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No.34254の一覧
[0] MuvLuv Alternative Possibility (TE&Alt) オリ主[Haswell](2013/03/11 22:45)
[1] プロローグ[Haswell](2013/08/23 18:40)
[2] 横浜基地にて[Haswell](2013/08/23 18:41)
[3] 想い[Haswell](2013/08/23 18:46)
[4] MANEUVERS[Haswell](2013/08/23 18:51)
[6] War game[Haswell](2013/08/23 19:00)
[8] Alternative[Haswell](2013/08/25 16:33)
[9] 番外編 試製99式電磁投射砲[Haswell](2012/10/29 02:35)
[10] Day of Days[Haswell](2012/10/27 22:34)
[11] Project  Diver[Haswell](2012/11/06 23:11)
[12] Dog Fight[Haswell](2012/12/03 20:55)
[13] Active Control Technology[Haswell](2013/03/12 21:28)
[14] Tier1[Haswell](2013/06/13 16:56)
[15] FRONTIER WORKS[Haswell](2013/08/23 01:10)
[16] ATM[Haswell](2014/01/02 03:12)
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[34254] FRONTIER WORKS
Name: Haswell◆3614bbac ID:85320d04 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/08/23 01:10
「ここに来るのも久しぶりね。」


―前線に出て一度でも生き残った衛士なら皆経験することだ。過去を忘れて前に進めとは
言わない。だが戦う理由が死に場所探しというのだけは止めろ。これは命令だ。―

中尉に言われた言葉が何度も頭をループした。

ああ、そうか。

私は、孝之のあとを追いたかったのか。
あの時、中尉に強く反発したのはああもあっさり心の内を看破されたからなのかもしれな
い。

Part eleven FRONTIER WORKS


AM5:00 January 9 2000
横浜基地



早朝、扉をたたく音で目を覚ます。時計を見れば、点呼にはまだだいぶある。横浜基地
に着任して1ヶ月近く経つが、朝早くから部屋に訪ねるような知り合いはエレンくらい
だろう。

「少し待て。」

私は寝起きで鈍る体を動かしてズボンを穿き、編み上げブーツのひもを結び、次いでドア
に向かいながら上着を着てベルトをしめる。
ドアを開けて弾帯にやっていた視線を上に上げれば、そこには珍しいお客が立っていた。
あまりの珍しさに固まっている私を尻目に彼女は無遠慮に部屋に入り込む。
蘇芳が速瀬少尉と言葉を交わして3日ほどたっていた。速瀬はあれから蘇芳を避けていた
し、蘇芳もそうなることを半ば予想していたので、別段驚きは感じなかった。



「おはようございますっ。中尉」

速瀬の元気のよい朝の挨拶は沈黙を持って迎えられた。昨日までの視線で人を殺さんばか
りの暗い雰囲気は鳴りを潜めていた。3日でこの変わりようか。自らの目の前に今たたずむ
この女性はいったい誰だろうか。
蘇芳は内心で戦慄した。女は生まれつき女優だと言うが、これほどの変わりようを見たの
は初めてであった。

「中尉?聞こえてますか。」

反応のない蘇芳の様子に速瀬はしばしば思案した。不意ににやりとするとその頬をつかみ
左右に引っ張る。蘇芳の意識は現実に戻された。

「やめふぇくれ。少尉。」

静止の声に、速瀬はようやくその手を放した。蘇芳は少し赤みの差した頬をすりながらど
こか恨めしげな視線を投げかけた。速瀬は悪びれた様子もなくニッと笑った。

恐らく本来の速瀬 水月はこういった人物なのだろう。蘇芳はそうして自らに降りかかる
新たな災難の到来を肌で感じていた。

「中尉、私鳴海のことまだ忘れられない、ううん、きっとこれからも忘れることはないけ
ど、いつまでも下を向いてはいられないですから。」

蘇芳を見る彼女の瞳に迷いはなかった。

「私は部隊の突撃前衛として、隊内の誰にも負けるわけにはいかない。もちろん中尉にも
です。」

彼女は私に告げた。 事実上のライバル宣言である。
ここ最近の不安定な状態はすっかりと鳴りを潜め、ただひたすらに強さを求める衛士の姿
がそこにはあった。彼女の変化の裏には事故によって自らの半身を失い、愛する男を失い
ながらも、既に新たな道を歩き出した涼宮少尉の姿がきっとある。

