Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION第17話 拒絶・・・横浜基地内医務室・・・一連の騒動から三日ほど経過しようとしていた。キョウスケ達がこちらの世界に飛ばされてきた理由、武の記憶が欠落した原因、この世界の純夏の存在など得られた情報は大きかったのだが、失ってしまった代償も大きかった。そしてあの事件以来、武はずっと眠り続けているのである。身体的なダメージ等は左程無く、彼が目覚めない原因は不明。医者の話では、恐らく精神的なものだろうと言う事だった。「どう?何か分かった事はある?」「・・・いえ、白銀さんの意識は深層心理の奥底に閉じこもった様な状態です。恐らく記憶の欠落に関する事や純夏さんの事など混乱するような事が一度に起きた事で精神的ショックを受けてるんだと思います」「そう・・・このまま永久に眠り続ける可能性もあると言う事かしら?」「・・・解りません。自分の記憶の中にある様々な出来事を彼自身が認めたくないんだと思います。だから目を覚まそうとしないとしか考え付かないんです」普段から霞は自分の力をあまり使おうとはしない。だが、今回は状況が状況だ。精神的なものが原因であるのならば、自分の力を使う事で彼を救う事が出来るかもしれない・・・そう言った考えから彼女は、一向に目を覚まそうとしない武を救う為に彼女は何度もリーディングとプロジェクションを行っていたのだ。しかし、何度呼びかけても武からは何の反応も返って来ない。精神的なショックはかなり大きかったのだろう。「眠れる森の美女・・・この場合は美男とでもいうのかしらね。童話じゃ王子がキスをすれば目覚めるけど、白銀の場合は王女・・・鑑がキスをすれば目覚めるとでも言うのかしら?」「・・・博士!」「フフ、冗談よ。それにしてもアンタも変わってきたわね。これまでのアンタじゃ考えられない成長だと思うわ」「・・・多分、白銀さんや純夏さん達のおかげです。だから私は白銀さんを助けたい・・・色々と恩返しをしたいんです」「まったく、こんなに色々な人から想われてるって言うのに、こいつは何をウジウジと悩んでるのかしらね。まあ、白銀らしいと言えば白銀らしいんだけど・・・」そう言った彼女の表情はどこか複雑な物だった。彼がこうなってしまった原因は彼女にもある。口ではああ言っているものの、彼女自身も武の事を心配しているのだ。「アタシはそろそろ行くわね。アンタはどうするの社?」「私はもう少しここに居ます」「そう・・・あまり無理し無い様にね。今度はアンタが倒れちゃうわよ?」「・・・はい」「じゃあ行くわ。アタシもやれる事はやっておかないとね・・・」そう言うと彼女は医務室を後にし、ハンガーへ向かう事にした。改型の強化用パーツは既に完成している。現在、ハンガーでは組み立て作業が行われている筈だ。しかし、機体が完成したとしても白銀が目覚めない限り改型は真の完成を迎える事は出来ないだろう。あの機体は彼専用に用意したものだ。そしてそれには彼に対しての贖罪の意味も込められている。かつての世界で夕呼は、彼の最愛の人の命を奪うと言う行為を手伝わせた。無論、その時はそれが人類を救う為の最良の手段だと考えていたのだ。その為には人に蔑まれようとも悪魔だと罵られようとも構わないと思っていた。そして、全ての事に決着がついた後ならば武に殺されても構わないと考えていたのだ。しかし彼は、生きて罪を償えと言った。そう言われた彼女は、正直複雑な心境だった。彼が世界を去った後、彼女は今まで以上に世界を、そして人類を救う為に努力した。それこそがこれまで自分が行って来た事に対しての贖罪だと考えたのである。この様な事を書くと、彼女はそんな人間では無いだろうと思う者もいるかもしれない。だが思い出して欲しい・・・桜花作戦の時、彼女は親友であった『神宮司 まりも』の遺影と共に武達を見送っている。その時の彼女の心情を察する事が出来れば、彼女が如何に自分を押し殺してきたのかが解ると思う。自分の行いにより彼女は自分の親友を失ってしまった。