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No.4039の一覧
[0] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~[山崎ヨシマサ](2010/06/05 22:51)
[1] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~プロローグ2[山崎ヨシマサ](2010/11/10 03:38)
[2] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第一章その1[山崎ヨシマサ](2009/09/22 23:11)
[3] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第一章その2[山崎ヨシマサ](2009/09/22 23:17)
[4] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第一章その3[山崎ヨシマサ](2009/09/22 23:23)
[5] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第一章その4[山崎ヨシマサ](2010/06/05 22:53)
[6] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第一章その5[山崎ヨシマサ](2010/06/05 22:55)
[7] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第一章その6[山崎ヨシマサ](2010/06/05 22:59)
[8] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~幕間その1[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:04)
[9] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第二章その1[山崎ヨシマサ](2010/07/19 22:58)
[10] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第二章その2[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:06)
[11] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第二章その3[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:07)
[12] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第二章その4[山崎ヨシマサ](2010/09/11 22:06)
[13] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第二章その5[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:09)
[14] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第二章その6[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:11)
[15] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第二章その7[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:12)
[16] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第二章その8[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:17)
[17] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~幕間その2[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:19)
[18] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第三章その1[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:20)
[19] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第三章その2[山崎ヨシマサ](2010/07/19 23:00)
[20] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第三章その3[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:24)
[21] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第三章その4[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:27)
[22] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第三章その5[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:29)
[23] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第三章その6[山崎ヨシマサ](2010/07/19 23:01)
[24] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第三章その7[山崎ヨシマサ](2009/09/23 13:19)
[25] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第三章その8[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:33)
[26] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~幕間その3[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:36)
[27] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第四章その1[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:38)
[28] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第四章その2[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:40)
[29] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第四章その3[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:42)
[30] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第四章その4[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:42)
[31] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第四章その5[山崎ヨシマサ](2011/04/17 11:29)
[32] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第四章その6[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:45)
[33] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第四章その7[山崎ヨシマサ](2010/07/16 22:14)
[34] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第四章その8[山崎ヨシマサ](2010/07/26 17:38)
[35] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~幕間その4[山崎ヨシマサ](2010/08/13 11:43)
[36] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第五章その1[山崎ヨシマサ](2010/10/24 02:33)
[37] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第五章その2[山崎ヨシマサ](2010/11/10 03:37)
[38] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第五章その3[山崎ヨシマサ](2011/01/22 22:44)
[39] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第五章その4[山崎ヨシマサ](2011/02/26 03:01)
[40] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第五章その5[山崎ヨシマサ](2011/04/17 11:28)
[41] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第五章その6[山崎ヨシマサ](2011/05/24 00:31)
[42] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~幕間その5[山崎ヨシマサ](2011/07/09 21:06)
[43] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~第六章その1(最新話)[山崎ヨシマサ](2011/07/09 21:50)
[44] Muv-Luv Extra’ ~終焉の銀河から~プロローグ[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:47)
[45] Muv-Luv Extra’ ~終焉の銀河から~第一章[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:49)
[46] Muv-Luv Extra’ ~終焉の銀河から~第二章[山崎ヨシマサ](2010/06/05 23:51)
[47] Muv-Luv Extra’ ~終焉の銀河から~第三章[山崎ヨシマサ](2010/06/29 20:22)
[48] Muv-Luv Extra’ ~終焉の銀河から~第四章[山崎ヨシマサ](2010/07/19 22:52)
[49] Muv-Luv Extra’ ~終焉の銀河から~第五章[山崎ヨシマサ](2010/08/13 05:14)
[50] Muv-Luv Extra’ ~終焉の銀河から~第六章[山崎ヨシマサ](2010/09/11 01:12)
[51] Muv-Luv Extra’ ~終焉の銀河から~エピローグ[山崎ヨシマサ](2010/12/06 08:17)
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[4039] Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~幕間その1
Name: 山崎ヨシマサ◆0dd49e47 ID:503e8bbc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/05 23:04
Muv-Luv Unlimited ~終焉の銀河から~その1