「それで、その、自主訓練に付き合ってはいただけないかなと…」

言葉はしりすぼみになっていき、視線は床と蘇芳を行ったり来たり。許しを得たとはいえ、
流石にまだ気まずいのだろう。意欲的な衛士が多く存在している隊において、時間外演習
はよくおこなわれていることであったし、同隊でも既にエレンの前例があるようにそれ自
体は特別に珍しい話でも何でもない。

私は少尉を横目に廊下を歩き出した。そんな私を速瀬 少尉は立ち止まったまま見ていた。

「自主訓練に付き合ってほしいんじゃなかったのか?」

蘇芳は振り返って問いかけると、後ろから慌てて追いかけてくる足音を聞きながら、また
前を向いて歩き出した。


勝ち負けではなく、自らの技量を高めるための訓練である以上、小細工や待ち伏せ等、戦
術的な要素はそこには存在しない。ただひたすらにぶつかり合う。互いに肩の力を抜いて、
前回のようなデットヒートを繰り広げることはなかった。当然ながら二人の演習は長丁場
になった。速瀬は長刀を手の延長線として淀みなく扱っていた。その剣技は帝国軍のよう
な決まった流派によるある種、定型的なものと異なり、蘇芳に新鮮さを感じさせた。同時
に、この剣技を習得することに全力を傾けた。同じ日本人でありながら、受けてきた訓練
プログラムの違いから蘇芳は長刀を使った近接が得意ではない。短刀と突撃砲を巧みに操
り、敵を一切近づけない蘇芳の近接戦闘能力は、実戦において十分に通用しているために、
伊隅は長刀の扱いについて学べとは指示しなかった。しかし蘇芳はそれでは駄目だと考え
るのだ。複数の技能を習得していることは戦術の幅を広げ、部隊の生存性を高めることに
つながる。複数の技術を実践レベルで扱えることは時として、高度な一つの技術に勝る。
シミュレータの外より微かに起床ラッパの音が漏れ聞こえる。二人は演習をここで切り上
げて、慌てて点呼に向かうのだった。











横浜基地 PX


点呼時の騒然とした空気のまま一同は食堂で食事をとることとなった。涼宮は速瀬から
なにか聞き出そうと、巧みな話術を駆使していた。エレンはその顔にほほえみを浮かべ
ているが、内心をうかがい知ることはできない。本来であれば二人は罰則物ではあるが
今回に限っては大目に見ようと伊隅は考えていた。ここ最近頭を悩ませていた問題の一
つが解決し、伊隅自身も少し気が緩んでいるのかもしれない。


男女が二人で朝方にそろって遅刻というのは様々な想像を掻き立てるものだ。激しさを増
す対BETA戦によって男性人口が大きく減った最前線国家において、部隊内での痴情の縺
れは日常茶飯事であり、年に数件は刀傷沙汰が起きている。かつての軍隊では惚れた腫れ
たはご法度であったが近年の人口減少の観点から、政府も軍部も男女の事情というやつに
あまりうるさくなくなってきていた。
伊隅としてはからかうネタとして絶好の今回の件ではあるが、この二人に限って、短期間
でそういった間柄にはなりえないことは明らかであるし、変なことを言ってまた元の状態
に逆戻りすることは避けたかった。 しかしいずれは……。そう考えながら、彼、蘇芳 林
太郎とエレン エイスの両名が来た時から温めていた考えをそろそろ実行に移すべきかだ
ろうと蘇芳に声をかけようとして、未だに速瀬に詰め寄っている涼宮が視界に入った。

「ねえ、水月。本当は…」

「ええい。そんなことばかり言ってると…」

速瀬は涼宮をくすぐって強引に追及を終わらせようとしている。

「水月、くすぐったいってから止めてって」

涼宮は身をよじって、速瀬の猛攻に耐えるが、あれこれ聞きだすような余裕は一切なくな
ってしまった。そうこうしているうちに時間もよくなってきたところで、伊隅が二人のじ
ゃれあいに終止符をうった。

「時間だ。愛し合うのもそこまでにしておけ。」

笑いながら告げる伊隅 みちるに速瀬と涼宮両名が慌てて否定する。おかしな噂が流れれ
ば博士の新しい玩具としてウンザリするほどいじり倒されるのは目に見えていた。














横浜基地A-01地下格納庫


2名の男が所狭しと置かれた工具や、戦術機への動力ケーブルを危なげなく跨ぎながら言
葉を交わしていた。両者の前には若干見慣れぬシルエットの幌が被せられていた。
「昨日からの修正個所は解決してあるか?」

