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No.3960の一覧
[0] これはひどいオルタネイティヴ(ぶち壊し注意)[Shinji](2008/08/24 12:52)
[1] これはひどいオルタネイティヴ2[Shinji](2008/08/25 11:13)
[2] これはひどいオルタネイティヴ3[Shinji](2008/08/25 11:11)
[3] これはひどいオルタネイティヴ4[Shinji](2008/08/26 04:35)
[4] これはひどいオルタネイティヴ5[Shinji](2008/08/26 23:24)
[5] これはひどいオルタネイティヴ6[Shinji](2008/08/27 20:54)
[6] これはひどいオルタネイティヴ7[Shinji](2008/08/28 16:19)
[7] これはひどいオルタネイティヴ8[Shinji](2008/08/29 20:22)
[8] これはひどいオルタネイティヴ9[Shinji](2008/08/30 23:24)
[9] これはひどいオルタネイティヴ10[Shinji](2008/08/31 22:48)
[10] これはひどいオルタネイティヴ11[Shinji](2008/09/01 21:59)
[11] これはひどいオルタネイティヴ12[Shinji](2008/09/03 08:21)
[12] これはひどいオルタネイティヴ13[Shinji](2008/09/05 10:13)
[13] これはひどいオルタネイティヴ14(+用語ver1)[Shinji](2008/09/07 08:57)
[14] これはひどいオルタネイティヴ15(+伊隅戦乙女隊ver1)[Shinji](2008/09/09 12:53)
[15] これはひどいオルタネイティヴ16[Shinji](2008/09/11 14:52)
[16] これはひどいオルタネイティヴ17[Shinji](2008/09/13 17:38)
[17] これはひどいオルタネイティヴ18(+伊隅戦乙女隊ver2)[Shinji](2008/09/16 23:33)
[18] これはひどいオルタネイティヴ19[Shinji](2008/09/19 22:36)
[19] これはひどいオルタネイティヴ20[Shinji](2008/09/23 02:45)
[20] これはひどいオルタネイティヴ21(+用語ver2)[Shinji](2008/09/26 21:20)
[21] これはひどいオルタネイティヴ22(+第207衛士訓練部隊)[Shinji](2008/10/02 22:28)
[22] これはひどいオルタネイティヴ23[Shinji](2008/10/09 19:42)
[23] これはひどいオルタネイティヴ24[Shinji](2008/10/23 01:55)
[24] これはひどいオルタネイティヴ25[Shinji](2008/10/31 02:49)
[25] これはひどいオルタネイティヴ26[Shinji](2008/11/22 04:34)
[26] これはひどいオルタネイティヴ27[Shinji](2008/11/25 18:05)
[27] これはひどいオルタネイティヴ28[Shinji](2008/12/14 03:54)
[28] これはひどいオルタネイティヴ29[Shinji](2009/01/11 03:35)
[29] これはひどいオルタネイティヴ30(前編)[Shinji](2009/01/17 04:11)
[30] これはひどいオルタネイティヴ30(中編)[Shinji](2009/01/21 01:11)
[31] これはひどいオルタネイティヴ30(後編)[Shinji](2009/01/28 12:16)
[32] これはひどいオルタネイティヴ31 2009/02/08 00:31[Shinji](2009/05/17 17:57)
[33] これはひどいオルタネイティヴ32[Shinji](2009/02/19 03:33)
[34] これはひどいオルタネイティヴ33[Shinji](2009/04/10 04:03)
[35] これはひどいオルタネイティヴ34[Shinji](2009/03/26 08:07)
[36] これはひどいオルタネイティヴ35[Shinji](2009/03/30 03:38)
[37] これはひどいオルタネイティヴ36(前編)[Shinji](2009/04/08 22:44)
[38] これはひどいオルタネイティヴ36(後編) 2009/04/14 04:28[Shinji](2009/05/17 17:53)
[39] これはひどいオルタネイティヴ37 2009/04/24 06:26[Shinji](2009/05/25 00:10)
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[43] これはひどいオルタネイティヴ39(後編)①[Shinji](2009/05/17 05:05)
[44] これはひどいオルタネイティヴ39(後編)②[Shinji](2009/05/25 02:35)
[45] これはひどいオルタネイティヴ40①[Shinji](2009/06/01 01:54)
[46] これはひどいオルタネイティヴ40②[Shinji](2009/06/05 02:47)
[47] これはひどいオルタネイティヴ40③[Shinji](2009/06/11 02:49)
[48] これはひどいオルタネイティヴ40④[Shinji](2009/06/14 06:03)
[49] これはひどいオルタネイティヴ40⑤[Shinji](2009/07/02 03:10)
[50] これはひどいオルタネイティヴ41(前編)[Shinji](2009/07/13 01:30)
[51] これはひどいオルタネイティヴ41(中編)[Shinji](2009/07/28 19:03)
[52] これはひどいオルタネイティヴ41(後編)[Shinji](2009/08/16 04:00)
[53] これはひどいオルタネイティヴ42[Shinji](2009/08/27 00:58)
[54] これはひどいオルタネイティヴ43(前編)[Shinji](2009/09/10 23:51)
[55] これはひどいオルタネイティヴ43(中編)[Shinji](2009/09/20 09:43)
[56] これはひどいオルタネイティヴ43(後編)①[Shinji](2009/10/07 07:49)
[57] これはひどいオルタネイティヴ43(後編)②[Shinji](2009/10/10 22:26)
[58] これはひどいオルタネイティヴ44(前編)[Shinji](2009/11/11 20:38)
[59] これはひどいオルタネイティヴ44(後編)[Shinji](2009/11/17 03:24)
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[61] これはひどいオルタネイティヴ46(前編)[Shinji](2009/12/07 06:52)
[62] これはひどいオルタネイティヴ46(後編)[Shinji](2009/12/20 00:54)
[63] これはひどいオルタネイティヴ47(前編)[Shinji](2010/01/26 07:13)
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[3960] これはひどいオルタネイティヴ23
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/10/09 19:42
これはひどいオルタネイティヴ23