幕間

【2004年12月20日20時18分、群馬県武尊山上空、ラー・カイラム】

 佐渡島ハイヴ攻略戦を終えた、ラー・カイラムとアークエンジェルは、夜の日本列島を横断し、横浜基地へと向かっていた。

 横浜基地に到着するまでの僅かな時間を使い、ブライトとマリューは、大気圏外に待機するエターナルと、小惑星帯に残してきた残存艦隊に、フォールド通信で連絡を取っていた。


「……というわけで、一応最初の戦闘は無事終了しました。しかし、依然地球上には、ユーラシア大陸を中心に、未だ20を越えるハイヴが存在し、BETAの圧倒的な支配下にあります」

『BETA……それが我々の敵、と言うわけか』

 エルトリウムのブリッジで、タシロ提督は大きく一つ息を吐いた。

「はい。詳しい情報はまた後ほど。今回緊急で連絡を入れたのは、早急に警告をしておく必要があったからです。有る意味、地球に降りた我々より、大気圏外のエターナルや、小惑星帯のエルトリウムの方が危険に近いとも言えますから」

『太陽系におけるBETAの本拠地は火星、月も既にBETAの勢力圏内、ですか』

 バトル7の艦長席で、マックス艦長も大きなため息をついている。有る意味、小惑星帯に残ってきた残存艦隊は、地球にやってきた先行分艦隊よりも、危険な宙域にいたということだ。

 マックスの言葉を受けて、アークエンジェルのラミアス少佐が、警告の言葉を発する。

「はい。ですから、どちらも決して月や火星には近づかないようにお願いします。幸いBETAは、宇宙空間にいるものに積極的な攻勢をかけることはないらしいので」

 確かに、BETAが大気圏外の人工衛星や、ラグランジュポイントで作っていた移民船団に攻撃を仕掛けた事実はない。安易に判断を下すのは危険だが、とりあえずこちらからよほど月や火星に近づかない限り、危険は少ないと言えるだろう。

『承知しました』

 エターナルのラクスはいつも通り、落ち着いた表情でそう答える。

「とくに、エターナルは気を付けてもらいたい。艦自体の戦闘力も一番低い上に、単独で行動しているんだ。万が一の時は、独自の判断で撤退してくれてもかまわん。フラガ大尉、ウラキ少尉、キース少尉。エターナルの護衛をよろしく頼んだぞ」

『ハッ!』

『了解しました!』

『全力を尽くします!』

 ブライト直々の言葉に、エターナルの艦長席の後ろに控える、フラガ、ウラキ、キースの三名は、敬礼を持って答えた。フラガのメビウスゼロ、ウラキのガンダム試作1号機フルバーニアン、キースのジムキャノンⅡ。現在、エターナルに搭載されている機体は、この三機のみである。

 さすがに本格的な戦闘に巻き込まれれば、心許ない戦力だ。

 フラガ達の返答に、ブライトは頷きながら話を転換させた。

「なお、今回の戦闘で予想以上に、物資を消耗しました。ダメージを受けた機体は少ないので、装甲や機体パーツはまだ十分に余裕があるのですが、武器、弾薬が不足しています。今回と同じ規模の戦いをもう一度行えば、実弾系の弾薬は底をつく計算です」

『むう、なんと……』

 ブライトの言葉に、タシロ提督は驚いたように声を上げた。

『一般的な戦闘ならば、五回は可能な物資量だったはずですが』

 タシロ提督の後ろから、副長が端末を操作しながら、淡々と付け加える。

 とはいえ、戦場が激しくなれば、当初の予定量などアッという間に吹き飛ぶことぐらい、この場にいる人間は皆よく知っている。

『了解した。幸い、エルトリウムの艦内工場は順調に活動している。補給物資はすぐに、届けよう。クライン君、使い走りに使って悪いが、エターナルをこちらに戻してくれ』

『承知しました』

 タシロ提督の言葉に、ラクス・クラインはレスポンスよく諾の返答を返した。

 エターナルは、高速航行艦だ。搭載量が少ないのが難点だが、ピストン輸送の中間を担うには、適している。

「現状での報告事項は以上です。BETAやハイヴの詳しい情報は、香月博士から頂いたデータを送っておきますので、それで確認して下さい。それで、そちらの修理状況はどうなっていますか?」