失ってしまった直後は気丈に振る舞い、ただの使える駒が死んでしまっただけと言っていた彼女であったが、彼女を知る人物であるならばその様な嘘は直ぐに見抜く事が出来るだろう。武はそれに気付いた為、彼女に生きて罪を償えと言ったのである。しかし、その想いも志半ばで潰えてしまう事となった。そして自分自身も異世界に転移した際、改めて世界を救う事に尽力する事で以前の世界での自分が犯した罪を償おうと考えていた。これは彼女の勝手な言い分かもしれない・・・自分の身勝手な振る舞いだと言う事は十分に理解していた。だが、何もしないのであればそれは逃げている事と同じだ。彼女はそれらの事から目を背けたく無かったのである。そんな中彼女は、この世界にも『白銀 武』が存在している事を知る。そして彼女は、以前の世界で武に返せなかった恩をこの世界の武に協力する事で返そうと思いついたのだ。だが、彼は以前の世界の記憶を有しては居なかった。そう言った経緯から彼に力を与えようとしてあの様な事を行ってしまったのだが、結果として再び彼を苦しめる事となってしまったのである。たかが一人の人間に力を与えた事で世界を変えられる筈はない事は彼女も十分理解している。それでも彼女は、力を与える事で彼の大切な物を護れる手助けを行う事こそが彼に対する真の意味での贖罪だと考えたのだ。彼が目覚めた時、力が無ければ彼は戦えない。その為には今できる事はすべてやっておく必要があると考えたのである。そして再び自分を押し殺し目的を達しようとしたのだった。「どうした?随分と浮かない顔だな」声のした方に振り向いて見ると、そこに居たのはアクセルだった。「まあ、あの様な話を聞いた後だ、解らんでも無いが、な・・・」「・・・言いたい事はそれだけかしら?」「すまない。そんなつもりで言った訳ではないのだが」「構わないわ。アンタも白銀の事が気になるのかしら?」「多少は、な。それで白銀はどうなんだ?」「一向に目を覚ます気配はないわ」「そうか・・・どうやら無駄足だったようだな」「白銀の事やアンタ達の事、他のメンバーには話したの?」「訓練部隊の方に言っている奴等には話してはいない。俺達とて要らぬ混乱は避けたいからな」「そう・・・」「あまり思い詰めるなよ?貴様一人が背負い込んだところでどうなる物でもあるまい」「・・・」「どうした?」「アンタの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったから少し驚いただけよ」「フッ・・・では俺も行くとしよう。これから新潟での作戦のミーティングが始まるからな。遅刻してはかなわん」「アタシも行くわ・・・ありがとうね、アルマー」「ん?何か言ったか?」「何でもないわ」自分では表に出さない様に心掛けているものの、アクセルには簡単に見抜かれてしまったようだ。そして彼はそんな彼女の心情を察してか、心配して声を掛けてくれたのである。これには彼女自身も驚いていたが、この事が切っ掛けで夕呼は少しばかり楽になった様な気がしていた。「やれやれ・・・恩返しをしなくちゃならない人が増えちゃいそうだわ」彼女はハンガーへと向かいながら、一人そんな事を呟いていた・・・・・・第五ミーティングルーム・・・A-01部隊に配属となった事により、キョウスケ達には専用のミーティングルームが与えられていた。何かと秘密が多い彼らにとっては迂闊に話せない事も多い。そう言った理由から夕呼が彼らにこの部屋を用意したのである。「キョウスケ大尉、何で俺達までミーティングに呼ばれてるんですか?」そう言ったのはブリットだった。「それを今から説明する所だ。少々厄介な事になったのでな・・・」「解りました」今回のミーティングは、近々行われる予定の新潟での作戦についての打ち合わせが行われる予定だ。その様な打ち合わせの中にブリット達訓練部隊に配属されている207C小隊の面々が参加している事は不思議である事には違いない。唐突にミーティングに参加するよう言われたC小隊の面々はそれが気になって仕方なかったのである。彼等にはそのミーティングの詳細は明らかにされていない。