10月29日(月)[八日目]
----早朝 横浜基物資搬入門前----
世界は動いている。
全ては俺を引き金に、俺を取り巻くこの世界は未だ嘗て無い程に荒々しく加速している。
俺がこの基地に訪れてから今日で2週目の1日目。
俺個人の器不足を補うために何もかも前倒しにして、なるべく多くの保険を掛け続けて来た。
全てはまず俺が生き残る為だ。
死んだら何も意味が無い。
かと言って仲間を死なせてしまっては、俺はきっと元の世界には戻れないだろう。
それが誰から見ても間違っていなかった判断と状況に於いて発生した事象であったとしても、ループは許してくれない。
そうすれば俺はどうなる?
シロガネオリジナルに組み込まれるのだろうか?
それとも確立時空に分解されて散るのだろうか?
それともただ消えて居なくなるのだろうか?
どう転んでも俺という個性はその場で死んでしまう。
誰一人殺さず、かつ俺も殺されず…
出来ること、しこめる種、改良点で思いつくのは全てやって来た。
そしてコレからも続いていく。
けどそれだけで良いのだろうか?
そもそも鑑純夏はどうするんだ?
アイツのリーディングの前に…いや仮にリーディングを抑えた所で…俺は彼女を失望させてしまうに違いない。
万が一彼女が00ユニットとして稼動しなかった場合…それを考えなければ。
しかし00ユニット素体というのも恐らくは…頼んですぐ出来る物じゃないだろう。
内臓や人口筋肉は流用が聞くとしても…メインフレームや骨格、眼球等のパーツは新規作成になってしまう。
いや、この際"覚悟"だけしてしまえば人型でなくとも…
…等と少々危険な発想を弄びながら地平線を眺めていると、ついに俺の視界にトラックの群れが映った。
「……多いな」
群れ、という表現は間違っているかもしれない。例えるならそう…アリの行列だ。
横浜基地から帝都まで続く、いや実際はそんな事はありえないのだけど、しかしそんなアリの行列を連想させるような光景だった。
やがてその列は視界だけでなく振動や音でもその存在感を明白にし、横浜基地物資搬入門入り口に停車する。
列を丸ごと止めるなんてマネは当然せず、指示もしてないのに均等に2次元的に停車する所は流石帝国軍と言った所か。
それにしてもデカイ。戦術機を搭載できる程の…というか戦術機用のトレーラーも実際にある。
それ以外にも建築用か何かと思われるよくわからない物まで、帝都中の大型トレーラーを集めたようだ。
香月博士と月詠中尉が言うにはこれが全て、"約束された星の破壊"らしい。
けど俺が見た限り、こんなのが横浜基地に必要というのは少しありえないと思う。
何故ならばトラックには幌やカバーは付いておらず、その荷台の中身はつまり丸見えで…
そしてそれは須(すべか)らく無駄に巨大な鉄骨に過ぎなかったからだ。
鉄骨ひとつ取っても幅3mから太いものでさらにその上。
鉄板の厚さも20cmから一番太い物で50cmはあるだろう。
それが"L字"や"H字"になって荷台に鎮座しているのだ。
それなりの施設で保管されていたらしく、まっ茶色という程では無いが、所々錆びている。
まぁこんな鉄の塊の表面が1mm錆びた位なら殆ど影響は無いんだろうけど…
まさか横浜基地を要塞化するつもりなんだろうか?
確かにこのサイズなら突撃級の一撃にも耐えられるかもしれないが、海のように数で攻める奴らに果たしてどれだけ耐えられるのか…
「……で、これ一体何なんです?月詠中尉」
「いや…私も見た目以上の事は知らんのだ。それこそ香月博士に尋ねるのが筋という物だろう」
「聞いたんですけどねー。[アンタも知らないことあるなら完成してから驚けば良いわ]だそうで」
「そうか…らしいと言えばらしいが…うむ、この図面の通り頼む」
トラックから降りてきた月詠中尉も内容を全く知らないらしい。
守衛に書類のサインを貰い、搬入指示だけ出した所で二人で基地に入る。
「とりあえず行き成りですがシミュレータルームに。他だとオチオチ話もできませんしね」
「了解した…む?貴様何時の間に大尉になった?」
「あー、えーと…昨日朝横浜基地を出る寸前ですね」
「ふん…おめでとうと言って置こう。いや、おめでとうございます大尉。の方がよいか?」
「いつも通りで構いませんよ。所属軍も違いますし」
「そう言うと思っていたよ、白銀大尉"殿"」
「そう苛めないでくださいよ…」
シミュレータルームに入り、決まっている事から片付けようと俺は用意してあった箱からXM3教導終了勲章を出し、月詠中尉に手渡す。
別に何も悪いことはしていない筈なんだが、何故か月詠中尉は苦い顔でこちらをにらめ付けて来る。俺なんかした?
