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No.4010の一覧
[0] 中身がおっさんな武(R15)[つぇ](2008/09/16 21:28)
[1] 第1話 おっさんの価値[つぇ](2008/12/15 02:42)
[2] 第2話 おっさんの想い[つぇ](2008/10/01 01:04)
[3] 第3話 鉄壁のおっさん[つぇ](2008/10/01 01:04)
[4] 第4話 多忙なるおっさん[つぇ](2008/12/15 02:42)
[5] 第5話 無敵のおっさん[つぇ](2008/12/15 02:42)
[6] 第6話 おっさんと教官と恋愛原子核[つぇ](2008/12/10 01:17)
[7] 第7話 おっさんは閻魔大王[つぇ](2008/10/01 01:05)
[8] 第8話 おっさんの卒業式と入学式[つぇ](2008/10/01 01:05)
[9] 第9話 おっさん中毒[つぇ](2008/10/01 01:05)
[10] 第10話 おっさんの苦悩[つぇ](2008/10/01 01:05)
[11] 第11話 はじめてのおっさん[つぇ](2008/10/01 01:06)
[12] 第12話 おっさんは嫌われもの[つぇ](2008/09/25 03:18)
[13] 第13話 暴露のおっさん[つぇ](2008/09/19 02:02)
[14] 第14話 地獄のおっさん[つぇ](2008/12/05 22:21)
[15] 第15話 おっさんの空しさ[つぇ](2008/10/27 01:51)
[16] 第16話 スパルタン・おっさん[つぇ](2008/12/27 01:44)
[17] 第17話 おっさんとおっさん[つぇ](2008/09/29 01:06)
[18] 第18話 おっさんの真意[つぇ](2008/09/29 01:06)
[19] 第19話 苦肉のおっさん[つぇ](2008/10/01 01:06)
[20] 第20話 おっさんへの反乱[つぇ](2008/10/03 02:35)
[21] 第21話 おっさんの覚悟[つぇ](2008/12/27 01:44)
[22] 第22話 おっさんと将軍[つぇ](2008/10/24 02:06)
[23] 第23話 おっさん、逃げる[つぇ](2008/12/27 01:44)
[24] 第24話 おっさんの戦い[つぇ](2008/10/13 01:49)
[25] 第25話 夜明けのおっさん[つぇ](2008/10/13 01:49)
[26] 第26話 おっさんのカウンセリング[つぇ](2008/12/27 01:44)
[27] 第27話 おっさん、解禁[つぇ](2008/12/27 01:45)
[28] 第28話 おっさんの原点[つぇ](2008/11/15 03:09)
[29] 第29話 おっさんVersion2.0[つぇ](2008/10/27 01:52)
[30] 第30話 おっさんの謁見[つぇ](2008/10/27 01:52)
[31] 第31話 空のおっさん[つぇ](2008/10/30 01:31)
[32] 第32話 おっさんの悲願[つぇ](2008/12/05 22:21)
[33] 第33話 おっさんのイメージ[つぇ](2008/12/05 22:21)
[34] 第34話 おっさんの誤解[つぇ](2008/11/08 02:03)
[35] 第35話 おっさんの別れ[つぇ](2008/11/11 01:00)
[36] 第36話 おっさんとアラスカ[つぇ](2008/11/11 01:01)
[37] 第37話 おっさんの帰姦[つぇ](2008/11/19 00:38)
[38] 第38話 おっさんの誕生日プレゼント[つぇ](2008/12/10 01:18)
[39] 第39話 おっさんの再会[つぇ](2008/12/27 01:46)
[40] 第40話 おっさんの誤解~日本編~[つぇ](2008/12/10 01:18)
[41] 第41話 噂のおっさん[つぇ](2008/12/15 02:43)
[42] 第42話 おっさんへの届け物[つぇ](2008/12/15 02:43)
[43] 第43話 おっさんの恋愛[つぇ](2008/12/27 01:45)
[44] 第44話 おっさんのシナリオ[つぇ](2008/12/27 01:47)
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[4010] 第20話 おっさんへの反乱
Name: つぇ◆8db1726c ID:a1045c0b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/10/03 02:35
【第20話 おっさんへの反乱】

