これはひどいオルタネイティヴ52001年10月24日 午前「お早う御座います、少佐。」「軍曹、おはよ~ゴザいます。」今朝は全員共通の喧しい目覚ましには起こされずに目が覚め、良い気分でPXに向かった。すると途中でまりもちゃんと遭遇し、彼女はビシっとした敬礼をしてくれる。対して俺も微妙な敬礼を苦笑と共に返した。 どう違うかはセリフで判断してくれ。「これからお食事ですか?」「えぇ。 折角なんでまた、一緒に行きましょう。」「はい。」「ところで、今日の指導は何をするんですか?」「……座学です、昨日は少々 張り切り過ぎてしまいましたから。」「ほほぅ。 ……で、みんなヘバっちゃったと?」「いえ、優秀な娘達ですから 問題ありませんでした。」「まぁ……鎧衣も含めて、訓練兵にしておくのは"惜しい"じゃ言葉足らずッスからね。」「お解りになりますか?」「データは嘘をつきませんからね。」「成る程。」「まぁ、欠点って言うのもあるみたいですけどね~……」……特に"ふとまゆ"と"ヤキソバ"の事ね。「お聞きしても宜しいですか?」「チームワークかと。(それが原因で通れるのを落としたんだしな)」「!? ……御見事です。」「まぁ、それさえ削れば一流のパイロ……衛士になると思います。 難解かもしれませんけど、衛士にとって一番大切なモノが……"仲間"? ……って事を叩き込んであげてください。 今度モメてたりした時。」「はい。」"仲間"って単語は白銀が弾き出してくれた。 百戦錬磨の衛士が言うなら間違いない。そんな会話をして進んでゆくと、やがてPXに到着した。着いたのが早かった様で人は左程多くなく、俺はカウンター越しに注文する。「たぬきそば くださ~い、普通盛りで。」「…………」昨日 合成ハンバーグ食ってみたけど、あんま美味くなかったんだよね。だから今回は蕎麦でいく。 蕎麦って言っても立ち食いで食うようなシンプルなやつね。スープで大体の味が決まっている食事の方が、今のところ食い易いのだ。わざわざ店に赴いたのにコショウを誤ってブチまけたラーメンを食う位なら、家でカップラーメンを食う方を選ぶ。 ……変な例えだが、気にせんといて。ちなみに普通盛りならあんまり多くは無いんだが、今日の予定の為でも有る。「おっ、キタキタ~。」「……あの、私も おそばを……」――――何故か まりもちゃんも蕎麦を注文していた。………………朝食を終えると、俺はシミュレータールームへと向かった。控え目にしたのは、食い過ぎると朝食が"もんじゃ焼き"になっちまうからだ。……で、何でシミュレーターなのかって言うと、只単に俺のスキルアップの為。白銀に任せればバリバリ活躍してくれるっぽいけど、これから教えていく立場にもなるからな。「うはっ……」そう言う訳で強化装備に着替えると、何名かの衛士がグループになって訓練していた。勿論、管制付きで。 ……けど、気になったのは女性衛士達の姿だ。エロ過ぎだろ常識的に考えてッ! 普通にガン●ムの宇宙服みたいなので良いだろうが!!ぬふぅっ……胸の形がクッキリ表れていて、ヘソ辺りのラインも見える。……ダメだ。 慣れない俺にとっては、徐々に股間の変なのさえ陰毛に見えてきやがる。だ、だが此処は我慢だ……それ以前に、今 息子が膨らんだら強化装備に阻まれて自滅してしまう。よって一切 彼女達を見ないようし、極力 男性の衛士に焦点を合わせる事にした。俺は上半身を丸めながら一番 目立たない隅っこのの筐体に入ると、ブツブツと白銀に頼りながら外の端末と筐体内部を往復し、シミュレーターの設定を行う。何から何でも一人でやるのは間違いなく異例なんだろうが、戦域管制を担当してくれる人が居ればこんな事をしなくても済むとは言え、色々とボヤきながら"学ぶ事"から始めるんだし、少佐でソレは100%怪しまれる。そんでもってモニターを衛士に見られでもして色々と質問されると、専門用語を全然把握していないし、白銀に聞きながらイチイチ返答するワケにもいかね~。だから"俺自身"が慣れるまでは一人でやるしかない。 これはゆーこさんの手も借りれない。ループのお陰でベテラン衛士で通っているんだから、白銀じゃない俺を察せられるワケにはいかない。……で、訓練している衛士の中では昨日 俺に敬礼してくれた人も居たらしく、少佐の邪魔をしたり余計な勘繰りをしてくるヤツもおらず、何とか開始にまで漕ぎ着けた。「さぁ……楽しませてくれよッ!?」