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No.4010の一覧
[0] 中身がおっさんな武(R15)[つぇ](2008/09/16 21:28)
[1] 第1話 おっさんの価値[つぇ](2008/12/15 02:42)
[2] 第2話 おっさんの想い[つぇ](2008/10/01 01:04)
[3] 第3話 鉄壁のおっさん[つぇ](2008/10/01 01:04)
[4] 第4話 多忙なるおっさん[つぇ](2008/12/15 02:42)
[5] 第5話 無敵のおっさん[つぇ](2008/12/15 02:42)
[6] 第6話 おっさんと教官と恋愛原子核[つぇ](2008/12/10 01:17)
[7] 第7話 おっさんは閻魔大王[つぇ](2008/10/01 01:05)
[8] 第8話 おっさんの卒業式と入学式[つぇ](2008/10/01 01:05)
[9] 第9話 おっさん中毒[つぇ](2008/10/01 01:05)
[10] 第10話 おっさんの苦悩[つぇ](2008/10/01 01:05)
[11] 第11話 はじめてのおっさん[つぇ](2008/10/01 01:06)
[12] 第12話 おっさんは嫌われもの[つぇ](2008/09/25 03:18)
[13] 第13話 暴露のおっさん[つぇ](2008/09/19 02:02)
[14] 第14話 地獄のおっさん[つぇ](2008/12/05 22:21)
[15] 第15話 おっさんの空しさ[つぇ](2008/10/27 01:51)
[16] 第16話 スパルタン・おっさん[つぇ](2008/12/27 01:44)
[17] 第17話 おっさんとおっさん[つぇ](2008/09/29 01:06)
[18] 第18話 おっさんの真意[つぇ](2008/09/29 01:06)
[19] 第19話 苦肉のおっさん[つぇ](2008/10/01 01:06)
[20] 第20話 おっさんへの反乱[つぇ](2008/10/03 02:35)
[21] 第21話 おっさんの覚悟[つぇ](2008/12/27 01:44)
[22] 第22話 おっさんと将軍[つぇ](2008/10/24 02:06)
[23] 第23話 おっさん、逃げる[つぇ](2008/12/27 01:44)
[24] 第24話 おっさんの戦い[つぇ](2008/10/13 01:49)
[25] 第25話 夜明けのおっさん[つぇ](2008/10/13 01:49)
[26] 第26話 おっさんのカウンセリング[つぇ](2008/12/27 01:44)
[27] 第27話 おっさん、解禁[つぇ](2008/12/27 01:45)
[28] 第28話 おっさんの原点[つぇ](2008/11/15 03:09)
[29] 第29話 おっさんVersion2.0[つぇ](2008/10/27 01:52)
[30] 第30話 おっさんの謁見[つぇ](2008/10/27 01:52)
[31] 第31話 空のおっさん[つぇ](2008/10/30 01:31)
[32] 第32話 おっさんの悲願[つぇ](2008/12/05 22:21)
[33] 第33話 おっさんのイメージ[つぇ](2008/12/05 22:21)
[34] 第34話 おっさんの誤解[つぇ](2008/11/08 02:03)
[35] 第35話 おっさんの別れ[つぇ](2008/11/11 01:00)
[36] 第36話 おっさんとアラスカ[つぇ](2008/11/11 01:01)
[37] 第37話 おっさんの帰姦[つぇ](2008/11/19 00:38)
[38] 第38話 おっさんの誕生日プレゼント[つぇ](2008/12/10 01:18)
[39] 第39話 おっさんの再会[つぇ](2008/12/27 01:46)
[40] 第40話 おっさんの誤解~日本編~[つぇ](2008/12/10 01:18)
[41] 第41話 噂のおっさん[つぇ](2008/12/15 02:43)
[42] 第42話 おっさんへの届け物[つぇ](2008/12/15 02:43)
[43] 第43話 おっさんの恋愛[つぇ](2008/12/27 01:45)
[44] 第44話 おっさんのシナリオ[つぇ](2008/12/27 01:47)
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[4010] 第40話 おっさんの誤解~日本編~
Name: つぇ◆8db1726c ID:a1045c0b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/12/10 01:18
【第40話 おっさんの誤解~日本編~】

