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No.28072の一覧
[0] 光菱財閥奮闘記!! 【9月25日 本編更新】[カバディ](2012/09/25 15:32)
[16] 第Ⅰ章<始動編> 2話 契約 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:32)
[17] 第Ⅰ章<始動編> 3話 目標 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:33)
[18] 第Ⅰ章<始動編> 4話 会議 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:35)
[19] 第Ⅰ章<始動編> 5話 瑞鶴 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[20] 第Ⅰ章<始動編> 6話 初鷹 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[21] <第Ⅰ章>設定 1980年編 [カバディ](2011/10/13 18:12)
[22] 第Ⅱ章<暗躍編> 1話 商売 《10/28改訂更新分》[カバディ](2012/01/04 16:09)
[23] 第Ⅱ章<暗躍編> 2話 政治 《10/30改訂更新分》[カバディ](2011/10/30 15:50)
[24] 第Ⅱ章<暗躍編> 3話 戦況 《11/4改訂更新分》[カバディ](2011/11/12 16:50)
[25] 第Ⅱ章<暗躍編> 4話 量産 《11/8日改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:59)
[26] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormnt‐》 第1話  集結 [カバディ](2012/01/04 16:10)
[27] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第2話  東欧 [カバディ](2012/01/04 16:11)
[28] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第3話  戦場 [カバディ](2012/01/04 16:13)
[29] 第Ⅱ章<暗躍編> 5話 愚策 《11/12改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:57)
[30] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第4話  場景[カバディ](2012/01/06 19:10)
[31] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第?話  日常[カバディ](2011/09/12 23:32)
[32] 第Ⅱ章<暗躍編> 6話 冷戦 《11/21改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:27)
[33] 第Ⅱ章<暗躍編> 7話 現実 《12/3改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:18)
[34] 第Ⅱ章<暗躍編> 8話 権威 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:06)
[35] 第Ⅱ章<暗躍編> 9話 理由 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:09)
[36] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-1話 乱戦[カバディ](2012/07/07 20:08)
[37] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-2話 調整 [カバディ](2011/10/26 19:36)
[38] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-3話 対立[カバディ](2012/01/06 16:08)
[39] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-4話 結末[カバディ](2012/01/06 19:29)
[40] 第Ⅲ章<奮闘編> 1話 新造 《7/8新規更新》[カバディ](2012/09/25 14:27)
[54] 第Ⅲ章<奮闘編> 2話 増援 《9/25新規更新》[カバディ](2012/09/25 15:32)
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[28072] 第Ⅲ章<奮闘編> 1話 新造 《7/8新規更新》
Name: カバディ◆19e19691 ID:0701e029 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/09/25 14:27
1985年9月12日 光菱本社ビルの一室

あの東欧へのBETAの攻勢から半年。ドナウ川防衛ラインが落ちたと聞いたときはもう欧州、ひいては世界終わったなと思ったね。そうつぶやく孝明です。

東欧の戦況はBETAの一大攻勢を凌いだことともう一つの理由から、BETAに勢いは下火になっており、現在は第2防衛線を主軸に体制を整えているとのこと。

そこまで落ち着けたのはまぎれもなく国連軍等からの支援があったおかげであり、そのおかげで未完成であった第2防衛線であってもどうにか、凌ぎ切れそうな状況に落ち着くことができた。

いやあ…本当大変だったと思うよ。いきなりのBETAの侵攻。まあ、それは当たり前であっても、天候のせいもあって、気づいたらいつの間にか20万ものBETAが目の前にいますとか卒倒物だろ。

それを凌げたのは先もいったが、後方からの支援と現場の努力、そして地味に新しい戦略コンセプトのおかげでもあるだろうね。

確か要塞線防衛思想だったかな。原案を出したのは、一応は未来知識を持つ俺だけど、ここまで形にできたのはまぎれもなく、軍のエリート、参謀さん達だ。さすが、頭が良い連中だ。それが弊害になることもあるが…今回はいい方向に推移したのだろう。

