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No.30130の一覧
[0] TAKERUちゃん、SES!!(ALの並行世界モノ)[PN未定式](2011/12/26 09:53)
[1] 第二話[PN未定式](2011/10/16 18:12)
[2] 第三話[PN未定式](2011/10/25 17:35)
[3] 第四話[PN未定式](2011/10/31 07:40)
[4] 第五話[PN未定式](2011/11/15 18:31)
[5] 第六話[PN未定式](2011/11/16 07:16)
[6] 第七話[PN未定式](2011/11/23 20:20)
[7] 第八話[PN未定式](2011/12/23 10:46)
[8] 第九話[PN未定式](2011/12/16 15:39)
[9] 第十話[PN未定式](2011/12/12 09:37)
[10] 第十一話[PN未定式](2011/12/23 11:46)
[11] 第十二話[PN未定式](2011/12/27 08:57)
[12] 第十三話[PN未定式](2012/01/01 17:17)
[13] 第十四話[PN未定式](2012/01/12 19:36)
[14] 第十五話[PN未定式](2012/01/10 22:51)
[15] 第十六話[PN未定式](2012/02/11 11:42)
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[30130] TAKERUちゃん、SES!!(ALの並行世界モノ)
Name: PN未定式◆a56f9296 ID:70e25a94 次を表示する
Date: 2011/12/26 09:53
【前書き】

皆様へ。閲覧、ありがとうございます。

本作品は、オリジナル設定優先で、オリキャラ有りの不定期更新ですのでよろしくお願いしいたします。

感想を書いていただける場合、規約違反の書き込みはご遠慮ください。
管理人様ご多忙のようですので、皆様の自制をお願いするしかない現状みたいです。

作中の内容について、原作あるいはメカ本のどこからもってきたのか、あるいはそれをどう解釈したのか、どこらへんが全くオリジナルかは、いちいち解説いたしません。
展開上、わざとぼかしている要素もあります。

描かれたものは、この作品内だけのお話です。

(前書きはここまでです)

-------------------------------------------------------------------





「だいたい、アメリカがいい子ちゃんぶり過ぎるんですよ。この世界の苦境の原因はそれだといっていい」

 俺は、グラスを傾けながら言い放った。

「今は非常時ですよ、非常時。BETAとかいう呼ばれもしない連中が宇宙から侵略してきて、こうしてる間にも支配地を広げている。
なのに、アメリカはくだらない建前にこだわってるでしょ?」

 Beings of the
 Extra
 Terrestrial origin which is
 Adversary of human race。

 これらの頭をとって、通称BETA。
 地球生物の頂点から、人類を蹴落としつつある彼方からの生命体。

「だが、例えどんな小国であろうと、主権は尊重されねばならない。アメリカの理念にも反する」

 落ち着いた雰囲気の初老の軍人が、やんわりと指摘した。襟元には、星の並ぶ階級章がある。

「それがくだらない建前ですよ。アメリカ以外、宇宙からの落着ユニットを継続して迎撃できる能力持った国がほかにありますか?
もしアメリカがアサバスカ落着ユニットに、カナダや自国への放射能汚染省みずに核をたっぷりとぶち込まなければ? 世界は数十年前に終わっていたはずです。
ところが世界はアメリカの献身と決断に感謝するどころか、やっかみと妨害ばかりじゃないですか。
で、アメリカはアメリカで堂々とせず、ちまちませこい陰謀をめぐらせては自爆ばかり」

「……まぁ、そうだ。G弾使用案を国連に飲ませるのに失敗した挙句、ロビー活動は却って反発を招いた」

 夜景のよくみえる窓を背後にした将軍が、嫌そうに顔をしかめた。

「今必要なのは、覇権奪取と世界からの支持を両立させようっていう甘い考えを捨てることです。
世界史を紐解けば、英雄と賞賛される人間だって実情は虐殺者で詐欺師ですよ。それでも最終的に功績が害悪を上回れば讃えられる。それが現実です」