<< 宗像美冴 >>

12月18日 朝 国連軍横浜基地 PX

「おはようございます。大尉」
「おはよう、宗像。他の連中は、もう済ませてしまったぞ」

そう言った伊隅大尉の前には、すでに朝食の盆は無かった。
どうやら、少し遅くなってしまった私を待っていてくれたらしい。

昨晩の白銀中佐は優しかったが、何度も何度もその欲望を吐き出したことで、私は疲労を感じて突っ伏してしまった。
中佐はそれを確認した後、その日の予定通り、速瀬中尉と涼宮中尉の元へと赴こうとした。
聞きしにまさるタフさに感心しつつも、幾分かの嫉妬心と寂しさと好奇心から、少々無理をして、ついて行ってしまった。──今思えば、止めておけば良かったが。

ともかく、その無理がたたり、今朝は寝坊する所だったのだ。

「お待たせしてしまって、すみません」
「いや、気にするな。上手くいったのだろう?」

伊隅大尉には、昨日、白銀中佐と相談してみることを話していた。
結果をいつ報告しようかと思っていたが、大尉の方が気を利かせてくれたようだ。
全員に打ち明ける前に、ふたりで話がしたかったから、この場はありがたかった。
もっとも、今まで報告しなかったという事が、昨晩に何があったかを表しているのだが。

不作法ではあったが、大尉が勧めてくれたので、食事をしながら大まかに報告をした。

「そうか。中佐は、受け入れてくれたか」
「はい」

揺れたままという状態に耐えられず、思い切って中佐に内心を打ち明け、その気が無さそうであればすっぱり諦める、と決めていたが、中佐は私の迷いを察し、半ば強引に事を進めてくれた。
引き返せない一線を越えてしまった事に、幾分の寂寥感はあったが、私は満足している。

「故郷の男はどうする?」
「手紙を書こうと思います」

中佐は、あの人を想ったままで良いと言ってくれたが、私はそこまで器用な女じゃない。
それに、あの人が二股をかけるような女を受け入れる訳がない。
あの人には、手紙で恋人が出来たと伝え、未練を断ち切ることにした。

「そうか……。私は、まだそこまでの覚悟はできんな」

大尉は、少し寂しげに、残念そうにそう答えた。
年月の深さが想いの深さに比例するとは思わないが、伊隅大尉の想い人は、ものごころついた頃から、一途に想っていた相手だ。
そうそう吹っ切れるものではないだろう。

「それに、新任に疎外感は味わわせたくない。もし私から告白するにせよ、それは、他の連中が落ちてからのことだろうな」
「あっ──」

私は、白銀中佐への揺らぎで頭が一杯で、新任への配慮を忘れていた。
大尉とて、私と似たようなものだっただろうに……。

「すみません……自分の事ばかり考えていました」
「はは、私の事は気にするな。部下の幸せを見守るのも、上官の勤め……だったかな?」
「お言葉に、甘えさせて貰います」

これ以上の同情は、かえって失礼だろうからそう言ったが、先任の中でぽつんと残ってしまった大尉の事を考えると、申し訳なく思った。

伊隅大尉は、隊内の猥談を推奨した張本人。
自業自得ともいえる状態だけれど──いや、だからこそ、責任感の強い大尉は、自分が最後だ、と決めたのだ。
しかし、榊などが落ちるのを待っていたら、いつまで経っても生殺し状態だと思うのだが、それは大尉も覚悟の上だろう。

この人は以前、中佐から口説かれれば断れないだろう、と仰っていた。
私と大尉の悩みだった、女としての魅力については、「好きな男が居る女を口説く趣味はない」という中佐のポリシーを聞いて安堵した。
もっとも、「基本的に」という前置きが付くらしく、私に関して言えば、中佐はどうしようか迷っていたとのこと。
その言葉を聞いて、私の自尊心は幾分満足した。彼のポリシーを揺らがせる程度にはあったということだ。

伊隅大尉への意見も聞いてはいたが、それを言ってしまえば決意を惑わせるだけだろうから、私は何も言わなかった。
今後、伊隅大尉をどうするかは、中佐にお任せしよう。
こういう事はでしゃばるべきではないのだ。

