これはひどいオルタネイティヴ142001年11月10日 午前「それじゃ~霞、今日も純夏の事 宜しく頼むよ?」「……はい。」俺は朝 霞に起こして貰うと、そんな会話をしてからPXへ行き即効で朝食を済ませる。そして、ゆーこさんと会うべく地下19階へと降りると、走って執務室に向かった。目的は昨日のログを渡す事による新OS(β版)の作成、及び11月11日についての質問と、昨日 思い浮かんだ新兵器開発の提案だ。今現在は、ログを受け取ったゆーこさんが記録を眺めた直後、目の色を変えたトコロだ。「まりもとのニ機連携で反応炉到達? ……嘘みたいね。」「嘘みたいなホントの話です。」≪カタカタカタカタッ……≫「う~ん……この場面は反動の殺し方が甘い、まだ修正の余地が有りそうね。 此処の動作は機体に余計な負担が掛けてるみたいだし、調節して微修正を……」「…………」イキナリ俺を眼中に入れずに、新OS(α版)の修正に没頭し始めてしまった。余程 結果に満足してくれたのかな? 嬉しそうに作業している様子が微笑ましい。……けど、俺には"聞きたい事"と"提案"が有るので声を挟むしかないのだ。「格闘中の隙を中型クラスに狙われた時は、コンボを中断して後方跳躍噴射すると同時に、 突撃砲に持ち替えて離れながら迎撃? イカれた発想ね……でもその場合はこうした方が……」「あの……ゆーこさん?」「このタイミングだと左腕が邪魔でマルチ・ランチャーが撃てれてないわね、 バランスには問題無さそうだから、使えるように修正をして……」「ゆーこさんってば。」「この空中で噴射を短い間隔で繰り返してフワフワ浮いてるのは何なのかしら? でもハイヴの中だと悪く無いアイデアじゃない。 フットペダルを踏む力の使い分けをする事で、 噴射の強弱が調整できる様にすれば、推進剤の消費をかなり減らせるように……」「ゆーこさん!!」「!? 何よ白銀、居たの?」「直ぐ作業に当たってくれるのは嬉しいんですけど、まだ話が有るんです。」「何よ?」「明日の件……どうなりました?」最初から判っている事だが、聞かねばならない。 怪しまれちゃうしね。対して ゆーこさんは面白く無さそうにチェアーに背を預けると言う。「日本海の防衛ラインには、今日付けで防衛基準体制2を入れる事にしたわ。」「そうですか、有難う御座います。」「別にアンタの為にしたんじゃ無いんだからね。」「……何と言うツンデレ。」「ツンデレ? 何よそれ。」「流してください。」「まぁ……アンタの話が本当なら、今夜のうちには動きが有るでしょうね。 その時点で白銀とA-01には防衛ラインに向かって貰うから、準備しておきなさい。」「β版は間に合いそうですか?」「ふふんッ。 あたしを誰だと思ってんの?」「天才ですね、解ります。」「煽てても何も出ないわよ? とにかく、出撃迄には整備も間に合わせるわ。」「どもッス。 ……でも、その際はピアティフ中尉を管制で御借りしたいんですけど、 構いませんか? 本人はOKしてくれたんですけど、ゆーこさんの秘書ですし。」「……(こいつ何時の間に……案外侮れないわね。)」「ゆーこさん?」「ん……別に構わないわよ? どの道 大事な実戦テストだし、誰か付かせる予定だったから。」「そうでしたか。」「……で、話はそれだけ?」トントンとデスクを両手の中指で叩きながら言う ゆーこさん。なんか地団駄を踏んでるみたいで笑える、早く作業に戻りたいのだろう。……けど、きっと興味を持ってくれるハズだ。 俺は心の中で詫びながら口を開く。「まだ有ります。」「何なのよ?」「最後のヴォールク・データのログで、残った弾倉を見てみて下さい。」「仕方無いわね……えっ!? 36ミリでさえ4個のうち2個余ってたの? 120ミリも1個余ってるし、随分と余裕が有ったみたいじゃない。」「えぇ。 俺 強襲前衛だったんですけど、片方の長刀と突撃砲は全く使いませんでした。 滑空砲を使った時なんて、距離が遠かった まりもちゃんのフォローをした時が殆どでしたし。」「じゃあ何が言いたいワケ?」「使わなかった長刀と突撃砲の代わりに、背中に"違う武器"を持った方が良いと思ったんです。」「違う武器……自立誘導弾システムでも付けるつもり?」