OversSystem 17<暴力装置>
##「何かもう、何書いてるのか自分でも解らなくなってきた」 作者談##
10月30日(火)[九日目]
「これより戦術討論を開始する、各自白銀大尉の挙動をよく観察する事。これは言うまでも無い事だが、当面の我々の目標は彼に追いつく事だ」
自分達の"完成形"を良く見て学べ、と話す伊隅にミーティングルームの全員がうなずく。
流石に管制室には入りきらなかったのでミーティングルームのプロジェクターに投影する事にしたのだ。
各自の真面目な表情を確認するように見回し、マイクに問いかける。
「準備はいいか?"10秒リセット"だ」
「了解っ」
「了ー解ー」
「よし、演習始め!」
「覚悟しなさいよっ!」
命(タマ)とったらぁ!とヤクザ風に叫ばん勢いで突撃を掛ける速瀬を見て、伊隅はタケルが空気を読んで手加減する事を祈った。
「綺麗……」
その言葉は誰の口からでた言葉だろうか。
いや、実際に誰の口からでたのかは些細な問題なのかもしれない。
何故なら全員、同じ感想を持っていたからだ。
「なんか教本の教材動画を見てるみたいですね"神宮司大尉"」
「もしかしたら……本気で流用する気なのかもしれないわ」
「まさか……いや、ヤツならやりそうな事ですね」
未だ教官職が続いているためまりもの階級は"現在の教え子が衛士になり次第大尉に再昇進"という扱いとなったが、現時点でヴァルキリーズの全員が大尉と呼んでいた。
その例外ではない伊隅に話しかけられたまりもはデータの流用に頭を巡らせる。
自分としても特に何か考えがあった訳でもなく、ただ口からぽろっと出た言葉だったのだが、案外的を射てるかもしれない。
こうして外から眺めているとその特異さがよくわかる。
今までは自分と神宮司軍曹と月詠少尉、茜の先頭記録しか見てなかったからそれ以外の見知った人間との戦闘を見ると余計に目立つ。
「……はぁ」
「どうしたんですか?」
「何て言うのかな、正直に言うと……」
「安心した…ですか?」
「そうそう、それよ」
「気持ちは解りますけどね」
まりもの想いに伊隅も同意せざるを得なかった。
いくらタケルが強いと頭では解っていても規格外が過ぎるのだ。
最近はまるで実は自分達の方が弱かったんじゃないだろうかという不安に駆られる程に。
先日の帝都出張で旧OS機をフルボッコにして多少は自信を取り戻したがアレはあくまで旧OSに対してだ。
同じXM3を使って勝てるのかと言われると、正直断言出来ない。
それ故に目の前でボロ負けしている速瀬を見ていると杞憂だったのかと安心してしまうのだ。
味方の劣勢を喜ぶのはどうとかいう道徳観念は、タケルとの圧倒的実力差という現実を前にして余りに無力だった。
「うぅ~~んがぁー!!当たれぇ!!」
「うろたえ弾などっ」
両手に構えた突撃砲の火線を潜り抜けて一閃、恐らく長刀で主機が破壊された。
アラームと共に力を失って地に膝を着けるシミュレータの管制ユニットの中で速瀬は気を吐く。
「ハッ、ハッ、ハッ、フゥ~~」
このダメージが回復するまでのこの10秒間だけが自分に与えられた休憩時間だ。
もうずっとそれだけでどれ位戦っただろう。
何故か時間表示がoffにされているのでそれも解らない。
少なくとも自分が思ってるより現実時間がかなり短かった場合、突撃前衛のメンツに関わるって事だ。
たとえばフラフラになって管制ユニットを出てみたらまだ1時間も経っていないとか。
そんな事になった日には宗像あたりに手ひどくからかわれる事間違いなしだろう。それは嫌だ。
流石に1時間は無いと思うけど…二時間くらいだろうか?もう時間の感覚もよくわからなくなってきた。
最前線での最高速戦闘機動を永遠と続けているのだ、初めての体験だったしもう脳がオーバーヒートしている。
ピッ
ヴン…と力を取り戻した機体を立ち上がらせ―――る前に不安定な姿勢のまま噴射剤を拭かせてビルの影に横っ飛びする。
「そうそう同じ手に何度も!!」
一瞬前まで自分が居た位置に突き刺さる射撃音を感じながら機体を立て直し周囲に気を散らせて気配を探る。
今バカ正直にこのビルから飛び出したらどの角度から出ても狙撃される……流石にそれ位は学んだ。
振動探知に感!