 ブライトの問いに、タシロ提督は「うむ」と一つ頷くと、話し始める。

『まず、資源回収隊が、直径120キロほどの小惑星を発見したため、我々はその近くに移った。資源の切り出しは、順調に進んでいる。

 それに伴い、ガンバスターとシズラー黒の復旧の目処がついた。両機とも数日のうちに実戦配備が可能になる』

 それはかなりの朗報といえた。どちらも極めて強力な機体だ。特にガンバスターは単機で戦局をひっくり返しうるポテンシャルを秘めている。

 この両機の修復が、抜きんでて速く進んだのは有る意味当然である。元々、エルトリウムはガンバスターとシズラーシリーズを運用する前提で作られた艦なのだ。パーツの製造ライン、修理マニュアル、そして整備人員とあらゆる意味で、この2機はダントツで恵まれている。

 量産型であるシズラーシリーズなどは、資材さえ有れば、1から製造することも可能だろう。

『また、ガイキングと翼竜スカイラー、魚竜ネッサー、剣竜バゾラーも近々完全復旧する。大十字博士が尽力して下ったおかげだな』

『いえ、戦闘は門外漢の私では、こんな時ぐらいしかお役に立てませんから』

 大空魔竜の総責任者にして開発者、大十字洋三博士は謙遜するようにそう答えた。実際それは、謙遜でしかない。たった1人とはいえ、特機の開発者である大十字博士がいるということが、どれほど心強いことかは、言うまでもないだろう。
 
 ただ、外部装甲に使うゾルマニウム鋼のストックがほぼ底を尽きてしまったため、今後ガイキングや大空魔竜が大ダメージを受けた場合、深刻な問題が生じるという。

 ガイキングのゾルマニウム鋼や、マジンガーシリーズのジャパニウム鉱石など、特機で使用されている特殊鋼は、エルトリウムの元素転換技術を用いても製造は不可能だ。

 不安は有るが、それでもガイキングの復活も十分な朗報だ。こちらもガンバスターほどの広域破壊能力はないにせよ、一機で戦況を変えることが出来る機体だ。特に、ゾルマニウム鋼の外部装甲は、恐らく戦車級の歯も、重レーザー級のレーザーにも耐えられることが期待できる。

『モビルスーツの修理も大体順調だ。特にヒイロ君達の5体のガンダムは、かなり早い段階で戦線に復帰できると思われる。彼らのスキルは大したものだな』

 元々、ヒイロ・ユイ、デュオ・マクスウェル、トロワ・バートン、カトル・ラバーバ・ウィナー、張五飛の5人は、それぞれ単機での潜入破壊工作を可能とする人材だ。全員が、自機の簡易修理ぐらいは出来るくらいに、機械にも長けている。

 だが、そこでタシロ提督顔色は一変して、渋いものに変わる。

『それ以外の特機は正直厳しいな。コン・バトラーV、ボルテスⅤ、ダイモス。これらは、合体変形機構といい、その動力源といい、門外漢がどうにか出来る機体ではない。現時点では、完全復旧の目処はたっておらん。

 ライディーン、真・ゲッター、マジンカイザーの三機は眠っているそうだ。まあ、この辺りは機体に意志があるからな。なかなかこちらの思うとおりには動いてくれん。

 それと比較すれば、ダンクーガはまだましだが、それでも修理が進んでいるとは言えないな』

 ダンクーガは特機の中では珍しく、軍属の機体である。そのため一応、一通りの製造、修理マニュアルが、軍に提出されている。ただ、軍属とはいっても実際には、葉月博士が独自に開発した機体であり、彼にしか理解できない特殊理論を内包しているという点では、他の特機と変わりない。

