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No.6630の一覧
[0] 日本武尊 (マブラヴオルタ) オリ主モノ [カーノン](2009/11/23 19:45)
[1] 第一話[カーノン](2009/02/21 22:05)
[2] 第二話[カーノン](2009/07/26 20:52)
[3] 第三話[カーノン](2009/07/26 21:06)
[4] 第四話[カーノン](2009/07/26 21:08)
[5] 第五話[カーノン](2009/07/26 21:09)
[6] 外伝その1[カーノン](2009/06/22 00:39)
[7] 第六話[カーノン](2009/07/26 20:36)
[8] 第七話[カーノン](2009/07/26 20:36)
[9] 第八話[カーノン](2009/06/22 00:40)
[10] 第九話[カーノン](2009/07/26 20:37)
[11] 第十話[カーノン](2009/02/24 22:35)
[12] 第十一話[カーノン](2009/05/24 23:25)
[13] 第十二話[カーノン](2009/02/26 22:18)
[14] 外伝その2[カーノン](2009/02/28 20:00)
[15] 第十三話[カーノン](2009/02/28 19:57)
[16] 第十四話[カーノン](2009/07/26 20:37)
[17] 第十五話[カーノン](2009/07/26 20:38)
[18] 第十六話[カーノン](2009/07/26 20:40)
[19] 第十七話[カーノン](2009/05/24 23:28)
[20] 第十八話[カーノン](2009/05/24 23:29)
[21] 外伝その3~ほんのりR-15?~[カーノン](2009/03/06 22:01)
[22] 第十九話[カーノン](2009/07/26 20:40)
[23] 第二十話[カーノン](2009/07/26 20:41)
[24] 第二十一話[カーノン](2009/03/09 21:59)
[25] 第二十二話[カーノン](2009/07/26 20:42)
[26] 第二十三話[カーノン](2009/03/12 21:49)
[27] 外伝その4~ほんのり香るR15~[カーノン](2009/03/12 21:53)
[28] 第二十四話[カーノン](2009/07/26 20:43)
[29] 第二十五話[カーノン](2009/06/22 00:47)
[30] 第二十六話[カーノン](2009/07/26 20:43)
[31] 第二十七話[カーノン](2009/03/30 22:38)
[32] ネタに走ってみた[カーノン](2009/03/30 22:41)
[33] 外伝その5~R15じゃない話になりました!~[カーノン](2009/04/01 22:27)
[34] 第二十八話[カーノン](2009/06/22 00:48)
[35] 外伝その6[カーノン](2009/05/24 23:31)
[36] ネタに走ってみた2[カーノン](2009/04/01 22:30)
[37] 第二十九話[カーノン](2009/06/28 23:05)
[38] 第三十話[カーノン](2009/05/24 23:33)
[39] 第三十一話[カーノン](2009/06/28 23:06)