「上!!小さい?!」
咄嗟に頭上に飛び出した物体に射撃を加える、命中。
――――が
「惜しい!」
その影が一瞬やけに小さいと思った瞬間、ビルの上から顔を出す影。
(アッレは……突撃砲じゃない!!)
「目の良さが命取りだ!!」
射撃を何とかキャンセルし照準を合わせ直した時には、地面に向かって噴射剤を吹かせて突撃を掛けるタケルの長刀が頭部ユニットの目と鼻の先まで迫っていた。
「頑張るなぁ速瀬中尉…」
「ふぉへっぐっんがっく……」
「多恵ホラ、飲み込んでからね」
茜は自分の言葉に何かを返そうとして咽た少女にお茶を渡す。
多恵と呼ばれた少女はサイドにまとめたポニーテールを揺らしながらガブガブと飲み干す。
「んぐっ、ありがとさ茜ちゃん。けんども本当に強かねー白銀大尉は」
昼過ぎ、速瀬とタケルを除く全員は管制室でもくもくと携帯食料を食べていた。
当初の予想より速瀬が粘ったからだ。
今もスクリーンの中では激戦が……いや戦闘が繰り広げられている。
訂正したのは他でもない、両機の機動が開始直後程の精彩を発していないからだ。
開始から3時間、流石の速瀬も体力と闘争心には限界があるらしくその挙動は"普段の彼女程度"まで落ちている。(タケルは一応それに合わせてる)
XM3に乗っているとはいえ昨日今日XM3を使った衛士がシミュレータで長時間あの戦闘レベルを維持出来るのは茜からすれば驚嘆に値する。
講習自体は昨日済んでいるが…開始30分時点でのXM3に慣れて来た速瀬の戦闘能力は目を見張るものがあった。
ぶっちゃけお互い全力が出せる状態でガチでやりあった場合、勝てるという自信はもう茜には無くなり掛けている。
実際はまだ茜に幾らか分があるのだが、気迫では間違いなく負けていた。
「でもまだ今なら茜の方が強いと思うなー」
「確かに」
「同意かな……」
「貴女達まで…もう、晴子が余計な事言うから」
「まぁまぁ、大尉だって疲れて解説やめちゃったしさ。今食事許可も出てるんだから会話したって怒られないはずだよ?」
「……せめて小声でやりなさいよ」
実際は許可が出たのは食事に対してなので私語はダメなのだが、柏木の言い方には反論しづらい雰囲気があったので茜も上手くつっこめない。
柏木の横には腰まで届く緑色の髪を後ろに束ねた高原と、肩の辺りまでの長さの金髪を揺らす朝倉が二人で頷いている。
タケルがこの二人の死亡フラグを折れるかどうかが昨日の夜大いに悩んだ事は言うまでもない。
「あれ?やめちゃったの?」
「ん?あれ、ホントだ」
晴子の声に茜が顔を上げてみると、演習は終わったらしい。
白銀大尉の根負け、という形で。
(でもアレ、この後の予定が詰まってなけりゃまだ当分やれるんだろうな……)
終わった、と力なく呟く速瀬とは対照的にピンピンしてるタケルを見た全員が、そう思わずにはいられなかった。
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「ではこれより、えーと何というか…君達の固定概念を破壊する」
「もっと他に言い方は無いのですか、白銀大尉」
「解りやすいでしょう?月詠中尉」
午後、タケルは警護小隊のメンバーとヴォールクの中に居た。
ヴァルキリーズは何チームかに別け、それぞれXM3の慣熟訓練を行っている。
速瀬の顔がゾンビのようだった点は……タケルは見なかった事にした。
顔色は悪いのに目だけが肉食獣のように爛々と殺気に溢れていて怖かったのは秘密だ。
「えー、コホン。君達が一流の戦術機乗りだって事は俺も理解している。それは斯衛だからと言う色眼鏡で見たからでは無く、昨日実際に君らの機動を見たからだ」
自分が今から 相 当 に ア レ な事をするので、事前説明をしっかりする。
説明って大切だよね。
「しかしそれがハイヴ内でも通用するか、となるとまた別の問題になる。ハイヴ突入専用教育はまだ確立されてないしな。せいぜいがヴォールクに挑んで部隊毎に得意な戦術を持っている程度だ」
何しろ戦術機だけでハイヴを落としたことがないのだから、ハイヴ攻略も手探りになる。
そもそもヴォールクにどれほどの意味があるのだろうか。
ハイヴの攻略目処も立たない内は市街地や山岳地帯等の屋外のシミュレーションの方が有効な気もするが……
いや、"いつかはハイヴを落すぞ"という気概も人類には必要だからかな?まぁいいか。
「我々が目指す物はG弾を使わない戦術機によるハイヴの陥落だ。その為の専用戦術はXM3と平行しいくつか考案されているが……その他に最も必要な物がある。何だか解るか?」
「「「…………」」」
少尉3人は皆真面目に話しを聞いてくれている。
ヴァルキリーズ相手も訓練とかの時はこんな雰囲気でやれりゃいいんだが……
ま、やれるだろ。多分。
……やれるよね?