「そうですか……」

 ため息をつきながら、ブライトはあまり落胆はしていなかった。元々、その辺りは有る程度覚悟していたことだ。

『バンプレイオス、R-GUNパワード、ビルトビルガー、ビルトファルケン、ダイゼンガー、アウセンザイターは比較的良好だ。何時とは明言できんが、いずれ完全に復活するだろう。

 ガオガイガーや勇者ロボ達は、ディビジョン艦隊の大河長官に一任しているので詳しいことは分からんが、こちらも比較的順調のようだ。

 問題はバルキリーだな。マックス艦長』

『はい』

 話を振られたマックス艦長は、小さく頷くと後に続けて話し始める。

『霊帝戦に出ていたバルキリーは、ほぼ全機が修復不能です。辛うじて、VF-19エクスカリバー3機とYF-19とを、共食い整備でどうにか1機確保できました』

「それは……」

 予想以上のバルキリー隊の被害に、報告を受けるブライトも言葉が出ない。

 元々バルキリーという機体は、見た目ほど華奢な機体ではない。華奢ではないが、それ以上に機動性に富んだ機体である。そのため、限界を超えた機動を行えば、そのダメージが機体に蓄積されていくこととなる。イサム、ガルド、フォッカー、そしてマックス自身に、その妻のミリア。バルキリー乗りは不思議と、機体を限界まで振り回す人間が多い。

『機体はダイソン中尉に使ってもらう事になりました。それ以外の者の機体は、バトル7の製造ラインで、VF-11サンダーボルトを製造する予定です』

 バトル7は全長が1キロを越える巨大戦艦だ。一般的な戦艦と比べれば、搭載能力、修復能力と共に隔絶したものを持っている。その上、1本だけだがバルキリーの製造ラインも用意してある。

 もっとも、バトル7単体でなく、第七船団丸ごとが来ていれば、何の心配もいらなかったのだが。実験艦アインシュタイン、農業艦サニーフラワー、工業艦スリースターなど。第七船団の全船が揃えば、その生産力はエルトリウムに勝るとも劣らない。

『一応、VF-17、VF-19、VF-22の製造データはバトル7のコンピュータにもインプットされています。エルトリウムの艦内工場に余裕があれば、製造ラインを引いてもらいたいところなのですが……』

『無理です。エルトリウムの艦内工場にも限界があります。現状は各特機の修理と、先行分艦隊の補給物資の製造が最優先です。最低でも特機の半数が復帰しない限りは、そのような余裕はありません』

 いっそ冷たいと言っていいくらいのエルトリウムの副長の言葉に、マックスは苦笑する。

『分かっている。私だって現状ぐらいは見えているさ。ガムリン中尉達には、しばらくはVF-11で我慢してもらおう』

 それだって、1本のラインでは月に2機製造が限界だ。すぐに全員分は用意できない。現在機体のないバルキリー乗りは、ダイヤモンドフォースの3人と、ガルドの合計4人いるのだ。さらに言えば、ミリアのVF-1Jは三十年以上前の骨董品だし、保険のためにマックス自身の機体があるとベストだ。

 そうなると必要な数は6機。最低でも全員分がそろうのは、3ヶ月先のこととなる。

 そこまで考えた所で、ふとブライトはまだバルキリー乗りは別にいたことを思い出した。

「そういえば、サウンドフォースの機体は? 彼らの機体はそう簡単に代用機を用意できないと思うのですが」

 サウンドフォース、つまりファイアボンバーの機体は、有る意味特機以上に特殊だ。スピーカーポッドにサウンドブースター、楽器と一体化した操縦システムなど、一般の量産型とでは何もかもが違いすぎる。