[40] 第三十二話[カーノン](2009/05/24 23:34)
[41] 第三十三話[カーノン](2009/04/26 00:27)
[42] ネタが走り出した![カーノン](2009/04/13 01:21)
[43] 第三十四話(R-15じゃないと思いますが一応)[カーノン](2009/06/22 00:42)
[44] 第三十五話[カーノン](2009/04/26 00:17)
[45] 第三十六話[カーノン](2009/05/24 23:36)
[46] 第三十七話[カーノン](2009/06/28 23:07)
[47] 第三十八話[カーノン](2009/06/08 00:17)
[48] 外伝その7~R15の香りがするよ!~[カーノン](2009/06/08 00:20)
[49] 小ネタとかしょうもないネタとか詰め合わせで[カーノン](2009/05/24 23:44)
[50] 第三十九話[カーノン](2009/06/28 23:07)
[51] 第四十話[カーノン](2009/06/22 00:44)
[52] 第四十一話[カーノン](2009/06/22 00:46)
[53] 第四十二話[カーノン](2009/07/26 20:33)
[54] 第四十三話[カーノン](2009/06/22 00:51)
[55] 第四十四話[カーノン](2009/06/28 23:09)
[56] 第四十五話[カーノン](2009/06/28 23:12)
[57] 第四十六話[カーノン](2009/08/24 00:13)
[58] 第四十七話[カーノン](2009/07/26 20:45)
[59] 第四十八話[カーノン](2009/08/24 00:14)
[60] 第四十九話[カーノン](2009/08/24 00:15)
[61] 第五十話 ※R15?[カーノン](2009/08/24 00:17)
[62] 第五十一話[カーノン](2009/08/24 00:18)
[63] 第五十二話[カーノン](2009/08/24 00:19)
[64] 第五十三話[カーノン](2009/10/11 23:10)
[65] 第五十四話 ※R-15かと…[カーノン](2009/08/24 00:22)
[66] 第五十五話[カーノン](2009/08/24 00:24)
[67] 第五十六話[カーノン](2009/10/11 23:18)
[68] 外伝その8~丸々斉藤伝説~[カーノン](2009/10/11 23:20)
[69] 第五十七話 ※以下最新話です[カーノン](2009/11/23 19:48)
[70] 第五十八話[カーノン](2009/11/23 19:24)
[71] 第五十九話[カーノン](2009/11/23 19:24)
[72] 人物紹介とか書いてみたよ!(11月23日一部人物に所属とポジション追加)[カーノン](2009/11/24 18:01)
[73] 過去編・前[カーノン](2009/11/23 19:28)
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[6630] 第二十八話
Name: カーノン◆15995976 ID:27c694ce 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/22 00:48










