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No.2811の一覧
[0] スドーちゃん[shIWNx.uaY](2008/03/20 23:32)
[1] スドーちゃん[shIWNx.uaY](2008/03/23 23:21)
[2] スドーちゃん[shIWNx.uaY](2008/04/05 22:01)
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[11] スドーちゃん[shIWNx.uaY](2009/01/11 22:54)
[12] スドーちゃん[shIWNx.uaY](2009/04/29 00:37)
[13] スドーちゃん[shIWNx.uaY](2009/09/01 21:22)
[14] スドーちゃん[shIWNx.uaY](2009/12/01 22:09)
[15] スドーちゃん[shIWNx.uaY](2009/12/14 22:38)
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[2811] スドーちゃん
Name: shIWNx.uaY◆1cf6c46b ID:b8996fa4 次を表示する
Date: 2008/03/20 23:32
   一



「──死力を尽くして任務にあたれ! ──生ある限り最善を尽くせ! ──決して犬死にするな!!」
 室内に男の声が響く。国連軍横浜基地内ブリーフィングルーム。新任少尉・白銀武、堂々の『伊隅ヴァルキリーズ』入隊であった。男冥利の晴れ姿、といいたいところだが、新任の彼を取り囲む中隊のメンバーはひとりの例外もなくうら若き女性たちだ。
(話には聞いていたけど、ほんとに女の人ばっかりだな)
 白銀は正直そう思った。
(またすごい女所帯にはいることになっちまったな。オレこの人たちとうまくやっていけるかな)
 自己紹介をぐるり一巡やり終えて、一抹の不安がよぎる。ふと目をやると、五人の女がかたまってこちらを見つめている。訓練兵時代からの同期、榊千鶴、御剣冥夜、鎧衣美琴、彩峰慧、珠瀬壬姫の五人である。
 白銀は、彼女たちを見て少しほっとした。
(なんだかんだでオレはこいつらとやって来れたんだし。なんとかなるか)
 伊隅大尉は実直で堅物だ。なにかヘマをしたらひどく怒られるだろう。速瀬中尉は普通に怖い。涼宮中尉は優しそうだが怒らせるとたいへん怖いとの事だ。宗像中尉はミステリアスで怖い。風間少尉と柏木少尉は大丈夫と思うが、涼宮少尉からはなにやら敵意を感じられる。
 怖い人ばかりなんだな、と白銀は思わずにいられなかった。 

「これで全員揃ったな」
 と伊隅。あたりをぐるり一周見回して、
「では、白銀は私と座学。他の者は戦闘訓練──」
 その時。ガラガラ!ピシャ!と勢い良く戸が開いた。
「よおぉし、全員揃ったなあぁっっ!!!」
 皆が一斉に振り向く。戸口にはサングラスをかけた小柄な女性が、戸を開けた腕をそのまま肩の高さに保って立っていた。
 あっ!
 まるで死んだはずの亡霊でも発見したかのように、一同その人物を指差す。 
 サングラスの女は、
「──新潟は、地獄だったッッ!!」
 力を込めて言った。
「須藤!」
「須藤少尉!」
「須藤ちゃん!?」
「帰って来たのか」
「この死に損ない!!」
 わっ、と移動して戸口の周りに人の輪をつくったのは部屋の人数の半分。残りの半分──一週間前に入隊した五人とたったいま入隊したばかりの白銀だった──は、変わらずその場に立ち尽くしていた。
 誰? 誰? どこの人?
 六人が顔を見合わせる。
「ほら、あの人じゃない? BETA新潟上陸の時に重傷を負ったって」
 榊が推察すると、他の者も、あー、と合点がいったようで声を漏らした。

「どもども。へっへっへっ。どもども」
 須藤と呼ばれた女は、頭をポリポリと掻き、偏屈そうに腰を曲げて伊隅の前に歩み寄る。
「須藤でーす。恥ずかしながら帰って参りましたあぁ~」
「ご苦労」伊隅は呆れたように応えた。「予定より早かったな。副司令は年明けになるだろうと言っていたが」
「病院、抜け出してきちゃいました」
「そうか」
 伊隅がひとつ息をついた。この須藤少尉の態度には、さすがに白銀も呆れた。たしかに、堅苦しい言動は無用の中隊ではある。しかし、この先任少尉のそれはおよそ軍隊というものからかけ離れている。
(でも、怖い人ではなさそうだな)
 そのくせ白銀はすこし安心した。こんな人でも務まるんだからオレでも大丈夫だ、と思えてきたのだ。