<< 白銀武 >>

12月4日 昼 国連軍横浜基地 PX

「ここ、座らせてもらうぞ」

207小隊の連中が、全員昼食を終えたのを見計らって、合成サバ味噌定食を持って近付いた。

「け、敬礼!」

顔を硬直させ、起立して敬礼をする5人に、盆を片手に持ち直し、答礼を返す。

「着席して楽にしろ。今は昼休みだ」

言うと同時に、“前の”世界での、俺の指定席に座る。

──この席も、久しぶりだな……。

20年ぶりに座るPXの席と、そこから見る207訓練部隊の眺めは、やはり懐かしかった。

その面々は、予想通り、反応に迷っているようだが、それにかまわず、飯を頬張りながら、話をする。

「全員、なぜ来たのか、という顔をしてるな」

図星を当てられて、さらに戸惑う5人。

「いい機会だから確認しておこうと思ってな。テレビを見てみろ」

といって、親指でテレビの方向を指し示す。
丁度、不法帰還者のニュースをやっていた。もちろん、この時間に広報の報道があるのは確認済みだ。

「帝国陸軍災害派遣部隊による不法帰還者の救出作戦で、14名全員を無事に保護──ゲジマユ、この報道をどう思う?」

「は、はい。……無事に保護とはいうものの……今の帝国軍に、人道的な救助活動をする余裕はないかと。また、噴火警報も出ていないのに未明に救助作戦が行なわれたことから……寝しなを急襲して、拉致したものと推測します」

「妥当な考えだ。オチムシャ、不満がありそうな顔だな。言ってみろ。──ああ、今は休憩中だから反論も許可する。各自、思うところがあれば忌憚のない意見を言ってよろしい」

俺の投げた餌に飛びつくように、冥夜が口を開いた。

「申し上げます。彼らは、元々その地に住んでいた者達です。軍の行いは、非道というべきでしょう」
「では、不法帰還者たちは、命を失ってもいいと?」

「助ける事自体は私も賛同です。ですが、強制退去はあくまで政府や軍の都合を優先した結果に過ぎませぬ」
「では、貴様はどうすれば良かったと思う?」

「リスクを承知で戻ったのです。避難するかしないかの選択は、彼らにゆだねるべきでありましょう」
「救助に向かった兵士の命も、危険に晒されるが?」

「帝国軍人は国民の生命財産を守るために在ります。そのために危険を冒すのは当然かと」
「帝国軍人も、その多くは徴兵された国民だが、そうひとくくりにするのはひどくないか?」

「……いえ、私が言いたいのは、誰もが国のためと言いながら、力なき者に負担を強い、力ある者が力の使いどころを弁えていないという事です!」

──だんだん熱くなってきたな。そろそろ、本題に入ろうか。

「ひとつ、教えてやる。不法帰還者の強制退去を提案したのは、この俺だ」

さすがにこの事は想像もしてなかっただろう。5人は息を飲んだ。

「なッ!……ならば、少佐は、民に犠牲を強いてでも──」
「まあ待て。本音を言えば、俺も貴様の方針に賛成で、死にたがりを無理して助ける必要はないと考えている。だが、国民の生命財産の保護は条文に謳われていることだから、議会が退去すべしと結論付けたのもわかる」

「……ならば、なにゆえの強制退去でしょうか」

「議会は退去の方針を取った。そういう前提であれば、俺は最もリスクとコストが低い方法で事に当たるべきと考えた。よって、迅速な退去を優先するよう提案し、それが採用された」
「それでは、少佐にとって、帰還者たちの意思は考慮に値しないということですか!」

俺はその問いには答えず、話題を変えた。

「……帰還者のひとりに、ある老婆がいる。夫も息子もBETAとの戦いで失い、天涯孤独の身だ。……オチムシャ、これをどう思う?」
「……痛ましいことだと思います。なればこそ、そのような方に、これ以上の負担は強いるべきではありません!」

「だが、その婆さんのような境遇など、このご時世、掃いて捨てるほどいるぞ。俺の知っている最も悲惨な例だと、最愛の幼馴染を目の前でBETAにバラバラにされたあげく、自らもじっくり念入りに、隅々まで解体された、という14才の女の子がいる。もちろん、その家族も同様の運命だ。命があるだけ、婆さんは幸せと思わないか?」

もちろん、純夏の事だが……こういう表現をすると、アイツ、本当に悲惨な人生を歩んだんだな……。

「たっ……たしかにその子は、悲運と言わざるを得ません……。ですが、それは比較すべきものではないでしょう」

純夏の悲惨さに一瞬怯んだ冥夜だったが、すぐに反論した。さすがに頭の回転は速い。

「そうだな。俺も、他人の不幸の度合を比較するのはおこがましいと思う。……なら、老婆の境遇に同情して、他の要素より優先するというのも、同様におこがましい事だとは思わないか?」
「それは、極論というものです!」