2001年7月29日―――




「諸君、私は改造が好きだ」


整備班、開発班が仕事をする70番格納庫で、一人の声が静かに響いた。


「諸君、私は改造が好きだ」


その声に、作業中だった整備兵が顔を上げ、開発班の者達も声の方を見る。


「諸君、私は改造が大好きだ」


そこに居たのは、国連軍の儀礼服を着た大和だった。


「 機体改造が好きだ

  武装改造が好きだ

  主機改造が好きだ

  機能改造が好きだ

  燃え改造が好きだ

  萌え改造も好きだ

  魔改造も大好きだ 」
 

両手を広げ、何故か木箱の上に立っている。


「 日本で、米国で

  ソ連で、EUで

  中華で、イスラエルで

  そして我等国連で

  この世界のありとあらゆる企業や軍隊がする改造が大好きだ 」


ググッ…と両手の拳を握り、己の顔の前で掲げる。


「格納庫に並べられた機体の一斉点検で、怒号と道具の音が響くのが好きだ

 地上高く存在する頭部モジュールの換装作業の時など心がおどる」


両手を広げ、何故か集中しているサーチライトに照らされる大和。


「整備兵の操る工具が、機体を解体していく時が好きだ
 
 金属音を響かせて外装が剥がれて内部が剥き出しになった内部を

 隅から隅まで点検し終わった時など胸がすくような気持ちだった」


くわっと目を見開きながら、斜め上を見上げる大和、本当に胸がすくような気持ちの顔だ。


「道具を揃えた整備兵の班が機体の不具合を蹂躙するかの様に修理するのが好きだ
 
 混乱状態の新米が 既に交換しなければ駄目な部位を何度も何度も修理しようとしている様など感動すら覚える」

  
感動した!! とばかりに頷く大和、同意なのか整備班の面々も頷いている。


「国連カラーの装甲板をクレーンに吊るして塗装をやり直す様などはもうたまらない

 急造の金属板が私の降り下ろした手の平とともに

 噴出音を上げるスプレーガンにベタベタと染め上げられるのも最高だ」
  

楽しいよねとばかりに視線を向ければ、楽しいですと答えるように頷く整備班。


「ソ連の機体の近接武装が滅茶苦茶になったのを直すのが好きだ

 必死に洗浄して修理して整備したモーターブレードがまたグチャグチャになって帰ってくる様はとてもとても悲しいものだ」


額を押さえながら、首を左右に小さく振る、その言葉に同意なのはソ連の方から来た面子だ。


「国々の異なる戦略で生まれる機体が好きだ

 突撃級に追い回されて逃げ回る機体の姿を見るのは屈辱の極みだ」
  

許せないとばかりに拳を握り、ギリギリと拳を鳴らす。


「諸君、私は改造を、地獄の様な魔改造を望んでいる

 諸君、私に付き従う開発改造班諸君

 君達は一体何を望んでいる?」
  

両手を前に掲げ、何かを掴むように手の平を広げる。


「更なる改造を望むか?

 情け容赦のない嘘の様な改造を望むか?

 乾坤一擲の限りを尽くし世界全体の企業を驚かせるような改造を望むか?」


両手を広げ、真っ直ぐに見つめる先には国連軍のマークが。



 カスタム   カスタム   カスタム
「改造!! 改造!! 改造!!」





整備班、開発班、それら全ての人間が拳を突き上げて叫ぶ、男の女も関係なく。

その姿をゆっくりと見渡し、満足そうに頷く大和。



「よろしい ならば改造だ!

 我々は渾身の力をこめて今まさに回さんとするラチェットだ

 だがこの薄暗い地の底で半年間もの間堪え続けてきた我々にただの改造ではもはや足りない!!」


ワナワナと両手を震わせながら、作った拳を天に掲げ、そして左手を広げて振り下ろす。


「魔改造を!! 一心不乱の大魔改造を!!」


「止めんかぁぁぁぁぁっ!!」


スパ―ンっと、景気の良い音を立てて振るわれるのは、唯依姫特製ツッコミハリセン。

後頭部をジャストミートされた大和は、叩かれた場所を撫でながら唯依の方を見る。

「数百人の改造狂の開発団で機体を改造し尽くしてやる!!」

「だから妙な扇動を止めろと言うに!」

だが再び演説を始めた大和を、ハリセンで叩き倒す。

「むぅ、酷いではないか唯依姫、最後の台詞まであと少しだったのに…」

「酷いではありませんっ、ほらお前達も仕事に戻れ!」

ハリセン片手に声を上げて、大和の周囲に集まっていた連中を仕事に戻らせる。

皆口々に「惜しかったな」「あと少しで全部言えたのにな、少佐」「それにしても唯依姫のツッコミはいつ見ても素晴らしい」「少佐にツッコめる唯依姫が羨ましいわ~」「本当よね~」と、ワイワイ会話しながら仕事に戻る。