しんみりとしてしまったので、最後に軽口で、このささやかな“同盟”の締めくくりにしようと思った。

「今度、中佐の下着でもくすねてきますので、夜の肴にでもしてください」

伊隅大尉とて、この年で自慰行為が皆無なわけもないだろう。
馬鹿を言うな、という言葉が間違いなく返ってくると思っていたのだが──

「……本当か?」

期待がこもった目でこちらを窺うさまを見て、いつまで耐えられることやら、と思った。
同時に、どうやって、中佐から下着をくすねたものやら、と頭を悩ませる事になった。



…………………………



<< 榊千鶴 >>

12月18日 午前 神奈川県 多摩川付近

──まったく、どうして私が、こんな……。

今朝のブリーフィングで、中佐から開口一番、帝都出張に副官として随行するよう、命令があった。
正直、この野獣とは、二度とふたりきりになりたくは無かった。
以前の私なら食い下がった所だけれど、私は不満を表面に出すことなく、承知した。

なぜ、よりによって私なのだろうかと疑問に思い、理由を尋ねてみたところ、「特に理由はない」と教えて貰えなかった。
私だって、変われるものなら変わりたいというのに……全員の羨ましげな視線が痛かった。

数時間前の同僚の「いってらっしゃい!」という明るい言葉とは裏腹なジト目を思い出すと、随行を命じた中佐が恨めしく思えた。

その中佐は今、上機嫌で軍用車の運転をしている。
本来であれば、私が運転するのが筋だ。訓練兵時代に、少しではあるが車の運転技術は教わったし、実際、さきほどの“休憩”までは、私が運転していたのだ。
しかし、私が休憩で疲弊してしまったので、中佐が「運転を変わろう」と、私の返事もまたず、シートに座ってしまった。

──このままではいけない。

自分から動かなければ、この流れは変えようがない。
思い切って、中佐に話しかけた。

「あの……もう、こんな事は止めていただけませんか?」
「こんな事、とは?」
「さっきの休憩や、一昨日の夜の事です。私も忘れますので、中佐も忘れてください」

私の身体には、まだ“休憩”の余韻が残っている。
以前なら、想像だにしなかったこの感覚。私の身体はどうにかなってしまったようだ。……一昨日の出来事から。

一昨日の夜、彼は何か浮き浮きとした様子で、にっこり笑って私に親しげに話しかけてきた。
どんな言葉をかけられたか記憶にないけれど、なぜか私の部屋に行くことになり、入室してすぐ彼はケモノになり……私の身体の全てを、強引に奪った。
なぜか会話の中で、中佐の求めに頷いた覚えだけはあるので、後悔した所でどこにも訴えようがない。

そして、翌朝目覚めた時、私はひとりだった。
シーツの赤い染みと、股間の痛みと、私の体中にまとわりつく乾いた精液が、中佐との行為が現実だったことを証明していた。
どうやら、中佐は失神した私を置いて、自室に戻ったと推測した。
自分のうかつさに涙が出そうになり、ひどく落ち込んだものの、二度と、流されてなるものかと決意していた。

幸い、失神する直前に、他のメンバーには言わないで欲しいとの願いは聞いてくれたらしく、私との関係はまだ気付かれていない。
このまま関係を終わらせれば、何も無かったことにできる。──私の身体の変化を除いて。
しかし、中佐の返答は、私の望みとは正反対のものだった。

「却下」
「……何故です?他にも女性はいらっしゃるでしょう?」

「俺は独占欲が強いんだ」
「私は貴方が執着なさるほどの女じゃありません。“ゲジマユ”なんでしょう?」

昨日から考えていた断りの理由をつらつらと述べるが、中佐の牙城は崩せなかった。

「TACネームの事は、俺の本心じゃないさ。……それに、執着するほどの女だよ、お前は」

──くっ!このスケコマシ……!

