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No.34254の一覧
[0] MuvLuv Alternative Possibility (TE&Alt) オリ主[Haswell](2013/03/11 22:45)
[1] プロローグ[Haswell](2013/08/23 18:40)
[2] 横浜基地にて[Haswell](2013/08/23 18:41)
[3] 想い[Haswell](2013/08/23 18:46)
[4] MANEUVERS[Haswell](2013/08/23 18:51)
[6] War game[Haswell](2013/08/23 19:00)
[8] Alternative[Haswell](2013/08/25 16:33)
[9] 番外編 試製99式電磁投射砲[Haswell](2012/10/29 02:35)
[10] Day of Days[Haswell](2012/10/27 22:34)
[11] Project  Diver[Haswell](2012/11/06 23:11)
[12] Dog Fight[Haswell](2012/12/03 20:55)
[13] Active Control Technology[Haswell](2013/03/12 21:28)
[14] Tier1[Haswell](2013/06/13 16:56)
[15] FRONTIER WORKS[Haswell](2013/08/23 01:10)
[16] ATM[Haswell](2014/01/02 03:12)
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[34254] War game
Name: Haswell◆3614bbac ID:7ca50f2d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/08/23 19:00

間違えた版の原稿を投稿してしまいました。訂正します。
自分でいうのもなんですが、少し話のペースが遅いですね。



本作では 史実と異なり仙台→練馬→横浜と移転していきます。






今までで見たことのない色でした。一面雨雲がかかったような灰色。
感情を見ることが難しい、何を考えているかわからない初めての人に私は戸惑いました。
でも怖くなかったのは一面の雨雲の中、奥にほんの少し明るい光が覗いていたからなのか
もしれません。



Part Two
War game

AM09:50 December 22 1999
 練馬駐屯地

香月 夕呼は自分の親友である神宮司 まりもを2名の衛士の迎えに行かせ、自分は一足
先に練馬に向かった。というのも、夕呼は秘蔵の助手である社 霞を安易に彼らの目に留
まらせたくなかったというのもある。ならば初めから連れて行かなければいいのではない
か。そう言われてしまうのも無理からぬことだ。だがこれから2人をVFA-01に迎えるに
当たりどうしても確認しなければいけないことがあった。それには社にしかできないある
特殊な技能を用いなければならない。それはリーディングと言われる能力で、簡単に言え
ば相手の脳内をのぞき見する能力である。リーディング能力によって夕呼の周辺によって
来る間者の類は全て駆除され、諜報機関からは“無菌室”と呼ばれる完全な防諜体制が敷
かれている。今回の2名も間者ではないという保証はどこにもなく、社に2名をリーディ
ングさせることによって、部下として迎えても良いのかチェックする必要がある。社には
シミュレータールームの隣室からリーディングを行ってもらう。その結果と演習内容によ
って蘇芳達をVFA-01に組み込むのか否かを決める。使えそうであれば編入し、そうでなけ
れば適当な理由を付けてどこかの部隊にねじ込む。間者ならば末路は言わずもがなだ。
霞を隣室に待機させ、一息ついたところで伊隅と速瀬、涼宮が姿を見せた。速瀬の方はな
にやら鼻息が荒い。伊隅の方を見やればかすかに苦笑い。どうやらなにか嗾けたらしい。

「伊隅、速瀬。わかってるわね。負けたらただじゃおかないわよ。」

「わかってますよ、副司令。ぶっとばしてやりますから。」

意気揚々と速瀬 水月が答える。その眼は爛々と輝いていて、今にも対戦相手に飛び掛か
りそうな勢いがある。なかなか頼もしい限りだ。しかしそれだけで終われないのが香月と
いう女だった。香月の心に悪魔が囁く。彼女は心の声に従うことにした。
「そうね。そこまで言うのなら負けたときはどうしようかしら。」

「えっ。」
彼女のどこか獲物を狙う目に速瀬は言い知れない不安を抱く。しかし時すでに遅く、速瀬
はすでにまな板の上の鯉であった。ここ最近ストレスの溜まっていた香月 夕呼は容赦が
なかった。