2001年11月21日 午前


昨日の午後の訓練の途中で呼び出され、ゆーこさん から与えられた仕事。

それは予想を上回るモノであり、俺を朝っぱらから憂鬱な気分にさせてくれている。

だってオルタ本編と全然関係無い依頼なんだもん……正直やりたくなかったのよね。

でも ゆーこさんに頼まれちまった事だし断るワケにもゆかず、ノリで引き受けてしまった。


「……成る程、その様な用件だったのですか」

「えぇ。 ですんで今日の立会いを月詠中尉に御願いしたいんスけど」

「ふむ……何故そんな役割を私に?」

「え~っと、中尉には新OSとS型の開発に携わって貰ってますし――――」

「そんな、携わるなど……」

「"彼"と同じ帝国軍の人間が側に居てくれるダケで、互いの緊張も解れると思いますからね」


今現在 朝食を終えた俺は、斯衛トリオと一緒に通路を歩いていた月詠さんに声を掛け、
3人に席を外してもらうと、昨日与えられた"仕事"の内容を説明し協力を求めている所だった。

その"仕事"が何かと言うと……ゆーこさんが帝国軍に"揺さぶり"を掛けた事により、
"釣れた獲物"に対する交渉だ。 簡単に言えば、本来 彼女の担うべき仕事の"代役"と言うワケさ。

でも……かなり嫌味ったらしい釣りをした様で、新OSやサブ射撃の無い戦術機を、
強気にもポンコツ呼ばわりする等して、ワザとプライドを傷付ける言い方をしたらしい。

よって多くの"お偉いさん方"は激怒してしまい、もはや興味を持つドコロか、
元より悪女みたいな認識を持たれている、ゆーこさんに対する敵意を悪戯に上げたダケに過ぎなかった。


≪どいつもこいつも、バカばっかで嫌んなるわよね~。
 口頭とは言え たった2機の戦術機でBETAを蹂躙しつつ反応炉へ到達 兼 破壊ができて、
 単機で3機の武御雷に勝つS型のデータを安い見物料で"見せてあげる"って言ってんのに≫


……まぁ ゆーこさんの性格を考えると、どんな言い方をしたのかは大体予想がつく。

失礼だけど月詠さんみたいな実直な人間だと、きっと頭に血が上って話にならないレベルだろう。

けど……唯一 興味を持ったのは帝国軍技術廠(しょう)の、第壱開発局・副部長だそうな。

彼女の嫌味に耐えたと言う事は、なかなか……いや、かなり温厚な精神の持ち主なんだろうね。

そんな副部長の人に、ゆーこさんはダメ押しとも言える"ある台詞"を聴かせてしまったらしい。


≪ふ~む……まぁ、関係ないのに期待はしませんよ≫(15話参照)


――――正直、鼻水が出そうになっちゃったんだ☆


ニヤけながら彼女の取り出したテープレコーダーから発された、白銀の何気ない言葉!

これが"最後の試験"だったらしく、副部長の人はソレすら流して"俺"との接触を望んだらしい。

……って何で俺なんですか!? ゆーこさんがするんじゃないの? そう聞いてみると、なんとっ!

何時の間にか俺は新OS・S型・新兵器・新システムの発案者、及び開発責任者にされてしまったようだ。

"発案者"ってのは強ち間違っては無いかもしれないけど、"開発責任者"って何でやねんッ!?

どう考えても頑張って作ったのは ゆーこさん&霞なんだけど、面倒臭そうな様子で彼女が曰く。


≪あたしは そろそろ本業に戻るわ、広げた風呂敷はアンタが畳みなさい≫


――――マジで冗談じゃないので素で慌てて見せると、ゆーこさんは"シテヤッタリ"といった表情で言う。


≪ふふん。 そんなに大袈裟な話じゃないから、安心して良いわよ~?
 いくらXFJ計画の発案者である第壱開発局・副部長だからって、
 彼の鶴の一声で直ぐ様、新OSやS型が帝国軍に広がっていくワケじゃないわ。
 あくまで"これから"の交渉をやり易くする為に今のうちにネマワシをして置こうって事。
 勿論……何らかのデータを渡す代わりに"それなり"の見返りは貰うけどね~≫


