これはひどいオルタネイティヴ30(中編)2001年11月26日 午前――――小休止から10分後。「さて彩峰、そろそろ始めるぞ?」「はい」予想外だろうけど、指導の再開は立ち上がった俺の口から告げられた。覚悟はまだ ちっとも出来ていないんだけど、空気を読もうとした結果として今に至る。いやだって……俺以外の7人が全員 直立不動で訓練の再開を待ってるんだもん。つまり俺が休んでいる限り何時までも その時間が続いてしまうので、気まずかったからだ。「そんじゃ~行くか」「…………」若干 未だに膝が笑っているけど、再開を告げてしまったからには動かねばならない。彩峰への個人指導に関して思うトコロは多々あるけど、とにかく今は何も考えない事にしている。10分間で唯一 考えた対抗 案はソレだけなんが……意識しまくるよりはマシだろう。そんなワケで彩峰より先行して筐体に先行し、入り口の手前でクルりと振り返ってみると……「うおっ」「……ッ?」――――予想はしていたけど、真後ろに彩峰が立っていた。「彩峰」「はい」少しだけ思ったんだ……振り向いた時、彩峰が居なければな良いな~って。もし居なければ別の筐体に入っていったってワケで、密室・密着指導を回避できたのにッ。それはそれで彼女は俺との密着がイヤだって事になるから多少はショックだけど、俺の精神的負担を考えると、それはソレで構わないと思うしね。……でも彼女はおり、無表情で首を傾げて来たので、野暮とはいえ言ってみるんだけども。「やっぱり別々の」「ダメ」「ですよねー」「…………」――――即効でダメ出しを食らってしまったZE。彩峰もやはり軍人の娘であり、志しも軍人だ。ちなみに上官に対し"ダメ"とハッキリ言ってたのは、以前みたく他の者が近くに居ないからね?榊とか相手じゃ有り得ないだろうけど、彩峰は俺の砕けても良い的な思考を察している。(9話参照)それはそうと、やっぱり同じ筐体に入るのか……こりゃ~覚悟を決めるしか無いみたいだな~。≪どかっ≫(座った音)「特等席にどうぞ」「……うん」――――若干のディレイの後、俺の膝に腰を降ろす彩峰。当然、必然的に歯を食いしばってしまう俺。「……ッ……」「……(今 強張った?)」「準備OKだな。 軍曹~」『はい』「それじゃあ設定は――――」「……(照れてる筈は無いから、やっぱり……疲れてる?)」≪やっぱり別々の――――ダメ≫『では、網膜投影 開始します』「は~い」「……(でも私は断った。……嫌な女だ)」――――やるしかないな。 彩峰と密着したまま訓練なんて、頭が沸騰しちゃいそうだよぉっ!!………………――――15分後。「次は……クイック・ドローの方法を教える」「クイック・ドロー?」「つい さっき見たクイック・ストライク。 彩峰は射撃で怯んだ相手に斬り掛かるのは凄く上手い。 だから、その逆の……格闘から射撃に繋げる動きを今度は学んで欲しい」「はい」「彩峰は斬ってからの判断が若干遅いからね。今回は、その辺を重点的に教えよう」「御願いします」「え~っと……本来なら斬って防がれたら直ぐ敵の裏を取ったり、 撃破したら別のヤツにロックを移したり……要は単に斬り掛かって終わりってワケじゃ無いって事だ。 先ずは斬って突撃砲に繋げるのと、頭部バルカン砲に繋げるのを見せるから、繰り返してみてくれ」「了解」もしかすると、初の実戦 以上に神経を使って彩峰の指導をしている俺。しかし経過は順調。これもオルタ世界の科学有ってこその快挙……"網膜投影"と"強化装備"が優秀過ぎ。膝に彩峰が乗っかっているので、普通なら操作以前に前が見えないから指導なんて不可能。……だけど、網膜投影の御陰で密着指導が成り立っているので考えてみれば複雑な心境だ。それはさておき。 網膜投影の影響で、彩峰の後ろ頭が見えず"投影された視界"に集中できるのだ。設定によっては"薄く"でき、操作を教わる彩峰は薄くしてるんだろうけど、俺は投影を濃くしているのさ。「持ち替えは それで良い! 其処で立ち止まらないで、どう動くかだな~」「はい」「まぁ、コツだけでも覚えてくれれば良いよ」「……ッ……」そして強化装備の存在。 名前だけ有って、俺を襲う彩峰の肉感を遮断してくれるのだッ。訓練なのに無駄に強度を上げてしまっているけど、ホラ……今の状況を見てくれ。普段はノホホンとしている彩峰さんだけど、必死こいて俺の機動を学習しています。当然 無理な体勢なのでカラダが揺れ捲るワケで、そんなに御尻を押し付けられると……ねぇ?「ふ~む」「くっ……」「なかなか成功しないなァ」「……難しい」斬撃後の棒立ち射撃が続く。 確かに移動を兼ねるクイック・ドローは訓練兵にとっては至難だろう。