前ふりはこんなものでいいだろう。これからが俺が確認したいことだ。
……これまでの反応から見ると、だいたい想像はつくから、少し陰鬱になるが……。

「ならば、もし貴様があそこに派遣され、住民を退去させよとの命令を受けた場合、どうする?」
「説得はします。ですが、無理強いはできかねます」

「強制的な退去を命令されてもか?」
「……左様です」

「その結果、噴火によって吹雪を失う事になる場合も考えられる。それでもか?」
「…………左様です」



思わず、ため息が出た。

……予想通りではあっても、やはり失望は禁じえない。

「そうか…………反論を許可したのだから、貴様の結論については何も言わん」

冥夜は叱責されると思ったのだろうか、少し拍子抜けしたように見える。

「俺の考えでは、吹雪1機と貴様と老婆の感傷……到底釣り合うものではない。貴様と同じく、何と言われようと、その考えは変わらん。それでもなお、貴様の理想を押し通したいのであれば……俺より偉くなることだ。貴様にはそのツテがあるだろう?」

その言葉に、冥夜は口を引き締めた。

「……いえ、私は──」
「最後に言っておく。実際に俺の命令に反抗する時は──銃殺覚悟でやれ。それは他の4名も同様だ」

そう言って、全員と順番に目を合わせる。……たまが、ピクリとした。

──コイツ、俺が銃殺まではすまいとでも思っていたのか?……舐められたものだ。

「俺の引き金は、貴様等の“背景”から圧力がかかるよりも速く引けるということを、心に刻んでおけ」

返事と敬礼を待たず、俺は食器をもってその場を立ち去った。



…………………………



言い過ぎたか……いや、あれでも言いたい事の半分以下だ。

冥夜のそれは、理想論だ。原則論と現実と正論で交えれば、論破する事など、たやすい。
だが、それをした所でアイツが持論を変えるほど“やわらかく”ない事も、良く知っている。



──俺は、冥夜に期待しすぎたのかもしれない。



“前の”世界での出来事から、冥夜があのような主張を持っていることは明白だった。

だからこそ、『人命もコストの一つ』という軍の考えや、命令の重さをとことん叩き込んだつもりだったが……実戦を知らない者に、そして、悲惨な戦況を目の当たりにしていない者に、コストについて、真の意味で理解させるのは不可能な事なのかもしれない。……もっとも、夕呼のようなリアリストは別だが。

俺とて、18の頃は、冥夜以上に甘い所があったのだから、偉そうなことは言えない。
今の俺の思考が、“前の”世界でさんざん、悲惨な実戦を得たゆえのものだということも分かっている。

──それでも……もしかしたら、アイツ等ならば、と……。

吹雪の価値にしてもそうだ。

“前の”世界では営倉入り8日“程度”で済んだが、あれが冥夜でなければ。
また、俺が“夕呼先生”にとっての貴重なサンプルでなければ、2人揃って銃殺モノだっただろう。

いや、それ自体はいい。あの時は俺も納得していたし、甘いなりの覚悟もあった。

だが、“前の”世界で、「今、この時にあの吹雪があれば──」と、何度も思った事を考えると、あの2体の吹雪の潰し方は、痛恨の記憶だ。

BETAとの戦いで、アイツ等の気持ちが揺れることはないだろうが、情勢は“前の”世界とは大きく違っている。
この間、鎧衣課長が言っていたように、きな臭い動きも活発になっているようだから、人に銃を向けなければいけない場合もあるかもしれない。

──万が一の時は、恐怖で縛るしかないかもしれないな。

銃殺をちらつかせて従わせるなど、下策もいいところだが……それで躊躇われて死ぬような状況であれば、手段は選べない。
アイツ等が、ある程度俺の思考に同調してくれれば、そんな事も起きないだろうが、現段階で、冥夜にその事を認識させる事には失敗したわけで。