今朝になって集まるよう指示を受けたのだ。暫くしてアクセルが到着するとミーティングが開始される。「今日集まって貰ったのは他でもない。近々行われる任務についてだ。これにはブリット達207C小隊の面々にも参加して貰う事になった」「どう言う事でしょうか?」「本来ならば俺達の部隊にはタケルが参加する予定だったんだが、アイツは副司令から別任務を与えられてな。そう言った理由からお前達に白羽の矢が立ったと言う訳だ」キョウスケは、彼らに余計な心配を与えない為にも武の状態をあえて伏せる事にした。無論、この世界に自分達が呼ばれてしまった理由もだ。この世界に飛ばされる切っ掛けを作ったのは00ユニットと呼ばれる『鑑 純夏』と言う少女の意思に世界が呼応する形で作用したと言う事は既に承知して貰えていると思うが、彼女は既にこの世にはいない。と言う事は現状では帰る手段が見つかっていないと言う事だ。そんな事を今彼らに伝えてしまってはいらぬ混乱を招いてしまう。彼自身、アクセルからその事実を聞いた時には驚かずには居られなかったのだからそれも当然であろう。「でも大尉、俺達訓練生扱いですよ?それに機体はどうするんですか?こんなに早くビルガーの修理が終わってるとは思えませんし・・・」「機体の方は副司令から託っている。俺とエクセレンはそれぞれアルトとヴァイス、ラミアには不知火改型の3号機をアクセルにはソウルゲインを使って貰うそうだ」そう聞いたアクセルの表情が変わる・・・「ちょっと待て、新潟での任務にはヴァルキリーズや帝国軍も参加するんだろう?偽装の完了しているMk-ⅢやMk-Ⅳを使用するのは解るが、俺のソウルゲインは偽装を行って居ない筈だぞ」彼の疑問は当然だ。アルトやヴァイスはPTと左程サイズに違いは無い。簡単な偽装を行う事で戦術機として誤魔化す事は可能だった。しかし、ソウルゲインに関しては機体サイズが大きすぎるのだ。普通に考えれば戦術機と言い切るには無理なのである。「その辺は副司令が何とかすると言っていた。それから帝国軍とは受け持つ区域が違うらしい。余程接近しない限りは大丈夫だと言う事だろう」「・・・あの女の言う事だ。どうせ駄目だと言っても聞かないのだろうな」「そう言う事だ。話を戻すぞ。ブリット、クスハ、アラド、ゼオラの4名には不知火の予備機を使用して貰う。ラトゥーニとアルフィミイには改修の終わった叢雲を使って貰うように指示を受けている」「ですが大尉、私達は戦術機に関する訓練を受けていません。そのような状態で任務に参加できるのでしょうか?」「お前達にはミーティングの後で機種転換訓練を行って貰う予定だ。今後は任務前日まで訓練終了後にシミュレーターで訓練を行って貰う手筈になっている」「・・・任務の日程はいつから何でしょうか?」「11月10日から11日の予定だ。副司令の話では10日の夕刻より現地に向かう事になっている」「後5日しか無いじゃないッスか!そんなんで間に合うんですか?」「それはお前達次第だ」「うへぇ・・・訓練だけでも結構大変なのに、その後更に訓練かよ」「ハイハイ、そこ愚痴らないの。条件はみんな同じなんだから」「うう、解りましたよエクセレン中尉」「それからお前達の存在は極秘扱いと言う事になっている。無論、ヴァルキリーズにもお前達の詳細を明かすつもりは無い」「何故ですか?」「形式上とは言え一介の訓練生を参加させていると言う事実が広まれば、そこから変に俺達の存在を怪しむ者達も出てくると言う事だ、これがな」「そう言う事だ。特にアラド、無暗矢鱈に他人に話すなよ?」「なんで俺だけに言うんですか?」「アラドの性格を考えれば当然だと思うですの」「なっ!」「普段の行いを悔い改めろって事だな」「アルフィミイと言い、ブリットさんと言い酷いぜ・・・俺はそんなに御喋りじゃねぇっつーの!」『『「・・・」』』「な、何でそこで皆黙るかな?・・・なんだか俺スッゲェ泣きたくなってきた」「アラド君可哀想・・・」「駄目ですよクスハさん。アラドには良い薬なんですから」「お前にだけは言われたくないぞゼオラッ!」「なんですってぇ!」「大体お前はなあ!