 なにより、彼らは『歌う』為に戦場に出るのだ。通常のバルキリーを与えても意味はない。

 だが、マックス艦長は小さく笑い、答える。

『ああ、それなら大丈夫です。彼らの機体は別です。三機とも、修復可能なレベルですので』

 元々、サウンドフォースはあまり前線に出ることが少なかった為、比較的ダメージが少なくてすんだのだという。

『ええ。特にバサラ機は既にオーバーホールが終わっておりますな。後は最終チェックを残すのみでしょうかな』

 マックスは唐突なエキセドル参謀の言葉に、驚きの声を上げる。

『まて。どういうことだ? 私はそんな指示は出していないぞ』

『確かに指示はしておりませんな。ですが、我々司令部にも、整備員達のプライベート時間を拘束する権利は有りませんからな』

『……なるほどな。ファイアボンバーのファンは、我々が思っているよりも多かったというわけか』

『まあ、そういうことですな』

 エキセドル参謀は、飄々とした表情で頷き返した。

 つまり、ファイアボンバーファンの整備士達が、隙間時間を使ってバサラ機の修理を行っていたということだ。現在バトル7で稼働しているバルキリーはスカル小隊の3機のみだ。バトル7の整備士達は比較的身体が空いている。

 マックスは再び、苦笑混じりのため息をついた。

 若干それた話を、元に戻すようにタシロ提督が、口を挟む。

『まあ、こちらはそんなところだ。で、どうするかね、ブライト艦長。ガンバスターやシズラー黒をそちらに回すこともできるが』

 ガンバスターとシズラー黒。どちらも、通常空間を亜光速で移動する能力を持っている。この2機にとって、小惑星帯から地球までの距離など、あって無いようなものだ。修理がすみ次第、単機で地球に送ることが出来る。

 ブライトは少し考えたが、すぐに首を横に振る。

「いえ、それには及びません。元々ガンバスターは有人惑星上での戦闘には不向きな機体ですし、そちらにもいっそう警戒の必要がありますから」

 ブライトがそう答えたところで、管制官のトーレスから「まもなく、横浜基地に到着です」との声がかかる。

「すみません。聞いての通りです。今日の所はこれで失礼します。詳しい情報が入り次第、またフォールド通信で連絡を」

『うむ、気を付けてくれ、ブライト艦長。ああ、それとすまんが、今の時間を教えてくれんか。時計を合わせておきたい』

「はっ、現在、現地時間――日本時間で、2004年12月20日の20時42分18秒、国際標準時間では、11時42分18秒です」

『ほう、西暦か。新西暦の前の年号だな。確か、2010年ぐらいまであったはずだが』

 うろ覚えの、タシロ提督の知識に副長が付け足す。

『はい。我々の元の時代が、新西暦190年ですから、単純に換算しますと、およそ200年前後過去の世界と言うことになります』

『うむ、そうか。副長、艦内の時計の調整を頼む』

『了解しました』

 タシロ提督の言葉を受け、副長はすぐに艦内の時計を修正するよう、指示を出す。
 
「それでは、これで失礼します」

『うむ。何かあったらすぐに連絡をくれ。こちらとしても取れるだけの手段をとる』

「はっ!」

「失礼します!」

 ブライトとマリューは、最後に一つ敬礼をし、通信を切った。










【2004年12月20日20時43分、小惑星帯、エルトリウム】


「BETAか。我々のいく先には必ず困難が待ちかまえているな」

 フォールド通信が切れてブラックアウトしたモニターの前で、タシロ提督は深くため息をついた。

「元々、我々は救援要請を受けてこの時空間に来たのです。困難があるのは必然と言えましょう」

「まあ、それはそうだが、もう少し言い方はないのかね」

「言い方を変えても事実は変わりません」

 副長のデジタルなまでにきっぱりとした言葉に、タシロ提督は苦笑を漏らす。

「それで、提督。この情報はどうしますか?」

 そんな上官の態度にも表情一つ変えず、副長はあくまで事務的に問いかける。タシロ提督はひょいと肩をすくめると、

「隠しておく必要もなかろう。この程度の情報で今更おたおたするヤツなど、αナンバーズにはおらんよ。それよりも、全員に具体的な危険を伝えておく方が遙かに有益だ」

「了解しました。では、1時間後に機動兵器部隊の総員を、エルトリウムのブリーフィングルームに集合するよう通達しておきます。ただし、ジュドー・アーシタとエルピー・プルはこの時間哨戒任務中なので、集合は不可能ですが」