……つまり今回の交渉は影で呼び掛けたモノであり、元から公に晒す気は無かったらしい。

正史と違って今のタイミングで"有名人"にされてしまうと思った俺はいっぱい食わされてしまったZE。

こやつめ、HAHAHA。 ……と言う訳で安心して引き受けてしまったが、朝になったら気付いた。


――――俺が副部長の人と交渉しなくては いけない時点で、面倒事を任されたダケと言う事に。


ぶっちゃけ新OS等の今後の戦果を考えると、影でコソコソしなくても、
圧倒的な支持を得れると思うんだけどね~。 原作のXM3でのトライアルの時点で大反響だったし。

ゆーこさんの"これからの交渉をやり易くする"ってのも確かに一理有るんだけど、
帝国軍に"揺さぶりを掛ける"って言ってた時点で止めておくべきだったかもしれない。

悪くは無いんだけど、俺が正史とは違う事をしなくちゃならない可能性が有るって時点で怖いしね。

でも彼女は恐らく……新OS等の素晴らしさを誰かに見せびらかしたかったんだろう。

かと言って自分は忙しいから無理……よって俺が代役。 気持ちは良く判るんですが勘弁してください。


「……分かりました。 そう言う事であれば、御引き受けしましょう」

「有難う御座います、それじゃ~今日は御願いしますねッ?」

「はい」

「"お客さん"は13時頃に来るそうです。 名前は……確か巌谷(いわや)中佐だったかな?」

「!?」

「(知り合いかな? まぁ何でもイイや)俺はイリーナ中尉と準備をして来ますんで、
 月詠中尉は出迎えの方を御願いできますか? 場所は……え~っと……」


しかしながら、了承してしまったからには会わなくてはならず、俺は案の定 焦っていた。

いくら副部長の人が温厚な性格だからと言って、"あんな台詞"を述べた俺を良く思ってはいないだろう。

だから交渉の失敗も考えられるワケで……そうなったら ゆーこさんに嫌われちゃうワケで……

結局チキンな俺は月詠さんの力を借りる事にし、副部長の人と俺の仲介的な位置付けを担って貰い、
イリーナちゃんも昨日のうちに捕まえ、今回の件についての説明を任せる事にした。

よって月詠さんにOKを貰った直後、"お客さん"を待つ部屋の場所を教えると、
駆け足で その場を走り去った。 ……今思ってみれば慌て過ぎだったかもね、情けねぇ有様だぜ。

俺がチキンだって事、バレないと良いなァ~。 月詠さんが勘が鋭い人だってのを忘れてたYO!


「白銀少佐……あんなに急いで。 まるで、少年の様……いや実際は、その通りなのだが」

『…………』

「……やはり、自分の発案したモノが世に認められようとしているのが、嬉しいのだろうか」

『…………』

「――――どう思う? お前達」

『……ッ!?』

「神代」

「は、はい!」

「私は席を外しシミュレーター訓練の準備をしていろと"命令"した筈だが、何故覗いていた?」

「そ……それは……」

「巴・戎。 お前達も居ると言う事は、覗くのを止め様とした者は一人も居ないと言う事になる」

「うぅっ」

「も、申し訳ありません~」

「先程の話は十分"機密"に当たるだろう。 つまり、これは列記とした命令違反だ」

『――――!?』

「故に お前達には相応の処分が必要なところ……と言えるのだが?」

「ま、真那様! 私が御ニ人の様子を見ようと言い出したのですッ」

「巽!?」×2

「修正が必要であれば"私のみ"をっ!」

「……ふっ……まぁいい」

「えっ?」

「"あの時"私の気配を察した少佐の事だ、お前達の存在など筒抜けだった だろう」←不正解

『……っ……』

「だが彼は気付く素振りさえ見せなかった。 その気持ちに感謝する事だな」

『は、はいっ!』

「では午前のシミュレーター訓練は予定を変更し、私は管制のみを行う。 今度こそ準備に移れ!」

『了解!!』

「……(しかし伝説のテストパイロット、巌谷中佐が見えるとは……これは興味深い)」




……




…………




2001年11月21日 午後


温厚な人(巌谷中佐)が俺達と会うのは"お忍び"と言う事なので、準備には迂闊に人の助けを借りれない。

よって俺とイリーナちゃんダケでブリーフィング・ルームに色々と資料を持ち込んだりする。

ちなみに今は余りブリーフィング・ルームは使われていないので、部屋の手配は比較的楽だった。

しっかし、これぞ"仕事"って感じだよな~。 しかもイリーナちゃんみたいな娘と作業できて嬉しかったぜ。


「さ~て、後は"お客さん"が来るのを待つだけッスね」

「は、はい」

「あれっ、イリーナ中尉。 ひょっとして緊張してます?」

「そうかもしれません……何せ噂 高い方が見えるのですから」

「はははっ。 まぁ 大丈夫ですって、気楽にいきましょう」

「そ……そうですね(流石は白銀少佐ね……私も肖らないと)」


そんなワケで彼女と昼食を摂り終えると、ブリーフィング・ルームで"お客さん"の到着を待っていた。

何やらイリーナちゃんが緊張してる様だけど、何せ ゆーこさんの挑発に耐え切った人だ。

今更 怖がる必要は無いだろう。 最初は焦ってたけど、今は月詠さんも居てくれる事だしね!

そう自分に言い聞かせて大人しく待っている中、ようやく午後1時を回って数分経つと……


≪――――コンコンッ≫


「は~い」

「月詠中尉であります。 巌谷中佐を御連れ致しました」

「御疲れ様です、入って貰って下さい」

「はっ。 ……どうぞ」


≪――――ガチャッ≫


「!?」

「ふぅ~む……君が香月副司令の言っていた……」

「……っ……」

「中佐」

「おっと、失礼。 日本帝国陸軍中佐、"巌谷 榮二"だ。 宜しく頼む」


!?!? な、なななな なんだかヤクザっぽい人が来ちゃったーーーーっ!!!!

オールバックで厳つい目付きな上に、顔の左側に大きな傷跡が有るダンディ~なオジサマ。

ちょっ、誰だよ"温厚な副部長の人"って言ったのは!? あっ……俺でしたね、すいません。

正直 凄い怖そうな人なんですけど……いやいや、人を見掛けで判断しちゃダメだよね?