歯の浮くような台詞とウインクに、つい顔が赤くなる。
だけど、この程度の口説き文句で、落とされてはたまらない。

「それは、他の連中に言ってやってください。中佐につけられたTACネームを気にしている者もいますので」

鎧衣と珠瀬が、つけられたTACネームをいまだに、いや、今だからこそ気にしている。
彩峰などは、かえって自信満々になってしまっているが。

「皆の気持ちはお気付きでしょう?よりどりみどりじゃないですか」

訓練において、あれだけこちらの心理を読み取った中佐の事だ。
皆の想いに全く気付かないわけがない。

「まあ、な……。丁度良いから、聞いておこうか」

中佐は案の定、肯定の意を示したが、少し考え込んだ後、私に質問をひとつしてきた。

なぜ、出張から帰って来た時、新任連中が好意的になっているのか、と。

私は、御剣と彩峰から、中佐の本意とその根拠、いつどうやって気付いたかなど、彼女達から教えて貰った事を、殆どそのまま伝えた。
中佐は、その説明で納得したようだ。

「道理で、俺を見る目が変わったわけだ。以前は、毛虫でも見るようだったってのに」

中佐は冗談交じりで笑って言ったけれど、私は少し恥ずかしかった。
それほど、あからさまな嫌悪の目で見てたのだろうか……。

「しかし、神宮司の線からバレるとはねぇ。俺も彼女もうかつだったが、それを俺に悟らせないとは、御剣も彩峰も、大した役者じゃないか」

確かに。
私と珠瀬と鎧衣も全く気付かなかったのだ。
彩峰など、中佐に気がありがなら、私たちに合わせて悪口を言っていた事になる。
彼女の神経の図太さに、改めて呆れたが、元の話からだいぶ逸れていたので、話題を戻した。

「ともかく!中佐の事を想う女性は他に大勢います。平凡な私にこだわる必要はないでしょう!」
「平凡じゃないぞ。その野暮ったい巨大三つ編みを解いて眼鏡を取れば、凄い美人だぜ?」

強引に決着を付けようとしたのだけれど、中佐はまた歯が浮くような台詞で、私を赤くさせた。
野暮ったい、という所に多少引っかかったが。

──そんなに、悪いかしら。三つ編みと眼鏡……。

「第一、必要かそうでないかで言えば、相思相愛なのに別れる必要もないな」

──はぁ?

続けて口にしたその言葉に違和感を感じたので、突っ込んで訊ねてみた。

「相思相愛とはどういうことですか?私は、中佐に特別な感情はありませんが」
「え?だが、帰って来た時──」

戸惑った中佐の説明を聞いて、私は頭痛を感じた。
まさか、出張から帰って来た時の、周りに合わせた仕草や、怒りの紅潮を見て勘違いするなんて……!
……いや、出張後の仕草は、私が悪いかもしれない。

後悔やら納得やら怒りやら情けなさが頭をぐるぐる回った。
その思いは、能天気な中佐の声によって中断させられた。

「済んだ事は仕方がない。これから好きになれ。誤解から始まる恋愛ってのはよくある話だ」
「そんな気は起こりません!」

私は、中佐の誘いは一切受け入れるつもりはなかったのだけれど、……この時、中佐の表情が変わった。
意地悪そうな表情に、冷たい目線──訓練の時とも異なる、私を蔑む目だ。

「良く言う。さっきも一昨日も、随分ノリノリだったじゃないか」
「あ、あれは……」

自分の痴態を思い出し、羞恥が湧いた。
そして中佐は、私の反応にかまわず、立て続けに言葉で追いこんできた。

「俺に好意がないなら、お前は誰にでも股を開く尻軽ということになるな?」
「本気で嫌だったなら、一昨日もさっきも、もう少し抵抗できただろう?」
「一昨日、お前が上になったとき、随分腰を振っていたが、あれは?」
「あの時、自分から舌をからめてきたのはどう説明する?」
「さっきバックから突いてやったとき、乳首をつまんでくれと、おねだりしたのは誰だったかな?」
「何も命令してないのに、舐めたり咥えたり飲んだりしたのは、何のサービスだ?」

「言わないで……」

私がやっと放った言葉は、蚊の鳴くような声だった。
そんな小さな抵抗など聞いてくれるはずもなく、この男はさらに私を追い詰めた。

「良い事を教えてやる。俺は今まで多くの女を見てきたが、お前はその中でトップクラスの淫乱女だ」

……みじめだった。
涙があふれ、視界が滲む。けど──

──どうして?こんなに意地悪されているのに……。

なぜか反抗心は起らず、体の奥底に震えが走り、下腹部が熱くなるのを感じた。

数秒の沈黙の後、中佐は表情を緩めて、ふ、と穏やかな微笑みを浮かべて、言った。

「だが、俺はそんな淫乱な“千鶴”を愛してるぞ」

──もう、わけがわからない。

何を考えていいのか、何を考えるべきか、混乱で頭がおかしくなりそうだった。
そんな私をよそに、中佐は微笑を称えたまま、運転に集中した。

そして、またしばらく放置した後、その微笑を消し、冷たい目線でチラリと私を一瞥した後、前を向いたまま……私に奉仕をするよう“命令”してきた。
私の理性は、当然、断るべきであると即決していた。が……。