「分かった。そのように頼む。ああ、バトル7、大空魔竜、ディビジョン艦隊とのモニター通信の用意も宜しくたのむぞ」

「了解です」

 短い返答を返した副長は、すぐに準備に取りかかった。






 一時間後、エルトリウムの広大なブリーフィングルームは、100人を越えるαナンバーズの精鋭達が集まっていた。

 中でも異彩を放っているのは、後ろに立っている三体のバーチャロイドだ。

 テムジン747J、アファームド・ザ・ハッター、そしてフェイ・イェン・ザ・ナイト。

 3体の機体が、大きく場所をとっている。それでもまだ十分に広さがあるのは、最大ではここに、氷竜、炎竜ら勇者ロボが集まることも想定しているからだ。

「チーフ! ハッターにフェイも。お前達、直ったのか!」

 足下から見上げ、兜甲児は嬉しそうに声を上げた。甲児はゲッターチームと共に、さっきまで哨戒任務に就いており、今戻ってきたばかりだ。独特の戦闘服姿でマスクを左手に抱えている。

「おおよ! このザ・ハッター様がこれしきのことでっ」

「まだだ。損傷レベル3、活動は可能だが、戦闘教導には多くの支障がある」

 ハッターの元気なはったりを、あっさりチーフが事実を告げて撤回する。

「そうだよー、私も珠のお肌がまだボロボロなの。フェイ・イェンちゃんの華麗なる復活は、またもうちょっと待ってね」

 なるほど、フェイが言うとおり、三機の外部装甲はまだあちこち剥がれている。動くだけならば支障はないが、戦闘を行うのは無謀だろう。

「ええ、でもフェイの場合ちょっとダメージ負っている方が強くなるんじゃないのか?」

 いつの間にか足下にやってきていたリュウセイがフェイ・イェンを見上げながらそう言った。

「えー? そんなことないよ。なんで、そんなこと思ったの?」

「え? だってハイパーモー……」

 フェイの否定の言葉に、リュウセイがさらに言葉を返そうとしたその時だった。

『静粛に!』

 副長を従えてやってきたタシロ提督が、マイクを通して大きな声で皆に語りかける。

「リュウ、何やってるの?」

「っとやべ。悪りぃ、アヤ。すぐいく」

 アヤ・コバヤシ大尉に窘められ、リュウセイは駆け足で、列の前へと戻っていった。




『先ほど、地球に向かった先行分艦隊から連絡が入った。地球に降りた先行分艦隊は、日本に降下。現地で戦闘を行い、これに勝利した。

 敵は、人類に敵対的な地球外起源種――Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race――通称BETAという。副長」

「はっ」

 タシロ提督に促され、副長は後ろの大きなモニターに、先ほどラー・カイラムからフォールド通信で送られてきた、BETAの画像付きデータを映し出す。

 効果はてきめんだった。

「うわっ!?」

「なんだよ、あれ?」

「やだ、気持ち悪い」

 一斉に、驚きと嫌悪の声が挙がる。

 確かに外見のインパクトだけは、BETAは宇宙怪獣や使徒にも勝るだろう。

 だが、副長はそんな声が聞こえていないかのように淡々と説明を続ける。

「BETAは、7種類が確認されています。各種の詳しい能力は後で各自確認して下さい。

 現時点はBETAの目的は不明。地表にハイヴと呼ばれる『巣』を築き、その活動範囲を広げていますが、宇宙怪獣のような人類に圧倒的な敵意を示すわけでもないようです」

 そこで副長は一度言葉を切った。そして、皆に理解が広まった頃合いを見計らい、話を続ける。

「地球に存在するハイヴは26。そのうち、22,26,12,9の四つはこの世界の人類が自力で奪取。そして、この度αナンバーズ先行分艦隊が、甲21ハイヴ、通称佐渡島ハイヴの攻略に成功しました。先行分艦隊に死傷者はありません」