でも、やっぱり俺の"例の台詞"を根に持ってそうで怖くなってきた……顔には出てないけどNE。

さておき、 巌谷さんは俺を興味深そうな様子で眺めてたんだケド、
付き添いと思われる綺麗な"お嬢さん"に促されると、破顔しながら右手を差し出してきた。


「はっ、こちらこそ! 私は国連太平洋方面第11軍・横浜基地所属――――」

「"白銀 武"少佐だろう? 君の話は香月副司令から聞いているよ」

「そうでしたか」

「……おっと。 相手の名乗りを妨げるのは失礼だったな、非礼を謝罪しよう」

「いえ、お気遣い無く」

「有難う。 では……改めて」


――――浅く礼をしてくれた後、再び巌谷さんは右手を差し出して来たので、俺は握手を交わした。


「……そちらの方は、どちら様で?」

「おっと、そうだったな。 篁中尉」

「はっ。 私は日本帝国斯衛軍中尉、"篁 唯依"であります!」

「彼女は私の娘でね~。 副司令に許可を頂いた事から、今回の訪問に付き添わせて貰っている」


"良くぞ聞いてくれました"と言わんばかりに顔を綻ばせる巌谷さん。 ギャップが凄いな~。

それはそうと、どっちも知らない人だと思ってたが今思い出した! この娘はTEのキャラだったハズ。

斯衛軍と言っても月詠さんとは違って巌谷さんと同じ帝国軍の軍服姿だけど、そう言う設定なんだろうね。

さておき……流れ的に この"お嬢さん"とも握手する必要が有るのかな~?

そう思っていると、仏頂面で自己紹介を済ませた彼女はさっさと一歩下がって巌谷さんの後方に控える。

むぅ、何だか気難しそうな娘だなァ……それにしても、俺は二人の事をホントに何も知らない。

苗字が違うのに"私の娘"と言う事から、既に結婚しているのかと思ってしまう程 無知なんですけど。

いや……TEには白銀とは違う別の主人公の男が居て、篁がヒロインって事くらいは知ってるんだけど、
ソレが何年何月何日に始まってるのかも解らないから、もはや今の知識ではどうにもならないのだ。


「タカムラ?」

「はははっ、安心してくれ。 苗字は違うのは、私が彼女の父親代わりだからだよ」

「あぁ……成る程~」

「ち、中佐ッ」

「おっと。 すまんすまん、白銀少佐が気になっていた様だからね」

「!? いや、別に そんな事は無いッス。 ちっとも」

「……ッ!」

「そうかい?(唯依ちゃんは君を嫌悪している様なんだが……)」

「それじゃ~イリーナ中尉」

「はい」

「……(気に入らない相手とは言え、突き放されると悔しくもなる……と言う事か)」


ヤクザさん、いや……巌谷さんの義理の娘サンって事は、色目を使うとヤバいだろうね。

ヘタな事をして懐から出したピストルで射殺されちまったら堪ったモンじゃない。

だから謙遜して興味が無い事を強くアピールするんだけど、篁にさっきから睨まれてる様な気がする。

良く解らないけど俺は下心なんて抱いてませんよッ? ……とにかく、話題を逸らそう。


「はじめまして、巌谷中佐・篁中尉。 私は横浜基地臨時中尉、イリーナ・ピアティフです」

「これはどうも御丁寧に」

「巌谷中佐、貴官の武勇は聞いております。 御会いできて光栄です」

「……武勇?」


巌谷さんと握手を交わすイリーナちゃんの言葉で、俺は頭上にハテナマークを浮かべた。

そんな"最近ダラしねぇ"俺の顔を見て、"歪みねぇ"月詠さんは意外そうな表情をした。

な、何がどうしたんですかッ? そう思って首を傾げると、何故か篁が俺に詰め寄って来る!


「白銀少佐は……巌谷中佐の事を御存知無いのですかッ?」

「えっ?」

「正直に答えてください!」

「普通に知りませんけど?」

『――――!?』


いや……ホントですよ? TEの設定なんて1%くらいしか理解してませんから。

それなのに巌谷さん以外の3人が"なんだってー!?"と言う台詞を顔に書いたような表情をした。

も、もしかして凄く有名な人だったんですかッ? ……って事は、ゆとり佐官ですか俺って?

それは流石にヤバいかも……ちゃんと"お客さん"の事は勉強して置くべきだったね。

そう今更になって猛省していると、篁が興奮気味に巌谷さんの数多くの武勇伝を語ってくれる。


「信じられません! 良いですかッ? 巌谷中佐と言う方は――――」

「ま、待ち給え篁中尉」

「叔父様は黙っていて下さいッ!」

「……はい(あちゃ~。 唯依ちゃん……見事に釣られちゃったよ)」


簡単に纏めると、巌谷さんは かつて斯衛軍所属の開発衛士(テスパ)として"瑞鶴"の開発に携わり、
模擬戦に於いて当時最新鋭のF-15C(イーグル)を撃破する等、高度な操縦技能と戦術勘を持ち、
帝国斯衛軍が誇る歴戦の勇士にして、伝説のテストパイロットと言われているらしい。