武器を持ち替えるダケじゃなく、レバーとフットペダルも同時に操作しなきゃならないし。しかもサブ射撃のマニュアル操作も使いこなすとなると、任官した衛士でも難しいのよね。「まぁ、体勢が体勢だしね」「そうだけど……」「でも……ちょっと"力み過ぎ"かな、引いて踏めば良いだけなんだし意味無いぞ?」「……ッ……」――――そんな中、頑張って長刀を振り回す彩峰を見ていて思うトコロが有った。「話は変わるけど彩峰」「……ッ?」「長刀って、使い辛く感じてないか?」「!?」「あえて言えば、直接 殴った方が良かったりとか」「…………」「違うか? 正直に言ってくれて良いぞ」「……そうかも」そう言えばさァ、彩峰って斬るより"殴る"方が向いてるって前から思ってたんだよね。だから何となく良い機会だし聞いてみると、肯定の返事が聞こえたので予想 通りだった。彼女の最期や御剣の卓越した刀の扱いを考えると、彩峰が殴る為の武器を持っても良い気がしたのさ。「そっか。 だったら、考えてみる必要が有るかもな~」「どう言う事?」「何か彩峰に良さそうな武器が無いかって思ってね」「……武器……」「ま~、頭の隅にでも留めて置いてくれ。 そんなワケで、続きといこう」「どんな武器?」「それは後の御楽しみにってね」「ん~」「ホラ、気になるのも分かるけどさ」『そうだぞ彩峰ッ、早く訓練を再開しろ!』「…………」『な、なんだ その目はッ!?』「……何でも(軍曹……きっと、妬いてる)」「ホラ、怒られちまったぞ~? 再開再開」「了解」予想外の俺の言葉に、彩峰は見るからに興味を示した様子だ。でも俺が"今の事"を言ったのは、彼女に"確認"をしたかったダケに過ぎない。つまりカラダの限界は刻々と迫っており、引き続き密着指導を続ける事にするのでした。「(……冗談には聞こえなかった)」≪何か彩峰に良さそうな武器が無いかって思ってね≫「(どうして訓練兵の私に? やっぱり、少佐は他の人間とは何かが違う……)」………………「ふぅ……コレぐらいで切り上げるとするか」「はい」『状況終了します』「良し、お疲れィ~!」「んっ」気合による指導が続き、一通り終えると俺は彩峰の頭をワシャワシャと撫でた。終わった、やっと終わった~っ! ……と言葉では発せないので、そう言う意味の表れなのです。ちょっとスキンシップが過ぎるかもしれないけど、密着し続けた事に比べれば些細な事だZE。対して彩峰は全く抵抗する事なく受けると、静かに筐体を出て元の場所へと戻って行った。「……はぁ~……」「少佐」「なんだい、篁?」「あの……御体は大丈夫なのでしょうか?」続いて俺も ゆっくりと皆の下へと戻り……再び長椅子に腰掛けた時。今迄 全く介入して来なかった篁が俺の側に寄って来ると気遣って下さる。流石に疲労が顔に出ちまったかな~? 休憩してから一人挟んだダケなので膝はまだマシだ。反面 精神的なダメージがマジでヤバい。 実は"股間"が さっきから痛いんだお( ^ω^)「はははっ、問題ないよ」「そ、そうは仰いますが……明らかに御疲れの様子では……」「心配しなくても大丈夫だって」「しかし――――」何故 股間かと言うと、彩峰と密着した事実が有った時点で おっきしちゃってたんだお……でも強化装備の強度を上げた事から阻まれて、オティンティン曲がっちゃってたんだおッ。正直 我慢するの死ぬ程キツかったんだお……でも、次は御剣が待ってるんだお、どうするんだお。いや……その前に心配してくれる篁の相手だお、普通に しんどいけど、格好良く魅せるお……「篁」「は、はい?」「漢には……何が何でも"遣らなければならない時"ってのが有るんだよ」「何が、何でも……」「今は その時なんだ。 分かってくれ」「……ッ……」もう僕 末期だお、たかが訓練なのに。 実戦でも無いのに何 言ってんだお(;^ω^)でも内心的には実戦よりも切羽詰ってるから、許して欲しいんだお……勘弁してお。それよりも、未だに充血してる下半身を ど~にかする必要が有るお、これじゃインポになっちゃうお……「……次、御剣」「う、うむッ」「平気?」「な……ななな何を言うか彩峰、要らぬ心配をするでないッ」「それなら良いけど」「な、なんだ?」「ヘタな心意気で遣ると……不味いよ……?」「!?」「そうよ御剣。 はっきり言うけど貴女、尋常じゃなく緊張してるわ」「くっ……」「御剣さん、深呼吸 深呼吸~。 私が言えた事じゃないかもしれないけど~」「あははっ。 そう言う冥夜さんを見るのも新鮮だよね~?」「よ、鎧衣……貴女って人は……」――――はっ!? そうだおッ、溜まっちゃったんなら ソレをど~にかすれば良いダケなんだお!!