誰も見ていない……誰も聞いていない。 つまりは撃墜され放題、撃ち放題の食い放題。めっちゃ気楽であり、ヴォールク・データにも関わらず緊張感の無い戦いッ。まぁ……とりあえずフィードバック・データの為に白銀に任せてバリバリと戦うとするか。「貴様等の攻撃パターンなど……お見通しよ!!」今回はスパ●ボごっこをする事にし、自分は敵のザコキャラ・エリート兵。有名パイロットの台詞を肖るのは、実戦の時とか迄 取って置く事にしよう。さておき内容としては……本番では無いのか、エリート兵 如きを肖っているからなのか。前回の地点まで行けずに大破する事が多い。 やっぱ白銀は本番に強いのかね~?「なっ……バカな!?」一人で空しいとは思うけど、テンションと殺る気が上がるんだから言わずにはいられない。んで10回ほど挑戦すると……ようやく大破した距離が記録を塗り替えていたが、結果はニの次。操縦性もお察し下さいとは言え置いておき、カラダに違和感が無くなってきた。即ちフィードバック・データの云々が及第点に達したようで、俺は一度 筐体を出た。「あっ……違ぇ、こっちでもなくて……これかっ!」そしてログを消去しつつ次のステップ。 俺自身が白銀の操縦を元に戦術機を動かす。マップは市街地……有る意味ハイヴより複雑な地形だし、色々と勉強になるな~。また厄介である"光線級"との戦いも考え、チョンチョンと配置し、空中で避ける練習もする。判らない単語が有ったら白銀に聞く事も忘れず、気付いたらあっと言う間に4時間経っていた。「凄ぇ……やっと出てきたよ……」「な、何時間シミュレーターやってるの? あの人。」「かなり揺れてたみたいだけど、どんな事をやってたんだ?」「気になるけど……少佐相手に聞けるワケ無いし……」いかんいかん、ゲームみたいに夢中になっちまったZE。でも得れたのは多かった。 そろそろ腹が減ったので、今日はコレぐらいにしておくか。そう思って筐体を出て来ると……何やら遠目でヒソヒソと俺を見ている衛士様達。……ま、まさか見られて無いよな? エリート兵 気取りだった恥かしい俺を……ともかく、逃げるが勝ちだッ! 俺は冷静を装って敬礼すると、その場から走って逃げた。………………2001年10月24日 正午突然ですが、ワタクシから大切なオハナシがあります。午後はウサギッ娘&脳味噌とご対面しようと思ったんだけど、ヤバい事に気付いてしまった。そういや~"ヤシロ カスミ"って、人の心を読むんだったよな……それを考えて"ソレっぽい事"を定期的に念じていたのは良いけど、俺が一方的に"読ませる"のはともかく、普段俺がこうやって考えてる事も読まれてるのかな?……もし、そうだったら……ゆーこさんに報告された時点で、嘘がバレる……「なんてこったぁっ!!」≪――――ガタンッ!!≫「くっ……俺がちゃんと考えてれば"こんな事"にはっ!」遅れて来たので人が少なく、地味に助かったのは どうでも良いとして。思わず何処かの艦長みたいな事を言うと、両手でテーブルを強打し、無意識のうちに考えた事を、つい口に出してしまった俺。マズいぞヤバいぞ……寒気がしてきた。 俺が白銀じゃない事を知られたら終わるんじゃね!?元からオルタ計画4には協力するつもりだし、社なら理解してくれるとは思うけど、ゆーこさんの事を考えたら……ガクガクブルブル……なんか、鳥肌もたってきた……全部 社に俺が知ってるオルタの展開を読まれ、既に報告されてたら絶対に消される。むしろ解剖……そんな最悪な展開を考えちまうけど、とにかく会ってみるしか無い……な。周囲がまたヒソヒソと話しているモノの、今の俺には眼中に無くPXを後にした。とりあえず、散歩でもして冷静になろう。 トライアルみたいな情け無い白銀には絶対ならんぜ。「……少佐。(やっぱり、あの時の目は……)」←偶然見ていたピアティフ中尉………………2001年10月24日 午後"例の部屋"に行くついでに、ゆーこさんに会おうと執務室に入った。もし正体がバレている感じだったら、即 土下座するつもりでしたよ?でも ゆーこさんは留守だったので、白銀に聞きつつソロソロと長い通路を進んだ。「!? 人間の……脳だ……!」「…………」……賭けても良いっ! 倍プッシュだ……っ!(何が?)オルタをプレイした後 白銀になったら、この部屋に入った人は絶対に俺と同じ事を言ったハズだ。