 今度は、「おお!」と歓声とどよめきが上がる。

「流石、アムロ大尉達だな」

「それを言うなら、流石ブライト艦長だろ」

 皆口々に、先行分艦隊の功を讃える。

 いくら、アムロやカミーユ達のことを信頼しているとはいっても、一抹の不安はあったのだ。いかにαナンバーズとはいえ、今回の先行分艦隊は、エヴァンゲリオンと鋼鉄ジーグを除けば、あとは予備機で形成されている。

 絶対に勝てる保証など無い。敵が、宇宙怪獣や霊帝よりも弱い保証などどこにもなかったのだ。

 副長は、皆の歓声とどよめきが収まったのを見計らい、現状の説明を続ける。

 この世界は、西暦2004年、約200年前であること。

 とはいえ、こちらの歴史では200年前にBETAが襲撃したという事実など無いことから、歴史の直接繋がらない平行世界であると思われること。

 現在ユーラシア大陸はほぼ、BETAの勢力下にあること。

 最大時、60億を数えた人口も現在は10数億程度まで減少していること。

 予想以上に深刻な事態に、αナンバーズ達の顔色も次第に暗くなっていった。

「くそっ、イデオンさえあれば、ハイヴなんてイデオンソードで突き刺してやるのに!」

 黙って話を聞いていたコスモが、悔しそうにそう声を上げる。

「馬鹿! そんなことをしたら、地球だってただじゃすまないわよ!」

 だが、すぐにカーシャが甲高い声でコスモの発言を窘めた。

 実際、それはやめた方がいいだろう。例えば今回の佐渡島ハイヴでそんなことをしていたら、翌日ブラジルかアルゼンチン辺りから、遺憾の意が伝えられていたはずだ。

「よせ、コスモ。苛立つ気持ちは分かるが、今我々に出来ることは少ない。タシロ提督の言葉を聞くんだ」

「ッ、分かったよッ」

 ジョーダン・ベスに諭され、コスモは舌打ちをしながらも、前に向き直った。以前のコスモからは想像の付かない態度だ。αナンバーズに入ってから、コスモの攻撃性も多少は軽減している。

 現在、ジョーダン・ベスが艦長を務めていた戦艦、ソロシップは稼働していない。

 イデの発動停止に伴う極端な能力の低下に見舞われたソロシップは、現在エルトリウムの格納庫に収納されている。当然、ベス以下ソロシップの搭乗員達は全員、エルトリウムに移っている。

 戦艦に戦艦を収納するなど、とんでもない話だが、2艦を見比べれば特別変な話ではない。

 ソロシップが全長400メートルに過ぎないのに対し、エルトリウムは全長70キロの超巨大戦艦だ。元々全高200メートルのガンバスターや、全高100メートルのシズラーシリーズを数百機収納可能なエルトリウムにとって、ソロシップ一隻を収納するくらいはどうということもない。

 ソロシップに乗っていた難民達にとっては、幸いだっただろう。エルトリウムの中は、コロニーよりよほど快適な居住空間なのだ。

 そうしている間にも、副長とタシロ提督の説明は続く。

「……というわけで、BETAの太陽系における本拠地は火星と見られています。

 地球に存在する最大のハイヴはフェイズ6。対して火星に存在するハイヴは、一番小さなものでフェイズ6、最大のハイヴ、通称『マーズゼロ』に至っては、フェイズ9です。火星のBETA勢力は、地球の比ではない、と断言できます」