大陸での戦闘で負った顔の傷は自身への戒めとして消していないらしく、篁の尊敬する御人らしい。

だから衛士であれば誰でも知っている様な有名人だったって事で、俺はやはり無知だったみたいです。


「――――と言う事です、解りましたか!?」

「はぁ……御丁寧にどうも」

「ふん!」

「……(まさか今の事で帰れなんて言われないよな? 唯依ちゃんを連れて来たのは俺なんだが……)」


10分前後掛けて説明し終えると、篁はズンズンと後退し再び巌谷さんの後ろに控える。

うぅ……尊敬するオジサマの事を知ってなくてゴメンね? かなり機嫌が悪い様子だ。

俺は心の中で彼女に謝りつつ、本題に入るべく苦笑いしながらイリーナちゃんに声を掛けた。


「ゴホン。 じゃ~イリーナ中尉、例のデータを」

「はい(……そうよ、"交渉"は始まっているの。 私も白銀少佐の翻弄を見習わないとッ)」


≪――――ぱっ≫


篁の説明中、既にスタンバっていたイリーナちゃんがスクリーンに"とある画像"を映す。

それは不知火S型の静止画&断面図であり、彼女は事細かく新しい概念であるサブ射撃……

つまり頭部バルカン砲と胸部マルチ・ランチャー、そして"サブ射撃システム"についての説明を行い、
巌谷さんは感心したような声を何度も上げ、篁も興味深そうに視線を泳がせていた。

月詠さんも若干"驚き度"は劣るだろうが同様であり、俺も細かい設計は知らないので勉強になっている。


「……この"不知火S型"の武装は熟練の衛士が相手で有る程 極めて有効であり、
 こちらがベテランの衛士が操縦する迎撃後衛 仕様の不知火を30秒で。
 そして、こちらが突撃前衛 仕様の不知火を、僅か15秒で沈めた映像です」

「むぅ……(こりゃ唯依ちゃんでも分が悪いかもな)」

「……(わ、私なら絶対……こんな迂闊に倒されたりは……)」


イリーナちゃんの言葉で次にスクリーンに流れたのは、俺がまりもちゃん&速瀬と戦った時の動画。

シミュレーターなので"白銀フラッシュ"や"バルカン!"と言う恥ずかしい台詞は聴こえないのが幸いだ。

どちらも空中のカメラで撮影したような視点で、まりもちゃんと速瀬の不知火を撃破した映像が流れる。


「……そして、こちらが実戦での白銀少佐の視点による映像です」

「!? し、信じられん……!」

「こ、光線級のレーザーを……避けてるッ?」

「生憎サブ射撃の火力や、間も無く解説させて頂く"新OS"については、
 この映像ですと白銀少佐の機動の方が遥かに目立つ事から、今は操縦技術のみを御覧下さい」

「まさか、恐れ入ったな」

「……くッ……」


――――計画通り。 事前にイリーナちゃんに御願いしてたから、俺の恥ずかしい音声は消してあるのさ!


「では次の映像切り替えます。 これは模擬戦で3機の武御雷(白)を相手に、
 白銀少佐の搭乗する不知火S型が勝利したモノであり……」


俺の実戦データの披露が終わると、今度は斯衛トリオとの戦いの様子に切り替わる。

その所々で映像を停止させ、新OSによる"先行入力"や"キャンセル"の説明を進めてゆくイリーナちゃん。

そして最後は巴に行った"コンボ"から繋げた戎に対しての射撃で締められ、更に映像が切り替わる。

今回 最大の"目玉"である まりもちゃんとの2機連携によるヴォールク・データのリプレイであり、
バズーカによる反応炉の破壊をクリア条件としている事もあって、全ての"おさらい"と言った内容だ。

流石にハイヴ攻略なので30分以上に亘(わた)る映像になり、イリーナちゃんの解説も皆無なんだけど、
巌谷さんは真剣な表情でスクリーンを眺め、篁も食い入るようにスクリーンを見つめている。

イリーナちゃんと月詠さんも黙って眺めているので、俺も空気を読んで"脳内反省会"と洒落込んだ。

ちなみに……コレも無駄な音声は切ってあるので、安心して眺める事が出来ているのでした。


「……以上で これらが白銀少佐が発案し、開発に至った全ての資料となります」

「ふむ……」

「……(まさか同じ戦術機から此処まで新しい"可能性"を見出し、実現させていたなんて……!)」

「改めて見ると俺も勉強になったな~。 月詠中尉はどうでした?」

「もはや何と言うか……聞かずともお解かりでしょう?」

「はははっ、それなら良かったです」

「……(だったら、私達が"やって来た事"は何だったと言うのッ!?)」


≪パチパチパチパチッ……≫


「……素晴らしいッ、本当に素晴らしい!!」

「お、叔父様ッ!?」

「どうしたんスか?」

「これぞ、私の求めていたモノかもしれん。 これ程 感動したのは初めてだッ!
 香月副司令が"99型電磁投射砲"を玩具 呼ばわりしたのも、これなら納得できると言うものだ」

「……ッ……」

「ゆーこさん……相変わらず あの人は何て事を……ねぇイリーナ中尉?」

「ま、全くですね」

「本来"不知火"とは極めて困難な要求仕様を実現する為、量産機としては異例な程、
 突き詰めた設計が成されている。 従って"通常"は考慮される筈の、
 発展性の為の構造的 余裕についても極限まで削ぎ落とされている事から、
 多く寄せられた"94式改修要望"も、ほぼ全てが実現不可能だった。
 ……しかし"不知火S型"における新武装は新しい概念の兵器であり、大規模な改修を必要とせず、
 全ての"94式改修要望"に置いて、サブ射撃の活用性は上回っていると言って良いだろう」

「随分と評価してくれたモンですね」

「当然だ。 それに……ハイヴ攻略に置いて我々が選ばざるを得なかった策が、
 "99型電磁投射砲"の運用によるBETAの殲滅による侵攻・及び制圧だ。
 だが君の立案では、新OSによって戦術機に新たな機動概念を実現させる事により、
 我々とは逆にBETAを無視して"進む事"を考えた。……またそれダケで無く、
 新たな兵器・バズーカの開発により、少数の戦術機で反応炉を破壊すると言う、
 極めて高い"可能性"を見出した。これが実現するのであれば、まさに"革命"と断言して良い。
 しかも我々の案とは遥かに低いコストでの攻略が可能だろうし、もはや面目丸潰れだな」