「まさか。 ハッキリ言うと、反応炉を破壊できる武器を持ちたいです。」「!?」「えっと……実弾系のバズーカか180ミリ以上の大型砲を背負うのが理想かなぁ……」「ちょっと発想が飛躍し過ぎじゃない? 反応炉を壊すなら自動起爆装置が有るじゃない。」「そうなんですけど、以前のループだとBETAにそれを壊された事が有るんですよ。 だから武器で直接 壊した方が良いかなぁと……その場で起爆させるよりは、 射撃して着弾した時の反動も利用する方が多少コストを抑えれると思いますし……」「……(こいつ、ハイヴに潜った事もあるのかしら……)」「それと、旅団や師団クラスに壁を作られて迫られると状況によっては詰むんですよ。 昨日は まりもちゃんが自爆して道を開くってパターンも有ったんで、 反応炉破壊云々は置いておくにしても、高火力の武器は必要かなぁ~と……」原作でも速瀬は反応炉を破壊する為に自爆し、榊と彩峰もBETAを食い止めるべく自決した。そんな事にならない為にも、戦術機が持つ"高い火力を持つ武器"の開発を提案をしてみた。TEだとレールガンの存在が有るけど、ハイヴの中で運用するのは今じゃ難しそうだしね。「ん~……言いたい事は解るけど、戦術機が背負うにしては大き過ぎる武器になるわ。 重量は極力抑えれば長刀+突撃砲の重さくらいにはなるだろうし、問題無いかもしれないけど、 砲身の長さには引っ張り回される事になるだろうし、今以上の機動力低下は痛いんじゃないの?」「重量自体には問題は無いんですか?」「えぇ、でも長刀以上の長さの武器を背負わせるのは無理が有るわよ?」「……だったら短くすれば良いんです、使う時 以外は。」「どう言う事?」「"折り畳み式"にすれば良いんですよ。」「!?」武器開発に対して最初は乗り気じゃ無さそうな ゆーこさんだったけど、起爆装置が壊された事や まりもちゃんが自決した事を言ったら若干 靡いてくれる。んでもって"折り畳み式"の案を出すと、納得してくれたか"開発"を飲んでくれた。それで決定した事は、180ミリ大型砲よりも折り畳みが安易そうなバズーカの開発。弾数は多くて4発程度らしいが、自立制御でも全く使わなかった突撃砲と長刀を持つよりはマシ。代償として武器が2個しか持てない事で決定されてしまうんだけど、ハイヴの中で無駄に敵を倒す必要は無いし、弾倉を増やして突撃砲を二丁持つのも良いかもな。また爆風に巻き込まれない為に、盾の強化にも視野を入れてくれた ゆーこさんなのでした。無茶な気もしたけど、これだけ技術が進んでるんだ。 今度も天才なら何とかしてくれるさッ!「度々すんませんでした、宜しく御願いします。」「別に結果が出れば構わないわ。」「んで……明日の仕事はA-01の援護って感じで良いですか?」「……ん……実戦のテストをしてくれれば、何でも良いわ。」「了解ッス。 それじゃ~失礼しま~す。」「はいはい。」≪ガシューーーーッ≫今 言おうとして躊躇ったっぽいな、BETAの捕獲についての件……まぁ、良いか。例え現場を見て意図を聞いても流せと言われるダケだろうし、元々とやかく言うつもりは無い。多くの味方や まりもちゃんを殺す事に繋がるんだろうけど、俺が頑張れば皆 助けれるハズだ。さておき……正史に大きく反して出撃する事になっちまったけど、不知火S型を作って貰った代わりだと考えれば良い……と言うか今更って感じだよね。そういやヴァルキリーズで死傷者が出るハズだし、フォロー出来るよう頑張るとするか。「(何だか踊らされてるみたいよね……悪い気はしないんだけど。)」――――ちなみに、バズーカの名称は決まっていない。 案はあるんだけどね。………………2001年11月10日 午後「んじゃ~そろそろ行くわ。」「あの。」「どした? 霞。」「また……来て下さい……」「当たり前だろッ、またな~。」「ま……またね。」ゆーこさんと会ったついでに霞のトコロへ遊びに行った俺だったが、つい遊び込んでしまった。だって早めに帰ろうとすると霞が悲しそうな顔するんだもん、俺には絶対 抗えませぬ。NOと言えない日本人万歳っ! ……それはそうと、午後の時間はどうしようかな。