「この勲章授与には…テストが要るのではなかったのか?」
「いやまぁ他の人はそうですけど…"メンバー"には必要ないでしょう。あんだけ散々シミュレータで…って中尉?」
「強化服に着替えてくる、貴様も着替えろ。10分後にここに再集合だ」
「へ?」
「駆け足!」
事情は不明だが、どうやらテストを受けたいらしい。
合格つってんのに…斯衛はやっぱ基本頭固いのか?いや当たり前か。
あの人的には部下3人もいるしなぁ…
一人だったのでせっかくだからと昨日と同じメニューに加えレベルを落としたヴォールクの入り口で対BETA戦闘もやってもらう。
対BETA戦闘も俺は参加し、メモを忘れない。
合計一時間後に俺達は管制室に戻ってきた。
「えーっと…評価に入ります」
「待て」
「はい?」
「今後の自分の為でもある、なるべく評価は厳しく頼む。口調も上官口調でな」
辛口って言うと昨日やった感じでいいのか?
上官口調と言われたのでとりあえず背筋を伸ばし直して咳払いをひとつ行い、手元のメモを元に厳しく行く事にした。
「了解、では評価に入る」
「はっ」
「接近、射撃技能共に非常に優秀である点は間違い無い」
「はっ」
「しかしそれは対人、それも上級者に対する物に限る。
以前から思っていたが斯衛は対人訓練や技量ばかりを重要視しすぎている。
人類とBETA相手との戦闘の切り替えをハッキリしろ。死ぬぞ。
特に対BETAでは相手を完全に殺す事に執着しすぎている。
歩けない程度、もしくは攻撃できない程度に痛めつければいい。
弾薬なんざすぐ底を付くから、むしろそれでも足りない位だ。
倒さなきゃいけない相手、足止めする相手、無視する相手の優先順位をハッキリつけろ。
でなければ自らの無能は、部下の死となって自身に帰ってくるだろう。
以上の点を考慮した結果、3次元機動、3概念共に十分な域に達していると判断した。
よって斯衛軍月詠中尉に対し、XM3教導終了勲章及びメビウス04のコードネームの授与を行う物とする」
「はっ!ありがとうございます!」
流石に俺の手で勲章を着けてやるのも憚られたので、手渡しで渡すと、月詠中尉はすぐさま自分で装着した。
ラッキースケベ?なにそれおいしいの?
「で、どうでした?XM3の方は。いくらか印象がマシになってるといいんですが…」
堅苦しいのはもうお仕舞いと言わんばかりに口調を元に戻し、俺は帝都に一晩留まった月詠中尉の首尾を尋ねる。
結果的に昨日はイロイロオマケをGETしてしまったが、俺の中で今一番の重要所はXM3の導入なのだ。
「結論としては…何も準備無しで導入するよりは幾分か楽になったと考えていいだろう。貴様が紅蓮閣下に土を付けた点もだが、私が開発に関わったというのは大きいと思う。あの後かなりの質問攻めにあってな…後半の演習で我々が撃破した連中だったが…彼らの中には私と面識のあった者も居たようだ」
「…となると紫の武御雷の使用も」
「なんとか理由を付けられるかもしれん。元より殿下の御意向であらせられる故誰も反対は出来ないが…武御雷へのXM3導入、そして紫色(ししょく)の武御雷への導入テストと銘打てば…貴様の計画通りになるのだろう?」
「ま、そんな所ですね」
手に持った記憶媒体を揺らしながら語る月詠中尉に俺はうなずいて答える。
アレは多分武御雷のシミュレータデータだろう。
帝都に行くのは俺一人ではなく、出来れば香月博士と月詠中尉も一緒に。
この考えは間違ってはいないようだった。
さっきのトレーラーの列を見るに恐らく巌谷中佐にも何らかの形…もしかしたら直接殿下からの接触があったのかもしれない。
「じゃあ強化装備も着ちゃいましたし…メンバーが来るのを待って仕上げしましょっか。武御雷は今日は間に合わないから…」
「仕上げ?」
今日は午後からA-01への初お披露目があるのだが、その前にちょっと思いついた事をやってみようと思った。
出来れば…というか完勝してもらうのは当たり前なんだけど、少しでも圧倒的な差で勝ちたいので、その布石みたいなもんだ。
(殿下の記憶に付いて問い正したかったが…夜の"全員"で話す場の方がよいか…)
-30分後-
「で、いつも通りの訓練に見えるんだけど」
「やだなぁ神宮司軍曹、これから始めるんじゃないですか」
神宮司軍曹、伊隅大尉、茜少尉がそろった所でこの前やった4対1のシミュレータを起動させる。
ただ今回の何が違うのかと言うと…
3次元機動と高速戦闘を本気でやるのだ。
100%中の100%ってヤツである。
昨日紅蓮大将とドンパチしてる時に閃いた連殺の「連続短期加速」と「白銀防衛術」を組み合わせた本気で相手になる。
今までの戦力差なら、俺の一人勝ちで終わるだろう。
