これはひどいオルタネイティヴ82001年10月27日 午前≪ゆさゆさ ゆさゆさ≫「朝です……おはようございます。」「ん……おはよう、社。」昨日は酷い事をしてしまったが、今朝も律儀に起こしに来てくれた社。何故そんなに献身的に……けど、社は鑑のイメージを真似してるダケなんだよね……ハァ。そう言えば……鑑は毎日毎日 白銀を起こしに行ってやってたんだよなあ~。鍵が閉まってても諦めず、壊してまで起こしに来る位だし。 根性だけはハンパじゃねぇぜ。「ばいばい。」「――――とっ、待ってくれ 社。」「……?」「あ~……昨日はアリガトな、助かったよ。 ゆーこさんを手伝ってくれたんだろ?」「……いえ。」「それと、悪かった。 変な事、言っちまって。」「……っ……」「や……社?」「ダメです、許してあげません。」「え"ぇあ!?」な……何故!? 起こしに来てくれたから、怒ってないと思ってたのにっ!「……名前で呼んでください。」「えっ?」「これから名前で呼んでくれれば……許してあげます……」「あ、あぁ……そんな事で良ければ。 ……ゴホンッ。」「…………」「霞。」≪――――ぽっ≫「……っ……」「ちょ……っ! 霞ッ!?」≪バタンッ≫……よく判らんが、名前で呼べば許してくれるらしい。よって言ってみたら、直後に"霞"はさっさと部屋を出て行ってしまった。こっ恥ずかしかったから視線を逸らしていたので、気付くのに遅れて止め様が無かったぜ……くそっ……可愛いぜ、ウサギッ娘……何時か絶対にキスしてやる……ッ!別に名前で呼ぶ事に抵抗は無いんだが、イキナリそんな事を真顔で言われるのは予想外だったな。「(香月博士だけ名前で……ズルいです……)」まぁ 鑑をリーディングをしてるんだし、霞も名前で呼んで欲しくなるのは普通か。……待てよ? だが、そうなると霞が俺を"タケルちゃん"と言うべきな気がする。でも良いや、原作通りだし。 そもそも霞のキャラじゃ無し、恥ずかしいのかもしれない。………………2001年10月27日 午後「軍曹。 明日あたりであれば、シミュレーターに付き合えますよ?」「ほ、本当ですか!?」朝食の時に まりもちゃんと そんな事を言い、俺は午後のシミュレーターも終えた。稼働時間は若干 抑えて合計6時間。 昼食や休憩も挟んだので、夕食の時間が近付いている。……だが まだ時間が有るので適当に散歩していると、見知った顔が複数あった。例の207B分隊の四天王だ。……でも、これじゃ鎧衣が涙目? まぁ、今は良いか。「――――あっ。」「よう榊、頑張ってるか~?」「白銀少佐ッ!!」「うわっ、びっくりした。 いきなり何だよ?」「神宮寺軍曹に何があったんですかっ!?」「はっ? ……どう言う事だ? 御剣。」榊に凄い勢いで迫られた。 EXの白銀も毎日大変だなこりゃ。 何故 彩峰は自重しない?さておき、よく見ると珠瀬は判り易いが、彩峰までもがソワソワしている気がする。そこで、今でも唯一冷静で空気の読める御剣に話を振ってみた。 対して頷くと答えてくれる。「……は。 今日の神宮寺軍曹は何処か、変な様子だったのです。」「なして?」「判りませぬ。 それ故に皆、気になっているのです。」「なんか~、妙にニコニコしてたんですよ~。」「……鼻唄も歌ってた。」「ま、マジでッ!? "鬼軍曹"と呼ばれるあの人が!?」"マジ"と言う白銀語は、既に彼女達には説明済みだ。 今では彩峰も良く使う。「うん、マジ。」――――ホラね☆「何時もは厳しい教官ですけど、あんな軍曹は初めてなんです……」「だったら、聞いてみれば良かったじゃないか。 分隊長だろ?」「!? で、ですけど……逆に怖くて聞き難くって……」「ふ~む。 なんだか判る気もするな。」「少佐……何か知ってる?」「俺が?」「……良く軍曹と、食事してる。」「あ~。」ぶっちゃけ、207B分隊のコ達とも、バリバリ食事したいのよね。