もし、それでもアイツ等が致命的な事をしでかした場合。

“政治的圧力”があるうちは、それを理由に言い訳はできるが……それがなくなった時、俺は、アイツ等を殺さなければならないだろう。

──頼むから、そんな事させないでくれよ……。

自分の思考がどんどん沈んで行くのがわかった。

―─いかん、気持ちを切り替えなければ。

だいたい、今時点、そんな状況が迫っているわけでもないのだ。

午後の訓練に影響しないように、気をつけるとしよう。



…………………………



<< 彩峰慧 >>

12月4日 夕方 国連軍横浜基地 屋上

──いた。

白銀少佐が席を立った後、沈んだ様子の御剣は、珠瀬たちの「あんな人の言うことは気にするな」という趣旨の励ましに、作り笑いで返していた。

午後の訓練の白銀少佐は、昼の事がなかったように、完全にいつも通りだった。

何も言われなかったことで、よけいに考え込んだ御剣は、夕食後、少しひとりにしてほしい、と言って、席を離れた。

私は、確かめたいことと、言いたいことがあったので、屋上へ向かった御剣の後を追った。

「彩峰か……」

ひとりになりたかったのを邪魔したのは悪いと思ったけど、御剣は私をちらりと見ただけで拒絶せず、町の方を向いたまま、ぽつりと漏らした。

「──私は、白銀少佐に……失望されたのかもしれない」

寂しげなその様子は、まるで捨てられた犬のように見える。

「……訓練の時と違って、演技じゃなかったもんね」

その言葉に、御剣は、勢いよく振り返った。

「そなたも、気付いておったのか……!」
「薄々……。でも、今の御剣の反応で、確信した」
「くッ……カマをかけられたということか。私としたことが……」

いつもの御剣なら引っかからなかったかもしれないけど、今の御剣なら……と思って追いかけてきた。

「だが、私から見ても少佐の振舞いは完璧に近いと思っていた。そなた、よく気付いたな」
「少佐の言動だけじゃ無理。気付いたのは、御剣と神宮司教官のおかげ」
「神宮司教官はわかるが……私、か?」

確かに御剣は、訓練中では私たちに合わせていて、不自然な所はなかった。

でも、休憩中、私たちが口にする少佐への悪態を、快く思っていないのは表情でわかるし、御剣が、時たま神宮司教官を見ていたのが気になって、教官を見ると──白銀少佐を見る目が穏やか過ぎるのが気になった。
昨日、少佐が鎧衣の打撃を、わざと受けたのも、そう。

それでも、私の考えすぎだという気持ちの方が圧倒的に強かったのだけど……むしろ、さっきの御剣の返事に、内心驚いたくらいだ。

その事を話すと、御剣は諦めたように、溜息をついた。

「私に鎧衣の打撃が見えたのだから、そなたに見えていても不思議ではないか」
「動体視力では、負けませんよ」

ふふ、と笑う。

「そうか……不覚だ。白銀少佐に気取られまいとするあまり、他がおろそかになっていたとは」
「まだまだですな」

とはいえ、私は最近まで、気付くことすらできなかったのだから、偉そうな事はいえない。

「御剣は、いつ気付いたの?」
「……私が確信を持ったのは、10日ほど前だ。理由は、少佐の私的な事にかかわるゆえ、明かせぬが……偶然、知りえる機会を得た、とだけ言っておこう」

その理由は気になったけど、言えないというものを無理に聞くつもりはない。

──でも10日も早く、か。

「そう。……御剣は、あのお芝居、どう思った?」
「ああ、私が思うに──」

御剣の言うことを要約すると、少佐は憎まれ役となって、私たちの心身ともに鍛えるつもりで、教官と一芝居打った、ということだった。

御剣の推測は、私がなんとなく感じていた事より、だいぶ理論的で、言われて見て思い当たる事も多々あり、おかげで私の考えもはっきりとした。

思えば、あの屋上のとき……いや、最初の対面からそのつもりだったんだろう。

……少佐の想いを知って、まぶたが熱くなった。

「彩峰、わかっているとは思うが、少佐のお心を無にするでないぞ」
「わかってる。表情を隠すのは、御剣より得意」
「フ……そうだったな」

これで、確認したかった事は解決した。

けど、まだ言いたかったことが残っている。

「……御剣。今日の昼の話に戻すけど」
「う……む。なんだ」

さすがの御剣も、ばつが悪そうな顔をした。

「御剣は私の父さんの事、知っているかもしれないけど──」

私は光州作戦で父さんが取った行動の為に、軍に大きな被害が出てしまい、敵前逃亡という不名誉な罪で処刑されたこと。
その行為のおかげで助かった人たちから感謝されていて、今もなお支持する人がいるということを話した。