そんなヤツお前だけだって? ンな冗談はさておき、直ぐ視界に入って来たのは、解説するだけでダークな気分なりそうな、デカいシリンダーに浮かぶ"鑑"の脳味噌。そして予想通り、浮かんでいる脳味噌を見上げている"社 霞"の後ろ姿だった。社は俺の台詞が聞こえていたようでこっちを振り向くと、"なんだこいつ"と言う視線を向ける。いや……無表情だから読めないんだけど、現在ネガティブな俺はそう思ってしまったのだ。「よっ。」「……?」右手を上げて声を掛けるが、ピクリとも反応が無い。 ……おっ?よく見ると僅かであれ首を傾げたような気がしないでもない。 どっちかって? シラネ。ともかく俺は勇気を出して足を踏み出し、静かな空間に乾いた音を響かせる。「パパだよ。」「…………」――――ぶほぉっ!? 緊張なあまり、最低なボケをかましてしまった。うぅ……社さんが汚い目モノを見るような視線を向けてくる。まぁ、俺がそう思ってるダケで表情は全く読めないんだけどね。そんな雰囲気の中、俺は更に一歩 一歩 足を踏み出していくが、彼女は微動だにしない。反応は無いけど……後退されるよりはマシだ。 少しはポジティブにいってみよう。「"こっち"だと始めまして、俺は白銀 武。 ごく一般の国連軍衛士さ。」「…………」「君は社 霞だよね?」「…………」「違う?」「……そうです。」「そうか。 んでもって、其処に浮かんでるのは俺の幼馴染の"鑑 純夏"。」「……っ……」「今はワケ有って"こんな姿"だけど……実は元気で明るくて可愛いヤツなんだ。 ……でも、バカでドジでマヌケで口煩くて、オマケに乱暴者だったりするけど。」「…………」鑑 関連は半分 白銀に頼ったんだが、酷いなお前……やっぱり俺が言うべきだったかもしれん。前者で褒めたのは俺なんだけど、それを全否定するような感じで後者を言いやがったぞコイツ。けど……なんでどうして。 今 ハッキリと社のカラダから緊張が抜けたような気がしたぞ~。「社?」「……白銀さん。」「なにかね?」「知ってるんですね……私の事を……」「うん。 "因果律量子論"って知ってる?」「はい……詳しくは 説明できませんけど……」「なら話が早いや。 なんかさ、その影響で"違う世界"から"純夏"に呼ばれちゃったんだわ。」「……呼ばれた……?」「そう、呼ばれた。 だから"違う世界"で社の事は知ってたんだ。」「…………」「まぁ、細かい事は気にしなくて良い。 とにかく"呼ばれた"からには純夏を助ける。 そんでもって、BETAをやっつける! ……だろっ?」「……っ……」必死で作り笑顔をして話し掛ける俺に対し、何故か眉を落とす社。ヤバいなぁ……やっぱり"俺"の存在がバレてるのかっ!?……って事は今、"胸や尻の事で頭が一杯なテメェが平和を語るな"とか思われてるんだろうか?だとしたら今は平気でも、今夜あたりで ゆーこさんに消されてしまうではないかっ!ここはひとつ笑ってくれ、社っ! いや、俺が何とかして笑わさねばならん……!!「――――コマネチ!!」「…………」咄嗟にガニマタになって股間でVを作ってみたんだが、無表情の社。シャカシャカ両手を動かしてみるが、人形のように反応が無い。当時は革命だったネタのハズなのにダメなのか!? こ、これならどうだっ!!「えっと……社さん。」「……?」「"鶏肉"って英語でなんて言うのかな?」「……チキン。」「欧米かっ!」≪――――びし≫「…………」あ……あれ? このネタのツッコミってこれで合ってるんだっけ?それなりに流行ってるから試してみたけど、どっちにしろ笑いが取れないし失敗か……入り口から風が吹き抜けてくる中、社は俺を汚物を見る様な表情で見上げてる。(決め付け)……だ、だったら若者にウケていたっぽい"アレ"でいこうっ! 俺は死にたくないのだ!!俺は一歩 下がると、左手を腰に添え右手を頭上で大きく左右に振りながら歌う。「意味は無いけれ~ど、ム~シャクシャしたか~ら、ハイヴに単機で行~ってく~る~♪」「…………」「意味は無いけれ~ど、ム~シャクシャしたか~ら、香月博士をひっぱた~く♪」「…………」「武勇伝、武勇伝♪ 武勇デンデンデデンデンッ!!」(カキーン!!)「…………」≪ひゅううううぅぅぅぅーー……≫……流石に このネタは……1人じゃ無理があったか?それ以前に、俺が芸人の真似事する事 自体が間違っていたようだ。社は相変わらず無表情であり"もういいよ、あんた……"と言ってる様に感じる。だが、諦めるわけにはいかないッ! 