というか勝つ。
「早い話5kgの重しを付けた模造刀で素振りをして、慣れた所で竹刀を振り回すと考えて下さい」
「やれやれ…ヴァルキリーズが貴様にとっては竹刀か…」
「というか既存OSのヴァルキリーズくらい鎧袖一触で倒して貰わないとこっちとしても正直困るんですけどね…メビウス01、出る!!」
この後はこの5人でヴァルキリーズ全部と白3人の相手をするのだが、俺だけ際立っても意味が無い。
むしろ俺は若干手を抜くくらいで、"同じようなバケモノが5人居る"と思わせたほうがXM3も受け入れやすいという物だ。
「はっや!ロックオン追いつかない!」
物凄い勢いで推進剤が目減りしていくがそこはシミュレータ。
別にハイヴを攻略するわけでも無し。さっさと相手を全滅させてしまえばいいのだ。
そういえば連殺と相性の良い機体は…つまり俺が一番生存率を上げられる機体は本当は武御雷なのだろうかとふと疑問に思う。
高機動、高負荷の二面性を持つこのシステムは確かに接近戦に強いフレームを持つ武御雷に向いているかもしれない。
しかし連殺で接近戦を行う訳ではない。
確かに長刀も使うが、それはあくまで一撃離脱を前提としたものであり、剣術合戦のような事は出来ないだろう。
となると個人的にはやはりバランスの取れた不知火を押したい所であるが、飛び回ってでの砲打撃能力を生かしての3次元機動を考えるとラプターも捨てがたい。
いっそ接近戦を諦めてしまえば…そもそも通常のBETA相手に連殺を攻性に使う事すら無いと思う。
機体に安易に負荷を掛けたくないし、対戦術機かどうしてもBETAの海をゴリ押しで突破しなければならない時くらいだ。
殲滅戦…新潟防衛や凄乃皇直衛以外はBETAの海も基本的には飛び越えてしまえばいいのだが…
となると人類同士の戦争が出来る程度にBETAを倒さない限り、攻性の連殺にはデモンストレーション以上の意味は無いのだろうか?
まぁ副次的な物ではあるけど建前上メインは僚機の緊急時の遠隔操作なので、今の所さしたる問題は…
「…ッハ……流石に疲れるな」
考え事をしている内に気付けば随分自分の息が上っている事に気付く。
恐らく…というか間違いなく長時間の攻性連殺の断続使用が原因だろう。
リミッターをパッツンパッツンと切りながら無茶な機動やキャンセルを行っているため、この体でも経験した事の無いGが俺を襲う。
攻性に使うにはやはり人間のパイロット向けのシステムでは無い様だ。
今後の教導では攻性に使う場合を限定するよう徹底しよう。
コレじゃパイロットが気絶して返って死人が増えそうな気がする。
それとさっきから妙に…
「…ッツ!…ッテーな畜生」
ズキンズキンと頭が痛み出した。
シミュレータに乗って頭痛がするのは二回目か?
確か前回も4対1で白銀防衛術を使っていたと思うんだけど…
ズキン――――
「クッソ」
明らかに前回よりも痛みが増している。
ダメだ、本格的に後で医者に相談しよう。
幸いな事に後10分でこの「ハイスピード慣れ演習」も終わる事だし、とりあえずそれまで持てば良い。
それにしてもどうにも落ち着かない。嫌なフラグの予感がするなぁ…
-HAYASE-
「嘘…」
油断は無かった。
正体不明の相手に対する恐れも、伊隅大尉の不在も問題無いレベルに収まる見通しだった。
数もこちらが多く、新任達は初の任務らしい任務に意気込み、先任はそんな新任のサポートをすべく心に余裕を持ち、私達に死角は無かった筈だった。
――――ただ、気付いたら全滅していた。
ロックは掛けた次の瞬間外され、ありえない機動にチームは付いていけず、対応策を思い浮かぶ前に部隊は全滅してしまった。
管制ユニット内を見渡す。
網膜に投影されるデータの中では、いつの間にか斯衛の警護小隊も全滅していた。
自分達より先か後かは…差して問題無いだろう。
そんな事は些細な事なのだ。
だって私達は全員、たったの180秒で全滅したのだから。
「シミュレータを終了します。各自筐体の外で整列して下さい」
ブツンと網膜投影が終了するまで、私はただ呆然としていた事にようやく気付く。
こんな様を伊隅大尉が見たら…考えたくも無い。
ハッチを開けて筐体を飛び出し、A-01のメンバーを整列させる。
同時に警備小隊の3名も私達の横に並んだ。
なんとも違和感の激しい光景である。
ピアティフ中尉から紹介された…というかピアティフ中尉が特殊部隊である我々を紹介した時は心底驚いたけどシミュレータに武御雷が出現した時はもっと驚いた。
アレは警備小隊専用の筐体にしかインストールされていない筈だ。
しかし今日使っているのは私達特殊部隊の筐体。
……後で使わせて貰えないかしら?