でも少佐だからなぁ……横浜基地の空気を読むと、そんなに介入できないんだよな。原作みたいに白銀が訓練兵だったらともかく、左官も有る意味 自由度が無いね。まりもちゃん を混ぜたくても教官と訓練兵との立場上、できないみたいで断られるし……それにしても、見られていたのか。 まぁ、俺も最初はB分隊に気付いてスルーしてたし自然か。「少佐、何か心当たりは有りませぬか?」「ん~。」――――白銀は、つい唸っちゃうんだ☆「昨日までは確かに、何時もの軍曹だったんですけど。」「そうだなぁ……有るとすれば、明日シミュレーター訓練に付き合う約束をした位かなぁ。」「ん。 ――――それだね。」「それしかないわね。」「は?」「うむ、これで合点がいきました。」「良いな~、神宮寺軍曹~。」「えっ、え?」ちょっと君達、何を納得してるんですか?もしかして……まりもちゃん、シミュレーター訓練如きで何でそんなに喜んでたの!?あのキャラ壊してまで!? 確かに俺にとってはデートみたいなモンだから嬉しいけどさ……まりもちゃんが喜ぶのは、染み付いた価値観を考えれば何かオカしいだろッ! ひょっとすると、戦闘狂だったりしますか? 俺と対戦する事に血が騒いで嬉しかったりッ?なんか不安。 思わず放心してしまうと、榊達は輪を作って何やらヒソヒソと話している。「(もしかして、軍曹って少佐に……)」「(……かもね。)」「(うむ。 露骨過ぎて そうとは思わなかったがな。)」「(お似合いかもしれないけどね~。)」「(けど、軍曹には負けてられないわ。)」「(そだね。)」「(あぁ、少佐は我々の目指す方でも有るのだから。)」「(あうっ。 はぅあぅ……)」ちょっ、何でイキナリ蚊帳の外にされてるんですか?全く聞き取れないし、こんな時にいきなり連携発揮するなよ。「何を話してるんだ?」「何でもありませんッ。」「しいて言えば……会議?」「失礼致しました。」「あ、あははは~っ。」寂しいので一歩踏み出して声を掛けると、いきなり一列に並ぶ四人。意味が判らず首を傾げていると、榊が一歩踏み出して言う。 なんか真面目な顔してる。「少佐ッ! 必ず合格致しますので、当日宜しくお願いしますっ!!」『――――敬礼ッ!!』「ん? あ、あぁ……頑張って……ね?」………………「どうですか? これで。」「ざっと見てみるわ、ちょっと待って。」≪カタカタカタカタ……≫「……(どきどき)」「へぇ、やっぱり やるもんじゃない。 問題ないわ。」夕飯が済むと、俺は昨日今日のシミュレーター・ログを持って執務室に向かった。メシは何時も通り まりもちゃんと食ったんだけど、ホントにニコニコしてたよ。EXじゃ普通なんだろうけど、オルタじゃ有り得ないなら笑顔が逆に怖かった。まぁ……深くは考えない事にしよう。 んで、ゆーこさんにログを渡すついでに言ってみた。「まりもを不知火S型に乗せたい~?」「良いですか?」「別に問題ないわよ。 それにしても 何で?」「明日 夕飯の後、訓練する事になったんです。 だから軍曹にも慣れて貰おうと思って。 榊達にもいずれ不知火S型には乗る事になりますから、教官として。」流石に最初の実機は吹雪かもしれないけど、その辺はどうなんだろう?「ふ~ん……まりもと、ねぇ。」「はい。」「ん~……」「ゆーこさん?」「――――決めたっ!」「な、何をです?」「明日のオペレーター、あたしが手伝ってあげるわ。 感謝しなさい。」「ホントですか!? でも、忙しいハズだったんじゃ。」「ちょっと位なら大丈夫よ。」「はぁ。」……どう言う風の吹き回しだ? まぁ、いちいち端末と筐体を往復するよりは断然マシか。それに不知火S型も機密に入るんだろうから、他の人には任せられないっぽいし。あぁ、でも霞やピアティフちゃんなら大丈夫かな~?