「その為にはそうだな……月詠中尉、ハイヴの内部と外部での戦闘に於ける、最大の相違点は何だろう?」
「ハッ……相違点は2つあると考えます。まず1つ目は一切の補給が出来ない事。2つ目は戦闘時間が長くなる事です」
「うん、そうだ。まずハイヴは補給ができない。いや、全くできないとは言わないが非常に困難である。先行して全滅した部隊の装備を拾う事程度しかできない。なんせ戦線を確保しようにも狭く長いハイヴだ、必ずBETAに襲われて分断される。そして俺達がハイヴ攻略専門部隊なのだから、先行してくれる部隊は存在しない。ここまでで聞きたい事は?」
そこで区切って疑問が無いか確認すると、茶髪を左右にハネさせた雪乃が質問をして来た。
「BETAには補給線を破壊する、という知能があるという事ですか?」
「どうだろうな…BETAの知能については未知数だが、多分この場合はあまり関係ないと思う」
「関係ない、ですか?」
「さっきも話したがハイヴに補給線を張るとなると相当長く細くなる。BETAにどこか一箇所を襲撃されただけで、つまり補給線の破壊ではなく"侵入者の排除"というつもりで行動されればそこでその部隊は全滅してしまう。BETAが居る道を倒して進むわけでは……いや、説明方法が悪かったな」
そこでタケルは一旦区切り、説明をやりなおした。
「まず戦術機に積める武装ではハイヴ内の万単位のBETAを全て倒す事ができない。よって突入部隊はむしろBETAを避けながら反応炉を目指すことになる。つまり突入部隊が通った道の周りには当然BETAは大量に残っている事になる。これは良いな?」
「はい」
「そして狭いハイヴ内では大部隊を展開できない。よって周りの枝から大量のBETAに襲撃された場合、補給線の維持という事で機動防御や攻勢機動、つまりハイヴ内のBETAが少ない場所を高速移動しながらBETAを削る方針が取れない。補給線が崩れるからな。この矛盾により結果的に補給線を構築することが出来ないんだ。これでいいか?」
「はっ、ありがとうございます!」
「うん、よし。次は戦闘時間が長い事だったな、こっちは今からする事に絡まないので後日別件できちんと対処する事にする」
そこまで話してタケルは自分の機体を一人歩行で進ませる。
ガシン、ガシンとその足音は薄暗いトンネルの中で妙に反響して響いた。
「つまり我々は非常に限られた資源でハイヴを進まなければならない。そこで必要なのは幅広い戦術の選択肢、応用力、そして咄嗟の危機に対応できる胆力と柔軟性だ。……ピアティフ中尉、ハイヴ攻略教導訓練"BETA壁"をロード」
『了解しました』
俺の声にピアティフ中尉が反応してくれて10数秒後、俺の機体の200メートル先の通路が、"BETAで栓をされた"ような状態になる。
「あれは…」
「何ですの?」
「すごい…」
「屋外戦闘と違い、ハイヴでは突撃級が全て先頭に居るわけじゃない。となると足の遅いBETAが足場を完全に埋めていた場合、BETAがその上を乗り越えようとする、重量が掛かり速度が落ちる、また追いつかれて上に乗る、そうなった場合、通路が完全に塞がれる可能性もあるわけだ。月詠中尉」
「ハッ!」
「君ならこの自体に遭遇したら、どう対処する?ああ、機体のデータリンクにも知りうるデータが反映されているから参考にしてみるといい」
月詠はしばらく考えた後、答える。
「この現象の性質上、上部のBETAが薄い事を踏まえ後方に跳躍噴射をしつつ上部に掃討射撃を行い、穴が開いた時点で突破します」
「他には?」
「ハッ!場合によると考えますがBETAの構成によっては最下部を狙い全体を"つまづかせる"ような戦術も選択できます」
「そうだな、一番贅沢な状態ならその選択も有効かもしれない」
「贅沢……ですか?」
眉をしかめて月詠中尉が反応する。
贅沢という表現を使われた事よりも、タケルがそんな皮肉めいた事を言うほどの"何か"がある事を見逃していた事が悔しかった。
「振動探知のレーダー幅(レンジ)を広げ忘れてるな。先程も言ったが突入部隊はBETAを基本的に避けながら、遭遇しても場合によっては噴射跳躍で置き去りにしながら進む、ここまで言えば解るな?」
「ぐっ……後方に…大規模のBETAが居る事を……失念していました」
「そうだ、月詠中尉の取った手段は確実な手段ではある。但しどれ程の距離をBETAを引き擦り回せばいいのか未知数になる。場合によっては挟撃されて身動きが取れなくなるだろう」