──これが、最後よ……。

私は、頼りない決意を胸に、言われるまま、中佐の股に顔をうずめ、人家が見えるまで奉仕を続ける事になった。



…………………………



<< 御剣冥夜 >>

12月18日 午前 国連軍横浜基地 PX

「──てわけでさ。自分でさせておいて爆笑するのって、酷いと思わない?」
『あはは!』

休憩時間、速瀬中尉の昨日の報告に、笑い声を上げる中佐の恋人たち。
先日入隊した鑑もすっかり打ち解けている。

最初は戸惑ったこの凄まじい程の猥談も、だいぶ慣れた。
中佐がいらっしゃる時はなりをひそめていたが、此度の出張で不在になった途端、再開した。

昨晩は、速瀬中尉と涼宮中尉と宗像中尉のお三方が中佐のお相手だったようだ。
そこで、鼻フックなる小道具を持って、3人並んで豚の真似ごとをさせられたそうで、相変わらずの中佐の変態ぶりを知らしめている。──変態と呼ぶと本気で怒るそうなので、思うだけだが。

3人とも抵抗があったものの、少年のように目を輝かせる中佐には逆らえなかった。
初めは気のりしなかったようだが、やっているうちに白熱して羞恥心が麻痺してきたところで、中佐が堪えきれないように噴き出し、大笑いしたとのこと。

「水月だって、笑い転げる中佐を殴る蹴るしたんだから、おあいこでしょ?」
「そう仰る涼宮中尉が、最もダメージを与えていたように見えましたが」
「あはは、気のせいだよ。宗像中尉も、目立たないようにやってたよね」
「人が恥ずかしさに耐えて要望に応えたというのに、笑われたのですから、少しくらいは良いでしょう」

目立たないようにボディばかり狙った所に、お三方の怒りを感じたが、鋼のように鍛えた中佐にはあまり効果がなかったようで、少し悔しそうだった。
その後、普通に──といっても、私の常識からすれば異常なのだが──愛し合い、仲直りした、という所で、昨晩の報告が終了した。

「けど、宗像も初体験の直後に、無理して参加しなくて良かったのに」
「私は新参者ですので、祷子を見習って、率先して経験すべきかと思っただけです」

なるほど。新参者は、そう振舞うべきなのか。
私も、もし、中佐と結ばれたら……そうするべきなのか。しかし、豚の鳴きまねは少々抵抗が……。

「まあ、宗像の可愛い反応見れたからいいけどね。ありゃ貴重だわ」
「そういう速瀬中尉も、なかなかの豹変具合でしたよ」

ふふん、と不敵な笑みを交わし合うふたり。
いつものやりとりだが、宗像中尉の態度が微妙に強くなったような気が……いや、気のせいではないだろう。

ふと、それを楽しそうに眺めている鑑に、訊きたい事があったので、声をかけてみた。
鑑は、どうも我々と違い、“あの”中佐を直視できている。
それも、目を合わせて会話していたので、不思議に思っていたのだ。

「うーん。質問の意味がわからないんだけど?」
「いや、そなたは中佐を見て、何かこう……妙な気分にならぬのか?」

「好きだから、ドキドキはするよ?」
「いや、その……なんと言うか、神々しさとか、感じぬのか?」

私の言葉に、鑑は心底おかしそうに笑い声を上げた。

「あっはは!あのタケルちゃんが、神々しい?御剣さん、おっかしー!」

──わ、私が、おかしいのか?