今回にしても一番強固だった第1次防衛線を崩壊すると見るや、東欧郡の参謀本部は、核兵器の投入や水浸し作戦などで要塞線もろともの自爆攻撃なんて果断な判断を下した。

いくら訓練をしても死傷者の出る作戦、本来であれば下策に等しいものだが、この世界では、少しの躊躇や甘さで、死者が乗数倍に増えていく。


それがわかっているからこそ、この世界が戦争であふれているからこそ、ここまで果断に判断を下せたのだろう。
失敗すれば確実に、下からの突き上げを喰らう、計画的な陣地自爆攻撃。

だが今回は、どうにか成功に収めたわけだ。それは死傷者にも現れており、今回の規模からすれば、奇跡的なほど人的被害を低く、なによりこれまで失敗することはなかった敵の大規模侵攻をくじいたことはかなり大きい。準備を万端にすれば20万もの攻勢を凌げることが判明したのだから。

その喜びは世界情勢にも現れており、現在の世界の各戦線は膠着状態に落ち着いたこともあって、人類側がBETAの攻勢を凌ぎ、いまだ半年前とほとんど同じ生息圏を維持している状況なのだ。

人類の明るい未来が見えてきたっ!














「と言っても表向きだけなんだけどね~」

と愚痴をこぼしたくなるのが俺の立場である。経済のほうも戦況の好転によって上向きに落ち着き始めているが、その現状は国民が把握している現状であって人類の実情ではないと知っているからだ。

「どうした?なにか悩みごとか?」

そう声をかけてきたのは人ではなく、人類をあらゆる意味で超越した生命体に作られた人工生命体、電子精霊マリヱだった。

「ああマリヱ、帰ってきてたんだ。でどうだった?」

「新しい技術に関しては少しではあったが、進歩していたぞ?」

聞いていればわかると思うが、経済、政治、軍事などあらゆる分野の考察が必要な立場となった俺。それに代わって現場の状況を見てきているのがマリヱさんの今の仕事なのだ。

マリヱが見える状態にするのも面倒だし、見れたら見れたでマリヱさんの存在から考えて拙い。さらに人とのコミュ力が意外に低いマリヱさんは足まと…否、適材適所な仕事がその存在の在り方からして電子世界を把握しての情報把握だ。


「で、最近一人言が多いが新しい悩み事でもできたか?そうだな…彼女ができないとか」


「うるせぇ…この家系の事情からして結婚してくれるものなんている訳ねえんだ。決して俺がモテないわけじゃないんだからなッ!!」

うわ、マリヱが優しい目で見てくる。どう見ても哀れんでやがるアイツ…
「でだ。何が拙いんだ?」

「まあ拙いというか当たり前というか、東欧に新しいハイヴが出来たんだよ」

東欧カルパティア山脈のふもと、ガラツィ。そこに新しい11個目のハイヴが建造され始めたと報告があったのが2ヶ月前。
つまり前回の防衛戦にてBETAに奪われたルーマニアの国土に、敵の最前線基地が出来たことを意味する。あれ?防衛には成功したのになんで?あれだけ殺したのになんで……

「まあそれはな…だがそれは史実において東欧にできたブタペストハイヴ、それがその位置まで後退したと考えればそう悪くはあるまい?それでもある意味では成果ではないか」

「・・・まあ俺たちからすればそうなんだけど、世界の人たちはそう見てくれないんだよ」

当たり前だ。今生きている人たちは史実のような“悲惨な未来”を知らない。そうなるはずだった未来なども。だからこそハイヴが新しくできたというのは不味いのだ。

人々の評価というのは必ず結果で判断される。それが軍事の難しい事情もわからない一般市民からすれば、ハイヴができたというのは、即敗北した、というイメージに直結する訳で、防衛戦の死傷者が少ないことや、BETAの攻勢を挫くことができたのは言い訳にしか映らない。