「そうね。もし負けるようなことがあったら、昼食のおかずは一品抜きよ。」

基礎代謝量、運動量がともに多い衛士にとって食卓に並ぶ品目が一品でもなくなるという
ことは死活問題だ。現に速瀬少尉の顔は真っ青を通り越して今にも倒れる寸前といった按
配だった。速瀬少尉と同期の涼宮少尉の顔もどことなく不安そうだ。

「速瀬、負けなければいいんだ。負けなければな。」

伊隅大尉からの追い打ちを食らっていよいよ余裕のない速瀬 水月であった。

「もう。そんなこと言って、大尉も副司令も本気じゃないですよね。」

話を振られた当の二人は終始無言だった。



AM11:00  December 22 1999
 練馬駐屯地

シミュレータールームで待っている4名の元に待ち望んだ衛士が到着したのはあれから約1
時間後のことだった。伊隅、速瀬両名は99式衛士強化装備に着替え終わりあとは相手との
対戦を残すのみという状況だ。涼宮少尉はCP(コマンドポスト)という役職の為すでに準備
に取り掛かっておりここにはいない。速瀬少尉などは自分の生命がかかっているものだか
らもはや命がけである。速瀬は鬼のような形相で、普段から接していて彼女の性格を熟知
している伊隅でさえ、今の彼女には近寄りがたい。初対面の二人がどういう印象を持つの
か非常に不安になるが、今更気にしてもしょうがない。

「ようやくご登場ね。」
香月副司令の言葉と同時にシミュレータールームの扉が開かれ外から二人の衛士と神宮司
軍曹が入室し、A01両名は緊張で思わず背筋が伸びた。懐かしい顔を見ることになった二
人はほんの一瞬だけ吃驚した。神宮司軍曹と言えば自分たちの教導を担当した教官である。
任官してからというもの会うことは全くと言っていいほどなかったのだが、こうしてここ
で再び会えば訓練時の様々な思い出や今は亡き戦友たちの顔が次々と浮かんでは消えた。自分たちの恩師に恥をかかせるわけにはいかない。この勝負、決して負けられない。 伊
隅は誰にともなくつぶやいた。視線を軍曹から2名の衛士に移す。かたや金髪棚引く欧米
人と未だ若い日本人中尉の組み合わせに少々驚く。様々な人種が入り混じる国連軍におい
てこのような組み合わせは決して珍しいことではないが、問題は2名の階級と年齢のちぐ
はぐさにあった。男らしさと子供らしさの同居する、まあそれなりに目鼻立ちの整った日
本人の少年が中尉で、私たちとさして年齢の変わらない欧米人女性が少尉とはどういうこ
とだろうか。世界広しと言えどもこんな組み合わせはそうそうお目にかかるものではない。
伊隅は横目で香月副司令を盗み見るが彼女は至って正常で、この事態が副司令の手違いで
もお遊びでもないことがわかる。そんなとき伊隅の視界にあるものが飛び込んだ。伊隅 み
ちるはわずかばかり目を見開く。彼女の視界の先、まだあどけなさの残る中尉の胸元には
銀星章が輝いていた。銀星章とは“敵対する武装勢力との交戦において勇敢さを示した”
衛士に対して授与される勲章だ。負傷した衛士に、のべつ幕なしばらまかれる勲章ではな
い。つまりあの少年は、あの年で銀星章を授与されるにいたった名うての衛士である。伊
隅は彼の外見と業績のギャップに、彼がどういった手合いの衛士なのか読むことが出来ず
困惑した。彼の瞳の中に速瀬少尉が写りこんでおり、その表情は若干の恐れを含んでいた。
自分で招いたこととはいえ、これが後の隊運営にかかわる重大な問題にならなければいい
のだが。
伊隅はそっと溜息をついた。

「昨日も伝えたとおり今日は演習をしてもらうわ。私はあなたたちの上司としてその実力
を把握しておく必要がある。わかるわね。演習の形式は2対2のAH戦よ。フィールドは
都市部の廃墟に設定してあるわ。今すぐ強化装備に着替えて、いいわね。」