「ええ、既に解決済みです。FCSのエラーについては現物と併せての動作チェックを実
行して2日後に修正を完了する予定です。」


「そうか」

技術者の報告に輪島は満足そうに頷いた。
輪島は先の会議でかねてより温めていたある提案を行った。提案は受け入れられ、更に幾
つかの追加修正が施された。1度実行シーケンスに入った動作のキャンセル。現場で整備に
携わった輪島は多くの衛士たちが動作を開始し始めてから突発的に発生した予期し得ぬ事
態に対して、対処ができずに死んでいくことを知った。自らが開発室にこもっていたとき
には全くわからなかった真実。衛士たちは戦術機の動作の愚鈍さで死んでいるのだと勘違
いしていたのだ。
嘗ての私がそうであったように、今もなおこの誤りが正しいものであると錯覚している開
発者達の認識を正さねばならない。このようなことが起こる背景には閉鎖的な開発環境が
生む歪みも大きく関わってくるのだ。長きにわたり開発部隊というぬるま湯につかった開
発衛士達はその牙を抜かれ、本来の戦場のあり方を忘れてしまう。 今私がいるのは人類
がBETAに向ける槍の穂先にいる者たちのすぐそばだ。
輪島の視界が人類の未来を担う若者たちの姿をとらえた。まだ若く、本来であればまだ学
生であったであろう彼ら。

彼らが不満を感じる物を作り上げてはならない。

彼らを失望させてはならない。

とにかく試せ。

この場所は今までにない革新を人類に届ける最前線にならなければならない。

輪島の胸中を強い思いが渦巻いていた。

「こんなところで一人突っ立てるなんてあんたらしくないな。」
グレアムは自慢の赤髪を撫でた。常に何か指示を出し、四方奔走している男が止まって何
事かを考えていれば気になって仕方がなかった。

「少しな。それよりも、そっちの案件はどうなっている。苦戦しているようだが。」

輪島は気持ちを切り替えてグレアムに進捗状況を尋ねた。多くの人間が関わる大型の案件
において、コミュニケーションの有無は最終的に仕上がる製品の出来に直結する。報告書
だけでは見えて来ないことも多くある。特にグレアムの部署からの定時報告書からは開発
が進まず、苦しんでいるさまがありありとうかがえたのである。

「いいもなにも。なかなかの難航っぷりだ。石間から渡された例のサンプルだが、いった
いありゃなんだ。」

グレアムは石間から渡された得体のしれないパッケージに苦しめられていた。未だかつて
見たこともない程の高性能を叩き出しながら、その動作は若干不安定であった。持ち込ま
れた3つのサンプルはそれぞれの特性に大きなバラつきがあり扱いが難しかった。

「石間の奴、どこで拾ってきたのか知らないが、「拾ってきた?」」
グレアムの不可解な言い回しを輪島は見逃さなかった。

「あんたのそういうとこ嫌いじゃないぜ。」
グレアムはおちゃらけて見せた後、自らの感じたありのままを語った。

「あんたもこっちに身をおいてりゃわかるんだろうが、あんなものは見たことがない。技
術ってのは基本的には地続きだ。そう考えれば1年先、2年先にどうなってるのか、なんて
ある程度の予想がつくってもんだが……」

グレアムは珍しく言葉を濁した。

「構わん、続けろ。」

「あれは現行で出回っていると推定される演算システムの性能を凌駕している。シリコン
で作られていないのは確かだろうさ。何より石間自身もなんだかよくわかっていないよう
な気がしてならない。」

石間は基本的な事柄には答える癖に、質問が装置の核心部分に及ぶと言葉を濁してしまう。
意図的に隠していることもあれば、時折石間も予期していなかったであろう結果が出た事
が明らかな態度を見せることもあった。