唯依はそんな面子の姿に、これが世界トップの技術力を誇る横浜基地の開発班なのかと頭を抱える。

「唯依姫、技術者や研究者は一種のバカなんだぞ?」

「えぇ、少佐を見ているとよく分かります…」

ハッハッハッと笑う大和に、ジト目の唯依。

そんな二人を微笑ましく見守りながら「少佐のお相手は誰?」というトトカルチョを行う面々。

賭けの品が食堂の食事な辺り、平和なモノだ。

一位は断然唯依姫だが、ここ最近はイーニァが二位、クリスカが三位で差を詰めてきているらしい。

「黒金少佐、少しよろしいですか?」

と、そこへ現れたのはピアティフ中尉だ。

彼女は周囲の人を気にし、大和と共に人気の無い場所へ。

その事に内心面白くない唯依だが、自分が知ってはいけない情報なら仕方が無いと肩を落とす。

「香月副司令から、『研究会』、『空母侵入』と…」

「……………ほぅ、いよいよか…」

夕呼から伝言された内容について理解できないピアティフだが、大和はそれだけで夕呼の言いたい事を理解した。

「ありがとう中尉、香月博士には委細承知と伝えてくれ」

「はっ、了解しました」

大和の返答に、敬礼を残して格納庫を後にするピアティフ。

それを見送ると、大和はその顔に獰猛な笑みを浮かべた。

「少佐……?」

「フフフフ…ッ、中尉、いよいよ宴が始まるぞ。日本の復権を賭けた宴がな…」

その言葉に、何かが起こると察した唯依は、内心で叔父の巌谷中佐に連絡を取ろうと考えたが、歩き去る大和の背中を眺めてその考えを消した。

「大和達が何を考えているのか私には分からない…だが、彼らが目指しているモノは理解できる…」

だからそこ、唯依は大和達を信頼し、任せる事にした。

もし自分の力が必要なら、きっと大和は遠慮なく言うだろうとも思って。

「………って、少佐っ、まだ仕事が残ってますよ!?」

「ランランルー☆」

謎の言葉を残して去る大和、彼が突然演説を始めた理由は、煮詰まっている高周波振動発生装置の小型化と量産について。

形にはなったものの、大きさと形状、そして持続時間の問題で少々梃子摺っており、先ほどまであーだこーだと議論していたのだ。

唯依姫が必要な資料を取りに行っている間に演説が始まったらしい。

どうも大和も開発班も疲れているようだ。

黒金はね、急ぎの用事が出来たんだ☆ とばかりに格納庫を後にする大和。

慌てて追いかける唯依姫を見送り、議論していた開発班のメンバーはやっと休む事が出来るとそれぞれ休憩に入るのだった。






あとどうでも良いが、改造をカスタムと読んでいるのは、機体を自分たちの好きな様に改造するから、カスタマイズからカスタムで言ったそうな。





























地上、座学部屋――――



「た~けるくん、おいでおいで~」

「うおぉっ!? なんだ何事だ大和っ!?」

座学の部屋で教導中に、突然扉が少しだけ開いてその隙間から大和が顔を出し、おいでおいで。

その光景にマジでビビル武ちゃん、でもその気持ちは分かる207の面々。

だって何故か廊下の背景が赤黒くて、大和の眼とか口とかが赤く光って見えるから。

三日月みたいな形の口がとっても怖い。

「なんなんだ一体、って言うかその怖い演出止めろよお前…」

と頬を引き攣らせながら扉へと近づくと、突然大和の手が伸びて武を捕らえる。

「うわっ、ちょ、まっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?!!?」

恐ろしい力でズルズルと飲み込まれるように扉の向こうへと消える武ちゃん、顔が本気で恐怖に歪む。

そして最後まで抵抗して扉を掴んでいた手が飲み込まれ、ゆっくりと閉まる扉。

「じ、神宮寺教官、大尉を助けた方が宜しいのでしょうか…?」

「だ、大丈夫だろう、大尉だって歴戦の兵士だ…」

委員長の挙手と共に口にした言葉に、まりもも引き攣った顔で答える。

207とまりも達が不安で固まる中、引き摺り込まれた(?)武ちゃんは、普通に階段で大和と会話していた。

「いや、頼むから普通に連れ出してくれよ…」

「うむ、階段で話をするだけに、怪談風で攻めてみた」

武ちゃんの苦情もなんのその、寒い駄洒落をかましつつ、急に真面目な顔になる大和。

「香月博士からの連絡だ。戦略研究会が発足され、若い将校が数名集まっている」