「……ハッ、仰る通りです」
「例えばS11を設置し全力で後退、機体を伏せさせ爆破後に突破する手段や追撃勢力の上を飛び越えてでも後退しルートを変更する手もある。月詠中尉の選択肢も悪くないが状況はその時々により違う。選択肢は常に多く持ち、リスクの少ない手段を常に選ばなければならない」
(な、成る程………)
(勉強になるなぁ…)
(その発想は想定外でしたわ…)
「要するに、型に嵌ってはいけないと言う事だな。今から見せる手段はあくまでデモンストレーションだが、"こんな手段もある"と思ってくれ」
そう言うと一人先に進んでいたタケルは長刀を両手にそれぞれ持ち、まるで猛禽類が威嚇するように、羽を広げるように腕を開いた。
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……こっから例の原作レイプが始まります。
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/ 作者 \
/ _ノ ヽ、_ \ 他のマブラヴ板のSS面白すぎるんだお
/ o゚((●)) ((●))゚o \ ほんとはもっと他のSSに無いような話にしたいんだお
| (__人__) |
\ ` ⌒ォ /
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/ 作者 \
/ _ノ ヽ、_ \
/ o゚⌒ ⌒゚o \ でもクオリティの高い設定は既に誰かが書いてるお…
| (__人__) |
\ ` ⌒ォ /
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/⌒作者⌒\
/( ●) (●)\
/::::::⌒(__人__)⌒::::: \ だから今度はGガン使うお!
| |r┬-| |
\ `ー'´ /
※脳内で「我が心明鏡止水~されどこの掌は烈火の如く~」をお流し下さい。
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デッ♪
「我が心、明鏡止水…」
デデッ♪
タケルが静かに呟いた瞬間、場の雰囲気が変わった。
ただの座学の場から、なにかよくわからない不思議な場に。
他の世界ではソレを「熱血」とか「燃え」とかと呼ぶのだが、残念ながらこの世界に熱血系アニメは存在しなかった。
デッ♪
両腕を構えタケルが大きく息を吸い込むのを後方に居た4人は感じていた。
((((白銀大尉、何を――――??!!))))
テー↓レー↑♪
「流派、東方不敗が奥義ィ!!」
「「「「りゅ、流派東方不敗?!」」」」
テーレーレレーレーレテーレーレレーレーレーテー♪
両手の長刀を返し頭上に掲げる、その剣先は、僅かに交差していた。
連殺モードに入りガチャチャチャチャと連続で操作を叩き込む。
入力完了後の実行速度は―――――
テーレーレレーレーレテーレーレレーレーレーテー♪
――――MAX。
最大速度でぶつける。
機体が歪もうが腕が壊れようが関係ない、今はただ、目の前の壁を突破するのみ!!
「超級ゥ……覇王……」
テレレテーレッテテーレー♪
入力が終わった連殺がついに実行シーケンスに移行する。
完璧な機械制御の下、機体は入力された通り機動を実行する。
例えそれが、中の衛士を殺す程の機動だったとしても!!
バーニアが焼け焦げる。
その場で回転し始めたタケルに4人は息を呑んだ。
その出力、航空機でない人型の戦術機が回転などしたら通常だったら即座にキリモミ状態に入ってしまい、どこぞに吹き飛んでしまうだろう。
それが――――――
「何であの速度で……安定してますの!?」
「それよりGは大丈夫なのか!?」
「操作なんて…出来ない筈じゃ…」
機械制御された機動は全くブレない。
例えどんなに優れた衛士でも入力が不可能な状況下でさえ。
何故なら入力は、とっくに全て終わっているのだから
4人の目に写るのは渦だ、噴射剤の燃焼が彩る炎の渦。
「電・影・弾ぁぁぁぁあああああん!!」
掛け声と共に渦がBETAに向かって突撃を掛ける。
その様子はまさに!BETAで作られた城門を叩く人類の怒りの破壊槌!!
4人は目撃した!
BETAを蹴散らす存在を!
BETA等ただの路傍の石に過ぎないと言わんばかりに真っ直ぐ貫くその破壊槌を!
次の瞬間
BETAの壁、そのド真ん中に
直径5メートル程の穴が
開いていた。
## えっとその………ゴメンね? ##