『…………』

「んっ? どうしたのかね?」

「あ、いや~……なんか、其処まで褒められると恐縮ッスね」

「そんな事は無い、これは素晴らしい事だぞッ? 君は もっと誇りを持って良い。
 私こそ良い物を見せて貰った。 これだけでも来る価値が有ったと言うモノだよ」

「い、巌谷中佐っ!」

「何だ? 篁中尉」

「確かに見せて頂けた映像や資料は、私も感動すら覚えました。
 ですが考えても見て下さい……中佐は"それで宜しい"のですかッ?」

「……どう言う事だ?」


≪ふ~む……まぁ、関係ないのに期待はしませんよ≫


「幾ら あからさまな煽りであろうと、"彼ら"は我々の血の結晶を侮辱したのです!」

『!?』

「これから同じ志を持つ者 同士 協力し、新たな開発を行ってゆく為には、
 先ずは"あの件"についての謝罪を求めるべきでは有りませんか!?」

「――――篁中尉ッ、貴様は自分の立場を理解しているのかッ!!」

「えっ」

「我々は香月副司令の恩恵により、この場で情報を提供させて頂いているのだッ!
 それと言うモノの、先程からの非礼は何事だ!? 今直ぐ白銀少佐に謝罪しろ!!」

「!? で、ですが――――」

「さっさとするんだ、これは命令だッ!」

「……っ……」

「まさか同じ事を言わせる気か!? 次は無いぞっ!?」

「し……白銀少佐。 も、申し訳……ありません……」

「は、はぁ」


成る程。 篁は ゆーこさんの煽りや俺の"あの台詞"を巌谷さんと聞いていたから、
俺達の事を良く思って無かったんだね。 ……まぁ、真面目そうな娘だし仕方無いもかもな。

今のも巌谷さんの研究を大切に思っての気持ちの表れなんだろうが……彼の事の言う事も最もだ。

煽られようが巌谷さん側が望んで来たって事なんだし、俺達が気を遣われる側なんだよねぇ。

もし見せた資料や映像に興味が無ければ交渉決裂なんだケド、かなり評価してくれたみたいだし、
こりゃ大丈夫っぽいな。 考えてみりゃ巌谷さんの言った通り凄ェ代物だし、ネガティブに考えて損した。

……さておき、巌谷さんに檄を飛ばされた篁は見るからに不服ながらも俺に向かって頭を下げる。

嫌な事なら無理にしなくても良い派なんだけど、俺は空気を読んで謝罪を受け入れた。

そして篁が頭を上げると同時に、巌谷さんは超怖かった表情を緩めると、俺に向かって言う。


「白銀少佐、気を悪くしたのなら本当に済まなかった。
 彼女はアラスカから戻って来てから、ずっとこの調子なのだよ」

「戻ったって、どう言う事スか?」

「ここ一週間程前に、特殊任務で色々と済ませ終えてね」

「ふ~む……それなら、差し詰め――――」

「……ッ?」


……と言う事は彼女って、TE終了後の篁って設定なのかな? 主人公との関係はどうなったんだろ。

おっ!? 解った……このオルタ世界じゃ、元からTEの主人公なんか居なかったんだよ。

そうじゃ無かったら絶対にくっ付いて主人公が側に居る筈だし、白銀と会う可能性なんかも無いんだ。

そう思って俺は何となくダークな空気を変えるつもりで、首を傾げる正面の篁を他所に、
ウザそうな笑みを作りながら、巌谷さんに向かって今"浮かんでしまった"事を言った。


「アラスカで"失恋"でもしたんスか?」

「あ"っ」

「――――っ」


≪バシンッ!!!!≫


『な……っ!?』

「……痛ゥ~ッ……」

「……(本当に容赦無いんだな……白銀少佐は……)」


俺の言葉に巌谷さんがマヌケな声を出し、篁の表情が険しくなったと思うと、
彼女は無言で右手を振り上げ、その直後 左頬を激しい痛みが襲った。

同時にイリーナちゃんと月詠さんも驚愕して声をハモらせたりして、
何故か右に動いた顔をそのまま、キョトンとする俺。 これは篁に……ビンタされたのか?

……って事は。 僕ちゃん"修正"されちゃったんですかァーーーーっ!?

何てこった、何故 俺はビンタされちまったんだ? TEのメイン・ヒロインが失恋とか有り得ないだろ。


「あ、あぁ……あっ……」

「……クッ……これが"若さ"か」

『――――!?』


自問するも答えが浮かばない俺は、その場のノリで某グラサン大尉の名台詞を言ってしまう。

対して篁も自分が"仕出かした"事を ようやく理解したか、瞳を大きく見開いた。

直後 震えながら一歩 一歩 後退すると、同様に正気に戻った巌谷さんが再び険しい顔を向ける。


「……篁中尉」

「!?」

「貴様は……自分が何をしたか判っているのか?」

「!? そ、それはっ……」

「(図星だった様だけど、これは幾らなんでも……)」

「(白銀少佐の選択次第では交渉は決裂し、巌谷中佐の責任問題にもなろう)」


……あぁ、そうかっ! きっと篁は、さっきから無礼だった俺の態度が気に食わなかったんだろう。

何せ巌谷さんは俺の上官だ。 "~ッス"って言葉遣いをしてた時点で失礼な事だったんだよ!