……あぁ~……そういやB分隊がシミュレーターでもやってる最中かもしれない。まりもちゃんが指導してるだろうから安心なんだけど、覗いて見るのも良いかもしれないね。最もエロいスーツを着ているんだろうし、耐性を付ける意味でも見に行く価値は有る。そう考えながら心の中でウキウキしつつも、真面目な少佐を演じて通路を歩いていると――――「あぁ~~っ!!」「ぅえ!?」「水月……どうしたの?」――――鬼女 ハヤセ ミツキ が1体出た!!唐突に速瀬が通路を曲がって現れ、俺の顔を見るとデカい声を上げたのだ。直後 怖い顔でズンズンと足を踏みしめながら近付いて来るんですけど……しかし足に障害を抱えながらも健気に走り出した涼宮(姉)に肩を掴まれる。「(水月! 良く考えて、相手は上官でしょッ?)」「(くっ……)」「――――敬礼っ!」「……ッ……」涼宮(姉)はボソボソと速瀬に何か言ったと思うと、凛々しく俺に敬礼してくれる。速瀬も顔はヒクヒクしているが、涼宮(姉)に続いて俺に敬礼した。恐らく まりもちゃんの指導の賜物だろう、速瀬の相手を頼んで正解だったかもしれない。だが未だにプルプルと震えているので不安だったが、涼宮(姉)が困った顔をしながらも口を開く。良い娘だよなぁ……マブラヴ以外はプレイしてないから良く知らないけど、結婚してぇ……「あの、少佐……これから どちらに?」「ん……次の任務まで暇なんで、訓練兵達の様子でも見に行こうと思ってね。」「そうなんですか。」「それじゃ~これで失礼するよ。」「はい。」本来なら じっくり話し込みたいところだが、速瀬が居るし難しいだろう。そう考えると……涼宮(姉)と話す機会は限りなく少ないかもしれない。正直 残念だが次の機会が有る事を期待しよう。 よって早足に立ち去る事にした俺。「ふぅ……水月、悔しいのは分かるけど相手を考えてよ。」「わ、分かってるわよ。」「どうして、そんなに白銀少佐を嫌うの? 悪い人には見えないんだけど。」「嫌ってる訳じゃ無いんだけど……どう見ても私達より年下なのよ? 何だか悔しいじゃない。」「階級に年は関係無いよ。 それに神宮司軍曹が認めてる人でも有るんだから……」「ふ、ふんだッ。 ちゃんと勝負するまで、私はアイツを認めないわよ!」「全くもう……負けず嫌いなんだから。」「それよりも遥、アイツを追っかけるわよ? 尾行するの、尾行ッ!」「えっ、えぇ~っ……」――――逃げ延びた……(メガ●ン調)………………「おっほぅ……」シミュレータールームにやってくると、予想通りB分隊の皆が居た。今日は地味に日曜日なので、他に衛士達の姿は無いようだ。 いや、此処じゃ曜日は二の次か。さておきB分隊は まりもちゃんの指導を受けており、基礎を叩き込まれている様子。しかしなぁ……案の定とは言え、何で肌の色に近いスーツを着せられているんだろう。と言うかビニールを被ってるダケにも見えるし、有る意味全裸よりヤバ気がするんですが。あの色だと目を凝らせば透けそうだし、訓練兵に対するイジメにしか見えませんよ?その為か皆には恥じらいが見え隠れしており、ケツとか特にエロいんですけど。だから今の彼女達はエロスーツの違いから"美乳三連星"よりも挑発的に見えてしまう。そんな事を考えながらB分隊達をネットリ眺めていると、榊と目が合ってしまった。「あっ、白銀少佐……」「!? 白銀少佐に敬礼!!」『――――っ。』「こりゃ御丁寧にどうも……」すると まりもちゃんも俺に気付き敬礼し、B分隊も続いてくださる。ふむ、流石に強化装備だから乳は揺れないが……もし揺れてたらおっきしちゃってるお( ^ω^)されど胸を張る彼女達は恥ずかしそうだ、あの彩峰でさえ頬を紅くして小刻みに震えている。だけど笑うワケにはいかない、俺は珠瀬に目の焦点を合わせながら敬礼すると、彼女達の魅力から逃げるように、軍服のまりもちゃんに視線を移した。「いらしてたんですか、少佐。」「えぇ、暇でしたから。 ……ところで、どの辺まで進みました?」「先程 特性検査が終わったところです、御剣と鎧衣の適正が若干 高めですね。」「成る程。 でも大差は無いんでしょう?」「はい。」「まぁ、俺は見てますから引き続き御願いします。」「お任せ下さい。」