香月副司令の一言で2名の衛士は衛士強化装備に着替えるためにロッカーにその姿を消し
た。

「お久しぶりですね。伊隅大尉、速瀬少尉。」

そういって敬礼する神宮司軍曹
その一言に両名の背中をむずかゆいものが走った。訓練兵時代幾度となく厳しく鍛えられ
てきた相手に敬語で接されるとどうも落ち着かなかった。
伊隅と速瀬の戸惑いを感じ取ったのだろう。神宮司軍曹は一度目を閉じる。
再び目を開けた彼女の顔は訓練兵時代二人がよく見慣れた物であった。
場の空気が変わる。

「任官してから貴様らがどれだけその腕をあげたのか今日は見せてもらうぞ。」

伊隅と速瀬は敬礼で答えた。二人はシミュレーターに搭乗し、静かに対戦の時を待った。







蘇芳、エレン両名も遅ればせながらシミュレーターに搭乗し、シミュレータールームには
衛士が誰一人としていなくなる。顔合わせが終わりもはやここに留まる意味もなくなった
香月 夕呼と神宮司 まりもはシミュレータールームを後にし、涼宮少尉の待機している
オペレータ―ルームに姿を現した。 眼前のモニタには今回の演習で使用される荒廃した
都市が映っていた。MAPの両端、対角線上に2つの光点が2組確認できる。蘇芳、エイス
の降下衛士組は今回使用される不知火に搭乗するのは初めての経験だ。習熟が全く終わっ
ていない状態での戦闘はいささか不利であると感じた香月 夕呼は2名の為に猶予を与え
てやることにした。

「聞こえているかしら。流石に転換訓練もなしに機体を完璧に動かすのは無理だと思うわ。
だから時間をあげる。10分で仕上げなさい。」

「「じゅっ10分!?」」

CPの涼宮少尉とモニタの向こうに映るエレン少尉の声がかぶる。あまりの無茶苦茶な要求
に、昔から何一つ変わっていないのだと神宮司軍曹は溜息をついた。

「このくらいこなしてくれないとA01への入隊は認められないわ。」

通信を切り最初の一言がそれだった。いくらなんでもそれは厳しすぎるだろう。伊隅大尉
や水月だってクリアできるか怪しい。内心はそう思いながらも表立っては何も言わない涼
宮少尉。彼女も自分の昼食はやはり惜しいのであった。

10分の転換訓練が終わり未だに硬さが取り切れていないエレン少尉とは裏腹に蘇芳中尉は
慣れた手つきで不知火を乗りこなしていた。ロールアウトしたてのころから使っていたよ
うな、あまりのなじみの速さに神宮司 まりもは訝しむ。軍歴からすれば日本軍機を扱っ
たことは無い筈なのだ。日本軍機はその扱いが他国の戦術機と比べると独特で、オービッ
トダイバーズが使用するF15-Eストライクイーグルに比べると素直にいうことを聞いてく
れない。夕呼は10分で乗りこなせと言っていたが現実にそんなことは不可能だ。そうこう
している間に演習が開始された。両部隊ともNOEでビル群の合間を縫って飛行している。
お互いの目的はだいぶ異なっているように見える。
やがて蘇芳中尉の部隊はある程度の空間がぽっかりと空いた広場のようなところに出る。
ビルの倒壊具合も相まって複雑な地形が形成されていた。2機の戦術機が潜んで敵を待つに
は十分すぎる場所だった。まりもの脳内を待ち伏せの文字が過る。BETA戦ではBETAが
小細工なしに正面から突進してくる為に、今やほとんど使われなくなった戦術を、一体こ
の中尉がなぜこともなげに使って見せるのか。彼の教官あるいは上官がそのような任務に
就いた人物だったのか。あるいは彼自身もそうなのか。さきほどから疑問の種が尽きない。
軍歴を見て彼を迎え入れるべきだと真っ先に主張したはずなのだが、その戦闘を見ると間
者の文字がどうしても頭から離れず不安になって、まりもは夕呼に問いかけた。