「目標を仮に立てるとしたら?」

「アメリカを唯一無二の最高司令部とした、全人類の一個の軍組織化。反対する奴らは、見せしめを作って抹殺。そして、全人類の資源と人材を使っての、BETA殲滅」

「……まるで世界規模のファシズムだな。『全体主義は民主主義に勝る』と外務大臣が豪語した時代の日本帝国は、さて民主国家のアメリカに勝てたかね?」

「アメリカが覇権を取る過程と、その果実の取得について日本やドイツと同じ失敗を繰り返すのなら、そうなるでしょうね」

「で、見せしめ相手は?」

「アメリカの軍事独裁権確立に徹底反対するのが明白で、かつ『こいつが叩き潰されたのなら、従うしかない』という恐怖を世界に与える程度には強い国。
できれば、後方国家のほうが適任ですね」

「――日本帝国しかないではないか、その条件では。大丈夫かね? あの天然チート国家に、公然と手をだす案など」

 チートというのは、本来は不正するとかだます・インチキとかのネガティヴな意味がある。
 が、ある特定の界隈では単純に神様やらの超越的存在から、棚ぼた的に力を貰ったボーナスの事を差す。
 日本帝国のそれがどっちであるかは、あえて言うまい。
 ちなみに、本来的じゃない用法を将軍に教えたのは、俺だ。

「勝つだけなら簡単ですよ。チート国家といっても、全方位で理不尽に強いわけじゃない。ある面じゃ、猿並に弱点をもっているのでそこを突く。
馬鹿正直に、相手の強いところにぶつかっていくから無駄に消耗する。戦いは、卑怯かつ外道であるべきです」

 日本帝国のチートぶりだが、これはかなり実戦能力に偏っている。『ある原因』で別種のチートしている俺でも、正面から戦うとなると不安を覚えるほどだ。
 これに比べると門地(家柄)を今時軍隊に持ち込む時代錯誤の斯衛軍とか。
 CIAがいかに有能とはいえ目の前にハイヴがある状況であっさり煽られ、同胞虐殺も遠慮なくやるキ印の連中が中核精鋭部隊に多数いるとか、それ以外の軍人・軍組織の成熟度はお粗末の一言だ。
 生産性や整備性が悪いくせにさらにバージョン違いが乱立している武御雷なぞ、補給をある程度妨害してやれば短期間で無力化するだろう。

 ……あ、この世界の現時点――1996年じゃ武御雷はまだできていないし、完成する確率分岐世界とも限らないか?

 と、俺は普通のこの世界の人間なら、どうやっても考えない前提を織り込んだ思考を自然に行う。

「……君は、日本人ではないのかね?」

 俺の遠慮のない物言いに、話し相手――在日アメリカ軍の将軍――はさすがに引きつった顔になる。それを笑いながら、グラスの残りをあおる。
 ちなみに、中身はミネラルウォーターだ。年齢は未だ十代後半の俺が酒をあおるのは、法的にも肉体的にもまずい。

「見た目や人種の上では、そうですね。でも、日本に特別な思い入れはありませんよ」

「愛国心もないと?」

「どっかの文学者がいってましたよ。『愛国心は、悪党の最後の拠りどころである』ってね」

「それを言われると、合衆国に忠誠を誓った我らの米国将兵の立つ瀬がないな」

「あいにく、俺は形式上も国連軍所属です。建前だけでいうのなら、一国家に拘って大局を見失う事こそ誓約に反しますからね。
一時的とはいえ、国連軍指揮権に服する義務のあるあなた方にも、それは言えるのでは?」

「政治的活動に関与せず、の一項は?」

 俺がぐっと詰まると、将軍は愉快そうに笑った。
 将軍は宣誓など口先だけだ、とわかっている。そんなものが遵守されるのなら、歴史上軍人の暴発暴走事件は桁をもっと減らしているだろう。
 ただ、口数の減らない年少の兵をからかっただけだ。
 それがわかっているから、俺は降参というように両手を上げて見せた。

