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No.33107の一覧
[0] 【チラ裏から】 優しい英雄[ナナシ](2013/10/12 01:03)
[1] 導入[ナナシ](2012/05/12 14:02)
[2] 一話[ナナシ](2012/05/13 12:00)
[3] 二話[ナナシ](2012/09/03 14:45)
[4] 三話[ナナシ](2012/09/03 14:49)
[5] 四話[ナナシ](2012/08/16 19:00)
[6] 五話[ナナシ](2012/06/23 15:14)
[7] 六話[ナナシ](2012/09/03 17:23)
[8] 七話[ナナシ](2012/09/28 19:31)
[9] 八話[ナナシ](2012/09/28 19:31)
[10] 実験的幕間劇 黒兎の眠れない夜[ナナシ](2012/11/07 02:45)
[11] 九話[ナナシ](2012/10/23 02:10)
[12] 十話[ナナシ](2012/11/07 02:48)
[13] 十一話[ナナシ](2012/12/30 19:08)
[14] 十二話[ナナシ](2013/02/22 17:30)
[15] 十三話[ナナシ](2013/04/05 02:10)
[16] 十四話[ナナシ](2013/06/06 01:43)
[17] 十五話[ナナシ](2013/06/06 01:41)
[18] 十六話[ナナシ](2013/10/17 18:12)
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[33107] 二話
Name: ナナシ◆5731e3d3 ID:e64705e1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/09/03 14:45
  10月22日 横浜基地 第一滑走路前 《ホーク隊 ホーク1》

『所属不明機の衛士殺傷は禁止する! 繰り返す! 衛士殺傷は禁止する!』

『おいおい、優しいねえ。その万分の一でもいいから、俺たちも気遣ってもらいたいよ』

 不明機に向かって急行する途中、ホーク3が不平を言う。

「ホーク3。無駄口がすぎるぞ」

『へいへい。了解』

 まあホーク3の気持ちも分かる。ずかずかと侵入した敵を、わざわざ生捕れと言われれば現場としてはたまらない。こちらがイーグルの4機編成でも、正直つらいところだ。

「ホーク1より各機、コクピットへの射撃を避けろ! 敵は一機だ。距離を保てば問題ない」

『『『了解!』』』

 そして敵機を視認する。国連軍使用のF-15......長刀を持っているから、こちらと同じF-15Jか。

 敵機の発砲。
 
 全機散開して銃弾を避ける。そして各機が敵機に向かい発砲を......

「なにっ!」

 敵機は発砲と同時にブーストジャンプ 。ホーク3に接近しようとしている。

 だがこの速さは

「カミカゼか!」

 明らかに接近戦を試みるために近寄る速度ではない。このままいけば衝突だ。突撃銃では接近する敵の速度は殺せない。よって

「ホーク3!回避だ!」

『ちっ』

 ホーク3はすぐに回避行動に移る。ぎりぎり回避できるかどうかだ。
 だがそこで驚くべき機動を敵機はとった。
 敵機はホーク3のいた位置に着地。突撃砲を廃棄し、短刀に持ち帰る。そして一閃。
 とっさに横に回避したホーク3は、その一刀を避けられない。
 金属同士がぶつかる鈍い音。
 短刀は深々とコクピット部に突き刺さっていた。

『貴様ぁ!』
 ホーク4が突撃砲を構える。だが

『うぁ......』
 
 ホーク3からの通信。彼の生存が確認される。ホーク4は巻き添えを考慮し、発砲を躊躇。
 その隙に敵はホーク3から追加装甲を奪取。これを盾に今度はホーク2に接近する。
 速度は先ほどと一緒。

「全機、後退しながら敵脚部を射撃! 撃ち落せ!」

 計三基の突撃砲が吼える。しかし敵は大部分を追加装甲で防ぎ、残りを変則的な機動で回避。
 なんだこの機動は! 並みの腕ではない。いやそれどころか一流でもこんな機動ができるか?