「白銀少佐」「何ですか? 軍曹」「私から見ても御疲れの様に見受けられますが……このまま続けられますか?」「勿論ですよ、御剣だけ仲間ハズレにする訳にも いきませんしね」「はぁ……」「でも、その前にトイレ行って来ますね~?」「は、はい。 行ってらっしゃいませ」――――つまり、おトイレで抜いちゃうんだおッ!! 時間も稼げるし名案だお( ^ω^)「……ッ……」「篁中尉、どちらへ?」「!? す、少し様子を……"万が一"と言うことも有りますので」「……そうですか」≪白銀少佐は一週間前……過労で倒れた事が有るんです≫「……(涼宮中尉の言った事を考えれば、今の様子……可能性は十分考えられるわ)」「……(私も白銀さんが心配だけど、行く訳にもいかないし……ほんと損な役回りね)」――――そんなワケで訓練中だって言うのに、彩峰の尻の感触を思い出して抜いちゃったんだ☆………………――――15分後。「ふぃ~」……やぁっ! 今日はパッション広場に来てくれて、どうも有難う!!お兄さんの事は情熱、パッション。 "パッション白銀"って呼んでね♪それじゃあ、今日は情熱的に訓練をしよう! そうだね、先ずは3次元機動だねッ。はいはい御剣さん。 早速 俺が魅せるから、こうやって長刀をんん"~~っ!!――――そんなノリで実際には絶対にできないけど。「彩峰タン、ハァハァ~っと」もし出来る環境なら(どういう環境だよ)可能なテンションで、一旦 軍服に着替えた俺は、用足しの"ついで"に息子も宥め終え、ズボンのチャックを戻しながら鏡の前に立っていた。そして手を洗って続いて顔も洗って熱を冷ます。 トイレの水道は汚い? 気にしないで下さい。んで予め持って来たタオルで顔を拭き終えると、何となく鼻をホジった後で気合を入れる。「良し……いける、御剣のもヤれるッ」「…………」←たった今、トイレの入り口から唯依が顔を覗かせるラストは最大の難関である御剣との密着訓練だけど、文字通り 後一人だけッ。股間がヤバい事になっちまってたけど、"抜いた"今 再び復活する可能性は低いだろう。だとすれば彩峰を耐え抜いた俺にとっては脅威ではない……そう断定した時。≪――――とろッ≫「んぉっ?」「……ッ?」「チッ……」「(何か様子が……)」何やら鼻に違和感を感じた。 ……でも原因は直ぐに判った、血の匂いがしたからね~。いわゆる"鼻血"が出たらしい。 大方 興奮による熱と、迂闊に鼻をホジったのが原因に違いない。でも、ほ~んのチョットだけホジったダケだ。 舌打ちしてしまったが、こんなの直ぐに止まるだろう。よって少しだけ天井を仰ぎ、口腔内に"血"を溜めると無造作に洗面台に吐き出した。「――――ペッ」≪びちゃっ≫「……なッ!?」「んん~っ?」「!? う、ぅあっ……」「篁?」「……(今のは……"血"!?)」その直後 気配……と言うか声がしたので振り向いてみると。全く予想外である篁さんが、トイレ(男子専用)の入り口から顔を出していたではないかッ!ま、まさか部下として俺に付いて来たのか!? オプションっぽいとは思っていたが、まさか其処まで……はっ!? だとすると鼻をホジってた事は当然、自慰ってたのも勘付かれたとか……なななな無いよな?「……(やべぇ……俺"終わった"かも)」「……(ま、まさか白銀少佐は其処まで煩って……)」」――――折角テンション上がってたのに、寒気を感じた。篁のフラグがバキ折れる恐怖 的な意味で。「御剣、少しは落ち着いた?」「うむ……どうやら私は気負い過ぎだった様だ。 すまぬ、皆」「……始めはドキドキしたけどね」「白銀少佐の"真剣"な様子を側で感じると、こっちも真剣に取り組まなきゃって思うよ~」「うん、緊張なんて吹っ飛んじゃうよ。 冥夜さんみたいな人だったら特にね~」「そ……そうか。だと助かるのだがな」「……(な、なんだか居心地が悪いわね……白銀さん、早く戻ってこないかな……)」――――と、ともかく一難 来てしまった。 御剣の前に、今の打開を考えないとね~。「…………」←唯依お見合い中「…………」←白銀お見合い中≪漢には……何が何でも"遣らなければならない時"ってのが有るんだよ≫「……(流石に考え過ぎ……よね? 御願い、そうで有ってッ!)」●戯言●彩峰のターンが終了。次回は冥夜のターンになりますが、唯依姫のターンとも言うかも。今回彩峰の指導において、ナックル&パイルバンカーを発案します。フロントミッションあたりのを。冥夜においても一応何か発案します。その新たな用語と人物紹介補足は30話終了時にて行います。また皆様の意見を参考にして"短いけど更新多少早い"傾向で行こうと思います。今後とも宜しく~。