きするというのか?
こうして見ると今まで自分達が水面下で人類同士の腹の探りあいをしていた事が本当に下らなく思えてくる。
つぼに入ったのか夕呼はお腹を抱え、2・3回呼吸を整えお茶を飲もうとするがむせてしまう。
「大丈夫ですか? 香月博士?」
咳き込む夕呼の背中を霞がさする。
「ゲホッ! ゴホッ! えぇ……ありがとう社」
夕呼はゆっくり深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
笑いすぎたためか軽い酸欠を起こした頭がボーっとする。
眺めるテレビ画面には日本帝国の征夷大将軍である煌武院悠陽が国民に向けて、人類解放の演説を行っていた。
どのチャンネルを回しても白面による全世界ハイヴ攻略の速報が報道されており、報道司会者は喜びの涙で泣き崩れた表情を視聴者に晒す羽目になっている。
ニュース速報をしばらく眺めて夕呼の気持ちが落ち着いてきた時、廊下から駆け足の音が聞こえてきてブリーフィングルームの扉が開く。
「香月博士ッ!」
「何? どうしたのピアティフ?」
まだ少し目の端に涙を浮かべ、赤くなった鼻をすすりながら自分の秘書のピアティフを見る。
「この基地に残っている衛士達が至急戦地に行きたいと申し出ています」
「へぇ~いいんじゃない?」
半ばどっちでも良いという様子で夕呼は答える。
まぁ彼らの気持ちは夕呼も分かる。
BETAを駆逐するために軍に身を置いたのだからBETA壊滅のこの時、このまま指を咥えて見ている事など出来ないだろう。
「……よろしいのですか? 彼らには万が一大陸のBETAが日本に来た時、防衛をする任務があるのですが」
夕呼の投げやりになりたくなる気持ちは理解できる物の秘書の立場としてピアティフは問う。
「だって……ねぇ? そんなこと言っても空を御覧なさいな。黒炎と婢妖が空を覆ってるじゃない。BETAが来て何をすると言うの?」
「ま、まぁそうですね……」
苦笑しながらピアティフも同意する。
真っ暗な夜空に蠢く黒炎達が日本の上空に群れをなしている。
一体どれほどの数がいるというのか?
少なくともBETAが今日本に押し寄せて来ても何もできないだろう。
「こ、香月博士ッ!!」
純夏が両拳を握り締め夕呼に話しかける。
「ぼ、ボク達も一緒に戦場に行っては駄目でしょうか?」
207B分隊のメンバー6人が夕呼に陳情する。
白面に自分達が衛士になるころにはBETAはいないと言われていたが、まさか数時間で殆どのハイヴが蹴散らされるとは思っていなかった。
何か彼女達も手伝いたいのである。
「とは言ってもねぇ~~。いくら何でも訓練兵を戦場に送り込むのは……ねえ?」
夕呼としてもそれはさすがに難しいらしく困った表情をする。
「なんでも! なんでもいいですから何か手伝わせてください!!」
「このままジッとしてなんていられませんッ!!」
「お願いします!!」
千鶴、壬姫、慧も頭を下げる。
「ん~~じゃあコーヒーでも淹れてきてくれる? 天然のブルーマウンテンのやつ。場所はピアティフが知ってるから」
「副司令ッ!」
冥夜が怒ったような顔で夕呼を見る。
「しょうがないじゃない。別にからかってるわけじゃないのよ? 本当にやらせる事ないんだもん」
「「「「「「そこを何とかッ!!」」」」」」
「無理ッ!」
キッパリハッキリ夕呼は答えるが207B分隊も諦めない。
しばらく交渉は続きそうだがこうしている間にもBETAの数は着実に減っていっているのであった。
◆
――日本時間 午前02時04分 オリジナルハイヴ上空――
『ここがBETAが最初に地球にやってきた場所。オリジナルハイヴか……』
見下ろすモニュメントのサイズは明らかに他の物とはひとまわり大きい。
だがその難攻不落の要塞も今では吹けば飛ぶような脆い存在に見える。
『他のハイヴは全て焼き尽くし、破壊して……一気にここまで来てしまったな……』
指揮下のハイヴは全て潰され丸裸状態のオリジナルハイヴに吹き付ける風の音がやけに虚しいものに聞こえる。
『さあ、それではこの星最後のハイヴも速やかに滅ぼし、地上に残ったBETA達も滅ぼすとするか』
他のハイヴには黒炎や婢妖などが攻撃を仕掛けているが、『オリジナルハイヴ』だけには1体たりとも近づく者はいない。
ここだけは白面が直に滅ぼそうと心に決めていたのだ。
白面の結界の尾がスタブの水平到達半径100kmを囲むように半球状の結界を張り巡らす。
……これでこのハイヴにいるBETAは逃げ出す事はできない。
下にはまだ沢山のBETAがおり、光線級が先程から白面に攻撃を仕掛けているのだが白面は気にも止めない。
モニュメントをそのまま引っこ抜き主縦坑に向かって降りていく。
白面の体にヒビが入る。
一見すると体が崩壊していくように見えるがどこか様子が違う。
主縦坑入り口に到達した時白面の体が一気に爆ぜる!