「だ、だが、確かに数日前から……」
「タケルちゃんは、昔からあんな感じだよ?小さい頃よりは、ちょっと精神的に大人になりすぎちゃったくらいかな。変わったのは、御剣さんの方じゃない?」

そうであろうか。
確かに、出張の間に、私の想いは変わったが……それはむしろ、中佐の性の乱れ具合を知り、負の方向に変わったはず。
そんな我等の会話を聞きつけたらしく、柏木が割り込んできた。

「鑑、中佐を見て何も感じないの?」

それを皮切りに、他の隊員も同調して、私が異常でない事に安堵したが、そうなると鑑の反応が不思議だった。

「もしかして、鑑は白銀中佐の事、それほど好きじゃないのかなぁ?」

涼宮の言葉は、表情からして明らかに冗談だったが、鑑には、通じなかった。
白銀中佐の事ならムキになる事は、昨日の段階であっさり判明している。

「そんなことないよ!わたしの半分は、タケルちゃんで出来てるんだから!」

そして涼宮に、自分がどれだけ中佐を愛しているかをこんこんと言い聞かせるように説明し、それは「わ、わかったから。ゴメン」という涼宮の謝罪が三度繰り返されるまで続けられた。

「鑑少尉は幼馴染だから、特別なのかしら?」
「うーん。そうなんですかね。わたしは、よくわからないですけど」

風間少尉の推測には、鑑はそう返した。
違いの分からない鑑に尋ねても、理由など出てこないのは当然であろうが、私も風間少尉の論に賛成だ。
幼馴染ゆえ、等身大の中佐を見ているのであろう。
あの神々しさを感じれぬのは、勿体無い気もしたが、羨ましいとも思った。

「榊少尉を除いて、全員、同じような反応をしていた。白銀中佐を好きになる女性は、そうなるはずだが……特例がいたか」
「全員て、わ、わたしも、ですか……」

宗像中尉の真面目に分析に、珠瀬が落ち込んだ様子を見せた。

「ん?お前、時々中佐に見とれてるぞ?直視できないなら、私たちと同じじゃないか」
「う……そ、そうですか……」

自分の気持ちに気付いていなかったとは驚きだったが、この場に居ない榊を除いて皆、中佐に懸想していることくらいは周知の事だ。
榊以外の人間がいつ落ちるかの話題もたまに出ていた。
珠瀬は、自分は榊側と思っていたのであろうか。

──私は……いつか中佐と結ばれる時が来るのか?

あれから、度々出くわすものの、中佐は意味ありげな言葉を吐くのみで、今一歩、こちらには踏み込まれぬ。
私は、いつでも口説かれる覚悟をしているのだが、その想いをかわすかのように、中佐は毎度、穏やかな笑みとともに私を残して去るのだ。

その度、私は自分の女の部分に自信が失せてゆく。
殿下という存在がいなければ、私は、とうにどん底になっていたであろう。

殿下がメンバーのおひとりと聞いて、脂汗やら奇声やらが湧いたメンバーも、今では落ち着いたものだ。
私も、クーデターの時のご様子から、そうなってもおかしくないと、ある程度想像はしていたが、かなり驚愕した事には変わりない。
同時に、私はあの時、少し安心したのだ。私と同じ容姿である殿下を、恋人とされた事に。

少なくとも、私は白銀中佐の好みから外れていないはず。
にもかかわらず、口説かれぬという事は……もしかしたら、私の性格か振る舞いが、お気に召さぬやもしれぬ。
……築地のように、振舞ってみようか。

私がひとりで悩んでいたところ、柏木が新たな話題を振ってきた。

「話は変わりますが、神宮司大尉に聞きたかった事があるんです。3日空けちゃ駄目な理由って何ですか?」

それは、初耳だ。

「え!?……えっと、その…………」

突然の振りに、戸惑いを見せた神宮司大尉だったが、数秒後、諦めたように溜息をひとつ、ついた。

「いつか言う時が来ると思ってたし、言っておくわね…………禁断症状が出るの」
「禁断症状?一体、何の?」

全員、首を傾げたが、元207Bは私を含めて皆、顔がこわばった。
私は、先ほど口に含んだ合成玉露をそのままに、緊張していた。

──まさか、麻薬?そんな馬鹿な。

あの時、榊が勢いで口にした麻薬説が、まさか……。

固唾を飲んで見つめる我等を見て、大尉は天を仰いで、ぽつりと漏らした。



「……中佐の、精液……」



数秒間、その言葉を理解しようと努め、認識と同時に──

──ブフゥっ!