「――――んっ?」ついさっき初めて見た時はエロ過ぎて逃げ出したくなったけど、訓練には この上ない相手だ。よって夕食迄 此処で時間を潰そうと思っていると……B分隊の皆がこっちを見ている。そりゃ目の前に居るから見るんだろうけど、何か言いたそうにしてるのよね。『…………』「榊、何か俺に言いたい事が有るんじゃないかい?」「!? い、いえ……別に……」「遠慮は要らないぞ、何だね?」5名の訴えるような瞳。 これは聞かざるを得ない、内容によるけど。んで分隊長の榊に聞いてみると、彼女は左右の仲間と顔を見合わせた。その後 頷き合うと、再び俺を見据える。 "私達と結婚してください"とかだと良いな~。「も、もう一度……少佐が戦術機を操縦する様子を見せて頂けませんかッ?」「なんと。」「榊ッ! 図々しいぞ、身の程を弁えろ!」「も、申し訳ありません!」いきなり険しい表情をする まりもちゃんに対し、榊は直立不動になった。まぁ、少佐を相手に"そんな事"を頼んだら"こっち"の常識だと怒られるのは無理もないか。……でも、出し惜しみするのは頂けないな、どっちにしろ俺 程度には成長して欲しいし。正直なトコ甘ちゃんな俺としては、XM3もさっさと広める方が良いって思ってるしね。「……いや、別に良いよ?」「少佐!?」「はははっ、だから暇なんですって。 ……彩峰、キミは何が見たい?」「……ハイヴの攻略?」「彩峰!!」……できればβ版が完成してから見せたかったけど、良い機会だし問題無いか。しっかし まりもちゃん怖いなぁ……真横なんで耳が痛いんですけど。「OK。 んじゃ~それで行こう、管制は欲しいから俺一人かな~。 出来る事なら2機連携を見て貰いたいトコだったんだけど……」「はぁ……分かりました。」「軍曹?」「――――涼宮中尉ッ!」「は、はいっ!?」「うわっ、びっくりした。 ……って、あんなトコに居たのか……」「訓練兵達にヴォールク・データの2機連携による攻略を見せたいのです! 大変 恐れ入りますが、戦域管制をお任せしても宜しいでしょうかッ!?」「か……構いませんけど?」「有難う御座いますッ、涼宮中尉に対し敬礼!!」『――――っ。』何時の間にか話が飛躍しているな。 涼宮(姉)と速瀬……隠れて見てたのかよ!?その気配に気付いたまりもちゃんは流石だな~って言うのはさておき、オペ娘の登場は有り難い。速瀬がオマケに付いているけど、俺の実力を分かって貰える良い機会かもしれないな。「は、遥ぁ~……何オッケーしてんのよぉ?」「あっ……ごめんね、つい。」………………『前方500m地点より旅団規模のBETA接近中! 接触まで60、59、58……』強化服に着替えた俺と まりもちゃんは、ヴォールク・03の真っ最中だった。実戦じゃ無いんだろうけど戦域管制は涼宮(姉)。 見学者はB分隊5名とオマケの速瀬。見学者がどう見ているかは判らないけど、初っ端の涼宮(姉)の表情は驚愕を表していた。まぁ、それは妥当だよね。 正直なところ、驚かないほうがオカしいだろう。……けど驚愕が感激に変わった涼宮(姉)は、興奮しながらも管制を続けてくれている。絶望的な物量のBETAに対し、希望を見出せた事が嬉しかったんだろうね。「しまった、ちょっと丁寧に行き過ぎたみたいですね~。」『どうしましょう?』「抜けますよ、大丈夫ですよね?」『勿論です。』現在位置は下層。 状況は以前と似ていて、まりもちゃんが自決した時よりも余裕が無い。恐らく見学者が居るって事で、丁寧な攻略を心掛けた為だろう。しかし下層は不自然にBETAの密度が高いよな……多分だけど、中層より先は横浜ハイヴのデータを使ってるから、曖昧にするよりは難易度を上げてるんだろう。けど失敗するつもりは無い。 俺は まりもちゃんと頷き合うと、互いに前に出る。「――――今ですよ!?」『了解!!』「そらそらッ、こっちだ~!!」デカい本道の左に寄りながら限界までBETA達を引き付けた直後に、まりもちゃんが右に水平噴射し、俺は射撃はせずに徐々に後退し大量にBETAを釣る。その側面を射程ギリギリで まりもちゃんが宙からマルチ・ランチャーと支援突撃砲で牽制する。