でも 色々と教えながらやる訓練だし、いちいち人の手を借りるのも、どうだかなあ……「まりもの午後の指導は中止にして、訓練兵達にも見学させましょう。 そんでもって、シミュレータールームも1時間は貸切にして――――」「はぁ。(1時間だけ?)」「白銀……ちょっと耳 貸しなさい。」「はい。」何を思いついたか知らないけど、ゆーこさんは考えを随分とエスカレートさせている。それを黙って見ていると、手招きされたので近付いで耳を寄せる。あっ……やっぱり良い匂い。 でも彼女が口にした内容で、俺の顔が引き攣った。「さ~て、明日が楽しみね~っ!」「…………」――――ゆーこさん、やっぱり貴女は恐ろしい人だ。………………2001年10月28日 午前「ばいばい。」「ちがうぞ、霞。」「……?」「その場合は、"またね"って言うんだぞ?」今朝は霞とそんなやり取りをし、朝食では まりもちゃんに ゆーこさんが来る事を伝えた。そして昼迄はシミュレーターの最終調整。 とにかく、不知火S型に体を慣らしておく。勿論 台詞は自重しない。 一昨日はダ●ゲルにしたから、今日はラ●サスにしておこう。「い、伊隅大尉!? うわああああぁぁぁぁぁっ!!!!」ヴォールク・データの中層で大破。 相変わらず密度が凄い、XM3ないともう無理だわ。でもなんで彼女の名を叫んだかって? だって大尉ってこの人ダケだもん、沙霧はヤダし。けど……嗚呼、楽しい。 実戦しないでデータ取ってるだけで仕事になるなら一生やっていたい。だがBETAと戦うからこそのシミュレーターなのだ。 いずれ賭けるのは命、リスク高ぇぜ。しかし多くの衛士は死ぬ事を前提として励んでいるんだろう。天皇陛下バンザーイッ! ……まぁ、俺にはこの世界に10年居続けても理解出来ないだろうね。「おっ? 皆 もう居たのか。」「――――敬礼ッ!!」控えめに昼食を取ってシミュレータールームにやって来ると、まりもちゃん達が居た。慣れない場所でギコちない様子のB分隊4名も一緒であり、まりもちゃんの言葉で皆が敬礼する。それに俺もヘタクソな敬礼で返すと、スタスタと ゆーこさんもやって来た。「もう揃ってるみたいね~。」「敬――――」「はい、ストップ。 あたしに敬礼は要らないわよ?」「……はぁ。」敬礼を制止され、まりもちゃんは溜息に似た相槌を漏らす。流石のゆーこさんだぜ……俺は空気を読んでいるが、彼女はフリーダムだ。……えっ、お前が言うな? 全て脳内だからノーリスクだ、何も問題はないさ☆さておき、B分隊4名は香月副司令の登場で緊張気味だ。 まぁ、当たり前か。榊あたりはもっとオーバー・アクションすると思ったが、まりもちゃんが事前に言ってたんだろう。「それじゃ、白銀 まりも。 着替えてきなさい。」「ほ~い。」「了解。」「榊達は楽にしていなさい、あたしは設定を弄ってるから。」「は、はいっ!」ゆーこさん。 名前を連ねたダケなのは判りますが、間にディレイを入れてください。白銀の嫁になる まりもちゃんを想像してしまったではないですか。……って、気付いたら まりもちゃんは歩き去っている。 俺もさっさと着替えるか。………………「お待たせしました。」「済んだわね? それじゃ~早速 始めるわ。」「あの、ゆ……副司令。 訓練兵まで連れて来て何を始めるんですか?」流石に俺の方が着替えるのが早かった。 当たり前だよね。しっかし……たまんねぇなあ。 まりもちゃんを直視するのだけは絶対に止めて置こう。ここで息子が大破したりしたら、戦術機まで大破して情け無い事になってしまう。それはそうと、まりもちゃんは ゆーこさんが来た理由が判らない。 俺は知ってるけど黙っておく。「まりもには、これから白銀と戦って貰うわ。」「えっ!?」「白銀は不知火に改良を加えた新型に乗るけど、構わないわね?」「ま、待ってくださいっ! 聞いてませんよ!?」そりゃ~聞いてないよなぁ。最初は二人で軽く訓練するダケのつもりだったのに。