『……俺は、操られていたのか』
『そうだ。ゴッツォの名を持つものに』
『……因縁だな』
数多の世界を漂い、『平行世界を彷徨うもの』として、普く平行世界へと悪意を向ける存在を探していた時、それは起った。
とある世界でユーゼス・ゴッツォの枷に縛られ、かつての仲間達と戦い……ようやく己の肉体と精神を取り戻したのも束の間、諸悪の根元たる霊帝ケイサル・エフェスに破れ、完全に肉体を失った。
そして、今目の前にいる男……俺自身のコピー体でもあるアイン・バルシェムにその精神を宿したはずだった。
しかし、世界を渡りすぎたためであろうか。自身も『因果律の鎖』によって縛られてしまっている。
そして、どの肉体にも共通して言えるのは『ゴッツォの枷』がかけられていると言うこと……
ふと目を開けると、目の前の男は自分に向かって腕を差し向けている。
『俺を助ける気か?』
『今あの男に、俺たちの力を利用されるわけには、いかない』
……
そうだな。
因果律の番人でもあるこの俺が……そう易々と利用されるわけにはいかない。
そして……
「─── リュウセイ、ライ、アヤ。 ……お前達に、力を」
†
『……何故、俺を助けた?』
『あの男に、力を与えぬためだ。
審判者を屠らねば、お前の魂魄はこの世界での肉体に封じられる。
ゴッツォの眷属に利用され続けていただろう……かつての、俺のように』
『永劫に繰り返される因縁。逃れられぬ運命、か』
『……いや、数多の世界が大いなる終焉を迎える時、俺たちの役目と放浪も、終わるはずだ』
『……それを信じるか』
『あぁ。 世界の終焉へ導く因子が集結し始めている。……俺はそう感じる』
『お前がこの世界に現れたのは、そのせいか』
『おそらく』
始まりの地……数多の平行世界へと接続される異空間。
因果律の番人があるべき場所。
そこでは既に、次なる世界へのゲートが開きつつあった。
『しばしの別れだ』
『あぁ』
『……イングラム、俺の意志は変わらない。俺は俺であり続ける』
『……いいだろう。運命に抗い続けた先に何があるのか、見せてもらおう』
……奴は最後、笑ったのだろうか。
憎むべき存在であり、同時に存在してはならぬものであり、そして……ただ1人、魂のつながった存在。
「……さらばだ。リュウセイ、ライ、アヤ。そして……」
────── もう1人の俺、クォヴレー・ゴードン ──────