ガチャンッ
「って………えーーーー!!!!」
現実逃避をし掛けていた私を筐体の開く音が現実に呼び戻す。
恐らく私達が部屋に入ってきた時点で既に搭乗していたのであろう"対戦相手"は…伊隅大尉と神宮司軍曹、それに警護小隊の赤に……茜だったのだ。
つまり先程の戦闘の敵側には茜が搭乗していたと言う事だろうか。
いやいやそれ以前に幾ら伊隅大尉と神宮司軍曹が強いとは言えさっきのは幾らなんでも異常すぎる。
一体…
「私が不在とは言え…ヴァルキリーズが3分か…」
伊隅大尉の口から出た言葉に私達は全員震え上がる。
あの敵の強さは幾らなんでも反則過ぎるけど、こちらも抵抗らしい抵抗を何一つ出来なかった事もまた事実。
全員腕立て300回と一週間メインおかず抜きは覚悟しなければならないかもしれない。
目を逸らせば斯衛の3人も怯えの色を隠せていないようだ。
けど私達のそんな焦りとは裏腹に伊隅大尉は酷く上機嫌な口調で語り始めた。
「待て待てそう怯えるな、顔に出ているぞ。貴様らの言いたい事は理解しているつもりだ。我々も理不尽な戦力差だという事は解っている」
理不尽な戦力差とは随分な皮肉だった。
2機を除くヴァルキリーズの総力戦と武御雷3機でたった5機の不知火を相手にした時点で相当理不尽だが、たった5機でこちらを蹂躙した事はもっと理不尽だ。
「解説は…そうだな。開発者本人に聞いた方が早いだろう。涼宮、管制室から出て来い。―――――白銀」
呼ばれた遥が私の隣に来たその時、筐体のハッチが開く音がした。
そうだ、今出て着たのは4人。
対戦相手は5機、1人足りなかった。
開発者って?
何が―――――
ガチャッ
「なっ…えっ?…って!」
その男―――
そう、男だ。
筐体から出てきた男を見て私の理性は一瞬で佐渡島のハイヴ辺りまでフッ飛んで行ってしまった。
訓練兵――――いや、そんな事より。
強化服すら着てないってどういう事よ?
-Shirogane-
「解説は…そうだな。開発者本人に聞いた方が早いだろう。涼宮、管制室から出て来い。―――――白銀」
プシッ
筐体の気密ハッチが開く音がして数瞬後、俺は筐体からの第一歩を踏み出す。
(…フラつきも無い…か。いよいよもってコレは…)
強化服無しでの戦闘。
矢張り思っていた程の戦闘力の低下は無かった。
いや勿論強化服と機体との電気的繋がりがなくなる為不都合はいくつも発生するが、致命的と言える物はなかった。
そもそも重力加速度や慣性を打ち消す能力等無いのだから、体に掛かるGは最終的には減らす事はできないのだ。
確かにそれでも一般衛士にとっては大きな違いだろうが、俺の"連殺"はどの道筐体ではフィールドバッグが再現しきれない。
強化服をあえて着なかったのは確かにデモンストレーションの意味もあったが、俺にはそれよりも重要な、可及的速やかに確認しなければならない事があった。
そしてそれはどうやら悪い方向で的中してしまったらしい。
どうにか出来る物では恐らく無いが、後で博士に相談してみるべきか…
コツ、コツとゆっくりとヴァルキリーズの横を抜け、前に立つ4人の中央で止まり、振り向く。
目の前に並ぶのは"かのヴァルキリーズ"。そして警護小隊の3人。
可憐で、哀れな、本来ならばまだ恋や友情という温もりに包まれ、その心地よさを甘受していて良いはずの少女達。
そして、煉獄への切符を渡される事が確約されている少女達。
出来れば、出来る事ならばその切符は…片道切符でなく往復切符を渡してやりたい。
いや、それも全ては…俺次第という事か…
目を閉じそんな思考を数瞬弄んだ後、俺はまた目を開く。
「白銀武大尉だ」
訓練兵の制服を着たまま大尉を名乗る俺に一瞬の同様が周囲に走るが、そこは特殊部隊の面々。
ざわつくような事は起こらなかった。
「伊隅大尉、月詠中尉…紹介してもらっていいかな?」
「ではヴァルキリーズより、速瀬!」
「はっ速瀬 水月中尉であります!」
ヴァルキリーズから警護小隊の順に、一人づつ紹介をしてもらう。
俺は彼女達の名前と、声と、顔を頭に刻み付ける。
一人も減らしてやるものかと、強く決意しながら。
全員の名乗りが終わったところで、俺は速瀬中尉に尋ねた。
「速瀬中尉」
「は…はっ!」
「率直に答えてくれると助かる。先ほど君が相対した相手を君はどう評価する?」