「っ!? そうか、ついにきやがったんだな…!」

大和の言葉に、拳を握る武。

武にとって、あの事件は色々と苦い記憶がある。

彼らもまた、今の日本を憂いている人間達。

だがそれを、武力でもって正そうとする、それは確かに一つの方法だ。

だが。

「その想いを利用して、俺達を邪魔する連中が居る…!」

「その通りだ。既にそいつ等の手の掛かった空母が日本近海へと進入した。表向きは海外派遣部隊の海上演習らしいが、それらしい演習は全く行われていない」

「ウォーケン少佐達か?」

「人員は不明だが、第66戦術機甲大隊が乗り込んでいるそうだ。F-22Aが空母に配備されているという情報から、十中八九、彼の指揮するハンター隊が居るな」

大和の言葉に、そうか…と項垂れる武。

ウォーケン少佐は、歴戦の衛士であり、冷静沈着な強者だ。

前の世界での彼の態度や対応から考えるに、彼もまた、踊らされた犠牲者の一人だろう。

「少佐は兎も角、ハンター隊に一人か二人、過激派の息の掛かった米国諜報機関の工作員が紛れ込んでいるだろうな。お前も覚えているだろう?」

「あぁ、冥夜と沙霧大尉の話し合いをぶち壊しにした奴だ」

殿下に扮した冥夜と沙霧との話し合いが纏まりそうになった瞬間、発砲して台無しにした衛士。

さらにその衛士と同じく、ウォーケン少佐の制止も聞かずに戦闘を開始した機体も居たらしい。

「詳しい対応は香月博士も交えて話すが、覚悟だけはしておいてくれ。殿下は既に、決断したぞ」

「………あぁ、了解だ」

肩を叩く大和に答え、力強く拳を握る武。

その瞳には、決意が現れていた。

「それと、彩峰訓練兵の方もフォローしておけよ?」

「あ、そっちは大丈夫だ、数週間前から相談されてるから」

武ちゃんの答えに、なんだと…? と驚愕する大和。

恐るべし恋愛原子核と戦慄しつつ、武ちゃんのフラグの立てっぷりに感動すら覚える大和だった。















































2001年7月30日―――帝国陸軍基地―――




帝国軍の帝都防衛第1師団が駐留する基地の一角、『戦略研究会』が発足された場所に、一人の将兵が駆け込んできた。

「沙霧大尉っ、大変です!」

「どうした、何か情報を掴んだのか?」

慌てた様子の将兵に対して、部屋の中で計画を練っていた沙霧大尉は、冷静に問い掛けた。

「それが、帝国城内省からの情報なのですが、国連太平洋方面第11軍・横浜基地にて戦術機の新型OSの先行トライアルに、政威大将軍であらせられる煌武院 悠陽殿下が御忍びで観覧なさるとの情報が!」

「なんだと!?」

「馬鹿なっ、国連軍などの敷地に赴くと言うのかっ!?」

「しかも横浜基地は、国連軍でも謎の多い場所、そのような場所へ殿下を行かせるとは、斯衛軍は何を考えている!?」

齎された情報に、室内に居た将兵達が怒りや戸惑いを露にする。

「静まれ!! ……それで、日程は?」

「はっ、来月の5日に予定されているそうです!」

周りの者を一喝すると、沙霧大尉は殿下が御忍びで横浜基地へと行く日程を訪ねる。

帝国城内省のシンパからの情報だけに、間違いは無いだろう。

「その新型OSとやら、最近噂になっている横浜基地の改造機に搭載されている物やもしれん…」

「以前、大尉が遭遇した不知火の改造機ですね…?」

顎に手を当てて思案する沙霧大尉、仲間の言葉に頷きながら、思い出すのは雪風の姿。

「私は直接見ていないが、その改造機の機動や装備は、従来の物とは比べ物にならないと言う。事実、たった10機程度の改造機二機を含む戦術機と、最近帝都に配備された支援戦術車両『蛇侍空雄(タジカラオ)』12機で900体以上のBETAを殲滅したと言う」

「たったそれだけの兵力で…?」

「支援戦術車両、実物を見ましたが恐ろしい火力を持つ機体でした…」

沙霧の言葉に動揺してざわめく室内。

前々から謎の多い場所であり、そこで行われている計画が帝国の誘致によって始まった事も、沙霧は少なからず知っている。

「そのトライアル、ただ殿下が見に行くだけなら良いのだが…」

「大尉殿、その事でお耳に入れたい情報が…」

深く思案する沙霧、横浜は確かに帝国軍にとって変な命令突っ込まれたり、特殊部隊みたいな連中を戦場でチョロチョロさせてきたりと色々と煩い存在だが
、最近では斯衛軍や帝国陸軍技術廠と深い繋がりのある場所でもある。