「……そうか」
「父さんは、助けた人たちに感謝されたけど、軍としては命令違反で投獄された。御剣の回答に似てる」
「……うむ」

「白銀少佐はたぶん、父さんの事は味方殺しと判断すると思うし、父さんはきっと……処刑覚悟でやったと思う」
「そうであろうな」

「父さんが正しかったのか、間違っていたのか、ずっと判断がつかなかったけど……人間としては正しくて、軍人としては──兵を束ねる将としては、間違っていたのだと思う」

「私が少佐を失望させてしまったのは、軍人としての回答を出さなかったから、か」
「たぶん……ね」

少佐は、考え自体は御剣と同じと言った。だから、非情なだけではないのだろう。
けど、非情になるべきときは、非情になれる人。

──人は国のために成すべきことを成すべきである。そして国は人のために成すべきことを成すべきである

それは、父さんの残した、この言葉に通じる所があるように思える。

「だが、私は……」
「御剣が今すぐ、変われるとは思わないけど、そんな少佐だから……最後に言ったように、最悪、私たちでも銃殺されると思う」
「……」

「銃殺と秤にかけるような時は来ないかもしれない。でも、その時が来たら、御剣が守りたいものと、目の前の守りたいものを比べて、結論を出すべきだと思う」
「そうだな……心しておこう」

腹を割って話した時に聞いた、御剣の守りたいもの……『この星、この国の民、そして日本という国』……。

大層な望みだと思った。──同時に、御剣らしい、とも思った。

でも……その望みが大きいからこそ、いつかは小を捨てて大を取るような非情な決断を下さなければならない時が来ると思う。
父さんは、目の前の悲劇が我慢できなくて、他の悲劇を起こしてしまった。

「彩峰、少し楽になった。──そなたに感謝を」
「どういたしまして」

御剣に言ったことは、私にも言えることだけど……私は、銃殺よりも、白銀少佐に失望されたくはない、という思いが強かった。



…………………………



<< おっさん >>

12月5日 朝 国連軍横浜基地 おっさんの巣

……目を覚ますと、そこは肉の山だった。

ぼやける頭でそれを見て、

──ああ、昨日は、“この”世界では初の、5Pだったな……。

と昨晩の記憶を呼び起した。



…………………………



昨晩は、茜、晴子、多恵、霞の、『メンバー』の中でも年少4人組と同時プレイだった。

今日は、麻倉と高原が予定に割り込んだから、その分、昨日まとめてということで、4人同時にやることにしたのだ。

同時プレイの時に、霞と多恵は使える。

霞と多恵は性的に物怖じしないから、誰がパートナーでも平然と行為ができる。
それに張り合う形で、若干抵抗があっても、複数が平気になる。……良い例が茜だろう。

特に、霞には、「あんな小さい子に負けてなるものか」という気持ちが湧くらしいから、霞は最も優れた触媒といえよう。

で、昨晩の話に戻るが、なかなか貴重な体験を得た。

多恵の「大勢なので、王様ごっこしましょう!」という声を皮切りに「「賛成!」」という茜と晴子の合意と、霞の無言の頷きで、股間、肛門、乳首、唇と、4箇所へのキス&舐め舐め攻撃により、俺は昼間の出来事で溜まったモヤモヤが抜けていくのを感じた。

──まさに……『王』。

元来、調子に乗りやすい性質の俺は、

「おお、それそれ、よいぞ、霞よ」
「これ、茜。もそっとこっちへこい」
「うほほ、多恵め、ういやつ」
「晴子や、もそっと余のケツを舐めい」

など、バカ殿のように振舞い、楽しい一時を過ごす事ができた。
アイツらも合わせて「光栄です」「いやーん、陛下」「王様、セクハラですぅ」「しようがない方ですわ」などとノリ良く返してくれた。

これが年長組なら、ここまでバカは出来なかったかもしれないが、俺も、昼間の落ち込みを払いたい気持ちがあったので、“前の”世界を含めても、ここまで開き直ってした事はない、というほど楽しんだ。



だが……全身を舐められているとき、霞が俺の匂いを嗅ぎだしたあたりで、雲行きが怪しくなった。

今考えると、きっとイリーナの影響に違いない。
アイツはどうも、自分の匂い趣味が異常でないと認識させたいのか、複数プレイのときに、“匂いの良さ”をその時のパートナーに、理論立ててこんこんと説明するのだ。
「べ、べつに私が異常ってわけじゃないんだからね!」と言いたげな、ツンデレとも少し違うその様子は、とても微笑ましい。

そして、霞がクンクンし出したのに多恵が便乗し、残りの二人がそれに続いて、全身を嗅がれ出したとき、思わず、

「ちょ、そこ、やめて、嗅がないで」

と、素で言ってしまったのがまずかった。

全員そろって、『ニヤリ』として、匂いの感想を言ったり、肌を舐めて味の評価をしたり、霞なんかは俺の肛門に指を突っ込んだあと、その匂いを嗅いで「ちょっと、においます」と言ったり……そりゃ、どんな男だって赤面するだろ?