「おいおい、それじゃあ火星にはどれくらいBETAがいるんだ?」

「下手すれば、数だけなら宇宙怪獣クラスかもよ?」

「とにかく、楽な戦いにはならないだろうな……」

「へっ、面白れぇ。燃えてきたぜ!」

「アニマスピリチア!」

「厳しい戦いになりそうね……」

「大丈夫です、お姉さま! 努力と根性さえ忘れなければ、私たちの勝利は揺るぎません!」

 皆、身近な者と率直に言葉を交わす。さすがに、そこには動揺の色が色濃く映し出されている。

 早速、BETAとの戦闘方法について話し合う者。動揺する同僚を励ます者。いきなり、格納庫方向に走っていく、丸いサングラスをかけた男。その後ろを付いてフワフワと飛んでいく長い黒髪と尖った耳を持つ少女等々。

 しばらくの間、ブリーフィングルームは、喧噪に包まれた。

 それでも、歴戦の戦士達はすぐに、平静を取り戻す。静けさが戻ったところで、最後にタシロ提督がもう一度、口を開く。

「今説明したとおり、火星はBETAの一大勢力下にある。ここにいる我々も決して安全とは言い切れん。よって、今後資源切り出し部隊には、必ず機動兵器部隊から護衛を付けることとする。

 作業効率は大幅に落ちるが、やむを得まい。また、現在稼働している機動兵器部隊の皆には、大きな負担を強いることになるが、数日中にはガンバスター、シズラー黒、ガイキングらが戦線に復帰する。それまでの辛抱だ」

「了解しました!」

 皆から不満の声を上がる前に、スカルリーダー、ロイ・フォッカー少佐はそう大きな声で返した。

「うむ。では、最後に今更言うことではないかも知れんが、念を押しておく。何があろうと、絶対に火星には近づいてはならん。ここに改めて厳命しておく!」

 とタシロ提督が、宣言したその時だった。メインブリッジの管制官から、緊急の連絡が入ったのは。

『提督! 第98格納庫が稼働しています。赤いバルキリーと、光の球体に包まれた人型が発進、サウンドフォースのバサラ機と、プロトデビルンのシビルです!』

「な、なんだと?」

「両者の進行方向は?」

 動揺するタシロ提督の横から副長が質問を投げかける。

『進行方向……出ました! 火星です。火星に向かっていると思われます!』

「「「………………」」」

 どうしようもなく、容赦ない沈黙が辺りを支配した。

「だ、だ、だ……誰か、止めろお!!」

 タシロ提督の絶叫が、静まり返ったブリーフィングルームに響きわたる。

 だが、即座に反応を返す者はいない。皆の顔には書いてある。「どうやって?」と。

 止めるには二つの問題がある。

 一つは、速度的な問題だ。バサラが乗っているのはVF-19改バルキリー。αナンバーズの機体の中でも特に高速を誇る機体だ。

 現在稼働可能な機体で、これ以上の速度を誇る機体はない。スーパーパックを装備したVF-1でも、まず追いつけないだろう。

 そして、もう一つの問題はもっと深刻だ。

 彼を誰だと思っているのだ? 熱気バサラだ。

 熱気バサラが何をしにいったと思うのだ? 歌を歌いにいったのだ。

 熱気バサラが、歌を歌いにいったのだ。

 一体誰が止められると言うのだろうか。熱気バサラの歌を。

 αナンバーズの皆はすでに半ばあきらめたように、苦笑を浮かべていた。










 絶叫、騒然とするブリーフィングルームの様子など、知る由もなく、愛機を駆り宇宙に飛び出した熱気バサラは、最高速度で火星に向かっていた。ファイアーボンバーファンの整備士達のおかげで、機体は完全に復活している。

「へっ!」

 ギター型操縦桿を引きならし、バサラは不適に笑う。

「アニマスピリチア!」

 生身のまま、バルキリーと同速度で宇宙を飛ぶシビルも、嬉しそうにバサラに答える。

「いくぜ、BETA共! 穴掘りなんて下らねぇぜ! それよりも、俺の歌を聴けえぇ!!」

 次元を越えた、この世界の宇宙にも、また熱気バサラの歌が響きわたろうとしていた。


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