殿下にとって害を為すような場所では無いと、沙霧は思いたかった。

彼が気にする、恩師であり今でも尊敬している人の一人娘が、そこに居る事もあって。

そんな中、一人の少尉が沙霧に近づいた。

妙に影のある薄気味悪い印象の男だが、日本を憂いて研究会へと参加した将兵の一人だ。

「なにっ、トライアルはフェイクで、本当の目的は米国との秘密会談だとっ!?」

だがその少尉の言葉に、沙霧は目を見開いた。

周りの将兵達も、驚きの余り口を開いて呆然としている。

「はい、私の伝手が横浜に居るのですが、トライアルを装って殿下を招きいれ、その場で帝国に不利な条件を結ばせるという話が…」

「馬鹿なっ、そんな事を殿下が受け入れる訳がないだろう!」

沙霧が否定するが、少尉は難しい顔で数枚の書類を取り出した。

「これはその伝手が手に入れた物なのですが、トライアルの新型OSに、大尉の見た改造機の技術、そして蛇侍空雄を始めとする機体と引き換えに、米国の復権を許してしまう条約が結ばれる可能性があるそうです…」

少尉の取り出した資料を作戦テーブルの上に広げると、そこには新型OSの性能比較情報や、改造機の特徴と戦果、そして蛇侍空雄…つまりスレッジハンマーのライセンス生産契約などの情報が書かれていた。

現在佐渡島ハイヴからのBETA侵攻に晒され、帝国陸軍技術廠の新型開発や武装開発に躓いている今の日本帝国軍には、ありがたい物が多い。

「………これを餌に、殿下や政府に条件を飲ませるという事か…ッ」

「恐らく…」

「大尉、先日米軍の空母が日本近海に入航したとあります、もしやそれが…」

「かもしれんな…」

苦虫を噛み潰した顔で情報を見つめる沙霧。

日本の未来を憂い、権力から遠ざけられた殿下を思い、米国に媚を売る現政権を駆逐する為に戦略研究会を発足した彼には、到底見過ごせない情報だ。

「その情報、確かなのか…?」

「はい、国連軍に下る事になってしまった伝手が、命懸けで手に入れた情報です…」

真っ直ぐに情報を齎した少尉を見詰めて問い掛ける沙霧、もしも嘘や偽りがあれば見抜くだけの経験は持っている。

だが、相手の少尉からは、その気配はしなかった。

ここ最近、自分の意思以上の速さで事が進んでいる事に、少なからず不審に思っていた沙霧大尉。

今回の情報も、あまりにタイミングが良すぎたのだが、今はその不審の原因を調べる時間が無かった。

「殿下の御忍びの日まで時間が無い、まだ志を同じくする同士も集まっていないが…例え我々だけであっても、殿下を守り、日本を守らねばならない!」

沙霧大尉の言葉に、そうだと同意する将兵達。

「御忍びである以上、殿下が何時どうやって横浜基地へと入るか不明だろう…となると、我々が出来る事は、基地を強襲し殿下を救い出す事! そして横浜基地での企てが本当なら日本中に流して同士を得つつ殿下の復権を。もしも嘘であったとしても、我々の計画が前倒しになるだけだ」

「トライアル中なら、動いている機体は模擬戦仕様でしょうな」

「武器・弾薬庫を抑えつつ、基地の主要部を制圧すれば…!」

「横浜基地は国連軍でも腑抜けた連中が多いと聞きます、例え少数であっても抑えられるでしょう…」

将兵達が口々に意見を述べながら、早速具体的な作戦を立て始める。

走り始めた事態に、内心歯痒い思いをする沙霧大尉であったが、例え彼が動かなかったとしても今回齎された情報で動き出す人間は居る。

ならば自分が首謀者として先導しようと決意した大尉は、作戦や情報を話し合う将兵達の輪に入るのだった。

「…………………………」

そんな彼らを後ろから眺めるのは、情報を齎した少尉。

彼の唇の端が、微かに歪んでいる事に、誰一人として気付いていなかった。














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