今なっては午後の指導を中止し、訓練兵までもが見学に来ている。彼女にとっては予想外だろう。 勿論、俺にとっても予想外なんだけどね。「あら何? 白銀に負けるのが怖いの~?」「!?」「まぁ、そうかもね~。 確かに まりもと白銀じゃ、勝負にならないかも。」「むっ……そんな事はありません! 確かに少佐の腕は一流だと思いますが、 私だって少しくらいは戦えますッ。 馬鹿にしないで下さい!」「ふふん。 なら、決まりね?」「――――少佐、宜しくお願いします!」「は、ハーイ。」「まりも、白銀に勝てれば階級を大佐まで上げても良いわよぉ?」「!? し、少佐! 手加減抜きでお願いしますっ!」「はぁ。」煽るゆーこさん、釣られるまりもちゃん。 でっかいおっぱいが釣れましたねぇ。特に"大佐にしても良い"って事は まりもちゃんが微塵にも勝つ可能性が無いと言うのと同じだ。まりもちゃんは流石にそれにはカチンときたらしい。 でも俺はヒクヒクと苦笑いをするしかない。「……榊。 あんた達はこれから初めて新型を拝めるのよ? まだ見ているのは、あたしと 白銀だけ。 自分が設計してなんだけど、かなりの機体よ? いずれ あんた達もテストする事になると思うから、しっかり見ときなさい。」「はっ、はい!!」まりもちゃんには悪いが、ゆーこさんには逆らえない。俺は筐体に向かい、まりもちゃん もプンプンと別の筐体に入る。そして着席すると すぐさま網膜投影で ゆーこさんと まりもちゃん顔が出てくる。ゆーこさんはニヤニヤとしており、まりもちゃんは至って真剣な表情だ。『マップは市街戦。 まりもは不知火、白銀は新型の不知火S型。 ここまでは良い?』「はい。」『問題ありません。』『武装は まりもが迎撃後衛、白銀が強襲前衛 仕様。 これも大丈夫?』「OKっス。」『同じく。』迎撃後衛も強襲前衛も役目は違えど武装は殆ど同じ。――――87式突撃砲×2(36ミリ/120ミリ・予備弾倉4/2) ――――74式近接戦闘長刀×2 65式近接戦闘短刀×2 このうち長刀1本を"92式多目的追加装甲"に変え、突撃砲を一つにして36ミリの予備弾を4から8に増やしたのが迎撃後衛 仕様だ。意外と詳しいなって? まぁ、色々と別のポジションも試してみたからね。格闘はかなり度胸が要るから、俺が一番 好きなのは弾倉も多い強襲掃討なんだが、ゲームと違って勝手に回復するワケじゃないしなぁ。 燃費の良い強襲前衛の方がマシだ。白銀の十八番は突撃前衛なんだけど、強襲前衛仕様にしたのは盾は邪魔だからだ。赤い彗星も名言をいってただろ? 実際BETAに一発でも食らえばオシマイだし、光線級の攻撃を一時的に凌げるのは有り難いが、それよかBETAを倒せる武器を多く持つ方が良い。俺の好きなゲームは盾なんて意味無かったから、こっちの方が定着しているんだ。それ以前に、一対一だとポジションなんて関係無い。 武器だけで選んでいる。ポジションは? ……と聞かれれば、当然 白銀の得意な突撃前衛、武器変更も視野に入れるか。『まりも、新型について何か聞きたい事は有る? 少しは粘れるかもよ~?』『……ありませんッ。』『あら、そぉ? それなら始めるわ――――状況開始。』「お願いしまぁ~す。」『――――ッ!!』≪――――ズシンッ≫ゲームを思い出して、名も知らない味方と組んだ時の様に"お願い"をしてしまった俺。すると御気に召さなかったのか、リンクが切れる直前に まりもちゃんの顔が更に引き締まった。確かに真剣勝負で言うべきじゃなかったかな……でも俺、緒事情で緊張感が……「(……あれが新型の不知火S型? 少し大きいわね、何か意味が有るのかしら?)」≪――――ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ≫「(……機動性はこっちの方が有りそう。 