国連軍と帝国軍で所属は違うから何か違う気もするけど、篁が俺をビンタする理由はソレしかない。

巌谷さんは見た目に反して温厚だから気にしてない様子だったケド、篁にとっては許せない事だったんだ。

こりゃ~目から鱗だね……俺の非礼に対して、彼女の叔父を想って での決死の行動には完敗だよ。


「……認めたくないものだな、若さ故の過ちと言うモノは」←自分に言ったつもり

『――――!?』

「(やられた……完璧に こちらの"負け"だな。 瞬時に唯依ちゃんが抱えているモノに気付き、
 それを交渉に利用するとは……とんだ策士だよ。 正直 奴を甘く見過ぎていたな)」

「お、おじさま……わッ、わたし……私は……」

「黙って其処へ直れ、白銀少佐に代わって修正してやる」

「……っ……」

「ちょ、待ってくださいッ!」

「白銀少佐、何か?」

「修正なんて とんでもないです。 悪いのは俺なんですから、許してあげてください」

「しかし今のは どう考えても此方が――――」

「……彼女は他人を信じなかったダケです」

「!?」

「信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始めた。 人間を間違わせていたんですよ」


――――グラサン大尉を肖って、つい言っちゃったんだ☆ もはや話の辻褄は全く合っていません。


「白銀少佐、君はまさか……」

「……(篁中尉が荒れていた理由に最初から気付いていて、それであえて平手を受けた……?)」

「……(今の言葉で合点がいった。 確かに互いを信じなければ、最初から協力は成り立たない)」


――――篁を除いて訝しげな視線を向けてくる巌谷さん達。 可愛そうな人で御免なさい。


「と、ともかく今の平手は無しって事で御願いします」

「ふむ……被害者本人がそう言うのであれば仕方無いが……」

「では、話の続きといきましょう」

「そうだな(……雰囲気が変わった?)」

「今回の情報を提供した事による見返りについて、こちらから要求するモノは――――」

「……(はてさて、どんな無理難題を押し付けて来る事やら)」


特に誤魔化す事も無く話題を強引に切り替えた俺は、ゆーこさんから告げられた要求を言うべく口を開く。

ソレを飲んでもらうのが俺の"仕事"であり、今から巌谷さんにはしっかりと接する事にした。

篁にまた強烈なビンタを食らうのは御免だしね……でも、今や仲良くなるのは絶望的かな~。

何だか交渉中 篁はず~っと暗そうにしてるし、巌谷さんに怒られたのがショックだったのかもね。


「(白銀少佐……どうして、私を許してくれたんですか……?)」




……




…………




「ふ~い」

「お疲れ様でした白銀少佐」

「イリーナ中尉こそ、長々と説明有難う御座いました」

「いえ……そんな……」

「何にせよ、交渉が旨くいって良かったですね~」

「はい、良い関係が築けた様ですし」


……2時間後。 無事 巌谷さんとの交渉を済ませた俺は、イリーナちゃんと通路を歩いていた。

ちなみに月詠さんは斯衛トリオと何事も無かったかの様に訓練を再開している。

さておき、俺の……いや、ゆーこさんの要求とは、非常にシンプルな内容だった。

フォールディング・バズーカの提供は今後の実際の戦果 次第であり、
新OSについても今後予定されている大規模なトライアルを先に済ませないと無理だけど、
不知火S型の設計データに限ってはくれてやるから、XFJ計画の傑作である不知火・弐型をF型仕様、
できればS型仕様で組んで、出切るだけ早く何機か横浜基地に回せと言うのがこちらの要求である。

これはサブ射撃の新たな概念を考えると、"こっち側"の方が気前が良いと言えるかもしれないが、
ゆーこさんは年内でのOOユニット完成の暁には、早期にオリジナルハイヴを潰す事を目論んでいる。

だから"それから"の損得までは考えておらず、早い段階で強力な戦術機部隊を編成したいらしい。

まぁ 俺としてもクーデター時に、決起軍にS型が配備されたりしない限り何の問題も無いからOKだ。

そんな"不知火FⅡ"or"不知火SⅡ"は恐らくバズーカを背負ったエースパイロット専用機となる。

元ネタを考えると"不知火FⅡ"の方が聞こえが良いけど、後者であれば正に鬼に金棒だろう。

ソレ以外は前にも述べた"これからの交渉をやり易くする為のネマワシ"について、
予め箇条書きにされていた事を告げたダケで、俺が読むに当たっても厳しそうな条件は無かった。

でも何故か巌谷さんは"それだけ?"みたいな顔してたな……武御雷も何機か頂戴って言うべきだったか?


「とにかく、俺は ゆーこさんに結果を報告しときますよ」

「そうですか」

「そんじゃ~お疲れ様でした」

「――――はっ」


≪……彼女は他人を信じなかったダケです≫


「(最初は白銀少佐が交渉を有利にする事ばかりを考えていると思ってたけど、
 やっぱり……まだまだ私は彼の事を理解していないのね……)」


≪信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始めた。 人間を間違わせていたんですよ≫


「(……まさか白銀少佐が巌谷中佐の事をあえて知らない様に振る舞っていたのは、
 始めから察していた篁中尉の心の蟠りを取り払う為だったなんて……)」




……




…………




「し、白銀少佐!」

「……篁中尉」


イリーナちゃんと別れスタスタと通路を歩いていると、俺は篁に呼び止められた。

あれっ、帰ったハズじゃ無かったのかな? 何だか息を切らしてるし、ど~したんだろ。

やっぱり もう一発ビンタさせなさい! ……とかじゃ無いよね? 相変わらず顔には出ないが警戒する俺。

けど、そんな心配は無意味だった。 篁は勢い良く頭を下げると、そのままの姿勢で言った。


「先程は……本当に申し訳ありませんでした!!」

「えっ?」

「御陰で目が覚めましたッ。 本当に有難う御座います!」

「????」


……い、いや……悪いのは巌谷さん相手に言葉遣いを自重しなかった俺なんですけど。

きっと篁は非が俺に有るとは言え、ビンタした事を謝罪しに来たんだろう、何で良い娘なんだ。

目が覚めたってのが良く判らないけど、まさかSっ気に目覚めた~とかじゃないよね?