「夕呼。彼、随分AHなれしているけれど軍歴に諜報部隊にいたとか、その手の話は書い
てないわよね。」

「確認できる範囲ではそんな話は書いてないわよ。」

夕呼が怪訝そうな顔をする。せっかくこの場にいるからには、戦術機に対して全く興味が
ない親友に自身の視点からの意見を聞かせたほうがためになる。そう考えたまりもは、自
身の先ほど考えた事を包み隠さずに述べた。夕呼は少し眉をひそめたがあまり気にした風
ではなかった。部下の手前ということもあるのだろうが、長年彼女と付き合いのある人間
からすれば本当にどうとも思っていないのだとわかる。彼女が間者を気にする立場である
ことを加味すればその反応は少しおかしい。そんな親友の内心を感じ取った夕呼はまりも
に弁明を一つ。

「過去どんな任務に就いていたか。そんなことを気にしていたらきりがないわ。大事なの
は今なの。それに経歴道理の優秀な人間なら、その手の任務が回ってきてもおかしくない
わよ。」

ようやくここで戦場が動きを見せた。夕呼は、話はここまでとばかりに前を向く。そして
蘇芳の一挙手一投足を見逃すまいと、モニタを食い入るように見つめている。まりもはど
こか釈然としないものを感じながらも動き始めた戦場を注視することにした。
4つの光点が徐々に徐々に近づきつつある。両者が銃火を交える瞬間は直ぐそこに迫ってい
た。







右を見ても左を見ても変わり映えのしない廃墟に速瀬 水月はいい加減苛立ちつつあった。
未だに姿を現さない敵を探して、低く地を這うように飛行し時折、立ち止まっては遮蔽物
からそっと角を覗く。その繰り返し。 指揮官である伊隅 みちるは速瀬少尉の苛立ちを
敏感に察知していたが、他に手の打ちようがないのだから我慢してもらうしかない。速瀬
の性格を察しての戦術だというのなら、これほど効果的なものはない。食えない奴だ。み
ちるは内心舌打ちをする。やがて捜索も半ばが過ぎた頃、速瀬は敵の気配を敏感に察する。
計器は何の反応も示さないが速瀬 水月という衛士の勘が2人の存在を告げていた。ビル
越しにそっと窺う。込み入った廃墟の中でそこだけぽっかり穴が開いたような開けた場所
が確認できる。

「大尉。 あのあたりに敵の気配を感じます。」

「確かか。」

「間違いありません。」

ふむ。こういう時の速瀬の勘は外れたことがない。みちるは、速瀬少尉の情報をもとにい
くつかの作戦を検討する。もし速瀬のいうことが本当だとすればなかなか面倒なところに
布陣してくれたものだ。敵陣までは未だ距離があり下手に出ていけばハチの巣になる。さ
てどうしたものか。みちるは人知れず溜息をついた。

「大尉。私に良い考えがあります。」

「言ってみろ。」

「まずこのエリアの後ろ側へ大尉が回り込みます。配置が完了したら、私が廃墟より高く
飛行し敵の火線をこちらにひきつけます。敵が発砲したら位置が特定できるので。そこを
挟み撃ちにしてやりましょう。」

悪くない作戦だ。待ち伏せし我々が罠にかかるのを今か今かと待ちかまえている敵に、一
泡吹かせてやろう。みちるはその作戦でいこうと速瀬に指示し自分は敵後方に回り込む為
移動を開始した。

「よし。ぶっとばしてやるわよ。」
敵の策が読めれば後は倒すのみ。もはや自分たちの勝利はゆるぎない。2人はそう考えてい
た。
やがて配置につき、いよいよ砲火を交えるときが来た。 速瀬 水月は主機に火を入れる。

「今回はあくまで敵位置の特定が最優先任務だ。それを忘れるなよ。」

「了解。」

速瀬機はビルの谷間で十分な速度を得たのち、飛び上がる。主機からはアフターバーナー
が青い尾を引き、機体が限界まで加速している事を知らせる。右に左にジグザグと飛行し
ながら敵の狙撃を誘う。敵の攻撃を受けた際は何時でも躱せるよう計器からは決して目を
離さない。