俺としてはこの防衛戦の順調な防衛成功を弾みにして、人類のムードを上げ、日本の評価につなげたかったのだが、それにケチが着いてしまった形になる。


「なによりあの防衛戦の成功が「BETAはもともとガラツィにハイヴを作りたかったから、攻勢を弱めたのでは?」という論調が各国政府高官の中で生まれているのが拙い。今回の成果がまるまる失われてしまうわけだからな」

これを言っているのはもちろん反日派に属する軍事アナリストなどだが未来を知らない以上、全面的に否定はできないし、素人にはどれだけBETAを殺したという数値よりも、地図上で見た視覚情報のほうが真実に映る。

「つまりこれまでの努力が否定されるということか」

そう。東欧戦線は俺がこの世界に来てからの情報提供と、国連軍の派遣、兵器輸出で若干だが史実より保っているため、ブダペストという、日本なら佐渡島のような懐に造ることを避けられたことになる。

ガラツィはその場所を見ればわかるがカルパティア山脈と数多くの川によって、人類の生息圏から遠のいた場所にあり、代わりにブタペストは、東欧の首都圏近くである。その成果は史実を知っている者からすれば大戦果ものだ。

だが、それがこの世界の者がわかるはずがない。現に今の情勢でも戦力が足りていないのでは?という懐疑的な意見も議会では出始めており、こちらとしては結果を出したのに否定されるという、ヤル気が削ぎれる状況に陥っているというわけだ。

「そしてここに新しいハイヴが出来たことはBETA側にとって将来、かなり有利に働くことになる。」

「東欧の前にハイヴができたのだからな」

「守りたい欧州の前にハイヴが3つ、だからね。史実ではミンスクハイヴだけで欧州が押し負けたんだ。これはかな~りやばい。」

これは西欧のミンスクハイヴ、北欧のロヴァニエミハイヴの2つをあわせると前線に約100万ものBETAが欧州攻略に乗り出せるようになる計算だ。
ブタペストに出来たことよりかはマシだが、こちらの思惑としては、先の防衛戦でBETAをあれだけ殺したのだから、史実に出来るはずだったハイヴ一つくらいは消えたのではと予想していたのだ。

「つまるところ、場所が若干変わったことで戦況が楽になるだろうが、戦局は結局のところ変わらないということか…どうにか新しいハイヴを攻略して…いや無理か。」

マリエが言おうとしたのは、新しくできたハイヴならば攻略できるのではないか?ということなのだろう。だがそれをしようとした者たちの将来は決まっている。失敗だ。

なぜか?当たり前だ。相手も出来立てのハイヴがもろいことを知っているからだ。そのために付けられる近衛のBETAは30万を超え、周辺のハイヴから即座に応援が届く体制が整えられている。

なによりハイヴを新造したばかりであることから、地上にいるBETAの数、特に光線級の数が尋常ではない。そんなところに砲撃を打っても全て撃墜、戦術機でさえ容易に近づくことはできないだろう。


そしてなにより人類が敗走したからこそ、新しくハイヴができたのであり、そんな余力が敗走した軍にあるわけがない。今の東欧も同じであり、新たに出来たハイヴからのBETAの侵攻を防ぐために、防衛線の整備に忙しく、攻略部隊など言い訳程度にしか抽出できないだろう。


「…うん。現状は正直かなりきびしいよ。努力した結果で戦況はどうにか持ち直すことには成功したけど、人類全体で見た大勢は変わっていないってことだからね。」

「時間稼ぎが精一杯…ということか?」
痛いところを付いてくる

「史実は時間稼ぎもできなかったんだけどね。だけど戦局を変えられていない以上、オレが今までテコ入れした兵器だけでは、ヨーロッパを保つ手助けには足り得ないってことだ。このままでは何年後かわからないけど欧州は堕ちる。あくまでこのままだけど」

それはマリヱにとってヨーロッパに死亡勧告をされたのと等しく、それの肯定と受け取ってしまう。
「…そうか。ヨーロッパは保たないか…」

それはBETAに抗するために必然的に必要になる後背地が、人類が保てないため、そこで詰みとなる典型的な例だった。
BETAに兵站という概念がない。BETA一体につき、エネルギーの貯蔵量が桁違いのため、補給線が伸びるということがない。