「――では、私の『お友達』に君の意見は伝えておく」

「ありがとうございます」

「まあ……案ずるより産むがやすし、という。世界があっさりと君に同調してくれるかもしれんし、な」

 恐らく気休めであろう将軍の一言に一礼してから、俺は在日国連軍――実体は米軍司令官の執務室を辞した。



 俺の名は、白銀武。この世界に生きる、何億人か数を減らした人類という種の一個体。
 しかし、はっきりいっておく。
 俺は恐らく、確率時空の中で無数に分岐する世界の『白銀武』の中でも、突出して変わった性格をしているだろう。
 なぜそんなことがわかるか、というと、俺の脳味噌には時空を越えた因果情報が流入してくるからだ。

 1995年の正月あたりだった。
 前触れもなく奇妙な映像や音声がリアルに脳内であふれ出したのだから、最初は悪質な頭の病気にかかったかと思ったぜ。
 あまりの情報量に、頭痛や吐き気は当たり前。主に『わかる』情報も、

「こんなの俺じゃねえ!」

 と叫びたくなるぐらい、甘ちゃんな『白銀武』の見聞きしたものだったからだ。
 正直、よくこの武で『桜花作戦』までを乗り切れたものだと思ってしまう。
 周囲の助けがちょっと少なかったら、あるいはサイコロの目の転がり方ひとつが違ったら、アウトだっただろうな。

 どうもこの甘ちゃん武は普通の(?)確率分岐世界の、俺と似て異なる存在ではなく。俺はじめとする無数の世界の『白銀武』から、いろいろと『かき集めて』できた存在だったらしい。

 そのためか、俺に『世界をとりあえずでも救えるにまで成長した力と知恵、あと他の分岐世界の情報のいくらか』の『払い戻し』があった。
 それが正確な表現かどうかはわからないが、俺は自分の中に生まれた『力』と『知識・知恵』の出所をそう考えた。

 仮に、桜花作戦を成功させた世界の武をオリジナルと呼ぼう。
 俺とオリジナルの違いは、まず恋愛関連の性格だ。
 オリジナルは、はっきりいって鈍感だが、それに輪をかけて恐ろしく純情な面がある。
 一人の女に決めたら一直線、たとえハーレムが可能だと自覚しようが、そんな不実な事はそれこそ死んでもしないような奴だ――選ばれなかった女達に同情する。いや、むしろすっぱり諦めがついていいのか?
 対して俺は、別に鈍感でも純情クンでもない。
 ……確率分岐の俺の中には、それこそゲームにかこつけて女をお子様お断りの意味で食いまくるのもいるらしいから、それに比べれば大人しいぞ?
 が、さる界隈ではローマ字で表記され、こんなの武ちゃんじゃなーい、という批判を喰らっても仕方ない程度には、欲望に忠実だ。現在は保留中だが。

 次に、思考様式。
 これもかなり違う。
 オリジナルは、どっちかというと戦術的……というか目先の事にすぐ思考を囚われがちで、他人の行動言動にも影響を受けやすい。
 そのせいで、ある時期までは香月夕呼にいいように利用されたりしたな。

 対して俺は、因果情報による知識増強という要素もあって、もっとでかい規模で考えを巡らせたくなる。暗い陰謀だって、辞さない。

 俺は因果情報を自覚した時、将来ほぼ確実に自分の身に降りかかる災厄を悟り、慄然とした。『この世界』はオリジナルがループした世界と、ほとんど誤差が見られないぐらいそっくりだ、と気づいたのだ。
 これまでは日本帝国の魔術的といえる情報統制の作り出した話を何気なく信じ、日本は大丈夫だろと漫然と思っていた。
 BETAの脅威だって、全く知らなかった。人類大勝利、を連日の政府発表は伝えていたからな。
 だが、勝っているはずなのに戦線が後退して難民が増大しているあたりで、欺瞞に気づいてもおかしくなかったはずだ。
 それなのに……

 と、内省している暇さえ惜しみ、当時の俺は、すぐさま行動を開始した。
 ただの一少年にできることなど、たかが知れていたが、無理を通さなければ悲惨な死に方をするのはほぼ確定、とわかっていればやるしかない。