「はっ、不知火にしては"あるまじき"挙動をした強敵でした。"実機でも同じ事が出来る"なら、自分が知る限り最強の相手でした」
"実機でも同じ事が出来るなら"
まぁ例えばシミュレータなんてデータに過ぎない訳だから、不知火の耐久力を5倍にしたり、噴射剤の残量を無限にしたりする事は当然出来ると言えば出来る。
彼女はそれを疑っている、というよりも今まで自分達が使ってきた不知火を振り返りそれしかないという結論に辿り着いたんだろう。
「…警護小隊の面々も恐らくは同じ意見かな?」
「「「…………」」」
彼女達は無言を肯定として返した。
シミュレータ上のみとは言え、確かに"あの不知火"は武御雷よりも勝っていた。
衛士の技量だけでは無い何か別のステータスが入っているとしか思えなかったのだろう。
「"できる"」
だから俺は、キッパリと、解りやすく、他にどうとも捉えられない言葉で断言した。
「あの不知火が行った機動は全て実機でも行う事ができる。そして武御雷についても同様に強化する事ができる。……神宮司軍曹」
「はっ」
俺の声に合わせて神宮司軍曹が部屋の明かりを落し、プロジェクターを起動する。
壁に映るのは大空を背景に浮かぶ銀色に輝くメビウスの輪。
「エクセムスリー……ありとあらゆる戦術機の能力を底上げし、この地上からBETAを叩き出すため、ハイヴを攻略するために俺が開発した次世代OSだ」
「「「じ、次世代OSぅ?!」」」
ずびしっ!っと親指て自分の顔を指しながら言った俺の言葉に警護小隊の3人が仰け反る。
だがまだ驚くには早い。
「そして君達はこのOSが配備される最初の大隊(ファースト・バタリオン)に配属される事になった。地獄へようこそ!あぁ、もちろん殿下の許可を貰ったから君達もだ」
「「「な、なんですってー!」」」
-HAYASE-
「あはははははは!覚悟しなさいよ茜!……ってきゃぁ!」
次世代OSXM3先行配備大隊 部隊名"メビウスリング"
私たち伊隅ヴァルキリーズは纏めて1中隊扱い、警護小隊もとりあえず斯衛中隊という扱いで白銀大尉率いる大隊に所属する事になった。
警護小隊に関しては斯衛中隊所属・警護小隊となるらしい。つまり将来的に斯衛の人間も増えるって事。
その上近いうちに帝国中隊というまんまの中隊も立ち上げるらしい。誰が配属されるのかは知らないけど。
"ハイヴ攻略"なんて素で口にした時は正直ウンザリした。
「防御だけではなくもっと攻勢を」「BETAを一掃する」「この戦争に勝つ」
口で言うだけなら誰でもできるし、常に強気で居なければならない指揮官は着任の挨拶でよくそんな事を口にするからだ。
そんなワケで最初は"はいはいワロスワロス"と思った私だけれど…XM3の講習を受けて慣熟訓練を始めた瞬間、その思いは消し飛んだ。
感覚的に短く表現するならなんて言えばいいだろうか…
"軽くて早くてズバーンでドドドドーでグワシャーでおりゃー!"って感じだ。
今までと同じ不知火なんてとても思えない。
だから思い知らせてやろうと思った。
今日一発目のシミュレータで私を撃墜してくれたのは茜だと態々伊隅大尉が教えてくれたのだ。
そして私達(私、宗像、柏木)の慣熟訓練の相手が茜だって言うんだから、これはひとつ先輩の本気を見せねばなるまい。
しかも3対1だって?ナメてくれんじゃない。後悔させてやるわよ!
………えぇ、そう思ってた時期が、私にもありました。
「あぁ、もう全然ダメですね速瀬中尉。突撃前衛交代した方がいいんじゃないですか?」
「うっさい!」
「いやー、でもホント強くなったよね茜は」
「い、いやーそれほどても…あはははは」
…負けた。
それも3対1で。
「まだ反応速度の向上しか活用できていないようなのでもっとキャンセルとかを「もっかいよ!もっかい!」ひぃっ」
聞けば茜がXM3に触れてからまだ一週間経ってないらしい。
それならば私もすぐに追い抜いてみせる…と意気込んでいたのだけれど…
「ああっ!また!」
全く歯が立たなかった。
後で聞いたけどあの新任の白銀大尉と伊隅大尉、神宮司軍曹に月詠中尉の4人にスパルタされたとか。
羨ましく思う反面、それだけはカンベンとも思っちゃう。
まぁ見てなさい、直ぐに追い抜いてみせるから。
伊隅ヴァルキリーズの突撃前衛は並じゃないのよ!