『それ位にしろお前達』・・・ラミア中尉?」「ミーティングの途中だ。ただでさえ時間が無い事はお前達も聞いたばかりだろう?そのような事で時間を浪費するのは非効率的だ」『「すみません・・・」』「すまんなラミア・・・続けるぞ、今から配布する資料がお前達の機体の詳細だ。マニュアル等も一緒に配布するから頭に叩き込んでおいてくれ・・・今までの所で何か質問は?」「質問がありますのキョウスケ」「何だ?」「私とラトゥーニが乗る叢雲と言う機体はどう言った物ですの?」「以前俺達がテストを行った複座型の試作機だ。今回はそいつのテストも兼ねての出撃と言う事になる」「ところで例の欠陥は改善されたのか?」「・・・欠陥ですか?」「ああ、班長がかなり頑張ってくれたらしい。PTと改型の技術を流用する事で解決できたそうだ」「欠陥と聞いた時には驚きましたけど、それならば安心ですわね。でもキョウスケ、私は戦術機を使うよりペルゼインを使う方が良いと思うのですけど?」「流石にペルゼインをそのままこの基地から搬出するのは無理だろう。あれを誤魔化すのには無理があるしな」「そう言われればそうですのね・・・なら私は大人しくラトゥーニと叢雲で出撃させて貰うとするですの」「他に質問は無いか?・・・それでは以上でミーティングを終了する。ブリット、第5シミュレータールームが俺達専用として宛がわれている。今後暫くはそこを利用してくれ」「了解しました」「それからエクセレン、お前はピアティフ中尉と一緒にブリット達の訓練を手伝ってくれ」「何で私が?」「XM3に関しての操縦経験がある者が居ない事には適切なアドバイスができんだろう?」「それだったら私じゃなくてキョウスケやアクセル、ラミアちゃんでも問題無いじゃない」「俺達はこれからヴァルキリーズの訓練に付き合わねばならん。タケルの代わりだ・・・」「そう言う事なら仕方ないわね・・・それじゃ第二回、女教師エクセレンの蜂蜜授業と行きましょっか」「・・・いらん事を教えるなよエクセレン・ブロウニング」「ところで第一回っていつの間にやったので御座いましょう?」「知らん・・・ラミア、すまないがお前も向こうについて行ってくれ」「わ、解りました」エクセレン一人に任せておいても大丈夫なのだろうが、正直なところキョウスケは不安だった・・・彼女も真面目にやる時はやるのだが、一度ふざけると止まらない時もある。そのストッパーの為にラミアを派遣したのであったが、後でそれが無駄に終わったのは言うまでも無い。「それでは俺達も行くぞ」「貴様と二人で、と言うのはいささか不本意ではあるが、な。まあ仕方有るまい」「それはこっちのセリフだ」そんな事を言いながら彼らはヴァルキリーズの元へと向かうのであった。・・・第3シミュレータールーム・・・キョウスケ達が到着した時には、既にヴァルキリーズは準備を整えておりいつでも訓練が開始できる状態であった。本来ならば武が担当する事になっていた為に驚いている者も居たのだが、それほど問題では無かったようだ。今回の訓練は二チームに分かれての模擬戦だ。Aチームは伊隅、宗像、涼宮(妹)、築地、麻倉。Bチームは速瀬、風間、柏木、七瀬、高原。キョウスケとアクセルはそれぞれコントロールルームにてデータのチェックを行う事になっている。「ヴァルキリーマムよりヴァルキリーズ、これよりシミュレーターでの模擬戦を開始します。準備は宜しいですか?」『『「了解っ!」』』「それでは状況開始っ!」模擬戦が開始される。以前、実機での模擬戦を見ていたキョウスケだが、改めて彼女達の能力に驚いていた。昨日からシミュレーターで使用されている不知火はOSをXM3に換装し、改型からのデータをフィードバックしたものになっている。流石に昨日の今日で完璧に扱い切れている訳ではないのだが、それを差し引いても彼女達の動きは従来機のそれを凌いでいた。「流石はヴァルキリーズと言ったところか、彼女達の順応性は凄いな」「当然だろう。どんな状況であっても即座に対応できねば特務部隊など勤まらん」「それは自身の経験からか?」「そうだ。