半球状態の結界の内側を煙が覆い隠し、一切の様子が外から見えなくなる。
これは毒気……。
九尾の狐伝説にある殺生石と同じように白面は生き物を殺す毒ガスを撒き散らす事ができるのである。
だが白面の出す毒は殺生石の伝説よりも更に性質が悪い。
有機物、無機物問わず腐食させる白面の毒気は、体を切断されたくらいでは死なない化物ですら一呼吸で命を落とすほどの悪辣なものだ。
何万というBETAが眠る様に崩れ落ちる。
呼吸を必要としないBETAもその皮膚から毒が浸透し生命活動を停止していく。
毒気を出し、自分の体の大きさを20分の1くらいに調整した白面はそのままゆっくりと主縦坑を真っ直ぐ降りる。
およそ4kmほど下に降りた所で一際輝く蒼い光が白面の体を照らす。
反応炉……オリジナルハイヴの反応炉である。
人類ならば泣いて喜ぶ所だろうが白面は何の興味も無い様子でその光を見つめる。
『……残念であったな』
大広間(メインホール)降り立つ白面はただ一言呟く。
白面の目の前にいる存在。
それは武も見た事があるBETAの上位存在……通称『あ号標的』!!
『……残念であったな』
もう1度同じ台詞を言う白面は『あ号標的』を目の前にしても何も攻撃を仕掛けない。
あ号標的も同様に自分達の災害の源、白面の者が目の前に現れたにもかかわらず一切攻撃を仕掛けるそぶりを見せない。
互いに間合いに入っているにも関わらず白面は淡々と言葉を続ける。
口の端を僅かに持ち上げた白面の視界に映る『あ号標的』は武が見た物と同じ……姿ではなかった。
武の見た『あ号標的』不気味に輝く蒼い目……のような6つの球体が芋虫のようなその体に埋め込まれていた。
だが今白面の目の前にいる存在は確かに6つの球体を体に埋め込んでいるのだが、黒ずんで光が無く、またその体もしわくちゃの……まるで水分の抜けたミイラのように干からびていた。
これは今この大広間を覆っている白面の毒気のせいではない……。
『もし貴様らの指揮系統が箒型ではなく複合ピラミッド型ならば……あるいはささやかながらも無駄な抵抗ができたかも知れぬものを……』
無駄な抵抗……その言葉の意味する所はBETAの対処能力に他ならない。
かつて人類が航空兵器を用いてBETA戦を優位に推し進めていたものの、BETAはその航空兵器に対して観察、研究を重ねて光線級という存在を生み出した。
これにより人類は敗戦を重ねる事となる。
そしてその理屈は白面にも跳ね返ってしかるべきだ。
現在、圧倒的なまでの脅威となる白面の存在をBETA、ひいては『あ号標的』が見逃すはずが無い。
この桜花作戦が早急に決行されたのもそのためであった……。
対白面用の新型BETAが生み出される前に叩くという目論見が人類にはあったのだ。
だが人類のうち何名かが……白面が横浜ハイヴに隠れていた時にBETAの中で白面の研究が既に進められているのではないかという不安を抱く者がいた。
例えば香月夕呼がそうだ。
甲21号作戦後の緊急会議の時には結局夕呼は自分の中で否定していたが、その予想は実の事をいうと物の見事に的中していたのである。
横浜ハイヴ内で生き残ったBETAは白面の事を観察し続けその情報を『あ号標的』送っていた。
情報を受け取った『あ号標的』は白面を分析、研究、対応策を練っていたのだ。
それがどんなに恐ろしい事か知りもしないで……。
かつて白面がいた前の世界での話。