社を笑わせないと、俺の命が危ないのだ!!「すまん、ちょっと待ってくれッ! 次は……次は絶対 面白いと思うから!」「……もういいです。」「へっ?」「白銀さんが……私を楽しませてくれ様とした事は、判りました……」「そ、そう?」「……ありがとうございます。」「あっ……いや~、どういたしまして。」「…………」こうして、また沈黙が訪れたが……れ、礼を言ってくれた!?無表情で有る事には変わり無いが、これは大きな前進だろう。なら……いい加減 本題に入るか。 俺は息を呑むと、再び社に話し掛けた。「(不思議な人……でも……この人の、世界の平和と純夏さんを想う気持ちは……)」……………………結論から言うと、俺は危機を免れた。「たーちあがーれ、けだーかーくまーえー。」何で免れたのかって? ……ふふん、仕方無いな。今となっては、歌を口ずさむほど余裕な状況の俺様が教えてやろう。例えば"障壁"があるとする。 それは1000までのダメージが無効化され、被ダメージが1001を越えてしまえば、全てダメージが通ってしまうとしよう。実は……"俺"がこうやって脳内で考えている事は、全て1000を越えていないのだ。つまり、俺の思考は全て"障壁"に阻まれ、社の"リーディング"に全く読まれないって事だ!だが1001を越えれば"障壁"を乗り越え……社は気付いてしまうって寸法になる。そこで遠まわしに"都内に住む俺の世界"のイメージが見えたか、色んな角度から聞いてみたが、全く結び付くようなイメージは見えなかったみたいなので、どうやら本当に読めないみたいだ。逆に"白銀の世界"のイメージはEXもアンリミも"大まか"には見えるらしく、簡単に言うと、俺の考えは"例外"を除いて一切読めないが、白銀のリーディングは可能らしい。「よーわーきもーのーのたてとなれー、そしてーせーかいをーみーちーびーけー。」……ちなみに"例外"とは、俺が心の中で霞に伝えたいと強く思い、叫んだ内容に限る。お察しの通り、社のリーディングを警戒して"世界の平和"を念じたヤツが例外にあたる。でも……白銀は00ユニットの事は知らないハズなのに、俺が普通に知ってる素振りを見せる等、既に何度か墓穴を掘ってはいるが、いくらなんでも社は100%相手の考えている事を全て把握できるワケでは無い。もしかしたら、本当に白銀が知ってる可能性もあるけど、最悪 何度もループした事により、様々な情報が入り乱れてると言い訳すれば良いだろう。それと何より、社 自身が人の心を読むのが好きじゃない"良い娘"で助かったよ……「あら白銀。 何しに来たわけ?」「特に用は無いんですけど、純夏と社に会ってきました。」「……そう。」「ま~、時間はまだまだ ありますよ。 焦らずいきましょう!」「人に仕事を押し付けといて、言ってくれんじゃない。」「ははっ。 そうでした、すんません。 それじゃ~失礼しま~す。」地上に戻るついでに、ゆーこさんの執務室に顔を出す。案の定 訝しげな様子だったけど、キーボードを打つ手は止まらないのは流石ですね。対して相変わらずヘタクソな敬礼をして退室し、ピタリとその場で停止する。そして自動ドアが閉じると……沈黙の中、くるりと振り返って一言。「ゆっくりつくっていってね!!!」……恐らく、相当ウザい顔をしていた事だろう。もし ゆーこさんに聞こえていたのなら、間違いなく命は無いだろうね。よって俺は"スィーー"と駆け出し、そのままの表情でエレベータへと向かって行った。余程 死亡フラグを回避したのが嬉しかったのだろう。 誰にも俺を制する事はできない。「……死にたい。」そんなハイテンションのまま、自室に戻ったのだが。鏡で維持していた表情を確認してみると、やっぱり止めときゃ良かったと後悔した。もし自室に戻る前にPXに行ってしまっていれば、横浜基地を追われていただろう。やっぱり、少佐らしくしないとな……だが、もはや俺は止まれないのさ!(開き直り)あっ!? やべ……そう言えば、次の日から社が起こしに来てくれる様になるハズ……「……夜のうちに抜いておこう。」――――俺は逝くぜ、ピリオドの彼方に。「……アッーー……!!」――――今朝の衛士をオカズに、ついやっちゃったんだ☆●戯言●①これはひどい……はこのSS、最大級の褒め言葉です。②死んだ白銀が地球、ループ白銀が月なら、馬鹿は太陽です。(距離的な意味で)③こんなSSがマブラヴ板に存在して良いんでしょうか……?