「さて! 白銀の座学もあるし、戦闘訓練のスケジュールも詰まってる。あまり須藤のために時間を取ってはやれんのだが。まあアレだ。ついでといってはなんだが。須藤、みんなに復帰の挨拶でもしてまわれ」
「はーい」
 須藤は返事をし、まずはポニーテールの小隊長へと足を進めた。
「どうもっ。お久し振りです。えーっと、記憶が……」
「なにふざけたこと言ってんのよ。速瀬よ、はーやーせ」
「そうでしたそうでした。速瀬中尉、お元気でしたかー?」
「おかげさんでね」
「それは良かったです。ところで凉宮中尉は元気なんでしょうかね?」
「んなこたぁ直接本人に聞きなさいよ」
 速瀬は親指で隣を指す。
「そうでしたそうでした。きゃー。遙ちゃん久しぶりぃぃー。元気ー?」
「うん、元気ー」
 ふたりは手を取り合い握り合い、再会の喜びを分かち合った。互いの手のひらを合わせ、指を絡ませる。
「髪切ったー?」
「うん、ちょっと切ったー。須藤ちゃんずいぶん短くなったねー」
「うん。半分燃えてなくなっちゃったのー。だから切って揃えたー」
「あそうなんだー」
「でも先生にバッサリ切られただけだからー、今度美容院いこうかと思ってさー」
「えー、いいなー美容院。私も行きたーい」
「遙ちゃんどこで髪切ったの?」
「これは基地で切ってもらっただけぇぇ」
「そっかぁ。基地だとさあ、バッサバッサと、なんか機械みたく切られるよねー」
「ねー」
「やっぱ美容院だと違うって。あっでもさー、あたしの髪切ってくれてた美容師さんさー、この前お店かわっちゃったの」
「えー? ほんとー?」
「そしたらさー、やっぱ別の人だと感じ違うじゃん」
「違うよねー」
「ふわっとかパリッとか、最初っから説明しないといけないからさー」
「あー、分かる分かる。イメージ伝わらなくて苦労するよね」
「うん。だからもうあたしもその美容師さんと一緒にそっちのお店に移ろうかなーって」
「でもそうするとさ、店長とかから悪く言われそうよね。『なんだよ、従業員が店移ったら客も移んのかよ』って」
「ぎゃー、言われる言われる! あたしホラ、国連はいる前からその美容院だからー」
「お店替えるの勇気いるよねー」
「ねー。あっそうだ。ねねねね、遙ちゃんも今度一緒に行かない? 美容院」
「うん、行く行くー」
「外出許可取ってさー、行こうよ」
「うんうん。今度行こうねー」
「ねー」
「ところで、サングラスどうしたの?」
「んっとねー、まだ瞳孔よく閉じないの。だからこれしててもいいって」
「そうなんだー。それで病院抜け出して来ちゃって良かったの?」
「うん、へーきへーき。あと勝手にゆっくり治るって言ってたし、こっちでも診てもらえるからって」
「あ、そうなんだー。良かったぁ」
「もうね、ずっとサングラスかけっぱなし。寝る時もだよー」
「えーっ? 寝る時もー?」
「嘘~っ☆ 寝る時は外すよぉ」
「なんだあ。もーう、ひっかかったあ!」
 ふたりはそのままいつまでも話し込みそうだったので、
「あー、貴様ら。後がつかえてるんだが」
 と、たまりかねて伊隅が言った。
「あっ、ほら、須藤ちゃん! はやく! 宗像中尉のとこ行って! 大尉に注意されるから!」
「ほんとだ!」
 須藤は二歩だけ走った。
(いや、もうすでに注意されてるだろ)
 白銀は心の中でツッコミをいれた。
「じゃね、遙ちゃん! また後で、ねっ?」
「ねっ」
「いいから次いけよ次! 遙もいつまでも相手しない!」
「あっ、宗像中尉、しばらくです!」
「しばらく。その様子なら心配は無用のようだな」
「ええ──」
「ということで、時間がないから次にいけ」
 宗像はさっさと次に控える風間に順番をまわした。
「あっ、はいはい。イヨウ、同期の友っっ。元気?」
「ええ。……あまり心配かけさせないでくださいね、須藤少尉」
「へぇへぇ。おっ。茜ちんにお晴ちゃん、しばらくー。元気してたー?」
「はいっ!」
「退院おめでとうございます」
「キミたちが入隊してすぐ病院送りになっちゃったから、またあらためてよろしくー」
「はいっ!」
「こちらこそよろしくお願いします」
 同輩と、後輩のふたりはそれぞれ無難に挨拶を済ませた。再び伊隅が場を仕切って、
「ここからは初対面だな。新たに我が伊隅ヴァルキリーズに配属なった六名だ」
「えっ? 六人も新人入ったの? ひぃふぅみぃ……ほんとだ。それじゃあ大尉、もうあたし用の不知火残ってないでしょ!」
「……そうならないよう、訓練に励め」
 と言った。が、その実、戦術機はこれで本当に足りなくなる勘定だった。白銀が新たに隊に加わったところへ突然の帰還兵。隊長はこの後、香月副司令にもう一機追加の機体を要請しなければならない。それまで須藤少尉に与えられる戦術機はないのだ。
「まあ、貴様は当分の間は実機には乗せんぞ。軍医の許可をもらってからだ」
 あらかじめそう告げて、伊隅は帳尻を合わせた。
「えー? あたしも乗りたーい」
「だめだ」
「もう体は大丈夫ですってば」
「いいから挨拶まわりを続けろ!」
「は~…い」
 不平満々の須藤に、榊が近づく。
「須藤少尉、初めまして。榊千鶴です。よろしくお願いします」
「あっ、はいはい。よろしく~」
「御剣冥夜です。よろしくご指導ください、須藤少尉」
「どもどもー、って、あーーー!!! キミの顔、どっかで見たあぁぁぁッ!」
「えっ……」
「──ような気がするよーな、しないよーな……。分かんねーや、まいいや。よろしく~」
「鎧衣美琴です! 初めまして!」
「ご丁寧にどうも~」
「彩峰慧です。よろしくお願いします」
「こちらこそ~」
「初めまして! 珠瀬壬姫ですっ。よろしくお願いします、須藤少尉!」
「タマちゃんかー。よろしくねー」
 最後は、白銀であった。
「初めまして、須藤少尉! 本日付けで配属となりました白銀武であります! よろしくお願いします!」
「あーー、キミが噂のスーパールーキーか。話は聞いてるよ~?」
「恐縮です。自分なんてまだまだヒヨッコですから」
「謙遜謙そーん。男一匹がんばりたまえよ~?」
「はいっ。どもっ。ありがとうございます」
 照れくさくなって白銀は頭を掻いた。
(話しやすい人だな。それに怖い人じゃなさそうだ)
 安心した白銀はサッと右手を差し出した。握手である。須藤は一度戸惑いの表情を見せたが、
「おうっ」
 と笑顔で応えた。手の力を強める。応えて白銀も負けじと強く握り返した。 