-PX(京塚のおばちゃんが居る方)-
「まさか…あそこまでとはな…」
「ふぇえ…ビックリですよぅ」
「いくらなんでもアレは想定外」
「武御雷じゃないっていってもあの人たち…斯衛よね?っていうか茜達も居たのもビックリだけど」
「すごいよねー」
御剣、珠瀬、彩峰、鎧衣、それに榊はPXで食事を取りながら、今日の午後イチのシミュレータを振り返っていた。
「新概念のOS、アレが…タケルの部隊が集めたデータの結晶だったのだな…」
「重いわよね…多分、私達が衛士になったら、配属先あそこよ」
「だろうね」
彼女達とてダテに座学をしているワケではない。
軍のしくみ、戦術の立て方(戦略についてはかなり割愛された)、戦って勝つ要素と手段。
今まで見聞きしてきた経験、そして座学と戦況から考えられる戦術機の性能。
あのOSは、その常識から間違いなく掛け離れている事だけは彼女達にも理解できた。
だって"あの御剣冥夜の警護小隊"がボロ負けしたのだ。
ここにいる全員、御剣の正体についてはアテが付いているので、その警護に優秀な人間が回ってくる事は解っていた。
そしてそれが対人における警護だけではなく、戦術機も一流であろうという事があの"赤い服"が証明していた。
それが鎧袖一触。
白銀が言うには、あのOSは正式な訓練を受ければ誰であろうと現行のOSのトップクラスの衛士と肩を並べることが出来るらしい。
しかも個人の才能がより色濃く伸びると。
榊は御剣や彩峰の接近戦の才能はあのOSを使った瞬間、爆発的に延びるだろうと予想した。
それはそれで間違いないのだが、戦場での死亡率の低下は部隊に延命を齎し、生き延びた者はその恩恵を受ける。
つまり実践で今までもより長く生き、より長く学ぶのだ。
榊の指揮能力も後々になれば開花するだろうし、珠瀬や鎧衣の才能も、何らかの形で開花するだろう。
しかしそれはまだ先の話。
「絶対合格するわよ、私は白銀の言葉に乗るわ。ハイヴは…佐渡島ハイヴは私達で落す」
力強く全員が頷いた。
この日彼女達は注意力をフルに使って白銀の一挙一動とその発言を刻み込んだ。
だから覚えていたのだ。
エクセムスリー解説の前に、彼が言った言葉を。
『この地上からBETAを叩き出すため、ハイヴを攻略するために俺が開発した』
彼がハイヴを攻略するために開発したなら、私達が使ってハイヴを攻略しよう。
彼女達の中に揺ぎ無い目標が出来た瞬間だった。
-地下 ミーティングルーム-
御剣の警護に行った月詠を除く、先のシミュレータに参加した全員が集まってPXからのデリバリーで立食をしていた。
斯衛とヴァルキリーズには当初壁があったが、タケルの「今後斯衛も帝国軍も国連軍も増えるから今の内に慣れてくれ」との言葉に会話を作っていた。
"これから増員する"という言葉が現実味を帯びていたからだ。
XM3を一度体験すれば、あのOSの教導やらなんやらで今後人数が増える事も簡単に予想できた。
共通の話題ならば困らない。何故ならお互い、戦術機乗りなのだから。
「武御雷のデータも貰えましたし、早ければ明日にはシミュレータに乗ると思いますよ。つってもまぁ最初の2日間くらいは動作確認とバグ取りがメインですけど」
「武御雷が?それなら明日から斯衛の真の実力を見せて差し上げます。今日の私達の戦果が実力だと思われるのは不本意ですから」
(いや…あんまデカい口叩かない方がいいんじゃないか)
(でも新OSの武御雷なら…ゴメンなさいやっぱムリでしょうね~)
「あぁ、期待してるよ。少尉」
そう言ってタケルが出した握手に巴雪乃が答えようとした瞬間。
くいっとタケルが腕を掴んで引いた。
「うわっと」
よろけながらも何とか耐えた雪乃に対して、今度は横にグイッと引っ張る。
「ちょっと!何するんですか!白銀大尉」
体格差から遊ばれているのかと思った雪乃を始めとした三人がタケルを睨むが、まるで動じずにタケルは切り返す。
「うん…柔軟で良く鍛えられてる、いい足腰だ。君らみたいな優秀なヤツはウチ大歓迎だから。んじゃまた」
そう言って、あっけに取られている三人を尻目に他のメンバーにスタスタ歩いて行ってしまった。
「な…何なんだよ…あの人」
「まぁ、理解できないのも致し方無くはあるのだが」
「「「つ、月詠中尉!?」」」
彼女達の後ろには、警護の任務から戻った盛大にため息をつく月詠が居た。
新OS配備大隊への転属が発生したため、警護にフォローメンバーが追加されたのだ。
といっても警護の任務自体は月詠の強い希望により継続とされたが。
「あの男はよく無駄にしか見えない行動や発言をするが…最終的に振り返ると最短距離を走り抜けているような男だ。全ての活動に何らかの意味がある、よく考えてみるんだな。もしかしたら貴様らの反応を見て性格を図っていたのかもしれん。時至らば、我等諸共にヤツの指揮下でハイヴに突入するのだから」
「我等の任務は…殿下に迫る危機を排除する事ではないのですか?」
"ヤツの指揮下でハイヴに突入する"
その言葉を二重に認められない雪乃は珍しく月詠中尉に異なる意見として尋ねた。