ということからもBETAを史実より内陸部に封じ込めるためには、BETA用の防衛線と防衛線の裏にある十分な戦力を向上できる"国土"が必要になる。

つまりは、今までのBETAとの戦史からいえば、ブダペストがガラツィに変わったという光菱の働きの成果は、死を長引かせる時間稼ぎにしかならないということだ。

「ここまで原作に介入してしまった手前、原作通りにブダペストに建造すると考えていた 訳ではないが…ここまで急いでハイヴが建造するとはなぁ…」

ヨーロッパの生命線を保つためのラインに、BETAの戦力を増強する基地を造られるというチェックメイトをされたのだ。と孝明に悲哀を含んだ相槌を促すように言った。

「中東のほうも変化しているがそれも、大勢には影響しないのか?」
それは少し前にできた中東のガシアンテップハイヴのことを言っているのだろう。

「中東だけで見れば大きいんだよ。世界地図で見れば少ししか動いていないが、国の地図で見れば大きく動いている。本来出来るはずだった中東のアンバールハイヴ。

それが今はガシアンテップハイヴ、つまり中東の中心から遠のいているんだからね。
だけどガシアンテップにできるということは地中海に近づいたことになる。BETAの戦線が事実上繋がったわけだ。」

ガシアンテップ。トルコの要衝地であり、地中海に近く、BETAからすればヨーロッパ方面にも矛先を向けられる要地である。つまり場所としては、アンバールより北西に遠退いたのだから自然、欧州に近づいたということだ。

そこを前線基地にすれば中東戦線方面にはハイヴを含んで約50万ほどのBETAが攻勢をかけられつつ、新しくできたガラツィにも増援を送り込めるようになる。

つまりはヨーロッパ方面のハイヴと連携が取れる絶好の地に変化したのだ。

「これは痛い。ガシアンテップにできたこと自体はその場所が、豊かな大地でもないからあまりBETAにとって良いとはいえない。だけど戦略上はかなり大きい。なによりBETAからすれば新たに増援路が整備されたことになるんだからね。」

「つまりはオリジナルハイヴ、イランにあるマシュハドハイヴといったフェイズ5のハイヴから増援が届く危険性があるということか」

そう、いままでは3番目にできたウラリスクハイヴ(場所でいえばカスピ海の上)に過剰にできたBETAが主に、欧州への増援として回されてきていた。

だがガシアンテップ、ガラツィに新しいハイブができればどうなるだろうか。

ガラツィで見てみれば、今までミンスク、ウラリスクからの増援を西欧、東欧に2分割してBETAの強みである物量に対処していたものが、東欧の目の前にハイヴができれば、ミンスクは西欧、ガラツィは東欧、そして戦略予備としてウラリスクの増派部隊がいるという形になる。

そしてもっともまずいのが、ガシアンテップハイヴである。

先も言ったがトルコの要衝であることからも、侵攻方向を中東、つまりはアフリカに攻める方向ではなく、ボスポラス海峡を渡りギリシャを介して欧州への侵攻も可能となったのだ。
なによりオリジナルハイヴと二番目に古いマシュハドハイヴからの増援を含む新造BETAが中東の目の前に聳え立ったことは史実と同じく中東への圧力を大きく増すことになるだろう。

そうしてハイヴ伝いに簡単に増援が可能となったことで、もし中国、インドへのBETAの攻勢が弱まり、先ほどのハイヴから大増援がヨーロッパ、特に東欧へと、トルコ、ギリシャを介して集中すればどうなるだろうか?