 すぽんっ☆

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 白銀の絶叫が室内に響いた。彼は、自分の右手が握っている物体、かつ自分の右手を握っている物体に我が目を疑った。
「あっ。右手とれちゃった。てへっ☆」
 須藤は左手で頭を掻き、だらん、と袖の垂れ下がった右腕を白銀に披露した。
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 再び白銀の絶叫が響き、彼はその場にしりもちをついた。
「怖い! この人コワイ!!」
「ごめんごめん。返してね、白銀少尉」
「あわわわわ……」
 須藤はその物体を白銀の手から引き剥がし、キリキリと腕に締め直す。
「ちょっとちょっと! 須藤っ! アンタ本当に大丈夫なの!?」
「だいじょうぶですよ、速瀬中尉。もうちょっときつめに締めてれば日常生活で外れることありませんから」
「そんなコト言って、実際に外れてるじゃない!」
「白銀少尉、怪力なんだもん」
「あわわわわ。手が。手が……!」
「ん? 白銀少尉、平気? 手がとれたのはキミじゃなくてあたしの方だよ?」
「ははははははい。へへへへーきですっ」
 しりもちをついた状態のままの白銀に須藤が近づき、
「ほんとに?」
 そう問いかけ、くいっとサングラスをずらして白銀の顔を覗きこんだ。
「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 次の瞬間、白銀のこの日三度目の絶叫が室内に響き渡った。


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