「ふむ」
輪島はうなった。
石間 弘樹は必要とあれば我々の前に現れ、我々が彼を必要とすれば、彼は我々の元を訪
れた。協力的ではあるが、何があっても決して自らの職場に部外者を立ち入らせない男だ
った。我々が利用するこの格納庫も機密レベルとしてはかなり高いエリアに属しており、
一般部隊の人間は決してこのフロアの存在を知らない。しかしどうやら石間の所属する部
署はさらにその下、基地上層部でも極少数しか存在を知りえないエリアにあるらしい。石
間と関わったことによって、その部署の存在について初めて知ることとなったのである。
香月博士の研究内容や石間が研究にどう関わっているのかを知ることはできない。隠され
た事象は人々の強い興味を引くが、知る必要のないものが関われば碌な目に合わないのは
いつの時代も共通である。それを理解してもなお知りたいと願うのは、得体のしれない部
品を取り扱わなければならない不安ゆえだろう。

「とりあえずお前は作業を続けろ。私が…探りを入れてみる。」

輪島は横浜の深淵を覗き込む事が、大きな危険を伴うことを理解していないわけではない。
しかし部下の不安を取り除く義務がある。何よりも長年の勘が嫌な予感をヒシヒシと伝え
てきたのである。

「いやそ「輪島准尉!」」

グレアムのセリフは若手エンジニアの一言でかき消された。周りを見れば、多くのエンジ
ニアたちがグレアムの話が終わるのを待っていた。

「俺ばかりが、話しているわけにもいかないな。」

グレアムは肩をすくめると、この場でのこれ以上の会話を諦め、この件に関しては後でま
た話し合うことを決めた。ここ最近、開発部署は活気に満ち溢れており、香月副指令をし
て、いるだけで楽しくなると言わしめるほどのお祭り騒ぎである。
開発部隊の詰めているハンガーの壁面いっぱいに見慣れぬロゴが描かれている。ロックウ
ィードにスカンクワークスがあり、ボーニングにファントムワークスがあるように、我々
にも何か名前が欲しい。誰かが放ったその言葉は大きな反響を生み、若手たちの間に一大
論争を巻き起こした。

名は体を表す。


自分たちがどこに向かい、何を成したいのか。それを再認識するいい機会だと蘇芳も輪島
もあえて介入せず成り行きを見守った。論争の果てにFRONTIER WORKSという名に落
ち着いたようであった。2つの名門開発チームに代わる戦術機開発の新天地として、また
最前線を駆ける衛士達と常にともにあり、実用的な兵器づくりを心掛ける。そんな決意が
込められていた。当初の無気力さはどこへやら、今は誰も彼もが一丸となって目標に向か
っていた。多くの開発スタッフたちの努力により、その戦術機は姿を徐々に現しつつあっ
た。

















 「准尉への報告が完了しました。」

「よし、いいわよ。順調ね。」
ボブカットの黒髪を撫でつけてクリス オーデッツはガッツポーズをとった。まだ若い彼女
は会社で歯に衣着せぬ物言いと何よりその性別が煙たがられていた。彼女もまた蘇芳にス
カウトされたうちの一人であった。重火器の専門家であった彼女は特殊な反動吸収装置の
研究に着手していた。戦術機が現行で使用している火器の多くが採用している36㎜砲弾は
大型種に対して非力であり、弱点を狙わなけば倒すこともままならない状況である。前線
地域での戦闘において、戦闘の最終局面では1機あたりが対応しなければならないBETA
の個体数があまりにも多いために、現実的には弾丸を四方八方にばらまいているだけであ
った。弾丸の多くが無駄になるうえ、敵を殺しきれないことから問題視されてきた。欧州
では不足してきた戦車などの変わりを任せる意味も含め、ラインメイタル製Mk57中隊
支援砲などが開発され、前線配備がなされている。しかし36㎜以上の砲弾を戦術機から
連射する場合、その強すぎる反動で、アームは異常をきたし、目標を明確に捉えることが
できず、その集弾性はさんざんなものであった。ゆえにMk57ではバイポットが備え付
けられており基本的な射撃スタンスは部隊の“支援”射撃であった。
クリスは考えるのだ。もし120㎜を何の気兼ねなく連射することができたのなら。
帝国軍が使用している87式突撃砲は120㎜と37㎜両方を兼ね備えた砲であるが、それ故
に2種類の弾薬を携行しなければならない問題がある。種類の違う二つのマガジンを用意
するのは、最前線の整備部隊には負担が大きい。彼女がひねり出した答えが目の前にあっ
た。 あとはこれを実射試験をするだけだ。自らの作った兵器の出来に自信があった。



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