「東欧戦線への挟撃、それは即東欧の瓦解に繋がりかねない。戦力の集中投与を許せる場所にあるガシアンテップとガラツィは、それほど危険な立地に位置している。
つまりは人類の防衛戦が突き破られる可能性が生まれてしまったんだよ。危惧していた通りにね」

ただハイヴが出来たのなら、ここまで落ち込むことはない。その位置が戦略的に重要な位置だからこそ悔いているのだ。

そしてそれは東欧であり、東欧の前にハイヴを建造させてはならなかった。点と点であればそれほど脅威ではないハイヴ。だがその点がつながりあい最前線にて線になってしまえば、どこに戦力を集めるかの主導権がBETA側にわたってしまったのだ、


「まあたかが5年で戦局に影響を与えられるとは思っていなかったけど、さすがBETA。強い」

結果論だが浮かれていたんだろう。数々の施策。国連軍の創設。世界経済の好転。その数々で結果を出したとして、変わったのはハイヴの位置であり、戦術上では価値があっても戦略上ではあまり意味がない。たかだか3年ほどの時間稼ぎ。

戦術での巻き返しでは戦略には影響を与えない、それの典型的な例が今俺の目の前で、指し示されている。正直かなり心に来る状況だ。


「でどうするのだ?お主もここで手を拱いているつもりもないのだろう?他の情勢もさらに変化していると聞く。対策のほうは考えがまとまってきているのか?」

(…へこんでいるところに、対策は?と聞かれるとおまえがやれよってイラッてくるよなあ…まあ全権を俺に預けている債権者だから、それは正当な行いなんだけどさ)

「ん?どうしたソ連、中東―――最近のBETAは南進もしているのだぞ?」
たしかに中ソ連合軍によるノギンスクハイヴ攻略作戦が失敗に終わり、ただでさえ戦力が減少している、中ソがさらに弱体化してしまった。それに中東も動けず、なによりインドへの攻勢が強まり始めた。

わかっている。今はかなりやばいときだと、だがそれを覆せるほどの力と、権力を未だ持っていない俺にどうしろと?

そう叫びたくなる衝動を抑えて、どうにか冷静にマリエの疑問に答えを返す。

「…しかし、1財閥にやれることなどたかが知れているんだよ。たしかに日本国内であれば、権力を握り大きく動くことが出来る。だけど海外への大規模な派兵は難しい。戦力もだが、未だ国内の意思が統一できていないからだ。

…それにこれまでは派手に動いてきたからいろいろなところでしわ寄せが着ているんだ。そろそろ、これまで見逃していた地味な部分こそやっていくしかないんだって」
「だが…」
「わかっている…だからこそ、だからこそ少しずつなんだよ。日本も含めて」
「日本?どういうことだ?」

「日本だけを考えた場合、翔鷹の配備が予想より早く開始し始めた現在、やっとアメリカからの横やりを入れられずに、世界的な政治の表舞台で動けるようになったんだよ。口達者にはなりたくないしね。」

翔鷹の配備状況としては国産第一号機としては、驚くべきスピードで製造、試験、配備が進んでいる。それは1985年1月より生産が開始されてすでに1000機の大台に乗っていることからも異例だろう。
まあ先約が多かったことが一番の理由ではあるが。

「…これまでもいろいろとやってきたではないか?」

確かにマリエの言うとおりだが、意外にも国産戦術機が認められ、問題なく生産、配備が出来ている今の日本の状況は、政治的な世界でも大きな意味を持つものであり、これまでの無理を塗りつぶす大きな働きを持つものなのだ。

「アメリカから言えば裏でこそこそやりつつ、大儀をいつも掲げてきた日本がやっと本性を出した、けど力をつけたから口を出しづらいみたいなもんだよ。それでもあまり横槍を入れられない程度だけど。」