まあ、その反応で、アイツ等の何かがキレてしまったらしい。……その後は、まさに『逆レイプ』だった。まりもの発作の時など、比べ物にならない。

いつも乱暴にされている反動か、晴子が異常に興奮していて……他の3人も似たようなものだった。

まあ、気持ちいいからいいか、と、どこか諦観して、されるがままだったのだが、そうは問屋が卸さなかった。
四つん這いにされて責められていた時、多恵が無邪気に発した台詞は、俺を凍らせるに十分すぎた。



「左近さん入りまーす」



その言葉の意味を理解したとき……俺は、悪党に恋人を人質に取られた、哀れな村人のような気持ちで、心から懇願した。

「お、おい!それだけはやめてくれ!他の事なら何でもするから!」

俺の懇願に、嫌らしく、ニヤニヤとした笑みを浮かべた4人は、じゃあ、かわりに言うことを聞けということで、いつも俺が行っている屈辱的な行為……ブタの泣きまねや、四つん這いでのご奉仕や、飲尿──これは、さすがに断ったのだが、左近をプラプラさせながら、別人のような冷たい目で見下ろし「いつも私たちに飲ませてるくせに……」と、吐き捨てた晴子には、それ以上拒否の言葉は向けられなかった。

結局、その他もろもろの屈辱的行為──中には、俺のM性を刺激したものもあったが──を一通り受け、俺は嗚咽を漏らしながら、横たわった。



──汚された……あんなこと、“前の”純夏にもされたことないのに……。



そんな俺を見て、晴子がにっこり笑ってこう言った。

「じゃあ、私たちは満足したから、今度は武さんが好きにしていいよ」

きょとんとした俺に、多恵、茜、霞が続けた。

「武さん、なんだか落ち込んでいたらしいから」
「えへへー、いい気分転換になったでしょ?」
「がんばりました」

どうやら、内心で落ち込んでいる俺のため、霞がサプライズを発案したらしい。
俺に少しM性がある事は、霞にリーディングで把握されてしまっていたから、きっと俺が喜ぶだろうと思い、あらかじめ他の3人に手回しした、とのことだ。

とはいえ、ここまで悪乗りするつもりはなく、イリーナのように匂いを嗅いで赤面させる程度にするつもりだったが、想像より、はるかに興奮してしまい、収まりがつかなくなったそうだ。

「なーんだ、そういうことだったのか、おっさん、驚いちまったよ」

「そうそう」
「楽しんでもらえましたか?」
「えへへー、新鮮だったでしょ?」
「がんばりました」

晴子、多恵、茜、霞──はさっきと同じ台詞だったが、その言葉の後、「あははは」と、皆で笑い合った。

一・件・落・着♪










「……なわけねーだろ!」

その後の俺は、強姦魔……いや、強姦魔王というべきだろう。

晴子の言葉通り、さんざん好きにさせてもらい、全員仲良く、失神させた。

尻へのスパンキングもいつもの3倍は強くやり、壊れてしまえ!というほど突いたのだが、俺の調教でM性がだいぶ付いたためか、全員、満足そうな表情だった。

結局、これも想定のうちだったのかもしれない。──最後まで掌の上か。



…………………………



回想を終え、思わず「ふっ」と、クールでダンディな笑みを浮かべたとき、多恵が猫のように「んーーー!」と伸びをして、目を覚ました。

「ふぁーあ………あ、武さん起きてたんですか?おはようございます」
「おう、おはよう。俺もついさっき起きたところだよ」

大きなあくびをして、挨拶をしてきた多恵に返してやる。

「時間は……ありゃ、寝すぎた。朝のラブは無理そうですねぇ」
「昨日さんざんしただろうが」
「それは、別腹というかぁー」

夜を過ごした次の朝は、時間的余裕があれば行為に及ぶのが常だが、昨晩はハッスルしすぎたのか、俺も含めて全員、眠りがいつもより深かったようだ。

「俺もやりたいのは山々だが、今度だ。……いいかげん、おっぱいくらい隠せ。そろそろコイツらも起こすぞ」
「はーい」

多恵が答えたその時──



『防衛基準体制2発令。全戦闘部隊は完全武装にて待機せよ。繰り返す、防衛基準体制2発令。全戦闘部隊は……』


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