白銀少佐の腕を考えれば、 接近戦は厳しそうだし、距離さえ詰められなければ……いけるかしら?)」俺は開始直後から、数百メートル離れた不知火の方へと一直線に走っている。まりもちゃんは その場で こちらの様子を伺っており、両手には突撃砲と盾。距離はまだ有るし、RPGではまるで意味が無いけど、相手の動向を探るのも良い策だ。それにBETAに対して盾の重要性は微妙だと思うけど、戦術機同士だと有効だよなあ。互いにマシンガンを持った人間が戦えば、盾を持ってたほうが有利だろうし。「はしる~、はしる~、おれ~た~ち~、切り裂くBETAをそのま~ま~に~♪」小声で歌う俺。 不知火S型はまだ、何も武器を手にしていない。……案外この歌、流行るかもな。 くだらない事を考えながら距離を詰める。そんで有る程度距離を詰めると、長刀を無造作に抜き、変わらずそのまま走り続ける。「(ど、どう言う事? 何で、この距離で長刀を持って無造作に走ってくるのッ? そろそろ射程内よ? こっちは突撃砲を構えているって言うのに……)」走ってくる俺に対し、まりもちゃんも未だに突撃砲と盾を構えて警戒している。俺の行動を疑問に思っているのだろう。 何せ水平噴射さえしないんだからな。竹槍を持ってマシンガンを持つ相手に、特攻しに逝っているようなもんだ。≪ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ――――≫「(少佐は何を考えてるの? それ以上 近付いたら、幾らなんでも避ける事は――――)」「白銀フラッシュッ!!」≪――――ドオオォォォォンッ!!!!≫「きゃあっ!?」120mm滑空砲の射程内にはとっくに入っているが、中距離で撃たれても当たる気はしない。だって白銀が相手だ。 俺の動きを見ていた時にそれは判っていた だろう。けど……チェーンガンの有効射程内だと別だし、今 まさに不知火が射撃を開始しようとした時!直前。 俺は走りながら、マルチ・ランチャーを不知火に無造作に発射すると、直後に噴射行動。対して誘導性は高いが まりもちゃんの腕の為か命中はしていないようだ、噴射跳躍に避けられる。「い、今の攻撃……何なの!? ――――えっ!?」「ウッディ!!!!」≪――――ガシュウゥッ!!!!≫「!? そ、そんな……っ!」"相手が射撃武器を持っていないのに撃たれる"と言う、予想外の出来事。弾速はチェーンガンの方が上なのに、盾あれど まりもちゃんは慌ててしまったんだろう。腹部マルチ・ランチャーはまだ仕方ないけど、頭部バルカン砲の概念すら無いんだなあ。俺は一気に距離を詰め、まりもちゃんは長刀による一撃を食らって大破。 盾も無意味。『神宮寺機。 致命的損傷、大破。 ぷっ……――――状況終了。』『……っ!?!?』――――俺は30秒で勝った。 ゆーこさん、鬼ですかアンタは。………………「――――まぁ、そう言う訳で。」「…………」「BETAを相手にする時は、いかなる時でも油断をしてはいけないわ。 実戦でも教科書通りに対応しようとしたら地獄を見るわよ? 常に裏の裏を見るの。」「…………」「……ね~え? ま・り・もっ?」「う、うぅぅ~……っ!」戦いが終わると一旦 筐体を出て、唖然とする訓練兵を前に、俺とまりもちゃんを左右に、ゆーこさんがニヤニヤとしながら何か言ってる。対して まりもちゃんが酷い。 これは酷い。 猫背でめっちゃ情け無い顔をしている。ほらEXのアレだ。 "有明は……有明だけは嫌なのよぅ~!"と言う時のヤツだ。ゆーこさんは まりもちゃんのクセを全部 知っていて、俺に最短で勝たせるアドバイスをし、彼女を煽って不知火S型の兵器についてを何も教えず、訓練兵まで呼んで恥を晒させた。……だが、まりもちゃんは全て自分のミスだと思い込むだろう。何せ人に教える立場の人間なのに、死の8分どころか30秒で負けてしまったからだ。