特務部隊と言う物はそう言った事が出来る者の集まりだからな。貴様とてそうだろう?」「まあな」「お二人は試験部隊の所属と聞いてましたが、元々はヴァルキリーズの様な部隊の出身なのですか?」「そうだ。今も形式上は試験部隊と言う事になってはいるが、どちらかと言えば特務部隊と言う位置づけの方が正しいだろうな」「それよりも涼宮中尉、状況はどうなっている?」「はい、やはり先任達は少々苦戦している様です。新任達は任官してから日が浅い為、予想以上の伸びを見せています」「なるほどな。後で詳しいデータを見せてくれ、それを検証して悪い点を洗い出す」「了解しました」その後何度かチームを入れ替えながら訓練を行い、データの検証を行っていく。5度目の模擬戦が終了し、本日の訓練は一応終了と言う形となった。「御疲れ様です伊隅大尉」「ああ、それにしてもこのOSには驚かされる事ばかりだ。最初はあまりの反応の鋭さに戸惑ったが、慣れてしまえばその様な事はかんじなくなった。OS自体もそうだが、これを発案した白銀は本当に凄いな。あの歳で大尉だと言うのも頷けると言う物だ」「それは本人の前で言ってやって下さい。まあ、あまり褒めすぎても駄目かもしれませんが」「フフ、確かにそうだな。それで我々の動きはどうだろうか?」「データを見せて貰いましたが、やはりキャンセルと先行入力をもう少し有効に使うべきでしょうね。特に着地時の先行入力をもっと有効に使う事が出来れば、それだけ優位に動く事が可能になる筈です。まあ自分もあまり偉そうな事を言えた身分ではありませんが・・・」「いや、このOSの扱いに関しては南部大尉達の方が上だ。それが証拠に細かい点を指摘してくれている」「恐れ入ります」「新任達に関してはどうだろうか?」「彼女達は戦術機に乗って日が浅い。それだけ頭の中は白紙に近いと言う分、呑み込みが速いと感じました。特に築地少尉に関しては、かなりの柔軟性を示してます」「そうか・・・速瀬はどうだ?」「彼女の場合は機体そのものが違いますからね。自分は改型に乗った事が無いので何とも言えませんが、今はまだ機体に振り回されていると言った所でしょうか」「フム・・・やはり今度の作戦では改型は無く、我々と同じ機体を使わせるべきなのかもしれんな」「その結論はまだ早いと思います。彼女は模擬戦で見たタケルの動きを真似ようとしています。その為に彼女は装備まで武の機体と同じ物を選んでいる・・・それでは駄目なんですよ。あいつが言うには、あの機体はかなりピーキーな仕様になっているそうです。それを安定させる為にリミッターが設けられているんですが、彼女の機体はタケルの物とは違います。あいつと全く同じ動きをしようと考えている限りは駄目なんですよ」「と言う事は、改型は機体毎にその特性が違うと言う事か?」「そう聞いています。恐らく彼女は、模擬戦で見たタケルの動きに相当衝撃を受けた筈です。あれはあいつ独自の機動概念であり、彼女の物とは違います。その事に彼女が気付かない限りはこれ以上伸びる事は無いでしょうね」「なるほど・・・難しい問題だな」「だったらそれに気付かせればいいだけの話だ」「アクセル?」「要は奴本来の動きが出来る様になれば問題は無いのだろう?」「その通りだが・・・何か考えがあるのか?」「俺が改型を使って奴と模擬戦を行う」「何だと?」「速瀬の動きを見せて貰っていたが、奴は機体の特性を自身の腕で何とかしようとしている。機体のせいにせず自分の腕で何とかしようとする意気込みは買ってやるが、そんな事をしても無駄だ。そこに来て白銀の動きを真似ようなどと考えていても出来る筈もないと言う事だ、これがな」「それは解っている。だがそれと模擬戦とどう言う関係があると言うんだ?」「まあ見ていろ。ついでに貴様と俺の違いを見せてやる。涼宮中尉、シミュレーターの準備を頼む」「了解しました」そう言うとアクセルは部屋を出て行く・・・指示を受けた遙はその旨を水月に伝えると直ぐに作業に取り掛かる。「聞こえるか涼宮中尉」『はい』「俺の改型の装備は今から送信するデータの通りで頼む」『了解しました・・・えっ、アルマー中尉、本当にこれで構わないんですか?』