鼻から合成玉露が出た。


気管にも入ってしまい、咳き込んでしまったが、飲み物を口にしていた全員が同じ状態だったのは、幸いか。
中佐が出張中でよかった。このような姿、あの方にはとても見せられぬ……。

咳き込んだり、うつむいて笑いを堪えたりしている我等には何もいわず、神宮司大尉は症状についての説明を勝手に続けた。
築地は、一応堪える気はあるようだが、その笑い声はかなり目立っている。
伊隅大尉が、その築地の頭に拳骨をひとつくれて、神宮司大尉の説明に応えた。

「はぁ、心因性のモノですか……。しかし、なんと言ったらいいか」
「何も言わなくていいわ。副司令に比べれば、貴女たちの反応は可愛いものよ。……でも、貴女たちも、もしかしたら私と同じになっているのに、気付いていないだけかもよ?」

後半の言葉は、やや冗談めかしていたが、本気の色も見えた。

「しかし、先日のアラスカ出張の間、誰もそんな症状は出ませんでしたが?」

宗像中尉の反論には、神宮司大尉はさらに返した。

「私が前回発症したのは、5日目。出張は何日だったかしら?」

全員、否定する明確な根拠も出せず、黙り込んだ。
だが、証明するのは簡単な事で、5日ほど「中佐断ち」をすれば良いのだ。
それに気付かないわけでもあるまいに、誰もそれを言い出さないところをみると、証明するのが怖いのか、証明の為に5日も空けるのが嫌なのか。

考え込んだ全員を満足そうに見て、神宮司大尉が口調と表情を変えて、立ち上がった。

「さ、そろそろ時間です。伊隅大尉」
「は、はい。……よし、全員、シミュレーターデッキに戻るぞ」
「了解」×12

その時には、皆、すでに戦士の顔になっている。
さきほどまでの、猥談やら恋愛やらの軽い空気は欠片もない。

戦術機での扱いにおいては、先任にひけを取らぬ我等新任だが、この切替の凄さは、まだ徹底しきれない所だ。
この、なんとも頼もしい先任たちに追いつくべく、私も精進しよう。



…………………………



<< 榊千鶴 >>

12月18日 午前 帝国軍本部基地 講習会場

帝都に到着した時には、白銀中佐は、いつもの毅然とした軍人の態度になっていた。
私はどうしたら良いか迷ったものの、彼と同じように、普段の軍人としての態度を取る事にした。これが正解だろう。
もっとも、口を開くと中佐の精臭が漏れそうなので、できるだけ口を閉じるようにしてはいるが。

そして、愛想のあまり良くない担当官に、広めのホールの壇上へと案内された。
講習会とは聞いていたが、これほどの大ホールだとは想像していなかった。
スクリーンには、講演者の顔がアップで映し出されるように、セッティングされていた。
この間、担当官からの説明は殆ど無く、説明資料として、XM3マニュアルは全員に配布してある、という一言だけだった。

今回の出張における私の役割は、単なる添え物で、黙って座ってればいいとの事だった。
お前が説明しろ、といわれたらどうしようかと思っていたけれど、それは杞憂で済んだ。

XM3に関しては白銀中佐が第一人者。
機密を除けば、応えられない質問などはない。
安心して見ていられるはずだったけれど……私は、段々と怒りが沸いてきた。

──何の茶番よ、これ!

「質問!登録データに関しての応用について──」

中尉階級の、服装からして斯衛の衛士が挙手し、口にした質問を聞いて、私はまたうんざりした。

──それ、さっきも別の人が言ったじゃない!

マニュアルを見ればわかるような事や、同じような質問が繰り返されている。
中佐はその度に、何ページ目に書いてある事を示すだけではなく、丁寧に回答していた。

「──以上だ。理解できたかな?」
「おお、記載に気付きませんで申し訳ない。さすがは希代の英雄。何でもそつなくこなしますなぁ」
「いやいや、さすがは煌武院殿下と噂されるお方。口の方も達者でいらっしゃる」

このように、回答の後はなにかしら皮肉や誉め殺しを付け加え、別の人間が追従する。

──これが、斯衛?帝国軍?