「まだ、"あまり"がつくところが悲しくなってくるところだな」

「当たり前だ。世界の覇王米帝だぞ?5年頑張っても差がありすぎるもんだ。

…で、だ。これを活かすためにこれまで気づいた人脈が役に立つんだ。」
裏なんかなら最初からやっていられるだけどね

「商売相手などか?」

「それも入る。そもそも、俺からしたらこの国の組織構成はひどすぎる。そういう内部も治していかなければならないと思っている。

そのためにいまのうちに将来オルタネィティブ4派になる勢力を国内に築かなくてはいけないんだ。」

農業のほうで、合成食糧分野と近頃の法律の改定による大規模農園の企業運営で大きな影響力がある。
これと軍事、工業、等で大きな影響力を政府に与える事ができている。

…実力プラス、賄賂と、商事などの情報を使っているだけなんだけどね。

「そうすることで、これからの30年ほど続くBETAとの大戦を戦っていくわけだ…が、
今、国内だけで見た場合、大きな問題点がある。
それは軍の頭がかったいことと、政治家が腐ってやがることだ。ようするに金なんかで動いてんじゃねぇーよっ!!ってことだ。」
「主が賄賂を使っているのにか…?」
「うっ!?いや…まぁ…話を続けよう…

政治方面では、マリヱとあった時の大目標を「国策」とするために必要なことはわかるよね?
じゃあ軍事のほうなんだけど…軍事のほうも重要なんだ。」
「わかるような気もするが…なぜなんだ?」

「ぶっちゃけ、軍全体の戦略、思想、体系が古いんだ。この世界全ての国を含めてね。
新兵器開発も戦略や思想が古くてはBETAに有効な兵器開発はできない…つまりは兵器開発路線の開拓だ。」

「それはわかるが…翔鷹のようにこちらから押し込むことはできないのか?」

「…衝鷹みたいに無理やり押し込むことなんて一回きりだ。そんなこと続ければ他の企業に怨まれるわ、拙い慣習が生まれてしまう。
そうさせないためにも、対BETAの最新の戦略、戦術を広めることで、こっちも兵器開発もスムーズにいけるってわけだ。」
これはめちゃくちゃデカい!!

通常、兵器開発は、軍が今の状況に必要なものを、国家固有の大戦略に沿う形で、初期研究をする。
それからどのようなものを造るか開発要求書をメーカーに提出し、研究所と共同して試作するってわけだ。

これによって、兵器が開発される。そこに新しい概念・知識を注入して、海外勢を含め、有効な兵器を開発できる下地を作れるようにすることが、目的なのだ。

「それにこの国は俺が来た世界より、戦前の昭和の雰囲気に近い。そうなると、BETA大戦を前に軍が暴走したり、政府の要人が暗殺されたりと弊害しか生まれないしね。」
そのような未来にならないように世界の一極になるためには、立憲君主制、皇道派よりのまま、統制のとれた政府と軍部で統一し、教育指導と情報統制を引く。それがこの国にとってベストだと考えている。

だが現状はどうだ。頭が良くてもその思想が古くては国政には良い影響を与えない。だが頭が良いために自信がある。そんな危ういヤツラが軍部や官僚にはびこっているのだから。

…まあ時代の移り変わりがこの5年とんでもないペースであるためしょうがないとも言えるのだが。

「それに外国のほうにも人脈作りは大切だ。、特に政治的にこちらの話や協力が出来ない国、東側陣営の中ソとかね。」

ソ連など東側陣営は最終的に、二桁以上もハイヴ抱えることになる。ソ連は2大超大国に数えられる…が12個はねぇよ…それなのに、いまだに冷戦構造はあるため、安易に協力体制にできない。しかも協力体制になって、気づいたらスパイだらけになりかねないお国事情。孝明くんが言うなら…「怖ぇえんだよ、マジで。」
ってことになる。


「ってわけで、ただ単に戦力を築き上げようとしても、周りに邪魔されちゃ困るからね。そこらへんの地ならしも行いつつ、いろいろと手を回さないとならないんだよ。」


「だが肝心なのは軍事支援のほうだろう?」

わかってるよっ!まったく。
「欧州に新しいハイヴが出来たのだ。それの対策として増援部隊も整備しなければならん。戦術機の増産についてもあまり上手くいっていないと聞いたぞ?」