タケルの指揮下に入る事も、斯衛の自分がハイヴ攻略に行くのも、まだ認めていない。
もちろんハイヴに突入する事に臆した訳ではない。
それは雪乃に取って"自分の仕事ではない"のだ。
組織には役割というものがある。それに斯衛の白という誇りも当然持ち合わせているのだから。
「同じことをヤツの前で言って失望されるなよ。これはヤツの受け売りだが"国土の半分をBETAに制圧されてハイヴまで建設された滅亡まで秒読みの国"、それがこの国だそうだ。現実として今もう既に殿下にBETAの牙が向かっているんだ。帝都にBETAが攻め込むような事態になればもう何をしても手遅れだからな」
「それは…いえ、仰る通りです」
「貴様らにはヤツも期待しているようだ。明日から更に精進しろ。案外、その内佐渡島の反応炉と対面できるかもしれんぞ」
「「「はっ」」」
この時はまさか本当に言葉通り佐渡島の反応炉と対面するとは夢にも思わない3人だった。
ちなみにこの後で速瀬が「武御雷に乗りたい」と発言しその場で伊隅にブン殴られた上翌日のオカズを没収され事を記しておく。
別の場所では、今度はタケルが速瀬、宗像、風間と会話をしていた。
「しかし白銀大尉…若いですね。もしかしたら私や祷子…あぁいえ、風間少尉よりも若いのでは?」
「えーと…あそこに居る人と…同じ年かなー…なんて」
「どれどれ…ってちょっと待ったぁ!どういう事よ!」
タケルの視線の先を追った速瀬が吼える。
視線の先に居たのは他でもない、茜だ。
「どうもこうも、こういう訳で」
そう言ってタケルは自分の服装を指差す。
白い制服、訓練兵の証だった。
「じゃあ何?私って訓練兵に負けたの?」
「ここ来る前にも特殊部隊に居たので素人って訳じゃないですが…多分その辺の衛士より出撃回数多いいですし」
「ううううぅ~」
幾ら特殊部隊に居たとは言え、速瀬にとって白銀は年下である。
しかも茜達と同世代である。
突撃前衛の名に掛けて、はいそーですかとは引き下がれなかった。
「そう苛めないの、美冴さん。改めまして白銀大尉、風間祷子少尉です。よろしくおねがいします」
「よろしくお願いします、風間さん」
「訓練時との切り替えの激しさには驚かされるな。同じく宗像美冴中尉だ。改めてよろしく」
「まぁこういうタイプだと思って下さい。よろしくお願いします、宗像さん」
「美冴さん、ダメよ上官に対してその態度は」
「いいんだ祷子、本人がその方がいいって暗に言ってるんだから。それでそちらで唸っているのが戦闘に性的快楽を覚える三度の飯より血と暴力が好き、我等が変態突撃前衛の速瀬中尉です」
「むぅーなぁーかぁーたぁー!!」
「って涼宮少尉が「楽しそうだな?貴様ら」伊隅大尉?」
宗像の対速瀬における伝家の宝刀、なんでもかんでも茜の所為にする作戦が発動する手前で、伊隅が乱入して来た。
握り閉めた拳の振り下ろし先が見つからず速瀬は苦虫を噛み潰したような表情になる。
「速瀬、案外コイツとお前は気が合うかもしれんぞ?」
「な、何ですかやぶからぼうに?」
「何せコイツは寝てる時間とメシの時間と会議の時間意外はずっとシミュレータに乗り続けているような狂人だからな」
「あぁ、それはピッタリですね。速瀬中尉、おめでとうございます」
「何がピッタリなのよ!…って白銀大尉、今のは本当ですか?」
「えぇ…まぁ」
「じゃあ明日朝イチでシミュレータ、いいですよね?」
「構いませんけど」
「やったー!」
突撃前衛っていうのは、血気盛んで、強くて、さらに強くなることを常に欲しているような人間にしか出来ない。
そういう意味では間違いなく、速瀬には突撃前衛の才能があった。
「ふむ、それはいいな。じゃあ他はモニターしてダメ出し…いや戦術討論に回すか。お前が言い出したんだから耐久戦でいいな?速瀬」
「もっちろんですよ!何時間勝負にします?」
「は?」
「へ?」
「スマンが速瀬、貴様の言っている意味が私には理解できないんだが」
「いやだからシミュレータには何時間貰えるんですか?」
「耐久戦と言っただろう、根を上げるまでずっとだ」
「大尉、私も大尉の仰る意味がよくわからないんですが…」
「だから"ずっと"だと言ったろう。食事も休憩もトイレも無し。どちらかが根を上げるか気絶するまでだ」
「はぁ!?」
「少なくとも私と神宮司軍曹に月詠中尉、それに茜少尉はそれをこなしたぞ?」
「や、やってやろうじゃないですか!」
この日から、XM3先行配備大隊に所属した衛士はその訓練の内容に地獄を見るのであった。
「それにしてもアイツがねぇ…ホント衛士は見た目じゃわかんないわ」
茜達のグループに挨拶に行ったタケルの背中を見送りつつ、速瀬は思った事をそのまま零した。
才能、その一言で片付けるには到底足りない能力を初日から叩き出した男だった。
半日程度ではその違和感は到底拭えない。
「そうだろうな、私もアイツの戦闘記録を見るまでは正直半信半疑だった所がある」
「戦闘記録?……ってまさか」
「そうだ。貴様らにも見せた"あの戦闘記録"さ」