ホールの聴講席に座る面々は、階級もまばらで、帝国軍の将軍クラスから少尉まで、統一性が無い。
少し懐かしい月詠中尉や、3名の少尉の顔も見えた。
また、私も写真で見た事がある、紅蓮大将の姿も。

少し恰幅の良い、気難しげな帝国軍少将が次に発言した。

「しかし、このXM3、本当に効果があるのかね?コンバットプルーフされたとはいえ、横浜基地内だけのデータであるし、全軍への一斉配備は早計ではないかね?」
「それは、貴軍の上層部が決めたことですので、小官がお答えできることではありません」
「そんな事はわかっておる!だが、貴官が配備を強く推奨したのは事実だろう。その上で意見を聞きたいといっておるのだ!」

居丈高に怒鳴る少将だったが、白銀中佐は微塵も動じなかったので、つまらなさそうに鼻を鳴らした。
それくらいで怯むようなタマではないのだ。

「それは、失礼しました。小官は、立証は十分であると考えております。そして、一斉配備については、それだけの理由があります。この場で私の口からは申し上げられませんので、それについては貴軍の責任者にお問い合わせください」

佐渡島奪還作戦のことに決まっているが、それをこんな場で口に出すほど中佐はうかつではない。

「フン、逃げのうまい事だ。もし誤動作でもして我が軍に損害が出たら、どうしてくれるのかね」
「それは、その時に仰ってください。……では、次の質疑に進みましょう」

少将はすげなくあしらわれて顔を赤くしたが、どすんと音を立てて腰を落とした。

さっきから聞いていれば、話題がXM3の使用以外に反れると、中佐はあしらうように話題を中断させる。
逆に、XM3の使用法に関することであれば、どのようなつまらない話題であれ、丁寧に答えている。
この講習は「XM3の使用法について」だから、文句も言えないだろう。

それからも、意地悪な質問が相次ぎ、私の胃を重くしたが、中佐は相変わらずの態度。
これが、本当に同い年かと、もう何度目になるかわからない思いがよぎった。

不審に思ったのは、誰がどんな質問や嫌味を口にしても、誰もそれを咎めようとしない事だ。
紅蓮大将の人となりは亡父から聞いているし、月詠中尉とは深い仲ではないが、その性格は大体つかめている。
くだらない質問は一喝しそうなものなのに、彼等は無表情にその質疑を見やるだけだった。

「では後ほど、音に聞こえた最強衛士の腕前、ご披露していただけますかな?不肖ながら、小官がお相手つかまつる」

私は、その斯衛の黒服を来た、自信ありげな少尉の発言を聞いて、心が躍った。
いかな斯衛とて、白銀中佐に叶うはずもない。せいぜい、打ちのめされればいいと思ったが──

「断る」
「ほう?まさか、臆病風に吹かれた訳でもありますまい?」

「今回は講習の名目で来ている。演習であれば、後日正式に要請を出してもらおうか」
「なかなか筋の通った逃げ口上。流石と申し上げましょう」

その少尉は、中佐をあからさまに蔑むように見下し、着席した。
ざわざわと私語が沸き立つ。

「この様子では、あの沙霧を討ったというのも、何かの間違いでは?」
「噂とはえてして大げさなもの。横浜の誇大広告とも考えられますな」
「実際に相手したのは、少数のBETAと、横浜の衛士です。捏造も十分可能でしょう」

殆ど、聞こえるように言っているが、中佐は、どこ吹く風と、聞き流している。
その態度が、余計に腹を立てさせるのだろうけど──

──どうして、何も言わないの?

いや、中佐のポリシーは承知している。
きっと、それが“無駄”だからだ。
この講習会自体が無駄とも言えるが、引き受けた任務だから、中佐はきっちり筋を通しているだけだ。
それ以外の事については引き受けず、話題も打ち切るのはその為だろう。

──でも、悔しい。

中佐にあしらわれて、悔しげな将校たちの様子で多少溜飲が下がるものの、私の中では苛立ちの方が圧倒的だ。
だけど、私がここで激昂してしまえば、耐えている中佐の努力を無に帰すことになる。
というか、本当に痛痒など感じていないようにも見えるが。



結局、白銀中佐は最後まで、嫌味を聞き流し、しつこいほどの質問に、根気よく、丁寧に回答した。

その姿は、彼を嫌ってるはずの私でも、涙がでそうになるほど……輝いていた。


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