今回の『あ号標的』と全く同じ行動を取った組織がいた。
組織の名前はHAMMR(ハマー)。
妖怪を科学的に分析し、それに効力のある兵器を開発する米国の技術協力集団。
強大な白面の者を討つには精神攻撃能力を有する法力僧だけでは足りない。
そのため日本は米国に技術援助を頼みこの組織が派遣されたのである。
だがこのハマー機関は結局成果が行き詰まり、規模が縮小され撤退を余儀なくされる。
米国の上層部が未知なる者……白面の者に恐れをなしたからだ。
――目……目が見える……
――闇の中から……白く輝く目が……
まず初めにハマー機関の初代日本局長がそう言って原因不明の熱病にかかり死んでいった。
次にハマー機関に携わっていた上院議員が2人交通事故で……。
その1週間後、ハマー機関の軍事顧問の将官がドーベルマンに自宅で食い殺された。
さらにハマー機関と技術面で提携関係にあった科学技術政策局の事務長と副局長が……。
果ては関係者の中で最高地位にあった大統領補佐官の1人も3日3晩、体中の体液を吐き出しながらひからびていった。
彼も……また死ぬ間際にこう言っていた。
――目が
――目が見える……
――白い……
――白い……
――目が……
これにより米国上層部はハマー機関に本国への機関命令を下す。
そして彼らは白面の者に関わった者を全て殺してしまうこの不可思議な闇の領域をこう呼んで恐れた。
TATARI と……
もしBETAの指揮系統がトップダウンの箒型でなければ……あるいは指揮者が生き残り対白面用の新型BETAを生み出すことが出来たかも知れない。
だがBETAの指揮者『あ号標的』は1体のみ。
どうあってもTATARIから逃れられない。
婢妖でBETAを操り恐怖を植え付け、全世界のBETAの戦闘力を吸収、その後TATARIでBETAの対抗策を奪い取る。
これが白面とBETAの間に繰り広げられた事の内容の全貌であった。
白面が余裕をかまして日常を楽しむわけだ。
人間に合わせて出撃するなどと言ったわけだ。
BETAの指揮系統が箒型なのにも係わらずオリジナルハイヴを先に落そうともしないわけだ。
何故なら白面が横浜ハイヴから人類の前に姿を現した時には、既に決着が着いていたのだから……。
『…………フン』
白面は横を向きながら干からびた『あ号標的』に尾を振るう。
軽い音を立て『あ号標的』は弾け飛ぶ。
蒼く輝く大広間には白面の者が1体のみ。
『さらば……忌まわしきBETA共!!』
鋭い牙が生えそろった白面の口元に炎が灯る。
だがその炎は今まで地中に向けて放ってきた物とはワケが違う。
2次被害のでない上空に向けて放つ火炎は、手加減なしの全力の1撃だ。
力を溜めること数秒、上昇する温度は留まる事を知らない。
あまりの高温のため炎は青白く輝き、膨大な熱量が空気を攪拌させ反応炉の蒼い光が乱気流のように捻じ曲げる。
核兵器にすら耐え切れるハイヴの外壁が早くも溶け始め軋みを上げ、ついには崩壊を始めた。
『我は白面!! またの名を金白陽狐!! その名のもとに、全て滅ぶ可し!!』
この日……オリジナルハイヴ地下から一条の閃光が天を貫いた。
人類の命運をかけた人類史上最大の反抗作戦『桜花作戦』。
1999年10月29日 日本時間 午前02時38分、オリジナルハイヴの完全破壊を目的としたこの作戦は……人類と白面の勝利で幕を閉じた――。