「どこにいるのよ。でてきなさい。」

速瀬 水月は舌なめずりをした。 その時、速瀬の期待に応えるように一発の銃弾がこち
らめがけて飛んでくる。望んでいたはずの敵の狙撃ではあったが速瀬は決して喜ぶことが
出来なかった。敵の砲弾は想定外の射角から飛来したものだ。その射線は巧妙に隠されており、気づいた時にはすでに避けようのない場所まで迫っていたのである。慌ててスティ
ックを押し込み管制ユニットへの直撃だけは回避する。しかし砲弾は速瀬機から右腕をも
ぎ取った。

「速瀬っ!」

大尉の焦った声が聞こえるが、今はそれに答える余裕もない。さらに2~3発の砲弾がまっ
すぐにこちらを捉えている。速瀬は左腕に装備された92式多目的追加装甲を眼前に構える
と敵の砲弾を受け止めた。これ以上この高度を維持すればいい的である。速瀬は主機のエ
ンジンを落としビルの隙間に着地する。額から流れ落ちる冷や汗を右手で拭う。体がわず
かに震えていた。まるで初めて戦場に上がった新兵のような有様に情けなさでいっぱいだ
った。気を取り直して状況を確認する。 機体の状況は芳しくない。敵に撃ち抜かれた右
腕は完全に使い物にならず、先ほどの無理な軌道変更による機体への負荷で随所に警告が
出ている。継続的な戦闘は不可能である。かくなる上は相打ち覚悟の特攻のみ。

「速瀬。被害状況を報告せよ。聞いているのか。おい」

大尉からの通信を切る。レーダーが敵2機がこちらに急速に接近していることを捉えた。
74式近接戦闘長刀を可動兵装担架から引き抜くと主機に火を入れる。ビルの隙間から敵が
飛び出した。速瀬は長刀を水平に寝かせ突撃する。しかし速瀬の渾身の一撃も敵には届か
ず87式突撃砲の発砲音が断続的に響き。速瀬 水月は敵の手前でビルに激突したのだった。
自機の撃墜地点から戦闘の様子を眺める。そこではようやく到着した伊隅大尉が二機の後
背より攻撃を加えていた。絶体絶命の状況にもかかわらず、敵隊長機は事も無げに鮮やか
なバレルロールを披露すると大尉の背後にぴったりとつき大尉を自分の部下から大尉を引
き離した。速瀬の頬を一筋の涙が伝う。慌てて通信機を切ると今の顔を見られぬように頬
を拭う。突撃前衛の自分が敵に一太刀も浴びせることなく地に落ちた。無様だった。強く
なったつもりで天狗になっていたのだ。眼前で不知火二機がこちらを機にした風もなく着
地する。片方の機体は主機から煙が上がっており、戦闘の続行は難しいだろう。そしてそ
の隣、この場に堂々と立ち王者の風格を漂わせるその機体を速瀬はその目にしかと焼き付
けた。その瞳に静かな闘志をたぎらせて。 これ以後、蘇芳中尉は速瀬少尉に執拗に追い
回されることになる。





戦闘が始まって以来オペレータールームを静寂が包み込み、皆画面内の出来事に魅せられ
ていた。みごとなバレルロールで弾丸を躱し敵の後ろをとる。その手際の良さにまりもは
感嘆の溜息をついた。機体を自らの手足のように軽々と扱うさまは見ていてとても気持ち
の良いものだ。A-01の面々もいい勉強になったのではないだろうか。先ほどから夕呼はど
こかしらへ電話をかけており、何かを確認しているようだ。まだ勝敗は決まっていないの
だが、ここから先にはあまり興味はないようだった。現在、速瀬機は大破し伊隅の機体も
ここかしこがやられていて絶望的な状況だ。おそらく勝つことは難しいだろう。ここら一
体で最も強かったA-01にとって、初めての追い込まれた戦になった。この敗戦からあの子
たちが何を学ぶのか、今から楽しみなまりもであった。同時に 蘇芳 林太郎がどんな人
物であるのか確かめなければならないという半ば義務感のようなものが彼女の頭をもたげ
ていた。


演習は最終局面に突入し、伊隅 みちると 蘇芳 林太郎が正面から対峙し、お互いの全
力をもって戦った結果。伊隅は敗れたのだった。


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