「構わん。速瀬中尉には好きな武装を選べと伝えろ。ただし、機体には武装以外の余計なオプションを装備させるな。スタンダードな改型で来いと伝えてくれ」『解りました』アクセルからの指示をそのまま水月に伝える遙。彼女は高機動ユニットを外した改型に突撃前衛用の装備を施した改型をチョイスしていた。『二人とも準備は良いですか?』「こちらは問題無い」『こっちも問題無いわ』『了解しました。それでは状況開始っ!』それぞれのモニターに相手の機体が表示される。「な、ふざけてるんですかアルマー中尉・・・武器も持たずに私に模擬戦を挑むなんて」『別にふざけてなどいない。貴様の相手をするにはこれで十分だと言う事だ、これがな』「何ですってっ!」水月はアクセルの行いに対して怒りを露わにしていた。それも当然である。アクセルの機体には突撃砲はおろか長刀すら装備されていない。彼の改型の両腕には92式多目的追加装甲が装備されている。この装備は戦術機用に開発された耐熱対弾装甲材で成形された盾であり、主に日本帝国軍及び在日国連軍が使用している兵装の一つだ。そしてこの装備には盾としての使用可能な他に、変形させる事で殴打兵器として使用する事が可能となっている。滅多な事でそのような使い方をする事は無いのだが、資料でこれの用途を見た時、一度試してみたいと思っていたのだ。元々彼の乗機であるソウルゲインは近接格闘型の機体だ。彼自身、そう言う戦闘スタイルが得意な事からソウルゲインとの相性はかなり良いものと言える。しかし、戦術機で近接格闘戦を行うには色々とリスクが伴う。一番の理由は関節やフレームの耐久性だろう。元々戦術機はその様な運用方法は考えられていない。近接戦闘は長刀や短刀を用いて行うケースが殆どなのだ。無論、彼は格闘戦以外の戦闘においてもスペシャリストだと言う事は承知して頂いていると思うが、今後どの様な事が起こるか分からない以上、試しておいて損は無いと考えたのである。そしてこの模擬戦の意図するものは、あくまで機体の特性を水月に気付かせると言う事がメインだ。そう言った点から彼はあえて自身の機体に飛び道具を装備させ無かったのである。『御託はいいから早く掛かって来い』「後で負けた時の言い訳にしないで下さいよ?」『フッ・・・いちいち口数の多い奴だ。来ないのなら此方から行くぞっ!』改型VS改型の模擬戦が開始される。果たして水月はアクセルの意図するものに気付くのか?そして、未だ目を覚まさない武はどうなるのか?様々な思いが交錯する中、物語は新たなるページを刻んでいくのであった・・・あとがき第17話です。今回は少々短いです。冒頭からとんでもない事?になってます。タケルちゃんは純夏との一件で眠りから覚めない状態です。これは色々と考えた末にこの様な描写とさせて頂きました。今後彼がどうなるのか楽しみにして置いて下さい。夕呼先生に関しては色々と考えました。なんかかなり偏ったイメージで書いてしまったような気がしましたが、オルタをプレイした後で感じた彼女と言う女性は、実はこんな人だったのでは?と言う考えが入ってます。色々とツッコミを受けそうな気がしないでも無いですが、その辺はご容赦して頂けると幸いです。そして、新潟での作戦に急遽ブリット達207C小隊の面々が参加させられる事になりました。少々ネタバレになりますが、ブリットとアラドの不知火にはとある物が装備される予定です。そしてファンの皆様、大変お待たせしました・・・近々ソウルゲインを出します!!心待ちにされてた方々もたくさんいらっしゃると思いますがもう少しだけお待ちくださいませ。ご期待に沿えるような活躍ぶりを書かせて貰うつもりです><後はラミアの乗る改型3号機とラト&アルフィミィの乗る改良型の叢雲ですね。3号機には新装備が装備される予定です。叢雲に関しては最初の物から大幅に変貌を遂げていると言う設定となってます。ですが、その設定が認められるかが怖いのも事実です・・・(苦笑)登場はソウルゲインとほぼ同時期の予定ですので楽しみにお待ちください。それでは感想の方お待ちしてますね^^