 できるかどうかじゃなく、やるかやらないか――という、よくお説教に出てくるあの理屈だ。

 まず、在日国連軍に志願した。
 ただし国連軍に開放されたばかりの横浜・白陵基地にではなく、在日米軍が看板をかけかえただけ、と白い目で見られている東京・横田基地に、だ。
 このあたりの話は、めんどくさい手続きの連続だった。
 周囲の大人――両親や親戚、学校の教師達は大反対。理由は、志願自体に否定的あるいは反米反国連感情ゆえと様々だが。
 友人達(筆頭はこの世界でも、もう呪いレベルの腐れ縁・鑑純夏だ)も、めいめいにやめるよう言ってきた。

 だが、俺はそういった邪魔……そう、たとえ本心から俺の事を心配しての事だろうと、今は邪魔でしかない……を振り切り、実質米軍の国連軍に若年志願兵として入隊した。
 この世界を最小の犠牲で救うには、最大の国家であるアメリカの中に食い込むのがベターだ、と判断したからだ。
 本当はアメリカ軍に直接入隊する事も考えたのだが、日米間の国籍関連の法律だの、国民を徴兵する権利だのが壁になり、時間のロスが惜しくて断念した。

 別に、アメリカが好きなわけじゃない。それこそ感情的にいえば、日本人の多くのように未だに占領軍同然の兵力を置く連中が大嫌いだ。
 が、アメリカ抜きでは人類は一年ももたないだろう、というのが現実だ。
 アメリカを世界の最高指導部として、この非常時から目を背けるように抗争や陰謀に明け暮れる人類社会を一応にでも統制し、BETAを叩き潰す。
 アメリカがその貢献にふさわしい利益や権利を要求するなら、くれてやればいい。貢献に報いないよりは、よっぽど公平というもんだ。
 ……まぁ、BETAを排除した後に、功績や献身に見合わないモノを要求してきたら、また話は変わるがな。
 そこまで上手くいった上で、さらに俺が生き残っていれば、だが。
 ――これが、俺の目論見だ。

 入隊した後、適性検査でやはり衛士訓練兵となった俺は、かなり気張った。
 この年代の平均値をすっとばす体力を見せつけ、座学に励み、教官らはもちろん司令部クラスの連中さえ目を剥くような成績を叩き出し続けた。
 これは注目を集めるのと同時に俺自身の能力を鍛錬し、高める目的もあった。

 因果情報によるチートは、所詮は付け焼刃。

 本当に土壇場で頼りになる力が欲しければ、血と汗と涙を代償にして入手しなければ、いざって時に頼りにならない。
 それは、ループによる強化を続けたオリジナル武ですら、実戦に入ればあれだけ苦労したことを見れば、予想がつく。

 恵まれた力を捨てるほど殊勝ではないが、それに頼り切るのは情けないという思いも確かにある。
 天才訓練兵、という名声を欲しいままにする裏で、俺は同期訓練兵の皆が休んでいる間にランニングし、ちょっとした隙間時間を見つけては新たな知識を脳に叩き込んだ。
 血反吐をこっそりぶちまけたことも一度や二度ではないが、悲惨な未来を回避するためには、やるしかないと自分を鼓舞し続けた。
 結果、俺の力は訓練兵として入営半年で、精鋭の正規兵さえ回れ右で勝負を避けるほどになった。

 このあたりで、ようやく待望の特別なアクションが起こる。
 俺の存在がきっかけになり、国連軍から委託を受ける形でアメリカ軍のある極秘計画が発動したのだ。

 スーパー・エリート・ソルジャー計画。通称、『SES』計画。

 そう、世界を救う段階に達しないオリジナル武が、明らかな自分の異常性を誤魔化すために言ったでまかせが、この世界では本当になったのだ。
 BETA大戦の切り札となる、超人兵士を養成するための訓練法の研究から、『手足』となる戦術機開発まで含んだ、包括的プロジェクト。
 ――現在は掛け声が先行して、ろくな体勢もできていないがな。
 ただし実施地はアメリカ本土のエリア51ではなく、横田基地となった。
 形の上では、あくまでも俺は在日国連軍の所属だからだ。それへの配慮をしたのだ。