射撃中も小刻みに噴射行動……フワジャンをしながら、反応炉の位置を正面として、右斜め後ろに下がっており、地面のBETAは手も足も出せていない。それによって3分の1程のBETAがまりもちゃんに釣られ出すが、先程 撒いた後方のBETAが近付いて来たようで、涼宮(姉)が予想通り告げてくる。『白銀機 後方より突撃級 接近中ですッ! 数は約100、接触まで20秒切ります!!』『少佐ッ。』「引き続き誘導してて下さいッ、先に一気に抜けますっ!」『了解!!』十分 引き付けたし問題無い、右側に突破できる手筈が出来た。俺は最後にマルチ・ランチャーを数発プレゼントすると先程の彼女と同じように右に水平噴射し、ぐるりと回りこんでBETAを宙で釣っていたまりもちゃんの右隣を通り抜ける。それと同時に まりもちゃんも適当な足場に着地しており、跳躍噴射して俺の後を追って来てくれた。先程の釣りの結果、最後尾のBETAも不知火S型の機動には追いつけないし届かない。つまり……ステージクリアだ。 相変わらず反応炉を破壊する武器は無いけど、今回は自動起爆装置は持っていくべきだったのかな~……まぁ、どっちでも良かったか。『白銀機 神宮司機、反応炉に到達。 状況終了!』『――――ワァッ!!』興奮気味にヴォールク・データの終了を告げる涼宮(姉)。同時にB分隊が歓喜してるっぽい声が聞こえ、俺はまりもちゃんに親指を立てる。対して まりもちゃんも微笑みながらウィンクしてくれた。 結婚してください。………………「少佐、軍曹ッ! 素晴らしかったです!!」「これ程とは……御見それ致しました。」「……やるね。」「凄いです、凄すぎます~っ!!」「ぼ、ボクにも あんな操縦 出来るのかな~ッ?」「はははっ、大した事はないさ。 ねぇ、軍曹?」「はい。」筐体を出ると、興奮した様子のB分隊の5名。 恥ずかしさは何処へやら。ソレに対してまりもちゃんと交わした言葉は、強ち間違いじゃ無いんだよな~。本気でやったら後何分かはタイムを縮められた だろうし、訓練を続ければもっと縮まる筈。……でも、悪い気はしないな。 そう思いながら速瀬を見てみると、唖然としていた。う~ん、そうだよな……戦術機の云々を理解していない訓練兵達よりも、エースパイロットである速瀬の方が驚きはデカいだろう、彼女の性格も考えれば尚更だ。だが これで見直してくれたんだろう? そう言う思いを込めて俺は思わず――――――――ニコッ♪「……っ!?」≪――――ダッ!!≫「み、水月!?」つい……微笑んでしまうと速瀬は唇を噛み締め、悔しそうな表情で走り去ってしまった。そして追い掛ける涼宮(姉)、お大事に。いや、その……馬鹿にしたつもりは一切 無いんですよ?何となく表情が緩んだダケであって……そうオタオタしているうちに、まりもちゃんが叫んだ。「良いかッ! 貴様等には近いうちに、先程の技術を最低限 得て貰う様にする! 戦術機によってハイヴを攻略する為には必ず必要なモノだ、判ったか!?」『――――はっ!!』「だが、ほぼ全ての衛士は現在利用した新OS及び不知火S型の存在は知らん! よってテストを担う貴様等が戦術機でのハイヴ攻略の可能性を、最も秘めている事になる! その事を念頭に本日からのシミュレーター訓練に当たれッ! 良いな!?」『――――了解っ!!』「それでは、先程のリプレイを見て貰う事とする! 質問には後程 答えよう。」……そう言い終えると まりもちゃんは端末を操作してモニターにリプレイを移す。視点は まりもちゃんだ。 俺の操縦は少し荒削りだから、彼女の方が参考になるだろう。まぁ……後は任せても大丈夫だろうな~。 俺が居ても邪魔だろうし、無難に見学しとこう。俺は まりもちゃんと目を合わせると、口の動きダケで"後は御願いします"と言った。対して まりもちゃんは優しく頷いて下さったので、俺は満足気に次の行動に移す。狙いは早速 映し出されたモニターを見上げている珠瀬であり、唐突に肩に手を置いた。≪――――ポンッ≫「……珠瀬くん。」「は、はいっ!? なななな何ですか、少佐?」「手紙には……嘘を書いちゃダメなんだぜ?」「――――にゃっ!?」「HAHAHA、じゃあ頑張ってくれ給え。」