『ひぃ!』
 
 追い縋られるホーク2から悲鳴が聞こえる。

「びびるな! ホーク2は長刀で応戦! ホーク4と俺は格闘でホーク2を支援!」

『『りょ、了解!』』 
 
 銃弾が回避されるとなれば、遠距離戦は無意味。接近されれば、巻き添えの関係から周りが援護できない。
 ならば最初から3機で接近戦を挑む。突撃砲を相手が放棄している以上、射撃はない。

『うあぁ!』
 接近する敵機に、ホーク2は上段から長刀を振り下ろす。速度からすれば絶妙の一撃。回避は不可能。
 だが敵機は回避ではなく短刀を右上に掲げる。刃をねかし、長刀を受け流した。
 それは剣道でのありふれた型の一つ。だが戦術機でそれを再現するなど、曲芸もいいところだ。
 そしてこちらが援護する暇もなく、敵はがら空きになったホーク2に短刀を突き立てる。狙うはまたしてもコクピット部。
 突き立てられた機体は、操縦を失い硬直する。

 俺とホーク4は突撃するべきなのに、硬直してしまう。

 レベルが違いすぎる。
 訓練を日々こなし、実践を潜り抜けてきた。今ならばルーキーはおろか、並みの衛士なら3,4人手玉にとれる自信はある。
 だがあれは次元が違う。
 才能も経験も錬度も。どう挑んでも絶対に敵わない。

『た、隊長っ!』

 部下からの声で我に返る。敵機が迫り来ることに気付く。右手には短刀。

「くそっ!」
 呆けている間にかなりの間を詰められてしまった。こちらも腹を括り長刀を構える。
 体勢は突きの姿勢。敵の速度を活かし串刺しを目論む。先の操縦を見れば致命傷は無理でも、多少の損傷は望めた。
 
「こんちくしょうっ!」

 タイミングを計り刃を繰り出す。生還が望めないと覚悟したからだろうか、今までで渾身の突きであった。風を切る音と共に、長刀が敵機を穿とうとする。しかし、だがと言うべきか、やはりと言うべきか。

「いない!?」

 目の前にいたはずの敵の消失。それと同時に真後ろに着地音がする。跳躍装置を使った宙返り。ここにきてもはや人間技を超えた敵の機動に、完全に意表をつかれた。

『隊長っ! 後ろですっ!』

 分かってるよ......そう言い返す前に、コクピットにはしる衝撃で、俺は意識を手放した。


 10月22日 横浜基地 第一滑走路前 《???》

 逃亡した最後の一機も無力化し、俺は辺りを見回す。
 どうやら基地からの増援はまだらしい。他の即応部隊は敵わないと判断したのだろうか。来援の気配はない。
 それにしてもこれがあの天下の横浜基地か......

「ずいぶんと弱くなった......いや弱かったなあ」

 スクランブルから10分かかった戦術機群の到着。俺がその気なら、この滑走路は今頃お釈迦だ。腑抜けているにも程がある。香月先生、いや香月副指令がBETAを放ちたくなった気持ちが理解できた。
 だが油断はできないだろう。腐ってもここは第4計画の中枢である。いまだここには100機を越える戦術機と、何より彼女らの部隊がいる。

 とここでレーダーに機影を捉える。数は9。機種はTYPE94 不知火だ。
 帝国軍でさえ配備が遅れている最新鋭の機体を有する部隊は、横浜基地でもただ1部隊。
 
「少し早いな......」

 霞の件で、俺がただの侵入者ではないと判断されているのだろうが、もう少し通常部隊が出張ってきて欲しかった。
 俺が片付けた機体は4。そして搭乗する全ての衛士は生きている。
 おそらく、ここまですれば副指令に意図は気付いてもらえるだろうが、次の戦闘の準備には些か不足している。彼女らは精鋭中の精鋭だ。できればあと5、6体は確保したかった。