しかも そのうち20秒以上はS型が普通に走っていた以外、何も状況の変化が無かったのよね。その"走っていたダケ"なのが彼女を必要以上に警戒させ、俺はアソコまで距離を詰めれた。さっさと噴射で近付いていたら、早々と弾幕を張られ、残骸に逃げられていただろう。「ふっ……くくくっ。 あっはっはっはっ! 可っ笑しい~っ。 30秒! 30秒よ? あんなに早く負けた まりもなんて初めてみたわよ~っ?」「あうっ、あぅあぅあぅっ……」「もうサイコーっ、久しぶりに良いものが見れたわね~。 ……ふぅ。 それじゃあ榊、アンタ達は自習しといて。 解散っ!」「は、はい。 敬――――」「いらない、いらない。 それじゃ~白銀 まりも。 やっぱ午後はずっと貸し切りにしておくから、仲良くやんなさ~い。」「はぁ。」ゆーこさんは笑いを堪える感じでスタスタと去って行った。ディレイ入れてください。!? ちょ……おまっ。 それはそうと、いちいち榊達を呼んだのはその為ダケなのかよ!?見学相応の事も考えてくれてたと思ったのに、トコトンやるなこの人……だが 榊達は空気を読んだらしく、まりもちゃんを哀れむ視線を向けると、各々が無言で俺に敬礼して去って行った。 ちなみに、彩峰は口元で笑いを堪えてた。そして残ったのは、俺と"これは酷い状況"のまりもちゃんダケになる。「し~ろ~が~ね~しょ~さ~?」「は、はい。」「うぅっ……お願いします、私を一から鍛え直してくださいっ!」「えー。」涙を流す まりもちゃんに対し、俺は引いて嫌そうな顔をした。 可愛いけどね。「お願いしますっ、私 何でもしますから~ッ!」「何でも?」私、何でもしますから。 エロゲーだと確実にラブシーン・フラグだろう。だが……今の まりもちゃんの顔が余りも情けな過ぎて、全くその気は起きなかった。よって普通に教える事にし、この顔ではマズいのでとりあえず宥める事から始めた。「はい~っ、だからお願いしますぅ~っ!」「はぁ。 ……まぁ 約束ですからね、シミュレーターには付き合いますよ。」「あ~り~が~と~う~ご~ざ~い~ま~す~。」「あの、だから。 とりあえず、語尾を延ばすのと 泣くのは止めて下さい。」さっきからボディを直視してるんだけど、魅力が相殺されている……助かった。「落ち着きました?」「は……はい。」「それじゃあ、新型でヴォールク・データを流して見ます。 先ずは見ててくださいね。」「……わかりました。」――――それからは、何とか終わりまで順調だった。………………そして、夕食。 ピンポイントな時間だったので混んでいた。よって5分ほど並ぶ事になり注文を済ませると、相手席に適当に座った所が、タマタマ207B分隊の席と近かったらしく、何やら"さっきの事"を話していた。こんな時は、ついやっちゃうんだ☆ 俺は体を丸めて聞き耳を立てる。「さすが白銀少佐……あの神宮時軍曹を僅か30秒で撃墜してしまうとは……」「でも……軍曹って元中隊長で中尉だったって聞くわよ?」「……少佐が強いのかな。」「そうだよ~、やっぱり少佐って凄い人だったんだね~。」いやそれ、S型のお陰ですよ? ヨイショされてもプレッシャーなんですけど。俺は走って跳んで斬った以外は、特に何もしてません。けど……まりもちゃんの悪口を言わないあたり、彼女を尊敬しているんだろうな。≪お願いしますっ、私 何でもしますから~!≫≪だったら脱げ! 俺様の機動概念を、先ずは体に叩き込んでやる!≫「まりもちゃん……ハァハァ。」――――今夜はまりもちゃんで、とうとう犯っちゃったんだ☆●戯言●EXみたいに香月博士にイジめられる姿が書きたくて、ついやっちゃったんだ☆他意はないです。自分で勝手に設定してなんですけどS型、何も知らない衛士にはタイマンでかなり強いのでは。そんなワケで、今回は軍曹云々以外はちっともひどくないですね。自重できて良かった。