「あうっ、あうあうぁ……あうっ……」思いっきり図星だったらしい、なかなか可愛いな……お持ち帰りしたい。しかし叶わぬ夢。 俺は痙攣する珠瀬を無視してスタスタと離れると、長椅子に腰掛けた。……そして暫く、B分隊のエロスーツを眺めながら今後の事を考えていた。一番気になるのは速瀬の事だけど、涼宮(姉)だったら何とかしてくれるハズだ……多分。最悪 明日の戦いに支障を来たす可能性も有るけど、フォローしてやりゃ問題無いか。「あっ、そんな所に居たんだ……」「……ッ……」「水月、一体どうしたの? 少佐も軍曹も素晴らしかったじゃない。」「……それは認めるわ。」「じゃあ、何で急に?」「良く判らないけど……ただ……凄く悔しかった。 若いのに戦いの事なら何でも判ってる様な感じなのが、ムカついたのかもしれない。 あの時 笑われたのも、きっと私の"覚悟"を嘲笑ってたんだと思う。」「そ、それじゃあ今迄……少佐はどんな辛い思いをして来たんだろ……」「うっ……それが判らないのが、グスッ……悔しい……悔しいよ、遥ぁ~……」「水月……」「絶対にっ……アイツを越える衛士になって……仇を討ってやるんだから……ッ!!」………………2001年11月11日 早朝原作通り、俺の予知は的中。 旅団規模のBETA群が日本海・海底を南下して来た。それにより第56機動艦隊が全滅、6時半過ぎには帝国軍第12師団がBETA群と接触した。そして7時過ぎには進軍予想により、BETAの目標が横浜基地と判明。よって横浜基地にも防衛基準体制2への移行が発令されるが、その前に殲滅させるのが正史だ。「ピアティフ中尉、A-01の状況は?」『間も無く大隊規模のBETAと接触します。』「数は?」『約500です。』今現在の俺は不知火S型(新OSβ版)強襲掃討仕様のテストの為、戦場へと出向いていた。強襲前衛仕様じゃ無いのは、俺がチキンだからだ。 初戦で格闘メインとかしたくない。さておきBETAの動きは日付が変わる辺りで判っていたので、時間的に余裕を持っての到着だった。移動中は寝てたから中越・下越・新潟の何処かさえ判らないが、自分の役割をこなすだけさ。そんな俺がフォローするっぽい伊隅・ヴァルキリーズは、CP含めて全員でたったの8名らしい。伊隅・速瀬・宗像・風間・涼宮(姉)……残り3人のうち二人が前衛、一人が後衛、3人は此処で戦死か病院送りになるんだろうけど、前衛が二人も死ぬのかYO。う~ん……速瀬みたいなエースパイロットで無い限り必然かもしれないなぁ……他の原作での前衛も白銀・御剣・彩峰ってバケモノ揃いだし……実戦においてBETAの物量を前にXM3無しで格闘とか俺なら絶対嫌なんですけど。でも前者の5人の生存が最低条件とは言え、死ぬ娘達も極力助けたいところだな~。……しかしなあ……たった7機で500体かよ、旅団規模って多くても5000だろ?3つの艦隊と1ダースの中隊が狩り出されてるのに10分の1を相手にするとか、ゆーこさんのスパルタ教育にも程が有り過ぎる気がするんですけど。「ま~……少し様子を見ますよ、状況報告を御願いします。」『了解しました。』恐らくピアティフちゃんは涼宮(姉)と同じ機内で俺と通信してるんだろうな。ちなみに不知火S型の運搬はシークレット。 伊隅達は俺の存在を知らないのだ。さておき丘の上から地響きを響かせて迫り来るBETAを眺めている、俺と不知火S型。周囲に味方部隊は皆無らしい……そりゃBETAを捕獲するなら当然だよね。とりあえず、穴が生まれたら直ぐにフォローしに行こう。 嗚呼……緊張するぜ……「……始まったか。」『はい、交戦開始したようです。』「どきどき、大丈夫かな~……」『突撃級に対し7機の回避を確認。 後衛4機が背後より突撃級の殲滅に移行、 前衛3機が要撃級及び戦車級を殲滅中。 ……突撃級、殲滅したようです。』「出だしは順調か……」『第一波の戦車級の殲滅も確認――――ッ!?』「どうしましたッ?」『ヴァルキリー2が前線で孤立している模様です、このままでは――――』「ま、マジすか!? だったら早く行かないと……!!」『コールサインはどうしますか?』「か……考えて無かった、またの機会で御願いしますっ!」『はいッ。』な、なんてこったっ! 