 まあしょうがない。ならやり方を変えるだけだ。

 網膜投影で辺りを窺うと、ちょうど俺を半月状に囲うようにして、9機の不知火が着地していた。
 こちらは突撃砲を放棄しているため、見守ることしかできない。
 囲み終わると同時にオープンチャンネルから通信が入る。これはおそらく、

『こちらは横浜基地所属伊隅 みちる大尉だ。所属不明機に告げる。即刻武装解除し投降せよ。指示に従わない場合は撃墜も辞さない」

 やっぱり......年甲斐もなく涙腺が緩むのを感じる。現金なもので、あれ程覚悟を固めていても、つい心が揺り動いてしまった。
 しかしそんな感情は直にしまう。この世界には彼女らと馴れ合うために来たのではない。

 だから、この感情は今はいらない。彼女らと対峙する。ただそれだけに気を集中させる。


「そちらの要求には答えられない。さらにそちらが俺を撃墜できるとも、到底思えない」


10月22日 横浜基地 第一滑走路前 《速瀬 水月》

 男の不遜な言い方に頭にくる。

 陽炎4機をのしたからって、調子に乗るんじゃないわよっ!

『ほう。9機の不知火に対してもそちらが勝つと。ずいぶんな余裕だな』

『事実を述べたまでだ。お喋りをする暇があるなら、早くかかってこい』

 言い捨てると敵機は後方に跳躍。同時に全機の突撃砲で射撃するも、追加装甲で遮られる。

『ヴァルキリー1 より全機! 追撃しろ!』

 相手は第2世代なうえに、重い追加装甲を所持しているため、振り切られる心配はない。
 だがその追加装甲と奴の機動のため、こちらの射撃は通じない。
 本当なら誘導弾や120㎜ で盾ごと葬りたいが、殺傷を禁じられている以上、高火力な武器は使えない。

『ヴァルキリー1より ヴァルキリー2 接近戦に持ち込め!』
「ヴァルキリー2 了解! 奴の盾ごと真っ二つにしてやりますよ!」

 長刀を両手に追いすがる。
 速度では勝っているので簡単に距離を詰め、刃を振り下ろす。
 左腕部をもぎ取る一撃を、敵は半身をそらし回避。だが左腕部に装備された盾は真ん中から両断された。
 敵は盾を諦め残骸を投げつけてくる。
 
「当たるわけないでしょ、そんなもん!」
 
 苦もなく長刀で払いのける。
 だてに突撃前衛 をやっているわけではない。
 払いのける間に敵は地面に落ちた突撃砲(ホーク3の物だ)を拾う。照準警報が鳴る。

『 ヴァルキリー2!』

 即座に意図を察知し上空に跳躍。後衛の強襲前衛 、強襲掃討 が敵機を掃射。私の機体の影に入っていたのだから、完全な不意打ちになったはずだ。
 
「悪いわね。でも卑怯とは言わないわよね」

『もちろんだ』

「なっ!」

 下で掃射を受けたはずの敵は、私に張り付くように上空に飛んでいた。
 意表を突いたのになぜっ!
 そして反応する間もなく右手の短刀で私の機体の左腕を切断。
 同時に敵は機体の頭部を掴み、跳躍装置の出力を最大にする。そして私を盾にしながら部隊中央に落着した。

「ぐぅっ」

 背中を打ち付ける衝撃に口が歪む。機体と強化服では衝撃を吸収しきれなかった。
 敵も同じように衝撃を受けているはずなのに、私の機体を乗り越え、また跳躍。

 どこに向かったのか、とっさに確認できない。
 そしてどこかで何かがぶつかり合う音。おそらくは長刀が戦術機の装甲を断ち切る音。

 機体を音のした方向に向けると、私は息を飲んだ。

 そこには

 装甲部の多くを銃撃され、さらに左腕をもぎ取られた陽炎。
 
 と

 傷はなく、握る長刀で陽炎の左腕を切り落としながらも、コクピット部に短刀を突きつけられたヴァルキリー1、大尉の不知火であった。


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