「アイツが?!」
そう、私達の間で戦闘記録と言えば"あの戦闘記録"しかない。
先日伊隅大尉が見せてくれた、素手の戦術機の戦闘記録映像だ。
成る程、確かにあの新OSならあの動きも納得…
「しかもアレが旧OSでの戦果と言うのだから、完全に規格外の存在だよ。我々はヤツに追いつく前に、ヤツの足を引っ張らないようにしなければならん」
「……そりゃあ」
私は手を額に当てて天井を仰いだ。
バケモンだ。
それが率直な、私の感想だった。
-地下 香月副指令執務室-
「改めて聞くけど、今までこんな事は無かったのよね?」
「えぇ、間違いありません。純夏を例外にした場合、俺意外に記憶の引継ぎが起きた事実は今までに存在しません」
「つまりもしかしたらそれが、アンタの言う今回の"特別"の原因かもしれないわね」
世界移動による穴、もしくは因果導体白銀武という存在による記憶の流入。
それならばいくつかの記憶をシーンごとにフラッシュバックする、そんな事もあるかもしれない。
しかしあの時私が見た殿下は、明らかにハッキリ記憶を持っていた。
佐渡島が消える瞬間を見たと断言した辺り、これは間違いないだろう。
「ひとまず今日はここまでね。武御雷も明日の午後にはバグ取りに入れるから」
「はっ、ありがとうございます」
「じゃ、解散」
15分後、執務室には再び"メンバー"が再集結していた。
ある人物を除いて。
この会合にはその人物がどうしても邪魔だったのだ。
その人物がメンバーに取って有益な事は既に承知している。
ただそれとこれとは別。
改めて、果たして信用できるのだろうか、どこまで信頼していいのだろうか。
そう……
「昨日も一度流したけど、会談の音声ファイルよ」
そう言って香月博士は先の悠陽や沙霧との会話ファイルを再生しはじめた。
ある意味とんでもない外交ルール違反でもあるが、それを咎める人物は居ない。
誰一人として声を上げぬ中、再生されたファイルはデータ通り空気を振動させ、ついにその長い再生過程を終了した。
「再生を聞いても…いや、信じるしかないのだが…コレが…あの男の口から出た言葉とは………」
("正しく狂った狂気"とでも呼べばいいのかしらね)
会合から除外された人間は一人。
部屋に居るのは女性だけ。
そう、外されたのはタケルだった。
「結果だけ見ればそうね、こちらから出せるギリギリの情報だけを全て渡した上で必要な物は全て手に入れているわ。それも向こうから自発的に差し出すような形で」
「………交渉術にも優れているという事でしょうか?」
「…違うわね」
何とか口を開いた伊隅の意見をバッサリと切る香月。
そう、もっと違う何かだ。
相手を伸ばした後で退路を全て断ち切り、その上で完膚なきまでに叩き潰した後に手を差し伸べる。
こちらは痛くも無い出費で欲しい物を総取りし、相手からは感謝すらされる始末。
都合の悪い事は話を逸らせて結局喋らない。
脅迫とか洗脳、コレはそういう風に言われる何かだ。
「アイツは人を惹き付ける何かがあるとは思ってたわ。だってここに居る人間は全員、出会って数時間であんなに怪しいアイツを信用していて、気付けば信頼してるのよ?」
しかしそれは、決して正しい力の流れではない。
薄々誰もが感じていた事だが、今日ハッキリした。
英雄たる英気では無い。
それは狂気という毒だ。
その狂気は相対した人間を容易く惹き付け、そして瞬く間に狂わせてしまう。
人類の滅亡を笑いながら謳い、BETAの滅亡を泣きながら語るその根源。
「彼が人類の為にBETAを滅ぼそうとしている点については間違いないわ。私達を全員死なせまいとしている事も」
けど気をつけなさい、と魔女は嗤う。
「彼にとってはそれだけが全て。他はどうでもいいの」
それに何の問題があるのだろうか?
話を聞いている人間の誰一人、その言葉の意味がわからなかった。
(アイツは"白銀だけど、白銀じゃない"。社の報告と社自身の変化………楽しませてくれるわ)
魔女は心の底から震えていた。
きっと"何か"が起きる。
自分の想像も付かない"何か"が。
夜は、更けて行く。
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オヒサシブリデス。ゼロ魔に浮気してました。すいません。
あと登場人物が一気に増えすぎてちょっと脳の処理限界を超えてしまいました。
訓練メニューは幾つかオリジナル(と少なくとも作者は思ってる)方式のを展開してきます。
なんでそんな訓練をするのかの説明とセットでイロイロやってくので、生暖かい目で見つめてやってください。
前回の鎧衣のでそろそろ皆さん気付いていると思いますが、
ローテーション決め係りになったヤツはみんな自分とタケルをセットでローテを組んでいるのだぁー。
築地のキャラが掴めない。
茜の話を書くとセットでくるキャラなのに…
佐渡島を攻略するのは何時の日になるのでしょうか…
SSブログ立てました。
http://shibamura.jugem.jp/?pid=1