速瀬がピンチらしい、死なれちゃ洒落にならんぞ!?コールサインはストーム・メビウス・ニコニコ・ドナルド・ガチムチ・げろしゃぶ……良いのが……と言うかロクなのが思い付かなかったので、後でじっくり考えて置く事にしよう。とにかく初の実戦だッ! 今回もエースパイロットを肖ろう、主人公は死なないんだからな!!「……良しっ! 不知火……S型は、白銀 武で行きます!!」………………『はああああぁぁぁぁっ!!!!』≪――――ザシュッ、ザシュゥゥッ!!≫『ヴァルキリー1よりヴァルキリー2へ! 速瀬、死ぬ気かッ? 下がれ、出過ぎだぞッ!?』『はぁっ、はぁっ……こんなモンじゃない……私の"覚悟"は、こんなモンじゃない……!!』『大尉ッ、どうかヴァルキリー2の支援を……!』『こ、このままでは速瀬中尉がッ!』『一条・神村、止すんだっ! それ以上出るとお前達も戦車級の餌だぞ!?』『う、ヴァルキリーマムよりヴァルキリーズへッ! こちら側より見て左側が若干 手薄です! マップ転送しますッ!』『むっ……判った! ヴァルキリー3・4・7ッ、左右に展開しろ! 右翼よりBETAを包囲しつつ殲滅し、ヴァルキリー2を援護する!!』『――――了解ッ!!』丘の上よりジャンプして着地 直後、勝手にリンクに紛れ込むと、奮戦するヴァルキリーズの会話を聞きながら、彼女達を援護するべく水平噴射!!一条と神村って聞こえたのは今回死ぬハズの前衛の娘なのだろう、見捨てるワケにはいかない。それにしても速瀬の"覚悟"って何だ? 意味が判らんけど気にしない事にしよう。……そんなうちにヴァルキリーズとの距離が縮まり、俺は跳躍噴射して彼女達を飛び越える。≪――――ゴォッ!!!!≫『!? な、何だ……今のは!? あの機体は何処かで――――』『し、不知火S型……まさか、白銀少佐が!?』「何でこんな所に来るんだよッ!!」≪ドパパパパパパパパ……ッ!!!!≫速瀬は状況がアレなので別として、不知火S型を知る伊隅と涼宮(姉)の驚く声が聞こえる。一方 俺は跳躍噴射中に両手でチェーンガンをバラ撒きまくって、足元のBETAは今のところ無視しておき、速瀬の周囲のBETAを狩りまくる。そうしていると"レーザー照射警報"が鳴り響いたので、俺は即 噴射降下するべく操作する。『し、少佐!?』「見えたっ!!」≪――――カッ!!!!≫ピアティフちゃんの声と同時に複数のレーザーを回避して着地する。正直ジム・ス●イパーのR-4型ビーム・ラ●フルに比べれば止まって見えるぜ!!アレは着地を狙われて避け様と思う前に食らうからな……光線級がそんなんじゃなくて良かった。さて置いて、当然 着地直後も手は休めず、俺は両手のチェーンガン、新武装の頭部バルカン砲、そして胸部マルチ・ランチャーを駆使してBETAを蹂躙する。まさに俺TUEEEE状態ッ! 突撃級が居ないダケでこうも楽になるなんてな~。けど……飛び越えたBETAや後続のBETAが接近中だ、まだまだ油断はできないか……しっかし速瀬は本当に危なかったな、戦車級に食い付かれる直前だったし。それに弾が切れている上に今は興奮しているようだ。 お陰で俺が冷静にもなれたんだけどネ。「こちら白銀機ッ! 速瀬機は確保した、彼女の後退の援護を頼みます!」『ヴァルキリー1、了解しました! しかし、少佐は――――』「俺はBETAを引き付けますッ、殲滅は速瀬をどうにかしてからで!」『ですが――――』「命令だ、復唱してくれッ! 御願いしますから!!(泣)」『!? 速瀬の後退援護を最優先としますッ、行くぞ!!』『――――了解!!』孤立してるのに"ですが~"とか泣きたくなるから止めて下さい。助けてくれる気持ちは非常に嬉しいケド、貴女達に一人でも死なれると物凄く困るんです。そんな俺の気持ちが通じたか、ヴァルキリーズはBETAを包囲しつつ距離を詰めてくださる。後は速瀬をどうにかすればOKか……言う事を聞いてくれれば良いんだけどね。『ふぅッ……ふぅ……し、少佐……何で……?』「速瀬中尉ッ! 跳躍噴射で下がってくれ、光線級は俺が引きつける! 補給を済ませるんだ!!」『な、何よ……私はまだ……!』「良いから命令だ!! お前を死なせたくないんだ、頼むから下がってくださいッ!