 ……こういう建前による足かせが、アメリカの全力発揮を阻んでいるんだろうな、と改めて実感する。

 そのくせ(因果情報どおりなら)無通告でのG弾投下とか、クーデター煽りとか政威大将軍の抹殺とか、自滅的な暴発はするんだから始末に悪い。
 チートの反対語(さすがにそれは因果情報にも無かった)を体現しているってレベルだ。

 このアメリカや世界を丸ごと洗濯するのは、大変そうだ。
 前途の遼遠さにめまいを覚えながら、俺は少しずつ上層部への働きかけを活発化させた。
 最初は珍獣を見物する気分で俺に会いに来た国連軍幹部、特にアメリカ軍が実質的な所属先であることを隠しもしない連中を選んで、いろいろとコネを作った。

 俺が、因果情報に加えてこの世界でしっかり学んだ事を元に、兵站や後方支援に関する地に足の着いた意見をいってやると、『才能に溺れたうすっぺらいガキ』を想像していた米軍将校らは、すぐに態度を改めた。
 このあたりの反応のよさは、さすが世界最強軍隊の幹部連だけはある。
 国力におんぶだっこするだけでトップを張れるほど、世の中は甘くない。まして今は、人類の天敵・BETAさんがいるのだ。質においても相対的には他国を優越しているからこそだ。
 出自や身分とかに異常に拘る斯衛軍あたりでは、こうはいかないだろう。

 俺はSES計画のデータサンプル取りにかこつけて、アメリカや国連の方針を建前無視に変更するほうが好ましいという論文を書き、各所に送り続けた。
 コネを得たアメリカの将軍と、先ほどのようなきわどい会話も頻繁にかわした。
 将来的には、大統領府はもちろんラングレー(CIA)の方々とも接触したい。

 ――近頃、露骨に軍のMPその他、諜報組織の皆様らしき視線を感じるようになった。目立つ動きをしているのだから、仕方ない

 すぐ襲撃や拘束を喰らう危険性は小さいだろうが、流れ次第ではそれも覚悟しなきゃならないだろう。

 俺の脳裏に、ちらりとテンガロンハットを被ったスーツ姿の中年男の映像がちらついた。
 日本絡みの陰謀を仕掛ける場合、一番厄介なのはあの男だろう。

「ま、やるだけやるさ」

 俺はそうつぶやいて、着込んだ国連軍訓練兵用の軍服を揺すりながら基地の冷たい廊下を歩いた。
 行き交う将兵達に、俺はいちいち敬礼する。
 自身の力で潜り込んだ私的な場所ならともかく公の場所では、だいたいこんな態度だ。最下級の訓練兵の辛いところ。
 が、答礼する者達の表情は、普通の訓練兵に対するにしては戸惑い気味だ。俺の特異な噂が広まりつつあるのだろう。

 女性将兵からは、ちょっと色っぽい視線を向けられることがある。
 大したきっかけもないのに異性をひきつけてしまう謎体質(別世界においては恋愛原子核、という仮説さえある)のせいなのか、それとも超エリート男性に対する自然な反応なのかはわからない。

 だが最低限足場を固めるまでは、人らしい楽しみは先送りと決めている俺は、気づかないふりして表面上だけ完璧な儀礼を保ち、訓練兵用の宿舎へ帰るのだった。

 もうすぐ、SESに選抜されたほかのメンバーとの顔合わせ、そして訓練兵から正規兵に昇進するための試験前倒しがある。
 それに集中しなければ。

 そう思っていた俺だったのだが、寝床に入って翌朝の四時前に叩き起こされた。

「防衛基準体制2、発令! 防衛基準体制2、発令! これは訓練にあらず。繰り返す、これは訓練にあらず!」

 という、基地内放送の狂ったような連呼によって。

 ……え? なんだよこれ、予定にないぞ! そう毒づきながら、俺は慌てて毛布を跳ねのけた。


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