そう思いながら複雑な表情で篁を見下ろしていると、面を上げた彼女と視線が重なった。


「――――あっ」

「ん?」

「い、言いたかった事はそれだけですっ。 それでは失礼します!」

「篁中尉、帰りは気をつけて下さいね」

「は……はいっ!」


篁は俺に敬礼して下さると、小走りで去って行った。 最初の印象と違って随分と可愛いじゃないか。

……きっと態度を改めた俺の事を認めてくれたんだろう、巌谷さんも良い娘さんを持ったモンだね。

TEのキャラだし、これから会う機会は少ないと思うけど……彼女には死なないで欲しいな~。

そんな事を思いながら俺は その場で篁の後姿を見送ると、何となく窓の方へと歩いて外を眺めた。

すると何処のメーカーかも判らない黒の高級車が止まっており、恐らく巌谷さんの車だろう。

国産車かな? どっちでも良いか~。 よって方向転換すると、俺は再びエレベータを目指した。




……




…………




≪――――ガチャッ≫


「只今 戻りました」

「お帰り。 謝罪は済ませたのかい?」

「はい、叔父様」

「しかし……俺の目も節穴になったモンだな、彼はハナから唯依ちゃんの事を考えて接して来てたとはね」

「だとすると、白銀少佐は……」

「ああ。 俺達が煽られながらも横浜基地行きを決めた時点で、仲良してくれるつもりだったのさ」

「それなのに、私は彼の態度に我を忘れて……」

「そう言う事。 もしアレが本当の釣りだったらと思うと、肝が冷えたモンだよ」

「ご、ごめんなさい」

「しかしな。 恐らく……"関係ないのに期待はしない"と言うのは彼の本心だったんだろう」

「!?」

「だからこそ自分自身の頭で考え、BETAに対抗するべき最高の手段を発案した。
 その"全て"が今日 拝ませて貰った情報だったって事さ。全く 若いのに大したモンだよ、白銀少佐は」

「そう……ですね」

「案外 部下や同僚より、ああ言う男の方が、唯依ちゃんには向いてるかもしれんなァ~」

「お、叔父様ッ!」

「違ったか? 流石に"娘"を見る目は、霞んで無いつもりなんだが」

「ど……どう言う事ですか?」

「しらばっくれるな、満更でも無い感じだったんだろう?」

「……ぅ……」

「ゴホン。 ならば篁中尉、貴様に2度目の"特別任務"を与える」

「えっ!?」

「明日より貴様は、帝国技術廠の代表として――――」




……




…………




2001年11月22日 午前


「さ~て、今日はどうするか」


巌谷さんとの交渉成立により 更なる戦力アップを望めそうな事から、
あの後 ゆーこさんは俺を軽く労ってくれ、コーヒー(本物)を再び御馳走してくれた。

よってコーヒーを飲もうが気分良く眠りに着けた俺は、翌日の朝食後 気分良く通路を歩いている。

昨日は精神的な意味で頑張ったし、午前は昼寝でもして午後に誰かの訓練に付き合おうかな~?

2日前は寝る間を惜しんでいだと言うのに俺はアバウトな気分で、一旦 自室へと向かっていると……


「白銀少佐!」

「!?」

「お、お早う御座います」

「へっ?」

「……ッ……」

「もしかして、篁中尉?」


突然 何者かが俺の行く手を阻んで来たので速瀬だと思って警戒すると、なんか違う女性だった。

でも何処かで見た気がするので"じ~"っと眺めていると、視線を逸らされた辺りで篁だと解る。

ど~してか国連軍の軍服を着込んでおり、彼女は再び俺に視線を合わせると凛々しく敬礼しながら言った。


「はいっ! 巌谷中佐から与えられた特別任務により御伺いし、
 本日から国連軍・横浜基地に臨時中尉として着任 致しました"篁 唯依"です!」

「えぇ~っ」

「香月副司令に許可を頂き、これから白銀少佐の下で帝国技術廠の代表として、
 "不知火S型"による機動や戦法を、実戦も踏まえて学ばせて頂きたい次第でありますッ!」

「おぉ……」


昨日の ゆーこさん……何か隠してると思ったら"こう言う事"だったのかよ。

オルタ世界に飛ばされて記念すべき1ヶ月後……何故か思わぬフラグが成立されたらしい。

運命の悪戯が重なったのか、今 初めて"篁 唯依"と言う待望の俺の"部下"が加入したのである!


「(白銀少佐、私はもう過去は振り返りません。 貴方がそれを教えてくれたから……)」


――――ともかく これで今日の予定は決まったな。 俺は口元を歪ませながら、篁に敬礼を返した。


「(そう言えば忘れてた……唯依ちゃんのホワイトファング隊と武御雷、どうするかな~?)」




●戯言●
今回は非常に四苦八苦しました。少々スランプ気味、此処まで読んでくれた皆様 有難う御座います。
ちなみに唯依姫はゲスト出演みたいな存在と考えて頂ければ幸いです。簡単な経緯は登場人物紹介にて。


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