(涙)」『――――ッ!!』『ヴァルキリーマムよりヴァルキリー2へ! 水月……御願いだから下がって。』『……ッ……り、了解。』「命を粗末にしないでくれ、シミュレーターの相手なら終わったら幾らでもするからさ。」『!? そ、その話……忘れんじゃ無いわよ?』「おうともッ。」『――――ふんっ。』俺と涼宮(姉)の説得が通じ、速瀬は後方に跳躍噴射する体勢に移った。内心ガチで溜息。 白銀の時みたいに半狂乱になってたら詰んでたかもしれないしね。「さ~て……囮か。 中尉、頼りにしてますよ。」『は、はい。 ですが……絶対に無理しないで下さいね?』「大丈夫ですよ。」『……白銀少佐?』ここからが正念場……俺は時間差で迫って来る戦車級を頭部バルカン砲で潰しながら、ピアティフちゃんと視線を合わせる。 対して心から心配そうな表情をしてくださる彼女。そんなピアティフちゃんを安心させる為に、俺はエースパイロットに成りきり、自嘲するような笑みを静かに浮かべると、述べようとする。死を覚悟して戦いながらも帰りたい場所が有る……そんな矛盾に対する言葉を。「逃げ回りゃ……死にはしない。」『――――ッ!?』……でも この名台詞……A-01の全員に聞こえちゃってるんだよねッ?言ってから恥ずかしくなってきたッ、やっぱ止めとけば良かったYO!!俺は恥ずかしさを掻き消す様に不知火S型を跳躍噴射させ、BETAの群れへと突っ込んだ。●戯言●白銀にラストの台詞を言わせたかったので、今回はつい長くしちゃったんだ☆さてさてバズーカの名称と出撃台詞の時点で肖ったキャラの名前が判れば立派なガンオタでしょう。ちなみに一条と神村と言うのはオリジナルの苗字なのですが(後にもう一名?)、必然的に生き残りのA-01の名前が必要だったので出したダケです。このSSに大きく関わる事はまず無いので、空気みたいな娘が3人いると思ってください。■これはひどいオルタネイティヴ(用語ver1)■●胸部マルチ・ランチャー戦術機の左胸に装備する武装。無動作で小型のグレネードを発射できる。弾速は遅いが広範囲に爆発し威力は中程度。速瀬中尉のように直撃してしまうと大ダメージ。陸戦型ガンダムの武装で非常に有名。●サブ射撃システムサブ射撃のマニュアル操作には相当な技量が必要であり、戦術機が様々な硬直で両手による攻撃が不可能な場合、オートでサブ射撃が発射できる状況に切り替わるシステム。当然自動でオートに切り替わる以外の場面でもサブ射撃の使用は可能。マニュアル操作が可能な衛士はこのシステムは最初からカットしている。●不知火S型頭部バルカン砲と胸部マルチ・ランチャーを追加した不知火。機動性は不知火より5%低下しているモノの、前者の武装を両手を使わずに、ほぼ反動無しで使用できる。初見で相手をする衛士にとってはまさに外道の性能。S型とは白銀のイニシャルで、ガンダムでは指揮官用の意味。●頭部バルカン砲戦術機の額の左右に装備する武装。射程は短いが無動作で低威力のバルカンを発射できる。戦車級以下のBETAに対しては極めて有効。ガンダムシリーズの代名詞の武器。●フォールディング・バズーカ折り畳んで背負うバズーカ。被爆を考え爆風を抑え威力に特化している。意味はタンパク質が特定の3次元構造に折り畳まれる現象を言う。弾数が4発だが反応炉を破壊できる威力を持つ。(弾数はスパロボFを参照)ハイヴ内であれば迫り来るBETAの壁を崩すのに有効で、地上戦では誘導により集めた敵を一掃する(要空中)等 様々な局面で使える。反面 長刀と突撃砲が計2個しか持てず状況の見極めも必要なので、ほぼエースパイロット専用の武器となる。現在 香月博士が頑張って開発中。元ネタはGP-03ステイメンの同名称の武器だが、原作と違って片手では無く両手で持つ事となる。●吹雪F型頭部バルカン砲を追加した吹雪。機動性の低下は殆ど無し。乗っている衛士は未熟でもサブ射撃システムの存在により、硬直が発生しようと無動作で反撃してくるので侮れない。F型とは後期生産型と言う意味で、元ネタはザクFⅡ。●追記●同日9時ごろ誤字複数修正しました、申し訳ないorz指摘してくださった方有難う御座います。