うぐ…

「確かにうまくいっていないさ。先の東欧戦線の防衛成功がなあ…」

「第1世代戦術機の徴収に各国が難色を示しだしたか」


世界でみても、現在の緊急事態に対して、世界が協力し合おうとして築かれた国際協調路線。

国連の調停によって国対国の戦争の危険性がほぼなくなったからこそ、各国に配備されていた第1世代機をグリフォンに改修、最前線に売り込むことが可能だったわけだ。

だが東欧の防衛成功がそれを崩すことになろうと思いもしなかった。

「後方国家の軍部が東欧の成功をみて、そこまで急いで我々の第1世代機を回収する必要もないのではないか、言ってきたからね。あちらとしては一時でも戦術機が減るのは我慢ならないんだろうさ。」


国防の観点からしても兵器の中で唯一BETAに対抗できる戦術機を、世界のためとはいえ削減したくはないはずだ。ただでさえ数が足りていないし、新造されたグリフォンの生産が追いついていないため、最優先にされている最前線国家以外では、一二年は戦術機の数が激減する期間が生じるようになる。

「今までは世界の危機と他の国も戦術機を減らしていたからこそ、国連からの提案に乗っていたが、少し余裕が出来ればいろいろと理由をつけて、戦術機を離そうとはしない者が出てきた。喉元すぎれば、というやつなのだろうが、こうも簡単に協力体制にヒビが入るとはな。」

「あたりまえなんだけどね。まあ正論としてだれと戦争するつもりなのかと聞かれれば黙るんだけど、国防をつかさどる各国の軍としては一時とはいえ、戦術機が減るのはうれしいことではないだろうさ。

なにより東欧の防衛は一応は成功している。ならば戦術機を、後方の国のものまで回収して集める必要はないんじゃないかっていう正当な理由が出来てしまった。そんあ意見が出てくるのは当たり前ではあるよ」

特に中国、朝鮮といった前線国家に分類される国はグリフォンという国際開発機に対して、いろいろと疑問を抱いており、後方各国から裏を介して改修前の戦術機を集めている節がある。

これは改修費用を出して強化するよりも、国連と第二世代戦術機の登場により、国際価格が下落している改修前の第1世代機を数揃えば、対応できるのでは、という考えの元・・・なんだろう。あとは日本が国連に強く関与しているのが気に入らない、ってのもあるかもしれない。

「同じ情報でも、片方では不安がり、片方ではもう大丈夫ではないかという意見が出てくる。それは所属する組織が違っているからだが、度し難いものだ。」

「なんかパーっと解決する裏技でも…あるわけないか。」

「当たり前だ。戦争なんて派手に解決する必要もないんだ。地味なことの繰り返し。」

「ではどうするのだ?」

「それはもう一つしかないでしょ。国連統合軍の再編組みを片っ端から送り込む。新兵器を導入した部隊からなにまで。総力戦の開始だよ」

ここまで自転車操業のようになるとは思わなかったが仕方がない。予定を繰り上げて再編が行われていた国連統合軍。その内部で余裕のある方面軍から部隊を抽出して送り出そうと言うわけだ。

はっきり言って応急処置。そんなもので対処できるか不安ではあるが、物量でどうにかするしかない。これからはかなり綱渡りになるだろうが、問題を解決するためにも手を施すしかないだろう。人類の未来をかけて、な。


~2話に続く~



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次元管理電脳より追加報告です。

新しいハイヴが3つ追加されました。NEW!!

ガシアンテップハイヴ 中東トルコ
1984年11月建造開始
1985年現在フェイズ2に移行中

ガラツィハイヴ   東欧ルーマニア
1985年7月建造開始 
現在フェイズ1の状態のまま、周辺を慣らしている途中の
ようです

ノギンスクハイヴ ユーラシア北部 ソ連
1985年2月建造開始
中ソ連合軍のハイヴ攻略作戦が7月に決行され、失敗に終わりました。現在
周辺ハイヴより増援部隊を結集、周辺の人類を駆逐しています




以上、次元管理電脳からの追加報告を終了します。


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筆者です。更新を半年も待たせてしまい、申し訳ありません。就職してからというもの、仕事のほうが忙しかったもので更新する暇がありませんでした。

これからも不定期にですが更新していくと思います。休んでいた間の数々の感想、ありがとうございました。励みにさせてもらいます。


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